<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ20を備えている。本実施形態において、回転電機10は、ブラシレスの同期機であり、具体的には永久磁石同期機である。回転電機10は、ステータ巻線であるU,V,W相巻線11U,11V,11Wと、永久磁石を有するロータ12とを備えている。なお、図1には、便宜上、極数が2のロータ12を示しているがこれに限らない。
回転電機10は、インバータ20を介して直流電源としてのバッテリ30に接続されている。インバータ20は、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を備えている。U相上,下アームスイッチSUH,SULの接続点には、インバータ20のU相端子21U、U相導電部材22U、及び回転電機10のU相端子13Uを介して、U相巻線11Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSVH,SVLの接続点には、インバータ20のV相端子21V、V相導電部材22V、及び回転電機10のV相端子13Vを介して、V相巻線11Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、インバータ20のW相端子21W、W相導電部材22W、及び回転電機10のW相端子13Wを介して、W相巻線11Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線11U,11V,11Wの第2端は中性点で接続されている。本実施形態において、U,V,W相巻線11U,11V,11Wは、電気角で互いに120°ずれている。なお、各相の導電部材22U,22V,22Wは、例えば、ケーブル又はバスバーである。
本実施形態では、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはNチャネルMOSFETが用いられている。各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLには、ボディダイオードが内蔵されている。
インバータ20は、その入力側に、インバータ20の入力電圧を平滑化するコンデンサ23を備えている。コンデンサ23の高電位側端子には、バッテリ30の正極端子が接続され、コンデンサ23の低電位側端子には、バッテリ30の負極端子が接続されている。コンデンサ23の高電位側端子には、上アームスイッチSUH~SWHの高電位側端子であるドレインが接続されている。コンデンサ23の低電位側端子には、下アームスイッチSUL~SWLの低電位側端子であるソースが接続されている。なお、コンデンサ23は、インバータ20外部に設けられていてもよい。
制御システムは、電圧センサ40、電流センサ41、回転角センサ42、温度センサ43及び気圧センサ44を備えている。電圧センサ40は、コンデンサ23の端子電圧である電源電圧を検出する。電流センサ41は、回転電機10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。回転角センサ42は、例えばレゾルバ又はホール素子で構成され、回転電機10を構成するロータの電気角を検出する。
温度センサ43は、回転電機10及びインバータ20の温度を検出する。回転電機10の温度は、例えば、巻線11U~11Wの温度である。また、インバータ20の温度は、例えば、上,下アームスイッチの温度である。
気圧センサ44は、回転電機10及びインバータ20の設置環境における大気圧を検出する。各センサ40~44の検出値は、制御システムに備えられるマイコン50に入力される。
マイコン50は、「制御装置」として機能し、回転電機10の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、インバータ20を構成する各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量はトルクである。マイコン50は、デッドタイムDTを挟みつつ上,下アームスイッチを交互にオン状態とすべく、上,下アームスイッチに対応する駆動信号を、上,下アームスイッチに対して個別に設けられた駆動回路Drに出力する。駆動信号は、オン指令又はオフ指令のいずれかをとる。
続いて、図2を用いて、マイコン50によって実行される回転電機10のトルク制御について説明する。本実施形態では、トルク制御として、電流フィードバック制御を行う。
2相変換部51は、電流センサ41により検出された相電流(以下、相電流検出値)と、回転角センサ42により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
指令電流設定部52は、トルク指令値Trq*に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。d,q軸指令電流Id*,Iq*は、例えば、最小電流最大トルク制御(MTPA)により算出されればよい。
d軸偏差算出部53は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算した値として、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部54は、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算した値として、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
d軸指令電圧算出部55は、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。q軸指令電圧算出部56は、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。なお、d軸指令電圧算出部55及びq軸指令電圧算出部56で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
3相変換部57は、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*は、電気角で位相が120°ずつずれた正弦波状の波形となる。
信号生成部58は、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*及び電圧センサ40により検出された電源電圧(以下、電源電圧検出値Vdc)に基づいて、各駆動信号GUH,GVH,GWH,GUL,GVL,GWLを生成する。詳しくは、信号生成部58は、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*を電源電圧検出値Vdcの1/2で除算することにより、U,V,W相規格化指令電圧VUS,VVS,VWSを算出する。信号生成部58は、U,V,W相規格化指令電圧VUS,VVS,VWSと、これら指令電圧に共通のキャリア信号Scとの大小比較に基づくPWM制御により、U相上,下アーム駆動信号GUH,GULと、V相上,下アーム駆動信号GVH,GVLと、W相上,下アーム駆動信号GWH,GWLとを生成する。本実施形態において、キャリア信号Scは、上昇速度及び下降速度が等しい三角波信号である。信号生成部58は、生成したU相上,下アーム駆動信号GUH,GULをU相上,下アームスイッチSUH,SULの駆動回路Drに出力し、生成したV相上,下アーム駆動信号GVH,GVLをV相上,下アームスイッチSVH,SVLの駆動回路Drに出力し、生成したW相上,下アーム駆動信号GWH,GWLをW相上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動回路Drに出力する。なお、本実施形態において、マイコン50の制御周期は、キャリア信号Scの周期よりも十分に短い。また、本実施形態において、2相変換部51、指令電流設定部52、d,q軸偏差算出部53,54、d,q軸指令電圧算出部55,56、3相変換部57及び信号生成部58が「制御部」に相当する。
なお、図2に示す処理は、回転電機10の動作点が正弦波PWM制御の領域又は過変調制御の領域に含まれる場合に実行される。正弦波PWM制御は、電機子巻線に印加される各相電圧のピーク値がバッテリ30の端子電圧以下になる場合において、電機子巻線に印加される各相電圧をPWM電圧波形にするための上,下アームスイッチのスイッチング制御である。正弦波PWM制御には、3相変調又は2相変調が含まれる。また、過変調制御は、電機子巻線に印加される各相電圧のピーク値がバッテリ30の端子電圧を上回る場合において、電機子巻線に印加される各相電圧を、正弦波PWM制御によるPWM電圧波形よりも変調率の高いPWM電圧波形にするための上,下アームスイッチのスイッチング制御である。
続いて、図3を用いて、駆動回路Drについて説明する。本実施形態の上,下アームの各駆動回路Drは、基本的には同じ構成である。図3には、便宜上、インバータ20を構成するスイッチをSWにて示し、信号生成部58から駆動回路Drに入力される駆動信号をGINにて示す。
駆動回路Drは、定電圧電源60、充電スイッチ61及び充電抵抗体62を備えている。定電圧電源60には、充電スイッチ61及び充電抵抗体62を介して、スイッチSWのゲートが接続されている。定電圧電源60の出力電圧(例えば15V)は、スイッチSWのゲートに供給されるゲート電源電圧となる。
駆動回路Drは、放電抵抗体63及び放電スイッチ64を備えている。スイッチSWのゲートには、放電抵抗体63及び放電スイッチ64を介して、グランド部としてのスイッチSWのソースが接続されている。
駆動回路Drは、駆動部65を備えている。駆動部65は、信号生成部58から出力された駆動信号GINを取得する。駆動部65は、取得した駆動信号GINがオン指令である場合、充電処理を行う。充電処理は、充電スイッチ61をオン状態にして、かつ、放電スイッチ64をオフ状態にする処理である。充電処理によれば、スイッチSWのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、スイッチSWがオン状態に切り替えられる。
駆動部65は、取得した駆動信号GINがオフ指令である場合、放電処理を行う。放電処理は、充電スイッチ61をオフ状態にして、かつ、放電スイッチ64をオン状態にする処理である。放電処理によれば、スイッチSWのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、スイッチSWがオフ状態に切り替えられる。
図2の説明に戻り、マイコン50は、スイッチ指令部59を備えている。スイッチ指令部59には、トルク指令値Trq*、気圧センサ44により検出された大気圧(以下、気圧検出値Pr)、温度センサ43により検出された温度(以下、温度検出値TDr)、及び電気角θeが入力される。なお、本実施形態において、スイッチ指令部59が「サージ低減部」に相当する。
スイッチ指令部59は、現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれるか否かを判定する。特定位相範囲は、スイッチSWのオフ状態への切り替えに伴って発生する回転電機10内のサージ電圧が大きくなると想定される電気角範囲である。スイッチ指令部59は、現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれると判定した場合、U,V,W相のうち異なる2相間のオフ指令への切り替えタイミングが重ならないように、信号生成部58において生成された各駆動信号GUH~GWLを補正するサージ低減処理を行う。
インバータ20、各相巻線11U~11W及び各相導電部材22U~22Wのインダクタンス及びキャパシタンスに起因する共振及び反射により、スイッチSWの駆動状態の切り替えに伴ってサージ電圧が発生し、回転電機10に過電圧として印加される。特に、スイッチSWのオフ状態への切り替えに伴って発生するサージ電圧は、オン状態への切り替えに伴って発生するリカバリサージ電圧よりも大きくなりやすい。ここで、2相における駆動状態の切り替えが連続すると、2相それぞれの駆動状態の切り替えに伴って発生するサージ電圧が重畳される。重畳されたサージ電圧は大きな電圧値である。このため、回転電機10において近接する巻線間や、巻線とグランドとの間でサージ電圧が発生した場合、それらの間で部分放電が発生し、回転電機10の劣化を招くおそれがある。
ここで、駆動状態の切り替えに伴いインバータ20の出力部で発生するサージ電圧は、回転電機10へと伝播する。インバータ20の出力部のサージ電圧波形と、回転電機10内に伝播したサージ電圧波形とは異なるものとなり、インバータ20の出力部のサージ電圧よりも回転電機10内のサージ電圧の方が大きくなることもある。そこで、本実施形態では、サージ低減処理により、回転電機10内のサージ電圧を低減する。
続いて、図4を用いて、スイッチ指令部59が実行するサージ低減処理の手順を説明する。この処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS10では、第1,第2条件が全て成立しているか否かを判定する。第1条件は、気圧検出値Prが気圧閾値Pthよりも低いとの条件である。なお、気圧閾値は、例えば、1気圧未満の値(例えば、0.6~0.7気圧)に設定されればよい。第2条件は、温度検出値TDrが温度閾値TDthよりも高いとの条件である。第1,第2条件は、各ステータ巻線間の絶縁耐力が低下する状況であるか否かを判定するための条件である。
第1,第2条件が設けられることにより、回転電機10のトルク制御性の低下を極力防止できる。つまり、後述するステップS13又はS16の処理が行われると、正弦波に対する相電流波形のひずみ度合いが大きくなることがあり、トルク制御性が低下し得る。このため、特定の条件が成立する場合に限ってステップS13又はS16の処理が行われるようにすることにより、トルク制御性の低下を極力防止する。
ステップS10において第1,第2条件の少なくとも1つが成立していないと判定した場合には、信号生成部58により生成された駆動信号を補正しない。このため、信号生成部58により生成された駆動信号は、そのまま駆動回路Drに出力される。
一方、ステップS10において第1,第2条件の全てが成立していると判定した場合には、ステップS11に進み、第3条件が成立しているか否かを判定する。第3条件は、トルク指令値Trq*が高トルク閾値TrqthHよりも大きいとの条件である。第3条件は、スイッチSWのオフ状態への切り替えに伴い発生するサージ電圧が大きくなる状況であるか否かを判定するための条件である。
ステップS11において第3条件が成立していると判定した場合には、ステップS12に進み、現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれるか否かを判定する。以下、図5及び図6を用いて、特定位相範囲の定め方について説明する。
図5(a)に、サージ伝達特性を示し、図5(b)に、3相のうちいずれか1相の規格化指令電圧の推移を示す。サージ伝達特性は、電気角θeを入力とし、サージ特性値を出力する特性である。サージ特性値は、スイッチSWのオフ状態への切り替え又はオン状態への切り替えに伴って発生する回転電機10内のサージ電圧のピーク値、又はピーク値の相関値である。この相関値として、例えば、サージ電圧を時間軸上にプロットした場合において、ピーク値よりもやや小さいサージ電圧を採用できる。特定位相範囲は、サージ伝達特性において、1電気角周期のうちサージ特性値が最大値Smaxとなる電気角を含む一部の電気角範囲である。図5(a)には、1電気角周期において、サージ特性値の極大値を1つ有するサージ伝達特性を示すが、回転電機10等の構造によっては、サージ特性値の極大値を複数有するサージ伝達特性となる場合もある。この場合、例えば、複数の極大値のうち最も大きい極大値(つまり最大値)となる電気角を含む一部の電気角範囲を特定位相範囲とすればよい。
図5(a)に示すサージ伝達特性は、図6に示す伝達関数に基づいて算出できる。図6は、電気角θeをある電気角θaに固定した場合において、インバータ20における2相の出力部の電位差を入力とし、回転電機10における2か所の電位差を出力とする周波数特性を示す伝達関数である。
入力及び出力の設定方法は、例えば以下に説明するものを採用することができる。1つ目の方法では、インバータ20のU,V,W相端子21U,21V,21Wのうちいすれか2相の端子間の電位差、又は回転電機10のU,V,W相端子13U,13V,13Wのうちいずれか2相の端子間の電位差を入力とする。そして、回転電機10内の同相のステータ巻線においてステータ巻線同士が接触している一対の箇所の電位差、又は回転電機10内の異なる2相のステータ巻線においてステータ巻線同士が接触している一対の箇所の電位差を出力とする。
2つ目の方法では、インバータ20のU,V,W相端子21U,21V,21Wのうちいすれか2相の端子間の電位差を入力とし、回転電機10のU,V,W相端子13U,13V,13Wのうち、入力となる2相と同じ2相の端子間の電位差を出力とする。
図6に示す伝達関数は、例えば、シグナルジェネレータにより入力に正弦波信号を供給し、出力の電圧波形をオシロスコープで計測し、計測した出力の振幅と正弦波信号の振幅との比を求めることにより算出される。伝達関数において、出力が最大となる周波数が共振周波数frzである。このような伝達関数を1電気角周期について算出し、各電気角に対応する共振周波数frzにおける入出力比であるサージ特性値と、各電気角とを関係付けた情報が図5(a)に示すサージ伝達特性となる。特定位相範囲は、例えば1/4電気角周期以下の範囲であり、本実施形態では、特定位相範囲の時間軸上の長さが、共振周波数frzの逆数で表される期間に設定されている。なお、本実施形態では、入出力比が最大となる共振周波数frzが1電気角周期において略一定であるとする。
図4の説明に戻り、ステップS12において現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれていないと判定した場合には、信号生成部58により生成された駆動信号を補正しない。
一方、ステップS12において現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれると判定した場合には、ステップS13に進み、U,V,W相のうち互いに異なる2相間におけるオフ指令への切り替えタイミングの時間差Δtоffが第1所定時間以上となるように、信号生成部58により生成された駆動信号を補正する。これにより、時間差Δtоffを確保し、異なる2相の重畳サージ電圧を低減する。
詳しくは、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオフ指令への切り替えタイミングと、V相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差Δtоffが所定時間より短い場合、この時間差Δtоffが第1所定時間又は第1所定時間よりも長い時間になるように、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオフ指令への切り替えタイミング、及びV相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオフ指令への切り替えタイミングのうち、少なくとも一方のタイミングを遅延させる補正を行う。例えば、U相上アーム駆動信号GUHのオフ指令への切り替えタイミングと、このタイミングに続くV相上アーム駆動信号GVHのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差Δtоffが第1所定時間より短い場合、V相上アーム駆動信号GVHのオフ指令への切り替えタイミングを遅延させる補正を行う。
また、V相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオフ指令への切り替えタイミングと、W相上アーム駆動信号GWH又はW相下アーム駆動信号GWLのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差Δtоffが第1所定時間より短い場合、この時間差Δtоffが第1所定時間又は第1所定時間よりも長い時間になるように、V相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオフ指令への切り替えタイミング、及びW相上アーム駆動信号GWH又はW相下アーム駆動信号GWLのオフ指令への切り替えタイミングのうち、少なくとも一方のタイミングを遅延させる補正を行う。
また、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオフ指令への切り替えタイミングと、W相上アーム駆動信号GWH又はW相下アーム駆動信号GWLのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差Δtоffが第1所定時間より短い場合、この時間差Δtоffが第1所定時間又は第1所定時間よりも長い時間になるように、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオフ指令への切り替えタイミング、及びW相上アーム駆動信号GWH又はW相下アーム駆動信号GWLのオフ指令への切り替えタイミングのうち、少なくとも一方のタイミングを遅延させる補正を行う。
ここで、第1所定時間は、例えば、ある1相のスイッチSWがオフ状態に切り替えられてから、このオフ状態への切り替えに伴って発生する回転電機10内のサージ電圧が減衰するまでの期間である第1減衰時間β1に設定されてもよい。第1減衰時間β1は、例えば実験又は計算により予め定められた値である。ここで、サージ電圧が減衰するとは、例えば、スイッチSWのドレイン及びソース間電圧が、スイッチSWのオフ状態への切り替えに伴ってピーク値になった後、バッテリ30の端子電圧と同じ電圧に収束することとすればよい。
また、第1所定時間は、例えば、キャリア信号Scの1周期(つまり、スイッチSWの1スイッチング周期)の1/2よりも短い期間に設定されてもよい。図7には、第1所定時間が判定時間Δtcに設定される例を示す。判定時間Δtcについて説明すると、図7に示す三角形の相似の関係から、「α:Δtc=100:1/(2fc)」→「Δtc=α/(200×fc)」が導かれる。ここで、αは判定閾値を示し、fcは、キャリア信号Scの周波数を示す。判定閾値αは、異なる2相における規格化指令電圧が近接しているか否か、すなわち、異なる2相におけるスイッチSWのオフ状態への切り替えが連続するか否かを判定するための値である。キャリア信号Scの振幅を「Amp/2」とする場合、判定閾値αは、「Amp/2」よりも小さい値、又は規格化指令電圧の振幅が取り得る最大値の1/2よりも小さい値に設定される。具体的には例えば、判定閾値αは、0よりも大きくて、かつ、Ampの5%以下の値に設定される。例えば、fc=5kHzとし、判定閾値αをAmpの5%(つまり、α=5)とする場合、Δtc=5μsとなる。
ちなみに、第1減衰時間β1がキャリア信号Scの1周期の1/2よりも短い期間に設定されていてもよい。また、特定位相範囲は、U,V,W相で共通の特定位相範囲に限らず、U,V,W相それぞれにおいて個別に設定される特定位相範囲であってもよい。
図4の説明に戻り、ステップS11において否定判定した場合には、ステップS14に進み、第4条件が成立しているか否かを判定する。第4条件は、トルク指令値Trq*が低トルク閾値TrqthL(<TrqthH)よりも小さいとの条件である。第4条件は、上,下アームのうち、一方のアームにおけるスイッチSWのオン状態への切り替えに伴い、他方のアームにおけるボディダイオードのリカバリに起因して発生するリカバリサージ電圧が大きくなる状況であるか否かを判定するための条件である。
ステップS14において第4条件が成立していると判定した場合には、ステップS15に進み、現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれるか否かを判定する。一方、ステップS14又はS15において否定判定した場合には、信号生成部58により生成された駆動信号を補正しない。
一方、ステップS15において現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれていると判定した場合には、ステップS16に進み、U,V,W相のうち互いに異なる2相間におけるオン指令への切り替えタイミングの時間差Δtоnが第2所定時間以上となるように、信号生成部58により生成された駆動信号を補正する。これにより、時間差Δtоnを確保し、異なる2相の重畳サージ電圧を低減する。
詳しくは、例えば、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオン指令への切り替えタイミングと、V相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオン指令への切り替えタイミングとの時間差Δtоnが第2所定時間より短い場合、この時間差Δtоnが第2所定時間又は第2所定時間よりも長い時間になるように、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULのオン指令への切り替えタイミング、及びV相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLのオン指令への切り替えタイミングのうち、少なくとも一方のタイミングを遅延させる補正を行う。
ここで、第2所定時間は、例えば、ある1相のスイッチSWがオン状態に切り替えられてから、このオン状態への切り替えに伴って発生する回転電機10内のサージ電圧が減衰するまでの期間である第2減衰時間β2に設定されてもよい。第2減衰時間β2は、例えば実験又は計算により予め定められた値である。ここで、サージ電圧が減衰するとは、例えば、スイッチSWのドレイン及びソース間電圧が、スイッチSWのオン状態への切り替えに伴ってピーク値になった後、バッテリ30の負極端子側に接続されたグランドの電位に収束することとすればよい。
また、第2所定時間は、第1所定時間と同様に、例えば、キャリア信号Scの1周期の1/2よりも短い期間に設定されてもよい。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
現在の電気角θeが特定位相範囲に含まれる場合、U,V,W相のうち互いに異なる2相間におけるオフ指令又はオン指令への切り替えタイミングの時間差が所定時間以上となるように、駆動信号が補正されるサージ低減処理が行われる。これにより、回転電機10内のサージ電圧が大きくなるおそれがある状況において、各相のサージ電圧の重畳を抑制でき、ひいては回転電機10内のサージ電圧を低減することができる。
また、本実施形態では、サージ電圧が大きくなりやすい大電流が流れる場合のオフ状態への切り替え、又はリカバリサージ電圧が大きくなりやすい小電流が流れる場合のオン状態への切り替えに着目したサージ低減処理が行われるため、回転電機10内の重畳サージ電圧の低減効果が大きい。
トルク指令値Trq*が高トルク閾値TrqthHよりも大きいと判定された場合にサージ低減処理が行われる。トルク指令値Trq*が高トルク閾値TrqthHよりも大きい状況は、インバータ20及び回転電機10に流れる電流が大きくなる状況であるため、重畳サージ電圧が大きくなりやすい。重畳サージ電圧が大きくなりやすい状況においてのみサージ低減処理が行われる構成によれば、重畳サージ電圧を抑制しつつ、回転電機10のトルク制御性の低下を極力防止することができる。
トルク指令値Trq*が低トルク閾値TrqthLよりも小さいと判定された場合にサージ低減処理が行われる。トルク指令値Trq*が低トルク閾値TrqthLよりも小さい状況は、リカバリサージ電圧が大きくなる状況であるため、重畳サージ電圧が大きくなりやすい。重畳サージ電圧が大きくなりやすい状況においてのみサージ低減処理が行われる構成によれば、重畳サージ電圧を抑制しつつ、回転電機10のトルク制御性の低下を極力防止することができる。
気圧検出値Prが気圧閾値Pthよりも低いと判定された場合に速度低下処理が行われる。気圧検出値Prが気圧閾値Pthよりも低い状況は、回転電機10の絶縁耐力が低くなる状況である。このような状況においてのみサージ低減処理が行われるため、重畳サージ電圧を抑制しつつ、回転電機10のトルク制御性の低下を極力防止することができる。
温度検出値TDrが温度閾値TDthよりも高いと判定された場合に速度低下処理が行われる。温度検出値TDrが温度閾値TDthよりも高い状況は、回転電機10の絶縁耐力が低くなる状況である。このような状況においてのみサージ低減処理が行われるため、重畳サージ電圧を抑制しつつ、回転電機10のトルク制御性の低下を極力防止することができる。
<第1実施形態の変形例>
・図4のステップS10の処理を、図8のステップS17に示すように、第1,第2条件の全てが成立しているか否かを判定する処理に置き換えてもよい。
また、第1~第3条件の全てが用いられることなく、第1~第3条件のうち、一部であってかつ少なくとも1つの条件が用いられてもよい。ここで、第1~第3条件のうち2つが用いられる場合、これら条件は、論理積(AND)又は論理和(OR)により適宜組み合わせられればよい。
・図4のステップS11において、第3条件を、指令電流ベクトルの大きさが所定閾値よりも大きいとの条件に置き換えてもよい。ここで、指令電流ベクトルの大きさIrは、トルク指令値Trqと相関する値であり、例えば、下式(eq1)により算出されればよい。
また、第3条件において用いられる値は、指令値に限らず、ステータ巻線に流れる電流の検出値であってもよい。例えば、第3条件を、相電流検出値に基づいて算出した相電流の実効値が所定実効値よりも大きいとの条件、又は相電流検出値に基づいて算出した相電流の振幅が所定振幅よりも大きいとの条件に置き換えてもよい。なお、図4のステップS14においても、トルク指令値Trq*に代えて、上述した指令電流ベクトルの大きさ、又はステータ巻線に流れる電流の検出値が用いられてもよい。
・図4のステップS13又はS16において、U,V,W相のうち、互いに異なる2相ではなく、いずれか2相間におけるオフ指令への切り替えタイミング又はオン指令への切り替えタイミングの時間差が所定時間以上となるように、駆動信号が補正されてもよい。この場合、例えば、U相上アーム駆動信号GUH又はU相下アーム駆動信号GULと、V相上アーム駆動信号GVH又はV相下アーム駆動信号GVLとは補正されるものの、W相上,下アーム駆動信号GWH,GWLは補正されない。
・補正対象となるタイミングは、オン指令への切り替えタイミング又はオフ指令への切り替えタイミングのいずれかに限らない。U,V,W相のいずれかのオン指令への切り替えタイミングと、U,V,W相のいずれかのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差が所定時間以上となるように、駆動信号が補正されてもよい。なお、この場合、時間差を確保すべき2つのタイミングが、同相におけるオン指令への切り替えタイミング及びオフ指令への切り替えタイミングであってもよい。
・信号生成部58において、キャリア信号Scと比較される電圧が、規格化指令電圧ではなく、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*であってもよい。この場合、電源電圧検出値Vdcに基づいて、キャリア信号Scの振幅が変更されればよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、回転電機10の回転速度及び極数に基づいて、特定位相範囲が設定される。
図9に、スイッチ指令部59により実行されるサージ低減処理の手順を示す。なお、図9において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS18に進む。ステップS18では、電気角θeに基づいて、回転電機10の電気角周波数ωeを算出する。そして、算出した電気角周波数ωeが低いほど、特定位相範囲を狭くする。具体的には例えば、算出した電気角周波数ωeが低いほど、特定位相範囲の電気角軸上の長さを狭くする。電気角周波数ωeが低いほど、1電気角周期の時間が長くなり、駆動信号が補正される時間が長くなる。補正される時間が長くなると、トルク制御性の低下度合いが大きくなることが懸念される。そこで、トルク制御性の低下を抑制すべく、電気角周波数ωeが低いほど、特定位相範囲を狭くする。
ステップS18では、極数が少ないほど、特定位相範囲を狭くする。具体的には例えば、極数が少ないほど、特定位相範囲の電気角軸上の長さを狭くする。極数が少ないほど、1機械角周期に占める1電気角周期が長くなり、駆動信号が補正される時間が長くなる。補正される時間が長くなると、トルク制御性の低下度合いが大きくなることが懸念される。そこで、トルク制御性の低下を抑制すべく、極数が少ないほど、特定位相範囲を狭くする。なお、ステップS18の処理の完了後、ステップS11に進む。
<第2実施形態の変形例>
図9のステップS18において、電気角周波数ωeに代えて、機械角周波数ωmが用いられてもよい。また、ステップS18において、電気角周波数ωeに基づく特定位相範囲の設定処理は必須ではない。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、キャリア信号Scに基づく駆動信号の生成方法に代えて、パルスパターンに基づく駆動信号の生成方法が用いられる。
図10に、本実施形態に係るトルク制御処理のブロック図を示す。なお、図10において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
トルク制御器70は、トルク指令値Trq*、d,q軸電流Idr,Iqr及び電源電圧検出値Vdcに基づいて、dq座標系における電圧ベクトルVnvtの位相である電圧位相δと、指令変調率Mrとを算出する。電圧ベクトルVnvtは、dq座標系における電圧ベクトルのd軸成分であるd軸電圧Vdとq軸成分であるq軸電圧Vqとによって定義される。電圧位相δは、例えば、d軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向が正方向として定義される。
指令変調率Mrは、電圧ベクトルVnvtの大きさである電圧振幅Vrを電源電圧検出値Vdcで規格化した値である。電圧振幅Vrは、d軸電圧Vdの2乗値とq軸電圧Vqの2乗値との和の平方根として定義される。指令変調率Mrは、例えば下式(eq2)により算出されればよい。
角度算出部71は、電圧位相δに電気角θeを加算した値として、固定座標系を基準とした電圧ベクトルVnvtの位相である実位相θrを算出する。なお、固定座標系の基準としては、例えば固定座標系のU相を用いることができる。
速度算出部72は、電気角θeに基づいて、回転電機10の電気角周波数ωeを算出する。
パターン生成部73は、電気角周波数ωe、指令変調率Mr及び実位相θrに基づいて、スイッチングパターンの指令値であるパルスパターンを生成する。パルスパターンは、電気角周波数ωe及び指令変調率Mrと関係付けられたマップ情報としてパターン記憶部74に記憶されている。パターン記憶部74は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。パターン生成部73は、電気角周波数ωe及び指令変調率Mrに基づいて、記憶されているパルスパターンの中から該当するパルスパターンを選択する。
パルスパターンは、例えば図11に示すように、電気角で0~360度に渡って規定されている。パルスパターンは、オン指令とオフ指令とのそれぞれが電気角θeと関係付けられたマップ情報である。ちなみに、パルスパターンは、指令変調率Mrに代えて、電圧振幅Vrと関係付けられていてもよい。
パターン生成部73は、入力される実位相θrに基づいて、選択したパルスパターンを信号生成部75に出力する。ここで、出力される各相のパルスパターンは、選択されたパルスパターンが電気角で120度ずつずらされた信号である。本実施形態では、各相のパルスパターンのうち、U相のものをU相PWM信号GU*と称し、V相のものをV相PWM信号GV*と称し、W相のものをW相PWM信号GW*と称す。
信号生成部75は、U,V,W相PWM信号GU*,GV*,GW*とその論理反転信号との論理反転タイミング同士をデッドタイムDTだけ離間させる処理を行うことにより、各スイッチSUH、SUL,SVH,SVL,SWH,SWLの駆動信号GUH,GUL,GVH,GVL,GWH,GWLを生成する。図12には、U相上,下アーム駆動信号GUH,GULの生成方法を示す。図12(a)はU相PWM信号GU*の推移を示し、図12(b)はU相PWM信号GU*の論理反転信号の推移を示し、図12(c),(d)はU相上,下アーム駆動信号GUH,GULの推移を示す。なお、パルスパターンには、矩形波制御を行うためのパルスパターンも含まれる。矩形波制御は、1電気角周期においてデッドタイムDTを挟みつつ上アームスイッチ及び下アームスイッチをそれぞれ1回ずつオン状態にするスイッチング制御である。また、本実施形態において、2相変換部51、トルク制御器70、角度算出部71、速度算出部72、パターン生成部73、パターン記憶部74及び信号生成部75が「制御部」に相当する。
パターン生成部73には、トルク指令値Trq*、気圧検出値Pr、温度検出値TDr及び電気角θeが入力される。本実施形態において、パターン生成部73は、サージ低減部として機能し、サージ低減処理を行う。図13に、パターン生成部73により実行されるサージ低減処理の手順を示す。この処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図13において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS14において否定判定した場合には、ステップS20に進み、電気角周波数ωe及び指令変調率Mrに基づいて、パターン記憶部74に記憶されているパルスパターンの中から該当するパルスパターンを選択する。そして、入力される実位相θrに基づいて、選択したパルスパターンを信号生成部75に出力する。
一方、ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS21に進み、電気角周波数ωe及び指令変調率Mrに基づいて、パターン記憶部74に記憶されているパルスパターンの中から該当するパルスパターンを選択する。ここでは、1電気角周期のうち電気角が特定位相範囲に含まれるにおいて、U,V,W相のうち互いに異なる2相間における駆動信号のオフ指令への切り替えタイミングの時間差Δtоffが第1所定時間以上となるようなパルスパターンを選択し、信号生成部75に出力する。
ステップS14において否定判定した場合には、ステップS20に進む。一方、ステップS14において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、電気角周波数ωe及び指令変調率Mrに基づいて、パターン記憶部74に記憶されているパルスパターンの中から該当するパルスパターンを選択する。ここでは、1電気角周期のうち電気角が特定位相範囲に含まれるにおいて、U,V,W相のうち互いに異なる2相間における駆動信号のオン指令への切り替えタイミングの時間差Δtоnが第2所定時間以上となるようなパルスパターンを選択し、信号生成部75に出力する。
なお、ステップS21又はS22で選択されるパルスパターンは、電気角周波数ωeが低かったり、極数が少なかったりするほど、特定位相範囲が狭くされたパルスパターンであってもよい。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第3実施形態の変形例>
オン指令への切り替えタイミング又はオフ指令への切り替えタイミングのいずれかに着目したサージ低減処理に限らず、双方に着目したサージ低減処理であってもよい。詳しくは、U,V,W相のいずれかのオン指令への切り替えタイミングと、U,V,W相のいずれかのオフ指令への切り替えタイミングとの時間差Δtが所定時間以上となるようなパルスパターンがパターン記憶部74に記憶されていてもよい。
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態等との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図14及び図15に示すように、マイコン50から各駆動回路Drに速度指令が入力されるようになっている。これに伴い、サージ低減処理として、スイッチング速度を低下させる処理が行われる。なお、図14及び図15において、先の図1及び図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図15に示すように、マイコン50は、速度指令部80を備えている。速度指令部80には、トルク指令値Trq*、気圧検出値Pr、温度検出値TDr及び電気角θeが入力される。速度指令部80は、サージ低減部として機能し、U相上,下アームの駆動回路Drに対してU相速度指令SPUを出力し、V相上,下アームの駆動回路Drに対してV相速度指令SPVを出力し、W相上,下アームの駆動回路Drに対してW相速度指令SPWを出力する。
続いて、図16を用いて、駆動回路Drについて説明する。なお、図16において、先の図3に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、図16には、便宜上、速度指令部80から駆動回路Drに入力される速度指令をSVにて示す。
駆動回路Drは、第1放電抵抗体63A、第1放電スイッチ64A、第2放電抵抗体63B及び第2放電スイッチ64Bを備えている。スイッチSWのゲートには、第1放電抵抗体63A及び第1放電スイッチ64Aを介して、スイッチSWのソースが接続されている。また、スイッチSWのゲートには、第2放電抵抗体63B及び第2放電スイッチ64Bを介して、スイッチSWのソースが接続されている。第1放電抵抗体63Aの抵抗値RAは、第2放電抵抗体63Bの抵抗値RBよりも大きい。
駆動部65は、取得した駆動信号GINがオフ指令である場合、放電処理を行う。本実施形態において、放電処理は、低速放電処理又は高速放電処理のいずれかである。駆動部65は、取得した速度指令SVが低速スイッチング指令である場合、低速放電処理を行う。低速放電処理は、充電スイッチ61及び第2放電スイッチ64Bをオフ状態にして、かつ、第1放電スイッチ64Aをオン状態にする処理である。低速放電処理によれば、スイッチSWのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、スイッチSWがオフ状態に切り替えられる。
駆動部65は、取得した速度指令SVが高速スイッチング指令である場合、高速放電処理を行う。高速放電処理は、充電スイッチ61及び第1放電スイッチ64Aをオフ状態にして、かつ、第2放電スイッチ64Bをオン状態にする処理である。高速放電処理によれば、低速放電処理よりもスイッチSWのゲート電荷の放電速度が高くなり、低速放電処理よりもスイッチSWをオフ状態に切り替える場合のスイッチング速度が高くなる。
図17に、速度指令部80により実行されるサージ低減処理の手順を示す。この処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図17において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS10、S11又はS12において否定判定した場合には、ステップS23に進み、U,V,W相速度指令SPU,SPV,SPWを高速スイッチング指令にして出力する。
一方、ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、U,V,W相のうち少なくとも2相の速度指令を低速スイッチング指令にして出力する。本実施形態では、U,V,W相のうち2相の速度指令を低速スイッチング指令にして出力し、残り1相の速度指令を高速スイッチング指令にして出力する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第4実施形態の変形例>
・図17のステップS24において、U,V,W相全ての速度指令を低速スイッチング指令にして出力してもよい。
・ステップS11において肯定判定した場合、第2実施形態の図9のステップS18の処理を経由してステップS12に進んでもよい。
・スイッチSWをオフ状態に切り替える場合のスイッチング速度に限らず、オン状態に切り替える場合のスイッチング速度を変更可能な駆動回路Drであってもよい。この場合、例えば、トルク指令値Trq*が低トルク閾値TrqthLよりも小さくて、かつ、電気角θeが特定位相範囲に含まれていると判定されたとき、U,V,W相のうち2相をオン状態に切り替える場合のスイッチング速度を低速度とし、残り1相をオン状態に切り替える場合のスイッチング速度を高速度にすればよい。
また、オン状態又はオフ状態のいずれかに限らず、オン状態及びオフ状態それぞれにおいてスイッチング速度を変更可能な駆動回路Drであってもよい。この場合、オン状態への切り替え及びオフ状態への切り替えそれぞれにおいて、スイッチング速度をステップS23よりも低下させればよい。
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、キャリア信号Scに基づく駆動信号の生成方法に代えて、パルスパターンに基づく駆動信号の生成方法が用いられる。
図18に、本実施形態に係るトルク制御処理のブロック図を示す。なお、図18において、先の図10及び図15に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
本実施形態において、速度指令部80は、図17に示した処理と同様の処理を行えばよい。
以上説明した本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、サージ低減処理として、スイッチング制御を停止させる処理が行われる。
図19に、本実施形態に係るトルク制御処理のブロック図を示す。なお、図19において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
マイコン50は、停止指令部81を備えている。停止指令部81には、トルク指令値Trq*、気圧検出値Pr、温度検出値TDr及び電気角θeが入力される。停止指令部81は、サージ低減部として機能し、サージ低減処理を行う。
図20に、停止指令部81により実行されるサージ低減処理の手順を示す。この処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図20において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS10、S11又はS12において否定判定した場合には、ステップS25に進み、U,V,W相のスイッチング制御を許可する。このため、信号生成部58により生成された駆動信号は、そのまま駆動回路Drに出力される。
一方、ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS26に進み、U,V,W相のスイッチング制御を停止させる。詳しくは、信号生成部58から各駆動回路Drに出力される各駆動信号GUH~GWLを強制的にオフ指令にする。これにより、電気角θeが特定位相範囲となる期間において、スイッチング制御が停止される。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第6実施形態の変形例>
図20のステップS26において、U,V,W相のうち、一部の相(例えば2相)の駆動信号を強制的にオフ指令にしてもよい。
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第6実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本実施形態では、キャリア信号Scに基づく駆動信号の生成方法に代えて、パルスパターンに基づく駆動信号の生成方法が用いられる。
図21に、本実施形態に係るトルク制御処理のブロック図を示す。なお、図21において、先の図10及び図19に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
本実施形態において、停止指令部81は、図20に示した処理と同様の処理を行えばよい。
以上説明した本実施形態によれば、第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・スイッチング速度の変更方法としては、スイッチSWのゲートに接続されたゲート抵抗体の抵抗値を変更する方法に限らない。例えば、スイッチSWのゲート電荷の放電先となるグランドの電位をスイッチSWのソース電位よりも低い電位に切り替え可能な構成を駆動回路Drが備える場合、グランドの電位を低下させることによりスイッチング速度を高くすることができる。
・キャリア信号としては、三角波信号に限らず、例えばのこぎり波信号であってもよい。
・インバータを構成するスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がコレクタとなり、低電位側端子がエミッタとなる。また、この場合、スイッチにフリーホイールダイオードが逆並列に接続されていればよい。
・インバータは、3相のものに限らない。
・回転電機としては、ロータに永久磁石を備えるものに限らず、例えば、ロータに、磁極として機能する界磁巻線を備えるものであってもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。