JP7109181B2 - リアクトル - Google Patents

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Description

本発明は、コアとコイルを備えるリアクトルに関する。
リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。例えば、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルとして、環状コアの周囲に配置した樹脂製のボビンに導線を巻き付けてコイルを形成した後、これらを金属製のケースに収容し、ケース内に充填材を流し込んで固めたものが多く用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
また、ボビンに導線を巻き付けてコイルを形成する他、リアクトルの製造方法としては、予め作製されたコイルを環状コアに装着する場合もある。例えば、U字型コアなどの分割された分割コアにコイルを嵌め込み、分割コアの端面同士を接着剤等で固定することで環状コアを構成し、リアクトルを作製する。
特開2011-124267号公報
従来から、コアとコイルとの絶縁は、両方の間に樹脂を介在させることで実現している。その方法の1つとして、コアとコイルを金型内に一緒に入れて固定し、その両方を同時に一体成型することが考えられる。しかし、コアとコイルの両方を、間隔を維持しつつ同時に一体成型することは難しい。すなわち、金型内でコアとコイルの両方を治具等で固定した上で、当該金型内に樹脂を注入しなければならないが、金型内部に樹脂を行き渡らせる必要があることから、樹脂の射出圧が非常に大きくなる。そのため、樹脂の射出圧でコア又はコイルが金型内で動いてしまい、コアとコイルが近づきすぎたり、接触したりするなど、両方の絶縁距離の確保が難しい。
そこで、コアを被覆する樹脂からなるボビンを別途作製し、ボビンによって覆われたコアと、コイルとを金型内に挿入及び固定し、樹脂モールドする方法が採用されていた。この方法によれば、樹脂の射出圧でコア又はコイルが金型内で動いても、ボビンが介在するので絶縁距離を確保することができる。
しかし、この方法によれば、ボビンを別途作製しておかなければならないなど製造工数が増大して生産性が悪化する。特に、コアが環状である場合、分割された分割コアにコイルをはめ込んだ後、分割コアに接着剤を塗布して分割コア同士を突き合わせ、更に当該接着剤を乾燥させて環状コアを構成する工程が必要となり、製造工数、製造時間、コストなどが増大し、生産性が悪化してしまっていた。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コアとコイルとの間の絶縁距離が確保されたリアクトルを提供することにある。
本発明のリアクトルは、接合面を有する複数のコア部材を有し、前記接合面同士が突き合わされて構成された環状のコアと、前記コアの周囲の一部に装着されたコイルと、前記コアと前記コイルの内外周を覆う樹脂部材と、を備え、前記コアは、前記接合面が間に位置し、前記接合面と平行な一対の平面と、前記一対の平面の周囲の角に丸み部と、を有し、前記樹脂部材は、前記コアの外周を覆うコア被覆部と、前記コイルの外周を覆うコイル被覆部と、前記コアと前記コイルの間の表面に設けられた注入痕と、を有し、前記コア被覆部には、前記一対の平面の少なくとも一部を露出させる開口部が設けられ、前記コイル被覆部には、前記注入痕が設けられた表面とは前記コイルを挟んだ反対側に凹部が設けられ、前記コア被覆部は、前記丸み部を覆う丸み被覆部を有し、前記注入痕は、前記丸み被覆部に設けられていることを特徴とする。
前記コア被覆部には、前記開口部が設けられた面以外の各面に凹部が設けられ、前記コイル被覆部には、前記凹部が設けられた面以外の各面に他の凹部が設けられていても良い。
前記コイル被覆部の前記凹部又は前記他の凹部の少なくとも1つは、底面が開口し、前記コイルが露出していても良い。
記コイルは、アルファ巻きコイルであっても良い。前記コアは、表面に被膜を有しても良く、また、前記被膜は、絶縁性を有していても良い。
本発明によれば、コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コアとコイルとの間の絶縁距離が確保されたリアクトルを得ることができる。
実施形態に係るリアクトルの上面側斜視図である。 実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。 実施形態に係るリアクトルの下面側斜視図である。 実施形態に係るリアクトルの上面図である。 実施形態に係るリアクトルの右側面図である。 実施形態に係るリアクトルの下面図である。 図4のA-A断面図である。 図5のB-B断面図である。 実施形態に係るリアクトルの製造方法を説明するための図である。 コア及びコイルの位置規制を説明するリアクトル本体の上面図である。 コア及びコイルの固定及び位置規制を説明するリアクトル本体の右側面図である。 実施形態の変形例に係るリアクトルを説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るリアクトルについて説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等で使用される車載用リアクトルである。
図1は、本実施形態に係るリアクトルの上面側斜視図である。図2は、本実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。図3は、本実施形態に係るリアクトルの下面側斜視図である。図4は、本実施形態に係るリアクトルの上面図である。図5は、本実施形態に係るリアクトルの右側面図である。図6は、本実施形態に係るリアクトルの下面図である。図7は、図4のA-A断面図である。図8は、図5のB-B断面図である。なお、本リアクトルの左側面図は、右側面図と対称に表れるため省略する。
本明細書において、図面に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」とも称する。z軸方向を高さ方向と称する場合もある。また、図1に示すy軸方向負側を正面側とし、その反対側を背面側とする。正面側は前方、背面側は後方と称する場合もある。「上」、「下」、「正面側」、「背面側」、「前方」、「後方」とは、リアクトルの各構成の位置関係をいうものであり、リアクトルが設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。
図1及び図2に示すように、本リアクトルは、コア1と、コイル5と、樹脂部材2とを備える。
コア1は、コイル5が装着される一対の脚部1aと、脚部1aの端部間を繋ぐ一対のヨーク部1bとを有し、圧粉磁心、フェライト磁心又は積層鋼板などの磁性体により環状に構成されている。コア1は、その内部がコイル5により発生した磁束の通り路となって磁気回路を形成する。一対の脚部1aは互いに平行であり、また一対のヨーク部1bも互いに平行である。
図2に示すように、具体的には、コア1は、接合面12を有する複数(ここでは2つ)のコア部材11を有し、接合面12同士が突き合わされて環状に構成されている。ここでは、コア部材11は、角が丸みを帯びたU字型コア11a、11bであり、圧粉磁心で構成されている。U字型コア11a、11bは、一対の脚Aと脚Aの一端同士を繋ぐ連結部Bとから構成され、全体としてU字型形状を成している。U字型コア11aは、連結部Bが上になるように脚Aを下に向けて配置され、U字型コア11bは、連結部Bが下になるように脚Aが上に向けて配置されている。U字型コア11aがその脚Aを2つのU字型コア11a、11bの脚Aが接合面12で突き合わされて脚部1aを構成する。各U字型コア11a、11bの連結部Bがヨーク部1bを構成する。ヨーク部1bは、コイル5が装着されていないコア1の部位である。
コア1は、一対の平面を有する。ここでは、当該平面は、コア1の上面1c及び下面1dである(図2、図3参照。)。上面1c及び下面1dは、U字型コア11a、11bの連結部の最外面であり、接合面12と平行であり、上面1cと下面1dの間に接合面12が位置する。また、コア1には、上面1c及び下面1dの周囲の角に丸み部1eが設けられている。
本実施形態では、コア1の表面には、不図示の被膜が設けられている。この被膜は、ここでは絶縁性を有する。被膜は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルなどから構成することができる。なお、本明細書では、環状の磁性体がコア1に含まれる他、被覆が設けられた環状の磁性体もコア1に含まれるものとする。すなわち、「コア1の表面」には、環状の磁性体の表面をいう場合と、環状の磁性体の表面に設けた被膜の表面を言う場合とが含まれる。例えば、コア1の表面には、上面1c、下面1d、上面1c上の被膜、下面1d上の被膜が含まれる。
コイル5は、絶縁被覆を有する1本の導線が巻回されてなり、コア1の周囲の一部に装着されている。ここでは、コイル5は、巻軸をz軸に平行にして脚部1aに樹脂部材2を介して装着されている。
本実施形態のコイル5は、平角線で構成されたアルファ巻きコイルである。すなわち、コイル5は、巻軸をz軸に平行にして脚部1aに樹脂部材2を介して装着されており、外側に順次平角線が巻回されており、高さ方向は平角線の幅約2本分である。なお、コイル5の線材や巻き方は平角線のアルファ巻きコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
コイル5は、その端部51a、51bがリアクトル外部に引き出され、外部電源などの外部機器の配線と接続される。外部電源から電力供給されると、コイル5に電流が流れてコイル5を突き抜ける磁束が発生し、コア1内に環状の閉じた磁気回路が形成される。
樹脂部材2は、コア1とコイル5の内外周を覆う樹脂からなる部材である。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等を用いることができる。
具体的には、図1、図7及び図8に示すように、樹脂部材2は、内部に位置する介在部20と、外部に位置するコア被覆部21、コイル被覆部22及び注入痕23とを有する。
介在部20は、図7及び図8に示すように、コア1とコイル5との間に介在し、両方の絶縁を図る。コア被覆部21は、図1及び図7、図8に示すように、コア1の外周を覆う。コア被覆部21は、丸み部1eを覆う丸み被覆部210を有する概略6面体である。符合21a~21fは、コア被覆部21の正面、背面、右側面、左側面、上面、下面である。但し、コア被覆部21は、後述するように、右側面21c、正面21a及び左側面21dの中央部にコイル被覆部22が設けられていることから、当該3面の中央部は存在せず、右側面21c及び左側面21dは概略U字形状であり、正面21aは上下に分断された概略長方形状である。丸み被覆部210は、図7に示すように、正面21aと上面21e及び下面21fの各角、背面21bと上面21e及び下面21fの各角の合計4箇所に設けられており、それぞれ接合面12を介して対向している。
コイル被覆部22は、コイル5の外周を覆う。すなわち、図1に示すように、コイル被覆部22は、脚部1aに装着されたコイル5が、コア1の外部に出た部分を覆っており、コア被覆部21の正面21a、右側面21c及び左側面21dから膨出して設けられている。そのため、コイル被覆部22は、コア被覆部21の右側面21c、正面21a、左側面21dの3面に亘って各面の中央部に設けられている。具体的には、図4~図6に示すように、コイル被覆部22は、上面22e、下面22fがU字形状であり、図1、図3及び図5に示すように、正面22a、右側側面22c及び左側側面22dが概略長方形状であり、背面側に右側面21c、左側面21dに向かって湾曲した湾曲面22gが設けられている。正面22aからは、コイル5の両端部51a、51bが突出し露出している。
注入痕23は、樹脂部材2を構成するために金型内に樹脂が注入され、当該樹脂が固化した際に形成された痕であり、凹凸などによりなる。例えば、注入痕23は、凹みの中に凸部が設けられてなる。また、注入痕23は、凹凸などが研磨された痕であっても良い。
注入痕23は、コア1とコイル5の間の樹脂部材2の表面に設けられている。本実施形態では、図1及び図7に示すように、コア1とコイル5の間の樹脂部材2の表面としては、上面21aと正面21aとの角の丸み被覆部210が含まれており、当該丸み被覆部210に注入痕23が設けられている。この丸み被覆部210に注入痕23が1つ設けられていても良いし、間隔を空けて複数設けられていても良い。
コア被覆部21には、開口部211と、凹部212とが設けられている。図1及び図3に示すように、開口部211は、上面21e及び下部21fにそれぞれ設けられ、コア1の上面1c及び下面1dの少なくとも一部を露出させる。開口部211は、ここでは矩形状である。
凹部212は、図1、図3~図6に示すように、開口部211が設けられた面以外の各面に設けられている。すなわち、コイル被覆部22を挟んだ上部と下部のコア被覆部21の正面21aには、上下方向に延びる平行な凹部212aが設けられている。コア被覆部21の右側面21c及び左側面21dには、コイル被覆部22を挟んだ上部と下部に、矩形状の凹部212bが設けられている。コア被覆部21の背面21bには、上下方向に延びる平行な凹部212cが設けられている。
また、コイル被覆部22には、各面に凹部221が設けられている。まず、図3及び図6に示すように、注入痕23が設けられた表面とはコイル5を挟んだ反対側の面である下面22fには、複数(ここでは4つ)の凹部221Aが設けられており、ここではこの凹部221Aの底面が開口し、この開口からコイル5が露出している。説明の都合上、正面21a側に設けられた凹部221Aを凹部221αとし、右側面21c、左側面21d側に設けられた凹部221Aを凹部221βとする。凹部221αは、正面側から背面側に延びた平行な凹みであり、一端が正面22aの後述の凹部221Cに繋がり、他端がコア被覆部21の正面21aの下部に設けられた凹部212aと繋がっている。凹部221βは、右側面21c、左側面21dとの縁に設けられ、各面21c、21dの下部の凹部212bと繋がっている。
また、凹部221Aが設けられた下面22f以外の面、すなわち右側面22c、左側面22d、正面22a、上面22eには、凹部221B、221C、221Dが設けられている。凹部221Bは、右側面22c及び左側面22dに、上下方向に延びて設けられている。凹部221Cは、正面22aに上下方向に平行に延びて設けられている。図4に示すように、凹部221Dは、上面22eに複数(ここでは4つ)設けられている。説明の都合上、正面22a側に設けられた凹部221Dを凹部221γとし、右側面21c、左側面21d側に設けられた凹部221Dを凹部221δとする。凹部221γは、正面側から背面側に延びた平行な凹みであり、一端が正面22aの凹部221Cに繋がり、他端がコア被覆部21の正面21aの上部に設けられた凹部212aと繋がっている。凹部221δは、右側面21c、左側面21dとの縁に設けられ、各面21c、21dの上部の凹部212bと繋がっている。
上記のように、凹部212a、221γ、221C、221αは一続きに繋がっており、全体としてΩ形状を成している。
[1-2.製造方法]
本リアクトルの製造方法について、図9~図11を用いて説明する。本リアクトルは、金型を用いて作製する。但し、図9~図11に金型は図示していない。
本リアクトルの製造方法は、コア1及びコイル5を金型内に挿入し、固定する挿入・固定工程と、金型内に樹脂を注入し充填する充填工程と、当該樹脂を固化させる固化工程とを有する。金型は、上下に分割されており、上型と下型とで構成することができる。例えば、コイル5の端部51bを含めた下側を下型とし、端部51bより上側を上型とすることができる。
(1)挿入・固定工程
図9に示すように、一方のU字型コア11a、11bの脚にコイル5を嵌め込み、他方のU字型コア11b、11aと接合面12同士を突き合わせた状態で、下型にセットし、上型を被せるようにして金型内にセットする。
このとき、図11の白塗り矢印で示すように、コア1は、金型内の突起又は治具によって上面1c、下面1dから上下に挟み込まれることにより、金型内で固定されるとともに、コア1の上下方向の大きさのバラツキを抑えることができる。金型内の突起又は治具の形状、大きさは、開口部211の形状、大きさに対応する。
また、コイル5は、その両端部51a、51bが下型内に設けられた2つの穴にそれぞれ挿入される。この穴の奥行き(深さ)は、ここではコイル5の端部51a、51bの長さより長くなっている。そのため、当該穴に端部51a、51bの全部を挿入しても、端部51a、51bの先端が穴の底に達しない。また、この穴の大きさは、コイル5の導線の断面の大きさと同じか、若干小さくなっており、圧入することで両端部51a、51bが当該穴に差し込まれる。これにより、コイル5の金型内で大まかな位置が固定される。すなわち、図9~図11に示すように、コイル5の巻回部がコア1の脚部11aの周囲から浮いた状態となる。但し、コイル5を下型にセットした際、下型内壁から上方に突出した突起によって下面からコイル5が支持される。
(2)充填工程
コア1とコイル5を固定した状態で、樹脂を金型内に充填する。金型内に充填するための貫通孔であるゲートの位置は、ここでは、図11の点線矢印で示すように、コア1の上面1cと正面との境界に設けられた丸み部1eの上方に設けられている。また、このゲートの位置は、図10の点線丸印で示すように、平面視すると、コア1とコイル5の間である。そのため、ゲートを介して樹脂の注入が開始されると、金型内で樹脂が下方に向かって進行するとともに、前後左右に充填される。このとき、樹脂の射出圧が非常に大きいため、その圧力でコイル5が下方に押しつけられ、図11の黒塗り矢印(図中下側)で示すように、下型の底面から上方に突出した突起によって、凹部221Aに対応する4箇所でコイル5の下面が支持される。すなわち、コイル5は上方からは樹脂の射出圧で、下方からは下型底面の突起で上下方向に固定される。
また、ゲート位置がコア1とコイル5との間であるので、コア1とコイル5の間に樹脂が入り込む。その結果、樹脂の射出圧でコア1とコイル5が前後左右に煽られる場合がある。そのような場合であっても、上型及び下型の内壁には、コア1の左右の側面及び正面、背面において、凹部212a~212cに対応する位置に突起が設けられており、図10の白塗り矢印で示すように、上型及び下型の突起によって左右の側面及び正面、背面の位置が規制される。すなわち、これらの突起は、コア1の左右の側面及び正面、背面から若干の隙間を空けて設けられており、樹脂の射出圧によってコア1が動いたとしても、これらの何れかの突起で押さえられるため、コア1が過度に移動するのを防止する。
さらに、上型及び下型の内壁には、凹部221B~221Dに対応する位置にも突起が設けられており、当該突起によって、図10、図11の黒塗り矢印で示すように、コイル5の左右の側面及び正面、上面の位置が規制される。すなわち、これらの突起は、コイル5の左右の側面及び正面、上面から若干の隙間を空けて設けられており、樹脂の射出圧によってコイル5が動いたとしても、これらの何れかの突起で押さえられるため、過度に移動するのを防止する。
このように、固定される面以外の面で突起が設けられているため、コア1とコイル5との絶縁に必要な物理的な距離を保つことができる。
また、コイル5の端部51a、51bの周囲は、上記穴の内壁面と密着しており、樹脂が当該穴に入り込む余地はない。
(3)固化工程
上記のように樹脂が金型内に充填されると、コア1及びコイル5の内外周が樹脂で覆われ、樹脂部材2が形成される。このように樹脂の充填により樹脂部材2が形成されるので、介在部20、コア被覆部21、及びコイル被覆部22は、同じ樹脂で一続きに継ぎ目なく構成されている。すなわち、コア1とコイル5との間に充填された樹脂が固化して介在部20となり、コア1の外周を覆う樹脂が固化してコア被覆部21となり、コイル5の外周を覆う樹脂が固化してコイル被覆部22となる。介在部20を設けるために、コア1とコイル5の間に樹脂を充填するよう設けたゲート位置が、注入痕23として形成される。
ここで、樹脂は例えば280℃の高温に加熱されており、冷却され固化することで樹脂部材2が形成される。この冷却の際、樹脂部材2が熱収縮を引き起こす。すなわち、コア1及びコイル5の内外周が樹脂部材2で覆われているので、リアクトルの中心に向かって熱収縮が起き、接合面12同士が突き合わされる方向にも力が働く。特に本実施形態では、接合面12と平行なコア1の上面1c及び下面1dの縁を覆う丸み被覆部210が設けられ、接合面12を挟んで上下方向に丸み被覆部210が対向しているので、U字型コア11a、11bの連結部Bが近づくように押圧され、接合面12同士の突き合わせをより強固にすることができる(図7参照)。このように、本実施形態によれば、コア部材11同士の接着作業を不要にすることができる。
樹脂部材2が冷却された後、金型内から作製されたリアクトルを取り出す。上記のように、金型内の突起又は治具でコア1及びコイル5を固定又は位置規制するので、樹脂部材2には、開口部211及び各凹部212a~212c、221A~221Dが形成され、ゲートの位置に対応して注入痕23が形成される。なお、本実施形態では、凹部212Aに対応する箇所に金型内の突起が当接するため、凹部212Aの底面に開口が形成される。一方、凹部212a~212cに対応する金型内の突起とコア1とは隙間が維持され、また、凹部221B~221Dに対応する金型内の突起とコイル5とは隙間が維持されている。そのため、これらの隙間に樹脂が入り込み、凹部212a~212c、221B~221Dの底面は開口しておらず、コア1又はコイル5を被覆している。
また、コイル5の端部51a、51bは露出している。以上の工程を経ることで、本リアクトルを作製することができる。
(変形例1)
ここでは、凹部221Aは開口しているが、コイル5の寸法バラツキにより、バリが生じ得るため、必ずしも開口していなくても良い。また、本実施形態では、凹部221A以外の凹部212a~212c、221B~221Dでは底面が開口していないが、何れかの凹部212a~212c、221B~221Dの底面が開口し、コア1又はコイル5が露出していても良い。当該開口は、例えばコア1若しくはコイル5の樹脂圧による移動、又は、コア1若しくはコイル5の寸法バラツキを要因として形成される。また、何れかの凹部212a~212c、221B~221Dの底面にバリが生じていても良い。
(変形例2)
本実施形態では、図12に示すように、ゲート位置を領域R1に設けたが、コア1とコイル5との間に対応する位置であれば、領域R1に代えて、領域R2又は領域R3に1つ又は複数のゲートを設けても良い。領域R2は、コア1の正面側右側面、正面、正面側左側面と続くU字状の領域である。領域R3は、コイル5の背面側上面から背面、背面側底面と続くU字状の領域である。領域R2、R3ともにゲートの数は特に限定されず、その位置も各領域R2,R3の中であれば特に限定されない。図12に示すように、領域R2の場合は、ゲートを介して樹脂を上から下に流し込む。領域R3の場合は、ゲートを介して樹脂を右から左に流し込む。
例えば、領域R2にゲートにおいて樹脂を上から下に流すと、樹脂がコア1とコイル5との間に入り込み、前後方向に流れる。そうすると、コア1が後方(背面側)に樹脂圧を受けるとともに、コイル5が前方(正面側)に樹脂圧を受けるため、コイル5が正面側に移動して金型内の正面側の突起に当接し、前後方向に固定される。そのため、正面側に設けられた凹部221Cの底面が開口する。但し、コイル5の寸法バラツキにより必ずしも開口していなくても良く、凹部221Cの底面がコイル5を完全に覆っていても良いし、バリが生じていても良い。
なお、領域R2又は領域R3にゲート位置を設ける場合も、同様にゲート位置に対応して注入痕23が形成される。
[1-3.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトルは、接合面12を有する複数のコア部材11を有し、接合面同士が突き合わされて構成された環状のコア1と、コア1の周囲の一部に装着されたコイル5と、コア1とコイル5の内外周を覆う樹脂部材2と、を備え、コア1は、接合面12が間に位置し、接合面12と平行な一対の平面1c、1dを有し、樹脂部材2は、コア1の外周を覆うコア被覆部21と、コイル5の外周を覆うコイル被覆部22と、コア1とコイル5の間の表面に設けられた注入痕23と、を有し、コア被覆部21には、一対の平面1c、1dの少なくとも一部を露出させる開口部211が設けられ、コイル被覆部22には、注入痕23が設けられた表面とはコイル5を挟んだ反対側に凹部221Aを設けるようにした。
これにより、コア部材11の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コア1とコイル5との間の絶縁距離が確保されたリアクトルを得ることができる。
すなわち、樹脂部材2によりコア1とコイル5の内外周が覆われているので、樹脂部材2を形成する際の樹脂部材2の熱収縮によって接合面12同士が突き合わされるため、接合面12に接着剤を塗布したり、その乾燥時間を設けたりする必要がない。また、ボビンを別途作製する必要もない。そのため、生産性を向上させることができる。
また、樹脂部材2(介在部20)がコア1とコイル5の間に介在しているのでコア1とコイル5の絶縁距離を確保することができる。その上、開口部211、注入痕23及び凹部221Aを設けたことで、樹脂部材2を成型するための金型内でのコア1の位置を固定するとともに、当該金型内でのコイル5の位置を規制することができる。すなわち、コア1の一対の上面1c及び下面1dを金型内壁の突起又は治具によって押さえることができ、コア1を上下方向に固定することができる。一方、注入痕23が、金型内に樹脂部材2を形成する樹脂を注入した際に形成される痕跡であるから、コイル5は注入痕23が形成された方から樹脂の射出圧で押圧される。これに対し、注入痕23が設けられた面とは反対側に凹部221Aが設けられているので、この凹部221Aを金型内壁の突起又は治具によって押さえることができ、コイル5が樹脂の射出圧と突起又は治具によって位置を規制することができる。このように、樹脂の射出圧で移動しようとするコア1、コイル5を外側から金型内の突起又は治具で押さえる製造方法を採用することができ、コア1とコイル5の絶縁距離が確保されたリアクトルを得ることができる。
特に、本実施形態では、注入痕23がコイル被覆部22上方のコア被覆部21の表面に設けられ、注入痕23が設けられた面とはコイル5を挟んだ反対側に凹部221Aを設け、その底面に、コイル5を露出させる開口を設けたことで、コイル5を上下方向から固定することができ、コア1とコイル5の絶縁距離をより正確に確保することができる。
(2)コア被覆部21には、開口部211が設けられた面21e、21f以外の各面21a~21dに凹部212a~212cを設け、コイル被覆部22には、凹部221Aが設けられた面21f以外の各面22a、22c~22eに他の凹部221B~221Dを設けるようにした。例えば、コイル被覆部22の凹部221A又は他の凹部221B~221Dの少なくとも1つは、底面が開口し、コイル5が露出するようにした。
この構造によれば、樹脂部材2の成型時に樹脂の射出圧によりコア1又はコイル5が移動してしまったとしても、凹部212a~212c、221B~221Dの部分で金型内壁の突起でコア1又はコイル5の位置を規制するリアクトルの製造方法を採用することができ、コア1とコイル5の距離が最小限必要な絶縁距離より縮小されるのを防止することができる。また、注入痕23がどの面に設けられても、コア1又はコイル5の位置規制に対応することができる。
(3)コア1は、一対の平面1c、1dの周囲の角に丸み部1eが設けられ、コア被覆部22は、丸み部1eを覆う丸み被覆部210を有するようにした。これにより、接合面12同士の突き合わせをより強固にすることができる。
(4)コイル5は、アルファ巻きコイルとした。これにより、コイル位置のバラツキが小さく、小型化したリアクトルを得ることができる。例えば、コイル5をエッジワイズコイルとした場合、本実施形態と同様に巻軸を上下方向とすると、巻数に比例して上下方向に大きさが大きくなる。言い換えれば、巻線が上下方向に積み上がっていくため、上下方向にバラツキが大きくなる。そのため、コア1とコイル5の絶縁距離を確保しようとすると、そのバラツキを考慮してコア1とコイル5の位置を決めなければならず、大型化してしまう。これに対し、アルファ巻きのコイルは、例えば巻軸を上下方向とすると、巻数が増大しても2層のままで上下方向の大きさは一定であるので、巻数に比例してバラツキが大きくなることはない。そのため、コイル位置のバラツキが小さく、小型化したリアクトルを得ることができる。
コア1は、表面に被膜を有するようにした。これにより、開口部211が設けられても、コア1の表面に錆が生じるのを防止することができる。被膜が絶縁性を有することで、コア1と他の部品との絶縁を図ることができる。特に、開口部211から露出した部分と、他の部品との絶縁を図ることができる。
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態の少なくともいずれか2つを組み合わせた形態も包含する。
例えば、上記実施形態では、コア部材11をU字型コア11a、11bとしたが、これに限定されず、環状のコア1を構成できれば、I字型コア、E字型コア、T字型コア、C字型コア、J字型コアとしても良く、また、いずれのコア部材11の組み合わせを用いても良い。
上記実施形態では、コイル5をアルファ巻きコイルとしたが、エッジワイズコイルとしても良い。
1 コア
1a 脚部
1b ヨーク部
1c 上面
1d 下面
1e 丸み部
11 コア部材
11a、11b U字型コア
A 脚
B 連結部
12 接合面
2 樹脂部材
20 介在部
21 コア被覆部
21a コア被覆部の正面
21b コア被覆部の背面
21c コア被覆部の右側面
21d コア被覆部の左側面
21e コア被覆部の上面
21f コア被覆部の下面
210 丸み被覆部
211 開口部
212 凹部
212a コア被覆部の正面の凹部
212b コア被覆部の左右側面の凹部
212c コア被覆部の背面の凹部
22 コイル被覆部
22a コイル被覆部の正面
22c コイル被覆部の右側面
22d コイル被覆部の左側面
22e コイル被覆部の上面
22f コイル被覆部の下面
22g コイル被覆部の湾曲面
221 凹部
221A コイル被覆部の底面の凹部
221B コイル被覆部の左右側面の凹部
221C コイル被覆部の正面の凹部
221D コイル被覆部の上面の凹部
5 コイル
51a、51b 端部

Claims (6)

  1. 接合面を有する複数のコア部材を有し、前記接合面同士が突き合わされて構成された環状のコアと、
    前記コアの周囲の一部に装着されたコイルと、
    前記コアと前記コイルの内外周を覆う樹脂部材と、
    を備え、
    前記コアは、
    前記接合面が間に位置し、前記接合面と平行な一対の平面と、
    前記一対の平面の周囲の角に丸み部と、
    を有し、
    前記樹脂部材は、
    前記コアの外周を覆うコア被覆部と、
    前記コイルの外周を覆うコイル被覆部と、
    前記コアと前記コイルの間の表面に設けられた注入痕と、
    を有し、
    前記コア被覆部には、前記一対の平面の少なくとも一部を露出させる開口部が設けられ、
    前記コイル被覆部には、前記注入痕が設けられた表面とは前記コイルを挟んだ反対側に凹部が設けられ
    前記コア被覆部は、前記丸み部を覆う丸み被覆部を有し、
    前記注入痕は、前記丸み被覆部に設けられていること、
    を特徴とするリアクトル。
  2. 前記コア被覆部には、前記開口部が設けられた面以外の各面に凹部が設けられ、
    前記コイル被覆部には、前記凹部が設けられた面以外の各面に他の凹部が設けられていること、
    を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
  3. 前記コイル被覆部の前記凹部又は前記他の凹部の少なくとも1つは、底面が開口し、前記コイルが露出していること、
    を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
  4. 前記コイルは、アルファ巻きコイルであること、
    を特徴とする請求項1~の何れかに記載のリアクトル。
  5. 前記コアは、表面に被膜を有すること、
    を特徴とする請求項1~の何れかに記載のリアクトル。
  6. 前記被膜は、絶縁性を有すること、
    を特徴とする請求項記載のリアクトル。
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