本発明の実施形態を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。ミシン1A、1Bにおける左右方向、前後方向、上下方向は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
図1を参照し、ミシン1Aの構造を説明する。ミシン1Aは縫針15に対し、X軸方向とY軸方向に被縫製物19を送ることで、360°方向への縫製が可能である。被縫製物19は例えば布、革等である。ミシン1Aはベッド部2、脚柱部3、アーム部4、布送り装置5、糸調子装置60、制御部10(図7参照)を備える。ベッド部2はミシンテーブル6上に設置する。ベッド部2は上面前側に作業台7を備える。作業台7は略中央に針板11を備える。針板11は略中央に針穴12を備える。ベッド部2は内部に下軸(図示略)と半回転垂直釜151(図1では図示略、図6参照)を備える。半回転垂直釜151は針板11下方に配置し、下軸は前後方向に延びる。下軸前端部は半回転垂直釜151と連結する。半回転垂直釜151は下糸を巻いたボビンを収容し下軸を中心に回動する。
脚柱部3はベッド部2後方部から上方に立設する。アーム部4は脚柱部3上部から前方に延び、主軸を内部で回転可能に支持する。主軸は前後方向に延び、アーム部4内部の後側に設けた主モータ17(図7参照)と連結する。主軸は、脚柱部3内部で上下方向に延びる連稈を介して下軸に連結する。故に主モータ17が駆動すると、半回転垂直釜151と主軸は互いに同期して回転する。ミシンテーブル6は上面右側に操作パネル18を立設する。操作パネル18は例えばタッチパネルであり、表示部181と入力部182を備える。表示部181は各種情報を表示し、入力部182は各種情報の入力を受付ける。
アーム部4は前端部に先端部8を備える。先端部8の下端部は針板11上面と対向する。先端部8は針棒14を上下動可能に支持する。針棒14は上下方向に延び、先端部8から下方に突出する。針棒14は下端に縫針15を装着する。縫針15は上糸を通して保持する目孔(図示略)を有する。針棒14は主軸と連結する。針棒14が主軸の回転で上下動すると、縫針15は上下動して針穴12を通過する。上下動する縫針15は半回転垂直釜151と協働して被縫製物19に縫目を形成する。
布送り装置5は、Xモータ21(図7参照)、Xレール(図示略)、X移動板(図示略)、Yレール(図示略)、Y移動板(図示略)、布保持体22、支持部23、軸部24、Yモータ25(図7参照)等を備える。Xモータ21はベッド部2内部後側に設ける。Xレールはベッド部2内部且つXモータ21前方でX軸方向に延びる。X移動板はXレールに左右動可能に連結し且つXモータ21と連結する。X移動板はXモータ21の駆動力でXレールに沿って左右動する。YレールはX移動板上面に固定し、Y軸方向に延びる。YレールはX移動板と一体的に左右動する。Y移動板はYレールに対して前後動可能に連結する。布保持体22はY移動板上面に固定する。布保持体22はX移動板とY移動板と一体的に左右動し、Y移動板と一体的に前後方向に移動する。故に布保持体22は水平方向に移動可能である。支持部23は布保持体22の後述の押え腕32後部に連結する。支持部23は布保持体22と共に左右動可能である。軸部24は支持部23から脚柱部3内部まで後方に延び、且つ前後動可能な軸部材である。軸部24前端部はスライダを介して支持部23に接続する。Yモータ25は脚柱部3内部に設け、軸部24に連結する。軸部24がYモータ25の駆動力で前後動すると、支持部23、布保持体22、Y移動板は一体的に前後動する。
布保持体22は、送り板31、押え腕32、一対の連結部33、押え枠34、一対のエアシリンダ35等を備える。送り板31はY移動板上面から前方に延び、前端部に挟み枠36を備える。挟み枠36は平面視矩形枠状であり、被縫製物19を支持可能である。押え腕32は送り板31後端部から上側に延び、更に前側へ屈曲して延びる。押え腕32は送り板31後端をY移動板上面との間で挟んで固定する。押え腕32の先端部32Aは正面視略矩形状である。一対の連結部33は先端部32Aにて左右方向に並び、上下動可能である。一対の連結部33は押え枠34を支持する。押え枠34は平面視略矩形枠状であり、挟み枠36と上下方向に対向する。一対のエアシリンダ35は押え腕32の左部と右部に設ける。一対のエアシリンダ35は夫々一対の連結部33と連結する。一対のエアシリンダ35が駆動して一対の連結部33を上下動すると、押え枠34は挟持位置と離隔位置の間を上下動する。挟持位置は、挟み枠36で支持した被縫製物19を上方から押える位置である。離隔位置は、被縫製物19から上方に離間する位置である。上記構成を備えるミシン1Aは縫針15に対し、被縫製物を保持した布保持体22をX軸方向とY軸方向に移動することで、360°方向への縫製が可能である。
糸調子装置60は糸調子器64、糸調子ソレノイド65(図7参照)を備える。糸調子器64は先端部8の右面に設け、上糸に上糸張力を付与する。上糸張力は縫製時に上糸に付与する張力である。糸調子ソレノイド65は、糸調子器64が上糸に付与する上糸張力を調整できる。
図2、図3を参照し、被縫製物19上に形成する縫目品質を説明する。縫目品質とは、被縫製物19上に形成する縫目の外観品質を意味する。ミシン1Aには、針落ち点から次の針落ち点への縫製方向に応じて、被縫製物19上に形成する縫目がパーフェクトステッチとなる方向、ヒッチステッチとなる方向、混在ステッチとなる方向が夫々存在する。
図2(A)に示す如く、パーフェクトステッチは、上糸と下糸が互いに均等が取れた状態で絡み合って形成したステッチであり、糸締りは良好である。パーフェクトステッチは、上糸の張力と下糸の張力が互いにバランス良く被縫製物19に作用するので、良好な仕上がりとなる。図2(B)に示す如く、ヒッチステッチは、上糸の張力が弱くなり、下糸の張力とのバランスが崩れた状態で絡み合って形成したステッチであり、糸締りは良くない。ヒッチステッチは、上糸のみが螺旋を描くように縫目を形成するので、縫目品質は低下する。図2(C)に示す如く、混在ステッチは、パーフェクトステッチとヒッチステッチが不規則に混在して並ぶステッチである。パーフェクトステッチとヒッチステッチが不規則に並ぶことから縫目品質が一定とならない。故に縫目品質はヒッチステッチよりも良くない。なお、縫目の外観品質の差は、被縫製物19が特に革製品のように固い素材の場合に顕著である。
図3に示す如く、使用者がミシン1Aの前側に座った状態で、現在の針落ち点を基点Oとしたとき、基点Oから次の針落ち点への縫製方向は0~360°の範囲内で可能である。使用者から見て基点Oから右方向への角度は0°(360°)、後方向への角度は90°、左方向への角度は180°、前方向への角度は270°である。斜線ハッチの領域は、パーフェクトステッチになる領域、格子状ハッチの領域は、ヒッチステッチになる領域、ドット状ハッチの領域は、混在ステッチになる領域である。
図4、図5を参照し、ミシン1Bの構造を説明する。ミシン1Bは、ミシン1Aとタイプが異なる大型のミシンである。ミシン1Bは、針棒711(図5参照)をX軸方向、被縫製物(図示略)を保持する布保持体85をY軸方向に移動することで、360°方向への縫製が可能である。ミシン1Bは土台部70、針棒機構71、釜機構72(図5参照)、X移動機構73(図5参照)、Y移動機構74、同期機構75、糸調子装置77を備える。土台部70は略矩形状に組み立てた構造体であり、針棒機構71、釜機構72(図5参照)、X移動機構73、Y移動機構74、同期機構75を支持する。土台部70は前側に保持板81を備える。針棒機構71は左右動可能であり、保持板81上方に位置する。針棒機構71は針棒711を備え、針棒711は下端に縫針(図示略)を装着する。
図5に示す如く、釜機構72は保持板81(図4参照)下方に位置する。釜機構72は半回転垂直釜152と針板82を備える。半回転垂直釜152は、釜機構72内部にて左右方向に延びる下軸83左端部に連結する。半回転垂直釜152は下糸を巻いたボビンを収容する。半回転垂直釜152は、ミシン1Aの半回転垂直釜151と同一の釜である(図6参照)。針板82は針穴84を有する。針穴84は半回転垂直釜152上方に位置する。X移動機構73は針棒機構71と釜機構72を一体的に左右動可能に支持する。X移動機構73は、針棒機構71を一対の上レール731に沿って移動し、釜機構72を一対の下レール732に沿って移動する。Y移動機構74は布保持体85を備える。布保持体85は保持板81で支持する。布保持体85は被縫製物(図示略)を挟持する。Y移動機構74は布保持体85を前後動可能に支持する。故にY移動機構74は被縫製物を針棒機構71と釜機構72に対して相対的に前後動可能である。同期機構75は図示しない複数のプーリ、タイミングベルト等を有し、主モータ(図示略)の駆動力を針棒711と半回転垂直釜152に夫々伝達し、同期駆動する。糸調子装置77は糸調子器78、糸調子ソレノイド(図示略)を備える。糸調子器78は針棒機構に設け、上糸に上糸張力を付与する。糸調子ソレノイドは、糸調子器78が上糸に付与する上糸張力を調整できる。
図6を参照し、ミシン1Bにおける縫製方向と縫目品質との関係を説明する。使用者がミシン1Bの前側に座った状態で、現在の針落ち点を基点Oとしたとき、ミシン1Bはミシン1Aと同様に、基点Oから次の針落ち点への縫製方向は0~360°の範囲内で可能である。使用者から見て基点Oから右方向への角度は0°(360°)、後方向への角度は90°、左方向への角度は180°、前方向への角度は270°である。上記の通り、ミシン1Aでは、半回転垂直釜151は前後方向に延びる下軸(図示略)前端部に連結する。ミシン1Bでは、半回転垂直釜152は左右方向に延びる下軸83左端部に連結する。半回転垂直釜152の向きは、ミシン1Aの半回転垂直釜151の向きに対して平面視時計回りに90°ずれる。故にミシン1Bにおける縫製方向に対する縫目品質の角度領域も時計回りに90°ずれる。故に縫製方向と縫目品質との関係は、釜の種類が同一でも向きに応じて変化する。
縫製方向と縫目品質の関係は、釜の向きのみならず、釜の種類によっても異なる。図6に示す如く、例えばミシン1Cの釜は全回転垂直釜153であり、ミシン1Dの釜は全回転千鳥垂直釜154であり、ミシン1Eの釜は全回転水平釜155である。5種のミシン1A~1Eにおいて、縫製方向に対する縫目品質の角度領域は全て異なる。ミシン1Dと1Eでは、パーフェクトステッチとなる角度領域と、混在ステッチとなる角度領域は存在するが、ヒッチステッチとなる角度領域は存在しない。図6に示す各釜151~155の向きは、夫々のミシン1A~1Eに搭載したときの実際の向きと必ずしも一致しない。
故にミシンは、釜の向きと種類に応じて異なる縫製方向と縫目品質の関係に基づき、縫製方向に対応する縫目品質を判別し、該判別結果に応じて動作するのがよい。後述する如く、本実施形態のミシン1Aは、半回転垂直釜151とその向きに応じた図3に示す円図表に基づき、縫製方向に対応する縫目品質(パーフェクトステッチ、ヒッチステッチ、混在ステッチ)を判別し、該判別結果に応じて動作を制御する。
図7を参照し、ミシン1Aの電気的構成を説明する。ミシン1Aの制御部10はCPU41、ROM42、RAM43、記憶装置45、I/Oインターフェース(以下I/Oと呼ぶ)、駆動回路51~56等を備える。CPU41はミシン1Aの動作を制御する。CPU41はROM42、RAM43、記憶装置45、I/O46と接続する。ROM42は後述の縫製情報作成・編集処理(図8参照)、後述の縫製張力調整処理(図21参照)等、各種処理を実行する為のプログラム等を記憶する。RAM43は各種情報を一時的に記憶する。記憶装置45は不揮発性であり、縫製情報、縫目品質情報等を記憶する。縫製情報とは、針落ち点を含む情報である。縫目品質情報とは、ミシン1Aにおける縫製方向と縫目品質の関係を示す情報であり、例えば図6に示す円図表に対応する情報である。
I/O46は駆動回路51~56、入力部182に接続する。駆動回路51は主モータ17に接続する。駆動回路52はXモータ21に接続する。駆動回路53はYモータ25に接続する。Xモータ21とYモータ25はパルスモータである。駆動回路54は一対のエアシリンダ35と接続する。駆動回路55は糸調子ソレノイド65に接続する。駆動回路56は表示部181に接続する。CPU41は、駆動回路51~54を制御することで、主モータ17、Xモータ21、Yモータ25、一対のエアシリンダ35を駆動制御する。CPU41は、駆動回路55を制御することで、糸調子ソレノイド65を駆動制御する。CPU41は、駆動回路56を制御することで、表示部181を制御する。入力部182は、作業者が入力した情報を検出し、検出結果をI/O46を介してCPU41に出力する。
エンコーダ61~63は夫々、主モータ17、Xモータ21、Yモータ25と接続する。エンコーダ61は主モータ17の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ62はXモータ21の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ63はYモータ25の出力軸の回転位置を検出する。エンコーダ61~63は検出結果をI/O46を介してCPU41に出力する。
図8~図15を参照し、縫製情報作成・編集処理を説明する。使用者は例えば縫目の縫製情報を新たに作成する為、操作パネル18の表示部181に、縫目を形成する為のステッチラインを描画する。ステッチラインとは、針落ち点を結んで形成する線を意味し、直線、曲線、矩形、円形等、種々の形状を含む概念である。使用者は操作パネル18の入力部182で、縫製情報作成・編集モードに設定する操作を行う。
CPU41は、入力部182において、縫製情報作成・編集モードに設定する操作を受け付けたとき、ROM42に記憶する縫製情報作成・編集プログラムを読み出し、本処理を実行する。本実施形態では一例として、矩形状のステッチラインを描画し、そのステッチラインに対応する縫製情報を作成する場面を想定する。本実施形態は、(1)ステッチラインを新たに描画するとき、(2)ステッチラインを編集するとき、の二つの場面を順に説明する。
(1)ステッチラインを新たに描画するとき
ステッチラインを入力するとき、使用者は、表示部181に表示するライン入力(図示略)を選択する。CPU41は、使用者がライン入力を選択したか否か判断する(S1)。使用者がライン入力を選択しない場合(S1:NO)、CPU41は使用者がその他操作を選択したか否か判断する(S17)。その他操作とは、例えば記憶装置45に記憶する縫製情報の読み出し、各種情報の選択、消去、変更、記憶等、種々の操作を含む。使用者がその他操作を選択しない場合(S17:NO)、CPU41は処理をS1に戻す。使用者がその他操作を選択した場合(S17:YES)、CPU41は選択した操作に対応する動作を実行し(S18)、モード終了か否か判断する(S14)。モード終了の操作を受け付けた場合(S14:YES)、CPU41は本処理を終了する。モード終了の操作を受け付けない場合(S14:NO)、CPU41は処理をS1に戻す。
使用者がライン入力を選択した場合(S1:YES)、CPU41はステッチラインの描画・編集処理を実行する(S2)。図9に示す如く、表示部181は中心点Oに十字状の印101を表示する。使用者は入力部182で、印101の位置を移動して操作することで、直線ラインを描画できる。図10に示す如く、例えば使用者が印101をP0に移動してその位置を確定すると、P0は基点となる。CPU41はP0の座標位置を最初の針落ち点としてRAM43に一旦記憶する。使用者が印101をP0から右方向に移動する。CPU41はP0から印101に向けて直線ラインを描画する。使用者が印101をP1に配置すると、CPU41はP1の座標位置を針落ち点としてRAM43に一旦記憶し、P0からP1に向けて直線ラインを描画する。描画したP0からP1までの直線ラインは、各針落ち点を結んだ運針ごとのステッチラインである。
CPU41は、P0とP1の夫々の座標位置に基づき縫製方向の角度を算出する(S4)。CPU41は算出した角度を記憶装置45に記憶した縫目品質情報と照らし合わせ、描画した直線ラインがパーフェクトステッチ方向(以下P方向と呼ぶ)か否か判別する(S5)。図10に示す如く、P0からP1に向かう方向をD1としたとき、D1の角度は0°である。0°はP方向なので(S5:YES)、CPU41は、直線ラインがP方向であることが目視で分かるように、描画した直線ラインを青色(図中では実線)に変更する(S7)。縫製方向が確定するまで、CPU41は直線ラインを黒色で表示してもよい。使用者は青色に表示した直線ラインを確認することで、P0からP1に向かうステッチラインは、パーフェクトステッチになることを容易且つ速やかに認識できる。
使用者は描画した直線ラインを確定する為、表示部181に表示するOKボタン(図示略)を押下する。CPU41はOKボタンの押下を受け付けたか否か判断する(S10)。OKボタンを受け付けない場合(S10:NO)、CPU41は処理をS2に戻し、引き続き描画・編集処理を続行する。
図11に示す如く、次いで使用者はP1を基点とし、印101をP1から下方に移動してP2に配置する。CPU41はP2の座標位置を針落ち点としてRAM43に一旦記憶する。CPU41はP1とP2の座標位置に基づき、P1からP2に向けて直線ラインを描画し、上記と同様に直線ラインの縫製方向の角度を算出する(S4)。P1からP2に向かう方向をD2としたとき、D2の角度は270°である。270°はP方向なので(S5:YES)、CPU41は直線ラインがP方向であることが目視で分かるように、描画した直線ラインを青色に変更する(S7)。
図12に示す如く、次いで使用者はP2を基点とし、印101をP2から左方に移動してP3に配置する。CPU41はP3の座標位置を針落ち点としてRAM43に一旦記憶する。CPU41はP2とP3の座標位置に基づき、P2からP3に向けて直線ラインを描画し、直線ラインの縫製方向の角度を算出する(S4)。P2からP3に向かう方向をD3としたとき、D3の角度は180°である。180°はP方向ではないので(S5:NO)、CPU41は描画した直線ラインはヒッチステッチ方向(以下H方向と呼ぶ)か否か判別する(S6)。180°はH方向なので(S6:YES)、CPU41は直線ラインがH方向であることが目視で分かるように、描画した直線ラインを赤色(図中では破線)に変更する(S8)。使用者は赤色に表示した直線ラインを確認することで、P2からP3に向かうステッチラインは、ヒッチステッチになることを容易且つ速やかに認識できる。
図13に示す如く、次いで使用者はP3を基点とし、印101をP3から上方に移動してP4に配置する。P4はP0と同一位置である。CPU41はP4の座標位置を針落ち点としてRAM43に一旦記憶する。CPU41はP3とP4の座標位置に基づき、P3からP4に向けて直線ラインを描画し、直線ラインの縫製方向の角度を算出する(S4)。P3からP4に向かう方向をD4としたとき、D4の角度は90°である。90°はH方向なので(S6:YES)、CPU41は直線ラインがH方向であることが目視で分かるように、描画した直線ラインを赤色に変更する(S8)。使用者は赤色に表示した直線ラインを確認することで、P3からP4に向かうステッチラインは、ヒッチステッチになることを容易且つ速やかに認識できる。
表示部181に矩形状のステッチラインを描画できたので、使用者は表示部181に表示するOKボタンを押下する(S10:YES)。CPU41は記憶したP0~P4の夫々の座標位置を確定し(S11)、ステッチラインの縫製情報としてRAM43に一旦記憶する。使用者はステッチラインの入力を終了する場合、表示部181に表示する入力終了ボタン(図示略)を押下する。CPU41は入力終了ボタンを押下したか否か判断する(S12)。入力終了ボタンを押下しない場合(S12:NO)、CPU41は処理をS1に戻し処理を繰り返す。
入力終了ボタンを押下した場合(S12:YES)、CPU41はRAM43に記憶したP0~P4の各座標位置と縫製条件に基づき、P0~P4までの縫製時における複数の針落ち点を算出し、ステッチラインの縫製情報として記憶装置45に記憶する(S13)。縫製条件とは、ミシン1Aに予め設定する条件であり、例えば運針数、被縫製物19の厚み等である。運針数とは、例えば1インチ間の縫目数を意味する。故にミシン1Aは、操作パネル18の表示部181に描画したステッチラインの縫製情報を容易に作成できる。
使用者は縫製情報作成・編集モードを終了する場合、表示部181に表示したモード終了ボタン(図示略)を押下する。CPU41はモード終了ボタンの押下を受け付けたか否か判断する(S14)。モード終了ボタンの押下を受け付けた場合(S14:YES)、CPU41は本処理を終了する。
上記の通り、CPU41は縫製情報作成・編集処理を実行することにより、ステッチラインが確定する前の状態で、縫製方向に応じてステッチラインの色分けを行う。使用者はステッチラインが確定する前に、縫製方向毎に縫目品質が分かるので、例えば縫製方向を変更することで、縫目品質を容易に変更できる。故に使用者は縫目品質を確認しながら、縫目品質が良い方向に沿った縫製情報を短時間で作成できる。
(2)ステッチラインを編集するとき
使用者は、表示部181において、描画したステッチライン、若しくは既に記憶装置45に記憶した縫製情報を読み出して表示したステッチラインの形状、位置等を編集できる。編集の一例として、使用者は描画したステッチラインを回転できる。例えば、記憶装置45から縫製情報を読み出し、表示部181に矩形状のステッチラインを表示した状態で(図13参照)、使用者は表示部181に表示した編集ボタンを選択する。CPU41はステッチラインの編集の選択を受け付ける(S1:YES)。使用者は例えばステッチラインの回転方向と回転角度を入力し、回転操作を行う。CPU41は、S2の描画・編集処理において、使用者が指定した回転方向と回転角度に基づき、中心点Oを基準にステッチラインを回転する。図13の回転前において、P0からP1へ延びる直線ラインは青色(実線)、P1からP2へ延びる直線ラインは青色(実線)、P2からP3へ延びる直線ラインは赤色(破線)、P3からP4へ延びる直線ラインは赤色(破線)である。
図14に示す如く、例えばステッチラインをR1方向にU1°回転した場合、P0~P4の位置は夫々移動する。CPU41は回転後のP0~P4の夫々の座標位置を算出し、RAM43に一旦記憶する。P0~P1への縫製方向をD1-1、P1~P2への縫製方向をD2-1、P2~P3への縫製方向をD3-1、P3~P4への縫製方向をD4-1とする。CPU41は回転後のP1~P4の夫々の座標位置に基づき、縫製方向D1-1、D2-1、D3-1、D4-1の夫々の角度を算出する(S4)。該算出結果に基づき、CPU41は、縫製方向D1-1の角度はP方向と判別し(S5:YES)、縫製方向D2-1の角度はP方向と判別し(S5:YES)、縫製方向D3-1の角度は混在ステッチ方向(以下M方向と呼ぶ)と判別し(S5:NO、S6:NO)、縫製方向D4-1の角度はH方向と判別する(S5:NO、S6:YES)。故にCPU41は、P0からP1へ延びる直線ラインと、P1からP2へ延びる直線ラインは青色(実線)で表示し(S7)、P2からP3へ延びる直線ラインは赤色(破線)から黄色(二点鎖線)に変更(S9)し、P3からP4へ延びる直線ラインは赤色(破線)で表示する(S8)。
図15に示す如く、ステッチラインを図14の状態からR1方向に更にU2°回転した場合、P1~P4の夫々の位置は更に移動する。回転後のP0~P1への縫製方向をD1-2、P1~P2への縫製方向をD2-2、P2~P3への縫製方向をD3-2、P3~P4への縫製方向をD4-2とする。CPU41は回転後のP1~P4の夫々の座標位置に基づき、縫製方向D1-2、D2-2、D3-2、D4-2の夫々の角度を算出する(S4)。該算出結果に基づき、CPU41は、縫製方向D1-2の角度はM方向と判別し(S5:NO、S6:NO)、縫製方向D2-2の角度はP方向と判別し(S5:YES)、縫製方向D3-2の角度はP方向と判別し(S5:YES)、縫製方向D4-2の角度はH方向と判別する(S5:NO、S6:YES)。故にCPU41は、P0からP1へ延びる直線ラインは赤色(破線)から黄色(二点鎖線)に変更し(S9)、P1からP2へ延びる直線ラインと、P2からP3へ延びる直線ラインは青色(実線)で表示し(S7)、P3からP4へ延びる直線ラインは赤色(破線)で表示する(S8)。
上記の通り、描画したステッチラインを回転すると、ステッチラインを構成する4本の直線ラインの縫製方向が夫々変化する。該変化に応じてステッチラインの色は変化する。使用者は該性質を利用することで、被縫製物19上に形成する縫目品質を調節できる。縫目品質の中で混在ステッチは外観が最もよくない。例えば描画したステッチラインに混在ステッチがある場合、そのステッチラインを回転することで、混在ステッチ及びヒッチステッチを少なくできる場合がある。
S2の描画・編集処理で実行可能な編集とは、上記の回転の他、ステッチラインの形状、位置等を変更する種々の編集作業を含む。例えば、矩形状のステッチラインのP0~P4は、針落ち点であって、縫製方向が変わる特徴点でもある。編集は、特徴点の削除、追加、移動等の作業を含む。編集は、更にステッチラインの反転、始点と終点の変更等の作業も含む。
図16は、特徴点の削除の例である。図16(1)に示す如く、P0、P1、P2は上方に突出する山型のステッチラインの特徴点である。図16(2)に示す如く、編集で中央のP1を削除した場合、ステッチラインはP0からP2に延びる直線ラインとなり、P2はP1に変更する。該場合、ステッチラインの縫製方向は変化するので、ミシン1Aは上記と同様に縫目品質を再判別し、色分けして再表示する。
図17は、特徴点の追加の例である。図17(1)に示す如く、P0、P1、P2は上方に突出する山型のステッチラインの特徴点である。図17(2)に示す如く、編集でP0とP1の間に、新たにP3を追加した場合、ステッチラインはジグザグ状となり、追加したP3はP1に変更、P1はP2に変更、P2はP3に変更する。該場合も、ステッチラインの縫製方向は変化するので、ミシン1Aは上記と同様に縫目品質を再判別し、色分けして再表示する。
図18は、特徴点の移動の例である。図18(1)に示す如く、P0、P1、P2は上方に突出する山型のステッチラインの特徴点である。図18(2)に示す如く、編集でP1を左斜め下方に大きく移動した場合、ステッチラインは下方に突出する山型となる。該場合も、ステッチラインの縫製方向は変化するので、ミシン1Aは上記と同様に縫目種類を再判別し、色分けして再表示する。
図19は、ステッチラインの反転の例である。図19(1)に示す如く、P0、P1、P2、P3は三角形のステッチラインの特徴点である。P0とP3は同一位置である。図19(2)に示す如く、編集でステッチラインを上下反転した場合、ステッチラインは逆三角形となる。ステッチラインの縫製方向は変化するので、ミシン1Aは上記と同様に縫目品質を再判別し、色分けして再表示する。なお、左右反転も同様である。
図20は、ステッチラインの始点と終点を変更する例である。図20(1)に示す如く、P0、P1、P2はステッチラインの特徴点である。始点はP0、終点はP2である。故にミシン1Aは、P0、P1、P2の順に縫製する。図20(2)に示す如く、P0とP2を入れ替えた場合、ステッチラインの形状は変わらないが、ステッチラインの縫製方向は変化する。ミシン1Aは上記と同様に縫目品質を再判別し、色分けして再表示する。
上記例の他、ステッチラインの拡大・縮小も編集の一例である。例えばステッチラインが曲線状の場合、拡大又は縮小によって、ステッチラインの縫製方向は変化するので、ミシン1Aは上記と同様に縫目品質を再判別し、色分けして再表示する。
図21~図23を参照し、縫製張力調整処理を説明する。本処理は、例えば縫製情報作成時に一針毎の針落ち点情報に基づき、縫製方向に応じて上糸張力を調整する処理である。図22に示す縫製情報90は、例えば上記縫製情報作成・編集処理(図8参照)で作成した縫製情報である。縫製情報90は一模様ごとに対応する。縫製情報90は針番号0~100までの針落ち点情報100~200で構成する。総針数kは101である。図23に示す如く、針落ち点情報100~200は、対応する針落ち点のX座標、次の針落ち点までのX布送り量、対応する針落ち点のY座標、次の針落ち点までのY布送り量、次の針落ち点までの上糸張力(g)、の各種情報を有する。最終針である100針目の針落ち点情報200は、100針目の針落ち点のX座標とY座標のみ設定すればよい。縫製情報90作成時、針落ち点情報100~200の上糸張力は、デフォルトで例えばパーフェクトステッチに対応する上糸張力(100g)を設定するとよい。
縫製時、ミシン1Aは、縫製情報90に基づき縫製する。CPU41は縫製開始する時、縫製情報90を参照し、針落ち点情報100に基づいて0針目のX座標、Y座標にXモータ21、Yモータ25を駆動制御して移動する。CPU41は主モータ17を駆動制御して縫目を形成し、次の針落ち点までのX布送り量、Y布送り量に基づきXモータ21、Yモータ25を駆動制御して次の針落ち点に移動する。該時、CPU41は糸調子ソレノイド65を駆動制御し、上糸張力を100gとする。以降、CPU41は針落ち点情報101~200に基づいて100針目まで縫製する。
使用者は、作成した縫製情報の上糸張力を調整するとき、操作パネル18の入力部182で、縫製張力調整処理を開始する操作を行う。CPU41は入力部182において、縫製張力調整処理を開始する操作を受け付けたとき、ROM42に記憶する縫製張力調整プログラムを読み出し、本処理を実行する。本実施形態は、縫製情報90のうち0~95針目までの縫製方向はP方向、96~100針目までの縫製方向はH方向と仮定する。
CPU41は使用者が入力部182で指定する縫製情報90を記憶装置45から読み込む(S21)。CPU41は読み込んだ縫製情報90から総針数k(=101)を算出しRAM43に一旦記憶する(S22)。CPU41は針数nに0を設定する(S23)。CPU41はn針目の針落ち点情報を読み込む(S24)。先ずCPU41は0針目の針落ち点情報100を読み込み、1針目までのX布送り量とY布送り量に基づき、0から1針目に向けての縫製方向の角度を算出する(S25)。CPU41は上記と同様に、算出した縫製方向の角度がP方向か否か判別する(S26)。0から1針目までの縫製方向はP方向なので(S26:YES)、CPU41は針落ち点情報101の上糸張力を変更せずに100gに設定する(S28)。CPU41はnに1加算し(S31)、加算後のnはk以上か否か判断する(S32)。n=1であるので(S32:NO)、CPU41はS24に戻り、1針目以降上記処理を繰り返す。
n=96のとき、CPU41は96針目の針落ち点情報196を読み込み(S24)、95針目から96針目に向けての縫製方向の角度を算出する(S25)。95から96針目までの縫製方向はP方向ではないので(S26:NO)、CPU41は縫製方向がH方向か否か判別する(S27)。95から96針目までの縫製方向はH方向なので(S27:YES)、CPU41は針落ち点情報101の上糸張力を100gから120gに設定変更する(S29)。CPU41はnに1加算し(S31)、加算後のnは97であるので(S32:NO)、CPU41はS24に戻り、97針目以降も上記処理を繰り返す。97から99針目までも同様に、縫製方向の角度はH方向なので(S27:YES)、CPU41は針落ち点情報197、198、199の夫々の上糸張力を100gから120gに設定変更する(S29)。
なお、縫製方向の角度がM方向であった場合(S27:NO)、CPU41は上糸張力を100gから110gに設定変更すればよい(S30)。CPU41はnに1加算し(S31)、加算後のnが101のとき(S32:YES)、本処理を終了する。故にミシン1Aは、縫製時において一針毎の縫製方向に応じて上糸張力を調整できるので、縫目品質を効果的に向上できる。
例えば、図24に示す矩形状のステッチラインの場合、P0からP1に向かう縫製方向D1はP方向である。故にCPU41は、P0からP1までの縫製時の上糸張力を100gに設定する。P1からP2に向かう縫製方向D2はP方向である。故にCPU41は、P1からP2までの縫製時の上糸張力を100gに設定する。P2からP3に向かう縫製方向D3はH方向である。故にCPU41は、P2からP3までの縫製時の上糸張力を100gから120gに設定変更する。P3からP4に向かう縫製方向D4はH方向である。故にCPU41は、P3からP4までの縫製時の上糸張力を100gから120gに設定変更する。
図25に示す如く、図24に示す矩形状のステッチラインをR1方向にU1°回転させた場合、上記の通り、P0~P4の夫々の座標位置が移動するので、縫製方向は変化する。P0からP1に向かう縫製方向D1-1もP方向である。故にCPU41は、回転後のP0からP1までの縫製時の上糸張力を変更せずに100gに設定する。P1からP2に向かう縫製方向D2-1もP方向である。故にCPU41は、回転後のP1からP2までの縫製時の上糸張力を100gに設定する。P2からP3に向かう縫製方向D3-1はM方向である。故にCPU41は、回転後のP2からP3までの縫製時の上糸張力を100gから110gに設定変更する。P3からP4に向かう縫製方向D4-1はH方向である。故にCPU41は、回転後のP3からP4までの縫製時の上糸張力を変更せずに120gに設定する。
上記の通り、ステッチラインを回転すると、縫製方向の変化に応じて、縫目品質も変化する。ミシン1Aは、縫製方向の変化に応じて上糸張力を設定変更するので、縫製時において縫目品質を効果的に向上できる。
以上説明の如く、本実施形態のミシン1AのCPU41は、針落ち点を指定する縫製情報に基づき、各針落ち点を結んだ運針ごとのステッチラインを操作パネル18の表示部181に表示可能である。針落ち点は、縫製時に縫針15が被縫製物19に刺さる位置を示す。CPU41は、ステッチラインの縫製方向に基づき、ステッチラインに対応する被縫製物19上の縫目品質がパーフェクトステッチ、ヒッチステッチ、混在ステッチのうち何れになるかを判別する。CPU41は、縫目品質の判別結果に基づき、縫目品質を識別可能な態様(例えば色分け)で、ステッチラインを表示部181に表示する。故に使用者は、表示部181に表示するステッチラインを確認することで、被縫製物19上に形成する縫目に、パーフェクトステッチ、ヒッチステッチ、混在ステッチが発生する部分と割合を容易に予測できる。
CPU41は表示部181に表示したステッチラインを編集する編集操作を受け付ける。CPU41は編集操作でステッチラインを編集したとき、編集後のステッチラインの縫製方向を算出する。CPU41は算出した縫製方向に基づき、編集後のステッチラインの縫目品質を判別する。CPU41は該判別結果に基づき、縫目品質を識別可能な態様(例えば色分け)で、編集後のステッチラインを表示部181に表示する。表示部181に表示したステッチラインで縫目品質を確認した後、表示部181上のステッチラインを編集することで、運針ごとの縫製方向が変化する場合がある。縫製方向が変化すると、縫目品質も変化する。CPU41は、変化した縫目品質を識別可能な態様で、編集後のステッチラインを表示部181に表示する。使用者は表示部181に表示するステッチラインを確認しながら、縫目品質が最も良くなるようステッチラインを編集できる。故にミシン1Aは、被縫製物19上に形成する縫目品質を向上できる。
CPU41は縫製情報を作成可能である。表示部181は、CPU41が作成する縫製情報のステッチラインを表示可能である。CPU41は作成中の縫製情報の縫製方向に基づき、ステッチラインに対応する被縫製物19上の縫目品質を判別する。CPU41は縫製情報の作成中において、縫目品質の判別結果に基づき、縫目品質を識別可能な態様で、ステッチラインを表示部181に表示する。故にミシン1Aは縫目品質を表示部181で確認しながら、縫製情報を作成できる。故に使用者は、縫目品質が良い方向に沿った縫製情報を容易に作成できる。
CPU41は判別した縫目品質を互いに異なる色で識別した態様で、ステッチラインを表示部181に表示する。故にミシン1Aは、使用者に対して視覚的に分かり易く表示できる。
縫製情報90は、運針ごとに上糸張力を指定する上糸張力の情報を有する。CPU41は縫目品質の判別結果に基づき、縫目品質の種類に応じて、縫製情報90における運針ごとの上糸張力を変更できる。
以上説明にて、ミシン1Aは本発明の表示装置とミシンの一例である。図8のS4~S6の処理を実行するCPU41は本発明の判別部の一例である。S7~S9の処理を実行するCPU41は本発明の表示制御部の一例である。S1の処理を実行するCPU41は本発明の受付部の一例である。S4の処理を実行するCPU41は本発明の方向算出部の一例である。S4~S6の処理を実行するCPU41は本発明の編集後判別部の一例である。S7~S9の処理を実行するCPU41は本発明の編集後表示制御部の一例である。図8の縫製情報作成・編集処理を実行するCPU41は本発明の作成部の一例である。図21のS28~S30の処理を実行するCPU41は本発明の変更部の一例である。布送り装置5は本発明の搬送機構の一例である。
本発明は上記実施形態の他に種々の変更が可能である。上記実施形態の縫製情報作成・編集処理(図8参照)において、ミシン1Aは、ステッチラインが確定する前の状態で縫製方向に応じてステッチラインの色分けを実施する。ミシン1Aは、ステッチラインが確定した後の状態で縫製方向に応じてステッチラインの色分けを実施してもよい。図26、図27を参照し、縫製情報作成・編集処理の変形例を説明する。変形例は、図8のS2とS13の間の各処理の代わりに、S41~S51の各処理を置き換え、それ以外の処理は図8の処理と共通する。共通する処理は同一ステップ番号を付して説明を簡略化又は省略する。
図26に示す如く、使用者がライン入力を選択した場合(S1:YES)、CPU41はステッチラインの描画・編集処理を実行する(S2)。使用者は入力部182により、印101の位置を移動して操作することで、直線ラインを描画できる。図27(1)に示す如く、本変形例は、使用者が表示部181において矩形状のステッチラインを描画する場面を想定する。使用者は、P0からP1、P1からP2、P2からP3、P3からP4に向けて4本の直線ラインを描画することで、矩形状のステッチラインを形成する。矩形状のステッチラインは確定前なので黒色で表示する。
使用者は描画したステッチラインを確定する為、表示部181に表示するOKボタン(図示略)を押下する。CPU41はOKボタンの押下を受け付けたか否か判断する(S41)。OKボタンを受け付けない場合(S41:NO)、CPU41はS2に戻り、引き続き描画処理を続行する。使用者がOKボタンを押下した場合(S41:YES)。CPU41は描画した矩形状のステッチラインのP0~P4の夫々の座標位置を確定し(S42)、ステッチラインの縫製情報としてRAM43に一旦記憶する。
CPU41は確定したステッチラインについてP0からP4まで縫製方向ごとにライン分割する(S43)。ライン分割とは、縫製方向が同一の直線ごとに分割する処理である。CPU41は矩形状のステッチラインを、P0からP1までの直線ライン、P1からP2までの直線ライン、P2からP3までの直線ライン、P3からP4までの直線ラインに夫々分割する。CPU41は4本の分割した直線ラインから一本の直線ラインを抽出する(S44)。抽出する順番は限定しないが、例えば描画開始点P0からP1、P2・・・と昇順で抽出するとよい。
CPU41は、抽出した直線ラインの両端の座標位置を特定し、特定した座標位置に基づき縫製方向の角度を算出する(S45)。CPU41は算出した角度を、記憶装置45に記憶した縫目品質情報と照らし合わせ、抽出した直線ラインがP方向か否か判断する(S46)。抽出した直線ラインがP方向である場合(S46:YES)、CPU41は抽出した直線ラインを青色に変更する(S48)。抽出した直線ラインがP方向でない場合(S45:NO)、CPU41は抽出した直線ラインがH方向か否か判断する(S47)。抽出した直線ラインがH方向である場合(S47:YES)、CPU41は抽出した直線ラインを赤色に変更する(S49)。抽出した直線ラインがH方向でない場合(S47:NO)、抽出した直線ラインはM方向であるので、CPU41は抽出した直線ラインを黄色に変更する(S50)。なお、CPU41は抽出した直線ラインについてはフラグを立てる等して、抽出済みか未抽出かをフラグで判断できるようにするとよい。
CPU41は分割した直線ラインを全部抽出したか否か判断する(S51)。未抽出の直線ラインがある場合(S51:NO)、CPU41はS44に戻り、残りの直線ラインを抽出して上記処理を繰り返す。直線ラインを全部抽出した場合(S51:YES)、
ステッチラインの色分けが完了する。図27(2)に示す如く、P0からP1までの直線ラインと、P1からP2までの直線ラインは青色(図中では実線)、P2からP3までの直線ラインと、P3からP4までの直線ラインは赤色(図中では破線)に表示する。
このように、CPU41は、図27の縫製情報作成・編集処理の変形例を実行することにより、ステッチラインが確定した後の状態で縫製方向に応じてラインの色分けを実施する。上記実施形態と同様に、使用者は色分けしたステッチラインを確認することで、縫製方向ごとに縫目品質を容易に確認できる。なお、本変形例においても、上記実施形態と同様に、ステッチラインの編集操作を行ったとき、編集後のステッチラインを確定した後で、縫製方向ごとに縫目品質を判定し、色分けを行うようにできる。
本発明は上記実施形態と上記変形例の他に種々の変更が可能である。上記実施形態は、操作パネル18の表示部181にステッチラインを描画し、描画したステッチラインの縫製情報を作成する。例えば、ミシン1Aに無線又は有線で接続する端末(例えば、PC、タブレット端末、スマートフォン等)の表示部において、ステッチラインを描画し、描画したステッチラインの縫製情報を作成するようにしてもよい。該時、端末が有するCPUが、ステッチラインの縫製方向に基づきパーフェクトステッチ、ヒッチステッチ、混在ステッチを判別してもよい。端末は、ステッチラインを編集可能でもよい。操作パネル18はタッチパネルでなくてもよく、入力部182は押下可能な物理的なボタン、スイッチ、ダイヤル等であってもよい。
上記実施形態のミシン1Aは、縫目品質ごとに色分けすることによって、識別可能に表示するが、色分け以外の方法で表示してもよく、例えば、縫目品質ごとに線種(例えば、実線、破線、二点鎖線等)を変えて識別可能に表示してもよい。表示部181は、縫製方向と縫目品質の関係を示した円図表を表示してもよい。該時、表示部181は、円図表における各縫製品質の領域を、描画するステッチラインの色と同色で表示すればよい。表示部181がステッチラインを縫目品質ごとに線種を変えて表示する場合、表示部181は円図表における各縫製品質の領域に線種に応じたハッチングで表示すればよい。
上記実施形態は、ミシン1Aを一例として説明したが、例えばその他のミシン1B~1Eにおいても同様に制御するとよい。