JP7103518B2 - 組合せ用油性食品素材およびその製造方法 - Google Patents

組合せ用油性食品素材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、他の食品、特に冷菓との組み合わせ用の油中水型含水チョコレート類の製造法に関する。
従来技術として含水チョコレートと呼ばれるチョコレート様食品のカテゴリーがある。
生クリームなどの乳化物を配合した生チョコレートと呼ばれるものもその1つである。水性成分を含有する事でみずみずしい食感が楽しめる為、市場で人気のある商品である。
そういった含水チョコレートは、それ単独での喫食もさることながら、他の食品、例えばパンやケーキ、菓子類、冷菓などと組み合わせて用いることも多い。他の食品も単独で喫食するよりも製品としてのバラエティーが増え、市場からの要求も大きいものである。
その中でも、冷菓との組み合わせを主の目的とするアイスコーティングチョコレートに含水チョコレートを用いる場合は、氷結晶の発生などに伴い、含水物特有の柔らかな食感を失われたり、作業性が無水物のアイスコーティングチョコレートを用いた場合より悪化したりしかねない。また、長期の保存性が必要な製品の場合は、流通させるに際して殺菌工程が必要であり、これも無水物のアイスコーティングチョコレートを用いた場合に比べ、乳固形分の凝集、そしてそれに伴う粘度上昇や食感の悪化などが生じ易くなり、その難易度が高い。
例えば、従来技術としては、ココア及び又はカカオマスと砂糖、油脂を主成分とし、これらを常法により均一に混合するアイスコーティング用チョコレートの製造法において、上記主成分と液糖とを乳化剤を用いて乳化することを特徴とするアイスコーティング用チョコレートの製造法が開示されており、口触けが良く、かつコーティング後の乾き時間の早いこと、およびヒビ割れ(クラッキング)を生じないこと、水分の混入によるチョコレート自体の「ボテ」(可塑化)現象が生じ難いこと等である(引用文献1)。
また、常法通りロール掛けコンチング処理したチョコレート生地と水性成分とを、主要な結合脂肪酸が炭素原子数20~26である低HLBの蔗糖脂肪酸エステルの存在下に混合して、油中水型に乳化することを特徴とする含水チョコレート類の製造法が開示されており、従来のガナッシュに比べ極めて乳化状態が安定で且つ冷菓等へのコーティング用に極めて有利に使用し得るとある(引用文献2)。
しかしながら、これらの発明で要求される品質は冷菓との組み合わせには対応できるものの、粘度上昇や殺菌工程への対応がまだ不十分である。
また、水に対する溶解性が砂糖よりも高い糖類、HLB値が3以下で主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20~26の蔗糖脂肪酸エステル及び油脂類を含有するチョコレートベースと、水性成分とを混合し、油中水型に乳化することを特徴とする含水チョコレートの製造法が開示されており、その効果として、水分を添加しても固形分の凝集によるザラツキや粘度上昇がなく、作業性が良好で、かつ風味の良好な含水チョコレートを製造できるとされている(引用文献3)。他にもチョコレート生地と水性成分とを混合して油中水型の含水チョコレート類を製造するに際し、リン脂質含量が60重量%以上であって、かつ全リン脂質中のホスファチジルコリン含量が50重量%以上である分画レシチンを含水チョコレート全量に対して0.05重量%~5.0重量%添加することで、固形分の凝集によるザラツキや粘度上昇がなく、作業性が良好で、かつ風味の良好なチョコレートが得られるという効果のある油中水型の含水チョコレート類の製法が開示されている(引用文献4)。
しかし、ざらつきの抑制といった物性に対する効果に付いての記載はあるが、冷菓においてその効果は十分でない。
さらには、チョコレート生地と水性成分とを混合して油中水型の含水チョコレート類を製造するに際し、HLB値が3以下で主要構成脂肪酸の炭素原子数が16個~18個の蔗糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレートをチョコレート生地に対して各々0.05重量%~5.0重量%の範囲内で使用することで、水分含有成分を何ら加工する事なく、そのままチョコレート生地に添加する事ができ、通常のチョコレートと同様の物性で乳化の安定が良く、風味の良好な油中水型の含水チョコレート類を容易に製造する方法が開示されている(引用文献5)。
しかしこの発明は汎用的な油中水型乳化物にポリグリセリン縮合リシノレートを添加することは示されているものの、冷菓への組み合わせ用途や冷菓独特の塗布用途への適性については特に示唆されていない。
このように、それぞれの課題の解決には一定の効果があったのかもしれないが、本発明における冷菓との組み合わせにおいて、含水物特有の柔らかな食感を維持したまま、十分な殺菌工程など物性への悪影響に対して十分な効果があるものは未だ見出されていない。
特開昭51-106763号公報 特開昭59-71643号公報 特開平6-245704号公報 特開平8-70776号公報 特開平11-243860号公報
本発明は、他の食品との組み合わせ用の油中水型含水チョコレート類の製造法に関し、特に冷菓と組み合わせるに際して、含水物特有の柔らかな食感を有しながらも、作業性が無水物を用いた場合と同程度であり、流通時に必須の殺菌を経ても物性が変わらない含水チョコレート類を製造する方法を提供する事を目的とするものである。
さらに、氷菓及びその他の冷菓に全面コーティングした際に、ひび割れしがたいチョコレート類の提供も同時に可能とする。
本発明者は上記課題を解決すべく種々検討を行い、無脂カカオ固形分が8.5~25重量%、pH6.8以下のカカオマスとココアの合計が10~40重量%であり、油脂含有量が30~55重量%、水含有量が5~26重量%、レシチンもしくはポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%を含む、油中水型乳化物である冷菓組合せ用油性食品素材とすることで、上記する課題を解決し得るという知見を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 無脂カカオ固形分が8.5~25重量%、pH6.8以下のカカオマスとココアの合計が10~40重量%であり、油脂含有量が30~55重量%、水含有量が5~26重量%、レシチン及び/又はポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%を含む、油中水型乳化物である、組合せ用油性食品素材。
(2) 粘度が100~3000cP(BM型粘度計2号または3号30回転/40℃測定)の(1)記載の組合せ用油性食品素材。
(3) pHが4.5~6.2であり、無脂乳固形分が7.5重量%以下であり、冷菓組合せ用である(1)ないし(2)のいずれか1項に記載の組合せ用油性食品素材。
(4) 乳化後に68℃以上で30分以上の殺菌工程がある(1)ないし(3)記載の冷菓組合せ用油性食品素材の製造方法。
(5) (4)記載の冷菓組合せ用油性食品素材を冷菓と組み合わせてなる冷菓組合せ食品の製造方法である。
また換言すれば、
(1) 無脂カカオ固形分が8.5~25重量%、pH6.8以下のカカオマスとココアの合計が10~40重量%であり、油脂含有量が30~55重量%、水含有量が5~25重量%、レシチン及び/又はポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%を含む、油中水型乳化物である、組合せ用油性食品素材。
(2) 粘度が100~2000cP(BM型粘度計2号または3号30回転/40℃測定)の(1)記載の組合せ用油性食品素材。
(3) pHが4.5~6.0であり、無脂乳固形分が7.5重量%以下であり、冷菓組合せ用である(1)ないし(2)のいずれか1項に記載の組合せ用油性食品素材。
(4) 乳化後に68℃以上で30分以上の殺菌工程がある(1)ないし(3)記載の冷菓組合せ用油性食品素材の製造方法。
(5) (4)記載の冷菓組合せ用油性食品素材を冷菓と組み合わせてなる冷菓組合せ食品の製造方法である。
本発明により、他の食品、特に冷菓との組み合わせ用の油中水型含水チョコレート類において、含水物特有の柔らかな食感を有しながらも、作業性が無水物を用いた場合と同程度であり、流通時に必須の殺菌を経ても物性が変わらない含水チョコレート類を提供することができる。
さらに、氷菓及びその他の冷菓の全面にひび割れすることなくコーティングできる、新しい形態の冷菓が実現する。
以下、本発明を具体的に説明する。
(組合せ用油性食品素材)
本発明において、組合せ用油性食品素材とは他の食品と組み合わせて用いる事を特徴とする油性食品素材である。
ここでいう組合せとは、特に限定はされないが塗布または練り込みなどが挙げられる。
他の食品とは、食品であれば特に限定はされないが、一例としてはドーナツやパン、あるいはパイ、シューケース などのベーカリー生地とその焼成物、ビスケットやクッキー、プレッツエルといった菓子類、麦や米などの穀物を加熱加圧後に急激な減圧処理を施して膨化させた、所謂「ポン菓子」、芋類などをスライスしたものをフライしたポテトチップス、又は芋類を含む穀粉や澱粉類を整形してフライした(成形)ポテトスナック、卵白含気泡物を盗塁などと焼成したマシュマロやメレンゲ、冷菓などが挙げられる。これら他の食品と上記組合せ方法を採ることに限定的に用いられる食品素材を組合せ用油性食品素材と称する。
(冷菓組合せ用油性食品素材)
本発明において、冷菓組合せ用油性食品素材とは特に上記組合せる他の食品の中でも、特に冷菓と組み合わせて用いる事を特徴とする油性食品素材である。
冷菓とは、凍結状態およびチルド状態で保存され、喫食される食品を指し、特に限定はされないが、アイスクリームやソフトクリーム、アイスキャンディー、フローズンヨーグルト、シャーベット、氷菓などが挙げられる。
上記冷菓と上記組合せ方法を採ることに限定的に用いられる食品素材を冷菓組合せ用油性食品素材と称する。
(油中水型乳化物)
油性食品素材は油中水型乳化物であり、油性食品素材の成分は油脂含有量が30~55重量%であり、望ましくは35~55重量%、さらに望ましくは45~50重量%であることが好ましい。また、水含有量が5~26重量%、望ましくは10~20重量%である。さらに、カカオマスとココアの合計が10~40重量%であり、望ましくは10~35重量%、さらに望ましくは15~30重量%である。また、乳化物の乳化系は電気伝導法(通電の有無)により確認することができる。
組合せ用油性食品素材は、粘度が100~3000cP(BM型粘度計2号または3号30回転/40℃測定)の範囲に収まることが望ましく、より望ましくは、粘度は100~1500cP以内、さらに望ましくは200~1000cP以内であることが好ましい。
この範囲に収まらない場合は、塗布や被覆用途では製品表面をムラなくカバーできない、カバー後に垂れ落ちる、練り込み用途であれば、製品全体に均一に分散できず商品価値を損なうといった不具合が挙げられる。
(原料)
本発明に用いるカカオマスとは、カカオ豆をローストし脱皮して得られるカカオニブ(胚乳部分)を摩砕して得られるもので、カカオリカーとも呼ばれるもの全般を意味する。
ココアとはカカオマスから油脂部分であるココアバターをのぞいたものであり、ココアパウダーとも称する。また、ココアには大まかにはブロマプロセスとダッチプロセスの2種類の製造方法があり、その製造工程に用いられるアルカリによる中和によって、ダッチプロセスによって得られたココア(アルカリココアと称する)はブロマプロセスによって得られたココア(ナチュラルココアと称する)よりアルカリよりのpHを示す。一般的にはナチュラルココアはpH5.5付近であるのに対して、アルカリココアのpHは6.8以上になる。
本願発明においてはココアのpHが持つ乳化の安定性に対する影響は単に水相全体としてみた場合のpHよりも大きいため、ココアを添加する必要がある場合はココア全体としてのpHが6.8以下、望ましくは5.0から6.0である事が好ましい。
そのためアルカリココア(本発明ではpHが6.8以上のものを称する)の添加量は、油性食品素材全体に対して望ましくは5重量%以下、もっとも望ましくは実質的に含まれないことが好ましい。
(原料・無脂カカオ固形分配合量)
組合せ用油性食品素材はカカオマスもしくはココアを配合する必要があるが、その配合量は無脂カカオ固形分換算で8.5~25重量%であり、望ましくは10~20重量%であることが好ましい。ただし、無脂カカオ固形分とは、カカオ豆由来の固形分のうちカカオバターと水分を除いた部分を指す。
(原料・無脂乳固形分配合量)
組合せ用油性食品素材は乳由来原料を配合してもかまわないが、配合量は無脂乳固形分換算で、望ましくは7.5重量%以下、さらに望ましくは4重量%以下であることが好ましい。ただし、無脂乳固形分とは、乳に由来する、乳脂と水以外の成分を指す。無脂乳固形分を含む具体的な素材としては、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエーパウダー、バターミルクパウダーを挙げることができる。
(原料・乳化剤)
組合せ用油性食品素材は従来の油中水型乳化をする乳化剤を適宜用いることができるが、望ましくはレシチンもしくはポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1.0~2.5重量%、望ましくは1~2.0重量%、更に望ましくには1.0~1.7重量%含む事が好ましい。なお、ポリグリセリン縮合リシノレートはPGPRと略称されることがある。
また、レシチン単独では0.7重量%を、PGPR単独では1.5重量%を上限として添加する事が望ましい。さらに、PGPRはレシチンより粘度を低減する力が強いため、望ましくはPGPRを0.5重量%以上含有している方が望ましい。
他の原料としては、本発明の効果を妨げない範囲で、油脂、糖類、乳化剤、添加剤、色素など、従来の油中水型乳化に用いられているものを適宜用いることができる。
本発明の冷菓組合せ用油性食品素材に使用する油脂は、上記油脂含有量を満たしたうえでなら、食用油脂であれば特に制限はなく、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、椰子油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの極度硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を使用することができる。なお、本発明の油性食品素材は冷菓組合せ用なので、用途的には油脂の融点が低いものの方が望ましい。融点が高いものは冷菓と組み合わせた場合口溶けが損なわれがちになる。
(組合せ用油性食品素材のpH)
上記、原料のカカオ由来原料としてのpH以外に、組合せ用油性食品素材としてのpHは望ましくは4.5~6.2、更に望ましくは5.0~6.2であることが好ましい。pHが高いと組合せ用油性食品素材にざらつきが出やすくなる。
なお、組合せ用油性食品素材のpHは、水で10倍程度に希釈することで、市販のpHメーターで測定する事が可能である。
(組合せ用油性食品素材の製造工程)
本発明の組合せ用油性食品素材の製法は特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、水分を含まない油性原料、例えば、カカオ由来原料と油脂、そして油溶性の乳化剤を加え混捏した油性生地に、残余の水性成分を加えて、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモゲナイザー等を用いて乳化後、乳化物を冷却固化することにより得る混合する事で得る事が出来る。ただし、乳化後に68℃以上で30分以上の殺菌工程を有する事が望ましい。
本発明においては、特に殺菌工程がなくとも組合せ用油性食品素材が得られるものの、即喫食に供される場合以外は、食品衛生上の理由から流通や保存に際し、法令で義務づけられている殺菌工程が必要となる。油性食品素材が無水の場合は殺菌工程による物性への影響が小さく、問題とならないが、従来の含水物に対しては物性への影響が大きい。
本願の方法を用いる事で、含水物であっても物性への影響を減少させることが可能である。規定の殺菌工程を持たない組合せ用油性食品素材は事実上、保存や流通が困難である。一方、無水の油性食品素材であれば、上記殺菌工程においても大きく物性を損なうことはないが、風味的に含水物のようなみずみずしさを呈する事は困難である。
(冷菓組合せ食品)
冷菓組合せ用油性食品素材を冷菓と組み合わせることで冷菓組合せ食品が得られる。冷菓との組み合わせ方は得に限定はされないが、例を挙げるとスプレーで対象物に噴きつける塗布、または冷菓中に滴下・混合することで凝固させ、冷菓中に粒状ないしは破片状に存在させる滴下用途を含む練り込み、冷菓を融解状態の油性食品素材に漬けることで、冷菓表面にコーティングさせた被覆などが挙げられる。本願発明を用いずに物性が損なわれた場合は塗布量や被覆量が増加するなど目標の製品設計のものが得にくくなる。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるのもではない。なお、例中、%および部はいずれも重量基準を意味する。
<系列1:油脂含有量>
(実施例1)
カカオマスA(ナチュラルカカオマス、pH5.2)、植物油脂A(製品名:大豆白絞油、不二製油株式会社)、砂糖、レシチン、PGPR(商品名:CRS75、阪本薬品工業株式会社製)を表1に従い配合し、常法に従い原料チョコレート類を製造する。
次いで、果糖ぶどう糖液糖(製品名:ハイフラクトM-75、日本コーンスターチ株式会社)生クリーム(乳脂肪47%、株式会社明治)、水、をすべて混合したうえで50℃に加温したものを、上記操作にて得られた原料チョコレート類に表1の配合量に従って加え混合する。
上記混合物を、加温しながらアンカーミキサー(コンビミックス3M-5型 プライミクス株式会社)にて攪拌を行い、68℃30分保持して殺菌した後、5℃にて冷却して組合せ用油性食品素材であるところの含水チョコレート類を得た。
冷菓への組合わせ方法は-18℃に温度調整した市販の四角柱型アイスバー(商品名:バニラバー、株式会社ロッテ製、アイス部分の概形:23mm×23mm×73mm)を、加温融解して40℃に調整した含水チョコレート類を満たしたガラスビーカー内に木のスティック部分まで浸けてチョコレート様食品をコーティングし、口どけと風味の食感テストに供した。
口溶けと風味の評価は合わせて表1に示した。なお、表中の「ナチュラルカカオ量」はpH6.8以下のカカオマスとココアの合計の全体に占める割合(重量%)を、「乳化剤量」はレシチンもしくはポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量の全体に占める割合(重量%)を示すものとする。
(実施例2・実施例3・比較例1)
表1に記載の通り、実施例1の植物油脂Aの配合量を変える以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を得た。油分は実施例1の45重量%に対して、実施例2は35重量%、実施例3は54重量%になった。
得られた含水チョコレート類はBM型粘度計2号または3号を用い、30回転/40℃にて粘度を測定した。
Figure 0007103518000001
実施例1・実施例2・実施例3は油分がそれぞれに異なる含水チョコレート類が得られたが、冷菓の組み合わせ作業に特に支障のある粘度ではなく、また実施例3が若干油っぽいものの、口どけと風味に十分に市販に耐えうるものが得られた。しかし、比較例1は油っぽさが強く現れ、市販には耐えられない評価となった。
<系列2:油脂種と粘度>
(実施例4)
表2に記載の通り、実施例1の植物油脂Aをココアバターに変える以外は、実施例2と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を得た。油分は実施例2と同等であった。
(実施例5・実施例6)
表2に記載の通り、実施例2・実施例4のPGPRの添加量を1重量%から1.5重量%に変える以外は、実施例2・実施例4と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。油分は実施例2とほぼ同等であった。
得られた含水チョコレート類はBM型粘度計2号または3号を用い、30回転/40℃にて粘度を測定し、また、実施例1と同様の方法でアイスクリームバーにコーティングし、口どけと風味の食感テストに供した。評価は実施例2の評価とあわせて表2に示した。
Figure 0007103518000002
実施例2と実施例4は用いた油脂種が植物油脂Aとココアバターと異なるものの、特に物性に大きな違いはなかった。風味についてもココアバターを加えることでより濃厚な味わいが付与されるが元の植物油脂Aでもすっきりとした風味がありカカオマスの風味を引き立たせるものであった。植物油脂Aよりもココアバターの方が得られる乳化物は硬くなるが、無水物と比較すると十分柔らかい食感を有していた。
実施例2に対して実施例5、実施例4に対して実施例6は、それぞれPGPRの添加量を増やすことによって更に粘度を低下した含水チョコレート類が得られたが、粘度が低下することで、目付け量(冷菓への付着量)も安定し、作業性に特に問題はなく、最終的な含水チョコレートの風味への乳化剤の影響は感じられなかった。また粘度は吸湿や原料配合により大きく変動するものであるが、PGPRの添加量の調節により安定的な生産が可能となることが示された。
<系列3:水分量>
(比較例2・実施例7・実施例8・実施例9・比較例3)
表3に記載の通り、実施例1の水分量が変動する様に、水や少ない場合は生クリームの配合量を変え、また油分は変動しないよう油脂Aなどの配合を変動させた以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。水分は比較例2が実質的に0である0.8重量%、実施例7は6.3重量%、そして比較の為、実施例1は11.7重量%、実施例8は19.8重量%、実施例9は25.3重量%、比較例3は29.7重量%になった。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。
Figure 0007103518000003
比較例2・実施例7・実施例1・実施例8・実施例9・比較例3の順で水分が少ない方から順に増えていく含水チョコレート類が得られたが、水分のない比較例2(0.8重量%)は口溶けが悪く、従来の無水タイプのアイスコーティング用チョコレートの域を出るものではなかった。以降、実施例7(6.3重量%)・実施例1(11.7重量%)・実施例8(19.8重量%)・実施例9(25.3重量%)と良好な口溶けを呈し、従来の無水タイプのものとは明らかに優位性のあるものとなった。一方で水分量が増えるに従い口溶けが速くなる傾向にあり、商品設計に適宜応用できるものである。
ただ、水分量が多くなりすぎた比較例3(29.7重量%)までとなると、乳化の安定性を損ない油水が分離してしまい、アイスコーティングの作業自体が出来ないものであった。
<系列4:乳化型>
(実施例10・比較例4)
表3に記載の通り、乳化の型が異なる以外は配合的が近似している(乳化に作用する為、乳化剤の添加のみが異なる)配合の、実施例10(油中水型)と、比較例4(水中油型)の含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。
なお、実施例10・比較例4は固化前に乳化物をテスター(デジタルマルチメーター カセイ(株)製)にて通電状態により調べたところ実施例10は通電性を示さず、比較例4は通電したため、それぞれの乳化型を、油中水型、水中油型と確認した。
Figure 0007103518000004
乳化の型以外はほぼ同等の配合である実施例10・比較例4であるが、口溶けに関しては双方共に良好であったが油中水型である実施例10は良好な固化(乾きと称する)状態になるのに対して、比較例4は粘度が増しており、乾き時間が遅く、商品設計上使えないものであった。
<系列5:ココアのpH、アルカリ、ナチュラル>
(実施例11・12、比較例5・6)
表5に記載の通り、カカオ固形分とカカオ由来の油分(すなわちココアバター)が一定である条件のもとカカオマスの固形分の一部をpHの異なるココアに置き換えた以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて油中水型含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。含水チョコレート類の水系のpHは実施例11が5.8、実施例12が5.6、比較例5が6.8、比較例6が7.6となった。
なお、ココアA(市販ナチュラルココア、pH5.5)、ココアB(市販アルカリココア、pH7.0)、ココアC(市販アルカリココア、pH8.3)をそれぞれ用いた。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。
Figure 0007103518000005
全てナチュラルなカカオマスを実施例11、そしてそれとほぼ同等の水相のpHを示す実施例12から、アルカリココアを添加した比較例5・比較例6の順でpHは上がり、その上昇に従い、乳化の安定性を損ない油水が分離してしまい、アイスコーティングの作業自体が出来ないものとなった。また、水分も油分も同じで、同程度のpHであるにもかかわらず、カカオマスのみでカカオ固形分を供した実施例11よりココアを用いた実施例12の方が粘度は低いため作業性がよく、またカカオマス単独の風味だけでなくカカオマスとは傾向の異なるココアの風味をも感じることができるため、双方で商品の自由度が高いものであった。
<系列6:水相pH>
(実施例13、比較例7、実施例14、実施例15)
表6に記載の通り、クエン酸、重曹、ココアBを配合してpHを調節する以外は実施例1と同じ配合・製造工程にて油中水型含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。含水チョコレート類の水系のpHは実施例13が4.3、比較例7が6.8、実施例14が5.9、実施例15が6.2となった。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。
Figure 0007103518000006
得られた含水チョコレートのpHが酸性よりの実施例13(pH4.3)、実施例14(pH5.9)は良好な口溶けであり、多少アルカリよりの実施例15(pH6.2)で少しざらつく口溶けにはなったものの、十分に商品価値のあるレベルであった。しかし、アルカリが強い比較例7(pH6.8)は分離してしまい、アイスコーティング用途としては不適当な品質であった。
<系列7:無脂カカオ固形分>
(実施例16~23・比較例8~9)
表7に記載の通り、カカオマスAとココアAの配合量を調節する以外は実施例1と同じ配合・製造工程にて油中水型含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。含水チョコレート類の無脂カカオ固形分量は4.4から20.9まで変動した。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。
Figure 0007103518000007
無脂カカオ固形分の量が変動する比較例8から実施例23において、無脂カカオ固形分が4.4重量%の比較例8、6.2重量%の比較例9においては分離が生じ商品価値がないものであった。また、8.8重量%の実施例16は多少粘度が低い(70cP)ことから生じる目付け量の低下などの不利はあるものの、口どけ・風味は良好であった。
11.0重量%の実施例17から16.7重量%の実施例21までは粘度も口どけ・風味は良好であった。18.8重量%の実施例22と20.9重量%の実施例23は口どけ・風味等は良好であったが、粘度が高い(2000cPを越える)ことから生じる目付け量の増大などの不利と、粘度に依存する口腔内でのもたつきなどが顕実化し始めるなどの影響が認められたが、商品としては流通可能なレベルではあった。
<系列8:無脂乳固形>
(実施例24・25)
表8に記載の通り、実施例1に全脂粉乳を加え、水分等が同程度になるように果糖ぶどう糖液糖と水を変動させる以外は、同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。また、比較の為、実施例1の配合と評価も表8に記した。
Figure 0007103518000008
無脂乳固形分が0.4重量%である実施例1、3.9重量%である実施例24においては、粘度や口どけ・風味にも特に問題はなかったが、無脂乳固形分が7.5重量%である実施例25は商品価値のあるレベルのものではあったが、商品にややざらつきを感じるものであった。
<系列9:レシチン>
(実施例26、実施例27、実施例28)
表9に記載の通り、実施例1のレシチンの配合を変動させた以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
(実施例29)
表9に記載の通り、実施例1のPGPRを添加せずに、そしてレシチンの配合を変動させた以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
それぞれの実施例で得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。また、比較の為、実施例1の配合と評価も表9に記した。
Figure 0007103518000009
実施例26・実施例27・実施例1・実施例28の順でレシチン添加量が少ない方から順に増えていく含水チョコレート類が得られたが、口溶けや風味は全て良好であった。また粘度も実施例28(レシチン0.7重量%)のみが再溶解時に若干の沈殿が確認されたものの市場品としては十分使用に耐えうる品質であった。
実施例29はPGPRを添加せずにレシチンの量を増やして含水チョコレート類を作成したが、粘度は上昇したものの作業自体は可能であり、口溶けや風味は良好であった。
<系列10:PGPR>
(比較例10・実施例30)
表10に記載の配合に従う以外は、実施例5と同じ製造工程にて含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた含水チョコレート類は実施例5と同様の方法で粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供した。また、比較の為、実施例5の配合と評価も表10に記した。
Figure 0007103518000010
PGPR配合量が0.5重量%の比較例10は沈殿が確認された。0.8重量%の実施例30そして、油分が35重量%と実施例30の55重量%より低く抑えられた実施例5もPGPR配合量を1.5重量%にすることで、口どけも良好な状態を保ち、また粘度も1300cPと良好な状態を維持できた。
<系列11:殺菌工程の有無>
(比較例11・実施例31・実施例32・実施例33)
表11に記載の通り、PGPRの添加量を変動させる以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて含水チョコレート類を得た。得られた含水チョコレート類は実施例1と同様の方法ではあるが、殺菌工程の前に粘度を測定したうえで、同じ条件にて殺菌を行い、再び粘度を測定し、口どけと風味の食感テストに供しその評価は表11に示した。
Figure 0007103518000011
PGPRの添加量を2重量%とした実施例33から、徐々に減らしていった、実施例32(1.5重量)、実施例31(1.0重量%)、までは口どけは良好な状態を保ったものの、0.5重量%になった比較例11は殺菌工程後、分離が認められ商品としての価値が乏しいものであった。
<系列12:油脂の種類>
実施例1の植物油脂を大豆油から他の油脂に変更して調製を行った。使用した植物油脂は以下に示す。
実施例34:植物油脂Bとして高オレイン酸ヒマワリ油30.0重量部とステアリン酸エチル70.0重量部を混合した後、1,3位選択性のあるリパーゼを用いてエステル交換を行い、蒸留、分別、脱色、脱臭を行った分別中融点油脂A(ヨウ素価:33.0、飽和脂肪酸含量:64.2重量%)13.0重量部と、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ヨウ素価:0.5以下、飽和脂肪酸含量:100重量%、炭素数8と10の脂肪酸が60:40) 5.0重量部、コーン油(ヨウ素価:123.0、飽和脂肪酸:14.5重量%) 82.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として得られたエステル交換油を用いた。
実施例35:植物油脂Cとして極度硬化ヤシ油を用いた。
実施例36:植物油脂Dとして精製パーム油を用いた。
実施例37:植物油脂Eとしてパームオレイン油(ヨウ素価:68.0、飽和脂肪酸:36.3重量部)を、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として得られてエステル交換油を用いた。
実施例1と製造工程にて含水チョコレート類を得た。口どけと風味の食感テストに供しその評価は表12に示した。
Figure 0007103518000012
すべての植物油脂で含水チョコレート類の調製が可能であった。植物油脂Cである極度硬化ヤシ油を用いた実施例35は硬さがあるものの、商品価値のあるものであった。植物油脂Bは口どけも良く、含水チョコレートとして濃厚感のある良好な品質であった。
<系列13:氷菓へのコーティング>
これまでに得られた実施例1、21、34と水を実質的に含まない比較例12のコーティングチョコレートを用いて氷菓に全面コーティングするテストを実施した。
含水チョコレート類、チョコレート類を用いてコーティングテストを実施した。
コーティングする氷菓は「シャービック」(ハウス食品株式会社製)を用いて作製した。
詳細を以下に記載する。
シャービック1袋(65g)に水を入れ攪拌Brix36となるように調製、製氷型に流し入れ、-20℃設定の冷凍庫で一晩冷却した。
型から抜いた氷菓を40℃に調温した含水チョコレート類等の中に浸し、全面にコーティングした。固化に要した時間とコーティングされた表面の含水チョコレート類等の割れについて表14に示す。
割れは、コーティングした後に-20℃設定の冷凍庫で1時間、-80℃設定の冷凍後で1日置いた後、-25℃設定の冷凍で3日間保管した時の状態を示す。
Figure 0007103518000013
植物油脂には、大豆油:ヤシ油:パーム中融点画分を1:5:7の比率でブレンドしたものを使用した。
Figure 0007103518000014
固化時間はコーティングした含水チョコレート類等が、室温で手に付着しなくなるまでに要した時間を示す。
()内の○、◎は状態として良好であったかについて示した。○は良好、◎はより良好であることを示す。
割れについては、それぞれの含水チョコレート類等を氷菓5個にコーティングし、割れが2/5個以下のものを合格、とした。
氷菓の形状は一般的な製氷型で作られる形状。
さらに言えば、上面長方形:23mm×25mm、底面長方形:33mm×35mm、高さ25mmサイズ。
実施例1、21、34はどれも割れが少ない合格レベルの品質であった。
中でも実施例34は割れもなく、固化も優れていた。
固化時間は比較例12には劣るが、固化し始める速さが良好でコーティングに発生しやすいチョコレート類の垂れ落ちという問題が少なく良好であった。
比較例12は、固化時間は短いが、すべての氷菓で割れが発生した。
本発明は、他の食品との組み合わせ用の油中水型含水チョコレート類の製造法に関し、特に冷菓と組み合わせるに際して、含水物特有の柔らかな食感を有しながらも、作業性が無水物を用いた場合と同程度であり、流通時に必須の殺菌を経ても物性が変わらない含水チョコレート類を製造する方法を提供する事が可能となる。

Claims (4)

  1. pHが4.5~6.2であり、無脂乳固形分が7.5重量%以下であり、無脂カカオ固形分が10~25重量%、pH6.8以下のカカオマスとココアの合計が10~40重量%であり、油脂含有量が30~55重量%、水含有量が6.3~26重量%、レシチン及び/又はポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%を含む、油中水型乳化物である、冷菓組合せ用油性食品素材。
  2. 粘度が100~3000cP(BM型粘度計2号または3号30回転/40℃測定)であって、pH6.8以下のカカオマスとココアがナチュラルカカオマスとナチュラルココアである請求項1記載の冷菓組合せ用油性食品素材。
  3. 乳化後に68℃以上で30分以上の殺菌工程がある請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の冷菓組合せ用油性食品素材の製造方法。
  4. 請求項3記載の冷菓組合せ用油性食品素材を冷菓と組み合わせてなる冷菓組合せ食品の製造方法。
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