JP7178725B2 - 蛍光x線分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、試料に1次X線を照射し、発生する2次X線の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、各種試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置に関する。
蛍光X線分析装置による定量分析においては、分析成分に対応する分析元素ごとにX線強度を計数して、得られたX線強度から、例えば検量線法により定量演算を行う。各成分についてのX線強度の精度、つまり各成分についての計数精度は、X線強度と計数時間に依存する。計数精度については、通常、X線強度の計数値を積算強度(カウント数c)で表したとき、積算強度の精度は、積算強度の平方根で表される。この現象を統計変動と呼ぶ。このように計数精度が統計変動に起因するとした場合、X線強度Iの単位をcps、計数時間Tの単位を秒とすると、計数精度σCount(cps)は、次式(1)で計算できる。
σCount=(I/T)1/2 …(1)
また、式(1)を変形して、指定した計数精度σCountが得られる計数時間Tを、次式(2)のように計算できる。
T=I/σCount …(2)
これを利用して、適切な計数時間と分析精度での測定をすべく、計数相対精度と分析値の相対精度(濃度の相対精度)が一致するとの前提で、計数相対精度つまり分析値の相対精度が、指定された値になるように計数時間の計算を行う装置がある(例えば、特許文献1参照)。
また、X線強度の精度として、X線強度の総合精度を用い、X線強度の総合精度の2乗を、統計変動に起因する計数精度の2乗と、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度の2乗との和とする装置もある(例えば、特許文献2参照)。
これらの従来の装置においては、蛍光X線などの2次X線の測定強度に対して必要に応じて数え落とし補正を行い(例えば、非特許文献1参照)、その補正後強度を検出器に入射する真のX線強度に相当すると考え、補正後強度に基づいて定量分析を行うことから、前式(1)においても補正後強度をX線強度Iとして用い、計数精度σCountを求めている。
特開2000-074857号公報 特開2019-090652号公報
河野久征著、「蛍光X線分析 基礎と応用」、初版、株式会社リガク、2011年12月、p.62、p.165-166
しかし、実際には、検出器に入射する真のX線強度が大きくなるほど、数え落としが多発し、補正後強度が真のX線強度にほぼ一致するとしても、補正前強度と真のX線強度とのずれは増大するので、数え落としが発生する場合には、前式(1)において補正後強度をX線強度Iとして用いても、計数精度σCountを正しく求められず、ひいてはX線強度の総合精度を正しく求められない。したがって、従来の装置では、数え落としが発生する場合に、適切な計数時間と分析精度での測定ができなかった。
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、数え落としが発生する場合にも、適切な計数時間と分析精度での測定ができる蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の第1構成は、試料に1次X線を照射し、発生する2次X線の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、前記試料中の成分の含有率の定量値および/または前記試料の厚さの定量値を求める蛍光X線分析装置であって、強度を測定すべき2次X線である測定線のそれぞれについて、計数時間を計算する計数時間計算手段を備えている。
そして、その計数時間計算手段が、X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とするとともに、前記計数精度を、前記数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する前記補正後強度の勾配との積とすることにより、各測定線について、指定されたX線強度の総合精度、所与の数え落とし補正係数および所与の補正後強度から計数時間を計算する。
第1構成の蛍光X線分析装置では、計数精度を、数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する補正後強度の勾配との積とすることにより、数え落としの影響が計数精度に適切に反映されるので、数え落としが発生する場合にも、指定されたX線強度の総合精度から計数時間を正しく計算でき、適切な計数時間と分析精度での測定ができる。
本発明の第2構成は、試料に1次X線を照射し、発生する2次X線の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、前記試料中の成分の含有率の定量値および/または前記試料の厚さの定量値を求める蛍光X線分析装置であって、強度を測定すべき2次X線である測定線のそれぞれについて、X線強度の総合精度を計算する総合精度計算手段を備えている。
そして、その総合精度計算手段が、X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とするとともに、前記計数精度を、前記数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する前記補正後強度の勾配との積とすることにより、各測定線について、指定された計数時間、所与の数え落とし補正係数および所与の補正後強度からX線強度の総合精度を計算する。
第2構成の蛍光X線分析装置でも、計数精度を、数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する補正後強度の勾配との積とすることにより、数え落としの影響が計数精度に適切に反映されるので、数え落としが発生する場合にも、指定された計数時間からX線強度の総合精度を正しく計算でき、適切な計数時間と分析精度での測定ができる。
なお、第1構成、第2構成の蛍光X線分析装置において、X線強度の総合精度に、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度を加味してもよい。この場合には、X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とすることに代えて、X線強度の総合精度の2乗を、統計変動および数え落としに起因する計数精度の2乗と、ハードウェア再現性精度の2乗との和とする。
本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置を示す概略図である。 本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置を示す概略図である。 種々の精度計算方法による相対精度と補正後強度との関係を示す図である。
以下、本発明の第1実施形態の装置について、図にしたがって説明する。図1に示すように、この装置は、試料1(未知試料と標準試料の双方を含む)に1次X線3を照射し、発生する2次X線5の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、試料1中の成分の含有率の定量値(分析値)および/または試料1の厚さの定量値を求める蛍光X線分析装置であって、試料1が載置される試料台2と、試料1に1次X線3を照射するX線管などのX線源4と、試料1から発生する蛍光X線などの2次X線5を分光する分光素子6と、その分光素子6で分光された2次X線7が入射され、その強度を検出する検出器8とを備えている。検出器8の出力は、図示しない増幅器、波高分析器、計数手段などを経て、装置全体を制御するコンピュータなどの制御手段11に入力される。
この装置は、波長分散型でかつ走査型の蛍光X線分析装置であり、検出器8に入射する2次X線7の波長が変化するように、分光素子6と検出器8を連動させる連動手段10、すなわちいわゆるゴニオメータを備えている。2次X線5がある入射角θで分光素子6へ入射すると、その2次X線5の延長線9と分光素子6で分光(回折)された2次X線7は入射角θの2倍の分光角2θをなすが、連動手段10は、分光角2θを変化させて分光される2次X線7の波長を変化させつつ、その分光された2次X線7が検出器8に入射するように、分光素子6を、その表面の中心を通る紙面に垂直な軸Oを中心に回転させ、その回転角の2倍だけ、検出器8を、軸Oを中心に円12に沿って回転させる。分光角2θの値(2θ角度)は、連動手段10から制御手段11に入力される。
制御手段11は、強度を測定すべき2次X線5である測定線のそれぞれについて、対応する分光角2θで連動手段10を決められた計数時間だけ停止させ、測定強度を得るが、必要に応じて、その測定強度に数え落とし補正を行い、補正後強度を求める。数え落とし補正は、制御手段11への入力前に行ってもよい。なお、各測定線について、ピークのみを測定したグロス強度を測定強度としてもよいし、ピークとバックグラウンドを測定してバックグラウンド除去を行ったネット強度を測定強度としてもよい。また、測定強度または補正後強度に基づいて定量値を求める定量演算方法は、検量線法、ファンダメンタルパラメーター法(以下、FP法ともいう)のいずれでもよい。
第1実施形態の装置は、制御手段11に搭載されるプログラムとして、各測定線5についての計数時間を計算する計数時間計算手段13を備えている。計数時間計算手段13での計算においては、次式(3)のように、X線強度の総合精度σTotalの2乗が、統計変動および数え落としに起因する計数精度σCountの2乗と、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度σInstの2乗との和とされる。
σTotal =σCount +σInst …(3)
ここで、ハードウェア再現性とは、当該蛍光X線分析装置の計数によるばらつき以外の、すべての変動要因による再現性であり、機械的な要因による再現性、電気的な要因による再現性、および試料調製による再現性を含む。機械的な要因による再現性とは、機械的な要素の駆動、交換による再現性であり、例えば、ゴニオメータ駆動による角度再現性、分光素子、スリット、1次X線フィルター、試料ホルダの交換による位置再現性などを含む。また、電気的な要因による再現性とは、管電圧や管電流などの変動による再現性であり、試料調製による再現性とは、粉末プレスでのペレット調製による再現性やガラスビードなどでの試料調製による再現性を含む。ハードウェア再現性精度σInstは、X線強度に依存しないので、式(3)の各精度を、測定線全体におけるX線強度の平均値で除すると、X線強度の総合相対精度σRelTotal、計数相対精度σRelCount、ハードウェア再現性相対精度σRelInstについて、次式(4)が成り立つ。
σRelTotal =σRelCount +σRelInst …(4)
式(4)を変形することにより、ハードウェア再現性相対精度σRelInstは、次式(5)のように表される。
σRelInst=(σRelTotal -σRelCount 1/2 …(5)
ここで、X線強度の総合相対精度σRelTotalとしては、試料の品種ごとに任意の試料を用い、仮の計数時間を含む分析条件に則して当該蛍光X線分析装置の機械的な要素が駆動、交換される状態で、各測定線について例えば50回程度繰り返し測定して実験的に求められたX線強度の相対精度を用いることができる。また、計数相対精度σRelCountとしては、当該蛍光X線分析装置の機械的な要素が駆動、交換されない状態で、同様に各測定線について繰り返し測定して実験的に求められたX線強度の相対精度を用いることができる。それに代えて、所与の数え落とし補正係数τと、所与の補正後強度Iと、仮の計数時間Tまたは指定された計数時間Tとから、例えば後述する式(10)に基づいて計数精度σCountを計算し、その計数精度σCountを補正後強度Iで除して求めた計数相対精度σRelCountを用いてもよい。
数え落とし補正については、種々の補正式が知られているが、例えば、拡張死時間モデルに基づく次式(6)を用いることができる。
=I×exp(τI) …(6)
:補正後強度
:補正前強度(数え落とし補正を行う前の測定強度そのもの)
τ:数え落とし補正係数(デッドタイム、死時間)
式(6)では、両辺に補正後強度Iが含まれているので、測定されたままの補正前強度Iおよび所与の数え落とし補正係数τに基づき、Newton法により、補正前強度Iを初期値とする補正後強度Iが収束するまで繰り返し計算を行って、補正後強度Iが求められる。
補正後強度Iは、補正前強度Iよりも大きくなるので、補正後強度の精度である計数精度σCountは、補正前強度の精度σよりも、値が大きくなり、精度としては悪くなる。前式(6)から理解されるように、補正後強度Iは、その強度に応じた係数を補正前強度Iに乗じた値となっているので、補正前強度の精度σから計数精度σCountを求めることができる。この考えに基づいて、計数時間計算手段13での計算においては、次式(7)のように、計数精度σCountが、補正前強度の精度σと、補正前強度に対する補正後強度の勾配∂I/∂Iとの積とされる。
σCount=σ(∂I/∂I) …(7)
ここで、補正前強度の精度σは、例えば、補正前強度Iが統計変動に従うと仮定した場合に、前式(1)、(6)から、次式(8)のように表される。
σ=(I/T)1/2=(I/(T×exp(τI)))1/2 …(8)
また、補正前強度に対する補正後強度の勾配∂I/∂Iは、前式(6)を補正前強度Iで偏微分することにより、次式(9)のように表される。
∂I/∂I=exp(τI)/(1-τI) …(9)
これらの式(7)、(8)、(9)から、次式(10)が得られる。
σCount=((exp(τI))1/2/(1-τI))×(I/T)1/2 …(10)
この式(10)と前式(3)から、次式(11)および(12)が得られる。
T=I’/(σTotal -(σRelInst×I) …(11)
’=I×exp(τI)/(1-τI …(12)
計数時間計算手段13は、各測定線について、式(11)および(12)に基づいて、指定されたX線強度の総合精度σTotal、所与の数え落とし補正係数τおよび所与の補正後強度Iから計数時間Tを計算する。ここで、X線強度の総合精度σTotalについては、図示しないキーボード、タッチパネルなどの入力手段を用いて、操作者により所望の値が指定される。数え落とし補正係数τについては、公知の技術によりあらかじめ求められ、計数時間計算手段13に記憶されている。
補正後強度Iについては、分析対象の未知試料と同じ品種で組成が既知の標準試料を仮の計数時間で測定して、前式(6)の説明で述べたようにして求められた補正後強度Iが用いられる。また、補正後強度Iの強弱に関わる分析条件としてX線管の電流値を調節するにあたり、X線強度の総合相対精度σRelTotalが最も小さくなるような補正後強度Iを確認したい場合には、操作者が想定した補正後強度Iが入力手段から入力される。つまり、所与の補正後強度Iとは、計数時間計算手段13が、制御手段11の他の部分から測定強度に基づく計算値として与えられる場合と、操作者から入力手段を介して直接指定され、与えられる場合の両方を含む。ハードウェア再現性相対精度σRelInstについては、前式(5)の説明で述べたようにして求められた、X線強度の総合精度σTotalと計数相対精度σRelCountとから、前式(5)に基づいて計算された値が用いられる。
以上のように、第1実施形態の蛍光X線分析装置では、計数精度σCountを、補正前強度の精度σと、補正前強度に対する補正後強度の勾配∂I/∂Iとの積とすることにより、数え落としの影響が計数精度σCountに適切に反映されるので、数え落としが発生する場合にも、指定されたX線強度の総合精度σTotalから計数時間Tを正しく計算できる。したがって、例えば、所望の分析精度(含有率および/または厚さである分析値の精度)に相当するX線強度の総合精度σTotalを指定して、計算された計数時間Tを確認し、長すぎる場合にはX線強度の総合精度σTotalを許容範囲内で大きくして指定し直すことにより、適切な計数時間と分析精度で未知試料の測定ができる。
次に、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。図2に示すように、第2実施形態の蛍光X線分析装置は、図1に示した第1実施形態の蛍光X線分析装置と比べると、制御手段11に搭載されるプログラムとして、計数時間計算手段13ではなく、各測定線5についてのX線強度の総合精度σTotalを計算する総合精度計算手段14を備えている点のみが異なっているので、総合精度計算手段14についてのみ説明する。
総合精度計算手段14での計算においても、前式(3)のように、X線強度の総合精度σTotalの2乗が、統計変動および数え落としに起因する計数精度σCountの2乗と、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度σInstの2乗との和とされる。また、前式(7)のように、計数精度σCountが、補正前強度の精度σと、補正前強度に対する補正後強度の勾配∂I/∂Iとの積とされる。
X線強度の総合精度σTotalについては、前式(10)と前式(3)から、次式(13)および前式(12)が得られる。
σTotal=(I’/T+(σRelInst×I1/2 …(13)
’=I×exp(τI)/(1-τI …(12)
計数時間計算手段13は、各測定線について、式(13)および(12)に基づいて、指定された計数時間T、所与の数え落とし補正係数τおよび所与の補正後強度IからX線強度の総合精度σTotalを計算する。
ここで、計数時間Tについては、図示しないキーボード、タッチパネルなどの入力手段を用いて、操作者により所望の値が指定される。数え落とし補正係数τ、補正後強度I、ハードウェア再現性相対精度σRelInstについては、計数時間計算手段13で用いたのと同じ数値が用いられる。
第2実施形態の蛍光X線分析装置でも、計数精度σCountを、補正前強度の精度σと、補正前強度に対する補正後強度の勾配∂I/∂Iとの積とすることにより、数え落としの影響が計数精度σCountに適切に反映されるので、数え落としが発生する場合にも、指定された計数時間TからX線強度の総合精度σTotalを正しく計算できる。したがって、例えば、所望の計数時間Tを指定して、計算されたX線強度の総合精度σTotalまたはそれに相当する分析精度を確認し、大きすぎる場合には計数時間Tを長くして指定し直すことにより、適切な計数時間と分析精度で未知試料の測定ができる。
図3に種々の精度計算方法による相対精度と補正後強度との関係を示す。図中、「統計変動」として記載されているのは、統計変動に起因する計数精度のみを考えた場合の計数相対精度と補正後強度との関係である。なお、補正後強度は、数え落とし補正が正しく行われる通常の測定強度範囲では、検出器に入射する真のX線強度とほぼ一致する。「統計変動、数え落とし補正」として記載されているのは、統計変動および数え落としに起因する計数精度を考えた場合の計数相対精度と補正後強度との関係である。後述するが、本発明においてハードウェア再現性精度が無視できるときの精度計算方法が、この場合に相当する。
「総合精度(統計変動、ハードウェア再現性)」として記載されているのは、統計変動のみに起因する計数精度とハードウェア再現性精度とを考えた場合の総合相対精度と補正後強度との関係である。特許文献2を挙げて例示した背景技術の精度計算方法が、この場合に相当する。「総合精度(統計変動、数え落とし補正、ハードウェア再現性)」として記載されているのは、統計変動および数え落としに起因する計数精度とハードウェア再現性精度とを考えた場合の総合相対精度と補正後強度との関係である。本発明の第1、第2実施形態における精度計算方法が、この場合に相当する。なお、以上の精度計算において、ハードウェア再現性精度を含む場合には、ハードウェア再現性相対精度の値を0.0005としている。
「統計変動」の相対精度は、数え落としおよびハードウェア再現性の影響を受けない理想的な高い(数値の小さい)精度であるが、実際の測定では、常にハードウェア再現性の影響を受けるので、「総合精度(統計変動、ハードウェア再現性)」の相対精度のように、相対精度がハードウェア再現性相対精度(ここでは0.0005)を下回ることはない。また、ハードウェア再現性の影響とは別に、実際の測定では、検出器に入射する真のX線強度が大きくなるほど、数え落としが多発し、補正後強度が真のX線強度にほぼ一致するとしても、補正前強度と真のX線強度とのずれは増大するので、「統計変動、数え落とし補正」の相対精度のように、相対精度は高強度領域で右上がりになる。
本発明では、統計変動および数え落としに起因する計数精度を考え、前述したように、計数精度を、数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する補正後強度の勾配との積とする。これにより、本発明では、数え落としの影響が計数精度に適切に反映され、例えば図3の「総合精度(統計変動、数え落とし補正、ハードウェア再現性)」の相対精度のように、相対精度は、ハードウェア再現性相対精度を下回ることがなく、かつ、高強度領域で右上がりになり、現実に則した値になる。
なお、第1、第2実施形態の装置においては、X線強度の総合精度にハードウェア再現性精度を加味し、X線強度の総合精度の2乗を、統計変動および数え落としに起因する計数精度の2乗と、ハードウェア再現性精度の2乗との和としたが、本発明においてハードウェア再現性精度が無視できるときには、X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度としてもよい。この場合には、前式(3)、(4)、(11)、(13)に代えて、次式(14)、(15)、(16)、(17)をそれぞれ用いる。
σTotal=σCount …(14)
σRelTotal=σRelCount …(15)
T=I’/σTotal …(16)
σTotal=(I’/T)1/2 …(17)
また、以上の実施形態の説明においては、ピークのみを測定したグロス強度を測定強度としたが、ピークとバックグラウンドを測定してバックグラウンド除去を行ったネット強度を測定強度とする場合にも、公知の技術により、本発明を適用できる。
1 試料
3 1次X線
5 2次X線(測定線)
13 計数時間計算手段
14 総合精度計算手段

Claims (4)

  1. 試料に1次X線を照射し、発生する2次X線の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、前記試料中の成分の含有率の定量値および/または前記試料の厚さの定量値を求める蛍光X線分析装置であって、
    強度を測定すべき2次X線である測定線のそれぞれについて、計数時間を計算する計数時間計算手段を備え、
    その計数時間計算手段が、
    X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とするとともに、
    前記計数精度を、前記数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する前記補正後強度の勾配との積とすることにより、
    各測定線について、指定されたX線強度の総合精度、所与の数え落とし補正係数および所与の補正後強度から計数時間を計算する、蛍光X線分析装置。
  2. 試料に1次X線を照射し、発生する2次X線の強度を測定して数え落とし補正を行った補正後強度に基づいて、前記試料中の成分の含有率の定量値および/または前記試料の厚さの定量値を求める蛍光X線分析装置であって、
    強度を測定すべき2次X線である測定線のそれぞれについて、X線強度の総合精度を計算する総合精度計算手段を備え、
    その総合精度計算手段が、
    X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とするとともに、
    前記計数精度を、前記数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の精度と、その補正前強度に対する前記補正後強度の勾配との積とすることにより、
    各測定線について、指定された計数時間、所与の数え落とし補正係数および所与の補正後強度からX線強度の総合精度を計算する、蛍光X線分析装置。
  3. 請求項1に記載の蛍光X線分析装置において、
    前記計数時間計算手段が、
    X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とすることに代えて、
    X線強度の総合精度の2乗を、統計変動および数え落としに起因する計数精度の2乗と、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度の2乗との和とする、蛍光X線分析装置。
  4. 請求項2に記載の蛍光X線分析装置において、
    前記計数時間計算手段が、
    X線強度の総合精度を、統計変動および数え落としに起因する計数精度とすることに代えて、
    X線強度の総合精度の2乗を、統計変動および数え落としに起因する計数精度の2乗と、当該蛍光X線分析装置のハードウェア再現性に起因するハードウェア再現性精度の2乗との和とする、蛍光X線分析装置。
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