JP7131562B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
トナーの定着工程では、通常、定着時に定着ロールの温度を150℃以上に加熱する必要があり、多くの電力を要する。近年、上記画像形成装置に対する、消費エネルギーの低減化、及び印刷の高速化の要請の高まりに伴い、低い定着温度でも高い定着率を維持できるトナー(低温定着性に優れたトナー)が求められている。
上記要請に応え得るトナーの設計方法として、トナーのガラス転移温度(Tg)を低下させる方法、トナー中に低融点樹脂及び/又は低分子量樹脂を含有させる方法、トナー中にワックス等の離型性(剥離性)を有する低軟化点物質(離型剤)を含有させる方法などの提案がされている。
このため、トナーの設計には、低温定着性とは相反する特性である保存性をも考慮して、保存性を損なうことなく低温定着性を改善させ、消費電力の低減化を図ることができるトナーの開発が求められている。
そして、長時間高温下でトナーを保管した場合、低分子量の離型剤がトナー表面にブリードアウトして印刷用部材を汚染する結果、印字不良を引き起こすおそれがある。
これに対し、比較的高分子量の離型剤を含むトナーについては、上記ブリードアウトの問題に加えて、高温保存性と低温定着性とのバランスが維持できなくなるというおそれもある。
本開示の課題は、高温保存性と低温定着性とのバランスに優れ、かつ長期の高温条件下でも離型剤のブリードアウトが起きにくいトナーを提供することにある。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A-1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、スチレン系熱可塑性エラストマー及び離型剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
本開示では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~2質量部の割合で用いることが望ましい。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、典型的には、元の体積を100体積%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で体積を200体積%まで変形させることができ、上記外力を除いた場合に、130体積%未満まで体積が戻る材料を用いることができる。
(a)Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体
(b)Ar-D-Ar又は(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体
(c)D-Ar-D又は(D-Ar)n-Xとして表される共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体
(d)Ar-D-Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、
(e)上記(a)~(d)のうち2種以上を任意に組み合わせてなるブロック共重合体の混合物
ただし、本開示のブロック共重合体は、上記(a)~(e)のみに限定されない。
本開示における好適なブロック共重合体としては、上記(a)、(b)、及び(e)(ただし、上記(a)と(b)を組み合わせてなるブロック共重合体の混合物)が挙げられる。
上記含有割合が5質量%以上50質量%以下である場合には、ブロック共重合体と後述する離型剤との親和性が良く、かつ、ブロック共重合体と結着樹脂の親和性も良好となる。
本開示では、市販のブロック共重合体を用いることも可能である。市販のブロック共重合体としては、例えば、「クインタック」(:商品名、日本ゼオン社製)、「JSR-SIS」(:商品名、JSR社製)、「Vector」(:商品名、DEXCO polymers社製)、「アサプレン」、「タフプレン」、「タフテック」(:以上、商品名、旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン」(:商品名、クラレ社製)などを使用することができる。
上記含有割合が50質量%以下である場合には、スチレン系熱可塑性エラストマーと後述する離型剤との親和性が良く、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマーと結着樹脂の親和性も良好となる。
スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン単量体単位の含有割合は、公知の方法により測定可能である。例えば、JIS K 7142に準じて、アッベ屈折計によりスチレン系熱可塑性エラストマーの屈折率を測定することにより、スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン単量体単位の含有割合を測定することができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量(Mw)が60,000~350,000である場合には、トナーの耐熱保存性に優れ、かつ、低温定着性も良好となる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの当該含有量が2~10質量部である場合には、常温での印字耐久性、及び高温放置後の印字耐久性の低下のおそれが少ない。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの当該含有量が2~10質量部である場合には、トナーの低温定着性が高く、印刷時において定着ロールの温度を高くする必要が少ないため、エネルギーの消費を抑えられる。
多価アルコールの具体例は以下の通りである。エチレングリコール、及びプロピレングリコール等の2価の飽和脂肪族アルコール;カテコール、及びヒドロキノン等の2価の芳香族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びポリグリセリン等の3価以上の飽和脂肪族アルコール。
これらの1価アルコール及び多価アルコールの中でも、1~4価の飽和脂肪族アルコールが好ましく、ベヘニルアルコール及びペンタエリスリトールが特に好ましく採用される。
これらの飽和脂肪酸の中でも、ベヘン酸(炭素数22)、ステアリン酸(炭素数18)、アラキジン酸(炭素数20)がより好ましい。
・パルミトレイン酸(CH3(CH2)5CH=CH(CH2)7COOH)
・オレイン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH)
・バクセン酸(CH3(CH2)5CH=CH(CH2)9COOH)
・リノール酸(CH3(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7COOH)
・(9,12,15)-リノレン酸(CH3(CH2CH=CH)3(CH2)7COOH)
・(6,9,12)-リノレン酸(CH3(CH2)3(CH2CH=CH)3(CH2)4COOH)
・エレオステアリン酸(CH3(CH2)3(CH=CH)3(CH2)7COOH)
・アラキドン酸(CH3(CH2)3(CH2CH=CH)4(CH2)3COOH)
脂肪酸エステル化合物の数平均分子量(Mn)が500以上2,000未満である場合には、高温保存性と低温定着性とのバランスに優れる。
本開示では、市販の脂肪酸エステル化合物を用いることも可能であり、例えば、日油社製の「WEP2」「WEP3」「WEP4」「WEP5」「WE6」「WE11」(以上、商品名)等が挙げられる。
脂肪酸エステル化合物の当該含有量が2~20質量部である場合には、低温定着性が良好で、かつ得られるトナーの粒径分布が狭い粒径の均一なトナーが得られる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができ、本開示の着色剤における分散性向上の観点から、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、負帯電性トナーを得る観点からは、負帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
帯電制御樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算値で、5,000~30,000の範囲内であり、好ましくは8,000~25,000の範囲内であり、より好ましくは10,000~20,000の範囲内である。
また帯電制御樹脂における4級アンモニウム基やスルホン酸塩基などの官能基を有する単量体の共重合割合は、0.5~12質量%の範囲内であり、好ましくは1.0~6質量%の範囲内であり、更に好ましくは1.5~3質量%の範囲内である。
本開示では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01~10質量部、好ましくは0.03~8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の当該添加量が0.01~10質量部の場合には、カブリ発生のおそれ及び印字汚れ発生のおそれがいずれも小さい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の割合で用いることが望ましい。
本開示では、重合性単量体、着色剤、スチレン系熱可塑性エラストマー及び離型剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサーMARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散安定化剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.1~20質量部あることが好ましく、0.2~10質量部であることがより好ましい。
上記(A-2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、結着樹脂、着色剤、スチレン系熱可塑性エラストマー及び離型剤を含む着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
重合性単量体組成物の液滴を安定に分散させた状態で重合を行うために、本重合工程においても上記(A-2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)に引き続き、攪拌による分散処理を行いながら重合反応を進行させてもよい。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
先ず、結着樹脂、着色剤、スチレン系熱可塑性エラストマー及び離型剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。
次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96~1.00の場合、印字の細線再現性に優れる。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることが好ましい。
上記工程を経て得られる本開示のトナーは、比較的低分子量の離型剤と併せて、前記スチレン系熱可塑性エラストマーを含むことにより、高温保存性と低温定着性とのバランスに優れ、かつ長期の高温条件下でも離型剤のブリードアウトが起きにくいトナーである。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[実施例1]
モノビニル単量体としてスチレン80.5部及びn-ブチルアクリレート19.5部(これらの単量体を共重合して得られた共重合体の計算Tg=55℃)、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:♯25B)7部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.5部、分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.2部、及びマクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.3部を、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行った後、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:アクリベース FCA-207P、スチレン/アクリル樹脂)1部、離型剤として脂肪酸エステル1(ステアリン酸ベヘニル、数平均分子量(Mn):592)を20部、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、エラストマーa(スチレン単量体単位の含有割合:24質量%、重量平均分子量(Mw):106,000、MI:20[g/10分]、日本ゼオン社製、商品名:Quintac 3270)5部を添加、混合して、重合性単量体組成物を得た。
なお、シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、D90が1.6μmであった。
離型剤の種類及び/又は添加量、並びに、スチレン系熱可塑性エラストマーの種類及び/又は添加量を、下記表1及び表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~実施例8、比較例1~比較例2のトナーを作製し、試験に供した。
なお、下記表1中の脂肪酸エステル2は、ペンタエリスリトールテトラステアレート(数平均分子量(Mn):1,200)である。
また、下記表1中のエラストマーeは、Quintac 3520(商品名、日本ゼオン社製、スチレン単量体単位の含有割合:15質量%、MI:7[g/10分])である。
まず、以下の通り、脂肪酸エステル3を合成した。
温度計、窒素導入管、攪拌機、及び冷却管を取り付けた4つロフラスコに、多価アルコールとしてポリグリセリン(阪本薬品工業社製、商品名:ポリグリセリン#500)100g(0.19mol)、及び脂肪酸としてベヘン酸(日油社製、商品名:NAA-222S)566g(1.6mol)を加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、24時間常圧で反応させた。
得られたエステル化粗生成物600gに、トルエン180g、及びn-プロパノール30gを入れ、8%水酸化カリウム水溶液100gを加え、70℃で30分間攪拌して脱酸を行い、30分間静置後水相部を除去した。
次いで、ここに、脱酸の工程で用いたエステル化粗生成物100部に対してイオン交換水を20部加え、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水相部を分離、除去する水洗を行った。廃水のpHが中性になるまでこの水洗を4回繰り返した。
得られたエステル相を180℃、1kPaの減圧条件下で溶媒を留去した後、ろ過を行い、脂肪酸エステル3を得た。脂肪酸エステル3の数平均分子量(Mn)は、2,450である。
なお、下記表2中のエラストマーbは、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン型ブロック共重合体(スチレン単量体単位の含有割合:30質量%、重量平均分子量(Mw):81,000、MI:0.1[g/10分]未満、クラレ社製、商品名:セプトン 4033)である。
比較例3中の脂肪酸エステル3の合成において、脂肪酸の種類と添加量を、ベヘン酸566gからステアリン酸205gとベヘン酸245gに変更したこと以外は、脂肪酸エステル3の合成と同様にして、脂肪酸エステル4を合成した。脂肪酸エステル4の数平均分子量(Mn)は、2,200である。
離型剤の種類及び添加量、並びに、スチレン系熱可塑性エラストマーの種類及び添加量を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4のトナーを作製し、試験に供した。
なお、下記表2中のエラストマーdは、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン型ブロック共重合体(スチレン単量体単位の含有割合:18質量%、MI:0.1未満[g/10分]未満、クラレ社製、商品名:セプトン 2004)である。
離型剤の種類及び添加量、並びに、スチレン系熱可塑性エラストマーの種類及び添加量を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例5のトナーを作製し、試験に供した。
なお、下記表2中のエラストマーcは、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン型ブロック共重合体(スチレン単量体単位の含有割合:65質量%、重量平均分子量(Mw):64,000、MI:8[g/10分]未満、クラレ社製、商品名:セプトン 2104)である。また、下記表2中の脂肪酸エステル3は、比較例3に用いたものと同様のものである。
(1)脂肪酸エステル化合物の分子量(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布)
脂肪酸エステル1~4をテトラヒドロフランに溶解して、0.2質量%溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、測定試料として以下の測定条件で測定した。なお、脂肪酸エステル化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、いずれもポリスチレン換算により求めたものである。
<測定条件>
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:Shodex GPC KF-402HQ 2本(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
溶離速度:0.3mL/分
検知器:RI(極性(+))
カラム温度:40℃
注入量:20μL
エラストマーa~dのメルトインデックス(MI)は、ASTM D-1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定した。
上記実施例1~実施例8及び比較例1~比較例5の各トナー、及びこれらトナーに使用された各着色樹脂粒子を評価した。詳細は以下の通りである。
a.体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)、及び粒径分布(Dv/Dn)
着色樹脂粒子を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤として界面活性剤水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10~30mL加え、20Wの超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)を測定し、粒径分布(Dv/Dn)を算出した。
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤としての界面活性剤0.02gを加え、更に着色樹脂粒子0.02gを加え、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度を3,000~10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000~10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名:FPIA-2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式1に示され、平均円形度は、その数平均を取ったものである。
計算式1:
(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
a.SEMブリード率の測定
まず、保管後トナーとして、温度45℃、かつ湿度80%の環境下で1か月保管した後のトナーを用意した。
保管後のトナーをSEM観察した。倍率2,000倍の条件にて、トナーの画像を10枚撮影した。次に、撮影した各トナー画像について、当該画像中の全てのトナー粒子の数(A)と、当該画像中における、離型剤がブリードアウトしたトナー粒子の数(B)とを、それぞれ数えた。その後、各トナー画像について、トナー粒子数(B)をトナー粒子数(A)により除し、さらに100を乗じた値を算出した。10枚のトナー画像について算出した当該値の平均を、そのトナーのSEMブリード率(%)とした。
印字耐久性試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ40枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、保管後トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
まず、保管後トナーとして、温度45℃、かつ湿度80%の環境下で1か月保管した後のトナーを用意した。
この保管後トナーを、高温高湿(H/H)環境下(温度:32.5℃、湿度:80%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND-1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値(%)とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。
なお、下記表1中、「>20000」とあるのは、20,000枚の時点においても、印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できたことを示す。
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。
定着試験は、黒ベタ(印字濃度100%)を印字して、改造プリンターの定着ロールの温度を5℃ずつ変化させて、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定し、温度-定着率の関係を求めて行った。
定着率は、黒ベタ(印字濃度100%)の印字領域においてテープ剥離を行い、テープ剥離前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式2により算出できる。
計算式2:
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD914)を用いて測定した。
この定着試験において、定着率が80%を超える最低の定着ロールの温度をトナーの最低定着温度とした。
トナー10gを100mLのポリエチレン製の容器に入れて密閉した後、所定の温度に設定した恒温水槽の中に該容器を沈め、8時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT-R)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間、篩を振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。
この凝集したトナーの質量が0.5g以下になる最高温度(℃)を、保存性の指標とした。
以下、表1及び表2を参照しながら、トナー評価結果について検討する。
表2より、比較例1及び比較例2のトナーは、いずれもスチレン系熱可塑性エラストマーを含まないトナーである。
表2より、比較例1及び比較例2のトナーは、SEMブリード率が18%以上と高く、保管後の印字耐久性の評価枚数が10,000枚以下と少ない。また、比較例1のトナーは、保存性評価温度が56℃と低い。
したがって、スチレン系熱可塑性エラストマーを含まない比較例1及び比較例2のトナーは、長期の高温条件下で離型剤のブリードアウトが起きやすいことが分かる。
表2より、比較例3~比較例5のトナーは、SEMブリード率が14%以上と高く、保管後の印字耐久性の評価枚数がいずれも12,000枚と少ない。また、比較例3~比較例5のトナーは、最低定着温度が160℃と高い一方、保存性評価温度が55℃と低い。
したがって、数平均分子量(Mn)が2,200以上の脂肪酸エステルを含む比較例3~比較例5のトナーは、高温保存性と低温定着性とのバランスに劣り、かつ、長期の高温条件下で離型剤のブリードアウトが起きやすいことが分かる。
表1より、実施例1~実施例8のSEMブリード率は7%以下と低く、保管後の印字耐久性の評価枚数は20,000枚を超える。また、実施例1~実施例8のトナーにおいて、最低定着温度が145℃以下と低いのに対し、保存性評価温度は57℃以上と高い。
したがって、着色樹脂粒子がスチレン系熱可塑性エラストマー、及び離型剤として脂肪酸エステル化合物を含有し、当該脂肪酸エステル化合物の数平均分子量(Mn)が500以上2,000未満であり、結着樹脂100質量部に対して、当該脂肪酸エステル化合物を2~20質量部含む実施例1~実施例8のトナーは、高温保存性と低温定着性とのバランスに優れ、かつ、長期の高温条件下でも離型剤のブリードアウトが起きにくいトナーである。
Claims (3)
- 結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含む静電荷像現像用トナーにおいて、
前記着色樹脂粒子は、さらにスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、かつ、
結着樹脂100質量部に対して、離型剤として数平均分子量(Mn)が500以上2,000未満である脂肪酸エステル化合物を2~20質量部含み、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、60,000~350,000であり、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーに含まれる芳香族ビニル単量体単位の割合は、15質量%以上27質量%未満であり、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロック及び少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを含むブロック共重合体であり、前記共役ジエン重合体ブロックは水素添加反応が行われていないイソプレン単位を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー(但し、前記着色樹脂粒子が、エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度70℃、数平均分子量704)と、スチレン/イソプレン熱可塑性エラストマーSIS5229(商品名、JSR株式会社製、酸価0)とを含有する場合を除く)。 - 結着樹脂100質量部に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマーを2~10質量部含むことを特徴とする、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、106,000~350,000であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
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