JP7109500B2 - 回転機駆動制御装置 - Google Patents

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Description

本願は、回転機駆動制御装置に関するものである。
従来から、回転機駆動制御装置として、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)を適用したインバータが広く用いられている。インバータは、スイッチング素子を適切に制御することにより、直流電力を交流電力に変換する装置である。このインバータでは、回転機に流れる電流を制御する電流制御手法として、パルス幅変調制御を採用することが多い。パルス幅変調制御は、変調波である三角波キャリア信号と、被変調波である電圧指令の大小関係により、スイッチング素子の制御信号を生成する手法である。本願は、回転機駆動制御装置のパルス幅変調制御における、キャリア周期の算出方法に関する。
キャリア周期(三角波キャリア信号の周期)は、設定上の自由度が高い。変調波であるキャリア周期を低減するとスイッチング損失が低減するため、回転機駆動制御装置の高効率化が可能である。一方、キャリア周期が低いほどスイッチングに起因するピーク電流が増加するため、回転機に流れる電流の最大値が増加する。回転機に流れる電流の最大値の増加は、コイルで発生する損失の増加、永久磁石同期機における磁石の不可逆減磁など、回転機の破損につながる。
回転機駆動制御装置における上記のような課題を回避する方法として、特許文献1に開示されているモータ制御装置が知られている。この特許文献1に記載のモータ制御装置は、電流の歪み率が最小となるよう、1電気角周期中のパルス数を選択するものである。特許文献1の手法では、電流の歪み率(高調波の割合)を低減することで高調波による回転機の損失は低減できるが、モータ電流の大きさに起因する損失低減には、必ずしもつながらない。また、モータ電流の最大値を閾値以下に抑制できないため、磁石の不可逆減磁などの回転機の破損を防止することはできない。
特許第5845115号公報
本願は、上記のような、回転機駆動制御装置における課題を解決するためになされたものである。すなわち、回転機に流すモータ電流を発生する回転機駆動制御装置において、回転機に流れるモータ電流の最大値を所定値以下になるように抑制することによって、モータ電流の大きさに起因する損失を低減することにある。
本願に関わる回転機駆動制御装置は、
電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
直流電圧と前記電圧指令と前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
前記搬送波キャリア生成部は、
算出した電流変化率と閾値とを比較し、
算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減し、
前記閾値は、回転機の電流制約と抵抗成分の電流と現時点のキャリア周期とから算出されていることを特徴とするものである。
本願に関わる回転機駆動制御装置は、以上のように構成されており、回転機に流れるモータ電流の最大値を所定値以下になるように抑制することができるため、モータ電流の大きさに起因する損失を低減可能であるという従来にない効果が得られる。
本願の実施の形態1における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態におけるパルス幅変調電圧とモータ電流の関係を示している図である。 本願の実施の形態1におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態2における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態2におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態3における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態3におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態4における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態4において、電流変化率とキャリア周期との関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態4におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態5における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態5におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態6における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態6におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態7における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態7において、電圧指令値と電流変化率との関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態7におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態8における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態8において、モータ電流の最大値と電流変化率との関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態8におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態9における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態9において、抵抗成分の電流とキャリア周期との関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態9におけるキャリア周期を求めるための手順を示すための第1のフローチャート図である。 本願の実施の形態9におけるキャリア周期を求めるための手順を示すための第2のフローチャート図である。 本願の実施の形態10における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態10において、d軸電流とq軸電流の位相の定義を表している図である。 本願の実施の形態10において、d軸電流とq軸電流の位相と電流制約との関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態10におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態11における回転機駆動制御装置の構成を示すブロック構成図である。 本願の実施の形態11において、d軸電流とd軸インダクタンスとの関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態11において、q軸電流とq軸インダクタンスとの関係を表しているマップを示す図である。 本願の実施の形態11におけるキャリア周期を求めるための手順を示すフローチャート図である。 本願の実施の形態に関わる回転機駆動制御装置の内部構成を示す概略図である。
本願の実施の形態に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズと縮尺はそれぞれ独立している。例えば、構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズと縮尺が異なっている場合もある。また、回転機駆動制御装置は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
実施の形態1.
まず、本願の実施の形態1に関わる回転機駆動制御装置1の構成について、図を参照しながら説明する。図1は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。
以下、順次、回転機駆動制御装置1の各部の構成、機能および動作について説明する。まず、パルス幅変調電圧生成部2の説明から行う。パルス幅変調電圧生成部2では、外部から入力される電圧指令[Vu、Vv、Vw]に基づいて、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により、直流電圧(V)をパルス幅変調電圧(PWM電圧)に変換する。なお、電圧指令[Vu、Vv、Vw]は、電圧の次元を有する値(電圧指令値)、又は、無次元の値(例えば、デューティ、電圧利用率)が、外部から入力される。パルス幅変調は、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)と搬送波キャリアを比較し、搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は直流電圧(V)に等しいパルス幅変調電圧を出力し、搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は零ボルト(ゼロ電圧)に等しいパルス幅変調電圧を出力するものである。
次に、搬送波キャリア生成部3の役割について説明を行う。搬送波キャリア生成部3は、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、から、キャリア周期(Pc)を決定し、生成した搬送波キャリアをパルス幅変調電圧生成部2に送信する。パルス幅変調により、平均的な電圧が電圧指令と一致するようパルス幅変調電圧が生成される。キャリア周期(Pc)は、搬送波キャリア生成部3にて、以下で説明するキャリア周期算出で決定される。
図2に、回転機4にパルス幅変調電圧を印加した場合に、回転機に流れる電流(モータ電流)の波形を示す。回転機4にパルス幅変調電圧を印加した場合、回転機4には、電圧に対して線形となる抵抗成分の電流(IR)と、電圧に対して非線形となるインダクタンス成分の電流(IL)が合成された電流(モータ電流)が流れる。したがって、パルス幅変調におけるモータ電流(I)の最大値(Imax)は、式(1)に示す関係となる。また、回転機4に流れるインダクタンス成分の電流(IL)は、モータ電流の電流変化率(dI/dt)と搬送波キャリアのキャリア周期(Pc)を使って、式(2)となる。
Imax=IR+IL (1)
IL=(dI/dt)×Pc (2)
式(1)と式(2)より、電流変化率(dI/dt)が一定の場合、回転機4に流れる最大電流は、キャリア周期に比例して増大することがわかる。回転機4に流すことができる最大電流の大きさには、回転機4の固定子巻線の焼損と磁石の不可逆減磁を防止する観点から、制約が存在する。回転機4に流れる最大電流を抑制するためには、キャリア周期を低減することが有効である。一方、キャリア周期の低減によりパルス幅変調電圧の出力が切り替わる周期も低減することになる。パルス幅変調電圧生成部2では、パルス幅変調電圧の出力が切り替わる度に、損失が発生するため、キャリア周期の低減は、回転機駆動制御装置1の効率低下につながる。
したがって、搬送波キャリア生成部3では、回転機4の電流制約を満たし、かつ、パルス幅変調電圧生成部2で発生する損失を最小化できるようにキャリア周期を選定する。なお、電気自動車およびハイブリッド車に適用される回転機は、他の産業用機器と異なり、エンジンに隣接して配置されることが多い。エンジンで発生する熱は、回転機のコイルと磁石を高温状態にする。このような高温条件下では、回転機に給電するモータ電流の最大値を低減し、モータ電流の大きさに起因する損失による発熱を抑制することが望まれる。
また、電気自動車およびハイブリッド車は、回転機が低回転で動作する頻度が高い。このような動作条件においては、全損失に対してモータ電流の大きさに起因する損失が占める割合が大きい。したがって、モータ電流の最大値を抑制し、モータ電流の大きさに起因する損失を低減することは、回転機の冷却装置の小型化と軽量化につながるため、電気自動車とハイブリッド車において特に有効である。
次に、搬送波キャリアのキャリア周期(Pc)の選定および算出について説明する。式(1)と式(2)において、モータ電流の最大値(Imax)を回転機4の電流制約(Icon)とした場合、回転機4の電流制約を満たすキャリア周期の下限値は、式(3a)または式(3b)で計算される。ここで、電圧に対して線形となる抵抗成分の電流(IR)は、回転機4に流れるモータ電流の平均値としてもよいし、電圧指令値を回転機4の巻線抵抗値(R)で除算した値としてもよい。
キャリア周期の下限値=(Icon-IR)/(dI/dt) (3a)
キャリア周期の下限値=(Imax-IR)/(dI/dt) (3b)
また、搬送波キャリアのキャリア周期(Pc)を選定するには、電流変化率(dI/dt)もしくは抵抗成分の電流(IR)に対して、回転機4の電流制約(Icon)を満たすキャリア周期をあらかじめマップとして保持しておく方法も有効である。この方法によれば、電流変化率もしくは抵抗成分の電流に対するキャリア周期を、予め作成したマップから算出する。搬送波キャリア生成部3では、以上の方法で算出したキャリア周期を、搬送波キャリアにおけるキャリア周期の下限値として設定する。
次に、電流変化率(dI/dt)の算出方法について説明する。回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)、微分演算子(p)、相互インダクタンス(MuvとMvwとMwu)を使って、式(4a)から式(4c)に回転機4の電圧方程式を示す。
Vu=(Ru+pLu)×Iu+pMuv×Iv+pMwu×Iw+Eu (4a)
Vv=(Rv+pLv)×Iv+pMvw×Iw+pMuv×Iu+Ev (4b)
Vw=(Rw+pLw)×Iw+pMwu×Iu+pMvw×Iv+Ew (4c)
ここで、U相電圧指令値(Vu)、V相電圧指令値(Vv)、W相電圧指令値(Vw)は、電圧の次元を有しており、それぞれ、U相の電圧指令[Vu]、V相の電圧指令[Vv]、W相の電圧指令[Vw]に対応している。U相誘起電圧(Eu)、V相誘起電圧(Ev)、W相誘起電圧(Ew)は、回転機の端子電圧(PWM電圧生成部2と回転機4を接続するラインの電圧)を表している。U相モータ電流(Iu)、V相モータ電流(Iv)、W相モータ電流(Iw)は、それぞれ、U相のPWM電流、V相のPWM電流、W相のPWM電流を表している。なお、PWM電流は、PWM電圧生成部2と回転機4を接続するラインに流れる電流を表している。U相インダクタンス値、V相インダクタンス値、W相インダクタンス値を、それぞれ、Lu、Lv、Lwとする。
簡単化のため、相互インダクタンス(MuvとMvwとMwu)を無視できるものと仮定すると、式(4a)から式(4c)は、式(5a)から式(5c)に、それぞれ、変形できる。ここでは、U相、V相、W相の電流変化率(dI/dt)を、それぞれ、dIu/dt、dIv/dt、dIw/dtと表している。なお、回転機4に給電する電流と回転機4に流れた電流は同じ値になる。なお、以下では、dIu/dt、dIv/dt、dIw/dtを、総称的に、電流変化率(dI/dt)と表すことがある。
dIu/dt =(Vu-Eu)/Lu- Ru/Lu×Iu (5a)
dIv/dt =(Vv-Ev)/Lv- Rv/Lv×Iv (5b)
dIw/dt =(Vw-Ew)/Lw- Rw/Lw×Iw (5c)
式(5a)より、U相電流変化率(dIu/dt)は、U相電圧指令値(Vu)、U相誘起電圧(Eu)、U相モータ電流(Iu)、U相インダクタンス値(Lu)、回転機4のU相巻線抵抗値(Ru)から算出できることがわかる。また、式(5b)より、V相電流変化率(dIv/dt)は、V相電圧指令値(Vv)、V相誘起電圧(Ev)、V相モータ電流(Iv)、V相インダクタンス値(Lv)、回転機4のV相巻線抵抗値(Rv)から算出できることがわかる。また、式(5c)より、W相電流変化率(dIw/dt)は、W相電圧指令値(Vw)、W相誘起電圧(Ew)、W相モータ電流(Iw)、W相インダクタンス値(Lw)、回転機4のW相巻線抵抗値(Rw)から算出できることがわかる。
本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置では、搬送波キャリア生成部3は、式(5a)から式(5c)に基づいて電流変化率を算出してから、キャリア周期の下限値を決定する。搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図3に従って説明する。以下では、式(5a)から式(5c)を、総称的に、式(5)と表すことがある。ステップST100においてキャリア周期の算出フローが開始すると、搬送波キャリア生成部3は式(5)に基づいて電流変化率を算出する(ステップST101)。
式(5)では、U相電流変化率(dIu/dt)、V相電流変化率(dIv/dt)、W相電流変化率(dIw/dt)を、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、インダクタンス値(Lu、Lv、Lw)、回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)から算出する。ステップST102では、電流変化率(dI/dt)を判定パラメータに設定し、ステップST103では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。
搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST104に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST105に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST104またはステップST105が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST106)。
次に、電流変化率の閾値の設定方法について説明する。電流変化率の閾値はモータ電流の最大値(Imax)が回転機の電流制約(Icon)以下となるように決定する。モータ電流の最大値を回転機4の電流制約以下とするためには、インダクタンス成分の電流(IL)と抵抗成分の電流(IR)を使った式(6a)を満足させる必要がある。ここで、抵抗成分の電流(IR)は、回転機4に流れるモータ電流の平均値としてもよいし、電圧指令値を回転機4の巻線抵抗値(R)で除算した値としてもよい。式(6a)を変形すると、式(6b)になる。
Icon≦IR+IL (6a)
Icon-IR≦IL (6b)
ここで、IL(インダクタンス成分の電流)は、電流変化率(dI/dt)とキャリア周期(Pc)の積から求められるので、最大電流が回転機の電流制約以下となるための回転機の電流制約(Icon)は式(7)で示される。この式から電流変化率の閾値(判定パラメータの閾値)を式(8)とする。以上のように、電流変化率の閾値を判定パラメータの閾値に設定することにより、モータ電流の最大値(Imax)が回転機の電流制約以下となるようキャリア周期を決定することが可能になる。
(Icon-IR)/現時点のキャリア周期≦dI/dt (7)
(Icon-IR)/現時点のキャリア周期=電流変化率の閾値 (8)
同期パルス幅変調を前提とし、電流歪み率を低減できるパルス数に切り替える手法を採用する場合、パルス数の切替が制御に影響しないよう複雑な切替処理が必要である。一方で、本願による回転機駆動制御装置は、上記実施の形態で説明したようにピーク電流を低減するように搬送波キャリアのキャリア周期を可変化するものである。搬送波キャリアのキャリア周期は回転機の駆動状態によらず変更できるため、特別な切替処理は必要としない。また、パルス幅変調のベースとなる搬送波キャリアのキャリア周期を変更するため、同期パルス幅変調、非同期パルス幅変調のどちらにも適用できるという特徴がある。なお、誘起電圧は、誘起電圧係数に回転速度を積算して求めることができる。
したがって、本願に関わる回転機駆動制御装置は、
電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
前記搬送波キャリア生成部は、キャリア周期の下限値に一致するように前記搬送波キャリアのキャリア周期を決定し、
前記キャリア周期の下限値は、モータ電流の最大値と抵抗成分の電流と電流変化率とから算出されていることを特徴とするものである。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、電圧の次元を有する電圧指令値として外部から入力されることを特徴とするものである。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、電流変化率を、電圧指令値、誘起電圧、モータ電流、インダクタンス値、巻線抵抗値から算出することを特徴とするものである。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、誘起電圧を、誘起電圧係数に回転速度を積算して求めることを特徴とするものである。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、算出した電流変化率と閾値とを比較し、
算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。
すなわち、以上のように、搬送波キャリア生成部3は、回転機駆動制御装置1が回転機4に給電する電流と、電流変化率とにより算出される判定パラメータが閾値以下になるように搬送波キャリアの周期を算出するよう構成したので、回転機4の電流制約を満たし、かつ、回転機駆動制御装置1を高効率化できるという効果が実現できる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図4は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。電圧指令は、電圧の次元だけではなく、電圧利用率(直流電圧に対する出力電圧の比)とすることがある。電圧指令が電圧利用率として与えられる場合、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、を算出するには、直流電圧(V)が必要となる。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、電圧指令が電圧利用率(直流電圧に対する出力電圧の比)の形で外部から与えられていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、電圧利用率と直流電圧(V)から電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を算出している。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置では、搬送波キャリア生成部3は、電圧利用率から電圧指令を算出してから、式(5a)から式(5c)に基づいて電流変化率を算出している。その後、電流変化率(判定パラメータ)と電流変化率の閾値との比較を行う。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図5に従って説明する。ステップST200においてキャリア周期の算出フローが開始すると、搬送波キャリア生成部3は外部から与えられる電圧利用率に、出力電圧(V)を積算して、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を算出する(ステップST201)。ステップST202では、式(5)に基づいて電流変化率を算出する。式(5)では、U相電流変化率(dIu/dt)、V相電流変化率(dIv/dt)、W相電流変化率(dIw/dt)を、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、インダクタンス値(Lu、Lv、Lw)、回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)から算出する。
ステップST203では、電流変化率(dI/dt)を判定パラメータに設定し、ステップST204では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST205に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST206に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST205またはステップST206が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST207)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、電圧利用率として外部から入力され、
前記搬送波キャリア生成部は、この入力された電気利用率から電圧指令値を算出することを特徴とするものである。
したがって、本実施の形態によれば、搬送波キャリア生成部3は、回転機駆動制御装置1が回転機4に給電する電流と、電流変化率とにより算出される判定パラメータが閾値以下になるように搬送波キャリアの周期を算出するよう構成したので、回転機4の電流制約を満たし、かつ、回転機駆動制御装置1を高効率化できるという効果が実現できる。
実施の形態3.
次に、実施の形態3に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図6は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。電圧指令は、電圧の次元だけではなく、デューティ(キャリア周期当たりのオン時間とオフ時間の比)とすることがある。電圧指令がデューティとして与えられる場合、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、を算出するには、直流電圧(V)が必要となる。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、電圧指令がデューティ(キャリア周期当たりのオン時間とオフ時間の比)の形で外部から与えられていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、デューティと直流電圧(V)から電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を算出している。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図7に従って説明する。ステップST300においてキャリア周期の算出フローが開始すると、搬送波キャリア生成部3は外部から与えられるデューティに、直流電圧(V)を積算して、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を算出する(ステップST301)。ステップST302では、式(5)に基づいて電流変化率を算出する。式(5)では、U相電流変化率(dIu/dt)、V相電流変化率(dIv/dt)、W相電流変化率(dIw/dt)を、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、インダクタンス値(Lu、Lv、Lw)、回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)から算出する。
ステップST303では、電流変化率(dI/dt)を判定パラメータに設定し、ステップST304では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST305に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST306に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST305またはステップST306が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST307)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、デューティとして外部から入力され、
前記搬送波キャリア生成部は、この入力されたデューティから電圧指令値を算出することを特徴とするものである。
したがって、本実施の形態によれば、搬送波キャリア生成部3は、回転機駆動制御装置1が回転機4に給電する電流と、電流変化率とにより算出される判定パラメータが閾値以下になるように搬送波キャリアの周期を算出するよう構成したので、回転機4の電流制約を満たし、かつ、回転機駆動制御装置1を高効率化できるという効果が実現できる。
実施の形態4.
次に、実施の形態4に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図8は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、搬送波キャリア生成部3は、キャリア周期を、電流変化率とキャリア周期の関係を表しているマップに基づき算出している。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。
図9は、電流変化率とキャリア周期の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸は電流変化率、縦軸はキャリア周期を表している。キャリア周期は、電流変化率が小さい場合はほぼ一定値を示し、電流変化率が増加するとキャリア周期は減少する。電流変化率がある程度大きくなると、キャリア周期は低い値で一定になる。全般に、電流変化率の増加にともない、キャリア周期が減少している。このマップを使うと、電流変化率からキャリア周期を、直接求めることが可能である。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図10に従って説明する。ステップST400においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST401では、搬送波キャリア生成部3は式(5)に基づいて電流変化率を算出する。式(5)では、U相電流変化率(dIu/dt)、V相電流変化率(dIv/dt)、W相電流変化率(dIw/dt)を、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、インダクタンス値(Lu、Lv、Lw)、回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)から算出する。
ステップST402では、電流変化率(dI/dt)を判定パラメータに設定し、ステップST403では、この判定パラメータ(電流変化率)とキャリア周期の関係を表しているマップに基づいて、キャリア周期(Pc)を算出する。ステップST403が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST404)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、電流変化率とキャリア周期との関係を表したマップを有しており、算出した電流変化率とこのマップをもとにして、次回のキャリア周期を算出することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
実施の形態5.
次に、実施の形態5に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図11は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。式(2)で示したように、インダクタンス成分の電流(IL)は、電流変化率×キャリア周期から求めることができる。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、判定パラメータにインダクタンス成分の電流が設定されていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、式(5)に基づき電流変化率を算出したあと、インダクタンス成分の電流(IL)を判定パラメータに設定する。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図12に従って説明する。ステップST500においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST501では、搬送波キャリア生成部3は式(5)に基づいて電流変化率を算出する。式(5)では、U相電流変化率(dIu/dt)、V相電流変化率(dIv/dt)、W相電流変化率(dIw/dt)を、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)、誘起電圧(Eu、Ev、Ew)、モータ電流(Iu、Iv、Iw)、インダクタンス値(Lu、Lv、Lw)、回転機4の巻線抵抗値(Ru、Rv、Rw)から算出する。ステップST502では、電流変化率(dI/dt)に現時点でのキャリア周期を積算して、インダクタンス成分の電流(IL)を算出する。
ステップST503では、インダクタンス成分の電流を判定パラメータに設定し、ステップST504では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST505に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST506に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST505またはステップST506が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST507)。
次に、本実施の形態における判定パラメータの閾値(インダクタンス成分の電流の閾値)の設定方法について説明する。判定パラメータの閾値はモータ電流の最大値(Imax)が回転機の電流制約(Icon)以下となるように決定する。モータ電流の最大値を回転機の電流制約以下とするためには、インダクタンス成分の電流(IL)と抵抗成分の電流(IR)を使った式(6a)を満足させる必要がある。ここで、抵抗成分の電流(IR)は、回転機4に流れるモータ電流の平均値としてもよいし、電圧指令値を回転機の巻線抵抗値(R)で除算した値としてもよい。式(6a)を変形すると、式(6b)になる。
式(6b)には、最大電流が回転機の電流制約以下となるための回転機の電流制約(Icon)が示されている。この式から判定パラメータの閾値(インダクタンス成分の電流の閾値)を式(9)とする。以上のように、インダクタンス成分の電流の閾値を判定パラメータに設定することにより、電流最大値が回転機の電流制約以下となるようキャリア周期を決定することが可能になる。
(Icon-IR)=インダクタンス成分の電流の閾値 (9)
以上のように、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。したがって、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、算出した電流変化率と現時点のキャリア周期からインダクタンス成分の電流を求め、
この求めたインダクタンス成分の電流が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この求めたインダクタンス成分の電流が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。
実施の形態6.
次に、実施の形態6に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図13は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。式(2)で示したように、検出したインダクタンス成分の電流(IL)から、電流変化率(dI/dt)を求めることができる。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、検出したインダクタンス成分の電流から、電流変化率(dI/dt)を算出する。搬送波キャリア生成部3は、算出された電流変化率を判定パラメータに設定する。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図14に従って説明する。ステップST600においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST601では、搬送波キャリア生成部3はインダクタンス成分の電流(ILu、ILv、ILw)を検出する。ステップST602では、インダクタンス成分の電流を現時点でのキャリア周期で除算して、電流変化率(dIu/dt、dIv/dt、dIw/dt)を算出する。
ステップST603では、電流変化率を判定パラメータに設定し、ステップST604では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST605に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST606に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST605またはステップST606が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST607)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、インダクタンス成分の電流を検出すると現時点でのキャリア周期で除算して電流変化率を求め、
この求めた電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この求めた電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
実施の形態7.
次に、実施の形態7に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図15は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、電流変化率(dI/dt)を、電圧指令値に対する電流変化率のマップから算出する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、電圧指令値から求められた電流変化率が、判定パラメータに設定されていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータと閾値との比較を行う。
図16は、電圧指令値と電流変化率の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸は電圧指令値、縦軸は電流変化率を表している。電流変化率は、電圧指令値の増加に対して、電流変化率が増大する特性を想定している。このマップを使うと、電流変化率を電圧指令値(Vu、Vv、Vw)から求めることが可能である。電流変化率を算出したあとは、実施の形態1で示した方法で、キャリア周期を決定することができる。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図17に従って説明する。ステップST700においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST701では、搬送波キャリア生成部3は、外部から入力される電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を取得する。ステップST702では、電圧指令値に対する電流変化率のマップに基づいて、電流変化率(dIu/dt、dIv/dt、dIw/dt)を算出する。ステップST703では、電流変化率(dIu/dt、dIv/dt、dIw/dt)を判定パラメータに設定する。
ステップST704では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST705に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST706に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST705またはステップST706が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST707)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、電圧指令値と電流変化率との関係を表したマップを有しており、電圧指令値を取得すると、このマップから電流変化率を算出し、
この算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
実施の形態8.
次に、実施の形態8に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図18は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、電流変化率(dI/dt)を、モータ電流の最大値(Imax)に対する電流変化率のマップから算出する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、モータ電流の最大値(Imax)から求められた電流変化率(dI/dt)が、判定パラメータに設定されていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータと閾値との比較を行う。
図19は、モータ電流の最大値(Imax)と電流変化率(dI/dt)の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸はモータ電流の最大値(Imax)、縦軸は電流変化率(dI/dt)を表している。電流変化率(dI/dt)は、モータ電流の最大値(Imax)の増加に対して、電流変化率が増大する特性を想定している。このマップを使うと、電流変化率をモータ電流の最大値から求めることが可能である。電流変化率を算出したあとは、実施の形態1で示した方法で、キャリア周期を決定することができる。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図20に従って説明する。ステップST800においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST801では、搬送波キャリア生成部3は、モータ電流(Iu、Iv、Iw)の最大値(Imax)を算出する。ステップST802では、モータ電流の最大値に対する電流変化率のマップに基づいて、電流変化率(dIu/dt、dIv/dt、dIw/dt)を算出する。ステップST803では、電流変化率(dIu/dt、dIv/dt、dIw/dt)を判定パラメータに設定する。
ステップST804では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST805に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST806に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST805またはステップST806が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST807)。
すなわち、以上のように、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。したがって、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、モータ電流の最大値と電流変化率との関係を表したマップを有しており、モータ電流の最大値を取得すると、このマップから電流変化率を算出し、
この算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。
実施の形態9.
次に、実施の形態9に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図21は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、キャリア周期を、抵抗成分の電流に対するキャリア周期のマップから算出する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、モータ電流の平均値または電圧指令値から求められた抵抗成分の電流に基づいて、キャリア周期が算出されていることを示している。搬送波キャリア生成部3は、抵抗成分の電流に対するキャリア周期のマップから算出されたキャリア周期を有する搬送波キャリアをパルス幅変調電圧生成部2に出力する。
図22は、抵抗成分の電流(IR)とキャリア周期(Pc)の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸は抵抗成分の電流(IR)、縦軸はキャリア周期(Pc)を表している。キャリア周期は、抵抗成分の電流が小さい場合はほぼ一定値を示し、抵抗成分の電流が増加するとキャリア周期は減少する。抵抗成分の電流がある程度大きくなると、キャリア周期は低い値で一定になる。全般に、キャリア周期が抵抗成分の電流の増加に対して、減少する特性を想定している。このマップを使うと、抵抗成分の電流からキャリア周期を、直接求めることが可能である。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定する第1のフローを図23に従って説明する。ここでは、抵抗成分の電流(IR)は、モータ電流(Iu、Iv、Iw)の平均値に等しいという特性を利用している。ステップST900においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST901では、搬送波キャリア生成部3はモータ電流の平均値を取得する。
搬送波キャリア生成部3は、ステップST902では、モータ電流(Iu、Iv、Iw)の平均値から抵抗成分の電流(IR)を取得する。ステップST903では、搬送波キャリア生成部3は、抵抗成分の電流とキャリア周期の関係を表しているマップから、キャリア周期を算出する。ステップST903が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST904)。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定する第2のフローを図24に従って説明する。ここでは、抵抗成分の電流(IR)は、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)を回転機の巻線抵抗値(R)で除算することでも算出することができるという特性を利用している。ステップST900においてキャリア周期の算出フローが開始すると、ステップST901xでは、搬送波キャリア生成部3は、電圧指令値を取得する。
搬送波キャリア生成部3は、ステップST902では、電圧指令値(Vu、Vv、Vw)から抵抗成分の電流(IR)を取得する。ステップST903では、搬送波キャリア生成部3は、抵抗成分の電流とキャリア周期の関係を表しているマップから、キャリア周期を算出する。ステップST903が終了すれば、今回のキャリア周期の算出は終了する(ステップST904)。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、抵抗成分の電流とキャリア周期との関係を表したマップを有しており、モータ電流の平均値を取得すると抵抗成分の電流を取得し、
この取得した抵抗成分の電流とマップから次回のキャリア周期を算出することを特徴とするものである。
また、前記搬送波キャリア生成部は、抵抗成分の電流とキャリア周期との関係を表したマップを有しており、電圧指令値を取得すると抵抗成分の電流を取得し、
この取得した抵抗成分の電流とマップから次回のキャリア周期を算出することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
実施の形態10.
次に、実施の形態10に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図25は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、図に示すように2軸座標変換(dq軸座標変換)を前提にしており、実施の形態1で説明した回転機4の電流制約を、回転機4に流れる電流に応じて可変化するものである。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、dq軸座標変換によって搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。図26は、d軸電流とq軸電流の位相の定義を表しているグラフである。このグラフでは、横軸と縦軸は、それぞれ、d軸電流(I_d)、q軸電流(I_q)を表している。なお、dq軸座標変換では、磁石磁束の磁束方向をd軸、d軸からπ/2進んだ座標をq軸と定義されている。
図中に示された角度が、d軸電流とq軸電流の位相に相当する。回転機4に流れる3相交流電流について、dq軸座標変換を行った場合、磁石の不可逆減磁に影響するのはd軸方向の電流となる。実施の形態1で説明したキャリア周期の選定方法では、3相交流におけるモータ電流の最大値(Imax)に基づきキャリア周期の下限値を決定している。しかしながら、3相交流におけるモータ電流の最大値は、磁石が不可逆減磁に至るd軸方向の電流の値と必ずしも一致しない。
したがって、回転機4の電流制約を磁石の不可逆減磁の観点で決定する場合、3相交流電流の電流最大値ではなく、d軸電流(I_d)の電流最大値に基づいて、キャリア周期の下限値を決定するほうが回転機4を性能限界まで利用できることになる。d軸電流の最大値(Imax_d)とは、キャリア周期中のd軸電流の最大値を示している。したがって、搬送波キャリア生成部3では、d軸電流(I_d)とq軸電流(I_q)の位相に対する回転機4の電流制約をマップとして保持し、d軸電流とq軸電流の位相に対する電流制約をマップから算出する。
図27は、d軸電流(I_d)とq軸電流(I_q)の位相と電流制約(Icon)の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸はd軸電流とq軸電流の位相、縦軸は電流制約を表している。電流制約(Icon)は、d軸電流とq軸電流の位相が減少すると、小さくなり、最小値を示した後、増加する。このマップを使うと、電流制約(Icon)を、d軸電流とq軸電流の位相から求めることが可能である。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図28に従って説明する。ステップST1000においてフローが開始し、PWM制御が開始すると、搬送波キャリア生成部3はモータ電流(Iu、Iv、Iw)とインダクタンス値(Lu、Lv、Lw)をdq軸座標変換して、d軸電流とq軸電流の位相を算出する(ステップST1001)。すなわち、モータ電流(Iu、Iv、Iw)及びインダクタンス値(Lu、LIv、Lw)をdq軸座標変換し、d軸電流(I_d)、q軸電流(I_q)、d軸インダクタンス(L_d)、q軸インダクタンス(L_q)とする。さらに、搬送波キャリア生成部3は、d軸電流とq軸電流の位相を算出する。
搬送波キャリア生成部3は、算出されたd軸電流とq軸電流の位相を用いて、d軸電流とq軸電流の位相と電流制約の関係を表しているマップから、電流制約(Icon)を算出する。ステップST1003では、電流制約を判定パラメータに設定し、ステップST1004では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST1005に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST1006に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST1005またはステップST1006が終了すれば、今回のキャリア周期は終了する(ステップST1007)。
次に、本実施の形態における判定パラメータの閾値(電流制約の閾値)の設定方法について説明する。電流制約の閾値はモータ電流の最大値(Imax_d)が回転機の電流制約(Icon_d)以下となるように決定する。モータ電流の最大値を回転機の電流制約以下とするためには、インダクタンス成分の電流(IL_d)と抵抗成分の電流(IR_d)を使った式(6c)を満足させる必要がある。ここで、抵抗成分の電流(IR_d)は、回転機4に流れるモータ電流の平均値としてもよいし、電圧指令値を回転機の巻線抵抗値(R)で除算した値としてもよい。式(6c)を変形すると、式(6d)になる。
Icon_d≦IR_d+IL_d (6c)
Icon_d-IR_d≦IL_d (6d)
式(6d)には、最大電流が回転機の電流制約以下となるための回転機の電流制約(Icon_d)が示されている。この式から判定パラメータの閾値(電流制約の閾値)を式(10)とする。以上のように、インダクタンス成分の電流の閾値を判定パラメータに設定することにより、電流最大値が回転機の電流制約以下となるようキャリア周期を決定することが可能になる。
IR_d+IL_d=電流制約の閾値 (10)
回転機4の電流制約に対するキャリア周期の下限値の算出方法は、実施の形態1と同様である。以上のように、搬送波キャリア生成部3は、回転機4に流れる電流に基づいて回転機4の電流制約を決定する構成とした。このため、回転機4の磁石減磁に寄与する電流に対して電流の閾値を算出できるので、回転機4の性能を最大限利用できるという効果が実現できる。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、d軸電流とq軸電流の位相と電流制約との関係を表したマップを有しており、
d軸電流とq軸電流の位相を算出すると、この算出したd軸電流とq軸電流の位相とマップから電流制約を算出し、
この算出した電流制約が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この算出した電流制約が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
実施の形態11.
次に、実施の形態11に関わる回転機駆動制御装置について、図を参照しながら説明する。図29は、制御対象である回転機4を含めた回転機駆動制御装置1の構成図である。本実施の形態では、図に示すように2軸座標変換(dq軸座標変換)を前提にしており、実施の形態1で説明した回転機4のインダクタンス値を、回転機4に流れるモータ電流に応じて可変化するものである。本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1は、パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3とによって構成されている。
パルス幅変調電圧生成部2は、直流電圧、電圧指令、搬送波キャリアに基づき、回転機4に印加するパルス幅変調電圧(PWM電圧)を生成する。搬送波キャリア生成部3は、dq軸座標変換によって搬送波キャリアを生成して、パルス幅変調電圧生成部2に出力する。本実施の形態では、実施の形態1で説明した電流変化率の算出について、突極性の大きい回転機4を対象とした場合の対応に関する。
電気自動車に適用する回転機は高出力密度が要求されるため、リラクタンストルクを積極的に活用する埋め込み磁石形同期機など、逆突極性の大きい設計とすることが多い。回転機では、高いリラクタンストルクを実現するため、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差である突極性が大きくなる傾向がある。突極性が大きい回転機4を制御対象とする場合、回転機4に流れるモータ電流に対してインダクタンス値が大きく変化する。
このような回転機4を制御対象とした場合、電流変化率の算出においてインダクタンス値を固定とすると、キャリア周期の下限値が適切な値とならず、回転機4の電流制約を超過する可能性がある。したがって、搬送波キャリア生成部3では、回転機4に流れるモータ電流に対して回転機4のインダクタンス値を可変とする構成とする。まず回転機に流れるモータ電流とインダクタンス値の関係について説明する。
モータ電流(Iu、Iv、Iw)及びインダクタンス値(Lu、Lv、Lw)をdq軸座標変換し、d軸電流(I_d)、q軸電流(I_q)、d軸インダクタンス(L_d)、q軸インダクタンス(L_q)とする。モータ電流とインダクタンス値の間には、以下の関係式が成立する。なお、G(L_d)、G(L_q)、Ofs(L_d)、Ofs(L_q)は、それぞれ、d軸インダクタンスゲイン、q軸インダクタンスゲイン、d軸インダクタンスオフセット、q軸インダクタンスオフセットとする。
L_d=G(L_d)×I_d + Ofs(L_d) (11a)
L_q=G(L_q)×I_q + Ofs(L_q) (11b)
次に、2軸座標変換された回転機4のインダクタンス値について説明する。図30は、d軸電流(I_d)に対するd軸インダクタンス値(L_d)の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸はd軸電流、縦軸はd軸インダクタンス値を表している。d軸インダクタンス値は、d軸電流が小さい場合はほぼ一定値を示す。d軸電流が増加すると、d軸インダクタンス値は増加しはじめ、その後、ほぼ一定値を示している。このマップを使うと、d軸インダクタンス値を、d軸電流から求めることが可能である。
図31は、q軸電流(I_q)に対するq軸インダクタンス値(L_q)の関係を表しているマップである。このマップでは、横軸はq軸電流、縦軸はq軸インダクタンス値を表している。q軸インダクタンス値は、q軸電流が小さい場合はほぼ一定値を示す。q軸電流が増加すると、q軸インダクタンス値は増加しはじめる。q軸インダクタンス値はその後、減少に転じ、ほぼ一定値を示すようになる。このマップを使うと、q軸インダクタンス値を、q軸電流から求めることが可能である。
搬送波キャリア生成部3がキャリア周期を決定するフローを図32に従って説明する。ステップST1100においてフローが開始し、PWM制御が開始すると、搬送波キャリア生成部3はモータ電流(Iu、Iv、Iw)及びインダクタンス値(Lu、Lv、Lw)をdq軸座標変換する(ステップST1101)。ステップST1102では、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスを算出する。このとき回転機4のインダクタンス値は、回転機4に流れる電流とインダクタンス値の関係を表す式(11a)、式(11b)に基づいて算出してもよいし、あらかじめ電流に対するインダクタンス値をマップとして保持し、回転機4に流れる電流に対してマップからインダクタンス値を算出してもよい。
ステップST1103では、電流変化率を判定パラメータに設定する。電流変化率は、d軸インダクタンス値、q軸インダクタンス、から求める。ステップST1104では、この判定パラメータが閾値以下かどうかを判定する。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値以下であると判断すればステップST1105に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位増加させる。搬送波キャリア生成部3は、判定パラメータが閾値よりも大きいと判断すればステップST1106に進み、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期に対して、例えば一単位低減させる。ステップST1105またはステップST1106が終了すれば、今回のキャリア周期は終了する(ステップST1107)。
以上のように、本実施の形態に関わる回転機駆動制御装置における搬送波キャリア生成部3は、電流に応じて回転機4のインダクタンス値を算出する構成としたので、動作条件に対してインダクタンス値が大きく変化する回転機4を制御対象とした場合でもキャリア周期の下限値を正確に算出できるという効果を実現できる。
すなわち、本願に関わる回転機駆動制御装置において、
前記搬送波キャリア生成部は、モータ電流とインダクタンス値をdq軸座標変換して、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスを算出し、
この算出したd軸インダクタンスとq軸インダクタンスから電流変化率を算出し、
この算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
この算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減することを特徴とするものである。したがって、本実施の形態によれば、前実施の形態と同等の効果が得られる。
なお、パルス幅変調電圧生成部2(PWM電圧生成部)、および搬送波キャリア生成部3の機能ブロックのそれぞれは、図33に示すハードウェアによって実現される。同図は、本願の実施の形態に関わる回転機駆動制御装置1の内部構成を示している。回転機駆動制御装置1は、プロセッサ800(中央処理装置)、メモリ801、入出力デバイス802、ネットワーク803(データバス、I/Oポート)などを備えている。すなわち、プロセッサ800と、プログラムおよびデータを蓄積するメモリ801と、センサなどの入出力デバイス802とをネットワーク803(データバス)によって接続し、プロセッサ800による制御によって、データの処理とデータの伝送を行っている。
ここで、メモリ801は、例えば、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
入出力デバイス802は、ディスプレイ(ユーザインタフェイス)などであり、回転機駆動制御装置1における入力装置および表示装置に該当する。回転機駆動制御装置1における各機能は、プロセッサ800およびメモリ801により実現される。各機能の実行部は、専用のハードウェアであっても、メモリ801に格納されるプログラムを実行する中央処理装置であってもよい。中央処理装置は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサともいう。
各機能の実行部が中央処理装置の場合、回転機駆動制御装置1の機能(パルス幅変調電圧生成部2、および搬送波キャリア生成部3)は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ801に格納される。各機能の実行部は、メモリ801に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
本願に関わる回転機駆動制御装置は、電圧指令に基づき直流電圧をパルス幅変調電圧に変換して回転機に印加する回転機駆動制御装置であって、前記回転機に印加する電圧の指令と搬送波キャリアを比較して前記パルス幅変調電圧を生成するパルス幅変調電圧生成部と、前記搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部とを備え、前記搬送波キャリア生成部は、前記回転機駆動制御装置が前記回転機に給電する電流と、前記電流の電流変化率と、前記キャリア周期との内の少なくとも1つより算出される判定パラメータが閾値以下になるように前記搬送波キャリアの周期を算出することを特徴とするものである。この構成により、動作条件に対して設定可能なキャリア周波数の下限値を選択できるため、回転機の破損を防止し、かつシステムの高効率化が実現できるものである。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、前記搬送波キャリア生成部は、前記電流と、前記直流電圧と、前記電圧の指令と、前記回転機の回転速度と、前記回転機のインダクタンス値と、前記回転機の巻線抵抗値との内の少なくとも1つを用いて前記電流の電流変化率を算出することを特徴とするものである。この構成により、電流変化率を正確に算出できるため、キャリア周波数の計算精度が向上する効果が得られる。
また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、前記搬送波キャリア生成部は、前記電流に応じて前記電流の閾値を算出することを特徴とするものである。この構成により、回転機の磁石減磁に寄与する電流に対して電流の閾値を算出できるため、回転機の性能を最大限利用できる効果が得られる。また、本願に関わる回転機駆動制御装置において、前記搬送波キャリア生成部は、前記電流に応じて前記インダクタンス値を算出することを特徴とするものである。この構成により、動作条件によってインダクタンス値が大きく変化する回転機を制御対象とする場合でも、電流変化率を高精度に計算することが可能となる。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 回転機駆動制御装置、2 パルス幅変調電圧生成部、3 搬送波キャリア生成部、4 回転機、800 プロセッサ、801 メモリ、802 入出力デバイス、803 ネットワーク

Claims (15)

  1. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    算出した電流変化率と閾値とを比較し、
    算出した電流変化率が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
    算出した電流変化率が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減し、
    前記閾値は、回転機の電流制約と抵抗成分の電流と現時点のキャリア周期とから算出されていることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  2. 前記搬送波キャリア生成部は、電流変化率を、電圧指令値、誘起電圧、モータ電流、インダクタンス値、巻線抵抗値から算出することを特徴とする請求項1に記載の回転機駆動制御装置。
  3. 前記搬送波キャリア生成部は、誘起電圧を、誘起電圧係数に回転速度を積算して求めることを特徴とする請求項2に記載の回転機駆動制御装置。
  4. 前記搬送波キャリア生成部は、インダクタンス成分の電流を検出すると現時点でのキャリア周期で除算して電流変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転機駆動制御装置。
  5. 前記搬送波キャリア生成部は、電圧指令値と電流変化率との関係を表したマップを有しており、
    電圧指令値を取得すると、このマップから電流変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転機駆動制御装置。
  6. 前記搬送波キャリア生成部は、モータ電流の最大値と電流変化率との関係を表したマップを有しており、
    モータ電流の最大値を取得すると、このマップから電流変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転機駆動制御装置。
  7. 前記搬送波キャリア生成部は、モータ電流とインダクタンス値をdq軸座標変換して、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスを算出し、
    この算出したd軸インダクタンスとq軸インダクタンスから電流変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転機駆動制御装置。
  8. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    電流変化率を、電圧指令値、誘起電圧、モータ電流、インダクタンス値、巻線抵抗値から算出し、かつ、
    電流変化率と、回転機の電流制約を満たすキャリア周期との関係を表したマップを有しており、
    算出した電流変化率とこのマップをもとにして、次回のキャリア周期を算出し、
    前記回転機の電流制約は、抵抗成分の電流とインダクタンス成分の電流の和からなることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  9. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    電流変化率を、電圧指令値、誘起電圧、モータ電流、インダクタンス値、巻線抵抗値から算出し、
    算出した電流変化率と現時点のキャリア周期からインダクタンス成分の電流を求め、
    この求めたインダクタンス成分の電流が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
    この求めたインダクタンス成分の電流が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減し、
    前記閾値は、回転機の電流制約と抵抗成分の電流とから算出されていることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  10. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    抵抗成分の電流と、回転機の電流制約を満たすキャリア周期との関係を表したマップを有しており、
    モータ電流の平均値を取得すると抵抗成分の電流を取得し、
    この取得した抵抗成分の電流と前記マップから次回のキャリア周期を算出し、
    前記回転機の電流制約は、抵抗成分の電流とインダクタンス成分の電流の和からなることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  11. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    抵抗成分の電流と、回転機の電流制約を満たすキャリア周期との関係を表したマップを有しており、
    電圧指令値を取得すると抵抗成分の電流を取得し、
    この取得した抵抗成分の電流と前記マップから次回のキャリア周期を算出し、
    前記回転機の電流制約は、抵抗成分の電流とインダクタンス成分の電流の和からなることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  12. 電圧指令、誘起電圧、モータ電流を入力として、搬送波キャリアを生成する搬送波キャリア生成部と、
    直流電圧、前記電圧指令、前記搬送波キャリアを入力として、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が大きい場合は、直流電圧を出力し、前記搬送波キャリアに対して電圧指令が小さい場合は、ゼロ電圧を出力するパルス幅変調電圧生成部と、を備え、
    前記搬送波キャリア生成部は、
    d軸電流とq軸電流の位相と電流制約との関係を表したマップを有しており、
    d軸電流とq軸電流の位相を算出すると、この算出したd軸電流とq軸電流の位相とマップから電流制約を算出し、
    この算出した電流制約が閾値よりも小さいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも増加し、
    この算出した電流制約が閾値よりも大きいと判定すれば、次回のキャリア周期を現時点のキャリア周期よりも低減し、
    前記閾値は、抵抗成分の電流とインダクタンス成分の電流の和からなることを特徴とする回転機駆動制御装置。
  13. 前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、電圧の次元を有する電圧指令値として外部から入力されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の回転機駆動制御装置。
  14. 前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、電圧利用率として外部から入力され、
    前記搬送波キャリア生成部は、この入力された電気利用率から電圧指令値を算出することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の回転機駆動制御装置。
  15. 前記電圧指令は、前記パルス幅変調電圧生成部と前記搬送波キャリア生成部に、デューティとして外部から入力され、
    前記搬送波キャリア生成部は、この入力されたデューティから電圧指令値を算出することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の回転機駆動制御装置。
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