図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
本実施の形態の田植え機は、本発明における移植機の例である。
はじめに、図1(a)から1(c)および2を参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
ここに、図1(a)は本発明における実施の形態の田植え機の模式的な平面図であり、図1(b)は本発明における実施の形態の田植え機の模式的な正面図であり、図1(c)は本発明における実施の形態の田植え機の模式的な左側面図であり、図2は本発明における実施の形態の田植え機の動力伝達系のブロック図である。
本実施の形態の田植え機は12条植えの乗用マット苗田植え機であり、植付け装置100は6個の植付けユニットを有し、各々の植付けユニットは左右一対の2個の植付け具を有する。
もちろん、田植え機は、12条植えの乗用マット苗田植え機に限らず、たとえば、10条植えの乗用ポット苗田植え機であってもよい。
最初に説明されるのは、本実施の形態の田植え機の基本的な構成および動作である。したがって、予備苗載せ台101および102などについては、後に詳細に説明する。
運転ユニット50は、エンジン20の上方に設けられた座席51を有する。
座席51の前方には、前輪31を操作するためのステアリングハンドル52が設けられている。そして、エンジン20の左右両側には、水平なステップフロア53が設けられている。さらに、ステアリングハンドル52の左右両側には、予備苗載せ台101および102が設けられている。
走行装置30は、前輪31および後輪32で車体10を走行させる装置である。
整地装置60は、整地ローター機構および整地フロート機構で圃場を整地する装置である。
車体10へは、つぎの植付け走行経路の目安となる直線のマーキングを圃場へ形成する線引きマーカーが収納可能に取付けられている。
植付け装置100は、植付け装置昇降装置を介して車体10の後側へ取付けられている。
メインフレームへ取付けられたエンジン20の回転動力は、HST(Hydro Static Transmission)機構である主変速機構41などへ伝達される。主変速機構41および副変速機構42において変速された回転動力は、走行装置30などにおいて利用される走行動力と、植付け装置100などにおいて利用される外部取出し動力と、に分離される。
走行動力の一部は左右の前輪ファイナルケースへ伝達されて左右一対の前輪31を駆動し、走行動力の残りが左右の後輪ギヤケース43へ伝達されて左右一対の後輪32を駆動する。そして、後輪ギヤケース43へ伝達された走行動力の一部は、整地装置60および施肥装置70へ伝達される。
つぎに、図1(a)から1(c)を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
予備苗載せ台支持フレーム201は、苗を載せる3個の予備苗載せ台101を支持するフレームである。予備苗載せ台支持フレーム202は、苗を載せる3個の予備苗載せ台102を支持するフレームである。
車体10の左側には3個の予備苗載せ台101が設けられており、車体10の右側には3個の予備苗載せ台102が設けられている。
予備苗載せ台101および102はいわゆる片持ち状態で予備苗載せ台支持フレーム201および202によりそれぞれ回動可能に支持されており、後述される予備苗載せ台後側位置状態において、搭乗作業者は予備苗載せ台101および102を鉛直面内における矢印の向きに後方へ向かって傾けることができる。
図3(a)に示されているように、4個の予備苗載せ台101および4個の予備苗載せ台102が設けられていてもよい。
ここに、図3(a)は、本発明における変形例の実施の形態の田植え機の予備苗載せ台101近傍の模式的な正面図である。
予備苗載せ台101および102は、左右対称的に設けられていてもよいし、左右非対称的に設けられていてもよい。予備苗載せ台移動による配列姿勢の切換えで、4個の予備苗載せ台101は、中段の2個の予備苗載せ台101の内の何れか一方の水平高さレベル、または中段の2個の予備苗載せ台101の間の水平高さレベルに移動する。
2個の予備苗載せ台101および3個の予備苗載せ台102が、設けられていてもよい。
およそ2から4個の予備苗載せ台101および102が、いわゆる4条田植え機仕様または7条田植え機仕様のようなさまざまな田植え機仕様に応じて、左右対称的にまたは左右非対称的に組合わせられてもよい。
3個の予備苗載せ台101が上下方向に配列される予備苗載せ台重複配列姿勢と、3個の予備苗載せ台101が車体左右方向に配列される予備苗載せ台展開配列姿勢と、の間で、予備苗載せ台101の配列姿勢が切換え可能である。3個の予備苗載せ台102が上下方向に配列される予備苗載せ台重複配列姿勢と、3個の予備苗載せ台102が車体左右方向に配列される予備苗載せ台展開配列姿勢と、の間で、予備苗載せ台102の配列姿勢が切換え可能である。
鉛直面内における矢印の向きの予備苗載せ台移動による配列姿勢の切換えで、車体前側に位置し上下方向に配列される3個の予備苗載せ台101および3個の予備苗載せ台102の内、上段および下段の予備苗載せ台101および102は中段の予備苗載せ台101および102の左右両側にそれぞれ移動する。上段の予備苗載せ台101は、中段の予備苗載せ台101の左側へ移動するが、中段の予備苗載せ台101の右側へ移動してもよい。
車体前側の予備苗載せ台101および102が車体前後方向にではなく車体左右方向に展開されるので、車体前側の畦からの苗補給は容易であり、作業性が向上する。
たとえば、車体前側に位置し上下方向に配列される3個の予備苗載せ台101を斜めに繋ぐ中央の長いリンク、上段および中段の予備苗載せ台101を斜めに繋ぐ短いリンク、および下段および中段の予備苗載せ台101を斜めに繋ぐ短いリンクから構成された平行リンクが、利用される。予備苗載せ台101の配列姿勢にかかわらず、予備苗載せ台101の左右両側のみならず前側も空間的に開放されるように、このような平行リンクは予備苗載せ台101の後方に設けられており、車体前側の畦からの苗補給は容易である。
3個の予備苗載せ台101が車体前側に位置する予備苗載せ台前側位置状態と、3個の予備苗載せ台101が車体後側に位置する予備苗載せ台後側位置状態と、の間で、予備苗載せ台101の位置状態が切換え可能である。3個の予備苗載せ台102が車体前側に位置する予備苗載せ台前側位置状態と、3個の予備苗載せ台102が車体後側に位置する予備苗載せ台後側位置状態と、の間で、予備苗載せ台102の位置状態が切換え可能である。
予備苗載せ台101および102を支持する予備苗載せ台支持ユニットとしての予備苗載せ台支持フレーム201および202の回動支柱は、車体前後方向の走行部中央近傍に設けられている。水平面内における矢印の向きの予備苗載せ台回動による位置状態の切換えで、180度の予備苗載せ台支持ユニット回動が実現される。
予備苗載せ台支持フレーム201の回動支柱の形状は側面視において逆L字形状であり、鉛直方向に上方へ向かって延びるパイプなどが中段の予備苗載せ台101の水平高さレベルで水平方向に曲げられている。予備苗載せ台101と繋がる水平パイプ部分は車体乗降時などに握りまたは手摺りとして機能し、安全性が向上する。鉛直パイプ部分の根本近傍は180度の予備苗載せ台支持ユニット回動のための回動支点を与え、作業者は水平パイプ部分をしっかり把持して矢印の向きの回動力を容易に印加することができる。
図3(b)および(c)に示されているように、補助的なステップ部材201bが予備苗載せ台支持フレーム201および202の水平パイプ部分が延びる向きとは反対の向きに延びるように鉛直パイプ部分の根本近傍へ取付けられている。
ここに、図3(b)および(c)は、本発明における実施の形態の田植え機の予備苗載せ台支持フレーム201近傍の模式的な左側面図(その一および二)である。
予備苗載せ台前側位置状態においては、搭乗作業者は予備苗載せ台101の後方へ向かって飛出すステップ部材201bを踏んで容易に乗降することができ、予備苗載せ台後側位置状態においては、搭乗作業者は予備苗載せ台101の前方へ向かって飛出すステップ部材201bを踏んで容易に乗降することができるので、予備苗載せ台102の位置状態が切換えられても、水平パイプ部分は車体乗降を妨げない。
苗載せ装置80は、植付けのとき苗を載せて車体左右方向に往復移動させられる、車体後側に支持された装置である。
予備苗載せ台後側位置状態において、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台101および102は、苗タンクとも呼ばれる苗載せ装置80の上方に位置するので、搭乗作業者は座席51の周りで移動しながら苗載せ装置80まで重いマット苗の苗を運ぶ必要はない。
予備苗載せ台後側位置状態において、苗は、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台101から苗載せ装置80へスライド移動で積込み可能である。予備苗載せ台後側位置状態において、苗は、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台102から苗載せ装置80へスライド移動で積込み可能である。
予備苗載せ台後側位置状態において、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台101の高さは、苗載せ装置80の高さと実質的に同じである。予備苗載せ台後側位置状態において、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台102の高さは、苗載せ装置80の高さと実質的に同じである。
もちろん、このような苗載せ装置80の高さは、植付け装置100が上昇されて苗載せ装置80への苗補給が行われるのであれば植付け装置100が上昇されたときの高さであり、植付け装置100が下降されて苗載せ装置80への苗補給が行われるのであれば植付け装置100が下降されたときの高さであることが望ましい。
予備苗載せ台101および102の高さは苗載せ装置80の高さとほぼ同じであるまたはややより高いので、植付け装置手前位置でのスムーズな苗載せ装置80への苗補給は容易であり、作業性が向上する。
苗枠とも呼ばれる予備苗載せ台101のサイズは、苗箱のサイズ、すなわち、マット苗のサイズとほぼ同じである。
苗箱から取出された苗のみが予備苗載せ台101へ載せられ、苗箱そのものは予備苗載せ台101へ載せられる必要はないので、搭乗作業者は苗載せ装置80への苗補給のとき苗箱から苗取り板で苗を掬う必要はなく、空の苗箱および苗取り板を置くための車体10のスペースは不要であり、作業性が向上する。
予備苗載せ台101の苗枠壁は三方向にのみ設けられており、予備苗載せ台101の苗枠壁なし側は、短辺側である、開放された残りの一方向の側である。車体前側の畦からの苗補給のみならず、苗載せ装置80への苗補給も容易であるように、そのような苗枠壁なし側は予備苗載せ台前側位置状態における前側、すなわち、予備苗載せ台後側位置状態における後側であることが望ましい。
上述された予備苗載せ台支持フレーム201および202の回動支柱が直立している回動支柱直立構成が採用されてもよいし、回動支柱が前方または後方へ向かって傾斜している回動支柱傾斜構成が採用されてもよい。
回動支柱直立構成が採用される場合、苗枠壁なし側は予備苗載せ台後側位置状態において最も高い側であって予備苗載せ台後側位置状態においても最も高い側であることが、望ましい。車体前側の畦からの苗補給のとき重力の影響で自然に滑落されて予備苗載せ台支持フレーム201へ載せられた苗は、意図せず滑落ちにくい。
回動支柱傾斜構成が採用される場合、苗枠壁なし側は予備苗載せ台後側位置状態において最も高い側であって予備苗載せ台後側位置状態において最も低い側であることが、望ましい。車体前側の畦からの苗補給のとき重力の影響で自然に滑落されて予備苗載せ台支持フレーム201へ載せられた苗は、苗載せ装置80への苗補給のときも重力の影響で自然に滑落される。
いわゆる6条田植え機仕様が採用される構成においては、左右対称的に設けられた3個の予備苗載せ台101および3個の予備苗載せ台102が予備苗載せ台移動による配列姿勢の切換えで苗載せ装置80の車体左右方向の両端の間に隙間なく位置するので、植付け装置手前位置でのスムーズな苗載せ装置80への苗補給は容易であり、作業性が向上する。
図3(d)に示されているように、苗枠スライド構成が採用されてもよい。
ここに、図3(d)は、本発明における変形例の実施の形態の田植え機の予備苗載せ台101近傍の模式的な左側面図である。
苗枠ローラー101cは苗枠レール201cへスライド可能に取付けられており、苗を載せる苗枠本体101aは苗載せ装置80へ十分に接近することができる。予備苗載せ台後側位置状態において、搭乗作業者は、苗枠把手101bをしっかり把持し、苗枠ローラー101cを苗枠レール201cの後端へ確実に当接させ、苗が鉛直面内における矢印の向きに滑落されるように苗枠本体101aを後方へ向かって傾ける。苗枠ローラー101cは苗枠本体101aを後方へ向かって安定的に傾けるための支点部材としても機能するので、植付け装置手前位置でのスムーズな苗載せ装置80への苗補給は容易であり、作業性が向上する。
予備苗載せ台後側位置状態において、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台101の位置は、苗載せ装置80の位置に対して車体左右方向に調節可能である。予備苗載せ台後側位置状態において、予備苗載せ台展開配列姿勢における予備苗載せ台102の位置は、苗載せ装置80の位置に対して車体左右方向に調節可能である。
図3(e)および(f)に示されているように、隣接する2個の予備苗載せ台101の間の間隔および隣接する2個の予備苗載せ台102の間の間隔が苗載せ装置80の苗タンク条仕切りフェンス間隔とほぼ同じであるのみならず、予備苗載せ台101および102は水平面内における矢印の向きの苗タンク横移動幅に応じて車体左右方向に移動可能である。
ここに、図3(e)および(f)は、本発明における実施の形態の田植え機の予備苗載せ台102近傍の模式的な平面図(その一および二)である。
3個の予備苗載せ台102が全体的に車体左右方向に移動可能であるように、予備苗載せ台102のユニットは車体左右方向の予備苗載せ台支持レール202aなどを介して予備苗載せ台支持フレーム202の支柱により支持されている。苗載せ装置80が停止する苗タンク横位置は一定でないが、予備苗載せ台102の水平位置が苗載せ装置80の水平位置に対して調節されるので、植付け装置手前位置でのスムーズな苗載せ装置80への苗補給は容易であり、作業性が向上する。
予備苗載せ台前側位置状態において、予備苗載せ台重複配列姿勢における最下側の予備苗載せ台101は、予備苗載せ台重複配列姿勢から予備苗載せ台展開配列姿勢への切換えのとき車体内側へ向かって移動する。予備苗載せ台前側位置状態において、予備苗載せ台重複配列姿勢における最下側の予備苗載せ台102は、予備苗載せ台重複配列姿勢から予備苗載せ台展開配列姿勢への切換えのとき車体内側へ向かって移動する。
車体前側に位置し上下方向に配列される3個の予備苗載せ台101が配列姿勢の切換えの失念のためにそのまま回動され、予備苗載せ台101の位置状態が予備苗載せ台前側位置状態から予備苗載せ台後側位置状態へ切換えられても、予備苗載せ台101は破損しにくい。なぜならば、回動されていく最下側の予備苗載せ台101は、施肥装置70または手摺りのような車体10の一部などと干渉しても、車体後側近傍で空間的に開放された車体外側へ向かって移動するからである。配列姿勢の切換えが失念されても、配列姿勢が予備苗載せ台重複配列姿勢から予備苗載せ台展開配列姿勢へ途中で切換えられながら、3個の予備苗載せ台101は面倒な回動戻し操作なしにそのまま回動可能であり、作業性が向上する。
予備苗載せ台配列姿勢ストッパー211は、予備苗載せ台101の配列姿勢を規制するストッパーである。予備苗載せ台配列姿勢ストッパー212は、予備苗載せ台102の配列姿勢を規制するストッパーである。
予備苗載せ台配列姿勢ストッパー211および212は予備苗載せ台101および102の配列姿勢の切換えにともなう予備苗載せ台移動ズレをそれぞれ抑制するので、予備苗載せ台重複配列姿勢および予備苗載せ台展開配列姿勢は安定的に実現される。
予備苗載せ台位置状態ストッパー221は、予備苗載せ台101の位置状態を規制するストッパーである。予備苗載せ台位置状態ストッパー222は、予備苗載せ台102の位置状態を規制するストッパーである。
予備苗載せ台位置状態ストッパー221および222は予備苗載せ台101および102の位置状態の切換えにともなう予備苗載せ台回動ズレをそれぞれ抑制するので、予備苗載せ台前側位置状態および予備苗載せ台後側位置状態は安定的に実現される。
図3(g)に示されているように、予備苗載せ台前側位置状態における予備苗載せ台101および102は、それぞれ後方に位置する予備苗載せ台支持フレーム201および202の回動支点の周りに項垂れるように回動可能である。
ここに、図3(g)は、本発明における実施の形態の田植え機の予備苗載せ台101近傍の模式的な左側面図である。
予備苗載せ台重複配列姿勢における3個の予備苗載せ台101は、前側が回動支点のほぼ真下に位置するように、回動されて垂下がる。予備苗載せ台101の占有スペースは回動で抑制されるので、車体10が田植え作業終了後の格納時などにコンパクト化される。
(A1)図4(a)から4(c)を主として参照しながら、本発明における変形例の実施の形態の田植え機の施肥装置70について具体的に説明する。
ここに、図4(a)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な平面図(その一)であり、図4(b)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な正面図(その一)であり、図4(c)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な左側面図(その一)である。
施肥装置70は、走行部としてのエンジン20を囲むように、上面視において略U字形状に、すなわち、略コの字形状に形成される。施肥カプセル部510の下流側は、車体10の後方の後輪32の上方に配置される。
施肥カプセル部510の上流側の左右の施肥ホッパー部520は、それぞれ車体左右方向の両端から前方へ向かって延びるように独立的に設けられている。
左右の肥料補給口521は、長手方向が車体前後方向である、左右の施肥ホッパー部520の前端にそれぞれ設けられているので、車体前側の畦からの肥料補給は容易であり、作業性が向上する。搭乗作業者は座席51の周りで移動しながら施肥装置70まで重い肥料袋の肥料を運ぶ必要はないのみならず、施肥補給回数の低減などにつながる、大きい容積および大きい断面積の施肥ホッパー構成が実現される。
前方へ向かって延びる上述された構成は実現されなければならないが、施肥カプセル部510近傍における施肥ホッパー部520の高さHはあまり大きくないことが望ましい。なぜならば、施肥ホッパー部520により妨げられないので、植付け装置手前位置でのスムーズな苗載せ装置80への苗補給は容易であるからである。施肥ホッパー部520の高さHがあまり大きくなくても、各々の植付け条のための容積は大きい断面積の施肥ホッパー構成により確保される。施肥ホッパー部520の高さHが小さければ、施肥カプセル部510の上方の肥料は積重なりによる肥料自重で圧縮されにくいので、施肥ホッパー部520に収納された状態における肥料が詰まりにくい。
長手方向が車体前後方向である、左右の施肥ホッパー部520は、傾斜角度θで後方へ向かって傾いている。施肥ホッパー部520の前側の高さは施肥ホッパー部520の後側の高さより大きいので、肥料補給口521から補給された肥料は重力の影響で自然に滑落されて施肥カプセル部510へ供給される。
施肥カプセル部510近傍における施肥ホッパー部520の車体左右方向の幅はほぼ3本の植付け条の幅の和であるが、施肥ホッパー部520の前方へ向かって延びる部分の車体左右方向の幅はほぼ1本の植付け条の幅である。長さがほぼ全長の三分の一である、施肥ホッパー部520の後側の部分の内部には、仕切り部522が設けられている。仕切り部522は左右端1条分の幅を条数分に等分するところから後方の条数分の幅に斜めにつないでいくよう構成する。
これにより、機体前方の肥料補給口521は両端の1条分であっても、全ての条の施肥カプセル部510の上部にまんべんなく肥料を流すことが出来るようになる。また、仕切り部522を後方1/3程度までにすることで、それより後方が一杯になった条には流れず他の条に流すことが出来、全体の施肥ホッパーの容積の半分以下の容積で全ての条に均等に入れることが出来るようになり、少ない肥料でも作業性が良い構成とすることが出来る。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の施肥ホッパー部520近傍の模式的な平面図(その一)である図5(a)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパー部520はいくつかに分割し、取り外しが可能になるように構成する。
これにより、機械の格納時などは、この部分を取り外し、機械の幅、高さを小さくして収納することが出来る。また、田植え作業時も作業環境に応じて、苗補給やオペレータの動くスペースを優先したいような場合には、この部分を外したまま施肥ホッパーを小さくして作業を行うことが出来、多種多様な環境にも適用出来るようになる。
図5(a)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーを分割組立式にした際、それぞれのはめ込み部は前方側が後方側の内側にはまり込むように開き角度αで構成する。
これにより、肥料を前方から流し込んだ際に、つなぎ部分に引っ掛かることなくスムーズに後方へ流すことが出来るようになる。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の施肥ホッパー部520近傍の模式的な平面図(その二)である図5(b)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーを分割組立式した際、分割した各ホッパーは上下左右ともに開き角度βでハの字型の形状にし、広い開口側を機体前方に、狭い開口側を機体後方にするように向けて並べて組み付ける。
これにより、下面に加えて側面にも斜めの傾斜が付き、後方へ肥料が流れやすくすることが出来る。また、前方にいくにしたがってホッパーの容積を小さくすることなく、常に大きな容積を確保出来る構成となる。
図5(b)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーを分割組立式した際、分割した各ホッパーの形状を同一のものにし、機体前端まででなく、さらに前方に足して組み付け、さらに長くすることが出来る構成にする。
これにより、作業環境に応じて、さらに伸ばしてあぜに肥料補給口521を近づけたりすることが出来、また、容積を増やすことにもなり、多種多用な使い方が出来るようになる(OPTと呼ばれるオプション仕様などで対応することが出来る)。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の肥料袋リフター530の模式的な斜視図である図5(c)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーの前端の肥料補給口521が少し高い位置になる為、肥料袋535を載せて持ち上げて傾けることが出来る肥料袋リフター530を構成する。肥料補給口521の下部に設けたステーに肥料袋リフター530のフックを引っ掛けて、そこを回動支点にして、上を開けた肥料袋535を肥料補給口521の前方の高さにまで傾けて、そのまま肥料を流し入れる。
これにより、少し高い位置になってしまう肥料補給口521まで、簡単に楽に肥料袋535を持ち上げることが出来、さらにそのまま肥料を流し入れることが出来る為、作業性が向上し、作業労力を軽減できる。あぜからでも作業が出来、機械に載ることなく肥料補給が可能になる。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の肥料袋リフター530近傍の模式的な正面図である図5(d)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、肥料補給口521の前方に設けた肥料袋リフター530は、全体は丸棒や丸パイプにて肥料袋535を載せる部分とステーに引っ掛ける部分のみを簡単に構成し、肥料袋535を開いて載せた際の上方部分と傾けて前後に長いホッパー前端の肥料補給口521とをつなぐ部分に肥料を受けて流し入れることが出来るトレイ531を取り付けておく。トレイ531の形状は肥料袋535を載せたら1/3程度がトレイ531に掛かり、幅は肥料袋535よりも少し広げておき、先は傾けたら肥料補給口521に掛かり重なる配置に、幅は肥料補給口521より少し狭くしておく。加えて、トレイ531の両端にはフェンスを設けておく。
これにより、肥料袋535を載せた肥料袋リフター530を傾けた際に、スムーズにこぼすことなく肥料補給口521に肥料を流し入れることが出来る構成となる。また、肥料を流し入れる部分のみにしっかりとしたトレイ531を設け、その他は簡単な骨組のみの構成とすることで、安価な構成となり、最低限のコストでの構成となる。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の肥料袋リフター530近傍の模式的な左側面図(その一および二)である図5(e)および5(f)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、肥料補給口521の前方に設けた肥料袋リフター530の下部奥に握り部532を設ける。握り部532は肥料袋535を載せてもたれかけさせる面の延長線上に設ける。
これにより、持ち上げやすく、傾けやすくなる。また、下部奥に設けることで、上に上げた際に握り部532が高い位置にならず動かしやすい。さらに、鉛直面の延長線上に設けることで、肥料袋535を保持する丸パイプの構成の中に設けることが出来、余分な部品を構成する必要が無く、コストを抑えられる。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の補助ステップ551近傍の模式的な正面図である図5(g)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、肥料補給口521の前方に設けた肥料袋リフター530を支えるステー下方、ステーとボンネットの間に補助ステップ551を設ける。
これにより、機体前方からオペレータが乗り降りする際、肥料袋リフター530のステーが手摺り552の補強部材または代替部材になり、補助ステップ551を設けておくことで乗り降りがしやすくなる。本構成において、機体側方がふさがれてしまい、側方から機械への乗り降りが出来なくても、前方からの乗り降りが便利であれば問題無い。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機のフロントガード553およびバンパー554近傍の模式的な左側面図である図5(h)のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、肥料補給口521の前方に設けた肥料袋リフター530を支えるステーの下方形状を、フロントステップからその下にある構成部品を囲んでいくような形状にし、構成する。
これにより、肥料袋リフター530を支えるステーの下方が、機体前方のフロントガード553及びバンパー554の補強部材または代替部材となり、余分なバンパー554を設ける必要が無くなり、コストを抑えることが出来る。また、従来のバンパー554よりも下方までステーによりガード出来る為、より効果的になる。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の施肥ホッパー部520近傍の模式的な左側面図である図6のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーの後方付近に、これより前方の施肥ホッパーを上に持ち上げることが出来るように、曲がる支点を設ける。曲がる構成はどんなものでも良いが、中の肥料が漏れることが無いように、例えば蛇腹形状を設けたりする。加えて、左右にも動くとより効果的である。
これにより、肥料の後方への流れが悪いような場合は少し傾きを増やすことが出来、使用する肥料に適応させることが出来る。また、施肥ホッパーの周辺や下をオペレータが動くのに邪魔な時や機体側方からオペレータが乗り降りする際などにも、左右方向やさらに上に持ちあげたりすることで、作業性が向上する。
図6のように、走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、両端の前後に長い施肥ホッパーの後方付近に、これより前方の施肥ホッパーを下に下げることが出来るように、曲がる支点を設ける。曲がる構成はどんなものでも良いが、中の肥料が漏れることが無いように、例えば蛇腹形状を設けたりする。加えて、左右にも動くとより効果的である。
これにより、残量肥料排出時に前方の施肥ホッパーに残っている分については、施肥ホッパーを下に下げることで前方から排出が可能になり、作業性が向上する。また、肥料を入れたまま機械を移動させる場合などは、肥料補給口521にフタをして前方を下げておくことで、施肥カプセル部510の上部にある肥料を圧縮しにくくなり、次の作業時に詰まりにくくなり、作業性が向上する。さらに、機械の格納時、収納時は下げておけば機体が小さくなる。
(A2)図7(a)から7(c)を主として参照しながら、本発明における変形例の実施の形態の田植え機の施肥装置70についてより具体的に説明する。
ここに、図7(a)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な平面図(その二)であり、図7(b)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な正面図(その二)であり、図7(c)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な左側面図(その二)である。
走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、施肥ホッパー上面を補助苗枠及び補助苗レールになるよう構成する。その為に、両端の前後に長い施肥ホッパー部520から後方の施肥カプセル部510の上部のホッパーまで、側面視で1つの斜めの面になるよう構成する。加えて、各端部にはフェンス540を設けて、補助苗を保持及びガイドさせるよう構成する。
これにより、この施肥ホッパー構成にて補助苗レールまでを兼ねることが出来、あぜから肥料に加えて補助苗も補給出来、作業性が向上すると共に、1つの構成で2つの仕様を兼ね備えた効果的な装備となり、コスト面でも有利になる。
走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、施肥ホッパー上面を補助苗枠及び補助苗レールになるよう構成した際、後方では施肥ホッパー上を横に補助苗が移動出来るように、前後に長い施肥ホッパーの両端のフェンス540を後方苗1枚分は機体内側のフェンス540を無くすように構成する。加えて、後方施肥ホッパー後端にもフェンス540を設け、座席シート後方では施肥ホッパーに長さが無い為、施肥ホッパー上面に補助苗を受ける為の受け面を追加しておく。
これにより、後方では施肥ホッパー上を補助苗が横に移動することが出来、苗補給が必要な条の植付部苗タンク手前まで楽に苗を運ぶことが出来、作業労力軽減につながる。
走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、施肥ホッパー上面を補助苗枠及び補助苗レールになるよう構成した際、前後に長い施肥ホッパーの両端及び後方施肥ホッパー後端にフェンス540を設けるが、左右に分割された施肥ホッパー中央部にはフェンス540を設けない。
これにより、後方の施肥ホッパー上を補助苗は左右に分割された場所も渡り動くことが出来、左右の補助苗の使用にかたよりが発生したような場合でも、左右両方の補助苗を全ての条の植付部苗タンク手前まで移動させることが出来、作業性が向上する。
走行部をコの字に囲むように配置する施肥ホッパー構成において、施肥ホッパー上面を補助苗枠及び補助苗レールになるよう構成した際、補助苗は前後に長い施肥ホッパー部520に縦に3枚、後方の施肥ホッパー部520に横に3枚搭載可能にし、片側6枚、両側で12枚搭載可能にする。この際、前後に長い施肥ホッパーの前端は多少補助苗が飛び出して搭載されても構わないものとする。
これにより、6条田植機においては、条数の倍の枚数の補助苗を搭載出来、作業効率が向上する。8条田植機においても十分な搭載枚数である(8条田植機では機体幅が広くなる為、施肥ホッパーの長さ及び面積もさらに大きくなり、搭載枚数をさらに増やす構成も可能であると考えられる)。
(B1)図8(a)から8(c)を主として参照しながら、本発明における変形例の実施の形態の田植え機のステップフロア53について具体的に説明する。
ここに、図8(a)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な平面図(その三)であり、図8(b)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な正面図(その三)であり、図8(c)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な左側面図(その三)である。
乗用田植機のステップフロア53において、前方から後方までフラットな同じ高さのフルフラットステップフロアにする。その際、エンジン20の上部と左右の後輪32の上部のみを上にふくらますようにする。
従来はステップフロア後方が高く、植付部を上昇させてもオペレータの位置はさらに高い為、苗補給時にバランスを崩しやすかったが、これにより、オペレータが後方へ行っても高い位置にならない為、植付部苗タンクへの苗補給がしやすくなり、作業性が向上する。補助者が植付作業中に植付部が下降しているときに苗補給をする場面においては、より作業がしやすくなり効果的である。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロアにする構成において、ふくらました左右の後輪32の上部の外側部分にも片足を置けるだけの幅のフラットな高さに合わせたステップ部610をステップ後方分割ライン611で設ける。
これにより、植付部苗タンク両端の条に苗補給をする場合でも、この部分に片足を置くことが出来、一歩外側に踏み出しても高くならない位置で苗補給が出来る為、作業性が向上する。
(B2)図9(a)から9(c)を主として参照しながら、本発明における変形例の実施の形態の田植え機のステップフロア53についてより具体的に説明する。
ここに、図9(a)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な平面図(その四)であり、図9(b)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な正面図(その四)であり、図9(c)は本発明における変形例の実施の形態の田植え機の模式的な左側面図(その四)である。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロア53にする構成において、施肥装置70のミッド施肥機はフラットステップフロアを基準の高さにした従来よりも一段低い高さに配置する。
従来は施肥機の位置が高く、重い肥料を高く持ち上げて補給する必要があり、重労働であったが、これにより、施肥機上端が低くなる為、苗補給、肥料補給がしやすくなる。また、施肥機の重心が低くなり、機体の前後バランスの改善にもつながり、湿田性向上の効果もある(加えて、苗や肥料を後方まで搬送し補給する苗レールや肥料アームのようなものが構成しやすくなり、新たなアイデアにつながりやすくなる)。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロア53にする構成において、ミッド施肥機を従来よりも一段低い高さに配置する際、施肥カプセル部510の施肥カプセルは後輪32近傍(図9(b)においては理解しやすく斜線の矩形領域で示されている)を避けるように後輪32をまたいで配置する(8条6条では、後輪32の間に4ケ、外側に各2ケまたは1ケ、7条5条では、後輪32の間に3ケ、外側に各2ケまたは1ケ配置する)。この際、後輪32の上部はカバー620で覆い、施肥カプセルなどに泥が掛らないようにする。
本発明における変形例の実施の形態の田植え機の駆動シャフト630近傍の模式的な正面図である図10(a)、および本発明における変形例の実施の形態の田植え機の駆動シャフト630近傍の模式的な左側面図である図10(b)のように、加えて、他の施肥機構成部品も後輪32を避けてホッパーや駆動シャフト630などを配置構成する。
これにより、低いステップフロアにて生まれた空間を有効に活用した構成となり、施肥機も低く配置構成することが出来る。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロア53にする構成において、ミッド施肥機を従来よりも一段低い高さに配置する際、エンジン20の後方部分(図9(a)および9(c)においては理解しやすく太線で示されている)はカバー620を無くし、開放しておく。
従来はエンジン20よりも施肥機が高い位置にあった為、熱気を吸い出すダクトなどを構成していたが、これにより、エンジン20の真後ろに配置された低い位置にある施肥カプセルやエアチャンバー、ロートなどに、作業時直接エンジン20の熱い温風が流れていき、かかることで、肥料を湿らせない効果を生み出すことが出来る。熱気を吸い出す為のダクトなどを構成する必要が無くなり、コスト面でも有利になる。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロア53にする構成において、ミッド施肥機を従来よりも一段低い高さに配置する際、ステップフロアは施肥機下方にまで設ける。外す際は、ステップフロアを分割組み合わせ式にしておき、施肥機下方は前にスライドさせて抜き取れるように構成しておく。その為に後輪32の上部のふくらましたステップフロアの前方には、施肥機部品を設けないようにする。
これにより、低い高さに配置した施肥機で後輪32や圃場面に近くなっても、跳ねた泥をカバーすることが出来、施肥機に泥がかかりにくくなる。また、エンジン20や走行フレームに施肥機が近い為、肥料補給時などに上からこぼした肥料を落ちにくくし、直接かかるのを防ぐことが出来、錆びやすくなるのを防止する。
前方から後方までフラットな同じ高さのステップフロア53にする構成において、ステップフロア後方をいくつかに分割する。まず、後輪32をかぶせる部分で左右それぞれ分割独立させ、その間のエンジン20の後方部分も分割独立させる。(エンジン20より前方のステップフロアは従来通りでも何でもよいものとする)。
これにより、エンジン20より前方のステップフロアを外せば、施肥機下方にまで設けたステップフロアを容易に外すことが出来、作業性が向上する。また、後輪32の部分のみを分割しておくことで、ここを外し、後輪32を外してのメンテナンスがしやすくなり、メンテナンス性が向上する。