JP7131086B2 - 生薬鑑別用プライマーセット及びそれを用いた生薬鑑別方法 - Google Patents
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Description
本発明の生薬鑑別用キットによれば、本発明の生薬鑑別方法を容易に実施でき、様々な生薬を簡便に鑑別することができる。
1-1.概要
本発明の第1の態様は、生薬鑑別用プライマーセットである。本態様のプライマーセットは、核酸で構成され、後述する第2態様に記載の生薬鑑別方法において被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを同定するための手段として使用される。
以下で本明細書において頻用する用語について定義する。
本明細書において「生薬」とは、漢方薬の原料となり得る、薬理効果を有する天然物由来の物質をいい、動物、植物、又は菌類の全部又は一部、及び鉱物が含まれる。本明細書においては、特に第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日厚生労働省告示第64号)、日本薬局方外生薬規格2015(平成27年12月25日薬生審査発1225第1号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)に定める植物及び菌類由来の以下の生薬が該当する。具体的には、ハンゲ、テンナンショウ、シャクヤク、ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ、ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、シンイ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、オウレン、ショウキョウ/カンキョウ、サンシシ、オウバク、コウボク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、リョウキョウ、レンニク、コウカ、及びソボクである。
本明細書において「生薬鑑別用プライマー」(本明細書では、しばしば「プライマー」と省略して表記する。したがって、特段の断りがない限り、本明細書におけるプライマーとは、生薬鑑別用プライマーを意味する。)とは、後述する生薬鑑別方法で使用される核酸増幅用プライマーであり、19塩基~23塩基からなる核酸分子(オリゴヌクレオチド)で構成される。天然核酸(DNA及び/又はRNA)で構成されていることが好ましい。安定性が高く、合成が容易で、かつ低廉な点で、DNAで構成されているプライマーが特に好ましい。必要に応じて、プライマーを構成する塩基配列の全部又は一部に化学修飾核酸や擬似核酸を含んでいてもよい。さらに、プライマーは、標識物質及び/又は修飾物質で修飾されていてもよい。標識物質は、特に限定はしない。例えば、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質、又は放射性同位元素(例えば、32P、33P、35S)等を利用できる。蛍光物質の具体例として、FITC、DIG、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、Cyanine3、Cyanine5、Cyanine7、FAM、HEX、VIC、フルオレサミン及びその誘導体、及びローダミン及びその誘導体等が挙げられる。また、クエンチャー物質の具体例として、TAMRA、DABCYL、BHQ-1、BHQ-2、又はBHQ-3等が挙げられる。修飾物質も、特に限定はしない。例えば、ビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン若しくはニュートラアビジン、又は磁気ビーズ等が挙げられる標識物質や修飾物質は、各メーカーで販売される市販のものを用いることができる。
2-1.概要
本発明の第2の態様は生薬鑑別キットである。本態様の生薬鑑別キットは、被験植物が生薬の基原植物であるか否かを鑑別する第3態様に記載の生薬鑑別方法を実施する上で必要な要素を構成要素として包含する。本態様に生薬鑑別キットを用いることで、簡便に被験植物の生薬鑑別を行うことができる。
本態様の生薬鑑別キットは、第1態様に記載の生薬鑑別用プライマーセットを必須の構成要素として含む。本態様の生薬鑑別キットにおいて、一の生薬に対する鑑別用プライマーセットは、2組以上含んでいてもよい。例えば、シャクヤク鑑別用プライマーセットの場合、配列番号3及び4の1組のプライマーセットを単独で含んでいてもよいし、配列番号3及び4と配列番号5及び6の2組のプライマーセットを含んでいてもよい。また、一つのキットに含まれる生薬の種類は2種以上であってもよい。例えば、シンイとコウボクのそれぞれの生薬鑑別用プライマーセットを1つのキットに含むことができる。
3-1.概要
本発明の第3の態様は、生薬鑑別方法である。本態様の生薬鑑別方法は、第1態様に記載の生薬鑑別用プライマーセットを用いて生薬候補の被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを正確に同定することによって、その生薬候補が目的の生薬であることを鑑別する方法である。本態様の方法を用いることで、簡便かつ正確に生薬を鑑別することが可能となる。
本態様の生薬鑑別方法は、必須工程として核酸抽出工程、核酸増幅工程、塩基配列決定工程、及び比較鑑別工程を含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
「核酸抽出工程」とは、生薬候補の被検植物から核酸分子を抽出する工程である。本方法で検査対象となる被検植物は、多くの場合、蒸気処理、加熱、乾燥、溶液浸漬等の加工処理が施されている。したがって、それらの加工処理された被検植物の一部を採取し、当該分野における常法により核酸分子を抽出すればよい。核酸抽出方法は、抽出すべき核酸分子の種類によって好適な方法をもちいればよい。例えば、DNAを抽出する場合、CTAB(Cetyl trimethyl ammonium bromide)法、塩化ベンジル法等を利用することができる。またAGPC(酸性グアニジンチオシアネート・フェノール・クロロホルム)法が挙げられる。これらの具体的な手順等については、当該分野のプロトコルを参照すればよい。プロトコルには、例えば、Green, MR and Sambrook, J, (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkが挙げられる。さらに、植物体から各種核酸分子を抽出するキットが、キアゲン社、タカラバイオ社、TOYOBO社、Thermo Fisher Scientific社、プロメガ社等の各ライフサイエンスメーカーから市販されており、それらを利用することもできる。
「核酸増幅工程」とは、前記核酸抽出工程で得られた被検植物の核酸分子を鋳型に、第1態様に記載の生薬鑑定用プライマーセットを用いて、特定の核酸領域を増幅させる工程である。
「塩基配列決定工程」とは、前記核酸増幅工程で得られた増幅産物の塩基配列を決定する工程である。
核酸増幅工程後に得られる増幅産物は、被検植物における特定の核酸領域である。この増幅産物の塩基配列を決定する。
「比較鑑別工程」とは、前記塩基配列決定工程で決定された被検植物における特定の核酸領域の塩基配列を、目的とする生薬の基原植物における標準配列と比較して、両者の塩基配列が一致したときに、その被検植物は、その基原植物であって、前記生薬候補は、目的の生薬であると鑑別する工程である。
ハンゲ又はテンナンショウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とハンゲの標準配列である配列番号100で示す塩基配列、又はテンナンショウの標準配列である配列番号101で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列がいずれかで一致したときに前記被検植物は、ハンゲ又はテンナンショウの基原植物であり、前記ハンゲ又はテンナンショウ候補は、ハンゲ又はテンナンショウであると鑑別する。例えば、増幅産物の塩基配列が配列番号100で示す塩基配列と完全に一致した場合、その生薬候補は、ハンゲであると鑑別できる。
シャクヤク又はボタンピ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号3及び4、配列番号5及び6又は配列番号3及び229で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、例えば配列番号3及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシャクヤクの標準配列である配列番号102、又はボタンピの標準配列である配列番号211で示す塩基配列、配列番号5及び6で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と、シャクヤクの標準配列である配列番号103、又はボタンピの標準配列である配列番号221で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシャクヤク又はボタンピの基原植物であり、前記シャクヤク又はボタンピ候補はシャクヤク又はボタンピであると鑑別する。
ケイヒ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号7及び8で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とケイヒの標準配列である配列番号104で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はケイヒの基原植物であり、前記ケイヒ候補はケイヒであると鑑別する。
トウキ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び10、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び10で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とトウキの標準配列である配列番号105で示す塩基配列、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とトウキの標準配列である配列番号106で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はトウキの基原植物であり、前記トウキ候補はトウキであると鑑別する。
ソウジュツ又はビャクジュツ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号13及び14で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とソウジュツ標準配列である配列番号107~109のいずれかで示す塩基配列、又はビャクジュツの標準配列である配列番号110、及び289~291のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列がいずれかで一致したときに前記被検植物は、ソウジュツ又はビャクジュツの基原植物であり、前記ソウジュツ又はビャクジュツ候補は、ソウジュツ又はビャクジュツであると鑑別する。
サイコ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号15及び16で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサイコの標準配列である配列番号111又は294で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサイコの基原植物であり、前記サイコ候補はサイコであると鑑別する。
テンモンドウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号17及び18で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とテンモンドウの標準配列である配列番号112~115、及び299のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンモンドウの基原植物であり、前記テンモンドウ候補はテンモンドウであると鑑別する。
サンシュユ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号19及び20で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサンシュユの標準配列である配列番号116で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシュユの基原植物であり、前記サンシュユ候補はサンシュユであると鑑別する。
ビャクゴウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号21及び22、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号21及び22で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とビャクゴウの標準配列である配列番号117、及び311~314のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とビャクゴウの標準配列である配列番号118、及び324~326のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はビャクゴウの基原植物であり、前記ビャクゴウ候補はビャクゴウであると鑑別する。
コウジン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号25及び26、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号25及び26で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウジンの標準配列である配列番号119で示す塩基配列、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウジンの標準配列である配列番号120で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウジンの基原植物であり、前記コウジン候補はコウジンであると鑑別する。
テンマ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号29及び4、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号29及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とテンマの標準配列である配列番号121で示す塩基配列、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とテンマの標準配列である配列番号122で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンマの基原植物であり、前記テンマ候補はテンマであると鑑別する。
オウゴン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び32、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び32で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウゴンの標準配列である配列番号123、又は391で示す塩基配列、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウゴンの標準配列である配列番号124で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウゴンの基原植物であり、前記オウゴン候補はオウゴンであると鑑別する。
ニンジン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び34、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び34で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とニンジンの標準配列である配列番号125で示す塩基配列、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とニンジンの標準配列である配列番号126で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はニンジンの基原植物であり、前記ニンジン候補はニンジンであると鑑別する。
ショウマ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号37及び38で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号127~130、及び401のいずれかで示す塩基配列、配列番号11及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号131~134、及び409のいずれかで示す塩基配列、配列番号37及び40で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号135~138、及び415~416のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号139~142のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウマの基原植物であり、前記ショウマ候補はショウマであると鑑別する。
チョレイ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号42及び43で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とチョレイの標準配列である配列番号143及び430~432のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョレイの基原植物であり、前記チョレイ候補はチョレイであると鑑別する。
ブシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号144、145及び433~434のいずれかで示す塩基配列、配列番号45及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号146、147及び439~440のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号148又は149で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はブシの基原植物であり、前記ブシ候補はブシであると鑑別する。
シンイ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、及び配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのtrnLイントロン領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号47及び48で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号150、及び678~681のいずれかで示す塩基配列、配列番号49及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号151、及び693~696のいずれかで示す塩基配列、配列番号230及び231で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号450~454のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号465~469のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシンイの基原植物であり、前記シンイ候補はシンイであると鑑別する。
チョウジ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号51及び52で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とチョウジの標準配列である配列番号152で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウジの基原植物であり、前記チョウジ候補はチョウジであると鑑別する。
チョウトウコウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号53及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号153で示す塩基配列、配列番号55及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号154で示す塩基配列、配列番号57及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号155で示す塩基配列、そして配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号156で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウトウコウの基原植物であり、前記チョウトウコウ候補はチョウトウコウであると鑑別する。
コウブシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号59及び60、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号59及び60で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウブシの標準配列である配列番号157で示す塩基配列、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウブシの標準配列である配列番号158で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウブシの基原植物であり、前記コウブシ候補はコウブシであると鑑別する。
オウレン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号62及び63、又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrbcL領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号62及び63で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウレンの標準配列である配列番号159~162のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウレンの標準配列である配列番号163~166のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウレンの基原植物であり、前記オウレン候補はオウレンであると鑑別する。
ショウキョウ/カンキョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号66及び67で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とショウキョウ/カンキョウの標準配列である配列番号167で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウキョウ/カンキョウの基原植物であり、前記ショウキョウ/カンキョウ候補はショウキョウ/カンキョウであると鑑別する。
サンシシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号11及び68で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサンシシの標準配列である配列番号168で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシシの基原植物であり、前記サンシシ候補はサンシシであると鑑別する。
オウバク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号69及び70で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とオウバクの標準配列である配列番号169で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウバクの基原植物であり、前記オウバク候補はオウバクであると鑑別する。
コウボク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrpl16イントロン領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号71及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号170~172のいずれかで示す塩基配列、配列番号71及び73で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号173~175のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号176~178のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウボクの基原植物であり、前記コウボク候補はコウボクであると鑑別する。
タクシャ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に配列番号75及び76、配列番号77及び78、又は配列番号75及び79、又は配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号75及び76で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号179又は180で示す塩基配列、配列番号77及び78で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号181又は182で示す塩基配列、配列番号75及び79で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号183又は184で示す塩基配列、そして配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号185又は186で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はタクシャの基原植物であり、前記タクシャ候補はタクシャであると鑑別する。
キッソウコン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号81及び82で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とキッソウコンの標準配列である配列番号187で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はキッソウコンの基原植物であり、前記キッソウコン候補はキッソウコンであると鑑別する。
ボクソク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号83及び84、配列番号83及び85、配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号83及び84で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号188~191、及び593~594のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号83及び85で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号192~195、及び601~602のいずれかで示す塩基配列とを、そして配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号196~199、及び609~612のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はボクソクの基原植物であり、前記ボクソク候補はボクソクであると鑑別する。
レンギョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号88及び89、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号88及び89で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンギョウの標準配列である配列番号200で示す塩基配列、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンギョウの標準配列である配列番号201で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンギョウの基原植物であり、前記レンギョウ候補はレンギョウであると鑑別する。
リョウキョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号92及び93、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号92及び93で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とリョウキョウの標準配列である配列番号202又は633で示す塩基配列、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とリョウキョウの標準配列である配列番号203又は638で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はリョウキョウの基原植物であり、前記リョウキョウ候補はリョウキョウであると鑑別する。
レンニク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号95及び4、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号92及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンニクの標準配列である配列番号204で示す塩基配列、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンニクの標準配列である配列番号205、又は646で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンニクの基原植物であり、前記レンニク候補はレンニクであると鑑別する。
コウカ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号97及び4、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号97及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウカの標準配列である配列番号206で示す塩基配列、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウカの標準配列である配列番号207で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウカの基原植物であり、前記コウカ候補はコウカであると鑑別する。
ソボク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号98及び99で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とソボクの標準配列である配列番号208で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が完全に一致したときに前記被検植物はソボクの基原植物であり、前記ソボク候補はソボクであると鑑別する。
第十七改正日本薬局方において、シャクヤクの基原植物は、シャクヤクPaeonia lactiflora、またボタンピの基原植物はボタンPaeonia suffruticosaと規定されている。しかし、両者は近縁で類似しているため互いに取り違える可能性がある他、市場や園芸に供される種苗にはそれらの近縁他種であるP. veitchiiやP. officinalisがあり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、シャクヤク及びボタンピの鑑別方法における一例を示す。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるシャクヤクPaeonia lactiflora及びボタンピP. suffruticosaの一部を採取し、また、シャクヤク近縁種のPaeonia veitchii、P. tenuifolia、P. sinjiangensisについては、その押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。他の近縁種であるP. anomala、P. officinalis ssp. microcarpa、P. rhodia、P. broteri、P. arietina、及びP. banaticaについてはGenBank (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)より相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより特定の核酸領域を増幅した。核酸増幅反応条件は、生薬鑑別用プライマーごとに適宜、適切な条件を定めることができる。
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-1F (配列番号3) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:002-1R(White T.J., et al. 1990, Amplification and direct sequencing of fungal ribosomal RNA genes for phylogenetics. In: Innis M. A., Gelfand D. H., Sninsky J. J. and White T. J. (eds.), PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications. pp. 315-322. Academic Press, San Diego記載のユニバーサルプライマーITS2:配列番号4) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer (ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-2F (配列番号5) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー: 002-2R (配列番号6) (10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-1F (配列番号3) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:002-3R(配列番号229) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
PCRは、上記各鋳型DNAをPCR反応液1~3と共に0.2mLマイクロチューブに入れ、Step Down法、すなわち(94℃, 4min)×1サイクル、(95℃, 30sec; 70℃, 15sec; 72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;66℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;62℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;58℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;54℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;48℃, 1.5 min;72℃, 2.5 min)×20サイクル、そして(72℃, 7 min.)×1サイクルの条件で、GeneAmp9700(Thermo Fisher Scientific社)等のサーマルサイクラーを用いて行った。
PCR後に、ゲル電気泳動法により目的とする特定の核酸領域の増幅産物を確認し、それを単離した。具体的にはPCR後の反応液に2μLのBlue Juiceを添加してサンプル溶液を調製した。total 2% NuSieve+SeaKEM (タカラバイオ社)+1×TAEのゲルを、Mupid EX-U(ミューピッド社)に充填した1×TAEバッファ中に浸漬し、well中にサンプル溶液を15μL積載した後、100V×約30分間の条件で電気泳動を行った、目標PCR産物のLoading量は、15μL LED 500nmトランスイルミネーターLB-16BG(日本ジェネティクス社)+ゲル撮影装置Printgraph AE-6931 FXCF (ATTO社)で確認し、画像撮影を行った(図示せず)。
続いて、目的の増幅産物から予想されるサイズのバンドを使い捨てメスで切り出し、illustra GFX PCR Purification Kit (GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて抽出した後、同キット中のType4 buffer 20μLで溶出した。
サイクルシーケンス反応の最適化のためにNanodrop 2000C(バイオメディカルサイエンス社)を用いて増幅産物の濃度測定を行い、適正濃度になるようにTEで希釈した。BigDye Terminator v.3.1溶液(Thermo Fisher Scientific社)0.8μL、5× Buffer(Thermo Fisher Scientific社)0.4μL、D.W. 0.8μL、プライマー(002-2F/2R)(1pmol/μL)1μL、精製増幅産物1μLを混合し、GeneAmp9700(Thermo Fisher Scientific社)+200μLを96wellプレートでBigDye Terminator v.3.1マニュアルで指定された条件でサイクルシーケンシングを行った。反応後、BigDye Terminator v.3.1マニュアル中で指定されたEDTAエタノール沈殿法により、精製増幅産物を得た。ABI PRISM(登録商標)3500xL Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific社)で、50cmキャピラリー、POP7を用いて同機器のマニュアルに従い、増幅産物の塩基配列を決定した。その後、VerctorNTI 9.0 for Windows (Thermo Fisher Scientific社)中のContigExpressにて、PCR反応液1及びPCR反応液2のそれぞれの各種増幅産物のフォワード配列及びリバース配列を比較して信頼性の高い配列を決定した。BioEdit v7.2.5 for Windows (Tom Hall 2013)にて基原植物であるシャクヤク又はボタンピの標準配列と、シャクヤク/ボタンピ近縁種の特定の核酸領域の塩基配列との差異を検証した。
結果を表3に示す。
第十七改正日本薬局方において、ハンゲ/テンナンショウの基原植物は、ハンゲがカラスビシャクPinellia ternataで、テンナンショウがマイヅルテンナンショウArisaema heterophyllum 、A. erubescens、A. amurense、又はその他同属の近縁植物 (Araceae)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるP. pedatisecta等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ハンゲ/テンナンショウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のハンゲの基原植物であるカラスビシャクPinellia ternata、及びテンナンショウの基原植物であるマイヅルテンナンショウArisaema heterophyllum、A. erubescens、A. amurense及びこれらの同属近縁植物の一部から抽出した。また、近縁種のうち、P. yaolupingensisについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 001-1F (配列番号1) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:001-1R(配列番号2) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
結果を表4に示す。
第十七改正日本薬局方において、ケイヒの基原植物は、シナニッケイCinnamomum cassiaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. javanicum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ケイヒの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のケイヒの基原植物であるシナニッケイC. cassiaの一部、及びケイヒ近縁種のうちC. sieboldii,C. burmanii,C. zeylanicumについては押葉標本の一部をそれぞれ採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、C. reticulatum、C. insularimontanum、及びC. japonicumについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 003-1F (配列番号7) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:003-1R(配列番号8) (10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表5に示す。
シナニッケイC. cassiaと近縁種を鑑別するためには8位及び93位の同定が必要条件あるが、より精度の高い鑑別には上記12部位を含めた14部位の塩基を同定することが好ましい。
第十七改正日本薬局方において、トウキの基原植物は、トウキAngelica acutiloba又はホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. sinensis等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、トウキの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のトウキの基原植物であるトウキAngelica acutiloba及びホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeの一部を採取し、また近縁種のうち、A. sinensisについては収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のうち、A. dahurica var. formosana、A. pubescens、A. gigas、Perissocoeleum barclayae、Niphogeton joseiについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:004-1F(配列番号9;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:004-1R(配列番号10)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL,10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:004-2F(配列番号11; White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL,リバースプライマー:004-2R(配列番号12)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表6に示す。
第十七改正日本薬局方において、ソウジュツの基原植物はホソバオケラAtractylodes lancea、A. chinensis 又はそれらの雑種(Compositae)、またビャクジュツの基原植物はオケラ A. japonica(和ビャクジュツ)又はオオバナオケラ A. macrocephala (Atractylodes ovata)と規定されている。しかし市場にはビャクジュツがソウジュツとして、またソウジュツがビャクジュツとして流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ソウジュツ/ビャクジュツの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又はソウジュツ、及びビャクジュツの基原植物全種の押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:005-1F(配列番号13)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:005-1R(配列番号14)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表7に示す。
第十七改正日本薬局方において、サイコの基原植物は、ミシマサイコBupleurum falcatumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるB. ranunculoides等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サイコの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるミシマサイコB. falcatumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。なお、ミシマサイコ種内には複数の系統が含まれ、染色体数の異なるもの(2n=26と2n=20)や、中国では別種(B. scorzonerifolium,B. chinense)として扱われるものがあり、それぞれ配列が異なる。また、近縁種のB. ranunculoides、B. bicaule、B. smithiiについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:006-1F(配列番号15)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:006-1R(配列番号16)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表8に示す。
第十七改正日本薬局方において、テンモンドウの基原植物は、クサスギカズラAsparagus cochinchinensisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. meioclados等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、テンモンドウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のテンモンドウの基原植物であるクサスギカズラA. cochinchinensisの一部を採取し、また近縁種のうち、A. meioclados、A. lycopodineus、及びA. officinalisについては押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。その他の近縁種であるA. racemosus、及びA. schoberioidesについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:007-1F(配列番号17)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:007-1R(配列番号18)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表9に示す。
第十七改正日本薬局方において、サンシュユの基原植物は、サンシュユCornus officinalisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. mas等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サンシュユの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるサンシュユC. officinalisの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のC. mas、C. eydeana、C. chinensis、及びC. stracheyiについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:008-1F(配列番号19)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:008-1R(配列番号20)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表10に示す。
第十七改正日本薬局方において、ビャクゴウの基原植物は、オニユリLilium lancifolium、ハカタユリL. brownii var. colchesteri、L. brownii、又はL. pumilumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるL. concolor等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ビャクゴウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のビャクゴウの基原植物であるオニユリL. lancifoliumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:009-1F(配列番号21)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:009-1R(配列番号22)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:009-2F(配列番号23)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:009-2R(配列番号24)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表11に示す。
第十七改正日本薬局方において、ニンジン/コウジンの基原植物は、オタネニンジンPanax ginsengと規定されている.しかし市場には近縁種であるP. quinquefolius等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ニンジン/コウジンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のニンジン/コウジンの基原植物であるオタネニンジンP. ginsengの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:013-1F(配列番号9;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:013-1R(配列番号34)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:013-2F(配列番号35)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:013-2R(配列番号36;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:010-1F(配列番号25)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:010-1R(配列番号26)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:010-2F(配列番号27)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:010-2R(配列番号28)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表12に示す。
第十七改正日本薬局方において、テンマの基原植物は、オニノヤガラGastrodia elataと規定されている。しかし、市場には近縁種であるG. pubilabiata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、テンマの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のテンマの基原植物であるオニノヤガラG. elataの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:011-1F(配列番号29)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:011-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:011-2F(配列番号30)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:011-2R(配列番号31)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表13に示す。
第十七改正日本薬局方において、オウゴンの基原植物は、コガネバナScutellaria baicalensisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるS. amoena等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウゴンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウゴンの基原植物であるコガネバナS. baicalensisの一部を採取し、また近縁種のうちS. amoenaについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるS. indica及びS. pekinensisについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:012-1F(配列番号9)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:012-1R(配列番号32)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:012-2F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:012-2R(配列番号33)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表14に示す。
第十七改正日本薬局方において、ショウマの基原植物は、サラシナショウマCimicifuga simplex、C. dahurica、C. foetida、又はC. heracleifoliaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. racemosa等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ショウマの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のショウマの基原植物であるC. simplex、C. dahurica、C. foetida、及びC. heracleifoliaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種Actaea racemosa(=C. racemosa)、C. acerina、A. japonica(= C. japonica)についてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-1F(配列番号37)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-1R(配列番号38)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-2F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-2R(配列番号39)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-1F(配列番号37)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-3R(配列番号40)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-3F(配列番号41)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-2R(配列番号39)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表15に示す。
第十七改正日本薬局方において、チョレイの基原植物は、チョレイマイタケPolyporus umbellatusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるF.fomentarius等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョレイの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のチョレイの基原植物であるチョレイマイタケPolyporus umbellatusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種F. fomentarius、及びTinctoporellus epimiltinusについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:015-1F(配列番号42)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:015-1R(配列番号43)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表16に示す。
チョレイマイタケPolyporus umbellatusと近縁他種を区別するためには15位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には、それに加えて、ITS1領域の前記6部位からなる群から選択される塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
第十七改正日本薬局方において、ブシの基原植物は、Aconitum carmichaeli又は オクトリカブトA. japonicumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. hemsleyanum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ブシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のブシの基原植物であるAconitum carmichaeli及びA. japonicumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のA. hemsleyanum、A. campylorrhynchum、A. austroyunnanense、及びA. bucovinenseについてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS1領域及びITS2領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-1F(配列番号44)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-1R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-2F(配列番号45)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-2R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-3F(配列番号46)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-3R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表17に示す。
第十七改正日本薬局方において、シンイの基原植物は、タムシバMagnolia salicifolia、コブシM.kobus、M.biondii、M.sprengeri、又はハクモクレンM.heptapeta (M.denudata)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるM.macrophylla等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、シンイの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のシンイの基原植物であるタムシバMagnolia salicifolia、コブシM.kobus、M.biondii、M.sprengeri、又はハクモクレンM.heptapeta (M.denudata)の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のtrnL intron領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:trnL intron領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:017-3F(配列番号230)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:017-3R(配列番号231)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:trnL intron領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:017-4F(配列番号232)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:017-2R(配列番号50)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表18に示す。
第十七改正日本薬局方において、チョウジの基原植物は、チョウジSyzygium aromaticum (Eugenia caryophyllata)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるS. jambos等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョウジS. aromaticumの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるチョウジS. aromaticumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:018-1F(配列番号51)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:018-1R(配列番号52)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表19に示す。
第十七改正日本薬局方において、チョウトウコウの基原植物は、カギカズラUncaria rhynchophylla、U. sinensis又はU. macrophyllaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるU. scandens等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョウトウコウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のチョウトウコウの基原植物であるカギカズラUncaria rhynchophylla、U. sinensis、及びU. macrophyllaの一部を採取し、また、近縁種のU. hirsuta、U. sessilifructus、U. laevigataについては押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるU. scandens、及びU. lancifoliaについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:019-4F(配列番号58)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:019-4R(配列番号56)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表20に示す。
第十七改正日本薬局方において、コウブシの基原植物は、ハマスゲCyperus rotundusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. articulatus等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウブシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のコウブシの基原植物であるハマスゲC. rotundusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のC. articulates、C. insularis、C. ustulatus、及びC. corymbosusについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:020-1F(配列番号59)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:020-1R(配列番号60)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:020-2F(配列番号41)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:020-2R(配列番号61)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表21に示す。
第十七改正日本薬局方において、オウレンの基原植物は、オウレンCoptis japonica、C. chinensis、C. deltoidea、又はC. teetaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. quinquesecta等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウレンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウレンの基原植物であるオウレンCoptis japonica、C. chinensis、C. deltoidea、又はC. teetaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるC. omeiensis、及びC. quinquesectaについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のrbcL領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:rbcL領域1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:021-1F(配列番号62)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:021-1R(配列番号63)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:rbcL領域2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:021-2F(配列番号64)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:021-2R(配列番号65)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表22に示す。
第十七改正日本薬局方において、ショウキョウ/カンキョウの基原植物は、ショウガZingiber officinaleと規定されている。しかし、市場には近縁種であるZ. montanum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ショウキョウ/カンキョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のショウキョウ/カンキョウの基原植物であるショウガZ. officinaleの一部を採取し、また近縁種のZ. montanumについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。他の近縁種であるZ. densissimum、Z. orbiculatum、Z. rubens、Z. sulphureum、Z. corallinum、Z. zerumbet、及びZ. engganoensisについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のmatK領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:matK領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:022-1F(配列番号66)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:022-1R(配列番号67)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表23に示す。
第十七改正日本薬局方において、サンシシの基原植物は、クチナシGardenia jasminoidesと規定されている。しかし、市場には近縁種であるG. thunbergia等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サンシシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のサンシシの基原植物であるクチナシG. jasminoidesの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:023-1F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:023-1R(配列番号68)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表24に示す。
第十七改正日本薬局方において、オウバクの基原植物は、キハダPhellodendron amurense又はP. chinenseと規定されている。しかし、市場には近縁種であるTetradium glabrifolium等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウバクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウバクの基原植物であるキハダP. amurense又はP. chinenseの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のT. glabrifolium及びZanthoxylum schinifoliumについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:024-1F(配列番号69)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:024-1R(配列番号70)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表25に示す。
第十七改正日本薬局方において、コウボクの基原植物は、ホオノキMagnolia obovata (M. hypoleuca)、M. officinalis又はM. officinalis var. bilobaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるM. tripetala等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウボクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のコウボクの基原植物であるホオノキM. obovata、M. officinalis又はM. officinalis var. bilobaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のrpl16 intron領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:rpl16 intron領域1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-1F(配列番号71)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-1R(配列番号72)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:rpl16 intron領域2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-1F(配列番号71)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-2R(配列番号73)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:rpl16 intron領域3増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-2F(配列番号74)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-1R(配列番号72)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表26に示す。
第十七改正日本薬局方において、タクシャの基原植物は、サジオモダカAlisma orientaleと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. canaliculatum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、タクシャの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のタクシャの基原植物であるサジオモダカA. orientaleの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号75)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-1R(配列番号76)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-2F(配列番号77)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-2R(配列番号78)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号75)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-3R(配列番号79)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号77)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-4R(配列番号80)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表27に示す。
第十七改正日本薬局方において、キッソウコンの基原植物は、カノコソウValeriana faurieiと規定されている。しかし、市場には近縁種であるV. officinalis等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、キッソウコンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のキッソウコンの基原植物であるカノコソウV. faurieiの一部を採取し、また近縁種のうちV. officinalis、V. jatamansi、及びV. amurensisについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のうちV. sichuanica、V. stenoptera、及びV. minutifloraについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:027-1F(配列番号81)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:027-1R(配列番号82)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表28に示す。
第十七改正日本薬局方において、ボクソクの基原植物は、クヌギQuercus acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、又はアベマキQ. variabilisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるQ. trojana等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ボクソクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のボクソクの基原植物であるクヌギQ. acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、又はアベマキQ. variabilisの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のQ. trojana、Q. ilex、及びQ. rotundifolia, Q. suberについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-1F(配列番号83)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-1R(配列番号84)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-1F(配列番号83)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-2R(配列番号85)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-2F(配列番号86)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-3R(配列番号87)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表29に示す。
増幅されたITS1領域#1の核酸断片において、121位がC(シトシン)となるのはクヌギQ. acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、及びアベマキQ. variabilisのみであった。したがって、これら部位は単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種を他の近縁種と鑑別することができる。また、ITS1領域#1の核酸断片において検出された6カ所の鑑別部位、1位、16位、19位、44位、61位、及び70位については、各部位単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種と他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ボクソク基原植物4種を他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
第十七改正日本薬局方において、レンギョウの基原植物は、レンギョウForsythia suspensaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるF. viridissima等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、レンギョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるレンギョウF. suspensaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:029-1F(配列番号88)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:029-1R(配列番号89)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:029-2F(配列番号90)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:029-2R(配列番号91)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表30に示す。
増幅されたITS1領域の核酸断片において、2位がT(チミン)、52位がC(シトシン)となるのはレンギョウF. suspensaのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報でレンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別することができる。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において、55位及び60位がC(シトシン)となるのはレンギョウF. suspensaのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でレンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別することができる。
レンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別するには、前記各部位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、4つの部位を全て解析するのが好ましい。
第十七改正日本薬局方において、リョウキョウの基原植物は、Alpinia officinarumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. calcarata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、リョウキョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のリョウキョウの基原植物であるA. officinarumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種であるA. calcarata、A. formosana、A. uraiensis、及びA. shimadaeについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のmatK領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:matK領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:030-1F(配列番号92)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:030-1R(配列番号93)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:matK領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:030-1F(配列番号66)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:030-1R(配列番号94)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表31に示す。
また、増幅されたmatK領域#2の核酸断片において、115位がA(アデニン)となるのはA. officinarumのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でA. officinarumと他の近縁種とを鑑別することができる。
リョウキョウと他の近縁種の鑑別には、前記2つのmatK領域における2つの部位のいずれかの塩基情報で足りるが、より高い確度の鑑別のためには、両領域を解析することが好ましい。
第十七改正日本薬局方において、レンニクの基原植物は、ハスNelumbo nuciferaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるN. lutea等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、レンニクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるハスN. nuciferaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のN. lutea及びN. pentapetalaについては、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:031-1F(配列番号95)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:031-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:031-2F(配列番号96)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:031-2R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表32に示す。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において、69位がC(シトシン)、及び111位がG(グアニン)となるのはハスN. nuciferaのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でハスN. nuciferaを他の近縁種と鑑別することができる。
ハスN. nuciferaを他の近縁種と鑑別するには、前記各部位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、4つの部位を全て解析するのが好ましい。
第十七改正日本薬局方において、コウカの基原植物は、ベニバナCarthamus tinctoriusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. glaucus等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウカの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるベニバナC. tinctoriusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:032-1F(配列番号97)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:032-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:032-2F(配列番号44)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:032-2R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表33に示す。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において検出された7カ所の鑑別部位、79位、114位、130位、167位、247位、270位、及び315位については、各部位単独の塩基情報でベニバナC. tinctoriusと他の近縁種とを鑑別できなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ベニバナC. tinctoriusを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
第十七改正日本薬局方において、ソボクの基原植物は、Caesalpinia sappanと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. angulata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ソボクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるC. sappanの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:033-1F(配列番号98)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:033-1R(配列番号99)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表34に示す。
C. sappanを他の近縁種と鑑別するには、前記21位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、後述した9つの部位を全て解析するの他好ましい。
(目的)
本発明の生薬鑑別用プライマーセットにより、第十七改正日本薬局方において規定されている生薬の基原植物及びその近縁種のみが増幅され、遠縁の植物種は増幅されないことを確認する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、被験対象植物の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。
被験対象植物には、シャクヤクの基原植物であるシャクヤクPaeonia lactiflora及びその近縁種でボタンピの基原植物であるボタンP. suffruticosa、ケイヒの基原植物であるシナニッケイCinnamomum cassia、タクシャの基原植物であるサジオモダカAlisma orientale、及びチョウトウコウの基原植物であるカギカズラUncaria rhynchophyllaを用いた。
抽出した鋳型DNAを用いてPCRを行った。使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
なお、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットには、以下の4組を用いた。
(プライマーセット#1)002-1F & 002-1R:シャクヤク用プライマーセット
(プライマーセット#2)003-1F & 003-1R:ケイヒ用プライマーセット
(プライマーセット#3)026-1F & 026-1R:タクシャ用プライマーセット
(プライマーセット#4)019-4F & 019-2R:チョウトウコウ用プライマーセット
プライマーセット#1~#4を含むPCR反応液をそれぞれPCR反応液#1~#4とした。
PCRは、上記各鋳型DNAをPCR反応液#1~#4と共に0.2mLマイクロチューブに入れ、Step Down法、すなわち(94℃, 4min)×1サイクル、(95℃, 30sec; 70℃, 15sec; 72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;66℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;62℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;58℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;54℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;48℃, 1.5 min;72℃, 2.5 min)×20サイクル、そして(72℃, 7 min)×1サイクルの条件で、サーマルサイクラーTprofessional Thermocycler 070-951 (Biometra社)を用いて行った。
PCR後、ゲル電気泳動法により反応液20μLを2% Ex-Gel iBase(Thermo Fisher Scientifics社)+プログラム7で泳動し、LED 500nmトランスイルミネーターLB-16BG(日本ジェネティクス社)+ゲル撮影装置Printgraph AE-6931 FXCF (ATTO)で目標PCR産物を確認し、画像撮影を行った。
図1~4に結果を示す。図1は、プライマーセット#1を含むPCR反応液#1(シャクヤク用)、図2は、プライマーセット#2を含むPCR反応液#2(ケイヒ用)、図3は、プライマーセット#3を含むPCR反応液#3(タクシャ用)、そして図4は、プライマーセット#4を含むPCR反応液#4(チョウトウコウ用)である。
Claims (4)
- 生薬の鑑別用プライマーセットであって、
前記生薬がハンゲ/テンナンショウであり、
前記プライマーセットは、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである、前記プライマーセット。 - 生薬の鑑別用プライマーセットを含む生薬鑑別キットであって、
前記生薬がハンゲ/テンナンショウ、及び
シャクヤク/ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ/ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、シンイ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、オウレン、ショウキョウ/カンキョウ、サンシシ、オウバク、コウボク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、リョウキョウ、レンニク、コウカ、及びソボクからなる群から選択される1以上の生薬であり、
前記生薬の鑑別用プライマーセットは、
請求項1に記載のハンゲ/テンナンショウの鑑別用プライマーセット、及び
他の生薬のプライマーセットは、
シャクヤク/ボタンピのときに配列番号3及び4、配列番号5及び6、又は配列番号3及び229、
ケイヒのときに配列番号7及び8、
トウキのときに配列番号9及び10、又は配列番号11及び12、
ソウジュツ/ビャクジュツのときに配列番号13及び14、
サイコのときに配列番号15及び16、
テンモンドウのときに配列番号17及び18、
サンシュユのときに配列番号19及び20、
ビャクゴウのときに配列番号21及び22、又は配列番号23及び24、
コウジンのときに配列番号25及び26、又は配列番号27及び28、
テンマのときに配列番号29及び4、又は配列番号30及び31、
オウゴンのときに配列番号9及び32、又は配列番号11及び33、
ニンジンのときに配列番号9及び34、又は配列番号35及び36、
ショウマのときに配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39、
チョレイのときに配列番号42及び43、
ブシのときに配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4、
シンイのときに配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、又は配列番号232及び50、
チョウジのときに配列番号51及び52、
チョウトウコウのときに配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56、
コウブシのときに配列番号59及び60、又は配列番号41及び61、
オウレンのときに配列番号62及び63、又は配列番号64及び65、
ショウキョウ/カンキョウのときに配列番号66及び67、
サンシシのときに配列番号11及び68、
オウバクのときに配列番号69及び70、
コウボクのときに配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72、
タクシャのときに配列番号75及び76、配列番号77及び78、配列番号75及び79、又は配列番号77及び80、
キッソウコンのときに配列番号81及び82、
ボクソクのときに配列番号83及び84、配列番号83及び85、又は配列番号86及び87、
レンギョウのときに配列番号88及び89、又は配列番号90及び91、
リョウキョウのときに配列番号92及び93、又は配列番号66及び94、
レンニクのときに配列番号95及び4、又は配列番号96及び36、
コウカのときに配列番号97及び4、又は配列番号44及び36、及び
ソボクのときに配列番号98及び99
からなる群から選択される前記生薬鑑別キット。 - 生薬の基原植物から調製された核酸を鋳型に、その生薬の鑑別用プライマーを用いて核酸増幅反応して得られる増幅産物の塩基配列情報を記載した塩基配列表を含む、請求項2に記載の生薬鑑別キット。
- ハンゲ/テンナンショウ候補がハンゲ/テンナンショウかその疑似生薬かを鑑別する方法であって、
前記ハンゲ/テンナンショウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、
抽出された核酸を鋳型に、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、
増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び
増幅産物の塩基配列とハンゲ又はテンナンショウの基原植物由来の生薬標準配列であり、それぞれ配列番号100又は101で示す塩基配列とを比較し、両者の塩基配列が一致したときには前記ハンゲ/テンナンショウ候補はハンゲ又はテンナンショウであり、一致しないときにはハンゲ又はテンナンショウの疑似生薬であると鑑別する工程
を含む前記鑑別方法。
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