JP7129143B2 - ミルク感向上剤 - Google Patents
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Description
ここで、「甘味料」は、飲食品に甘味を付与するために用いられる調味料をいう。本発明において、甘味料は、市販されているものを用いることができる。
このうち、異性化糖として、より具体的には、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖などを挙げることができる。
また、糖アルコールとして、より具体的には、例えば、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトールなどを挙げることができる。
また、還元水飴として、より具体的には、例えば、高糖化還元水飴(単糖アルコール35~55%、二糖アルコール25~60%、三糖アルコール1~25%、四糖アルコール0~15%、五糖以上の糖アルコール0~10%)、中糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール40~60%、三糖アルコール10~40%、四糖アルコール1~10%、五糖以上の糖アルコール1~40%)、低糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール5~25%、三糖アルコール5~25%、四糖アルコール1~15%、五糖以上の糖アルコール45~85%)などを挙げることができる。
また、高甘味度甘味料として、より具体的には、例えば、甘草抽出物やステビア抽出物、ラカンカ抽出物などの天然甘味料、アスパルテームやアセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテームなどの合成甘味料を挙げることができる。
いずれの方法においても、一般には、酵母菌体が破壊され、残存菌体または菌体破砕物および酵母抽出物を含む酵母溶解物(粗エキスまたは酵母エキス原液とも称される)をそのまま濃縮、あるいはろ過および/または遠心分離によって残存菌体および菌体破砕物から分離して得られるろ液または上清(酵母抽出物)を濃縮し(濃縮工程)、場合によりさらに凍結乾燥等の処理を行って酵母エキス製品とする。
<前培養工程>
まず、700mLの糖蜜培地(糖蜜8質量%、尿素0.6質量%、硫酸アンモニウム0.16質量%、リン酸水素2アンモニウム0.08質量%)に酵母菌株300mLを植菌して前培養する。前培養の条件は、培養温度30℃、160rpmの振とう培養、培養時間は24時間とする。
<本培養工程>
続いて、前培養の培養液200mLを、2000mLの培地(塩化アンモニウム0.18質量%、リン酸水素2アンモニウム0.04質量%)に植菌し、流加培地として800mLの糖蜜(糖度36%)(最終8%)を用いて本培養する。本培養の条件は、培養温度30℃、3L/分および600rpmの通気攪拌培養とする。また、pH5.0で10質量%アンモニア水添加によるpHの下限制御を行う。pHの上限制御は無しとする。
<pHシフト工程>
次に、酵母が定常期に入った直後に、10質量%アンモニア水を添加することにより、培養液のpHをpH7~11、好ましくは7.5以上11未満、より好ましくは8以上11未満のアルカリ性域に調整(pHシフト)し、当該pHの範囲内で更に酵母を培養する。本培養開始後48時間で培養を終了する。アンモニア水に代えて、アンモニアガスや尿素などのアルカリ物質を添加することによりpHシフトを行ってもよい。
また、甘味料は、別段の記載が無い限り、表1に示すものを用いた。表1中の「甘味度」は、各種の甘味料について、5質量%のショ糖水溶液と同等の甘味を呈する濃度(X質量%)を官能試験により決定し、次式1を用いて算出した。式1;甘味度=ショ糖水溶液の濃度(5質量%)/各種甘味料の水溶液濃度(X質量%)。
(1)試料の調製
水に脱脂粉乳、表1に示す甘味料および酵母エキス/グリセリン液状化物を溶かして、No.1~14の乳風味飲料を調製した。その配合を表2および表3に示す。なお、砂糖以外の甘味料の配合量は、それぞれの甘味度に基づいて、3.5gの砂糖の甘味度に相当する量とした。
本実施例1(1)の乳風味飲料について、10名の分析型パネルにより官能試験を行い、ミルク感の強さ(ミルク感強度)および味の厚み(厚味)の強さ(厚味強度)を点数で表した。
ミルク感強度および厚味強度の点数化は、No.1の試料(甘味料および酵母エキスのいずれも添加せず、脱脂粉乳のみを溶かした乳風味飲料)のミルク感強度および厚味強度をそれぞれ比較対照(3点)として、次の7段階のいずれに該当するかを各パネルが判断することにより行った。ミルク感強度または厚味強度:非常に強い(5点)、強い(4点)、同等(3点)、やや弱い(2点)、弱い(1点)。
その後、試料ごとに、全パネルによる採点結果の平均値を求めた。その結果を表2および表3の最下段に示す。
すなわち、酵母エキス、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物を添加した乳風味飲料では、これらを添加しないものと比較して、ミルク感強度が大きかった。
この結果から、酵母エキスおよび甘味料は、いずれもミルク感を向上する作用を有することが明らかになった。
同様に、No.2の3.5点、No.5(還元麦芽糖水飴を添加)の3.3点に対して、No.6(酵母エキスおよび還元麦芽糖水飴を添加)では4.5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.7(中糖化還元水飴を添加)の3.2点に対して、No.8(酵母エキスおよび中糖化還元糖水飴を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.9(低糖化還元水飴を添加)の3.5点に対して、No.10(酵母エキスおよび低糖化還元糖水飴を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.11(エリスリトールを添加)の3.1点に対して、No.12(酵母エキスおよびエリスリトールを添加)では4点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.13(ステビア抽出物を添加)の3.2点に対して、No.14(酵母エキスおよびステビア抽出物を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
この結果から、酵母エキスと甘味料とは、ミルク感向上作用において、相乗的に働くことが明らかになった。すなわち、酵母エキスと甘味料とを併せて添加することにより、ミルク感向上効果において相乗効果が得られることが明らかになった。また、当該相乗効果を奏する甘味料として、砂糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料などのあらゆる甘味料が使用可能であることが明らかになった。
すなわち、酵母エキス、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物を添加した乳風味飲料では、これらを添加しないものと比較して、厚味強度が大きかった。
この結果から、酵母エキスおよび甘味料は、いずれも厚味を向上する作用を有することが明らかになった。
この結果から、酵母エキスと甘味料とは、厚味向上作用において、相乗的に働くことが明らかになった。すなわち、酵母エキスと甘味料とを併せて添加することにより、厚味向上効果において相乗効果が得られることが明らかになった。また、当該相乗効果を奏する甘味料として、砂糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料などのあらゆる甘味料が使用可能であることが明らかになった。
甘味料の添加量を6gに固定し、酵母エキスの添加量を変化させて、実施例1(1)に記載の方法により、No.15~32の乳風味飲料を調製した。ただし、甘味料は還元麦芽糖水飴を用いた。その配合を表4、表5および表6に示す。
続いて、これらの乳風味飲料について、No.15の試料(還元麦芽糖水飴および酵母エキスのいずれも添加せず、脱脂粉乳のみを溶かした乳風味飲料)のミルク感強度および厚味強度をそれぞれ比較対照(3点)として、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。その結果を表4、表5および表6の最下段に示す。
一方、No.16の3.2点、No.19(酵母エキス0.005gを添加)の3.2点に対して、No.20(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.005gを添加)では3.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
同様に、No.16の3.2点、No.21(酵母エキス0.01gを添加)の3.5点に対して、No.22(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.01gを添加)では4.1点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.23(酵母エキス0.05gを添加)の3.6点に対して、No.24(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.05gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.25(酵母エキス0.1gを添加)の3.7点に対して、No.26(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.1gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.27(酵母エキス0.2gを添加)の3.8点に対して、No.28(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.2gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
一方、No.16の3.2点、No.29(酵母エキス0.5gを添加)の3.6点に対して、No.30(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.5gを添加)では3.8点であり、ミルク感強度は大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.31(酵母エキス1gを添加)の3.1点に対して、No.32(還元麦芽糖水飴および酵母エキス1gを添加)では3.3点であり、ミルク感強度は大きくなった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤においては、甘味料6重量部に対して、酵母エキスが0.001重量部超1重量部以下であると、ミルク感向上作用が大きくなることが明らかになった。
また、当該ミルク感向上剤を飲食品材料に添加する場合は、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して、酵母エキスの添加量が0.001重量部超1重量部以下であると、ミルク感向上作用が大きくなることが明らかになった。
しかし、No.16の3.2点、No.19(酵母エキス0.005gを添加)の3.1点に対して、No.20(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.005gを添加)では3.4点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
同様に、No.16の3.2点、No.21(酵母エキス0.01gを添加)の3.5点に対して、No.22(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.01gを添加)では3.8点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
その一方で、No.16の3.2点、No.23(酵母エキス0.05gを添加)の3.6点に対して、No.24(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.05gを添加)では3.5点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は認められなかった。
しかし、No.16の3.2点、No.25(酵母エキス0.1gを添加)の3.6点に対して、No.26(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.1gを添加)では3.8点であり、厚味強度は大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.27(酵母エキス0.2gを添加)の3.7点に対して、No.28(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.2gを添加)では4.2点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.29(酵母エキス0.5gを添加)の3.4点に対して、No.30(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.5gを添加)では3.6点であり、厚味強度は大きくなった。
しかし、No.16の3.2点、No.31(酵母エキス1gを添加)の3.1点に対して、No.32(還元麦芽糖水飴および酵母エキス1gを添加)では3点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は認められなかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤においては、甘味料6重量部に対して、酵母エキスが0.001重量部超0.05重量部未満または0.05重量部超1重量部未満であると、厚味向上作用が大きくなることが明らかになった。
また、当該ミルク感向上剤を飲食品材料に添加する場合は、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して、酵母エキスの添加量が0.001重量部超0.05重量部未満または0.05重量部超1重量部未満であると、厚味向上作用が大きくなることが明らかになった。
比較例として、ミルク感向上剤を添加しないアイスクリームを定法に従って製造した。オーバーランは70%に設定した。また、実施例として、ミルク感向上剤(中糖化還元水飴および酵母エキス)を添加し、かつ、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減したアイスクリームを同様に製造した。それらの配合を表7に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を低減させた。
続いて、これらのアイスクリームについて、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例のアイスクリームを比較対照(3点)とした。その結果を表7の最下段に示す。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感を有する材料の配合量を低減しても、低減しない場合と同等以上にミルク感および厚味が向上したアイスクリームを製造できることが明らかになった。
比較例として、ミルク感向上剤を添加しないミルクコーヒーを定法に従って製造した。また、実施例として、ミルク感向上剤(還元麦芽糖水飴および酵母エキス)を添加したミルクコーヒーを同様に製造した。それらの配合を表8に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を低減させた。
続いて、これらのミルクコーヒーについて、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例のミルクコーヒーを比較対照(3点)とした。その結果を表8の最下段に示す。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感および厚味が向上したミルクコーヒーを製造できることが明らかになった。
比較例として、ミルク感向上剤を添加しない乳風味飲料を、実施例1(1)に記載の方法により製造した。また、実施例として、ミルク感向上剤(還元麦芽糖水飴および酵母エキス)を添加し、かつ、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減した乳風味飲料を同様に製造した。それらの配合を表9に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を0とした。
続いて、これらの乳風味飲料について、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例の乳風味飲料を比較対照(3点)とした。その結果を表9の最下段に示す。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感を有する材料の配合量を低減しても、低減しない場合と同等以上にミルク感および厚味が向上した乳風味飲料を製造できることが明らかになった。
Claims (4)
- 中糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール40~60%、三糖アルコール10~40%、四糖アルコール1~10%、五糖以上の糖アルコール1~40%)と乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤であって、
乳または乳製品を配合した飲食品材料に、前記中糖化還元水飴10.7重量部に対して前記酵母エキスを0.05重量部の割合で添加して用いることを特徴とする、前記ミルク感向上剤。 - 低糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール5~25%、三糖アルコール5~25%、四糖アルコール1~15%、五糖以上の糖アルコール45~85%)と乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤であって、
乳または乳製品を配合した飲食品材料に、前記低糖化還元水飴19.3重量部に対して前記酵母エキスを0.05重量部の割合で添加して用いることを特徴とする、前記ミルク感向上剤。 - ステビア抽出物と乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤であって、
乳または乳製品を配合した飲食品材料に、前記ステビア抽出物0.0135重量部に対して前記酵母エキスを0.05重量部の割合で添加して用いることを特徴とする、前記ミルク感向上剤。 - 請求項1~3のいずれかに記載のミルク感向上剤を飲食品材料に添加する工程を有する、ミルク感が向上した飲食品の製造方法。
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