JP7131086B2 - 生薬鑑別用プライマーセット及びそれを用いた生薬鑑別方法 - Google Patents

生薬鑑別用プライマーセット及びそれを用いた生薬鑑別方法 Download PDF

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Description

本発明は、様々な生薬試料が日本薬局方又は局外生規で規定された基原植物であることを確認できる核酸増幅反応プライマーセット、及びそのプライマーセットを用いた生薬鑑別方法に関する。
生薬は、第十七改正日本薬局方又は局外生規2015において、基原植物が規定されている。基原植物とは、ある生薬の原料となる植物(原植物)であり、生薬ごとに種単位で定められている。例えば、生薬「シャクヤク」の基原植物は、Paeonia lactifloraであり、それ以外の植物種は、例え同属近縁種であっても、原則として「シャクヤク」とは認められていない。しかし、一般に生薬は、基原植物を加熱、乾燥等の様々な加工処理を施した状態で流通している。それ故に、基原植物に外観が類似する植物種(類似種)を原料とした疑似生薬と、基原植物を原料とする生薬とを外見的に区別できない場合も少なくない。疑似生薬の多くは、生薬本来の薬効が期待できない場合が多く、また価格も安価である。したがって、流通する生薬が、本来の基原植物を原料としているか否かを正確に確認することは重要な作業である。通常、生薬候補の植物に含まれる核酸を抽出し、種特異的な領域の塩基配列を決定することで、検査対象である被検植物が対象生薬の基原植物であるか否かを同定することができる(非特許文献1)。しかし、生薬は、前述のように、多くが加工処理されており、また長期にわたる保存によって経時変化を受けることで、試料中のDNAが損傷及び/又は断片化している場合や、カビやキノコ等の菌類由来のDNAの混入している場合が多い。そのため、生薬から採取した核酸の塩基配列決定自体が困難であり、これまで原植物の正確な同定ができなかった。
そこで、加熱等の加工処理がなされた生薬候補の被検植物から、安定的に、かつ正確に塩基配列情報を取得することによって、その被検植物が基原植物であるか否かを正確に同定し、異種植物が混入、又は置換されていない正しい生薬であることを確認する技術が望まれていた。
丸山卓郎他, 2013年, 特産種苗, 16: 70-76
本発明の課題は、加工処理された生薬候補の被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを正確に確認し、その生薬候補が目的の生薬であることを鑑別することのできる手段、及びそれを用いた鑑別方法を開発し、提供することである。
本発明者らは、様々な生薬の基原植物におけるゲノムDNA、又は葉緑体DNAを網羅的に調べた結果、各生薬の基原植物に特異的な塩基配列が特定領域に存在すること、またその領域は、加工処理された被検植物からも安定的に塩基配列情報を取得できることを見出した。これらの知見に基づき、前記特定領域を増幅することのできるプライマーセットを開発し、それを用いて生薬候補の被検植物が基原植物であるか否かを正確に同定し、生薬候補が目的の生薬であることを鑑別できる方法を開発することに成功した。本明細書では、当該鑑別手段であるプライマーセット及びそれを用いた生薬鑑別方法に基づく以下の発明を提供する。
(1)生薬の鑑別用プライマーセットであって、前記生薬がハンゲ/テンナンショウ、シャクヤク/ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ/ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、シンイ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、オウレン、ショウキョウ/カンキョウ、サンシシ、オウバク、コウボク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、リョウキョウ、レンニク、コウカ、及びソボクからなる群から選択され、前記プライマーセットは、ハンゲ/テンナンショウのときに配列番号1及び2、シャクヤク/ボタンピのときに配列番号3及び4、配列番号5及び6、又は配列番号3及び229、ケイヒのときに配列番号7及び8、トウキのときに配列番号9及び10、又は配列番号11及び12、ソウジュツ/ビャクジュツのときに配列番号13及び14、サイコのときに配列番号15及び16、テンモンドウのときに配列番号17及び18、サンシュユのときに配列番号19及び20、ビャクゴウのときに配列番号21及び22、又は配列番号23及び24、コウジンのときに配列番号25及び26、又は配列番号27及び28、テンマのときに配列番号29及び4、又は配列番号30及び31、オウゴンのときに配列番号9及び32、又は配列番号11及び33、ニンジンのときに配列番号9及び34、又は配列番号35及び36、ショウマのときに配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39、チョレイのときに配列番号42及び43、ブシのときに配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4、シンイのときに配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、又は配列番号232及び50、チョウジのときに配列番号51及び52、チョウトウコウのときに配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56、コウブシのときに配列番号59及び60、又は配列番号41及び61、オウレンのときに配列番号62及び63、又は配列番号64及び65、ショウキョウ/カンキョウのときに配列番号66及び67、サンシシのときに配列番号11及び68、オウバクのときに配列番号69及び70、コウボクのときに配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72、タクシャのときに配列番号75及び76、配列番号77及び78、配列番号75及び79、又は配列番号77及び80、キッソウコンのときに配列番号81及び82、ボクソクのときに配列番号83及び84、配列番号83及び85、又は配列番号86及び87、レンギョウのときに配列番号88及び89、又は配列番号90及び91、リョウキョウのときに配列番号92及び93、又は配列番号66及び94、レンニクのときに配列番号95及び4、又は配列番号96及び36、コウカのときに配列番号97及び4、又は配列番号44及び36、及びソボクのときに配列番号98及び99で示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである、前記プライマーセットで示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである、前記プライマーセット。
(2)(1)に記載の生薬の鑑別用プライマーセットからなる群から選択される1以上を含む生薬鑑別キット。
(3)生薬の基原植物から調製された核酸を鋳型に、その生薬の鑑別用プライマーを用いて核酸増幅反応して得られる増幅産物の塩基配列情報を記載した塩基配列表を含む、(2)に記載の生薬鑑別キット。
(4)ハンゲ/テンナンショウの鑑別方法であって、ハンゲ/テンナンショウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号100又は101で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はハンゲ/テンナンショウの基原植物であって、前記ハンゲ/テンナンショウ候補がハンゲ/テンナンショウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(5)シャクヤク/ボタンピの鑑別方法であって、シャクヤク又はボタンピ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号3及び4、配列番号5及び6、又は配列番号3及び229で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号3及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号102又は211で示す塩基配列、配列番号5及び6で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号103又は221で示す塩基配列、又は配列番号3及び229で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号244又は245で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシャクヤク又はボタンピの基原植物であって、前記シャクヤク又はボタンピの候補がシャクヤク又はボタンピであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(6)ケイヒの鑑別方法であって、ケイヒ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号7及び8で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号104で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はケイヒの基原植物であって、前記ケイヒ候補がケイヒであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(7)トウキの鑑別方法であって、トウキ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号9及び10、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号9及び10で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号105で示す塩基配列、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号106で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はトウキの基原植物であって、前記トウキ候補がトウキであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(8)ソウジュツ/ビャクジュツの鑑別方法であって、ソウジュツ/ビャクジュツ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号13及び14で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号107~110、及び289~291のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はソウジュツ/ビャクジュツの基原植物であって、前記ソウジュツ/ビャクジュツ候補がソウジュツ/ビャクジュツであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(9)サイコの鑑別方法であって、サイコ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号15及び16で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号111、又は294で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサイコの基原植物であって、前記サイコ候補がサイコであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(10)テンモンドウの鑑別方法であって、テンモンドウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号17及び18で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号112~115、及び299のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンモンドウの基原植物であって、前記テンモンドウ候補がテンモンドウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(11)サンシュユの鑑別方法であって、サンシュユ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号19及び20で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号116で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシュユの基原植物であって、前記サンシュユ候補がサンシュユであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(12)ビャクゴウの鑑別方法であって、ビャクゴウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号21及び22、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号21及び22で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号117、及び311~314のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号118、及び324~326のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はビャクゴウの基原植物であって、前記ビャクゴウ候補がビャクゴウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(13)コウジンの鑑別方法であって、コウジン候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号25及び26、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号25及び26で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号119で示す塩基配列、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号120で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウジンの基原植物であって、前記コウジン候補がコウジンであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(14)テンマの鑑別方法であって、テンマ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号29及び4、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号29及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号121で示す塩基配列、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号122で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンマの基原植物であって、前記テンマ候補がテンマであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(15)オウゴンの鑑別方法であって、オウゴン候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号9及び32、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号9及び32で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号123又は391で示す塩基配列、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号124で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウゴンの基原植物であって、前記オウゴン候補がオウゴンであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(16)ニンジンの鑑別方法であって、ニンジン候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号9及び34、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号9及び34で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号125で示す塩基配列、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号126で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はニンジンの基原植物であって、前記ニンジン候補がニンジンであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(17)ショウマの鑑別方法であって、ショウマ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号37及び38で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号127~130、及び401のいずれかで示す塩基配列、配列番号11及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号131~134、及び409のいずれかで示す塩基配列、配列番号37及び40で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号135~138、及び415~416のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号139~142のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウマの基原植物であって、前記ショウマ候補がショウマであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(18)チョレイの鑑別方法であって、チョレイ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号42及び43で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号143、及び430~432のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョレイの基原植物であって、前記チョレイ候補がチョレイであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(19)ブシの鑑別方法であって、ブシ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号144、145、及び433~434のいずれかで示す塩基配列、配列番号45及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号146、147、及び439~440のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号148又は149で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はブシの基原植物であって、前記ブシ候補がブシであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(20)シンイの鑑別方法であって、シンイ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、又は配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのtrnLイントロン領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号47及び48で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号150、及び678~681のいずれかで示す塩基配列、配列番号49及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号151、及び693~696のいずれかで示す塩基配列、配列番号230及び231で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号450~454のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号465~469のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシンイの基原植物であって、前記シンイ候補がシンイであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(21)チョウジの鑑別方法であって、チョウジ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号51及び52で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号152で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウジの基原植物であって、前記チョウジ候補がチョウジであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(22)チョウトウコウの鑑別方法であって、チョウトウコウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号53及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号153で示す塩基配列、配列番号55及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号154で示す塩基配列、配列番号57及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号155で示す塩基配列、又は配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号156で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウトウコウの基原植物であって、前記チョウトウコウ候補がチョウトウコウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(23)コウブシの鑑別方法であって、コウブシ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号59及び60、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号59及び60で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号157で示す塩基配列、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号158で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウブシの基原植物であって、前記コウブシ候補がコウブシであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(24)オウレンの鑑別方法であって、オウレン候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号62及び63、又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrbcL領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号62及び63で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号159~162のいずれかで示す塩基配列、また又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号163~166のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウレンの基原植物であって、前記オウレン候補がオウレンであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(25)ショウキョウ/カンキョウの鑑別方法であって、ショウキョウ/カンキョウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号66及び67で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号167で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウキョウ/カンキョウの基原植物であって、前記ショウキョウ/カンキョウ候補がショウキョウ/カンキョウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(26)サンシシの鑑別方法であって、サンシシ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号11及び68で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号168で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシシの基原植物であって、前記サンシシ候補がサンシシであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(27)オウバクの鑑別方法であって、オウバク候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号69及び70で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号169で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウバクの基原植物であって、前記オウバク候補がオウバクであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(28)コウボクの鑑別方法であって、コウボク候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrpl16イントロン領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号71及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号170~172のいずれかで示す塩基配列、配列番号71及び73で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号173~175のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号176~178のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウボクの基原植物であって、前記コウボク候補がコウボクであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(29)タクシャの鑑別方法であって、タクシャ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に配列番号75及び76、配列番号77及び78、又は配列番号75及び79、又は配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号75及び76で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号179又は180で示す塩基配列、配列番号77及び78で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号181又は182で示す塩基配列、配列番号75及び79で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号183又は184で示す塩基配列、又は配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号185又は186で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はタクシャの基原植物であって、前記タクシャ候補がタクシャであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(30)キッソウコンの鑑別方法であって、キッソウコン候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号81及び82で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号187で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はキッソウコンの基原植物であって、前記キッソウコン候補がキッソウコンであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(31)ボクソクの鑑別方法であって、ボクソク候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号83及び84、配列番号83及び85、又は配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号83及び84で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号188~191、及び593~594のいずれかで示す塩基配列、配列番号83及び85で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号192~195、及び601~602のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号196~199、及び609~612のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はボクソクの基原植物であって、前記ボクソク候補がボクソクであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(32)レンギョウの鑑別方法であって、レンギョウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号88及び89、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号88及び89で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号200で示す塩基配列、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号201で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンギョウの基原植物であって、前記レンギョウ候補がレンギョウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(33)リョウキョウの鑑別方法であって、リョウキョウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号92及び93、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号92及び93で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号202又は633で示す塩基配列、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号203又は638で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はリョウキョウの基原植物であって、前記リョウキョウ候補がリョウキョウであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(34)レンニクの鑑別方法であって、レンニク候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号95及び4、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号95及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号204で示す塩基配列、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号205又は646で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンニクの基原植物であって、前記レンニク候補がレンニクであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(35)コウカの鑑別方法であって、コウカ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号97及び4、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び配列番号97及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号206で示す塩基配列、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と配列番号207で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウカの基原植物であって、前記コウカ候補がコウカであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
(36)ソボクの鑑別方法であって、ソボク候補の被検植物から核酸を抽出する工程、抽出された核酸を鋳型に、配列番号98及び99で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び増幅産物の塩基配列と配列番号208で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はソボクの基原植物であって、前記ソボク候補がソボクであると鑑別する工程を含む前記鑑別方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-108803号の開示内容を包含する。
本発明の生薬鑑別用プライマーセットを用いて、本発明の生薬鑑別方法を行うことで、生薬加工処理された植物であっても、その植物が日本薬局方・局外生規で認められた生薬の基原植物であるか否かを正確に同定することができ、それによって、異種植物の混入等を確実に防止することができる。
本発明の生薬鑑別用キットによれば、本発明の生薬鑑別方法を容易に実施でき、様々な生薬を簡便に鑑別することができる。
実施例33で、シャクヤク/ボタンピ鑑別用プライマーセット#1を用いてPCRを行った後の反応液の電気泳動図を示す。レーン1はマーカー、レーン2はシャクヤクPaeonia lactiflora(シャクヤク基原植物)由来のDNA、レーン3はシナニッケイCinnamomum cassia(ケイヒ基原植物)由来のDNA、レーン4はボタンPaeonia suffruticosa(ボタンピ基原植物)由来のDNA、レーン5はサジオモダカAlisma orientale(タクシャ基原植物)由来のDNA、レーン6はカギカズラUncaria rhynchophylla(チョウトウコウ基原植物)由来のDNA、及びレーン7は鋳型核酸を加えないMockを示す。 実施例33で、ケイヒ鑑別用プライマーセット#2を用いてPCRを行った後の反応液の電気泳動図を示す。各レーンの説明は、図1と同じである。 実施例33で、タクシャ鑑別用プライマーセット#3を用いてPCRを行った後の反応液の電気泳動図を示す。各レーンの説明は、図1と同じである。 実施例33で、チョウトウコウ鑑別用プライマーセット#4を用いてPCRを行った後の反応液の電気泳動図を示す。各レーンの説明は、図1と同じである。
1.生薬鑑別用プライマーセット
1-1.概要
本発明の第1の態様は、生薬鑑別用プライマーセットである。本態様のプライマーセットは、核酸で構成され、後述する第2態様に記載の生薬鑑別方法において被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを同定するための手段として使用される。
1-2.定義
以下で本明細書において頻用する用語について定義する。
本明細書において「生薬」とは、漢方薬の原料となり得る、薬理効果を有する天然物由来の物質をいい、動物、植物、又は菌類の全部又は一部、及び鉱物が含まれる。本明細書においては、特に第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日厚生労働省告示第64号)、日本薬局方外生薬規格2015(平成27年12月25日薬生審査発1225第1号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)に定める植物及び菌類由来の以下の生薬が該当する。具体的には、ハンゲ、テンナンショウ、シャクヤク、ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ、ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、シンイ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、オウレン、ショウキョウ/カンキョウ、サンシシ、オウバク、コウボク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、リョウキョウ、レンニク、コウカ、及びソボクである。
なお、分類学上、菌類は植物ではないが、本明細書では便宜的に菌類を植物に含める。したがって、特に断りのない限り、本明細書で「植物」と記載した場合、「植物及び/又は菌類」を指すものとする。例えば、本明細書で「基原植物」と記載した場合、「基原植物及び/又は基原菌類」を意味するものとする。
生薬の「基原」とは、生薬の原料となる植物、動物、又は鉱物とその用部、及び加工方法を表す用語である。例えば、ある生薬の原料となる植物の種類、その生薬に用いられる植物の部位、及び生薬にした際の加工方法を含む。このうち、生薬の原料となる植物、すなわち生薬の原植物を「基原植物」という。「原植物」とは、原料となる植物を意味する。基原植物は、原則として生薬ごとに定められている。例えば、上記生薬に関しては、ハンゲであればPinellia ternataが、テンナンショウであればArisaema heterophyllum、A. erubescens、A. amurense、又はArisaema属の近縁種が、シャクヤクであればPaeonia lactifloraが、ボタンピであればPaeonia suffruticosa(Paeonia moutan)が、ケイヒであればシナニッケイCinnamomum cassiaが、トウキであればAngelica acutiloba又はA. acutiloba var. sugiyamaeが、ソウジュツであればAtractylodes lancea、A. chinensis、又はそれらの交雑種が、ビャクジュツであればAtractylodes japonica又はA. macrocephalaが、サイコであればBupleurum falcatumが、テンモンドウであればAsparagus cochinchinensisが、サンシュユであればCornus officinalisが、ビャクゴウであればLilium lancifolium、L. brownii var. colchesteri、L. brownii、又はL. pumilumが、コウジンであればPanax ginseng(P. schinseng)が、テンマであればGastrodia elataが、オウゴンであればScutellaria baicalensisが、ニンジンであればPanax ginseng(P. schinseng)が、ショウマであればCimicifuga simplex、C. dahurica、C. foetida、又はC. heracleifoliaが、チョレイであればPolyporus umbellatusが、ブシであればAconitum carmichaeli、又はAconitum japonicumが、シンイであればMagnolia salicifolia、M. kobus、M. biondii、M. sprengeri、又はM. heptapeta(M. denudata)が、チョウジであればSyzygium aromaticum(Eugenia caryophyllata)が、チョウトウコウであればUncaria rhynchophylla、U. sinensis、又はU. macrophyllaが、コウブシであればCyperus rotundusが、オウレンであればCoptis japonica、C. chinensis、C. deltoidea、又はC. teetaが、ショウキョウ/カンキョウであればZingiber officinaleが、サンシシであればGardenia jasminoidesが、オウバクであればPhellodendron amurense、又はP. chinenseが、コウボクであればMagnolia obovata(M. hypoleuca)、M. officinalis、又はM. officinalis var. bilobaが、タクシャであればAlisma orientaleが、キッソウコンであればValeriana faurieiが、ボクソクであればQuercus acutissima、Q. serrata、Q. mongolica var. crispula、又はQ. variabilisが、レンギョウであればForsythia suspensaが、リョウキョウであればAlpinia officinarumが、レンニクであればNelumbo nuciferaが、コウカであればCarthamus tinctoriusが、そして及びソボクであればCaesalpinia sappanが、それぞれ基原植物となる。各生薬の基原植物は、1種類のみの場合もあれば、同属近縁の数種を含み、そのいずれであってもよい場合もある。
生薬は、その形態に応じて、全形生薬、切断生薬又は粉末生薬に分類される。「全形生薬」は、その薬用とする植物体やその一部を乾燥し、及び/又は簡単な加工をしたものである。ここでいう「簡単な加工」には、切断、(高圧)蒸気処理、加熱、溶液への浸漬等が挙げられる。「切断生薬」は、全形生薬を小片若しくは小塊に切断若しくは破砕したもの、又は粗切、中切若しくは細切したものである。「粉末生薬」は、全形又は切断生薬を粗末、中末、細末又は微末としたものである。本明細書における生薬は、いずれの形態であってもよい。好ましくは全形生薬又は切断生薬である。
前述の基原の定義において述べたように、生薬が植物の一部で構成される場合、それが基原植物のいずれの部分であるか、その薬用とする部分は、生薬ごとに定められている。例えば、テンナンショウであれば前記Arisaema heterophyllum、A. erubescens、A. amurense、又はArisaema属の近縁種の球茎が、ケイヒであればシナニッケイCinnamomum cassiaの樹皮が、それぞれ薬用とする部分として生薬に利用される。各生薬の薬用とする部分は、当該分野において周知されており、例えば、第十七改正日本薬局方(既述)に記載されている。
本明細書において「疑似生薬」とは、特定の生薬において、基原植物以外の植物種(例えば、同属近縁種)等を原料として、その特定の生薬と同じ部位を用いて、同様の加工処理を行って得られる産物をいう。例えば、シャクヤクの基原植物であるPaeonia lactifloraと同属のP. veitchiiを原料として、P. lactifloraと同様にその根部を乾燥させた産物がシャクヤクの疑似生薬となる。疑似生薬は、多くの場合、外見等が生薬に類似するため生薬との識別が困難であることが多い。しかし、前述のように各生薬において、基原植物以外の植物種を原料とした産物は、その植物種がたとえ基原植物の近縁種であったとしても、また、たとえ生薬と同じ薬理作用を有していたとしても、原則として、その生薬とは認められない。
本明細書において「鑑別」とは、生薬候補の被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを同定することによって、その生薬候補が真の生薬か疑似生薬かを見分けること、又は生薬における異種植物由来の疑似生薬混入の有無を見分けることをいう。
本明細書において「生薬候補」とは、外観や加工状態が特定の生薬に類似するものの、その原植物が基原植物か否かが明らかでないものをいう。生薬候補は、真の生薬、疑似生薬、又はそれらの混合物を包含し得る。例えば、市場に流通する生薬のうち、その基原植物由来であることが保証されていないものは、本発明の生薬候補に該当する。
本明細書において「被検植物」とは、生薬候補の原植物であって、後述する第3態様に記載の生薬鑑別方法に供される検査対象植物をいう。本明細書では、生薬候補を構成する植物組織が、第2態様に記載の生薬鑑別方法の検査対象となり得る。例えば、葉、茎、芽、葉鞘、葉柄、球芽、地下茎(球茎、鱗茎/球根、根茎、塊茎等を含む)、根(塊根、気根等を含む)、種子、胚軸、実等が挙げられる。
本明細書において「核酸(分子)」とは、原則としてヌクレオチドを構成単位とし、それらがホスホジエステル結合によって連結した生体高分子をいう。通常は、DNA、RNA等の天然核酸で構成される。DNAの場合、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA等の細胞内に存在し得るあらゆるDNA分子に加え、mRNAから逆転写反応によって調製されたcDNAを包含する。また、RNAの場合、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、snoRNA、tmRNA、miRNA等の細胞内に存在し得るあらゆるRNA分子を包含する。その他、本態様の生薬鑑別用プライマーのように、人工的に合成される核酸分子の場合、天然核酸だけでなく、化学修飾核酸や擬似核酸を含んでいてもよい。化学修飾核酸や擬似核酸には、例えば、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ホスフェート基を有するペプチド核酸(PHONA)、架橋化核酸(BNA/LNA:Bridged Nucleic Acid/Locked Nucleic Acid)、モルホリノ核酸等が挙げられる。メチルホスホネート型DNA/RNA、ホスホロチオエート型DNA/RNA、ホスホルアミデート型DNA/RNA、2'-O-メチル型DNA/RNA等が挙げられる。
1-3.構成
本明細書において「生薬鑑別用プライマー」(本明細書では、しばしば「プライマー」と省略して表記する。したがって、特段の断りがない限り、本明細書におけるプライマーとは、生薬鑑別用プライマーを意味する。)とは、後述する生薬鑑別方法で使用される核酸増幅用プライマーであり、19塩基~23塩基からなる核酸分子(オリゴヌクレオチド)で構成される。天然核酸(DNA及び/又はRNA)で構成されていることが好ましい。安定性が高く、合成が容易で、かつ低廉な点で、DNAで構成されているプライマーが特に好ましい。必要に応じて、プライマーを構成する塩基配列の全部又は一部に化学修飾核酸や擬似核酸を含んでいてもよい。さらに、プライマーは、標識物質及び/又は修飾物質で修飾されていてもよい。標識物質は、特に限定はしない。例えば、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質、又は放射性同位元素(例えば、32P、33P、35S)等を利用できる。蛍光物質の具体例として、FITC、DIG、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、Cyanine3、Cyanine5、Cyanine7、FAM、HEX、VIC、フルオレサミン及びその誘導体、及びローダミン及びその誘導体等が挙げられる。また、クエンチャー物質の具体例として、TAMRA、DABCYL、BHQ-1、BHQ-2、又はBHQ-3等が挙げられる。修飾物質も、特に限定はしない。例えば、ビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン若しくはニュートラアビジン、又は磁気ビーズ等が挙げられる標識物質や修飾物質は、各メーカーで販売される市販のものを用いることができる。
プライマー塩基配列上の標識物質や修飾物質の修飾位置は、特に限定しない。使用する標識物質や修飾物質の特性や、目的に応じて適宜定めればよい。標識物質であれば、通常は5’又は3’末端部に修飾されることが多いが、もちろんこれに限られない。また、一つのプライマーを一以上の標識物質や修飾物質で修飾することもできる。標識物質や修飾物質のプライマーへの修飾方法は公知の方法で行えばよい。
本明細書において「生薬鑑別用プライマーセット」とは、フォワードプライマー及びリバースプライマーで構成される生薬鑑別用プライマーの1つの組である。本態様の生薬鑑別用プライマーセットは、表1に示すように、各生薬に対して1組以上が設計される。なお、ハンゲとテンナンショウ、及びソウジュツとビャクジュツは、それぞれ基原植物が異なる別の生薬ではあるが、両者はしばしば取り違えられ、また混合して扱われることが多いため、実用上の都合と汎用性を高める目的で、それぞれ1種のプライマーセットで使用できるように設計している。
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Figure 0007131086000002
Figure 0007131086000003
具体的には、フォワードプライマー及びリバースプライマーがそれぞれ、ハンゲ/テンナンショウであれば配列番号1及び2、シャクヤク/ボタンピであれば配列番号3及び4、配列番号5及び6、又は配列番号3及び229、ケイヒであれば配列番号7及び8、トウキであれば配列番号9及び10、又は配列番号11及び12、ソウジュツ/ビャクジュツであれば配列番号13及び14、サイコであれば配列番号15及び16、テンモンドウであれば配列番号17及び18、サンシュユであれば配列番号19及び20、ビャクゴウであれば配列番号21及び22、又は配列番号23及び24、コウジンであれば配列番号25及び26、又は配列番号27及び28、テンマであれば配列番号29及び4、又は配列番号30及び31、オウゴンであれば配列番号9及び32、又は配列番号11及び33、ニンジンであれば配列番号9及び34、又は配列番号35及び36、ショウマであれば配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39、チョレイであれば配列番号42及び43、ブシであれば配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4、シンイであれば配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、又は配列番号232及び50、チョウジであれば配列番号51及び52、チョウトウコウであれば配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56、コウブシであれば配列番号59及び60、又は配列番号41及び61、オウレンであれば配列番号62及び63、又は配列番号64及び65、ショウキョウ/カンキョウであれば配列番号66及び67、サンシシであれば配列番号11及び68、オウバクであれば配列番号69及び70、コウボクであれば配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72、タクシャであれば配列番号75及び76、配列番号77及び78、配列番号75及び79、又は配列番号77及び80、キッソウコンであれば配列番号81及び82、ボクソクであれば配列番号83及び84、配列番号83及び85、又は配列番号86及び87、レンギョウであれば配列番号88及び89、又は配列番号90及び91、リョウキョウであれば配列番号92及び93、又は配列番号66及び94、レンニクであれば配列番号95及び4、又は配列番号96及び36、コウカであれば配列番号97及び4、又は配列番号44及び36、及びソボクであれば配列番号98及び99で示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
本態様の生薬鑑別用プライマーセットは、核酸増幅法によって被検植物における特定の核酸領域を増幅することができる。本明細書において「特定の核酸領域」とは、各生薬における基原植物の核酸分子において特異的な塩基配列を有する領域である。特定の核酸領域として選択される領域は、基原植物を構成する原植物種と、基原植物に含まれない近縁種との間で塩基配列が異なる領域でなければならない。しかしながら、一般に近縁種、特に同属近縁種内では、遺伝子の塩基配列における同一性が高い場合が多く、基原植物に特異的な特定の核酸領域は限定される。一方で、基原植物特異性が高く、近縁種との間で塩基配列の差が大き過ぎると、プライマーは基原植物のみにハイブリダイズし得るため、プライマー設計が困難となる。したがって、特定の核酸領域は、基原植物と近縁種間で保存された領域であり、かつ、両者の塩基配列にある程度の差異を有した領域である必要がある。このような特定の核酸領域は、各生薬で定まる。具体的には、ハンゲ/テンナンショウ、シャクヤク/ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ/ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、サンシシ、オウバク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、レンニク、コウカ、及びソボクであれば、核ゲノム中のリボソームDNAのITS領域が、シンイであれば、葉緑体DNAのtrnLイントロン領域、オウレンであれば、葉緑体DNAのrbcL領域が、ショウキョウ/カンキョウ、及びリョウキョウであれば、葉緑体DNAのmatK領域が、そしてコウボクであれば、葉緑体DNAのrpl16イントロン領域が該当する。
「リボソームDNA」(本明細書では、しばしば「rDNA」と表記する)とは、タンパク質合成に関与するリボソームRNA(本明細書では、しばしば「rRNA」と表記する)をコードする遺伝子をいう。真核生物のrRNAは、その種類は問わず、18S rRNA、5.8S rRNA、及び28S rRNAの3種が知られており、それぞれをコードする18S rDNA、5.8S rDNA、28S rDNAというがゲノム上に連続して存在し、数百から数万コピーの反復配列を繰り返している。「ITS(Internal Transcribed Spacer)」とは、18S rDNAと5.8S rDNA間、及び5.8S rDNAと28S rDNA間に存在する配列で、それぞれITS1及びITS2と称する。一般にrDNAの塩基配列は、酵母から高等植物や哺乳動物に至るまで種間で広く保存されているが、ITS1及びITS2はプロセッシングの過程で除去されるため、変異の蓄積が期待できる。本明細書においては、上記2つのITSとその間にある5.8s rDNAをまとめて「ITS領域」と称する。
「trnL」とは、葉緑体DNA上に存在し、tRNA(Leu)UAA(transfer RNA-Leucine(UAA))をコードする遺伝子で、「trnLイントロン領域」とは、trnL遺伝子のイントロン領域をいう。一般にtRNAの塩基配列は、生物種間で高度に保存されているが、イントロン領域はスプライシングの過程で除去されるため、変異の蓄積が期待できる。
本明細書において「rbcL」とは、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(rbc:ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase)を構成するLサブユニット(Large subunit)である。rbcは、還元的ペントースリン酸回路を有する全ての原核・真核光合成生物および化学合成細菌に存在し、種間で高度に保存されている。「rbcL領域」は、葉緑体DNA上に存在し、rbcLをコードするrbcL遺伝子の部分領域をいう。
「matK」とは、葉緑体DNA上に存在し、mRNAスプライシングに関与するmaturaseをコードする遺伝子である。「matK領域」は、matK遺伝子の部分領域をいう。
「rpl16」とは、リボソームタンパク質の大サブユニット(Large subunit)を構成するタンパク質の1つであるRPL16をコードする遺伝子で、葉緑体DNA上に存在する。「rpl16イントロン領域」とは、rpl16遺伝子のイントロン領域をいう。trnLイントロン領域と同様に、リボソームタンパク質遺伝子の塩基配列は、生物種間で高度に保存されているが、イントロン領域はスプライシングの過程で除去されるため、変異の蓄積が期待できる。
各生薬鑑別用プライマーセットで増幅される特定の核酸領域の塩基配列は、生薬の基原植物の核酸分子(ゲノムDNA又は葉緑体DNA)を鋳型にした時の塩基配列がその生薬の「生薬標準配列」となる。プライマー1セットあたりの生薬標準配列数は、生薬ごとに異なる。これは、各生薬において、基原植物の原植物数や特定の核酸領域数が異なるためである。例えば、ソウジュツ/ビャクジュツの場合、ソウジュツの基原植物には、Atractylodes lancea、A. chinensis、及びその交雑種(A. lancea × A. chinensis)が、またビャクジュツの基原植物にはA. japonicaが挙げられる。ここで、ソウジュツ/ビャクジュツ鑑別用プライマーセット(005-1F/1R)を用いて特定の核酸領域を増幅した場合、得られる増幅産物の塩基配列、すなわちソウジュツ/ビャクジュツ標準配列は種ごとに異なる。具体的には、A. lanceaであれば配列番号107、A. chinensisであれば配列番号108、その交雑種であれば配列番号109、そしてA. japonicaであれば配列番号110となる。したがって、ソウジュツ/ビャクジュツの場合、配列番号107~110で示す4つが生薬標準配列となる。また、チョウトウコウの場合、特定の核酸領域が4か所存在するため、それぞれを増幅可能な4組の鑑別用プライマーセット(019-1F/1R、019-2F/2R、019-3F/1R、及び019-4F/2R)に対して配列番号153~156で示す4つの生薬標準配列が存在する。各生薬鑑別用プライマーセットに対応する標準配列の配列番号を表2に示す。
Figure 0007131086000004
Figure 0007131086000005
Figure 0007131086000006
具体的には、配列番号1及び2で示すハンゲ/テンナンショウ鑑別用プライマーセットを使用したときのハンゲ/テンナンショウ標準配列は配列番号100又は101、配列番号3及び4で示すシャクヤク/ボタンピ鑑別用プライマーセットを使用したときのシャクヤク/ボタンピ標準配列は配列番号102又は211、配列番号5及び6で示すシャクヤク/ボタンピ鑑別用プライマーセットを使用したときのシャクヤク標準配列は配列番号103又は221、配列番号3及び229で示すシャクヤク/ボタンピ鑑別用プライマーセットを使用したときのシャクヤク/ボタンピ標準配列は配列番号244又は245、配列番号7及び8で示すケイヒ鑑別用プライマーセットを使用したときのケイヒ標準配列は配列番号104、配列番号9及び10で示すトウキ鑑別用プライマーセットを使用したときのトウキ標準配列は配列番号105、配列番号11及び12で示すトウキ鑑別用プライマーセットを使用したときのトウキ標準配列は配列番号106、配列番号13及び14で示すソウジュツ/ビャクジュツ鑑別用プライマーセットを使用したときのソウジュツ/ビャクジュツ標準配列は配列番号107~110、又は289~291、配列番号15及び16で示すサイコ鑑別用プライマーセットを使用したときのサイコ標準配列は配列番号111、又は294、配列番号17及び18で示すテンモンドウ鑑別用プライマーセットを使用したときのテンモンドウ標準配列は配列番号112~115、又は299、配列番号19及び20で示すサンシュユ鑑別用プライマーセットを使用したときのサンシュユ標準配列は配列番号116、配列番号21及び22で示すビャクゴウ鑑別用プライマーセットを使用したときのビャクゴウ標準配列は配列番号117、又は311~314、配列番号23及び24で示すビャクゴウ鑑別用プライマーセットを使用したときのビャクゴウ標準配列は配列番号118、又は324~326、配列番号25及び26で示すコウジン鑑別用プライマーセットを使用したときのコウジン標準配列は配列番号119、配列番号27及び28で示すコウジン鑑別用プライマーセットを使用したときのコウジン標準配列は配列番号120、配列番号29及び4で示すテンマ鑑別用プライマーセットを使用したときのテンマ標準配列は配列番号121、配列番号30及び31で示すテンマ鑑別用プライマーセットを使用したときのテンマ標準配列は配列番号122、配列番号9及び32で示すオウゴン鑑別用プライマーセットを使用したときのオウゴン標準配列は配列番号123、又は391、配列番号11及び33で示すオウゴン鑑別用プライマーセットを使用したときのオウゴン標準配列は配列番号124、配列番号9及び34で示すニンジン鑑別用プライマーセットを使用したときのニンジン標準配列は配列番号125、配列番号35及び36で示すニンジン鑑別用プライマーセットを使用したときのニンジン標準配列は配列番号126、配列番号37及び38で示すショウマ鑑別用プライマーセットを使用したときのショウマ標準配列は配列番号127~130、又は401、配列番号11及び39で示すショウマ鑑別用プライマーセットを使用したときのショウマ標準配列は配列番号131~134、又は409、配列番号37及び40で示すショウマ鑑別用プライマーセットを使用したときのショウマ標準配列は配列番号135~138、又は415~416、配列番号41及び39で示すショウマ鑑別用プライマーセットを使用したときのショウマ標準配列は配列番号139~142、配列番号42及び43で示すチョレイ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョレイ標準配列は配列番号143、又は430~432、配列番号44及び36で示すブシ鑑別用プライマーセットを使用したときのブシ標準配列は配列番号144又は145、又は433~434、配列番号45及び4で示すブシ鑑別用プライマーセットを使用したときのブシ標準配列は配列番号146又は147、又は439~440、配列番号46及び4で示すブシ鑑別用プライマーセットを使用したときのブシ標準配列は配列番号148又は149、配列番号47及び48で示すシンイ鑑別用プライマーセットを使用したときのシンイ標準配列は配列番号150、又は678~681、配列番号49及び50で示すシンイ鑑別用プライマーセットを使用したときのシンイ標準配列は配列番号151、又は693~696、配列番号230及び231で示すシンイ鑑別用プライマーセットを使用したときのシンイ標準配列は配列番号450~454、配列番号232及び50で示すシンイ鑑別用プライマーセットを使用したときのシンイ標準配列は配列番号465~469、配列番号51及び52で示すチョウジ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョウジ標準配列は配列番号152、配列番号53及び54で示すチョウトウコウ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョウトウコウ標準配列は配列番号153、配列番号55及び56で示すチョウトウコウ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョウトウコウ標準配列は配列番号154、配列番号57及び54で示すチョウトウコウ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョウトウコウ標準配列は配列番号155、配列番号58及び56で示すチョウトウコウ鑑別用プライマーセットを使用したときのチョウトウコウ標準配列は配列番号156、配列番号59及び60で示すコウブシ鑑別用プライマーセットを使用したときのコウブシ標準配列は配列番号157、配列番号41及び61で示すコウブシ鑑別用プライマーセットを使用したときのコウブシ標準配列は配列番号158、配列番号62及び63で示すオウレン鑑別用プライマーセットを使用したときのオウレン標準配列は配列番号159~162、配列番号64及び65で示すオウレン鑑別用プライマーセットを使用したときのオウレン標準配列は配列番号163~166、配列番号66及び67で示すショウキョウ/カンキョウ鑑別用プライマーセットを使用したときのショウキョウ/カンキョウ標準配列は配列番号167、配列番号11及び68で示すサンシシ鑑別用プライマーセットを使用したときのサンシシ標準配列は配列番号168、配列番号69及び70で示すオウバク鑑別用プライマーセットを使用したときのオウバク標準配列は配列番号169、配列番号71及び72で示すコウボク鑑別用プライマーセットを使用したときのコウボク標準配列は配列番号170~172、配列番号71及び73で示すコウボク鑑別用プライマーセットを使用したときのコウボク標準配列は配列番号173~175、配列番号74及び72で示すコウボク鑑別用プライマーセットを使用したときのコウボク標準配列は配列番号176~178、配列番号75及び76で示すタクシャ鑑別用プライマーセットを使用したときのタクシャ標準配列は配列番号179又は180、配列番号77及び78で示すタクシャ鑑別用プライマーセットを使用したときのタクシャ標準配列は配列番号181又は182、配列番号75及び79で示すタクシャ鑑別用プライマーセットを使用したときのタクシャ標準配列は配列番号183又は184、配列番号77及び80で示すタクシャ鑑別用プライマーセットを使用したときのタクシャ標準配列は配列番号185又は186、配列番号81及び82で示すキッソウコン鑑別用プライマーセットを使用したときのキッソウコン標準配列は配列番号187、配列番号83及び84で示すボクソク鑑別用プライマーセットを使用したときのボクソク標準配列は配列番号188~191、又は593~594、配列番号83及び85で示すボクソク鑑別用プライマーセットを使用したときのボクソク標準配列は配列番号192~195、又は601~602、配列番号86及び87で示すボクソク鑑別用プライマーセットを使用したときのボクソク標準配列は配列番号196~199、又は609~612、配列番号88及び89で示すレンギョウ鑑別用プライマーセットを使用したときのレンギョウ標準配列は配列番号200、配列番号90及び91で示すレンギョウ鑑別用プライマーセットを使用したときのレンギョウ標準配列は配列番号201、配列番号92及び93で示すリョウキョウ鑑別用プライマーセットを使用したときのリョウキョウ標準配列は配列番号202、又は633、配列番号66及び94で示すリョウキョウ鑑別用プライマーセットを使用したときのリョウキョウ標準配列は配列番号203、又は638、配列番号95及び4で示すレンニク鑑別用プライマーセットを使用したときのレンニク標準配列は配列番号204、配列番号96及び36で示すレンニク鑑別用プライマーセットを使用したときのレンニク標準配列は配列番号205、又は646、配列番号97及び4で示すコウカ鑑別用プライマーセットを使用したときのコウカ標準配列は配列番号206、配列番号44及び36で示すコウカ鑑別用プライマーセットを使用したときのコウカ標準配列は配列番号207、そして配列番号98及び99で示すソボク鑑別用プライマーセットを使用したときのソボク標準配列は配列番号208となる。
各生薬鑑定用プライマーは、5’末端側に、必要に応じてタグ配列、バーコード配列、アダプター配列等を含んでいてもよい。
プライマーは、化学合成法によって合成することが好ましい。上述の生薬の鑑定用プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列情報に基づいて合成すればよい。合成は、核酸合成受託サービスを利用することもできる。
2.生薬鑑別キット
2-1.概要
本発明の第2の態様は生薬鑑別キットである。本態様の生薬鑑別キットは、被験植物が生薬の基原植物であるか否かを鑑別する第3態様に記載の生薬鑑別方法を実施する上で必要な要素を構成要素として包含する。本態様に生薬鑑別キットを用いることで、簡便に被験植物の生薬鑑別を行うことができる。
2-2.構成
本態様の生薬鑑別キットは、第1態様に記載の生薬鑑別用プライマーセットを必須の構成要素として含む。本態様の生薬鑑別キットにおいて、一の生薬に対する鑑別用プライマーセットは、2組以上含んでいてもよい。例えば、シャクヤク鑑別用プライマーセットの場合、配列番号3及び4の1組のプライマーセットを単独で含んでいてもよいし、配列番号3及び4と配列番号5及び6の2組のプライマーセットを含んでいてもよい。また、一つのキットに含まれる生薬の種類は2種以上であってもよい。例えば、シンイとコウボクのそれぞれの生薬鑑別用プライマーセットを1つのキットに含むことができる。
生薬鑑別キットは、選択構成要素として、各生薬の標準配列情報を含むことができる。「各生薬の標準配列情報」とは、各生薬の基原植物から調製された核酸を鋳型に、その生薬の鑑別用プライマーを用いて核酸増幅反応して得られる増幅産物の塩基配列情報である。例えば、配列番号1及び2で示すハンゲ/テンナンショウ鑑別用プライマーセットを使用したときの、ハンゲ標準配列は配列番号100に示す塩基配列であり、またテンナンショウ標準配列は配列番号101に示す塩基配列となる。生薬鑑別キットには、包含する生薬鑑別用プライマーセットに対応する標準配列情報を、紙媒体、又はCD-ROM等の電子媒体等の情報伝達媒体に記録した状態で、あるいはインターネットを介して情報提供するURLとして、含むことができる。
その他、生薬鑑別キットは、被験植物から核酸分子を抽出するための試薬(例えば、塩化ベンジル、界面活性剤等)、生薬鑑別用プライマーを用いて核酸増幅反応を行うための試薬(耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP、Mg2+等)、及び/又は使用説明書等を包含することができる。
3.生薬鑑別方法
3-1.概要
本発明の第3の態様は、生薬鑑別方法である。本態様の生薬鑑別方法は、第1態様に記載の生薬鑑別用プライマーセットを用いて生薬候補の被検植物が目的とする生薬の基原植物であるか否かを正確に同定することによって、その生薬候補が目的の生薬であることを鑑別する方法である。本態様の方法を用いることで、簡便かつ正確に生薬を鑑別することが可能となる。
3-2.方法
本態様の生薬鑑別方法は、必須工程として核酸抽出工程、核酸増幅工程、塩基配列決定工程、及び比較鑑別工程を含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
(1)核酸抽出工程
「核酸抽出工程」とは、生薬候補の被検植物から核酸分子を抽出する工程である。本方法で検査対象となる被検植物は、多くの場合、蒸気処理、加熱、乾燥、溶液浸漬等の加工処理が施されている。したがって、それらの加工処理された被検植物の一部を採取し、当該分野における常法により核酸分子を抽出すればよい。核酸抽出方法は、抽出すべき核酸分子の種類によって好適な方法をもちいればよい。例えば、DNAを抽出する場合、CTAB(Cetyl trimethyl ammonium bromide)法、塩化ベンジル法等を利用することができる。またAGPC(酸性グアニジンチオシアネート・フェノール・クロロホルム)法が挙げられる。これらの具体的な手順等については、当該分野のプロトコルを参照すればよい。プロトコルには、例えば、Green, MR and Sambrook, J, (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkが挙げられる。さらに、植物体から各種核酸分子を抽出するキットが、キアゲン社、タカラバイオ社、TOYOBO社、Thermo Fisher Scientific社、プロメガ社等の各ライフサイエンスメーカーから市販されており、それらを利用することもできる。
(2)核酸増幅工程
「核酸増幅工程」とは、前記核酸抽出工程で得られた被検植物の核酸分子を鋳型に、第1態様に記載の生薬鑑定用プライマーセットを用いて、特定の核酸領域を増幅させる工程である。
本明細書において「核酸増幅法」とは、プライマーを用いて、核酸ポリメラーゼにより標的核酸を増幅させる方法をいう。例えば、PCR法(RT-PCR法を含む)、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)(登録商標)法(RT-LAMP法を含む)が挙げられる。本発明で使用する核酸増幅法について限定はしないが、好ましくはPCR法である。また、鋳型として使用する核酸分子が、mRNAの場合、具体的には、rbcL mRNA又はmatK mRNAの場合、核酸増幅工程は、NASBA法のようなRNA増幅法を使用するか、RT-PCR法やRT-LAMP法のように、逆転写反応によりmRNAを cDNAに調製した後にDNA増幅法を使用する。
本工程で使用する生薬鑑定用プライマーセットは、生薬候補が鑑別対象とする目的の生薬の基原植物用のプライマーセットである。例えば、生薬候補の鑑別対象とする目的の生薬がハンゲであれば、配列番号1及び2で示すハンゲ/テンナンショウ鑑別用プライマーセットを使用する。また、生薬候補の鑑別対象とする目的の生薬がシャクヤクであれば、配列番号3及び4、及び/又は配列番号5及び6で示すシャクヤク鑑別用プライマーセットを使用する。
各核酸増幅方法については、当該分野で公知であり、各種プロトコルに記載の条件を参考に行えばよい。プロトコル集の例として、前述のGreen, MR and Sambrook, J, (2012)、Domingues L. (2017) PCR: Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, Humana Press、又はPark DJ, (2010) PCR Protocols, Methods in Molecular Biology, Third Edition, Humana Press等が挙げられる。なお、本工程において、鋳型の相補鎖合成時に、G-C塩基対、又はA-T塩基対以外のエラーが入ると、後述する比較鑑別工程で、標準配列との塩基配列の相違を検証する際に、誤った比較結果をもたらし得るため、鑑別精度が著しく低下する。そこで、核酸増幅反応に使用するポリメラーゼには、相補鎖合成時のエラー率が低いハイフィデリティポリメラーゼ(例えば、Pfu DNA ポリメラーゼ)を使用することが好ましい。
核酸増幅用のキットが前述のような各ライフサイエンスメーカーから市販されており、それらを利用することもできる。その場合、核酸増幅方法の条件等については、添付又は各メーカーが推奨するプロトコルに従えばよい。
(3)塩基配列決定工程
「塩基配列決定工程」とは、前記核酸増幅工程で得られた増幅産物の塩基配列を決定する工程である。
核酸増幅工程後に得られる増幅産物は、被検植物における特定の核酸領域である。この増幅産物の塩基配列を決定する。
増幅産物は、塩基配列決定前に、必要に応じて精製、及び/又はクローニングをすることもできる。増幅産物の精製は、当該分野で公知の各種核酸精製法を利用することができる。例えば、ゲル電気泳動による分離抽出方法、シリカマトリクスやシリカメンブレン等を用いた吸着精製方法等が挙げられる。核酸の精製方法については、各種プロトコル集に記載の方法を参考にしてもよい。例えば、前述のGreen, MR and Sambrook, J, (2012)、Domingues L. (2017)、又はPark DJ, (2010)等が挙げられる。さらに、核酸精製キットは、前述のような各ライフサイエンスメーカーからも多数が市販されており、それらを利用してもよい。その場合、核酸精製方法の具体的な条件等については、添付又は各メーカーが推奨するプロトコルに従えばよい。
増幅産物のクローニングは、得られた増幅産物をプラスミド等に組み込み、大腸菌等の宿主内に導入し、その形質転換体から回収することで達成できる。増幅産物のクローニング法についても当該分野では公知であり、前述のプロトコル集等に記載の方法に従って行えばよい。この増幅産物のクローニングについても各ライフサイエンスメーカーが各種クローニング用キットを市販している。例えば、増幅産物のクローニング用であればMighty TA-cloning Kit(タカラバイオ社)等が挙げられる。それらの市販のキットを利用すると便利である。
増幅産物の塩基配列決定法は、当該分野における公知の塩基配列決定法により実施すればよい。例えば、一般的なサンガー法(ジデオキシ法)の他、パイロシーケンシング法(Roche社)、合成シーケンシング法(Illumina社)、ライゲーションシーケンシング法(Thermo Fisher Scientific社)、イオン半導体シーケンシング法(Thermo Fisher Scientific社)等の次世代シーケンシング法が挙げられる。これらの方法は、当該分野で公知であり、各種プロトコル集の他、各社Webサイトに開示された方法を参考にすることができる。
本工程で決定される増幅産物の塩基配列の正確性は、本発明の主旨から重要である。したがって、サンガー法のような配列読取のエラー率が低い塩基配列決定法が好ましい。
(4)比較鑑別工程
「比較鑑別工程」とは、前記塩基配列決定工程で決定された被検植物における特定の核酸領域の塩基配列を、目的とする生薬の基原植物における標準配列と比較して、両者の塩基配列が一致したときに、その被検植物は、その基原植物であって、前記生薬候補は、目的の生薬であると鑑別する工程である。
基原植物の標準配列は、被検植物と同じ条件で、基原植物に対して核酸抽出工程、核酸増幅工程、及び塩基配列決定工程を行って得られる特定の核酸領域の塩基配列である。この標準配列は、基原植物に特異的な配列を有し、基原植物の同属近縁種や類似種であっても、原則としてその一部塩基が異なる。
したがって、被検植物における特定の核酸領域の塩基配列と基原植物の標準配列を比較して、その配列が完全に一致すれば、被検植物は、基原植物であると正確に同定することができる。被検植物が目的とする生薬の基原植物であれば、その生薬候補は、目的の生薬であると鑑別することができる。一方、被検植物における特定の核酸領域の塩基配列と目的とする生薬の基原植物の標準配列が一致しない場合、被検植物は基原植物ではないか、又は基原植物ではない植物種が混在している、と認定される。それ故に、生薬候補は目的の生薬ではないと鑑別することができる。
以下、それぞれの生薬において、被検植物が目的の生薬の基原植物か否かを正確に同定し、その結果に基づいて生薬を鑑別する具体的な工程について説明をする。
(ハンゲ/テンナンショウの鑑別方法)
ハンゲ又はテンナンショウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とハンゲの標準配列である配列番号100で示す塩基配列、又はテンナンショウの標準配列である配列番号101で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列がいずれかで一致したときに前記被検植物は、ハンゲ又はテンナンショウの基原植物であり、前記ハンゲ又はテンナンショウ候補は、ハンゲ又はテンナンショウであると鑑別する。例えば、増幅産物の塩基配列が配列番号100で示す塩基配列と完全に一致した場合、その生薬候補は、ハンゲであると鑑別できる。
(シャクヤク/ボタンピの鑑別方法)
シャクヤク又はボタンピ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号3及び4、配列番号5及び6又は配列番号3及び229で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、例えば配列番号3及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシャクヤクの標準配列である配列番号102、又はボタンピの標準配列である配列番号211で示す塩基配列、配列番号5及び6で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列と、シャクヤクの標準配列である配列番号103、又はボタンピの標準配列である配列番号221で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシャクヤク又はボタンピの基原植物であり、前記シャクヤク又はボタンピ候補はシャクヤク又はボタンピであると鑑別する。
(ケイヒの鑑別方法)
ケイヒ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号7及び8で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とケイヒの標準配列である配列番号104で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はケイヒの基原植物であり、前記ケイヒ候補はケイヒであると鑑別する。
(トウキの鑑別方法)
トウキ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び10、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び10で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とトウキの標準配列である配列番号105で示す塩基配列、又は配列番号11及び12で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とトウキの標準配列である配列番号106で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はトウキの基原植物であり、前記トウキ候補はトウキであると鑑別する。
(ソウジュツ/ビャクジュツの鑑別方法)
ソウジュツ又はビャクジュツ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号13及び14で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とソウジュツ標準配列である配列番号107~109のいずれかで示す塩基配列、又はビャクジュツの標準配列である配列番号110、及び289~291のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列がいずれかで一致したときに前記被検植物は、ソウジュツ又はビャクジュツの基原植物であり、前記ソウジュツ又はビャクジュツ候補は、ソウジュツ又はビャクジュツであると鑑別する。
(サイコの鑑別方法)
サイコ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号15及び16で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサイコの標準配列である配列番号111又は294で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサイコの基原植物であり、前記サイコ候補はサイコであると鑑別する。
(テンモンドウの鑑別方法)
テンモンドウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号17及び18で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とテンモンドウの標準配列である配列番号112~115、及び299のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンモンドウの基原植物であり、前記テンモンドウ候補はテンモンドウであると鑑別する。
(サンシュユの鑑別方法)
サンシュユ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号19及び20で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサンシュユの標準配列である配列番号116で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシュユの基原植物であり、前記サンシュユ候補はサンシュユであると鑑別する。
(ビャクゴウの鑑別方法)
ビャクゴウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号21及び22、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号21及び22で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とビャクゴウの標準配列である配列番号117、及び311~314のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号23及び24で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とビャクゴウの標準配列である配列番号118、及び324~326のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はビャクゴウの基原植物であり、前記ビャクゴウ候補はビャクゴウであると鑑別する。
(コウジンの鑑別方法)
コウジン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号25及び26、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号25及び26で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウジンの標準配列である配列番号119で示す塩基配列、又は配列番号27及び28で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウジンの標準配列である配列番号120で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウジンの基原植物であり、前記コウジン候補はコウジンであると鑑別する。
(テンマの鑑別方法)
テンマ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号29及び4、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号29及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とテンマの標準配列である配列番号121で示す塩基配列、又は配列番号30及び31で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とテンマの標準配列である配列番号122で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はテンマの基原植物であり、前記テンマ候補はテンマであると鑑別する。
(オウゴンの鑑別方法)
オウゴン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び32、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び32で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウゴンの標準配列である配列番号123、又は391で示す塩基配列、又は配列番号11及び33で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウゴンの標準配列である配列番号124で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウゴンの基原植物であり、前記オウゴン候補はオウゴンであると鑑別する。
(ニンジンの鑑別方法)
ニンジン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号9及び34、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号9及び34で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とニンジンの標準配列である配列番号125で示す塩基配列、又は配列番号35及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とニンジンの標準配列である配列番号126で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はニンジンの基原植物であり、前記ニンジン候補はニンジンであると鑑別する。
(ショウマの鑑別方法)
ショウマ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号37及び38で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号127~130、及び401のいずれかで示す塩基配列、配列番号11及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号131~134、及び409のいずれかで示す塩基配列、配列番号37及び40で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号135~138、及び415~416のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号41及び39で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とショウマの標準配列である配列番号139~142のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウマの基原植物であり、前記ショウマ候補はショウマであると鑑別する。
(チョレイの鑑別方法)
チョレイ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号42及び43で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とチョレイの標準配列である配列番号143及び430~432のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョレイの基原植物であり、前記チョレイ候補はチョレイであると鑑別する。
(ブシの鑑別方法)
ブシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号144、145及び433~434のいずれかで示す塩基配列、配列番号45及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号146、147及び439~440のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号46及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とブシの標準配列である配列番号148又は149で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はブシの基原植物であり、前記ブシ候補はブシであると鑑別する。
(シンイの鑑別方法)
シンイ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、及び配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのtrnLイントロン領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号47及び48で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号150、及び678~681のいずれかで示す塩基配列、配列番号49及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号151、及び693~696のいずれかで示す塩基配列、配列番号230及び231で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号450~454のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号232及び50で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とシンイの標準配列である配列番号465~469のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はシンイの基原植物であり、前記シンイ候補はシンイであると鑑別する。
(チョウジの鑑別方法)
チョウジ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号51及び52で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とチョウジの標準配列である配列番号152で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウジの基原植物であり、前記チョウジ候補はチョウジであると鑑別する。
(チョウトウコウの鑑別方法)
チョウトウコウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号53及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号153で示す塩基配列、配列番号55及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号154で示す塩基配列、配列番号57及び54で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号155で示す塩基配列、そして配列番号58及び56で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とチョウトウコウの標準配列である配列番号156で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はチョウトウコウの基原植物であり、前記チョウトウコウ候補はチョウトウコウであると鑑別する。
(コウブシの鑑別方法)
コウブシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号59及び60、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号59及び60で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウブシの標準配列である配列番号157で示す塩基配列、又は配列番号41及び61で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウブシの標準配列である配列番号158で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウブシの基原植物であり、前記コウブシ候補はコウブシであると鑑別する。
(オウレンの鑑別方法)
オウレン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号62及び63、又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrbcL領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号62及び63で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウレンの標準配列である配列番号159~162のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号64及び65で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とオウレンの標準配列である配列番号163~166のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウレンの基原植物であり、前記オウレン候補はオウレンであると鑑別する。
(ショウキョウ/カンキョウの鑑別方法)
ショウキョウ/カンキョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号66及び67で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とショウキョウ/カンキョウの標準配列である配列番号167で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はショウキョウ/カンキョウの基原植物であり、前記ショウキョウ/カンキョウ候補はショウキョウ/カンキョウであると鑑別する。
(サンシシの鑑別方法)
サンシシ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号11及び68で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とサンシシの標準配列である配列番号168で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はサンシシの基原植物であり、前記サンシシ候補はサンシシであると鑑別する。
(オウバクの鑑別方法)
オウバク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号69及び70で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とオウバクの標準配列である配列番号169で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はオウバクの基原植物であり、前記オウバク候補はオウバクであると鑑別する。
(コウボクの鑑別方法)
コウボク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのrpl16イントロン領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号71及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号170~172のいずれかで示す塩基配列、配列番号71及び73で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号173~175のいずれかで示す塩基配列、そして配列番号74及び72で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウボクの標準配列である配列番号176~178のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウボクの基原植物であり、前記コウボク候補はコウボクであると鑑別する。
(タクシャの鑑別方法)
タクシャ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に配列番号75及び76、配列番号77及び78、又は配列番号75及び79、又は配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号75及び76で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号179又は180で示す塩基配列、配列番号77及び78で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号181又は182で示す塩基配列、配列番号75及び79で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号183又は184で示す塩基配列、そして配列番号77及び80で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とタクシャの標準配列である配列番号185又は186で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はタクシャの基原植物であり、前記タクシャ候補はタクシャであると鑑別する。
(キッソウコンの鑑別方法)
キッソウコン候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号81及び82で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とキッソウコンの標準配列である配列番号187で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はキッソウコンの基原植物であり、前記キッソウコン候補はキッソウコンであると鑑別する。
(ボクソクの鑑別方法)
ボクソク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号83及び84、配列番号83及び85、配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号83及び84で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号188~191、及び593~594のいずれかで示す塩基配列、又は配列番号83及び85で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号192~195、及び601~602のいずれかで示す塩基配列とを、そして配列番号86及び87で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とボクソクの標準配列である配列番号196~199、及び609~612のいずれかで示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はボクソクの基原植物であり、前記ボクソク候補はボクソクであると鑑別する。
(レンギョウの鑑別方法)
レンギョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号88及び89、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号88及び89で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンギョウの標準配列である配列番号200で示す塩基配列、又は配列番号90及び91で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンギョウの標準配列である配列番号201で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンギョウの基原植物であり、前記レンギョウ候補はレンギョウであると鑑別する。
(リョウキョウの鑑別方法)
リョウキョウ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号92及び93、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いて葉緑体DNAのmatK領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号92及び93で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とリョウキョウの標準配列である配列番号202又は633で示す塩基配列、又は配列番号66及び94で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とリョウキョウの標準配列である配列番号203又は638で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はリョウキョウの基原植物であり、前記リョウキョウ候補はリョウキョウであると鑑別する。
(レンニクの鑑別方法)
レンニク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号95及び4、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号92及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンニクの標準配列である配列番号204で示す塩基配列、又は配列番号96及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とレンニクの標準配列である配列番号205、又は646で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はレンニクの基原植物であり、前記レンニク候補はレンニクであると鑑別する。
(コウカの鑑別方法)
コウカ候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号97及び4、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、配列番号97及び4で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウカの標準配列である配列番号206で示す塩基配列、又は配列番号44及び36で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いたときの増幅産物の塩基配列とコウカの標準配列である配列番号207で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が一致したときに前記被検植物はコウカの基原植物であり、前記コウカ候補はコウカであると鑑別する。
(ソボクの鑑別方法)
ソボク候補の被検植物から核酸を抽出し、その核酸を鋳型に、配列番号98及び99で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅した後、増幅産物の塩基配列を決定する。その後、増幅産物の塩基配列とソボクの標準配列である配列番号208で示す塩基配列を比較して、両者の塩基配列が完全に一致したときに前記被検植物はソボクの基原植物であり、前記ソボク候補はソボクであると鑑別する。
<実施例1:シャクヤク及びボタンピの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、シャクヤクの基原植物は、シャクヤクPaeonia lactiflora、またボタンピの基原植物はボタンPaeonia suffruticosaと規定されている。しかし、両者は近縁で類似しているため互いに取り違える可能性がある他、市場や園芸に供される種苗にはそれらの近縁他種であるP. veitchiiやP. officinalisがあり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、シャクヤク及びボタンピの鑑別方法における一例を示す。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるシャクヤクPaeonia lactiflora及びボタンピP. suffruticosaの一部を採取し、また、シャクヤク近縁種のPaeonia veitchii、P. tenuifolia、P. sinjiangensisについては、その押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。他の近縁種であるP. anomala、P. officinalis ssp. microcarpa、P. rhodia、P. broteri、P. arietina、及びP. banaticaについてはGenBank (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)より相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより特定の核酸領域を増幅した。核酸増幅反応条件は、生薬鑑別用プライマーごとに適宜、適切な条件を定めることができる。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-1F (配列番号3) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:002-1R(White T.J., et al. 1990, Amplification and direct sequencing of fungal ribosomal RNA genes for phylogenetics. In: Innis M. A., Gelfand D. H., Sninsky J. J. and White T. J. (eds.), PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications. pp. 315-322. Academic Press, San Diego記載のユニバーサルプライマーITS2:配列番号4) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer (ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-2F (配列番号5) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー: 002-2R (配列番号6) (10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 002-1F (配列番号3) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:002-3R(配列番号229) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
・PCRサイクル条件
PCRは、上記各鋳型DNAをPCR反応液1~3と共に0.2mLマイクロチューブに入れ、Step Down法、すなわち(94℃, 4min)×1サイクル、(95℃, 30sec; 70℃, 15sec; 72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;66℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;62℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;58℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;54℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;48℃, 1.5 min;72℃, 2.5 min)×20サイクル、そして(72℃, 7 min.)×1サイクルの条件で、GeneAmp9700(Thermo Fisher Scientific社)等のサーマルサイクラーを用いて行った。
・ゲル電気泳動による増幅産物の確認とゲル抽出
PCR後に、ゲル電気泳動法により目的とする特定の核酸領域の増幅産物を確認し、それを単離した。具体的にはPCR後の反応液に2μLのBlue Juiceを添加してサンプル溶液を調製した。total 2% NuSieve+SeaKEM (タカラバイオ社)+1×TAEのゲルを、Mupid EX-U(ミューピッド社)に充填した1×TAEバッファ中に浸漬し、well中にサンプル溶液を15μL積載した後、100V×約30分間の条件で電気泳動を行った、目標PCR産物のLoading量は、15μL LED 500nmトランスイルミネーターLB-16BG(日本ジェネティクス社)+ゲル撮影装置Printgraph AE-6931 FXCF (ATTO社)で確認し、画像撮影を行った(図示せず)。
続いて、目的の増幅産物から予想されるサイズのバンドを使い捨てメスで切り出し、illustra GFX PCR Purification Kit (GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて抽出した後、同キット中のType4 buffer 20μLで溶出した。
・増幅産物の塩基配列決定
サイクルシーケンス反応の最適化のためにNanodrop 2000C(バイオメディカルサイエンス社)を用いて増幅産物の濃度測定を行い、適正濃度になるようにTEで希釈した。BigDye Terminator v.3.1溶液(Thermo Fisher Scientific社)0.8μL、5× Buffer(Thermo Fisher Scientific社)0.4μL、D.W. 0.8μL、プライマー(002-2F/2R)(1pmol/μL)1μL、精製増幅産物1μLを混合し、GeneAmp9700(Thermo Fisher Scientific社)+200μLを96wellプレートでBigDye Terminator v.3.1マニュアルで指定された条件でサイクルシーケンシングを行った。反応後、BigDye Terminator v.3.1マニュアル中で指定されたEDTAエタノール沈殿法により、精製増幅産物を得た。ABI PRISM(登録商標)3500xL Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific社)で、50cmキャピラリー、POP7を用いて同機器のマニュアルに従い、増幅産物の塩基配列を決定した。その後、VerctorNTI 9.0 for Windows (Thermo Fisher Scientific社)中のContigExpressにて、PCR反応液1及びPCR反応液2のそれぞれの各種増幅産物のフォワード配列及びリバース配列を比較して信頼性の高い配列を決定した。BioEdit v7.2.5 for Windows (Tom Hall 2013)にて基原植物であるシャクヤク又はボタンピの標準配列と、シャクヤク/ボタンピ近縁種の特定の核酸領域の塩基配列との差異を検証した。
結果を表3に示す。
Figure 0007131086000007
Figure 0007131086000008
Figure 0007131086000009
Figure 0007131086000010
Figure 0007131086000011
Figure 0007131086000012
Figure 0007131086000013
表中、特定の核酸領域における塩基配列の下線部はフォワードプライマー(5’側)及びリバースプライマーの相補鎖(3’側)の塩基配列に相当する(以下、同様とする)。
シャクヤクは特定の核酸領域であるリボソームDNAのITS領域において、検証した10種の同属近縁種と異なる固有の塩基配列を有することが明らかとなった。したがって、プライマーセット002-1F/002-1R、002-2F/002-2R、又は002-1F/002-3Rを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅し、その塩基配列を決定することで、シャクヤク候補の生薬加工処理された被検植物がシャクヤク(P. lactiflora)又はボタンピ(P. suffruticosa)であるか、他の近縁種であるかを鑑別できることが明らかとなった。
また、PCR反応液#3で用いたプライマーセット002-1F/002-3Rを用いてリボソームDNAのITS1領域を増幅した場合、48位がT(チミン)となるのはシャクヤクP. lactifloraのみであり、32位及び61位がそれぞれG(グアニン)及びC(シトシン)となるのはボタンP. suffruticosaのみであった。したがって、これら2つの部位に基づいて、シャクヤク及びボタンと他の近縁種とを鑑別することができる。28位,53位,67位,76位,87位,117位,118位に関しては、個々の塩基配列ではシャクヤク及びボタンと、他の近縁種とを鑑別することはできないが、前記部位の塩基配列情報を複数組み合わせることで可能となることが明らかとなった。
<実施例2:ハンゲ/テンナンショウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ハンゲ/テンナンショウの基原植物は、ハンゲがカラスビシャクPinellia ternataで、テンナンショウがマイヅルテンナンショウArisaema heterophyllum 、A. erubescens、A. amurense、又はその他同属の近縁植物 (Araceae)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるP. pedatisecta等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ハンゲ/テンナンショウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のハンゲの基原植物であるカラスビシャクPinellia ternata、及びテンナンショウの基原植物であるマイヅルテンナンショウArisaema heterophyllum、A. erubescens、A. amurense及びこれらの同属近縁植物の一部から抽出した。また、近縁種のうち、P. yaolupingensisについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 001-1F (配列番号1) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:001-1R(配列番号2) (10pmol/μL) 1μL,鋳型DNA 1μL
結果を表4に示す。
Figure 0007131086000014
Figure 0007131086000015
増幅されたITS領域の核酸断片中において、ハンゲP. Breitenbachに固有の塩基配列はなかったが、増幅された塩基配列中の異なる部位によって近縁種との鑑別が可能であった。例えば、P. Breitenbachと最も近縁なP. yaoluopingensisとは、88位の塩基のみで鑑別できる。また、テンナンショウ基原植物3種(A. heterophyllum,A. erubescens,A. amurense)に共通する変異も見られなかったが、2種に共通する変異部位を複数組み合わせによって、これらの基原植物と近縁種とを鑑別することが可能であった。したがって、プライマーセット001-1F/001-1Rを用いてITS領域を増幅し、その塩基配列を決定することで、被験植物がカラスビシャクP. ternataであるか、又はマイヅルテンナンソウA. heterophyllumであるか、あるいは他の近縁種であるかを鑑別できることが明らかとなった。
<実施例3:ケイヒの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ケイヒの基原植物は、シナニッケイCinnamomum cassiaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. javanicum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ケイヒの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のケイヒの基原植物であるシナニッケイC. cassiaの一部、及びケイヒ近縁種のうちC. sieboldii,C. burmanii,C. zeylanicumについては押葉標本の一部をそれぞれ採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、C. reticulatum、C. insularimontanum、及びC. japonicumについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL、gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー: 003-1F (配列番号7) (10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:003-1R(配列番号8) (10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表5に示す。
Figure 0007131086000016
増幅されたITS領域の核酸断片中において8位がC(シトシン)及び93位がA(アデニン)となるのはシナニッケイC. cassiaのみであり、これらの部位の塩基に基づいてシナニッケイC. cassiaと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。また、増幅した核酸断片中の21位、33位、36位、57位、59位、65位、66位、68位、72位、92位、108位、及び109位の12部位については、各部位単独の塩基情報ではシナニッケイC. cassiaと近縁種とを鑑別することはできないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。
シナニッケイC. cassiaと近縁種を鑑別するためには8位及び93位の同定が必要条件あるが、より精度の高い鑑別には上記12部位を含めた14部位の塩基を同定することが好ましい。
<実施例4:トウキの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、トウキの基原植物は、トウキAngelica acutiloba又はホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. sinensis等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、トウキの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のトウキの基原植物であるトウキAngelica acutiloba及びホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeの一部を採取し、また近縁種のうち、A. sinensisについては収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のうち、A. dahurica var. formosana、A. pubescens、A. gigas、Perissocoeleum barclayae、Niphogeton joseiについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:004-1F(配列番号9;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:004-1R(配列番号10)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL,10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:004-2F(配列番号11; White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL,リバースプライマー:004-2R(配列番号12)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表6に示す。
Figure 0007131086000017
Figure 0007131086000018
Figure 0007131086000019
Figure 0007131086000020
基原植物であるトウキA. acutilobaとホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeで増幅されたITS1領域は同一配列であった。よって、以降、A. acutilobaを基準に説明をする。ITS1領域において、70位、75位、83位、188位、及び229位の5部位については、単独の塩基情報ではトウキA. acutilobaと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。
基原植物であるA. acutilobaとA. acutiloba var. sugiyamaeのITS2領域も同一配列であった。よって、以降、A. acutilobaを基準に説明をする。ITS2領域において、増幅した核酸断片の270位がT(チミン)となるのはトウキA. acutilobaのみであり、これらの部位の塩基に基づいてトウキと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。また、116位、133位、171位、203位、248位の5部位については、各部位単独の塩基情報ではトウキと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別可能なことも明らかとなった。
トウキA. acutiloba及びホッカイトウキA. acutiloba var. sugiyamaeと、その近縁種とを鑑別するためには、270位の同定で足りるが、より精度の高いの鑑別のためには上記5部位を含めた6部位の塩基を同定することが好ましく、さらに高精度の鑑別のためにはITS2領域の5部位を含む計11部位の塩基を同定して評価をすることが好ましい。
<実施例5:ソウジュツ/ビャクジュツの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ソウジュツの基原植物はホソバオケラAtractylodes lancea、A. chinensis 又はそれらの雑種(Compositae)、またビャクジュツの基原植物はオケラ A. japonica(和ビャクジュツ)又はオオバナオケラ A. macrocephala (Atractylodes ovata)と規定されている。しかし市場にはビャクジュツがソウジュツとして、またソウジュツがビャクジュツとして流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ソウジュツ/ビャクジュツの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又はソウジュツ、及びビャクジュツの基原植物全種の押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:005-1F(配列番号13)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:005-1R(配列番号14)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表7に示す。
Figure 0007131086000021
Figure 0007131086000022
増幅されたITS領域の核酸断片中において検出された22位、24位、34位、57位、70位、74位、81位、94位、102位、110位、123位、130位、175位、179位、212位、及び232位の16部位について、各部位単独の塩基情報ではソウジュツとビャクジュツの基原植物を相互に鑑別できないが、それらの群から選択される2以上の組み合わせによって、それぞれの種類を鑑別できることが明らかとなった。
<実施例6:サイコの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、サイコの基原植物は、ミシマサイコBupleurum falcatumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるB. ranunculoides等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サイコの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるミシマサイコB. falcatumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。なお、ミシマサイコ種内には複数の系統が含まれ、染色体数の異なるもの(2n=26と2n=20)や、中国では別種(B. scorzonerifolium,B. chinense)として扱われるものがあり、それぞれ配列が異なる。また、近縁種のB. ranunculoides、B. bicaule、B. smithiiについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:006-1F(配列番号15)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:006-1R(配列番号16)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表8に示す。
Figure 0007131086000023
Figure 0007131086000024
増幅されたITS領域の核酸断片中において検出された4位、20位、26位、43位、48位、75位、128位、146位、161位、168位、181位、及び182位の12部位について、各部位単独の塩基情報ではサイコと近縁種とを鑑別できないが、それらの群から選択される2以上の組み合わせによって、サイコを鑑別できることが明らかとなった。
<実施例7:テンモンドウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、テンモンドウの基原植物は、クサスギカズラAsparagus cochinchinensisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. meioclados等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、テンモンドウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のテンモンドウの基原植物であるクサスギカズラA. cochinchinensisの一部を採取し、また近縁種のうち、A. meioclados、A. lycopodineus、及びA. officinalisについては押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。その他の近縁種であるA. racemosus、及びA. schoberioidesについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:007-1F(配列番号17)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:007-1R(配列番号18)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表9に示す。
Figure 0007131086000025
テンモンドウの基原植物であるクサスギカズラA. cochinchinensisには種内多型が見られるため、表9では、増幅されたITS領域をA. cochinchinensis1とA. cochinchinensis2とで別々に示した。A. cochinchinensisの2型と近縁種とを単独の塩基情報で鑑別できる部位は認められなかったが、5位、16位、18位、24位、25位、41位、及び45位の7部位からなる群から選択される2以上の組み合わせによって、テンモンドウを鑑別できることが明らかとなった。
<実施例8:サンシュユの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、サンシュユの基原植物は、サンシュユCornus officinalisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. mas等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サンシュユの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるサンシュユC. officinalisの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のC. mas、C. eydeana、C. chinensis、及びC. stracheyiについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:008-1F(配列番号19)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:008-1R(配列番号20)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表10に示す。
Figure 0007131086000026
増幅されたITS領域の核酸断片中において検出された31位、35位、77位、及び87位の4部位については、各部位単独の塩基情報ではサンシュユC. officinalisと近縁種とを鑑別できないが、それらの群から選択される2以上の組み合わせによって、サンシュユを鑑別できることが明らかとなった。
<実施例9:ビャクゴウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ビャクゴウの基原植物は、オニユリLilium lancifolium、ハカタユリL. brownii var. colchesteri、L. brownii、又はL. pumilumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるL. concolor等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ビャクゴウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のビャクゴウの基原植物であるオニユリL. lancifoliumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:009-1F(配列番号21)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:009-1R(配列番号22)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:009-2F(配列番号23)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:009-2R(配列番号24)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表11に示す。
Figure 0007131086000027
Figure 0007131086000028
Figure 0007131086000029
Figure 0007131086000030
ITS領域#1の核酸断片中において検出された18位、37位、50位、54位、58位、90位、95位、102位、124位、及び150位の10部位について、各部位単独の塩基情報ではビャクゴウの基原植物と近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ビャクゴウを鑑別できることが明らかとなった。
また、ITS1領域#2の核酸断片中において検出された6位、18位、20位、25位、32位、42位、46位、54位、107位、及び126位の10部位について、各部位単独の塩基情報ではビャクゴウの基原植物と近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ビャクゴウを鑑別できることが明らかとなった。
<実施例10:ニンジン/コウジンの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ニンジン/コウジンの基原植物は、オタネニンジンPanax ginsengと規定されている.しかし市場には近縁種であるP. quinquefolius等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ニンジン/コウジンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のニンジン/コウジンの基原植物であるオタネニンジンP. ginsengの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:013-1F(配列番号9;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:013-1R(配列番号34)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:013-2F(配列番号35)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:013-2R(配列番号36;White et al. 1990, 既述)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:010-1F(配列番号25)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:010-1R(配列番号26)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:010-2F(配列番号27)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:010-2R(配列番号28)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表12に示す。
Figure 0007131086000031
Figure 0007131086000032
Figure 0007131086000033
Figure 0007131086000034
Figure 0007131086000035
Figure 0007131086000036
Figure 0007131086000037
Figure 0007131086000038
PCR反応液1と3、及び反応液2と4は、それぞれ同一の鑑別領域を増幅し、PCR反応液1と3、及び反応液2と4とでは、増幅される断片の長さが異なる。一般に、増幅断片が短いほど増幅成功率が高くなる一方で、得られる鑑別部位の情報数が少なくなり、オートシーケンサーでの配列決定が困難となる。以降、本明細書の実施例で用いる各プライマーセットにおいて同様とする。
本方法ではPCR反応液1及び2での増幅断片の配列決定を試み、配列決定の成功率が十分に高くない場合には、PCR反応液3及び4で再度増幅及び配列決定を行う、二段階の試験を実施した。これにより、コスト低減とサンプルのDNA品質の差への対応を可能とした。なお、コウジンについてはPCR反応液1とPCR反応液2では配列決定の成功率が低いため、最初からPCR反応液3と4を用いた試験が有効である。
ITS1領域#1において、147位がA(アデニン)となるのはオタネニンジンP. ginsengのみであり、この部位の塩基に基づいてオタネニンジンと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。45位、73位、及び206位の3部位については、各部位単独の塩基情報だけではオタネニンジンと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。オタネニンジンP. ginsenと近縁種を鑑別するためには147位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には上記3か所を含めた4部位の塩基を同定することが好ましい。
ITS2領域#1において、106位でT(チミン)となるのはオタネニンジンP. ginsengのみであり、この部位の塩基に基づいてオタネニンジンと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。85位、97位、146位、162位、203位、270位、及び281位の7部位については、各部位単独の塩基情報だけではオタネニンジンと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。オタネニンジンP. ginsengと近縁種を鑑別するためには106位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には上記7部位を含めた8部位の塩基を同定することが好ましい。
ITS1領域#2において、80位でA(アデニン)となるのはオタネニンジンP. ginsengのみであり、この部位の塩基に基づいてオタネニンジンと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。6位、21位、及び32位の3部位については、各部位単独の塩基情報だけではオタネニンジンと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。つまり、オタネニンジンP. ginsengと近縁種を鑑別するためには80位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には上記3部位を含めた4部位の塩基を同定することが好ましい。
ITS2領域#2において、78位でT(チミン)となるのはオタネニンジンP. ginsengのみであり、この部位の塩基に基づいてオタネニンジンと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。64位、75位、及び115位の3部位については、各部位単独の塩基情報だけではオタネニンジンと近縁種とを鑑別することはできないが、複数の部位の塩基情報を組み合わせることで、鑑別できることが明らかとなった。オタネニンジンP. ginsengと近縁種を鑑別するためには78位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には上記3部位を含めた4部位の塩基を同定することが好ましい。
PCR反応液1及び2で増幅及び配列決定ができた場合と、PCR反応液3及び4で増幅及び配列決定ができた場合とでは、上記のように使用できる鑑別部位の数が異なる。より精度の高い鑑別のためには、より多くの鑑別部位数を有するPCR反応液1及び2で増幅及び配列決定が有効だが、PCR反応液3及び4でも近縁種を鑑別するための必要要件を満たし得る。
<実施例11:テンマの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、テンマの基原植物は、オニノヤガラGastrodia elataと規定されている。しかし、市場には近縁種であるG. pubilabiata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、テンマの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のテンマの基原植物であるオニノヤガラG. elataの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:011-1F(配列番号29)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:011-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:011-2F(配列番号30)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:011-2R(配列番号31)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表13に示す。
Figure 0007131086000039
Figure 0007131086000040
Figure 0007131086000041
Figure 0007131086000042
増幅されたITS1領域の核酸断片中において検出された38位、54位、及び83位の3部位がそれぞれG、A、及びCとなるのはオニノヤガラG. elataのみであった。したがって、これらいずれかの部位の塩基情報に基づいてテンマの基原種であるオニノヤガラと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。オニノヤガラの鑑別には前記3部位のいずれか一の塩基情報で足りるが、より精度の高い鑑別には2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
ITS2領域において、2位、20位、56位、84位、91位、103位、104位、122位、126位の9部位がそれぞれC、A、C、C、C、C、T、T、及びAとなるのはオニノヤガラG. elataのみであった。したがって、これらの部位の塩基情報に基づいてテンマの基原種であるオニノヤガラと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。オニノヤガラの鑑別には前記9部位のいずれか一の塩基情報で足りるが、より精度の高い鑑別には2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例12:オウゴンの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、オウゴンの基原植物は、コガネバナScutellaria baicalensisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるS. amoena等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウゴンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウゴンの基原植物であるコガネバナS. baicalensisの一部を採取し、また近縁種のうちS. amoenaについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるS. indica及びS. pekinensisについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:012-1F(配列番号9)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:012-1R(配列番号32)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:012-2F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:012-2R(配列番号33)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表14に示す。
Figure 0007131086000043
Figure 0007131086000044
Figure 0007131086000045
増幅されたITS1領域の核酸断片中において検出された、193位、137位、154位、155位、162位、182位、212位、241位、及び258位の9部位について各部位単独の塩基情報ではオウゴンの基原植物コガネバナS. baicalensisと近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、コガネバナを鑑別できることが明らかとなった。
また、増幅されたITS2領域においての核酸断片中において検出された、187位がC(シトシン)なのはコガネバナS. baicalensisのみであった。したがって、この部位の塩基情報に基づいてオウゴンの基原植物コガネバナと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。一方、93位、118位、119位、168位、176位、及び191位の6部位における各部位単独の塩基情報ではコガネバナと近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、コガネバナを鑑別できることが明らかとなった。
コガネバナの鑑別にはITS2領域の187位の塩基情報で足りるが、より精度の高い鑑別には、それに加えて、ITS1領域の前記9部位、及びITS2領域の前記6部位の計15部位からなる群から選択される塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例13:ショウマの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ショウマの基原植物は、サラシナショウマCimicifuga simplex、C. dahurica、C. foetida、又はC. heracleifoliaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. racemosa等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ショウマの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のショウマの基原植物であるC. simplex、C. dahurica、C. foetida、及びC. heracleifoliaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種Actaea racemosa(=C. racemosa)、C. acerina、A. japonica(= C. japonica)についてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-1F(配列番号37)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-1R(配列番号38)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-2F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-2R(配列番号39)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-1F(配列番号37)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-3R(配列番号40)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:014-3F(配列番号41)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:014-2R(配列番号39)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表15に示す。
Figure 0007131086000046
Figure 0007131086000047
Figure 0007131086000048
Figure 0007131086000049
PCR反応液1及び3で得られるITS1領域における鑑別領域は同じである。PCR反応液1と3の違いは増幅断片長の違いのみである。増幅されたITS1領域の核酸断片中において、100位がT(チミン)なのはC. dahuricaのみであった。したがって、この部位の塩基情報に基づいてショウマの基原植物の一つであるC. dahuricaと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。ITS1領域の核酸断片中において、14位、37位、59位、60位、67位、69位、85位、87位、及び111位の9部位に関しては、各部位単独の塩基情報ではC. dahuricaと近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、C. dahuricaを鑑別できることが明らかとなった。
PCR反応液2及び4で得られるITS2領域における鑑別領域は同じである。PCR反応液2と4の違いは増幅断片長の違いのみである。増幅されたITS2領域の核酸断片中において、113位、117位、121位、125位、136位、140位、及び153位の7部位における各部位単独の塩基情報ではC. dahuricaと近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、C. dahuricaを鑑別できることが明らかとなった。
ショウマC. dahuricaの鑑別にはITS1領域の100位の塩基情報で足りるが、より精度の高い鑑別には、それに加えて、ITS1領域の前記9部位及びITS2領域の前記7部位からなる群から選択される塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例14:チョレイの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、チョレイの基原植物は、チョレイマイタケPolyporus umbellatusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるF.fomentarius等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョレイの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のチョレイの基原植物であるチョレイマイタケPolyporus umbellatusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種F. fomentarius、及びTinctoporellus epimiltinusについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:015-1F(配列番号42)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:015-1R(配列番号43)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表16に示す。
Figure 0007131086000050
チョレイマイタケP. umbellatusには種内多型が認められる。増幅されたITS領域の核酸断片において、15位がC(シトシン)となるのはチョレイマイタケのみであった。したがって、この部位の塩基情報に基づいてチョレイの基原植物チョレイマイタケと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。また、ITS1領域の66位、108位、119位、122位、140位、及び150位の6部位における各部位単独の塩基情報ではチョレイマイタケと近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、チョレイマイタケを鑑別できることが明らかとなった。
チョレイマイタケPolyporus umbellatusと近縁他種を区別するためには15位の同定で足りるが、より精度の高い鑑別には、それに加えて、ITS1領域の前記6部位からなる群から選択される塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例15:ブシの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ブシの基原植物は、Aconitum carmichaeli又は オクトリカブトA. japonicumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. hemsleyanum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ブシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のブシの基原植物であるAconitum carmichaeli及びA. japonicumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のA. hemsleyanum、A. campylorrhynchum、A. austroyunnanense、及びA. bucovinenseについてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS1領域及びITS2領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-1F(配列番号44)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-1R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1増幅用#1)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-2F(配列番号45)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-2R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1増幅用#2)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:016-3F(配列番号46)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:016-3R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表17に示す。
Figure 0007131086000051
Figure 0007131086000052
Figure 0007131086000053
Figure 0007131086000054
PCR反応液1を用いたPCRで得られるITS2領域の核酸断片において、111位、129位、140位、175位、200位、及び212位の6部位に関しては、各部位単独の塩基情報ではブシの基原植物であるA. carmichaeli及びA. japonicumと、その近縁種とを鑑別できない。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、A. carmichaeli及びA. japonicumと他の近縁種とを鑑別できることが明らかとなった。
PCR反応液2及びPCR反応液3で得られるITS1領域における両者の鑑別領域は同じである。PCR反応液2と3の違いは増幅断片長の違いのみである。
増幅されたITS1領域#1の核酸断片において、25位、83位、103位、133位、154位、195位、200位、及び218位の8部位について、各部位単独の塩基情報のみではブシの基原植物であるA. carmichaeli及びA. japonicumと、その近縁種とを鑑別できないが、それら8部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、A. carmichaeli及びA. japonicumを鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS1領域#2の核酸断片において、18位、59位、64位、及び82位の4部位に関しては、各部位単独の塩基情報では、ブシの基原植物であるA. carmichaeli及びA. japonicumと、その近縁種とを鑑別できないが、それら4部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、A. carmichaeli及びA. japonicumを鑑別できることが明らかとなった。
ブシの基原植物であるA. carmichaeli及びA. japonicumの鑑別において、より精度の高い鑑別のためには、ITS2領域の前記6部位、ITS1領域#1の前記8部位、及びITS1領域#2の前記4部位の計18部位からなる群から選択される2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例16:シンイの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、シンイの基原植物は、タムシバMagnolia salicifolia、コブシM.kobus、M.biondii、M.sprengeri、又はハクモクレンM.heptapeta (M.denudata)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるM.macrophylla等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、シンイの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のシンイの基原植物であるタムシバMagnolia salicifolia、コブシM.kobus、M.biondii、M.sprengeri、又はハクモクレンM.heptapeta (M.denudata)の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種についてはGenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のtrnL intron領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:trnL intron領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:017-3F(配列番号230)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:017-3R(配列番号231)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:trnL intron領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:017-4F(配列番号232)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:017-2R(配列番号50)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表18に示す。
Figure 0007131086000055
Figure 0007131086000056
Figure 0007131086000057
Figure 0007131086000058
Figure 0007131086000059
Figure 0007131086000060
Figure 0007131086000061
Figure 0007131086000062
Figure 0007131086000063
Figure 0007131086000064
Figure 0007131086000065
Figure 0007131086000066
増幅されたtrnL intron領域#1の核酸断片において、124位がA(アデニン)となるのはタムシバM.salicifolia、コブシM.kobus、M.biondii、M.sprengeri、及びハクモクレンM.heptapetaのみであった。したがって、この部位の塩基情報に基づいてシンイの基原植物タムシバ、コブシ、M.biondii、M.sprengeri、及びハクモクレンと他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。また、trnL intron領域#1の核酸断片において検出された73位、115位、136位、145位の4部位については、各部位単独の塩基情報ではシンイの基原植物と近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、シンイ基原植物を鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたtrnL intron領域#2の核酸断片において、69位及び70位がAA(アデニン、アデニン)となるのは前記5種の基原植物のみであった。したがって、この部位の塩基情報に基づいてシンイの5種の基原植物と他の近縁種とを鑑別することが可能なことが明らかとなった。また、trnL intron領域#2の核酸断片において検出された15位、53位、及び99位の3部位について、各部位単独の塩基情報ではシンイの5種の基原植物と近縁種とを鑑別できないが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、シンイ基原植物を鑑別できることが明らかとなった。
シンイの5種の基原植物と近縁種とを鑑別するためには、trnL intron領域#1の核酸断片における124位、又はtrnL intron領域#2の核酸断片における69位及び70位のいずれかの塩基情報で足りるが、より高い精度で鑑別するためには前記2領域における3部位に加えて、trnL intron領域#1の前記4部位、及びtrnL intron領域#2の前記3部位からなる計7部位からなる群から選択される2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例17:チョウジの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、チョウジの基原植物は、チョウジSyzygium aromaticum (Eugenia caryophyllata)と規定されている。しかし、市場には近縁種であるS. jambos等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョウジS. aromaticumの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるチョウジS. aromaticumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:018-1F(配列番号51)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:018-1R(配列番号52)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表19に示す。
Figure 0007131086000067
増幅されたITS領域の核酸断片において、16位がT(チミン)となるのはチョウジS. aromaticumのみであった。したがって、この部位に基づいて、チョウジS. aromaticumと他の近縁種とを鑑別することができる。また、ITS領域の核酸断片において検出された13位、32位、34位、及び57位の4部位については、各部位単独の塩基情報ではチョウジS. aromaticumと近縁種とを鑑別できないが、それらの群から選択される2以上の組み合わせによって、チョウジS. aromaticumを鑑別できることが明らかとなった。
チョウジと他の近縁種とを鑑別するためには、ITS領域の16位の塩基情報で足りるが、より高い精度で鑑別するためには16位に加えて、ITS領域の前記4部位からなる群から選択される2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例18:チョウトウコウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、チョウトウコウの基原植物は、カギカズラUncaria rhynchophylla、U. sinensis又はU. macrophyllaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるU. scandens等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、チョウトウコウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のチョウトウコウの基原植物であるカギカズラUncaria rhynchophylla、U. sinensis、及びU. macrophyllaの一部を採取し、また、近縁種のU. hirsuta、U. sessilifructus、U. laevigataについては押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるU. scandens、及びU. lancifoliaについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:019-4F(配列番号58)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:019-4R(配列番号56)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表20に示す。
Figure 0007131086000068
Figure 0007131086000069
増幅されたITS領域の核酸断片において検出された18位、19位、21位、52位、53位、67位、143位、160位、及び190位の9部位については、各部位単独の塩基情報では基原植物3種と他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、チョウトウコウの基原植物を他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例19:コウブシの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、コウブシの基原植物は、ハマスゲCyperus rotundusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. articulatus等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウブシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のコウブシの基原植物であるハマスゲC. rotundusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のC. articulates、C. insularis、C. ustulatus、及びC. corymbosusについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:020-1F(配列番号59)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:020-1R(配列番号60)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:020-2F(配列番号41)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:020-2R(配列番号61)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表21に示す。
Figure 0007131086000070
Figure 0007131086000071
Figure 0007131086000072
コウブシとして使用可能なハマスゲ種内には遺伝子タイプが複数あるが、いずれも使用可能である。
増幅されたITS1領域の核酸断片において検出された36位、71位、73位、87位、126位、127位、133位、134位、145位、146位、157位、及び162位の12部位については、各部位単独の塩基情報ではハマスゲC. rotundusと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ハマスゲC. rotundusを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS2領域の核酸断片において、134位がC(シトシン)、又は163位がG(グアニン)となるのはハマスゲC. rotundusのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報で、ハマスゲC. rotundusと他の近縁種とを鑑別することができる。また、ITS2領域の核酸断片において検出された77位、109位、及び125位の3部位については、各部位単独の塩基情報ではハマスゲC. rotundusと近縁種とを鑑別できないが、それらの群から選択される2以上の組み合わせによって、ハマスゲC. rotundusを鑑別できることが明らかとなった。
ハマスゲC. rotundusと他の近縁種とを鑑別するためには、ITS2領域の134位又は163位のいずれかの塩基情報で足りるが、より高い精度で鑑別するためにはそれらに加えて、ITS1領域の前記12部位及びITS2領域の前記3部位からなる群から選択される2以上の塩基情報を組み合わせることがより好ましい。
<実施例20:オウレンの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、オウレンの基原植物は、オウレンCoptis japonica、C. chinensis、C. deltoidea、又はC. teetaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. quinquesecta等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウレンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウレンの基原植物であるオウレンCoptis japonica、C. chinensis、C. deltoidea、又はC. teetaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種であるC. omeiensis、及びC. quinquesectaについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のrbcL領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:rbcL領域1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:021-1F(配列番号62)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:021-1R(配列番号63)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:rbcL領域2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:021-2F(配列番号64)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:021-2R(配列番号65)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表22に示す。
Figure 0007131086000073
Figure 0007131086000074
Figure 0007131086000075
増幅されたrbcL領域1の核酸断片において、97位がG(グアニン)となるのはオウレンC. japonicaのみであり、127位がA(アデニン)となるのはC. chinensisのみであり、157位がA(アデニン)となるのはC. deltoideaのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報で、それぞれオウレンC. japonica、C. chinensis、及びC. deltoideaと他の近縁種とを鑑別することができる。しかし、PCR反応液1では、C.teetaと他の近縁種とを鑑別できることはできなかった。
一方、増幅されたrbcL領域2の核酸断片において、158位がT(チミン)となるのはC. teetaのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報で、C. teetaと他の近縁種とを鑑別することができる。
以上より、C. japonica、C. chinensis、又はC. deltoideaの鑑別はrbcL領域1の核酸断片における前記各部位の解析で足り、C. teetaの鑑別はrbcL領域2の核酸断片における158位の解析で足りることが明らかとなった。より高い確度の鑑別のためには上記部位に加えて、rbcL領域2において単独の塩基情報では近縁種との鑑別ができない15位、26位、及び53位から選択される2以上の組み合わせることがより好ましい。
<実施例21:ショウキョウ/カンキョウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ショウキョウ/カンキョウの基原植物は、ショウガZingiber officinaleと規定されている。しかし、市場には近縁種であるZ. montanum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ショウキョウ/カンキョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のショウキョウ/カンキョウの基原植物であるショウガZ. officinaleの一部を採取し、また近縁種のZ. montanumについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。他の近縁種であるZ. densissimum、Z. orbiculatum、Z. rubens、Z. sulphureum、Z. corallinum、Z. zerumbet、及びZ. engganoensisについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のmatK領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:matK領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:022-1F(配列番号66)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:022-1R(配列番号67)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表23に示す。
Figure 0007131086000076
Figure 0007131086000077
増幅されたmatK領域の核酸断片において、39位がA(アデニン)となるのはショウガZ. officinaleのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でショウガZ. officinaleと他の近縁種とを鑑別することができる。また、matK領域の核酸断片において検出された29位、32位、104位、及び115位の4位については、各部位単独の塩基情報ではショウガZ. officinaleと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ショウガZ. officinaleを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
ショウガZ. officinaleと他の近縁種の鑑別には、matK領域の39位単独の塩基情報で足りるが、より高い確度の鑑別のためには、それに加えて、前記4部位から選択される2以上の組み合わせることがより好ましい。
<実施例22:サンシシの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、サンシシの基原植物は、クチナシGardenia jasminoidesと規定されている。しかし、市場には近縁種であるG. thunbergia等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、サンシシの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のサンシシの基原植物であるクチナシG. jasminoidesの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:023-1F(配列番号11)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:023-1R(配列番号68)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表24に示す。
Figure 0007131086000078
Figure 0007131086000079
増幅されたITS領域の核酸断片において検出された33位、45位、140位、167位、187位、263位、269位、及び295位の8部位については、各部位単独の塩基情報でクチナシG. jasminoidesと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかったが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、クチナシG. jasminoidesを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例23:オウバクの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、オウバクの基原植物は、キハダPhellodendron amurense又はP. chinenseと規定されている。しかし、市場には近縁種であるTetradium glabrifolium等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、オウバクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のオウバクの基原植物であるキハダP. amurense又はP. chinenseの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のT. glabrifolium及びZanthoxylum schinifoliumについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:024-1F(配列番号69)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:024-1R(配列番号70)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表25に示す。
Figure 0007131086000080
増幅されたITS領域の核酸断片において、67位、及び88位がC(シトシン)となるのはキハダP. amurenseとP. chinenseのみであった。したがって、これら部位は単独の塩基情報でキハダP. amurenseとP. chinenseを他の近縁種と鑑別することができる。ただし、より高い精度の鑑別のためには、2つの部位を組み合わせることがより好ましい。
<実施例24:コウボクの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、コウボクの基原植物は、ホオノキMagnolia obovata (M. hypoleuca)、M. officinalis又はM. officinalis var. bilobaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるM. tripetala等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウボクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のコウボクの基原植物であるホオノキM. obovata、M. officinalis又はM. officinalis var. bilobaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、他の近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のrpl16 intron領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:rpl16 intron領域1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-1F(配列番号71)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-1R(配列番号72)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:rpl16 intron領域2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-1F(配列番号71)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-2R(配列番号73)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:rpl16 intron領域3増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:025-2F(配列番号74)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:025-1R(配列番号72)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表26に示す。
Figure 0007131086000081
Figure 0007131086000082
Figure 0007131086000083
PCR反応液1、2、及び3によって増幅される鑑別領域は同じであって、違いは、増幅断片の長さである。本方法ではPCT反応液1での配列決定を行い、鑑別ができなかった場合にPCR反応液2及び3を行う2段階の鑑別方法を実行することにより、コスト低減とサンプルのDNA品質の差への対応を可能とした。
増幅されたrpl16 intron領域1の核酸断片において検出された32位、42位、44位、85位、148位、及び158位の6部位において、各部位単独の塩基情報ではホオノキM. obovata、M. officinalis、又はM. officinalis var. bilobaと、他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ホオノキM. obovata、M. officinalis及びM. officinalis var. bilobaを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例25:タクシャの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、タクシャの基原植物は、サジオモダカAlisma orientaleと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. canaliculatum等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、タクシャの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のタクシャの基原植物であるサジオモダカA. orientaleの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号75)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-1R(配列番号76)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-2F(配列番号77)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-2R(配列番号78)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS1領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号75)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-3R(配列番号79)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液4:ITS2領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:026-1F(配列番号77)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:026-4R(配列番号80)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表27に示す。
Figure 0007131086000084
Figure 0007131086000085
Figure 0007131086000086
Figure 0007131086000087
PCR反応液3の増幅断片はPCR反応液1の増幅断片内部に包含され、同様にPCR反応液4の増幅断片はPCR反応液2の増幅断片内部に包含される。本方法ではPCR反応液1及び2での配列決定を行い、鑑別ができなかった場合にPCR反応液3と4を行う2段階の鑑別方法を実行することにより、サンプルのDNA品質の差への対応を可能とした。
増幅されたITS1領域#1の核酸断片において検出された10カ所の鑑別部位、17位、22位、44位、72位、89位、93位、111位、118位、145位、及び154位については、各部位単独の塩基情報でサジオモダカA. orientaleと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、サジオモダカA. orientaleを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS2領域#1の核酸断片において検出された8カ所の鑑別部位、15位、16位、48位、50位、53位、77位、85位、及び111位については、各部位単独の塩基情報でサジオモダカA. orientaleと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、サジオモダカA. orientaleを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS1領域#2の核酸断片において検出された8カ所の鑑別部位、17位、22位、28位、37位、44位、49位、72位、及び89位において、各部位単独の塩基情報でサジオモダカA. orientaleと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、サジオモダカA. orientaleを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS2領域#2の核酸断片において検出された7カ所の鑑別部位、5位、16位、48位、50位、53位、77位、及び85位において、各部位単独の塩基情報でサジオモダカA. orientaleと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、サジオモダカA. orientaleを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例26:キッソウコンの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、キッソウコンの基原植物は、カノコソウValeriana faurieiと規定されている。しかし、市場には近縁種であるV. officinalis等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、キッソウコンの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のキッソウコンの基原植物であるカノコソウV. faurieiの一部を採取し、また近縁種のうちV. officinalis、V. jatamansi、及びV. amurensisについては、収集した押葉標本の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のうちV. sichuanica、V. stenoptera、及びV. minutifloraについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:027-1F(配列番号81)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:027-1R(配列番号82)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表28に示す。
Figure 0007131086000088
増幅されたITS領域の核酸断片において検出された7カ所の鑑別部位、45位、54位、151位、179位、199位、213位、及び218位において、各部位単独の塩基情報でカノコソウV. faurieiと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかったが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、カノコソウV. faurieiを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例27:ボクソクの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ボクソクの基原植物は、クヌギQuercus acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、又はアベマキQ. variabilisと規定されている。しかし、市場には近縁種であるQ. trojana等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ボクソクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のボクソクの基原植物であるクヌギQ. acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、又はアベマキQ. variabilisの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のQ. trojana、Q. ilex、及びQ. rotundifolia, Q. suberについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-1F(配列番号83)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-1R(配列番号84)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS1領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-1F(配列番号83)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-2R(配列番号85)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液3:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:028-2F(配列番号86)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:028-3R(配列番号87)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表29に示す。
Figure 0007131086000089
Figure 0007131086000090
Figure 0007131086000091
Figure 0007131086000092
Figure 0007131086000093
PCR反応液1及び2で得られる鑑別領域は同じである。
増幅されたITS1領域#1の核酸断片において、121位がC(シトシン)となるのはクヌギQ. acutissima、コナラQ. serrata、ミズナラQ. mongolica var. crispula、及びアベマキQ. variabilisのみであった。したがって、これら部位は単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種を他の近縁種と鑑別することができる。また、ITS1領域#1の核酸断片において検出された6カ所の鑑別部位、1位、16位、19位、44位、61位、及び70位については、各部位単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種と他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ボクソク基原植物4種を他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS1領域#2の核酸断片において検出された6カ所の鑑別部位1位、16位、19位、44位、61位、及び70位については、各部位単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種と他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ボクソク基原植物4種を他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
増幅されたITS2領域の核酸断片において検出された13カ所の鑑別部位、52位、120位、121位、122位、134位、144位、161位、162位、163位、164位、185位、193位、及び196位については、各部位単独の塩基情報でボクソクの基原植物4種と他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ボクソクの基原植物を他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例28:レンギョウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、レンギョウの基原植物は、レンギョウForsythia suspensaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるF. viridissima等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、レンギョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるレンギョウF. suspensaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:029-1F(配列番号88)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:029-1R(配列番号89)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:029-2F(配列番号90)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:029-2R(配列番号91)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表30に示す。
Figure 0007131086000094
Figure 0007131086000095
PCR反応液1及び2で得られる鑑別領域は同じである。
増幅されたITS1領域の核酸断片において、2位がT(チミン)、52位がC(シトシン)となるのはレンギョウF. suspensaのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報でレンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別することができる。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において、55位及び60位がC(シトシン)となるのはレンギョウF. suspensaのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でレンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別することができる。
レンギョウF. suspensaを他の近縁種と鑑別するには、前記各部位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、4つの部位を全て解析するのが好ましい。
<実施例29:リョウキョウの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、リョウキョウの基原植物は、Alpinia officinarumと規定されている。しかし、市場には近縁種であるA. calcarata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、リョウキョウの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前のリョウキョウの基原植物であるA. officinarumの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種であるA. calcarata、A. formosana、A. uraiensis、及びA. shimadaeについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより葉緑体DNA中のmatK領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:matK領域#1増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:030-1F(配列番号92)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:030-1R(配列番号93)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:matK領域#2増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:030-1F(配列番号66)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:030-1R(配列番号94)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表31に示す。
Figure 0007131086000096
Figure 0007131086000097
Figure 0007131086000098
増幅されたmatK領域#1の核酸断片において、44位がA(アデニン)となるのはA. officinarumのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でA. officinarumと他の近縁種とを鑑別することができる。
また、増幅されたmatK領域#2の核酸断片において、115位がA(アデニン)となるのはA. officinarumのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でA. officinarumと他の近縁種とを鑑別することができる。
リョウキョウと他の近縁種の鑑別には、前記2つのmatK領域における2つの部位のいずれかの塩基情報で足りるが、より高い確度の鑑別のためには、両領域を解析することが好ましい。
<実施例30:レンニクの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、レンニクの基原植物は、ハスNelumbo nuciferaと規定されている。しかし、市場には近縁種であるN. lutea等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、レンニクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるハスN. nuciferaの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種のN. lutea及びN. pentapetalaについては、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:031-1F(配列番号95)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:031-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:031-2F(配列番号96)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:031-2R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表32に示す。
Figure 0007131086000099
増幅されたITS1領域の核酸断片において、61位がA(アデニン)、及び85位がT(チミン)となるのはハスN. nuciferaのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報でハスN. nuciferaを他の近縁種と鑑別することができる。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において、69位がC(シトシン)、及び111位がG(グアニン)となるのはハスN. nuciferaのみであった。したがって、この部位は単独の塩基情報でハスN. nuciferaを他の近縁種と鑑別することができる。
ハスN. nuciferaを他の近縁種と鑑別するには、前記各部位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、4つの部位を全て解析するのが好ましい。
<実施例31:コウカの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、コウカの基原植物は、ベニバナCarthamus tinctoriusと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. glaucus等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、コウカの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるベニバナC. tinctoriusの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液1:ITS1領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:032-1F(配列番号97)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:032-1R(配列番号4)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
(PCR反応液2:ITS2領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:032-2F(配列番号44)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:032-2R(配列番号36)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表33に示す。
Figure 0007131086000100
Figure 0007131086000101
Figure 0007131086000102
Figure 0007131086000103
Figure 0007131086000104
Figure 0007131086000105
増幅されたITS1領域の核酸断片において、69位がT(チミン)、114位がC(シトシン)及び199位がG(グアニン)となるのはベニバナC. tinctoriusのみであった。したがって、これらの部位は単独の塩基情報でベニバナC. tinctoriusを他の近縁種と鑑別することができる。また、増幅されたITS1領域の核酸断片において検出された5カ所の鑑別部位、30位、47位、178位、184位、及び235位については、各部位単独の塩基情報でベニバナC. tinctoriusと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ベニバナC. tinctoriusを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。ベニバナC. tinctoriusを他の近縁種と鑑別するには、前記3部位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、後述した5つの部位を全て解析するのが好ましい。
また増幅されたITS2領域の核酸断片において検出された7カ所の鑑別部位、79位、114位、130位、167位、247位、270位、及び315位については、各部位単独の塩基情報でベニバナC. tinctoriusと他の近縁種とを鑑別できなかった。しかし、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、ベニバナC. tinctoriusを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
<実施例32:ソボクの鑑別方法>
第十七改正日本薬局方において、ソボクの基原植物は、Caesalpinia sappanと規定されている。しかし、市場には近縁種であるC. angulata等が流通する可能性があり、これらの誤用、混用を避けることは医薬品の品質確保のために重要である。
そこで、以下では、ソボクの鑑別方法における一例を示す。基本的手順は、実施例1に記載のシャクヤク及びボタンピの鑑別方法と同じであることから、ここでは実施例1と異なる点についてのみ記載する。
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、生薬又は生薬加工前の基原植物であるC. sappanの一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。また、近縁種については、GenBankより相同配列を得た。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いて、PCRにより核リボソームDNA中のITS領域を増幅した。核酸増幅反応に使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
(PCR反応液:ITS領域増幅用)
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー:033-1F(配列番号98)(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:033-1R(配列番号99)(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
結果を表34に示す。
Figure 0007131086000106
Figure 0007131086000107
Figure 0007131086000108
増幅されたITS1領域の核酸断片において、21位がG(グアニン)となるのはC. sappanのみであった。したがって、この部位単独の塩基情報で、C. sappanを他の近縁種と鑑別することができる。また、増幅されたITS領域の核酸断片において検出された9カ所の鑑別部位、43位、47位、52位、55位、100位、108位、124位、227位、及び238位において、各部位単独の塩基情報でソボクC. sappanと他の近縁種とを鑑別できる部位はなかったが、それらの部位からなる群から選択される2以上の部位における塩基情報の組み合わせによって、C. sappanを他の近縁種と鑑別できることが明らかとなった。
C. sappanを他の近縁種と鑑別するには、前記21位単独の塩基情報で可能であるが、より高い精度で鑑別するためには、後述した9つの部位を全て解析するの他好ましい。
<実施例33:鑑別用プライマーの生薬特異性の確認>
(目的)
本発明の生薬鑑別用プライマーセットにより、第十七改正日本薬局方において規定されている生薬の基原植物及びその近縁種のみが増幅され、遠縁の植物種は増幅されないことを確認する。
(方法)
1.核酸抽出方法
鋳型DNAは、被験対象植物の一部を採取し、市販のDNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコルに従って抽出した。
被験対象植物には、シャクヤクの基原植物であるシャクヤクPaeonia lactiflora及びその近縁種でボタンピの基原植物であるボタンP. suffruticosa、ケイヒの基原植物であるシナニッケイCinnamomum cassia、タクシャの基原植物であるサジオモダカAlisma orientale、及びチョウトウコウの基原植物であるカギカズラUncaria rhynchophyllaを用いた。
2.核酸増幅方法
抽出した鋳型DNAを用いてPCRを行った。使用したPCR反応液の組成は以下の通りである。
D.W. 17.02μL、10× gene Taq Buffer(ニッポンジーン社)2.80μL、dNTP Mix (ニッポンジーン社)2.24μL、DMSO 2.80μL,gene Taq (ニッポンジーン社)0.14μL、フォワードプライマー(10pmol/μL) 1μL、リバースプライマー:(10pmol/μL) 1μL、鋳型DNA 1μL
なお、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットには、以下の4組を用いた。
(プライマーセット#1)002-1F & 002-1R:シャクヤク用プライマーセット
(プライマーセット#2)003-1F & 003-1R:ケイヒ用プライマーセット
(プライマーセット#3)026-1F & 026-1R:タクシャ用プライマーセット
(プライマーセット#4)019-4F & 019-2R:チョウトウコウ用プライマーセット
プライマーセット#1~#4を含むPCR反応液をそれぞれPCR反応液#1~#4とした。
3.PCRサイクル条件
PCRは、上記各鋳型DNAをPCR反応液#1~#4と共に0.2mLマイクロチューブに入れ、Step Down法、すなわち(94℃, 4min)×1サイクル、(95℃, 30sec; 70℃, 15sec; 72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;66℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;62℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;58℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;54℃, 15sec;72℃, 15sec)×3サイクル、(95℃, 30sec;48℃, 1.5 min;72℃, 2.5 min)×20サイクル、そして(72℃, 7 min)×1サイクルの条件で、サーマルサイクラーTprofessional Thermocycler 070-951 (Biometra社)を用いて行った。
4.ゲル電気泳動による増幅産物の確認とゲル抽出
PCR後、ゲル電気泳動法により反応液20μLを2% Ex-Gel iBase(Thermo Fisher Scientifics社)+プログラム7で泳動し、LED 500nmトランスイルミネーターLB-16BG(日本ジェネティクス社)+ゲル撮影装置Printgraph AE-6931 FXCF (ATTO)で目標PCR産物を確認し、画像撮影を行った。
(結果)
図1~4に結果を示す。図1は、プライマーセット#1を含むPCR反応液#1(シャクヤク用)、図2は、プライマーセット#2を含むPCR反応液#2(ケイヒ用)、図3は、プライマーセット#3を含むPCR反応液#3(タクシャ用)、そして図4は、プライマーセット#4を含むPCR反応液#4(チョウトウコウ用)である。
図1より、プライマーセット#1では、シャクヤクPaeonia lactifloraとその近縁種であるボタンP. suffruticosaでは増幅断片が確認されたが、シナニッケイCinnamomum cassia、サジオモダカAlisma orientale、及びカギカズラUncaria rhynchophyllaでは増幅断片が確認できなかった。
図2より、プライマーセット#2では、シナニッケイCinnamomum cassiaでは増幅断片が確認されたが、シャクヤクPaeonia lactiflora、その近縁種であるボタンP. suffruticosa、サジオモダカAlisma orientale、及びカギカズラUncaria rhynchophyllaでは増幅断片が確認できなかった。
図3より、プライマーセット#3では、サジオモダカAlisma orientaleでは増幅断片が確認されたが、シャクヤクPaeonia lactiflora、その近縁種であるボタンP. suffruticosa、シナニッケイCinnamomum cassia、及びカギカズラUncaria rhynchophyllaでは増幅断片が確認できなかった。
図4より、プライマーセット#4では、カギカズラUncaria rhynchophyllaでは増幅断片が確認されたが、シャクヤクPaeonia lactiflora、その近縁種であるボタンP. suffruticosa、シナニッケイCinnamomum cassia、及びサジオモダカAlisma orientaleでは増幅断片が確認できなかった。
以上の結果から、本発明の生薬の鑑別プライマーセットによれば、生薬の基原植物とその近縁植物のみで目的の核酸断片が増幅され、対象生薬の基原植物とは遠縁の植物においては、核酸断片は増幅されないことが確認された。
なお、本発明の生薬の鑑別プライマーセットによれば、前述のように基原植物と近縁の植物種も基原植物と同様に核酸断片が増幅されてしまうが、それらの鑑別には前記実施例で示した鑑別部位に基づいて、鑑別を行えばよい。

Claims (4)

  1. 生薬の鑑別用プライマーセットであって、
    前記生薬がハンゲ/テンナンショウであり
    前記プライマーセットは、列番号1及び2示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである、前記プライマーセット。
  2. 生薬の鑑別用プライマーセットを含む生薬鑑別キットであって、
    前記生薬がハンゲ/テンナンショウ、及び
    シャクヤク/ボタンピ、ケイヒ、トウキ、ソウジュツ/ビャクジュツ、サイコ、テンモンドウ、サンシュユ、ビャクゴウ、コウジン、テンマ、オウゴン、ニンジン、ショウマ、チョレイ、ブシ、シンイ、チョウジ、チョウトウコウ、コウブシ、オウレン、ショウキョウ/カンキョウ、サンシシ、オウバク、コウボク、タクシャ、キッソウコン、ボクソク、レンギョウ、リョウキョウ、レンニク、コウカ、及びソボクからなる群から選択される1以上の生薬であり、
    前記生薬の鑑別用プライマーセットは、
    請求項1に記載のハンゲ/テンナンショウの鑑別用プライマーセット、及び
    他の生薬のプライマーセットは、
    シャクヤク/ボタンピのときに配列番号3及び4、配列番号5及び6、又は配列番号3及び229、
    ケイヒのときに配列番号7及び8、
    トウキのときに配列番号9及び10、又は配列番号11及び12、
    ソウジュツ/ビャクジュツのときに配列番号13及び14、
    サイコのときに配列番号15及び16、
    テンモンドウのときに配列番号17及び18、
    サンシュユのときに配列番号19及び20、
    ビャクゴウのときに配列番号21及び22、又は配列番号23及び24、
    コウジンのときに配列番号25及び26、又は配列番号27及び28、
    テンマのときに配列番号29及び4、又は配列番号30及び31、
    オウゴンのときに配列番号9及び32、又は配列番号11及び33、
    ニンジンのときに配列番号9及び34、又は配列番号35及び36、
    ショウマのときに配列番号37及び38、配列番号11及び39、配列番号37及び40、又は配列番号41及び39、
    チョレイのときに配列番号42及び43、
    ブシのときに配列番号44及び36、配列番号45及び4、又は配列番号46及び4、
    シンイのときに配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号230及び231、又は配列番号232及び50、
    チョウジのときに配列番号51及び52、
    チョウトウコウのときに配列番号53及び54、配列番号55及び56、配列番号57及び54、又は配列番号58及び56、
    コウブシのときに配列番号59及び60、又は配列番号41及び61、
    オウレンのときに配列番号62及び63、又は配列番号64及び65、
    ショウキョウ/カンキョウのときに配列番号66及び67、
    サンシシのときに配列番号11及び68、
    オウバクのときに配列番号69及び70、
    コウボクのときに配列番号71及び72、配列番号71及び73、又は配列番号74及び72、
    タクシャのときに配列番号75及び76、配列番号77及び78、配列番号75及び79、又は配列番号77及び80、
    キッソウコンのときに配列番号81及び82、
    ボクソクのときに配列番号83及び84、配列番号83及び85、又は配列番号86及び87、
    レンギョウのときに配列番号88及び89、又は配列番号90及び91、
    リョウキョウのときに配列番号92及び93、又は配列番号66及び94、
    レンニクのときに配列番号95及び4、又は配列番号96及び36、
    コウカのときに配列番号97及び4、又は配列番号44及び36、及び
    ソボクのときに配列番号98及び99
    からなる群から選択される前記生薬鑑別キット。
  3. 生薬の基原植物から調製された核酸を鋳型に、その生薬の鑑別用プライマーを用いて核酸増幅反応して得られる増幅産物の塩基配列情報を記載した塩基配列表を含む、請求項2に記載の生薬鑑別キット。
  4. ハンゲ/テンナンショウ候補がハンゲ/テンナンショウかその疑似生薬かを鑑別する方法であって、
    前記ハンゲ/テンナンショウ候補の被検植物から核酸を抽出する工程、
    抽出された核酸を鋳型に、配列番号1及び2で示す塩基配列からなるプライマーセットを用いてリボソームDNAのITS領域を増幅する工程、
    増幅産物の塩基配列を決定する工程、及び
    増幅産物の塩基配列とハンゲ又はテンナンショウの基原植物由来の生薬標準配列であり、それぞれ配列番号100又は101で示す塩基配列とを比較し、両者の塩基配列が一致したときには前記ハンゲ/テンナンショウ候補はハンゲ又はテンナンショウであり、一致しないときにはハンゲ又はテンナンショウの疑似生薬であると鑑別する工程
    を含む前記鑑別方法。
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