JP2023033772A - 冷菓被覆用油中水型乳化物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷菓被覆用の油中水型乳化物である含水チョコレート類の中でも特に、氷菓及びその他の冷菓に全面被覆した際にひび割れし難い油中水型乳化物の提供。【解決手段】冷菓被覆用油中水型乳化物が、以下に記載の(A)~(F)をすべて満たし、含有する油脂成分が(G)~(I)をすべて満たす。(A)無脂カカオ固形分が8.5~25重量%、(B)pHが4~6.5、(C)無脂乳固形分が7.5重量%以下、(D)油脂含有量が30~55重量%、(E)水分含有量が5~25重量%、(F)レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%、(G)ランダムエステル交換油脂を必須成分とし、その配合量が38~70重量%、(H)構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%以下、(I)SUSトリグリセリドの含有量が20~50重量%【選択図】なし

Description

本発明は、冷菓被覆用油中水型乳化物に関する。特に、冷菓被覆用の油中水型乳化物である含水チョコレート類の製造法に関する。
従来技術として含水チョコレートと呼ばれるチョコレート様食品のカテゴリーがある。
生クリームなどの乳化物を配合した生チョコレートと呼ばれるものもその1つである。水性成分を含有する事でみずみずしい食感が楽しめる為、市場で人気のある商品である。
そういった含水チョコレートは、それ単独での喫食もさることながら、他の食品、例えばパンやケーキ、菓子類、冷菓などと組み合わせて用いることも多い。他の食品も単独で喫食するよりも製品としてのバラエティーが増え、市場からの要求も大きいものである。
例えば、従来技術としては、ココア及び又はカカオマスと砂糖、油脂を主成分とし、これらを常法により均一に混合するアイスコーティング用チョコレートの製造法において、上記主成分と液糖とを乳化剤を用いて乳化することを特徴とするアイスコーティング用チョコレートの製造法が開示されている(特許文献1)。
また、水に対する溶解性が砂糖よりも高い糖類、HLB値が3以下で主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20~26の蔗糖脂肪酸エステル及び油脂類を含有するチョコレートベースと、水性成分とを混合し、油中水型に乳化することを特徴とする含水チョコレートの製造法が開示されている(特許文献2)。他にもチョコレート生地と水性成分とを混合して油中水型の含水チョコレート類を製造するに際し、リン脂質含量が60重量%以上であって、かつ全リン脂質中のホスファチジルコリン含量が50重量%以上である分画レシチンを含水チョコレート全量に対して0.05重量%~5.0重量%添加することで、通常のチョコレートと同様に成形作業が可能な油中水型の含水チョコレート類の製法が開示されている(特許文献3)。
さらには、チョコレート生地と水性成分とを混合して油中水型の含水チョコレート類を製造するに際し、HLB値が3以下で主要構成脂肪酸の炭素原子数が16個~18個の蔗糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレートをチョコレート生地に対して各々0.05重量%~5.0重量%の範囲内で使用することで、水分含有成分を何ら加工する事なく、そのままチョコレート生地に添加する事ができ、通常のチョコレートと同様の物性で乳化の安定が良く、風味の良好な油中水型の含水チョコレート類を容易に製造する方法が開示されている(特許文献4)。
このように、それぞれの課題の解決には一定の効果があったのかもしれないが、本発明における冷菓との組み合わせにおいて、含水物特有の柔らかな食感を維持したまま、十分な殺菌工程など物性への悪影響に対して十分な効果があるものは未だ見出されていない。
また、冷菓へのコーティング適性が良好で流通・保存時にひび割れが生じにくい被覆用油脂組成物が開示されている(特許文献5)。
特開昭51-106763号公報 特開平6-245704号公報 特開平8-70776号公報 特開平11-243860号公報 特開2011-36142号公報
特許文献1は、殺菌工程後の品質安定性についての示唆はない。
特許文献2および3は、ざらつきの抑制といった物性に対する効果についての記載はあるが、冷菓においてその効果は十分でない。
特許文献4は、汎用的な油中水型乳化物にポリグリセリン縮合リシノレートを添加することは示されているものの、冷菓への被覆への適性については特に示唆されていない。
特許文献5は、実質的に水分を含まない油脂組成物についての適性であり、水分を多く含む油中水型乳化物としての適性について開示されていない。
本発明は、冷菓被覆用の油中水型乳化物である含水チョコレート類の製造法に関し、含水物特有の良好な口溶け及び柔らかな食感を有しながらも、作業性が無水物を用いた場合と同程度であり、流通時に必須の殺菌を経ても物性が変わらない冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を製造する方法を提供する事を目的とするものである。
特に、氷菓及びその他の冷菓に全面被覆した際に、ひび割れしがたい油中水型乳化物の提供を目的とする。
発明者は上記の課題解決に向け鋭意検討を行った。その中で、冷菓との組み合わせを主目的とするアイスコーティングチョコレートに含水チョコレートを用いる場合は、氷結晶の発生などに伴い、含水物特有の柔らかな食感を失われたり、作業性が無水物のアイスコーティングチョコレートを用いた場合より悪化したりしかねない。また、長期の保存性が必要な製品の場合は、流通させるに際して殺菌工程が必要であり、これも無水物のアイスコーティングチョコレートを用いた場合に比べ、乳固形分の凝集、そしてそれに伴う粘度上昇や食感の悪化などが生じ易くなり、その難易度が高いという課題があった。
発明者はさらに検討を重ねた結果、冷菓被覆用に適する油中水型乳化物の調製には、無脂カカオ固形分、pH及び無脂乳固形分の他に油分、水分及び特定の乳化剤などの条件を詳細に設定することが必要であることを見出した。
さらに、冷菓被覆用油中水型乳化物に含有する油脂成分としてランダムエステル交換油脂を配合し、構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量とSUSトリグリセリド(S:炭素数16~18の飽和脂肪酸、U:炭素数16~18の不飽和脂肪酸 SUS:トリグリセリドの1,3位にSが、2位にUが結合したトリグリセリドを意味する。)の含有量を所定量に調整することで、特に氷菓及びその他の冷菓に全面被覆してもひび割れしがたい冷菓用油中水型乳化物が調製できることを見出した。
すなわち、本発明は、
[1]:(1)及び(2)の条件を満たす、冷菓被覆用油中水型乳化物、
(1).乳化物として(A)~(F)をすべて満たす、
(A)無脂カカオ固形分が8.5~25重量%;(B)pHが4~6.5;(C)無脂乳固形分が7.5重量%以下;(D)油脂含有量が30~55重量%;(E)水分含有量が5~25重量%;(F)レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%、
(2).含有する油脂成分が(G)~(I)をすべて満たす、
(G)ランダムエステル交換油脂を必須成分とし、その配合量が38~70重量%;(H)構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%以下;(I)SUSトリグリセリドの含有量が20~50重量%(但し、S:炭素数16~18の飽和脂肪酸、U:炭素数16~18の不飽和脂肪酸 SUS:トリグリセリドの1,3位にSが、2位にUが結合したトリグリセリドを意味する)、
[2]:油中水型乳化物に含まれる前記(G)のランダムエステル交換油脂が、以下条件を満たす、[1]に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物、
1)構成脂肪酸中の炭素数18~22の不飽和脂肪酸の含有量が60重量%以上;2)構成脂肪酸中に炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が2重量%未満;3)10℃での固体脂含量(SFC)が0~40%、20℃でのSFCが0~20%、
[3]:pH6.8未満のカカオマスとココアの合計が10~40重量%である、[1]又は[2]に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物、
[4]:(1)及び(2)の条件を満たすように乳化物を調製し、得られた乳化物を殺菌する工程を有する冷菓被覆用油中水型乳化物の製造方法、
(1).(A)から(F)をすべて満たすように原料を配合する、
(A)無脂カカオ固形分が8.5~25重量%;(B)pHが4~6.5;(C)無脂乳固形分が7.5重量%以下;(D)油脂含有量が30~55重量%;(E)水分含有量が5~25重量%;(F)レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量として1~2.5重量%、
(2).油脂成分が(G)~(I)をすべて満たすように油脂を配合する、
(G)ランダムエステル交換油脂を必須成分とし、その配合量が38~70重量%;(H)構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%以下;(I)SUSトリグリセリドの含有量が20~50重量%、
[5]:[1]~[3]いずれか1つに記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を被覆した冷菓、
[6]:[1]~[3]いずれか1つに記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を食品に被覆する冷菓の製造方法、
[7]:冷菓の被覆物として、[1]~[3]いずれか1つに記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を用いる、該被覆物のひび割れを抑制する方法、
に関するものである。
本発明により、冷菓被覆用の油中水型乳化物である含水チョコレート類において、含水物特有の良好な口溶け及び柔らかな食感を有しながらも、作業性が無水物を用いた場合と同程度であり、流通時に必須の殺菌を経ても物性が変わらない冷菓被覆用油中水型乳化物を提供することができる。
冷菓被覆用油中水型乳化物及び氷菓を含む冷菓は、冷却固化時に収縮するため、そのひずみでひび割れが発生する。これは部分被覆よりも全面被覆で発生しやすいが、ひび割れすることなく全面にコーティングできる冷菓被覆用油中水型乳化物を提供することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
(冷菓被覆用油中水型乳化物)
本発明において、冷菓被覆用油中水型乳化物とは冷菓に被覆して用いる事を特徴とする油中水型乳化物の食品素材である。特に、冷菓被覆用油中水型乳化物としては、含水チョコレート類のことをいう。
ここでいう被覆とは、組み合わせる冷菓の表面を全面または部分的に覆うことを言う。
冷菓とは、凍結状態およびチルド状態で保存され、喫食される食品を指し、特に限定はされないが、アイスクリームやソフトクリーム、アイスキャンディー、フローズンヨーグルト、シャーベット、氷菓などが挙げられる。これら冷菓に被覆することに限定的に用いられる食品素材を冷菓被覆用油中水型乳化物と称する。
乳化物の乳化型は電気伝導法(通電の有無)により確認することができる。
(チョコレート類・含水チョコレート類)
本発明において言うところの「チョコレート類」とは全国チョコレート業公正取引協議会が規定するところの、「純チョコレート」「チョコレート」「準チョコレート」から、カカオバター以外の油脂とカカオ固形分以外の可食物よりなる「チョコレート様食品」、その他、例えばカレー風味やチーズ風味といった、油脂をベースとして可食物を分散させた食品を総称するものであってもよい。また、本発明において言うところの「含水チョコレート類」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約とその解説」で言うところの「生チョコレート」は勿論、以上に述べたチョコレート類と水性成分を混練したものすべてを総称し、その「含水チョコレート類」の原料として用いた「チョコレート類」を「原料チョコレート類」と称する。含水チョコレート類は一般的には水中油型あるいは油中水型、そのそれぞれを組み合わせた二重乳化や一部が転相したものなどがあり本発明では特に油中水型の乳化物を言う。本発明の含水チョコレート類は、チョコレート類にクリーム、液糖、洋酒、牛乳、豆乳、果汁、水などの水性成分を混合して得られる。
(原料・無脂カカオ固形分配合量)
本発明には、無脂カカオ固形分の由来原料としてカカオマスを用いることができる。カカオマスとは、カカオ豆をローストし脱皮して得られるカカオニブ(胚乳部分)を摩砕して得られるもので、カカオリカーとも呼ばれるもの全般を意味する。
ココアとはカカオマスから油脂部分であるカカオバターを除いたものであり、ココアパウダーとも称する。冷菓被覆用油中水型乳化物は無脂カカオ固形分の由来原料としてカカオマスもしくはココアを配合する必要があるが、その配合量は無脂カカオ固形分換算で8.5~25重量%であり、好ましくは10~20重量%である。ただし、無脂カカオ固形分とは、カカオ豆由来の固形分のうちカカオバターと水分を除いた部分を指す。
(冷菓被覆用油中水型乳化物のpH)
冷菓被覆用油中水型乳化物としてのpHは4~6.5であり、好ましくは4.5~6.2であり、さらに好ましくは5~6.2ある。pHが高いと冷菓被覆用油中水型乳化物にざらつきが出やすくなる。
なお、冷菓被覆用油中水型乳化物のpHは、水を加えることで乳化破壊し、連続相を水相にすることで市販のpHメーターで測定する事が可能である。測定は冷菓被覆用油中水型乳化物を水で10倍に希釈して測定する。
(原料・無脂乳固形分配合量)
冷菓被覆用油中水型乳化物は乳由来原料を配合してもかまわないが、配合量は無脂乳固形分換算で、7.5重量%以下であり、さらに好ましくは4重量%以下である。ただし、無脂乳固形分とは、乳に由来する、乳脂と水以外の成分を指す。無脂乳固形分を含む具体的な素材としては、牛乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエーパウダー、バターミルクパウダーを挙げることができる。生クリームの一部にも無脂乳固形分が含まれる。
(冷菓被覆用油中水型乳化物の油脂含有量・水含有量)
冷菓被覆用油中水型乳化物の成分は油脂含有量が30~55重量%であり、好ましくは34~55重量%、さらに好ましくは34~53重量%である。また、水含有量が5~25重量%、好ましくは10~20重量%である。
油脂含有量と水含有量を適正に調整することで、良好な物性の冷菓被覆用油中水型乳化物を調製することができる。
(乳化剤)
冷菓被覆用油中水型乳化物は従来の油中水型乳化をする乳化剤が必須成分として用いられる。使用する乳化剤としては、レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を用いる。その合計量は、1~2.5重量%であり、好ましくは1~2.0重量%、さらに好ましくは1~1.7重量%含む。なお、ポリグリセリン縮合リシノレートはPGPRと略称されることがある。
また、レシチン単独では0.7重量%を、PGPR単独では1.5重量%を上限として添加する事が好ましい。さらに、PGPRはレシチンより粘度を低減する力が強いため、好ましくはPGPRを0.5重量%以上含有する。
(ランダムエステル交換油脂)
冷菓被覆用油中水型乳化物の油脂成分には、ランダムエステル交換油脂を含む。ランダムエステル交換油脂を冷菓被覆用油中水型乳化物の油脂成分に含有させることで、口溶けが良好であり、被覆後のひび割れが少なく、かつ固化が良好である、冷菓被覆用油中水型乳化物を調製することができる。
ランダムエステル交換油脂を油脂組成中に38~70重量%配合する。好ましくは40~66重量%、さらに好ましくは43~60重量%配合する。油脂組成中のランダムエステル交換油脂の比率が少なくなると、それ以外の油脂の影響を受けやすく、被覆後に割れが生じやすかったり、固化が遅くなったりする。
含有するランダムエステル交換油脂としては、炭素数18~22の不飽和脂肪酸を油脂組成中の構成脂肪酸として60重量%以上含有することが好ましい。さらに好ましくは63重量%以上含有する。含有するランダムエステル交換油脂としては、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量は2重量%未満が好ましい。さらに好ましくは1.8重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満である。
炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が少ないランダムエステル交換油脂を使用することで、濃厚感と良好な口溶けを有する油中水型乳化物を調製することができる。
本発明にある固体脂含量は、一般的にSFCとも呼ばれる。冷菓被覆用油中水型乳化物に含有するランダムエステル交換油脂のSFCは、好ましくは10℃で0~40%、20℃で0~20%である。さらに好ましくは、10℃で0~35%、20℃で0~15%であり、より好ましいSFCは10℃で0~33%、20℃で0~14%である。
SFCは、IUPAC.2 150 SOLID CONTENT DETERMINATION IN FATS IN FATS BY NMRに準じて測定する。分析装置はBruker社製“minispec mq20”を使用する。
冷菓被覆用油中水型乳化物の油脂成分は、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%未満である。好ましくは4重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。炭素数12の飽和脂肪酸はラウリン酸と呼ばれる。ラウリン酸は冷凍下での固化に優れるため、冷菓被覆用のチョコレート様食品に用いられることがある。本発明の油中水型乳化物に用いることで固化が早くなるが、多く含有するとサイコロ状のアイスなどへの全面コーティングの際にひび割れが発生しやすくなる。
冷菓被覆用油中水型乳化物の油脂成分は、SUS型のトリグリセリドを含む。ここで、Sとは炭素数16~18の飽和脂肪酸、Uとは炭素数18の価不飽和脂肪酸、SUSとは、1位及び3位の脂肪酸がSであり、2位の脂肪酸がSであるトリグリセリドを示すトリグリセリドを示す。
SUS型トリグリセリドの油脂組成中の含有量は20~50重量%である。より好ましくは21~45重量%、さらに好ましくは22~42重量%である。SUS型トリグリセリドが所定の含有量であれば、アイスボールなどの冷菓に全面コーティングした際に、製造適性良好な固化速度で、ひび割れの少ない食品を作製することができる。
また、SUS型トリグリセリドが所定の含有量であれば、冷菓被覆用油中水型乳化物の口溶けに作用し、風味に濃厚感を付与することができる。
(原料)
本発明には無脂カカオ固形分の由来原料としてカカオマスもしくはココアを用いることができる。ココアには大まかにはブロマプロセスとダッチプロセスの2種類の製造方法があり、その製造工程に用いられるアルカリによる中和によって、ダッチプロセスによって得られたココア(アルカリココアと称する)はブロマプロセスによって得られたココア(ナチュラルココアと称する)よりアルカリよりのpHを示す。一般的にはナチュラルココアはpH5.5付近であるのに対して、アルカリココアのpHは6.8以上になる。
本願発明においてはココアのpHが持つ乳化の安定性に対する影響は単に乳化物全体としてみた場合のpHよりも大きいため、ココアを添加する必要がある場合はココア全体としてのpHは6.8以下が好ましく、さらには5~6である事が好ましい。
そのためアルカリココア(本発明ではpHが6.8以上のものを称する)の添加量は、冷菓被覆用油中水型乳化物全体に対して好ましくは10重量%以下、より好ましくは6重量%以下、もっとも好ましくは実質的に含まない。
同様に、カカオマスにもアルカリによる中和によってpHを6.8以上に調整したカカオマスがあるが、本願発明では、pHが6.8未満であるナチュラルカカオマスを用いる。
アルカリココアの添加量は少ない方が好ましいが、pH6.8未満のカカオマス及びココアは、冷菓被覆用油中水型乳化物に含まれることで好ましい物性と、濃厚な風味に調整することができ、その添加量は好ましくは10~40重量%であり、より好ましくは10~35重量%、さらに好ましくは15~30重量%である。
他の原料としては、本発明の効果を妨げない範囲で、油脂、糖類、乳化剤、添加剤、色素など、従来の油中水型乳化に用いられているものを適宜用いることができる。
本発明の冷菓被覆用油中水型乳化物に使用する油脂は、上記油脂含有量および油脂組成の条件を満たしたうえでなら、他に配合する食用油脂は特に制限はなく、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、椰子油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの極度硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を使用することができる。
冷菓被覆用油中水型乳化物は、粘度が100~3000cP(BM型粘度計2号または3号30回転/40℃測定)の範囲に収まることが好ましく、より好ましくは、粘度は150~2500cP以内、さらに好ましくは250~2400cP以内である。
この範囲に収まらない場合は、塗布や被覆用途では製品表面をムラなくカバーできない、カバー後に垂れ落ちて商品価値を損なうといった不具合が挙げられる。
(冷菓被覆用油中水型乳化物の製造工程)
本発明の冷菓被覆用油中水型乳化物の製法は特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、水分を含まない油性原料、例えば、カカオ由来原料と油脂、そして油溶性の乳化剤を加え混捏した油性生地に、残余の水性成分を加えて、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモゲナイザー等を用いて乳化後、乳化物を冷却固化することにより得る混合する事で得る事が出来る。ただし、乳化後に68℃以上で30分以上の殺菌工程を有する事が好ましい。
本発明においては、特に殺菌工程がなくとも冷菓被覆用油中水型乳化物が得られるものの、即喫食に供される場合以外は、食品衛生上の理由から流通や保存に際し、法令で義務づけられている殺菌工程が必要となる。油性食品素材が無水の場合は殺菌工程による物性への影響が小さく、問題とならないが、従来の含水物に対しては物性への影響が大きい。
本願の方法を用いる事で、含水物であっても物性への影響を減少させることが可能である。規定の殺菌工程を持たない冷菓被覆用油中水型乳化物は事実上、保存や流通が困難である。一方、無水の油性食品素材であれば、上記殺菌工程においても大きく物性を損なうことはないが、風味的に含水物のようなみずみずしさを呈する事は困難である。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるのもではない。なお、例中、%および部はいずれも重量基準を意味する。
<ランダムエステル交換油脂の調製(1)>
パームオレイン油(ヨウ素価:68.0、飽和脂肪酸:36.3重量部)を、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として得られてランダムエステル交換油脂である植物油脂aを調製した。
高オレイン酸ヒマワリ油30.0重量部とステアリン酸エチル70.0重量部を混合した後、1,3位選択性のあるリパーゼを用いてエステル交換を行い、蒸留、分別、脱色、脱臭を行った分別中融点油脂X(ヨウ素価:33.0、飽和脂肪酸含量:64.2重量%)13.0重量部と、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ヨウ素価:0.5以下、飽和脂肪酸含量:100重量%、炭素数8と10の脂肪酸が60:40) 5.0重量部、コーン油(ヨウ素価:123.0、飽和脂肪酸:14.5重量%) 82.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として得られたランダムエステル交換油脂である植物油脂bを調製した。
さらに、植物油脂cとして精製パーム油を用いた。
Figure 2023033772000001
<系列1:油脂の種類(1)>(実施例1、2、比較例1)
カカオマスA(ナチュラルカカオマス、pH5.2)、植物油脂、砂糖、レシチン、PGPR(商品名:CRS75、阪本薬品工業株式会社製)を表2に従い配合し、常法に従い原料チョコレート類を製造した。
植物油脂としては、植物油脂a、植物油脂b又は植物油脂cを用いた。それぞれの油脂の特性は表1に示す。表中の「*」がある油脂はランダムエステル交換油脂であることを示す。
次いで、果糖ぶどう糖液糖(製品名:ハイフラクトM-75、日本コーンスターチ株式会社)生クリーム(乳脂肪47%、株式会社明治)、水、をすべて混合したうえで50℃に加温したものを、上記操作にて得られた原料チョコレート類に表1の配合量に従って加え混合した。
上記混合物を、加温しながらアンカーミキサー(コンビミックス3M-5型 プライミクス株式会社)にて攪拌を行い、68℃30分保持して殺菌した後、5℃にて冷却して冷菓被覆用油中水型乳化物であるところの含水チョコレート類を得た。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物はBM型粘度計2号または3号を用い、30回転/40℃にて粘度を測定した。調製した冷菓被覆用油中水型乳化物を冷菓に被覆して風味やひび割れ、固化適性を評価した。
SFCは、IUPAC.2 150 SOLID CONTENT DETERMINATION IN FATS IN FATS BY NMRに準じて測定した。分析装置はBruker社製“minispec mq20”を使用した。なお、固化温度を0℃ではなく、-10℃に変更して行った。
冷菓被覆用油中水型乳化物の水分は海砂法により測定した。
●冷菓(1)への被覆方法
冷菓(1)への被覆方法は-20℃に温度調整した市販の四角柱型アイスバー(冷菓(1);商品名:バニラバー、株式会社ロッテ製、アイス部分の概形:23mm×23mm×73mm)を、加温融解して40℃に調整した冷菓被覆用油中水型乳化物を満たしたガラスビーカー内に木のスティック部分まで浸けて冷菓被覆用油中水型乳化物をコーティングし、口どけと風味の食感テストに供した。
●冷菓(2)への被覆方法
常温で軟化させたバニラアイス(株式会社明治製ファミリア)を卓上ミキサー(ホバート・ジャパン株式会社)で混合、軟化させ、サイコロ状の型(25mm*25mm*25mm)に流し込み、-20℃の冷凍庫で冷却固化し角形アイス(冷菓(2))を調製した。
加温融解して40℃に調整した冷菓被覆用油中水型乳化物を満たしたガラスビーカー内に角形アイス全体を浸し、全面にコーティングした。
コーティングした後に-20℃設定の冷凍庫で1時間、-80℃設定の冷凍後で1日置いた後、-25℃設定の冷凍で3日間保管した時の状態でひび割れの確認と、風味・口溶けを確認した。
●冷菓(3)への被覆方法
シャービック(ハウス食品株式会社製)1袋(65g)に水を入れ攪拌Brix36となるように調製、製氷型に流し入れ、-20℃設定の冷凍庫で一晩冷却した。
氷菓の形状は一般的な製氷型で作られる形状。さらに言えば、上面長方形:23mm×25mm、底面長方形:33mm×35mm、高さ25mmサイズであった。
型から抜いた氷菓(冷菓(3))を、40℃に調温した冷菓被覆用油中水型乳化物及びチョコレート類等の中に浸し、全面にコーティングした。コーティングした後に-20℃設定の冷凍庫で1時間、-80℃設定の冷凍後で1日置いた後、-25℃設定の冷凍で3日間保管した時の状態でひび割れの確認と、風味・口溶けを確認した。
風味・口溶けはパネラー5人の官能評価にて以下の基準で行った。
◎:非常に良好、〇:良好、△:品質許容レベルだが、〇よりは劣る、×:不適
被覆方法(1)、(2)、(3)それぞれでの物性評価を以下に示す。
<冷菓(1)の評価>
固化‥冷菓被覆用油中水型乳化物をコーティングして持ち上げた後、油中水型乳化物が垂れ終わるまでの時間を基準に以下評価とした。
◎:7秒以内、○:10秒以内、×:11秒以上
ひび割れ‥3本コーティングしてひび割れが発生した本数を確認した。
◎:0本、○:1本、×:2本以上
<冷菓(2)及び(3)の評価>
固化‥油中水型乳化物及びチョコレート類をコーティングした後、油中水型乳化物及びチョコレート類が室温で手に付着しなくなるまでに要した時間で評価した。
◎:10秒以内、○:15秒以内、×:16秒以上
冷菓の固化は連続生産においては、わずかな差も不具合につながることがある。特に全面被覆などの態様で不具合が発生しやすい。
ひび割れ‥5個以上コーティングしてひび割れが発生した個数を比率で評価した。
◎:10%以下、○:11%以上~49%以下、×:50%以上
いずれの評価も、「×」が不合格、それ以上であれば品質合格であることを示した。
冷菓被覆用油中水型乳化物のpHは、水で10倍に希釈して測定した。水を加えることで乳化破壊し、連続相を水相にすることで市販のpHメーターで測定する事が可能であった。
なお、表中の「ナチュラルカカオ量」はpH6.8未満のカカオマスとココアの合計の全体に占める割合(重量%)を、を示した。「乳化剤量」はレシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を合計量の全体に占める割合(重量%)を示すものとする。
また、「C12-14」とは構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の油分全体に占める割合(重量%)を示し、「SUS」とは炭素数16~18の飽和脂肪酸であるSと、炭素数16~18の不飽和脂肪酸Uが、それぞれ1,3位にS、2位にUが結合したトリグリセリドの油分全体に占める割合(重量%)を示し、「エステル交換油脂」とは、含有するランダムエステル交換油脂が油分全体に占める割合(重量%)を示すものとする。
Figure 2023033772000002
*植物油脂aはパームオレインをランダムエステル交換処理することで、パームオレインに含まれるSの飽和脂肪酸が二つ、Uの不飽和脂肪酸が一つ結合したトリグリセリドの3分の1がSUSを構成するため、その理論値を加算した。
Figure 2023033772000003
実施例及び比較例で殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。
冷菓(1)にコーティングするならば、どれも問題ない良好な状態であったが、冷菓(2)や冷菓(3)への全面コーティングでは比較例1で多くひび割れが発生した。冷菓(2)よりも、冷菓(3)の方が割れやすい傾向があるが、エステル交換を施した実施例1及び実施例2はひび割れが少なく良好な状態であり、固化も良好であった。多種にわたる冷菓に被覆する際に、良好な固化適性とひび割れの耐性を有するには、冷菓被覆用油中水型乳化剤の油脂分が影響することがわかった。
調製した試験品はどれも含水物特有の良好な口溶けと柔らかな食感を有していた。その評価は冷凍した単体の評価も、アイスや氷菓にコーティングしたときの評価も同じような結果となったため、冷菓と組み合わせた評価で単体の評価も可能であった。
<系列2:無脂カカオ固形分>
(実施例3~6、比較例2、3)
表4に記載の通り、カカオマスAとココアAの配合量を調節する以外は実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。冷菓被覆用油中水型乳化物の無脂カカオ固形分量は4.2から20.0まで変動させた。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
Figure 2023033772000004
実施例は殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。無脂カカオ固形分の量が変動すると、無脂カカオ固形分が少ない比較例においては、分離が生じ商品価値がなかった。実施例は全面被覆品のひび割れが抑制されていた。無脂カカオ固形分が実施例3では粘度が低いことから生じる目付け量の低下でやや味が薄いなどの不利はあるものの、口どけは良好であった。
無脂カカオ固形分が増えるにつれて粘度が高く(2400cPを越える)なると目付け量の増大により、口腔内でのもたつきや若干のざらつきなどが顕実化し始めるなどの影響が認められたが、商品としては流通可能なレベルではあった。
<系列3:pH>
(実施例7~11、比較例4~6)
表5に記載の通り、カカオ固形分とカカオ由来の油分(すなわちカカオバター)が一定である条件のもとカカオマスの固形分の一部をpHの異なるココアに置き換える、又はクエン酸、重曹を配合してpHを調節する以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。冷菓被覆用油中水型乳化物のpHは表中に示す。
なお、ココアA(市販ナチュラルココア、pH5.5)、ココアB(市販アルカリココア、pH7.0)、ココアC(市販アルカリココア、pH8.3)をそれぞれ用いた。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
Figure 2023033772000005
実施例はで殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。実施例はどれも全面被覆品のひび割れが抑制されていた。得られた冷菓被覆用油中水型乳化物のpHが酸性よりの実施例7~実施例10は良好な口溶けと柔らかな食感を有しており、多少アルカリよりの実施例11で少しざらつく口溶けにはなったものの、十分に商品価値のあるレベルであった。しかし、アルカリが強い比較例4、5及び比較例6は分離してしまい、アイスコーティング用途としては不適当な品質であった。
クエン酸や重曹でpHを調整した試験品も実験結果は同様の傾向を示した。
<系列4:無脂乳固形>
(実施例12~14)
表6に記載の通り、全脂粉乳を加え、水分等が同程度になるように果糖ぶどう糖液糖と水を変動させる以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
Figure 2023033772000006
実施例の殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。無脂乳固形分が低い実施例12、実施例13においては、粘度や口どけ・風味にも特に問題はなく良好であったが、無脂乳固形分が7.5重量%である実施例14は商品価値のあるレベルだったが、商品にややざらつきを感じた。ひび割れは発生しなかった。
<系列5:油脂含有量>
(実施例15、16、比較例7)
表7に記載の通り、油分を調製する以外は、実施例1と同じ配合・製造方法にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
Figure 2023033772000007
実施例及び比較例で殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。しかし、比較例7のように油分が多いと、チョコレートらしい風味よりも油っぽさが感じられた。氷菓への被覆でもひび割れが発生した。実施例15及び16はひび割れなく、食感も柔らかく良好な品質であった。
<系列6:水分量>
(実施例12、17~19、比較例8、9)
表8に記載の通り、実施例1の水分量が変動するように、水や生クリームの配合量を変え、また油分は変動しないよう油脂Aなどの配合を変動させた以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。比較例8が乳化物ではなく、常法に従い原料を粉砕、混合したチョコレート類として調製した。比較例8の水分は実質的に0である0.5重量%であった。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。比較のため、実施例12の評価も表中に記載した。
Figure 2023033772000008
実施例は殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。比較例8、実施例17、実施例12、実施例18、実施例19、比較例9の順で水分が少ない方から順に増えていくチョコレート類及び冷菓被覆用油中水型乳化物が得られたが、水分のない比較例8(0.5重量%)は口溶けが悪く、従来の無水タイプのアイスコーティング用チョコレートの域を出るものではなかった。また、氷菓の全面に被覆する際は、ひび割れが生じてしまう。
実施例17・実施例12・実施例18・実施例19と良好な柔らかさ及び口溶けを呈し、従来の無水タイプのチョコレート類とは明らかに優位性のある品質であった。一方で水分量が増えるに従い口溶けが速くなる傾向にあり、水分量で口溶けを調整することができることがわかった。実施例は固化が良好で、ひび割れも抑制されていた。
しかし、水分量が多くなりすぎた比較例9までとなると、乳化の安定性を損ない油水が分離してしまい、アイスコーティングの作業自体が出来なかった。
<系列7:乳化型>
(実施例20・比較例10)
表9に記載の通り、乳化の型が異なる以外は配合が近似している(乳化に作用する為、乳化剤の添加のみが異なる)配合の、実施例20(油中水型)と、比較例10(水中油型)の冷菓被覆用乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
なお、実施例20・比較例10は固化前に乳化物をテスター(デジタルマルチメーター カセイ(株)製)にて通電状態により調べたところ実施例20は通電性を示さず、比較例10は通電したため、それぞれの乳化型を、油中水型、水中油型と確認した。
Figure 2023033772000009
試験品は殺菌後の状態は良好であった。乳化の型以外はほぼ同等の配合である実施例20・比較例10であるが、口溶けや柔らかさに関しては双方共に良好であったが油中水型である実施例20は被覆時に良好な固化状態でひび割れが抑制されていたのに対して、比較例10は粘度が増しており、商品設計上不適であった。
<系列8:レシチン、PGPR>
(実施例21~25、比較例11)
表10に記載の通り、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を作成し、同じ条件にて殺菌を行った。
得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
Figure 2023033772000010
レシチン及びPGPRの添加量を調整した冷菓被覆用油中水型乳化物が得られたが、実施例は殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。口溶けや風味も全て良好であった。また粘度も市場品としては十分使用に耐えうる品質であった。
実施例23はPGPRを添加せずにレシチンの量を増やして冷菓被覆用油中水型乳化物を作成したが、粘度は上昇したものの作業自体は可能であり、口溶けや風味は良好であった。
PGPR配合量が少ない比較例11は分離が確認された。実施例24、実施例25では、口どけも良好な状態を保ち、また粘度も良好な状態を維持できた。実施例はひび割れについて合格レベルであった。
<系列9:殺菌工程の有無>
(実施例26~28、比較例12)
表11に記載の通り、PGPRの添加量を変動させる以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を得た。得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法ではあるが、殺菌工程の前に粘度を測定したうえで、同じ条件にて殺菌を行い、再び粘度を測定し、冷菓被覆での風味やひび割れ、固化の評価を行った。
その評価は表11に示した。
Figure 2023033772000011
PGPRの添加量を2重量%とした実施例28まで徐々に増やした試験品を調製したところ、実施例は殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。実施例は良好な口どけを有していたが、比較例12は殺菌工程後、分離が認められ商品として不可であった。実施例はひび割れが抑制されていた。
<ランダムエステル交換油脂の調製(2)>
植物油脂a、植物油脂b及び植物油脂cの他、比較のために植物油脂dとして大豆白絞油、植物油脂eとして硬化ヤシ油を用いた。
さらに、以下の油脂を調製した。
コーン油(ヨウ素価:123.0、飽和脂肪酸:14.5重量%)95.0重量部、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ヨウ素価:0.5以下、飽和脂肪酸含量:100重量%、炭素数8と10の脂肪酸が60:40) 5.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として得られたランダムエステル交換油である植物油脂fを調製した。
<系列10:油脂の種類>
(実施例1、12、29、比較例1、13、14)
表12に試作に用いた油脂の特性を示した。表中「*」がある油脂はランダムエステル交換油脂であることを示す。表13に記載の通り、油脂の種類を変更する以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を得た。得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定したうえで、風味、ひび割れ、固化適性の評価を表13に示した。
植物油脂としては、植物油脂a~fを用いた。
Figure 2023033772000012
Figure 2023033772000013
実施例及び比較例で殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であった。実施例1、12及び29はひび割れも固化も合格レベルであった。比較例13は、ひび割れはしなかったが、固化が遅かった。比較例1及び14はひび割れが発生し、品質として適さなかった実施例及び比較例13は良好な口溶けと柔らかな食感であった。
<系列11:油脂のブレンド>
(実施例30~34、比較例15~17)
植物油脂a~fの他に混合する植物油脂としてパーム分別油である植物油脂g、植物油脂hを用いた。
植物油脂gは一般的にパームオレインと呼ばれるヨウ素価58のパーム分別軟質油である。
植物油脂hはパームを2段階分別したヨウ素価34のパーム分別中融点油である。
それぞれの油脂の特性を表14に示す。「*」がある油脂はランダムエステル交換油脂であることを示す。
Figure 2023033772000014
表16に記載の通り、植物油脂aもしくは植物油脂b、植物油脂d、植物油脂e、植物油脂g、植物油脂hを特定比率で混合し、油脂の種類を変更する以外は、実施例1と同じ配合・製造工程にて冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を得た。得られた冷菓被覆用油中水型乳化物は実施例1と同様の方法で粘度を測定したうえで、風味、ひび割れ、固化適性の評価を表15に示した。
Figure 2023033772000015
*実施例1と同様の方法で、植物油脂a由来のSUSを加算した。
実施例及び比較例で殺菌後の状態は良好であり、冷菓への被覆作業も問題なく可能であったが、比較例16は固化が遅く不適であった。実施例のようにランダムエステル交換油脂が油分中に一定量以上含有していれば、ひび割れが少なく、良好な固化時間で被覆することが可能であった。異なるランダムエステル交換油脂を組み合わせても同様の効果が得られた。風味評価は、良好な口溶けと柔らかな食感を有していた。
本発明は、冷菓被覆用の油中水型乳化物である含水チョコレート類の製造方法に関し、特に冷菓全面に被覆するに際して、含水物特有の良好な口溶けと柔らかな食感を有しながらも、固化などの作業性に適しており、かつひび割れが起こりにくい冷菓被覆用油中水型乳化物である含水チョコレート類を提供することが可能となる。

Claims (7)

  1. (1)及び(2)の条件を満たす、冷菓被覆用油中水型乳化物。
    (1).乳化物として(A)~(F)をすべて満たす
    (A)無脂カカオ固形分が8.5~25重量%
    (B)pHが4~6.5
    (C)無脂乳固形分が7.5重量%以下
    (D)油脂含有量が30~55重量%
    (E)水分含有量が5~25重量%
    (F)レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を
    合計量として1~2.5重量%
    (2).含有する油脂成分が(G)~(I)をすべて満たす
    (G)ランダムエステル交換油脂を必須成分とし、その配合量が38~70重量%
    (H)構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%以下
    (I)SUSトリグリセリドの含有量が20~50重量%
    但し、S:炭素数16~18の飽和脂肪酸、U:炭素数16~18の不飽和脂肪酸
    SUS:トリグリセリドの1,3位にSが、2位にUが結合したトリグリセリドを意味する。
  2. 油中水型乳化物に含まれる前記(G)のランダムエステル交換油脂が、以下条件を満たす、請求項1に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物。
    1)構成脂肪酸中の炭素数18~22の不飽和脂肪酸の含有量が60重量%以上
    2)構成脂肪酸中に炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が2重量%未満
    3)10℃での固体脂含量(SFC)が0~40%、20℃でのSFCが0~20%
  3. pH6.8未満のカカオマスとココアの合計が10~40重量%である、請求項1または2に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物。
  4. (1)及び(2)の条件を満たすように乳化物を調製し、得られた乳化物を殺菌する工程を有する冷菓被覆用油中水型乳化物の製造方法。
    (1).(A)から(F)をすべて満たすように原料を配合する
    (A)無脂カカオ固形分が8.5~25重量%
    (B)pHが4~6.5
    (C)無脂乳固形分が7.5重量%以下
    (D)油脂含有量が30~55重量%
    (E)水分含有量が5~25重量%
    (F)レシチン及びポリグリセリン縮合リシノレートから選ばれる1種以上の乳化剤を
    合計量として1~2.5重量%
    (2).油脂成分が(G)~(I)をすべて満たすように油脂を配合する
    (G)ランダムエステル交換油脂を必須成分とし、その配合量が38~70重量%
    (H)構成脂肪酸中の炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が6重量%以下
    (I)SUSトリグリセリドの含有量が20~50重量%
  5. 請求項1~3いずれか1項に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を被覆した冷菓。
  6. 請求項1~3いずれか1項に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を食品に被覆する冷菓の製造方法。
  7. 冷菓の被覆物として、請求項1~3いずれか1項に記載の冷菓被覆用油中水型乳化物を用いる、該被覆物のひび割れを抑制する方法。
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