JP7158740B2 - 冠状動脈アテローム性硬化症およびその合併症を治療するための方法 - Google Patents
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Description
研究によると、アテローム性動脈硬化症プラークが現れる前の長い期間内に、内皮機能損傷はすでに形成されていた。Esperら[2]によると、内皮細胞は双方向機能を持つ分子を大量に発生させ、促進と阻害効果を平衡にすることができる。内皮細胞がこの些細な平衡を維持する能力を失うと、脂質と白血球(主に単核細胞とTリンパ細胞)は内皮に侵入して炎性反応及び脂質線条を引き起こす。内皮細胞の機能障害、活性化及び形態学的損傷は、血液中の単核細胞、血小板及び血管壁中膜VSMCの変化を引き起こし、最終的にASを形成する。その具体的なメカニズムは以下である。(1)内皮細胞の透過性の増加は、ASの主要な開始段階であり、脂質が動脈壁の皮下に入る最も早い病理的変化である[3];(2)血小板と単核細胞の接着を増加させる。Ottら[4]によると、機能障害した内皮細胞は、その表面の細胞接着分子の発現が増加するため、単核細胞の接着を促進するかもしれないので、細菌を含む単核細胞が循環血からASプラークに滲入することを促進する;(3)単球走化性タンパク質21(MPC21)、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などの多くの成長因子を分泌して、単核細胞が凝集して内皮に接着し、内皮下の隙間に移動し、その表面の清掃者受容体、CD36受容体及びFC受容体の介在下で、内膜下に入った酸化された脂質を大量に摂取し、単核細胞由来の泡沫細胞を形成する。Boosら[3]の研究によると、内皮損傷程度はある程度ではASの発症インデクス及び厳重さの新しい指標とすることができる。
動脈内皮細胞が損傷した後、損傷した内皮細胞上への血小板の接着を促進でき、さらにPDGFの放出を促進し、筋内膜細胞の持続増殖を引き起こして最終的にコラーゲンの合成を引き起こし、ASプラークを形成する。AS血栓形成の最終段階において、血小板の接着、活性化及び凝集は、動脈閉塞と継発性虚血を引き起こし得る[5]。血小板は内皮細胞、結合組織と互いに作用して局所管壁のASの発生に対して重要な意義がある。血小板がASにおける作用は主に下記通りである。(1)いかなる形の内皮損傷は、血小板を大量に内皮局所に接着・凝集させ、凝血系を活性化させて血栓の形成を引き起こすことができる。(2)PDGF、血小板第4因子、βトロンボグロブリンなど、VSMC及び単核細胞に対して強い化学的走化性作用を有する多くの活性物質を分泌・放出し、VSMC遊出、増殖及び大動脈内膜の修飾に寄与し、単核細胞を吸引して内皮に接着させる。PDGFが線維芽走化作用と、単核細胞が各自の抗原決定基を増殖することを促進する作用を有し、ASを引き起こす過程において重要な役割を果たしていると学者は指摘した。(3)静脈内皮細胞は一酸化窒素とプロスタサイクリンを生成することができ、しかも肺内で持続的に放出し、血小板の機能を調節する。
ASの病理的変化は、血脂レベル、特に血漿コレストロール及びトリアシルグリセロールレベルと密接に関連していると多くの研究により証明された[6]。脂質と脂肪酸の沈着は、内皮細胞機能障害及びAS形成過程における重要な病理的メカニズムであると学者は指摘した。研究によると、正常動脈と比べ、ASプラークを有する動脈アポリポタンパク質C1とアポリポタンパク質Eのタンパク質と遺伝子の発現はいずれも明らかに上昇しており、これは単なる結果ではなく、ASの形成原因であるかもしれない[7]。すでに公認されているように、高脂血症がAS発症における作用メカニズムは、内皮細胞損傷を直接に引き起こす他、主に内皮細胞の透過性を増加させることであり、これは、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化修飾による酸化性低密度リポタンパク質(оx-LDL)の生成に関係している。оx-LDLが損傷していない内皮を通過したとき、血漿LDLは内皮下の隙間に輸送されて酸化修飾される。LDLはマクロファージの除去反応および中間膜VSMCの増殖を引き起こしてアテローム性プラークを形成する。以上の変化は最終的に動脈内膜脂質線条、線維プラークおよび/またはアテローム性プラークの形成を引き起こす可能性がある。
研究によると、ASプラークには、単核細胞、単核細胞由来のマクロファージ、оx-LDL負荷のマクロファージ(すなわち、泡沫細胞)およびTリンパ細胞などの炎性反応細胞の浸潤が含まれている[8]。単核-マクロファージがASにおける作用は以下のようにまとめることができる。(1)食作用:病変早期の泡沫細胞は血の中の単核細胞から由来することが多く、後者は内皮下に入ってマクロファージに変え、その表面の特異性受容体はоx-LDLと結合することができるので、大量のコレステロールを摂取して泡沫細胞になる。(2)炎性反応と免疫反応に寄与すること:上記食過程は、細胞外基質へ炎性反応因子を放出することによって特有の炎性反応を誘発することができる。AS病巣内にTリンパ細胞の浸潤が見えられるとともに、非破裂のプラークと比べ、破裂したASプラークの線維皮膜にはより多くのマクロファージが含まれている。(3)増殖反応に寄与すること:マクロファージが活性化させられた後、多くの細胞因子と成長因子を放出して中間膜VSMCの遷移および増殖を促進することができる。また、マクロファージは複数のメタロプロテアーゼとセリンプロテアーゼを発現し、細胞外基質を退化させ、プラークが不安定になり、甚だしきに至っては破裂の傾向がある[9]。
近年の研究を経て、中間膜VSMCの増殖、内膜への遊出および基質タンパク質の合成は、ASの進行期間における病変形成の主要な一環であり、しかもASと再狭窄の内膜肥厚において重要な役割をはたしていることは認識されてきた[10]。ASプラークと再狭窄の発症と進行は、血管壁細胞間の複雑な相互作用効果を含み、細胞因子、炎性反応、走化因子、成長因子はその中において重要な役割を果たしている。遊離したVSMCはその表面のLDL受容体の介在下で脂質を貪食し、VSMC由来泡沫細胞を形成し、病変の形成に寄与する。また、これらの増殖した内膜VSMCはコラーゲン、エラスチン、糖タンパク質などを合成することができ、マクロファージがLDLを貪食して遊離脂質を放出し、病変下内膜を厚くして硬くし、硬化プラークの形成を促進する。これについて、上記細胞の蓄積を抑制するように多くの努力はされ、しかもステント術後の再狭窄の面において大きな成果が遂げられた[11]。
[発明の詳細な説明]
分数X/Y×100
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連疾患を治療するための本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質プラーク沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は10日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。11日目に二群からランダムにマウスを一匹ずつ取って殺処分し、大動脈を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。切り開いた後オイルドレッドOでグロス染色して、大動脈を実体顕微鏡下で7倍にて観察して撮像した。
オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、損傷の厳重さを反映することができる[49]。染色の結果(図1)、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は36.0%であり、プラスミノーゲン投与群は29.6%である。この実験は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークの沈着を減少させ、アテローム性動脈硬化の修復を促進することができることを示している。
実施例2は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質プラーク沈着を減少させることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は20日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。21日目に二群からランダムにマウスを一匹ずつ取って殺処分し、大動脈を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。切り開いた後オイルドレッドOでグロス染色して、大動脈を実体顕微鏡下で7倍にて観察して撮像した。
プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は48.1%であり、プラスミノーゲン投与群は39.4%である(図2)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークを減少させ、アテローム性動脈硬化の修復を促進することができることを示している。
実施例3は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図3B)マウスの大動脈洞における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図3A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症の大動脈洞における脂質沈着を改善できることを示している。
実施例4は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞損傷を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。大動脈洞の組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で40倍(図4A、4B)、200倍(図4C、4D)にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図4B、4D)マウスの大動脈洞における脂質プラーク沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図4A、4C)より明らかに少なく、しかも大動脈弁の融合程度では前者は後者より小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症における大動脈弁膜の損傷を改善できることを示している。
実施例5は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して大動脈を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図5B)の大動脈のオイルドレッドO染色の沈着(矢印に表記される)面積は溶媒PBS投与対照群(図5A)より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈脂質が血管内壁における沈着を明らかに低減し、大動脈の損傷を改善できることを示している。
実施例6は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロールを上昇させることに関するものである。
26週齢のdb/dbオスマウス20匹を取ってランダムに群分けをし、プラスミノーゲン投与群で11匹と溶媒PBS投与対照群で9匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。35日連続して注射した後にマウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)検出を行った。高密度リポタンパク質コレストロールの検出は、キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて該キットに記載する方法に従って行われた。
測定した結果、db/dbマウスに35日連続してヒトプラスミノーゲンを注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群(図6)より高く、しかもその差が統計学的に有意である。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われ[45,46]、高密度リポタンパク質はアテローム性動脈硬化症を防ぐ血漿リポタンパク質であり、冠状動脈性心臓病の保護因子であり、いわゆる「血管清掃者」である。この測定結果は、プラスミノーゲンが血清におけるHDL-Cレベルを高め、糖尿病マウスのアテローム性動脈硬化症改善に寄与できることを示している。
実施例7は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における低密度リポタンパク質コレストロールを低めることに関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取ってランダムに群分けをし、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で各5匹ずつとし、さらにdb/m3匹を取って正常対照群とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、正常対照群マウスに対して何の処置もしなかった。投薬開始当日を0日目とし、31日連続して注射した後、マウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)検出を行った。低密度リポタンパク質コレストロールの検出は、キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて該キットに記載する方法に従って行われた。
検出の結果、db/dbマウスにヒトプラスミノーゲンを31日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるLDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より低い(図7)。
低密度リポタンパク質はコレステロールを末梢組織細胞に運ぶリポタンパク質粒子であり、酸化低密度リポタンパク質に酸化されることができる。低密度リポタンパク質、特に酸化修飾された低密度リポタンパク質(OX-LDL)が過剰になると、それにより運ばれるコレステロールは動脈壁上に蓄積して動脈硬化を誘発してしまう。そのため、低密度リポタンパク質コレストロールは「悪いコレストロール」と呼ばれる[52]。この実験の結果は、プラスミノーゲンが血清における低密度リポタンパク質コレストロールの含有量を低減でき、アテローム性動脈硬化症の制御に寄与することを示している。
実施例8は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの体重に対する影響に関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投与した1日目、31日目にマウスの体重を測った。
その結果、プラスミノーゲンを30日投与した後、マウスの体重には明らかな変化はない(図8)。これは、投薬処理はApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの体重に対して明らかな影響がないことを示している。
実施例9は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血脂含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清の総コレステロール(T-CHO)、血清のトリグリセリド(TG)及び血清の低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)の含有量を検出した。
1.血清の総コレステロール含有量
検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて該検出キットに記載する方法に従って血清の総コレストロール含有量を検出した。
検出した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図9)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における総コレステロール含有量を低下させることができることを示している。
2.血清のトリグリセリド含有量
TG検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A110-1)を用いて該検出キットのプロトコルに従ってCOD-PAP法により血清のTG含有量を検出した。検出した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのTG濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図10)。
3.血清の低密度リポタンパク質コレストロール含有量
低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて該キットに記載する方法に従って血清の低密度リポタンパク質コレストロール含有量を検出した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図11)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清におけるLDL-C含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症を改善できることを示している。
上記結果によって、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清の総コレステロール、トリグリセリド及び低密度リポタンパク質コレストロール含有量を有意に低め、アテローム性動脈硬化症を改善できることは証明された。また、血清の総コレステロール、トリグリセリド及び低密度リポタンパク質コレストロール含有量を低めることによって、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のようなアテローム性動脈硬化症の合併症のリスクを低めることができることも証明された。
実施例10は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓の代償性肥大を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投与した31日目に体重を測ってマウスを殺処分し、心臓を取って重量を測って、心係数を計算した。心係数(%)=心臓重量/体重×100。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心係数は溶媒PBS投与対照群(図12)より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓損傷による心臓の代償性肥大を軽減できることを示している。
実施例11は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの肝臓における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して肝臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図13B)の肝臓における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図13A)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差は統計学的に有意である(図13C)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を改善できることを示している。
実施例12は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓損傷を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)を滴加して室温で1時間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。IgM抗体は、アポトーシス細胞及び壊死細胞の排除において重要な役割を果たし、損傷した組織器官の局所IgM抗体のレベルは、損傷の程度と正比例に相関している[50,51]。よって、検出した組織器官の局所IgM抗体のレベルは該組織器官の損傷状況を反映することができる。実験の結果、プラスミノーゲン投与群マウス(図14B)の心臓IgM陽性発現は、溶媒PBS投与対照群(図14A)より明らかに少ない。
これは、プラスミノーゲンがApoEマウスの心筋損傷を明らかに改善できることを示している。
実施例13は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓繊維化レベルを低減することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
シリウスレッド染色は、コラーゲンを長期的に染色することができ、病理学的切片の特殊染色法として、シリウスレッド染色はコラーゲン組織を特異的に表示することができる。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図15B)のコラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図15A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓組織におけるコラーゲンの沈着を低減し、心筋の繊維化を軽減できることを示している。
実施例14は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を低めることに関するものである。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われる[45,46]。心血管アテローム性動脈硬化症は心筋細胞の虚血損傷を引き起こし得る。オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、損傷の厳重さを反映することができる[49]。
26週齢のdb/dbオスマウス9匹を取ってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で4匹と溶媒PBS投与対照群で5匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、35日間投与した。36日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウス(図16B)の心室における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図16A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を減少させ、心室損傷の修復を促進することができることを示している。
実施例15は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞繊維化を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[31,32]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で40倍にて観察した。図17C、Dはそれぞれ、図17A、Bの黒枠領域の拡大図である。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図17B、17D)のコラーゲン沈着(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群(図17A、17C)より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞の繊維化レベルを軽減できることを示している。
実施例16は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの大動脈内壁の損傷に対する保護作用に関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、実験開始当日を0日として体重を測って、体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で各群5匹ずつとした。1日目からプラスミノーゲンまたはPBS(PBSはリン酸緩衝液(Phosphate Buffer Saline)であり、本文ではプラスミノーゲンの溶媒である)を投与し、連続して31日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。32日目にマウスを殺処分して大動脈を取り、10%中性フルマリン固定液において24時間固定を行った。固定後の組織サンプルをアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
HE染色の結果、溶媒PBS投与対照群の血管管壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に表記される)、中間層弾性膜の配列が乱れ、管壁は凹凸して不均一である(図18A);プラスミノーゲン投与群の中間層弾性膜の構造は規則し、波状を呈する(図18B)。これは、プラスミノーゲン注射が糖尿病による大動脈管内壁の損傷に対して一定の修復作用を有することを示している。
実施例17は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心筋損傷に対する保護作用に関するものである。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われる[45,46]。心血管アテローム性動脈硬化症は、心筋細胞の虚血損傷を引き起こし得る。心筋トロポニンI(Cardiac troponin I,CTNI)は、心筋損傷の重要な指標であり、その血清における濃度は、心筋損傷の程度を反映することができる[44]。本実験は、心筋トロポニンIを検出することでプラスミノーゲンが心筋損傷に対する修復作用を観察する。
24~25週齢のdb/dbオスマウス28匹を取り、実験開始当日を0日として体重を測って、体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で12匹とプラスミノーゲン投与群で16匹とした。群分けした次の日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与してその日を1日目とし、連続して31日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。32日目に眼球を摘出して採血し、3500r/分で15~20分間遠心分離して上澄み液を取り、心筋トロポニンIの濃度測定を行った。その結果、プラスミノーゲン投与群の心筋トロポニンIの濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(図19)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心血管アテローム性動脈硬化症による心筋損傷の修復を有意に促進できることを示している。
実施例18は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロール濃度を高めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。10日目、20日目にマウスを16時間禁食した後、11日目、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、血清の高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)を測定した。本文では、高密度リポタンパク質コレストロール含有量を、検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)に記載の方法でを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも両者は10日と20日投与した後のHDL-C濃度の差が統計学的に有意である(図20)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロール含有量を高め、高脂血症マウスの血脂障害を改善できることを示している。
プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症の形成リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投薬した後マウスを禁食し、16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定し、高密度リポタンパク質コレストロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)含有量を測定した。
アテローム性動脈硬化指数は、臨床上でアテローム性動脈硬化症を予測するための総合的指標であり、それが冠状動脈性心臓病のリスクを見積もる面における臨床的意義は、総コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質と低密度リポタンパク質のいずれか一つより大きいと考えられている[54]。アテローム性動脈硬化指数=(T-CHO-HDL-C)/HDL-C。
計算した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(図21)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させることができることを示している。
実施例20は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの心臓発症リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投与した後、マウスを16時間禁食し、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定した。高密度リポタンパク質コレストロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレストロール含有量を測定した。心臓リスク指数=T-CHO/HDL-C。
心臓リスク指数(cardiac risk index,CRI)は、血脂障害によって心臓疾患が誘発されるリスクを評価するためのものである[54]。
その結果、プラスミノーゲン投与群のCRIは溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、しかもその差が統計学的にとても有意である(図22)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓疾患の発症リスクを効果的に低めることができることを示している。
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Claims (5)
- 冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、
前記プラスミノーゲンは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、医薬組成物。 - 前記プラスミノーゲンは、対象の血清の総コレステロールレベルを低下させることと、対象の血清のトリグリセリドレベルを低下させることと、対象の血清の低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、対象の血清の高密度リポタンパク質レベルを上昇させることと、対象の動脈管壁における脂質沈着を低減することと、対象の肝臓の脂肪代謝を促進することと、対象の肝臓の脂肪輸送を促進することと、対象の肝臓における脂肪沈着を低減することとからなる群より選ばれる一つ以上によって冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療する、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記プラスミノーゲンは、対象に必要な一種以上のその他の薬物または治療方法と併用される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
- 前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、及びチロキシンからなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
- 前記プラスミノーゲンは、配列番号14に示されるプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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