JP4482292B2 - パン生地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パン生地、パンの製造方法およびパンに関する。
【0002】
【従来の技術】
パンはカビの発生により著しく商品価値が低下するため、一般に製造に際しては環境面のクリーン化、または各種防黴剤の添加などによる防黴対策が行われている。
防黴剤として、例えば酢酸等の酸味剤、酢酸ナトリウム等の添加剤、またはプロピオン酸、エタノール等の殺菌剤を含有するものが用いられているが、これらの防黴剤を添加すると、パンの風味が悪くなるという問題がある。また、近年、自然志向が強くなっていることもあり、これらの防黴剤を添加することなく、カビの発生を抑制する技術の確立が強く望まれている。
【0003】
乳酸菌は、多くの食品の製造に使用される安全性の高い微生物であり、抗菌性を有する物質を産生することが知られている。例えば、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscencis)等のラクトバチルス属乳酸菌の培養液を用いて得られるパンは防黴効果が優れていることが知られている(特許文献1参照)。
しかし、さらに防黴効果のある方法の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特許第3277251号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、防黴効果を有するパン生地、ならびに該パン生地を用いることを特徴とするパンの製造方法および該方法により得られるパンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(5)に関する。
(1) 乳酸菌を培地に培養して得られる培養物または該培養物の処理物、およびサッカロミセス(Saccharomyces)属に属し、糖5%生地中での38℃、60分間の炭酸ガス発生量が、該生地1gあたり2.0ml以上で、かつ該生地の膨張量1mlあたり1.2ml以上である酵母を含有するパン生地。
(2) 酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する酵母である、上記(1)のパン生地。
(3) 酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YHK2931(FERM BP-8046)である、上記(1)または(2)のパン生地。
(4) 上記(1)〜(3)いずれか1つのパン生地を用いることを特徴とするパンの製造方法。
(5) 上記(4)の方法により得られるパン。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる酵母としては、以下の工程(a)〜(d)により得られたサッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母菌体を用いて、以下の工程(ア)〜(キ)からなる連続した7工程で生地膨張量を測定し、かつ工程(ア)〜(エ)および(ク)〜(コ)からなる連続した7工程で炭酸ガス量を測定した場合、糖5%生地において38℃、60分間で発生する炭酸ガス発生量が、該生地1gあたり2.0ml以上、好ましくは2.4ml以上、さらに好ましくは3.0ml以上で、かつ生地膨張量1mlあたり1.2ml以上、好ましくは1.4ml以上である酵母があげられる。
なお、本発明において、糖5%生地とは、生地中に、小麦粉等の穀物粉100重量部に対して5重量部の糖を含有する生地をいう。
(a)120℃で20分間殺菌して調製したYM培地(水1L、グルコース10g、ペプトン5g、酵母エキス3g、麦芽エキス3gおよび寒天20gを含み、pH6に調整した培地)に、酵母菌体を1白金耳植菌し、30℃で2日間培養する工程、
【0008】
(b)120℃で20分間殺菌した300ml容三角フラスコ中のYPD培地(水30ml、酵母エキス0.3g、ポリペプトン0.6gおよびグルコース0.6gを含む培地)に、上記工程(a)で得られた酵母菌体を1白金耳植菌し、30℃で24時間振とう培養(220rpm)する工程、
(c)上記工程(b)で得られた培養液全量を、120℃で20分間殺菌した2L容斜ヒダ付き三角フラスコ中の糖蜜培地〔水300ml、糖濃度3%(w/v)分の糖蜜、尿素0.579g、リン酸2水素カリウム0.138gおよび消泡剤2滴を含む培地〕に植菌し、30℃で24時間振とう培養(220rpm)する工程、
(d)上記工程(c)で得られた培養液から、遠心分離(3,000rpm、5分間、4℃)によって菌体を分離し、該菌体を3回脱イオン水で洗浄後、ヌッチェを用いて吸引ろ過し、酵母菌体を取得する工程。
【0009】
(ア)強力粉100g、上記(a)〜(d)の工程により得られた酵母菌体2gおよび水20mlからなる酵母懸濁液、ならびに砂糖5g、食塩2gおよび水42mlからなる水溶液を、捏上温度が28〜30℃となるよう、ナショナル・コンプリートミキサーを用いて100rpmで2分間ミキシングする工程、
(イ)上記工程(ア)で得られた生地を丸め、平らになった面が上面になるようにして、予め30℃で保温し、内側に離型油を塗布した600ml容のガラス製シリンダー〔直径(内径)5.7cm、高さ24cm、厚さ0.5cm、両口の開いた円筒型〕の底から詰める工程、
(ウ)上記工程(イ)で得られたシリンダーを予め30℃で保温したシャーレにのせ、麺棒で生地の表面を平らにしてから、シリンダーの上端に濡れ布巾をかけ、30℃、相対湿度85%で2.5時間保温する工程、
【0010】
(エ)上記工程(ウ)で得られた生地を取り出し、ガス抜きした後、100gの生地と20gの生地を分割する工程、
(オ)上記工程(エ)で得られた生地100gを丸め、平らになった面が上面になるようにして、工程(イ)に記載されたガラス製シリンダーの底から詰める工程、
(カ)上記工程(オ)で得られたシリンダーを工程(ウ)に記載されたシャーレにのせ、麺棒で生地の表面を平らにしてから、生地の頂部の高さを読み取り、シリンダーの上端に濡れ布巾をかけ、38℃、相対湿度85%で60分間保温した後、再び生地の頂部の高さを読み取る工程、
(キ)上記工程(カ)における、保温する前と後での生地の頂部の高さの差から生地の膨張量を算出する工程、
(ク)上記工程(エ)で得られた生地20gを225ml容の試料ビンに入れ、ファーモグラフ[例えば、ファーモグラフII(アトー株式会社製)]に接続されたチューブがついた蓋を該試料ビンに取り付ける工程、
(ケ)上記工程(ク)で得られた試料ビンを38℃、5分間保温する工程、
(コ)上記工程(ケ)で得られた試料ビンを38℃、60分間保持し、該試料ビン中の生地から発生する炭酸ガス量を、ファーモグラフを用いて測定する工程。
【0011】
上記工程(d)において、酵母菌体中の酵母菌体の乾燥物の重量(以下、乾物重量という)の比率は、25〜40%(w/w)に調整する。なお、酵母菌体中の乾物重量の比率は、以下の方法により算出できる。
酵母菌体を約3g(A)秤量し、105℃で5時間乾燥させる。得られる酵母菌体の乾物重量を測定し、該乾物重量をBとする。次式によって乾物重量の比率(%)を算出する。
酵母菌体の乾物重量の比率(%)=100×(B/A)
なお、上記の工程(ア)における「酵母菌体」の使用量(2g)は、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の使用量である。乾物重量の比率が33%(w/w)でない場合、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の「酵母菌体」の使用量(2g)に代えて、次式により算出される使用量を用いる。
【0012】
上記の工程(ア)における「酵母菌体」の使用量(g)=2×33/酵母菌体中の乾物重量の比率
上記工程(ア)〜(キ)からなる連続した7工程で測定した生地膨張量より、生地1gあたりの生地膨張量を求めることができる。
また、上記(ア)〜(エ)および(ク)〜(コ)からなる連続した7工程で測定した炭酸ガス発生量より、生地1gあたりの炭酸ガス発生量を求めることができる。
なお、生地1gあたりの炭酸ガス発生量および生地1gあたりの膨張量から、生地膨張量1mlあたりの炭酸ガス発生量を求めることができる。
本発明に用いられる酵母は、例えば、自然界から分離した酵母、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母、さらに好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する酵母から、上記特徴を有する株をスクリーニングすることにより取得することができる。
【0013】
また、パン酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、味噌・醤油酵母等の酵母、好ましくはサッカロミセス属に属する酵母に、公知の変異誘導方法、例えば紫外線照射、X線照射、エチルメタンスルホネートやN−メチル−N’ニトロ−N−ニトロソグアニジンなどの変異誘起剤による変異処理、遺伝子操作、または交雑育種等を行った後、上記特徴を有する株をスクリーニングすることにより、取得することもできる。
本発明に用いられる酵母の具体例としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエYHK2931、サッカロミセス・セレビシエYHK1923があげられる。
サッカロミセス・セレビシエYHK2931は、ブダペスト条約に基づいて、平成14年5月21日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)にFERM BP−8046として寄託されている。サッカロミセス・セレビシエYHK1923は、ブダペスト条約に基づいて、平成14年2月18日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)にFERM BP−7901として寄託されている。
【0014】
本発明に用いられる酵母は、通常の酵母の培養条件、例えば炭素源、窒素源、無機物、アミノ酸、ビタミン等を含有する培地中で培養することができる。
培地としては、酵母の培養に通常用いられる培地であれば、炭素源、窒素源、無機物、微量成分などを含有する合成培地、天然培地等、いずれも用いることができる。
炭素源としては、澱粉、デキストリン、シュクロース、グルコース、マンノース、フルクトース、ラフィノース、ラムノース、イノシトール、ラクトース、マルトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜、ピルビン酸などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は1〜40g/Lが好ましい。
【0015】
窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーン・スティープ・リカー、カゼイン分解物、大豆粉、野菜ジュース、カザミノ酸、尿素、などの窒素含有有機物などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は1〜20g/Lが好ましい。
【0016】
無機物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は0.1〜2g/Lが好ましい。
【0017】
微量成分としては、パントテン酸、ビオチン、サイアミン、ニコチン酸等のビタミン類、β−アラニン、グルタミン酸等のアミノ酸類などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は0.0001〜2g/Lが好ましい。
培養法としては、液体培養法、特に深部攪拌培養法が好ましい。培地は、pH2〜11、好ましくはpH3〜10、より好ましくはpH4〜8に調整し、10〜80℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜40℃で、通常4時間〜10日間培養する。培地のpH調整にはアンモニア水や炭酸アンモニウム溶液などが用いられる。
【0018】
培養終了後、常法により培養液から分離、洗浄した酵母菌体を水に懸濁させて、酵母懸濁液を調製し、これをパン生地やパンの製造に用いることができる。
得られた酵母懸濁液から回転式真空脱水機やフィルタープレス等の濾過機を用いて菌体を回収、脱水させて、60〜75%(w/w)の水分含量の圧搾された酵母菌体(以下、圧搾酵母という)を調製するか、該圧搾酵母をさらに乾燥機を用いて乾燥させることにより2〜12%(w/w)の水分含量の乾燥された酵母菌体を調製し、これらをパン生地やパンの製造に用いることもできる。
【0019】
本発明に用いられる乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属等に属する微生物があげられるが、例えば、ラクトバチルス属またはストレプトコッカス属に属する微生物が好適に用いられる。これらの微生物は単独で用いてもよいし、2種以上の微生物を組合せて用いてもよい。
【0020】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物としては、例えばラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ブレイビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscencis)、ラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactobacillus sanfrancisco)、ラクトバチルス・イタリカス(Lactobacillus italicus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブルッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)等に属する微生物があげられ、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物としては、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)等に属する微生物があげられ、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物としては、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス サリバリウス(Streptococcus salivarius)等に属する微生物があげられ、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物としてはロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)等に属する微生物があげられ、ペディオコッカス(Pediococcus)属に属する微生物としては、例えばペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)等に属する微生物があげられ、エンテロコッカス(Enterococcus)属に属する微生物としては、例えばエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等に属する微生物があげられ、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属に属する微生物としては、例えばテトラゲノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)等に属する微生物があげられる。これらの微生物としては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・イタリカス、ラクトバチルス・サンフランシスコ、ラクトバチルス・プランタラム、ストレプトコッカス・サーモフィラス等が好適に用いられる。
【0021】
乳酸菌の培養物としては、上記乳酸菌を、乳酸菌の培養に用いられる通常の方法に従って培地に培養して得られる培養液があげられる。また、該培養液より遠心分離、ろ過等の方法によって分離して得られる菌体または培養上清等も培養物として用いることができる。
培養物の処理物としては、例えば、培養液、菌体または培養上清の乾燥物、培養液、菌体または培養上清の凍結乾燥物、培養液または菌体の酵素処理物、培養液または菌体の超音波処理物、培養液または菌体の機械的摩砕処理物、培養液または菌体の溶媒処理物等があげられる。
【0022】
乾燥方法としては、自然乾燥、熱風乾燥、通風乾燥、送風乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、天日乾燥、真空乾燥等の乾燥方法が用いられる。
凍結乾燥は、凍結乾燥機等を用いる通常の凍結乾燥法が用いられる。
酵素処理に用いられる酵素としては、リゾチーム等があげられ、培養液または菌体に添加して用いられる。
機械的摩砕としては、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等を用いる摩砕があげられる。
溶媒処理に用いられる溶媒としては、好ましくは、エタノール、メタノール等が用いられるが、飲食品への利用という観点からはエタノールが好ましく用いられ、培養液または菌体に直接添加して用いられる。
【0023】
乳酸菌の培養方法は、酵母の培養方法と同様であるが、静置培養が好ましく用いられる。
培地には、上記成分の他に、必要に応じて、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸またはこれらのナトリウム塩もしくはカルシウム塩、またはオリーブ油、綿実油、アマニ油、大豆油、ベニバナ油、トウモロコシ油等の植物油等が添加される。
また、全乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム等の乳製品等、および小麦粉、ライ麦粉等の穀物粉等も天然培地として用いることができ、必要に応じてこれらに前記培地成分を添加して天然培地として用いることができる。
本発明のパン生地は、穀物粉、通常小麦粉に、本発明に用いられる酵母、乳酸菌培養物、食塩、水、必要に応じて砂糖、脱脂粉乳、卵、イーストフード、ショートニング、バター等を加え、ミキシングすることにより得られる。
【0024】
本発明のパンの製造法としては、本発明のパン生地を用いる以外は通常の製パン法が用いられる。
代表的な食パン、菓子パン等の製パン法としては、ストレート法と中種法が用いられる。前者は、パン生地の全原料を最初から混ぜる方法であり、後者は、穀物粉の一部に酵母、乳酸菌培養物および水を加えて中種をつくり、発酵後に残りのパン生地の原料を合わせる方法である。
ストレート法では、パン生地の全原料をミキシングした後、25〜30℃で発酵させ、分割、ベンチを行い、成型、型詰めする。ホイロ(35〜42℃)を経た後、焼成(200〜240℃)する。
中種法では、使用する穀物粉の全量の約7割、酵母、乳酸菌培養物、イーストフード等に水を加えミキシングし、25〜35℃で2〜5時間発酵させた後、穀物粉、水、食塩、砂糖、脱脂粉乳、ショートニング等、残りのパン生地の原料を追加し、ミキシング(本捏)、フロアータイム、分割、ベンチタイムを行い、成型、型詰めする。ホイロ(35〜42℃)を経た後、焼成(200〜240℃)する。
以下に実施例を示す。
【0025】
【実施例】
実施例1
サッカロミセス・セレビシエYHK2021株およびFSC6012株を、それぞれ5mlのYPD培地〔酵母エキス(ディフコ社製)1%(w/v)、ポリペプトン(日本製薬社製)2%(w/v)およびグルコース(キシダ化学社製)2%(w/v)を含む培地〕に1白金耳植菌し、28℃で1日間振とう培養した。
【0026】
該培養液を5mlのYPA培地〔酢酸カリウム(キシダ化学社製)1%(w/v)、酵母エキス(ディフコ社製)0.5%(w/v)およびペプトン(ディフコ社製)1%(w/v)を含み、pH7.0に調整した培地〕に100μl植菌し、28℃で4日間振とう培養して胞子を形成させた後、遠心分離して集菌した。集菌後、菌体を滅菌水で洗浄し、5mlのZymolyase溶液〔Zymolyase−20T(生化学工業社製)0.1%(w/v)、2−メルカプトエタノール(和光純薬社製)0.02%(v/v)、100mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)からなる溶液〕に懸濁し、30℃で30分間保温した後、55℃で10分間保温した。保温後、該懸濁液を滅菌水で希釈してYPD平板培地に塗沫し、30℃で2日間培養しYHK2021株およびFSC6012株の胞子クローンをそれぞれ得た。
【0027】
YHK2021株の胞子クローンとFSC6012株の胞子クローンを、5mlのYPD培地にほぼ1対1の割合で1白金耳植菌し、30℃で1日間培養した。該培養液を滅菌水で希釈し、YPD平板培地に塗沫し、30℃で2日間培養して交雑株を得た。該交雑株より、上記の工程(a)〜(d)に従ってその酵母菌体を取得し、上記の工程(ア)〜(キ)からなる連続した7工程で生地膨張量を測定し、上記工程(ア)〜(エ)および(ク)〜(コ)からなる連続した7工程で炭酸ガス発生量を測定した結果、糖5%生地中での38℃、60分間の炭酸ガス発生量が、該生地1gあたり2.0ml以上で、かつ該生地の膨張量1mlあたり1.2ml以上である株が2株得られた。該2株のうちの1株をYHK2931(FERM BP−8046)株とした。
【0028】
実施例2
ダイヤイースト(協和発酵工業社製)を滅菌水に懸濁し、YPD平板培地〔寒天(キシダ化学社製)2%(w/v)を含むYPD培地〕に塗沫し、30℃で48時間培養してコロニーを生育させ、得られたコロニーより適当なコロニーを選択して、市販酵母として分離した。
120℃で20分間殺菌した直径16.5mmの試験管中のYM培地〔グルコース(キシダ化学社製)1%(w/v)、ペプトン(ディフコ社製)0.5%(w/v)、酵母エキス(ディフコ社製)0.3%(w/v)、麦芽エキス(ディフコ社製)0.3%(w/v)および寒天(キシダ化学社製)2%(w/v)を含み、pH6に調整した培地〕8mlからなる斜面培地に、YHK2931株または市販酵母を、1白金耳ずつ植菌し、30℃で2日間培養した。
【0029】
培養後、寒天培地から、YHK2931株および市販酵母を1白金耳かきとり、それぞれ120℃で20分間殺菌した300ml容三角フラスコ中のYPD培地30mlに植菌し、30℃で24時間振とう培養(高崎科学器械社製TB−128RL、220rpm)した。
得られた培養液全量を、120℃で20分間殺菌した2L容斜ヒダ付き三角フラスコ中の糖蜜培地〔水300ml、糖濃度3%(w/v)分の糖蜜、尿素(キシダ化学社製)0.579g、リン酸2水素カリウム(キシダ化学社製)0.138gおよび消泡剤2滴を含む培地〕に植菌し、30℃で24時間振とう培養(高崎科学器械社製TB−128RL、220rpm)した。得られた培養液を、遠心分離(日立工機社製CR22E、3,000rpm、5分間、4℃)して集菌し、菌体を3回脱イオン水で洗浄後、ヌッチェを用いて吸引ろ過し、酵母菌体を取得した。
【0030】
強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)100g、得られた酵母菌体2gおよび水20mlからなる酵母懸濁液、ならびに砂糖5g、食塩2gおよび水42mlからなる水溶液を、捏上温度が28〜30℃となるよう、ナショナル・コンプリートミキサーを用いて100rpmで2分間ミキシングした。得られた生地を丸め、平らになった面が上面になるようにして、予め30℃で保温し、内側に離型油(ランナー、協和発酵工業社製)を塗布した600ml容のガラス製シリンダー〔直径(内径)5.7cm、高さ24cm、厚さ0.5cm、両口の開いた円筒型〕の底から詰めた後、予め30℃で保温したシャーレにのせ、麺棒で生地の表面を平らにしてから、シリンダーの上端に濡れ布巾をかけ、30℃、相対湿度85%で2.5時間保温した。保温後、得られた生地を取り出し、ガス抜きした後、100gの生地と20gの生地を分割した。
【0031】
分割した生地100gは、丸めて、平らになった面が上面になるようにして、30℃での保温に使用したガラス製シリンダーの底から詰めた後、30℃の保温に使用したシャーレにのせ、麺棒で生地の表面を平らにしてから、生地の頂部の高さを読み取り、シリンダーの上端に濡れ布巾をかけ、38℃、相対湿度85%で60分間保温した。保温後、再び生地の頂部の高さを読み取った。そして、保温する前と後での生地の頂部の高さの差から生地膨張量を算出した。
なお、生地膨張量は、以下の式により算出することができる。ただし、πは円周率とする。
生地膨張量=〔(38℃、60分後の生地の頂部の高さ)−(測定開始時の生地の頂部の高さ)〕×(シリンダーの内径/2)2×π
一方、分割した20gの生地は、225ml容の試料ビンに入れ、ファーモグラフII(アトー株式会社製)]に接続されたチューブがついた蓋を該試料ビンに取り付け、該試料ビンを38℃で5分間保温した。つぎに、該試料ビンを38℃で60分間保持し、該試料ビン中の生地から発生する炭酸ガス量をファーモグラフIIを用いて測定した。
【0032】
なお、上記各酵母菌体の使用量は、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の値である。乾物重量の比率が33%(w/w)でない場合、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の酵母菌体の使用量に代えて、次式により算出される使用量を用いた。
各酵母菌体の使用量(g)=2×33/酵母菌体の乾物重量の比率
各菌株を用いた場合の、生地1gあたりの炭酸ガス発生量、生地1g当たりの生地膨張量および生地膨張量1ml当たりの炭酸ガス発生量を第1表に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
第1表に示されるとおり、YHK2931株を用いて得られたパン生地では、パン生地膨張量1mlあたりの炭酸ガス発生量が、市販酵母を用いて得られたパン生地に比べて多かった。
【0035】
実施例3
120℃で20分間殺菌して調製した直径16.5mmの試験管中のYM培地8mlからなる斜面培地に、YHK2931株または市販酵母を1白金耳植菌し、30℃で2日間培養した。培養後、該斜面培地に滅菌水5mlを加えて菌体を懸濁させ、該懸濁液2.5mlを、120℃で20分間殺菌した2L容斜ヒダ付き三角フラスコ中の糖蜜培地〔水300ml、糖濃度3%(w/v)分の糖蜜、リン酸2水素カリウム0.33gおよび尿素0.135gを含む培地〕に2.5ml植菌し、30℃で24時間振とう培養(高崎科学器械社製TB−128RL、220rpm)した。得られた培養液全量を、120℃で20分間殺菌した5L容ジャーファーメンター中の培地(硫酸アンモニウム43.2g、リン酸2水素カリウム14gおよび硫酸マグネシウム2.2gを水1.8L中に含む培地)に加え、120℃で5分間殺菌した糖蜜培地〔全糖濃度48%(w/v)〕800mlを用いて、30℃で30時間の流加培養を行った。なお、培養期間中、pHはアンモニア水でpH5.0に調整した。培養終了後、培養液を遠心分離して集菌し、菌体を洗浄後、ヌッチェを用いて吸引ろ過することにより、YHK2931株および市販酵母の菌体をそれぞれ得た。
【0036】
85℃で10分間殺菌して調製した500ml容三角フラスコ中の培地〔脱脂粉乳(高梨乳業社製)60gに水240mlを加えたもの〕に、乳酸菌の凍結乾燥菌体612−GRB〔ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)の凍結乾燥菌体を含有する、Rhodia Inc.製〕を、10mg植菌し、40℃で20時間静置培養することによりラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)の培養物(以下、乳酸菌培養物Aと称す)を得た。
【0037】
強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、YHK2931株の菌体20g、乳酸菌培養物A10g、イーストフード(パンダイヤC−500、協和発酵工業社製)1gおよび水420gを混ぜ合わせた。
得られた混合物を、捏上温度が24℃になるようパンミキサー(SS型71E、関東混合機工業社製)を用いて低速で3分間、中高速で2分間ミキシングし、得られた生地を28℃で4時間発酵させた。この生地に強力粉300g、砂糖50g、食塩20g、脱脂粉乳20gおよび水260gを加え、低速で3分間、中高速で4分間ミキシングした後、ショートニング50gを加えて捏上温度が28℃になるように低速で2分間、中高速で3分間、高速で4分間ミキシングした。得られた生地を20〜25℃で20分間静置した後に、これを分割して220gの塊を4個とり、これらを球状に丸めた。丸めた生地4個を20〜25℃で20分間静置した後にガス抜きし、2斤食パン型(プルマン)に入れて成型した後、生地の容積が型容積の80%に達するまで、38℃、相対湿度85%で発酵させた。得られた生地を、オーブン(リールオーブン ER・6・401型、藤澤製作所社製)にて210℃で28分間焼成して、食パン(以下、「YHK2931株および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン」ともいう)を製造した。
【0038】
また、強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、YHK2931株の菌体20g、乳酸菌培養物A10g、イーストフード1gおよび水420gを混ぜ合わせる工程において、YHK2931株の菌体20gおよび乳酸菌培養物A10gの代わりに、YHK2931株の菌体20gのみ、市販酵母の菌体20gおよび乳酸菌培養物A10g、ならびに市販酵母の菌体20gをそれぞれ用いる以外は上記と同様の方法を用いて食パン(以下、それぞれ「YHK2931株を用いて得られた食パン」、「市販酵母および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン」、ならびに「市販酵母を用いて得られた食パン」ともいう)を製造した。
【0039】
なお、上記各酵母菌体の使用量は、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の値である。乾物重量の比率が33%(w/w)でない場合、乾物重量の比率が33%(w/w)の場合の酵母菌体の使用量に代えて、次式により算出される使用量を用いた。
各酵母菌体の使用量(g)=20×33/酵母菌体の乾物重量の比率
得られた食パンをビニール袋に入れて密閉し、室温で1日間保存した後、厚さ1.8cmにスライスした。
【0040】
食パンの風味ついて、専門のパネラー7人により、官能検査を行ったところ、いずれの食パンも良好な風味を有していたが、乳酸菌培養物Aを添加して得られた食パンはさらに良好な風味を有していた。
スライスした食パンを1試験区につき2枚使用し、スライス面の片側に、0.1%(v/v)Tween80溶液に5×102個/mlとなるよう調整したペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)ATCC 1117株の胞子懸濁液およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275株の胞子懸濁液をそれぞれ接種した。1スライス面へのカビの接種箇所は25箇所とし、1箇所あたり10μlの胞子懸濁液を接種した。
【0041】
ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)ATCC 1117株の胞子懸濁液を接種した食パンは25℃で、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275株の胞子懸濁液を接種した食パンは28℃で静置し、食パンのスライス面でのカビの生育を観察し、胞子形成に要する日数を測定した。カビの観察は一日2回(朝、夕各1回)行い、胞子の形成が確認された箇所を数えた。
【0042】
なお、カビの胞子懸濁液は以下のようにして作成した。
水1Lに麦芽エキス20g、グルコース20g、ペプトン1g、寒天20gを加え、120℃、20分間殺菌して調製した斜面培地に、ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)ATCC 1117株およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275株を、それぞれ一白金耳植菌し、25℃で7日間培養した。培養終了後、該斜面培地に0.1%(v/v)Tween80溶液を5ml加えて胞子を懸濁し、該懸濁液を遠心分離して胞子を集め、0.1%(v/v)Tween80溶液で2回洗浄した。洗浄した胞子に0.1%(v/v)Tween80溶液を5ml加えて懸濁し、該懸濁液を40μmのセルストレナー(FALCON社製)を2回通過させた。セルストレナーを2回通過させた液を胞子懸濁液とし、15%(v/v)グリセロール液に5×106個/mlとなるように加えて−80℃で使用時まで凍結保存した。
【0043】
それぞれのカビについて、各時間における胞子形成した箇所の数を第1図に示す。
第1図に示すように、いずれのカビについても、YHK2931株および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パンにおけるカビの胞子形成までの時間は、市販酵母を用いて得られた食パン、YHK2931株を用いて得られた食パン、ならびに市販酵母および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パンにおけるカビの胞子形成までの時間と較べて著しく長かった。
【0044】
実施例4
120℃で20分間殺菌して調製した直径16.5mmの試験管中の培地〔マルトース(ナカライテスク社製)4%(w/v)、酵母エキス(ディフコ社製)1.8%(w/v)、ポリペプトン(日本製薬社製)1.0%(w/v)、硫酸マグネシウム(キシダ化学社製)0.02%(w/v)、L−システイン(キシダ化学社製)0.03%(w/v)、Tween80(キシダ化学社製)0.03%(w/v)および寒天(キシダ化学社製)2%(w/v)を含み、pH5.6に調整した培地〕8mlからなる斜面培地に、ラクトバチルス・イタリカス(Lactobacillus italicus)FERM BP-189株およびラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactobacillus sanfrancisco)L-1株を、それぞれ一白金耳植菌し、30℃で2日間培養した。該斜面培地に生育した菌体をそれぞれ白金耳で全量かき取り、500ml容三角フラスコ中の培地〔120℃で20分間殺菌した水204mlに、小麦粉(カメリヤ、日清製粉社製)90g、脱脂粉乳(高梨乳業社製)6gを加えた培地〕に植菌し、30℃で24時間静置培養することによりラクトバチルス・イタリカス(Lactobacillus italicus)FERM BP-189株の培養物(以下、乳酸菌培養物Bと称する)およびラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactobacillus sanfrancisco)L-1株の培養物(以下、乳酸菌培養物Cと称する)を得た。
【0045】
また、120℃で20分間殺菌して調製した直径16.5mmの試験管中の培地〔マルトース4%(w/v)、酵母エキス1.8%(w/v)、ポリペプトン1.0%(w/v)、硫酸マグネシウム0.02%(w/v)、L−システイン0.03%(w/v)、Tween80 0.03%(w/v)および寒天2%(w/v)を含み、pH5.6に調整した培地〕8mlからなる斜面培地に、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)ATCC 8014株を一白金耳植菌し、40℃で2日間培養した。該斜面培地に生育した菌体を白金耳で全量かき取り、85℃で10分間殺菌して調製した500ml容三角フラスコ中の培地〔脱脂粉乳60gに水240mlを加えたもの〕に植菌し、40℃で20時間静置培養することによりラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)ATCC 8014株の培養物(以下、乳酸菌培養物Dと称する)を得た。
【0046】
強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、実施例3で得たYHK2931株の菌体20g、イーストフード(パンダイヤC−500、協和発酵工業社製)1gおよび水420gを混ぜ合わせて得られた混合物について、実施例3と同様の方法を用いて食パンを製造した。
また、強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、実施例3で得たYHK2931株の菌体20g、イーストフード(パンダイヤC−500、協和発酵工業社製)1gおよび水400gに、さらに乳酸菌混合物B、CおよびDをそれぞれ30g加える以外は、上記と同様の方法を用いて食パンを製造した。
【0047】
一方、強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、実施例3で得た市販酵母の菌体20g、イーストフード(パンダイヤC−500、協和発酵工業社製)1gおよび水420gを混ぜ合わせて得られた混合物について、実施例3と同様の方法を用いて食パンを製造した。
また、強力粉(カメリヤ、日清製粉社製)700g、実施例3で得た市販酵母の菌体20g、イーストフード(パンダイヤC−500、協和発酵工業社製)1gおよび水400gに、さらに乳酸菌混合物B、CおよびDをそれぞれ30g加える以外は、上記と同様の方法を用いて食パンを製造した。
【0048】
食パンの風味ついて、専門のパネラー7人により、官能検査を行ったところ、いずれの食パンも良好な風味を有していたが、乳酸菌培養物(B、C、またはD)を添加して得られた食パンはさらに良好な風味を有していた。
得られた食パンについて、実施例3と同様の方法を用いて、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275株の胞子形成を観察した。
YHK2931株を用いて得られた食パン、ならびにYHK2931株および乳酸菌培養物(B、C、またはD)を用いて得られた食パンでの、86時間目、98時間目および110時間目における胞子形成箇所の数を第2表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
同様に、市販酵母を用いて得られた食パン、ならびに市販酵母および乳酸菌培養物(B、C、またはD)を用いて得られた食パンでの、86時間目、98時間目および110時間目における胞子形成箇所の数を第3表に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
第2表および第3表から明らかなとおり、YHK2931株および乳酸菌培養物(B、C、またはD)を用いて得られたパンは優れた防黴効果を有することがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、防黴効果を有するパン生地、該パン生地を用いることを特徴とするパンの製造方法および該方法により得られるパンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1図は、YHK2931株および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン、YHK2931株を用いて得られた食パン、市販酵母および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン、ならびに市販酵母を用いて得られた食パンにおける、カビの胞子形成までの時間を調べた結果を示す図である。グラフの横軸は、カビの胞子を食パンに接種してからの経過時間、縦軸は胞子形成の認められた箇所の数を示す。各グラフは上段から(A)Penicillium expansum ATCC 1117株、(B) Aspergillus niger ATCC 6275株について、カビの胞子形成までの時間を調べた結果を示す。○はYHK2931株および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン、□はYHK2931株を用いて得られた食パン、△は市販酵母および乳酸菌培養物Aを用いて得られた食パン、◇は市販酵母を用いて得られた食パンを表す。
Claims (3)
- 乳酸菌を培地に培養して得られる培養物または該培養物の処理物、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YHK2931(FERM BP−8046)を含有するパン生地。
- 請求項1に記載のパン生地を用いることを特徴とするパンの製造方法。
- 請求項2記載の方法により得られるパン。
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