本発明の実施形態における回転子について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るロータ(回転子)の分解斜視図である。図2は、図1に示すモータを組み立てた場合のA-A断面図である。これらの図に示されるロータ100は、不図示のステ-タに設けられる中空部に挿入されることで、電動モータ(回転電機)を構成する。
ロータ100は、円柱状の第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとが積層されて構成されるロータコア(回転子コア)10により構成されている。そして、第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bは、それぞれに設けられた磁石挿入孔13が重なるように積層され、その磁石挿入孔13に永久磁石30が挿入される。また、第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bには、ロータコア10の軸中心にシャフト孔12が設けられており、そのシャフト孔12にはシャフト20が挿入される。なお、第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bは、軟磁性材料で構成されている。
詳細には、ロータコア10を構成する第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bには、軸方向に延在し、周方向に等間隔で複数(図1においては4つ)並設される磁石挿入孔13が設けられている。そして、ロータコア10の両端面に第1エンドプレート41、及び、第2エンドプレート42が設けられることで、磁石挿入孔13に挿入される永久磁石30の軸方向の移動が規制される。なお、図上側に第1エンドプレート41が、図下側に第2エンドプレート42が設けられているものとする。なお、第1エンドプレート41、及び、第2エンドプレート42にも中心にシャフト孔43が設けられる。
図2に示されるように、シャフト20には、図下側の一端にロータコア10のシャフト孔12よりも大径であって第2エンドプレート42を係止可能なストッパ21が設けられている。シャフト20は、第2エンドプレート42のシャフト孔43、ロータコア10のシャフト孔12、及び、第1エンドプレート41のシャフト孔43に順に挿入される。
再び図1を参照すれば、シャフト20の外周の一部には、軸方向に延在し断面が凹状であるキー溝22が設けられている。また、シャフト孔12、及び、43には、軸方向に延在し断面が凸状であって、キー溝22に軸方向に挿入可能なキー14が設けられている。シャフト孔12にシャフト20が挿入される状態では、キー14がキー溝22にはまりこむ。なお、シャフト孔12のキー14及びシャフト20のキー溝22は、第1締結部及び第2締結部の一例であって、これに限らない。シャフト孔12にキー溝が設けられ、シャフト20にキーが設けられてもよい。
そして、ナット状でシャフト20と螺合するリテーナ(保持機構)23によって、第1エンドプレート41、ロータコア10、及び、第2エンドプレート42が固定される。具体的には、リテーナ23は、内周にネジ溝が設けられており、上端の外周にネジ山が設けられたシャフト20と螺合可能に構成されている。
次に、図3、4を用いて、ロータコア10の構成を詳細に説明する。
図3は、図2のBの位置から見たロータコア10の上面図である。なお、可読性のために第1エンドプレート41は示されていない。
図4は、図3のC-Cの位置であって磁石挿入孔13を通るロータコア10の断面図である。
図3に示すように、磁石挿入孔13、及び、永久磁石30のシャフト20の軸方向に直交する径方向断面は、共に、長手方向が周方向に延在する長方形状であるとともに、永久磁石30の断面積は磁石挿入孔13の開口面積よりも小さい。さらに、上述のように、シャフト20がシャフト孔12に挿入される時に、キー溝22にキー14が挿入されることで、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの周方向の位置決めが行われる。
そして、周方向においては、ロータコア10における永久磁石30のクリアランスC2(周方向における磁石挿入孔13の幅と永久磁石30の幅との差:C2aとC2bの和)は、ロータコア10のキー14のクリアランスC1(キー溝22の凹幅とキー14の凸幅との差:C1aとC1bの和)よりも小さくなるように構成されている。
図4に示すように、第1電磁鋼板11Aを第2電磁鋼板11Bに対して図左方向にずれるように回転させると、永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aとは、左方向矢印で示される右側面30Aと当接し、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとは、右方向矢印で示される左側面30Bと当接する。このように、永久磁石30は、周方向の右側面30Aが第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aと当接するとともに、周方向の左側面30Bが第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bと当接することになるので、磁石挿入孔13において周方向に固定される。
図5A~図5Dは、ロータ100の組立方法を示す図である。なお、これらの図は、図4と同様に磁石挿入孔13を通るロータコア10の断面図である。
図5Aに示すように、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとのそれぞれには、磁石挿入孔13A、13Bが設けられており、磁石挿入孔13A、13Bが重なるように、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとが積層される。なお、第2電磁鋼板11Bにおける第1電磁鋼板11Aと接触しない側、すなわち、図下側には第2エンドプレート42が取り付けられている。
そして、磁石挿入孔13A、13Bには図上方から永久磁石30が挿入される。永久磁石30が挿入された第1電磁鋼板11A、及び、第2電磁鋼板11Bに対して、図上方から第1エンドプレート41が取り付けられて、ロータコア10の一部が組み立てられる。なお、以下では、一部が組み立てられたロータコア10については、ロータコア10’という符号を付して説明する。
次に、図5Bに示すように、ロータコア10’のシャフト孔12(図5Bにおいては不図示)に、シャフト20が挿入される。この際に、シャフト20に設けられるキー溝22に、シャフト孔12に設けられるキー14(不図示)が挿入される。なお、キー溝22は一端に溝幅が広がるガイド24が構成されており、シャフト20はガイド24を介して挿入される。
次に、図5Cに示すように、ロータコア10’にシャフト20が挿入されると、上方、すなわち、第1エンドプレート41の外側から、シャフト20にリテーナ23が取り付けられる。この際に、第1電磁鋼板11Aに対して第2電磁鋼板11Bに対して図左方向に向かって周方向にずれるような回転力を作用させる。
次に、図5Dに示されるように、リテーナ23のネジ溝とシャフト20のネジ山とが螺合し、リテーナ23がシャフト20に対して回転して固定される。この際に、摩擦によって第1エンドプレート41は第1電磁鋼板11Aに対して連れ回るので、さらに、第1電磁鋼板11Aが第2電磁鋼板11Bに対して周方向にずれる。このようにして、永久磁石30の周方向の右側面30Aと磁石挿入孔13Aとの当接、及び、周方向の左側面30Bと磁石挿入孔13Bとの当接が確実になされることになる。
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第1実施形態のロータ100によれば、永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aと周方向の右側面30Aにおいて当接するとともに、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bと周方向の左側面30Bにおいて当接する。このようにすることで、永久磁石30は、周方向の左右側から、それぞれ第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aと、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bと当接することになり、磁石挿入孔13の中において固定される。そのため、追加の部材を用いることなく永久磁石30を磁石挿入孔13の中において固定することができる。
例えば、接着剤によって永久磁石を磁石挿入孔に固定する場合には、永久磁石及び磁石挿入孔のうち少なくとも一方に接着剤を付着させることになる。本実施形態によれば接着剤を使用しないため、接着剤の材料費を低減できるだけでなく、永久磁石を磁石挿入孔に挿入した時における接着剤のはみ出しを防止する処理や機構を省略することができる。また、接着剤に塗りムラがある場合には永久磁石の固定される位置や接着剤の量が不均一となり、ロータがアンバランスとなるためバランス補正が必要であるが、接着剤を用いないためバランス補正も不要となる。さらに、接着剤に塗りムラがある場合には永久磁石の固定位置にばらつきがでて、磁石挿入孔において局部的に永久磁石の遠心力負荷がかかることもあるが、このような局所的な遠心力負荷も低減される。
また、樹脂充填によって永久磁石を磁石挿入孔に固定する場合には、磁石挿入孔に挿入した後、密封保持治具などを用いて樹脂を充填する必要がある。このような充填に用いられる樹脂は一般に高価であるとともに密封保持治具などが必要である。本実施形態のような永久磁石の固定方法によれば、樹脂充填を省略できるので樹脂や治具が不要になり製造コストの低減を図ることができる。さらに、充填後の樹脂の固化に伴う膨張に起因する磁石挿入孔の内面への応力の作用が抑制されるので、ロータの強度の向上を図ることができる。
さらに、バネ部材などを用いて永久磁石を磁石挿入孔に押し付ける場合には、バネ部材が必要になるだけでなく、バネ部材によって永久磁石が磁石挿入孔に局所的に押しつけられて応力が作用するのでロータの強度が低下するおそれがある。本実施形態においてはバネ部材を省略できるので、製造コストの低減だけでなくバネ部材による磁石挿入孔における局所的な応力の作用を抑制することができる。
第1実施形態のロータ100を備えるモータは、永久磁石30の磁石挿入孔13における固定に追加部材を用いていないため、製造コストの低減を図り、追加部材による応力集中に起因するロータ100の強度低下を抑制することができる。
(第1変形例)
第1実施形態においては、図5Cに示す工程において第1電磁鋼板11Aが第2電磁鋼板11Bに対して周方向にずれるように回転力を作用させる例について説明した。第1変形例においては、第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bに対して回転方向に力を作用させずに、永久磁石30を磁石挿入孔13において固定する例について説明する。
本変形例においては、第1電磁鋼板11Aにおけるキー14Aの磁石挿入孔13Aに対する位置が、第2電磁鋼板11Bにおけるキー14Bの磁石挿入孔13Bに対する位置に対して周方向にずれてオフセットされているものとする。そのため、シャフト20が挿入されてキー14A、14Bがキー溝22に挿入される場合に第1電磁鋼板11Aが第2電磁鋼板11Bに対してオフセット長だけ周方向にずれる。そして、オフセットの長さを、永久磁石30が周方向の右側面30Aが磁石挿入孔13Aと当接し左側面30Bが磁石挿入孔13Bと当接するように設計しておくことで、第1実施形態と同様に磁石挿入孔13に永久磁石30を固定することができる。
第1変形例のロータ100によれば、キー溝22が設けられているシャフト20が、キー14を備えるシャフト孔12に挿入され、第1締結部であるキー14は第2締結部であるキー溝22にはまるように構成される。そして、周方向において、第1電磁鋼板11Aにおける第1締結部に対する磁石挿入孔13Aの位置は、第2電磁鋼板11Bにおける第2締結部に対する磁石挿入孔13Bの位置に対して、オフセットされている。
このように構成されることで、シャフト20がシャフト孔12に挿入されると、キー溝22に第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bのキー14が挿入される。その場合には、第1電磁鋼板11Aのキー14は第2電磁鋼板11Bのキー14に対して周方向の位置がそろうので、磁石挿入孔13Aは磁石挿入孔13Bに対して周方向にオフセット長だけずれて配置される。そのため、ロータ100の組み立て時に外部から周方向に回転力を作用させなくても、磁石挿入孔13Aは磁石挿入孔13Bに対して周方向にずれるので、永久磁石30を固定することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、ロータコア10が軸方向の厚さが略等しい2つの第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとにより構成される例について説明したが、これに限らない。第2実施形態においては、ロータコア10が軸方向の厚さが等しくない複数の電磁鋼板11により構成される例について説明する。
図6は、第2実施形態のロータコア10の磁石挿入孔13を通る断面図である。
この図に示されるように、ロータコア10は、第1電磁鋼板11A、第2電磁鋼板11B、及び、第3電磁鋼板11Cの3つにより構成される。第2電磁鋼板11Bは、第1電磁鋼板11A、及び、第3電磁鋼板11Cよりも軸方向の厚さが短く、円盤状に構成されている。また、第3電磁鋼板11Cは、第1電磁鋼板11Aと同等の厚さであるとともに、第1電磁鋼板11Aと同様に磁石挿入孔13Cを有している。
そして、第1電磁鋼板11A、第2電磁鋼板11B、及び、第3電磁鋼板11Cが積層される状態においては、第2電磁鋼板11Bが、第1電磁鋼板11A及び第3電磁鋼板11Cに対して断面図における右方向にずれるように回転される用に構成される。そのため、第1電磁鋼板11A、及び、第3電磁鋼板11Cに対して、第2電磁鋼板11Bが図右方向にずれている。永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13A、及び、第3電磁鋼板11Cの磁石挿入孔13Cとは、右側面30Aと当接し、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとは、左側面30Bと当接する。このように、永久磁石30が、反対の関係にある2方向から当接することにより、永久磁石30を磁石挿入孔13の中において固定することができる。
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
ロータコア10は、第1電磁鋼板11A、第2電磁鋼板11B、及び、第3電磁鋼板11Cの3つの電磁鋼板11により構成される。このように構成される場合であっても、永久磁石30は、右側面30Aが第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13A及び第3電磁鋼板11Cの磁石挿入孔13Cと当接し、左側面30Bが第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bと当接する。このように、電磁鋼板11が3枚以上ある場合であっても、永久磁石30は対向する右側面30Aと左側面30Bとが、磁石挿入孔13A及び13Cと磁石挿入孔13Bと当接するので、磁石挿入孔13において固定される。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、接着剤、充填用樹脂、及び、バネ部材が不要であるので、製造コストの低減や、ロータ100の強度低下の抑制を図ることができる。
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態では、永久磁石30が1つの磁石部材により構成される例について説明したが、これに限らない。第3実施形態においては、永久磁石30が複数の磁石片31によって構成される例について説明する。
図7は、第3実施形態のロータコア10の磁石挿入孔13を通る断面図である。なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、ロータコア10は軸方向の厚さが略等しい第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとにより構成される。
この図に示されるように、永久磁石30は、複数の磁石片31が軸方向に配列されることにより構成されている。なお、磁石片31同士は、接着剤による接着や樹脂によるモールドなどにより一体となって構成されている。
磁石片31のうちの1つである磁石片31-1は、軸方向において第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの境界面にまたがるように配置される。磁石片31-1は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aとは周方向の右側面31-1Aと当接し、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとは周方向の左側面31-1Bと当接する。このようにして、磁石片31-1を磁石挿入孔13において固定することができるので、複数の磁石片31により構成される永久磁石30も固定することができる。
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第3実施形態のロータ100によれば、永久磁石30は複数の磁石片31により構成されており、そのうちの1つの磁石片31-1は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aとは右側面31-1Aにおいて当接するとともに、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとは右側面31-1Aと対向する左側面31-1Bと当接する。
ここで、2つの磁石片31の境界と、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの界面とが同一平面に位置してしまうと、接着剤などで接着される2つの磁石片31のそれぞれに図右方と図左方から応力が作用してしまい磁石片31同士の接着が解除されるおそれがある。これに対して、本実施形態においては、1つの磁石片31-1の右側面31-1A及び左側面31-1Bが互いに対向する方向から磁石挿入孔13A及び13Bと当接する。そのため、並設される2つの磁石片31において一方の磁石片31と他方の磁石片31とに反対側から応力が作用することはないので、磁石片31同士の接着が解除されるおそれを低減することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態においては、他の実施形態として、永久磁石30が複数の磁石片31により構成されそのうちの1つの磁石片31が周方向に固定されるとともに、ロータコア10が複数の電磁鋼板11により構成されてロータ100の設計の自由度が向上する例について説明する。
図8は、第4実施形態のロータコア10の磁石挿入孔13を通る断面図である。なお、電磁鋼板11の構成は図6に示す第2実施形態と対応しており、永久磁石30の構成は図7に示す第3実施形態と対応している。すなわち、ロータコア10は、第1電磁鋼板11A、第2電磁鋼板11B、及び、第3電磁鋼板11Cの3つにより構成されるとともに、永久磁石30は、複数の磁石片31により構成される。
この図に示されるように、磁石片31のうちの1つである磁石片31-1が、軸方向において、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの境界面、及び、第2電磁鋼板11Bと第3電磁鋼板11Cとの境界面とにまたがるように配置される。磁石片31-1は、磁石挿入孔13Aとは右側面31-1Aと当接し、磁石挿入孔13Bとは左側面31-1Bと当接する。同時に、磁石片31-1は、磁石挿入孔13Cとは右側面31-1Aと当接する。このように、1つの磁石片31-1は、右側面31-1Aが磁石挿入孔13A、13Cと当接するとともに、左側面31-1Bが磁石挿入孔13Bと当接することになるので、磁石片31-1は磁石挿入孔13において周方向に固定される。そして、複数の磁石片31により構成される永久磁石30も、磁石挿入孔13において固定される。
第4実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第4実施形態のロータ100によれば、ロータコア10は複数の電磁鋼板11で構成されるとともに、永久磁石30は複数の磁石片31により構成されている。このような構成であっても、永久磁石30は磁石挿入孔13において固定されるので、設計の自由度を向上させることができる。
(第5実施形態)
第1乃至第4実施形態においては、磁石挿入孔13の断面が略長方形である例について説明したが、これに限らない。第5実施形態においては、磁石挿入孔13の断面が略長方形でない例について説明する。
図9は、第5実施形態の磁石挿入孔13の近傍のロータコア10の上面図である。なお、ロータコア10は、第1実施形態と同様に2つの電磁鋼板11により構成されており、紙面手前側に第1電磁鋼板11Aが、紙面奥側に第2電磁鋼板11Bが配置されるものとする。
以下では説明のために、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aの断面を構成する4方向の面のうち、長手方向においては、外周側の面を外周面13A-O、内周側の面を内周面13A-Iと称し、短手方向においては、図右側の面を右側面13A-R、図左側の面を左側面13A-Lと称するものとする。第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bの内面についても、同様に、外周面13B-O、内周面13B-I、右側面13B-R、左側面13B-Lと称するものとする。
磁石挿入孔13Aにおいては、内周面13A-Iが外周面13A-Oよりも幅広であるとともに、磁石挿入孔13Bにおいても、内周面13B-Iが外周面13B-Oよりも幅広に構成される。すなわち、右側面13A-R、13B-R、及び、左側面13A-L、13B-Lは、軸中心に向かって広がるように構成される。また、第2電磁鋼板11Bの外周面13B-O、及び、内周面13B-Iは、第1電磁鋼板11Aの外周面13A-O、及び、内周面13A-Iと軸方向に重なるものとする。
紙面手前側の第1電磁鋼板11Aは、紙面奥側の第2電磁鋼板11Bに対して、図左方向にずれているものとする。そのため、右側面13A-R、及び、左側面13A-Lは、右側面13B-R、及び、左側面13B-Lに対して左方向にずれて配置される。第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aの中において、実線で示される第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lは看視できるが、点線で示される右側面13A-Rは看視できないものとする。
永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの右側面13A-Rと当接するとともに、第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lと当接する。右側面13A-Rと、左側面13B-Lとは、軸中心に向かって広がるように構成されるため、永久磁石30は軸中心に向かって応力が作用して内周面13A-I、13B-Iに押し付けられるように配置される。
このように、永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの右側面13A-R、第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lの周方向において固定されるだけでなく、第1電磁鋼板11Aの内周面13A-I、及び、第2電磁鋼板11Bの内周面13B-Iに押し付けられることで径方向においても固定されることになる。
第5実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
第5実施形態のロータ100によれば、磁石挿入孔13の右側面13-R及び左側面13-Lは、ロータ100の軸中心を通る永久磁石30の周方向の中心線に対して傾斜する。この傾斜により、磁石挿入孔13の右側面13-R及び左側面13-Lは、永久磁石30に対して周方向だけでなく径方向にも応力が作用することになるので、永久磁石30を周方向及び径方向の双方において確実に固定することができる。
第5実施形態のロータ100によれば、磁石挿入孔13は断面が四辺形状であり、長手方向の外周面13-Oと内周面13-Iが周方向に沿って設けられる。そして、短手方向の右側面13-Rと左側面13-Lとは、径方向の外側から内側に向かって幅が広くなるように傾斜する。径方向の外側に広がる右側面13-R及び左側面13-Lは、永久磁石30に対して径方向内側の応力を作用させるため、永久磁石30は内周面13-Iに押し付けられて固定される。このようにすることで、永久磁石30を周方向だけでなく径方向にも固定することができる。
(第2変形例)
第5実施形態においては、磁石挿入孔13が外周から内周に向かって幅広となる例について説明したが、これに限らない。第2変形例においては、磁石挿入孔13が内周から外周に向かって幅広となる例についてする。
図10は、第2変形例の永久磁石30の近傍のロータコア10の上面図である。
この図によれば、磁石挿入孔13は、ロータコア10の内周から外周に向かって広がるような、すなわち、外周面13A-O、13B-Oが内周面13A-I、12-Iよりも幅広となるように構成されている。
この図に示されるように、永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの右側面13A-Rと当接するとともに、第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lと当接する。そして、永久磁石30は、外周に向かって広がるように構成される右側面13A-Rと左側面13B-Lとから径方向外側に向かって応力が作用するので、外周面13A-O、13B-Oへと押し付けられて径方向においても固定される。
第2変形例によれば以下の効果を得ることができる。
第2変形例のロータ100によれば、第1電磁鋼板11Aの右側面13A-Rと、第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lとは、軸方向に直交する面において周方向の内側から外側に向かって幅が広くなるように傾斜する。右側面13A-R及び左側面13B-Lは、永久磁石30に対して径方向外側に応力が作用させるので、永久磁石30は外周面13-Oに押し付けられる。このようにすることで、永久磁石30を周方向だけでなく径方向にも固定することができる。
(第3変形例)
第5実施形態、及び、第2変形例においては、対向する外周面13A-O、13B-Oと内周面13A-I、13B-Iとの面の大きさが異なる例について説明したが、これに限らない。第2変形例においては、対向する面の大きさが略等しい例について説明する。
図11は、第3変形例の磁石挿入孔13の近傍のロータコア10の上面図である。
この図によれば、磁石挿入孔13は、軸方向に直行する断面が平行四辺形となっており、互いに対向する面の面積が略等しい。具体的には、外周面13A-O、13B-Oと内周面13A-I、13B-Iとの面積が等しく、また、右側面13A-R、13B-Rと左側面13A-L、13B-Lとの面積が等しい。そして、右側面13A-R、13B-R、及び、左側面13A-L、13B-Lは、ともに、軸中心から永久磁石30の周方向の中心に向かう線に対し、具体的には図左上から右下に向かって傾斜する。
永久磁石30は、外周側の右角部が右側面13A-Rと当接するとともに、内周側の左角部が左側面13B-Lと当接する。このような当接がなされると、永久磁石30において、対向する外周側の右角部と内周側の左角部に応力が働き右回転のモ-メントが発生する。そして、外周側の左角部が外周面13A-O、13B-Oと当接するとともに、内周側の右角部が内周面13A-I、13B-Iと当接する。そのため、永久磁石30は周方向の左右側、及び、径方向の内外側の4方にて側面と当接することになるので、周方向だけでなく径方向においても位置決めが行われる。
第3変形例によれば以下の効果を得ることができる。
第3変形例のロータ100によれば、磁石挿入孔13は、断面が平行四辺形状に構成されている。このように構成されている場合には、永久磁石30は、外周側の右角部が第1電磁鋼板11Aの右側面13A-Rと当接するとともに、内周側の左角部が第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lと当接するので、永久磁石30には回転モーメントが発生する。そのため、外周側の左角部が外周面13A-O、13B-Oと当接するとともに、内周側の右角部が内周面13A-I、13B-Iと当接する。したがって、永久磁石30は周方向及び径方向の4方向の側面と当接し、磁石挿入孔13において確実に固定されることになる。
(第6実施形態)
第6実施形態においては、磁石挿入孔13の近傍に永久磁石30が挿入されない追加孔が設けられる例について説明する。
図12Aは、第6実施形態の第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aの近傍のロータコア10の上面図である。
この図に示すように、第1電磁鋼板11Aに設けられる磁石挿入孔13Aは、左側面13A-Lと右側面13A-Rとが図下方に向かって幅広となるように設けられている。そして、左側面13A-Lの左外側の近傍には追加孔15A-Lが設けられるとともに、右側面13A-Rの右外側の近傍には追加孔15A-Rが設けられている。追加孔15A-L、17A-Rは、磁石挿入孔13に向かって幅広となる台形状であるとともに、左側面13A-Lと右側面13A-Rの径方向外側(図上方)の一部を覆うように設けられている。なお、第2電磁鋼板11Bにおいても、同様の追加孔15B-L、15B-Rが設けられているものとする。
図12Bは、組み立てられた状態でのロータコア10の上面図である。
この図において、紙面手前側に第1電磁鋼板11Aが、紙面奥側に第2電磁鋼板11Bが設けられるものとする。そして、第1電磁鋼板11Aは第2電磁鋼板11Bに対して左方向にずれるものとする。
磁石挿入孔13に挿入される永久磁石30は、図左方向においては第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lと接触する。そして、左側面13B-Lの近傍には追加孔15B-Lが設けられているため、左側面13B-Lの外周は薄肉になり強度が比較的弱い。そのため、左側面13B-Lは、永久磁石30と当接する部分に外側に向かう応力が作用し、追加孔15B-Lに向かって湾曲する。
同時に、永久磁石30は、図右方向においては第1電磁鋼板11Aの右側面13A-Rと接触する。右側面13A-Rの近傍には追加孔15A-Rが設けられているため、右側面13A-Rの外周における強度は比較的弱く、永久磁石30と当接する部分に外側に向かう応力が作用して、追加孔15A-Rに向かって湾曲する。
このように、永久磁石30が左右方向において当接する左側面13B-L、右側面13A-Rは、追加孔15B-L、及び、追加孔15A-Rが設けられることにより強度が下がるため、永久磁石30との当接により作用する応力によって外側に湾曲する。それぞれの磁石挿入孔13において設計公差があったとしても、この湾曲により設計交差を吸収できるので、永久磁石30を、第1電磁鋼板11Aの右側面13A-R、及び、第2電磁鋼板11Bの左側面13B-Lと確実に当接できる。
第6実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第6実施形態のロータ100によれば、磁石挿入孔13の周方向の近傍に追加孔15が設けられる。追加孔15が設けられると磁石挿入孔13の側面が薄肉になるので、強度が下がる。そのため、磁石挿入孔13は永久磁石30との当接面において作用する応力によって湾曲する。ここで、複数の磁石挿入孔13の永久磁石30に対する大きさの余裕(クリアランス)に設計交差が生じることがある。このような複数の磁石挿入孔13におけるクリアランスの設計公差などに起因する誤差が磁石挿入孔13の湾曲により吸収されるので、永久磁石30の当接を確実に行うことができる。
(第7実施形態)
第1乃至第6実施形態においては、軸方向に直交する断面方向においてキー14が矩形である例を用いて説明したが、これに限らない。第7実施形態においてはキー14の断面に切り欠きがある例について説明する。
図13は、第7実施形態のキー14及びキー溝22の近傍のロータコア10の上面図である。
この図によれば、キー14の根元部分の外周側面において、周方向の両側にシャフト孔12の内面に沿って周方向に凹む凹部16A、16Bが設けられている。さらに、キー14は、周方向の中央位置において先端から根元部分に向かって切り欠き17が設けられている。このように切り欠き17が設けられることにより、キー14には周方向における弾性機能が付与される。
ここで、第1電磁鋼板11Aにおけるキー14Aの磁石挿入孔13Aに対する位置が、第2電磁鋼板11Bにおけるキー14Bの磁石挿入孔13Bに対する位置に対して周方向にずれてオフセットされている場合について検討する。このような場合には、キー14A、14Bがキー溝22にはまることにより、磁石挿入孔13Aの磁石挿入孔13Bに対する周方向のずれが生じる。
しかしながら、設計公差に起因して、キー14A、14Bがキー溝22にはまることにより生じるずれが設計値よりも大きくなり、第1電磁鋼板11Aの第2電磁鋼板11Bに対する周方向のずれよりも大きくなる場合がある。そのような場合には、永久磁石30には、磁石挿入孔13の内面によって当接する箇所に、大きな応力が作用してしまう。
本実施形態においてはキー14が弾性を備えることにより、キー溝22にキー14が挿入される場合に生じる周方向のズレを抑制することができるので、磁石挿入孔13の内面から永久磁石30に応力が集中することを抑制することができる。さらに、凹部16A、16Bが設けられることにより、キー14が周方向に弾性変形する場合における応力集中を抑制することができる。
第7実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第7実施形態のロータ100によれば、キー14には、切り欠き17が設けられることにより、周方向において薄肉な部分が構成されて弾性が付与される。
ここで、第1電磁鋼板11A、及び、第2電磁鋼板11Bに設けられるキー14の位置がオフセットされており、キー14をキー溝22に挿入する場合にずれが生じる場合について検討する。このオフセットが設計公差に起因して大きくなると、永久磁石30には、磁石挿入孔13A及び磁石挿入孔13Bと当接する部分において比較的大きな力が作用してしまう。本実施形態においては、キー14に弾性が付与されることにより、キー14のキー溝22への挿入により生じる周方向のずれの大きさが実質的に抑制されるので、磁石挿入孔13から永久磁石30に大きな力が作用することを抑制することができる。
(第8実施形態)
第1乃至第7実施形態においては、磁石挿入孔13が外周の近傍に並設される例について説明したが、これに限らない。第8実施形態においては、磁石挿入孔13が外周の近傍以外にも設けられる例について説明する。
図14Aは、第8実施形態のロータコア10の上面図である。紙面手前側に第1電磁鋼板11Aが、紙面奥側に第2電磁鋼板11Bが配置されるものとする。
第1電磁鋼板11Aには、軸方向に直交する断面内において、外周の近傍に設けられる第1磁石挿入孔13A-1と、第1磁石挿入孔13A-1の周方向の外側から軸中心に向かって互いに近づくように設けられる第2磁石挿入孔13A-2及び第3磁石挿入孔13A-3とが設けられている。
第1磁石挿入孔13A-1は外周に沿って配置されており、第1乃至第7実施形態にて示された磁石挿入孔13に対応する。また、第2磁石挿入孔13-2は、第1磁石挿入孔13-1の左外側から軸中心に向かうように設けられ、第3磁石挿入孔13-3は、第1磁石挿入孔13-1の右外側から軸中心に向かうように設けられる。このように、第1磁石挿入孔13A-1、第2磁石挿入孔13A-2及び第3磁石挿入孔13A-3は、逆三角形状の配置となる。さらに、第2磁石挿入孔13-2と第3磁石挿入孔13-3とのそれぞれにおいて、外周から軸中心に向かう方向に延在する対向面は、平行でなく後述のように傾むくように設けられている。
なお、第2電磁鋼板11Bにも、同様の配置で、第1磁石挿入孔13B-1、第2磁石挿入孔13B-2、及び、第3磁石挿入孔13B-3が設けられているものとする。そして、第1磁石挿入孔13A-1及び13A-2には第1永久磁石30-1が挿入され、第2磁石挿入孔13A-2及び13B-2には第2永久磁石30-2が挿入され、第3磁石挿入孔13A-3及び13B-3には第3永久磁石30-3が挿入される。
図14B、及び、図14Cは、図14Aに示した領域A、すなわち、第3磁石挿入孔13A-3の近傍の拡大図である。図14Bは、第1電磁鋼板11Aの第2電磁鋼板11Bに対するズレが比較的小さい状態を示す。図14Cは、第1電磁鋼板11Aが第2電磁鋼板11Bに対して所定の位置までずれた状態を示す。なお、図14B、図14Cにおいては、可読性のために紙面手前側にある第1電磁鋼板11Aにハッチングを付している。
これらの図において、第3磁石挿入孔13A-3の外周から軸中心に向かう方向に延在する対向面のうち、図左側の側面を側面18A-Lとし、図右側の側面を側面18A-Rと称するものとする。そして、同様に、紙面奥側にある第2電磁鋼板11Bは、側面18B-Rと側面18B-Lとを有するものとする。
紙面手前側に位置する第1電磁鋼板11Aは、紙面奥側に位置する第2電磁鋼板11Bに対して図左側すなわち反時計方向にずれて配置されているものとする。そのため、側面18A-R及び側面18A-Lは、側面18B-R及び側面18B-Lに対して反時計方向にずれて配置される。第1電磁鋼板11Aの第3磁石挿入孔13-3からは、第2電磁鋼板11Bの側面のうち、実線で示される側面18B-Lは看視できるが、点線で示される側面18B-Rは看視できない。
ここで、側面18A-Rと側面18A-L、及び、側面18B-Rと側面18B-Lは、平行とならないように設けられている。側面18A-Rの側面18A-Lに対する傾き、及び、側面18B-Rの側面18B-Lに対する傾きは、ロータコア10の組み立て時に互いに平行になるように設計されている。
図14Cに示すように、ロータコア10の組み立て時には、第1電磁鋼板11Aは第2電磁鋼板11Bに対して周方向にずれて、第1電磁鋼板11Aの側面18A-Rと、第2電磁鋼板11Bの側面18B-Lとは、互いに平行となる。永久磁石30は略直方体状に構成されているので、永久磁石30は、磁石挿入孔13において、第1電磁鋼板11Aの側面18A-R、及び、第2電磁鋼板11Bの側面18B-Lと面接触した状態で固定されるので、永久磁石30の当接面には均等に応力が作用する。なお、同様に、第2磁石挿入孔13-2においても永久磁石30は面接触によって固定される。
本実施形態においては、第1磁石挿入孔13-1、第2磁石挿入孔13-2、及び、第3磁石挿入孔13-3が逆三角形状に配置される例について説明したが、これに限らない。第1磁石挿入孔13-1が設けられず、第2磁石挿入孔13-2、及び、第3磁石挿入孔13-3がV型に配置される場合でも、同様に対向面に傾きを設けることで永久磁石30を確実に固定することができる。
第8実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
第8実施形態のロータ100によれば、ロータ100の組立前の段階であって磁石挿入孔13Aと13Bとが重なる状態においては、第1電磁鋼板11Aの第3磁石挿入孔13A-3の側面18A-Rと、第2電磁鋼板11Bの第3磁石挿入孔13B-3の側面18B-Lとは、平行とならずに傾斜するように設けられる。
ロータ100の組み立て時には、第1電磁鋼板11Aは、第2電磁鋼板11Bに対して周方向にずれるように回転されるので、側面18A-Rは側面18B-Lに対してもずれることになる。この際に、内周側と外周側とでは回転中心からの距離に応じて回転移動量が異なるので、あらかじめこの回転移動量の差を考慮して、第1電磁鋼板11Aの側面18A-R及び側面18A-Lと、第2電磁鋼板11Bの側面18B-R及び側面18B-Lとの傾きを決定しておく。このように対向面において傾きを設けることで、組み立て時に第1電磁鋼板11Aの側面18B-Lと第2電磁鋼板11Bの側面18B-Lとを略平行となるように配置できる。そのため、略直方体状の永久磁石30は側面18B-L及び側面18B-Lと面接触される。したがって、永久磁石30には当接面からの均等に応力が作用されることになるので、永久磁石30を確実に固定することができる。
(第9実施形態)
永久磁石30を固定するために、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aと第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとを周方向にずらして配置する必要がある。このような周方向のずれを生じさせるために、第1実施形態に示したように周方向に回転力を作用させることや、第1変形例に示したようにキー14に対する磁石挿入孔13の周方向の位置を第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとでオフセットさせる例などが示された。第9実施形態においては、周方向のずれを発生させる他の機構について説明する。
図15Aは、第9実施形態の磁石挿入孔13を通るロータコア10のの断面図である。
この図によれば、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの間に、3枚の接続鋼板50が設けられている。なお、永久磁石30は、第1電磁鋼板11Aの磁石挿入孔13Aとは右側面30Aにて当接し、第2電磁鋼板11Bの磁石挿入孔13Bとは左側面30Bにて当接する。そして、接続鋼板50には軸方向に接続可能なカシメ機構が設けられており、このカシメ機構を備える接続鋼板50を用いて電磁鋼板11に軸方向に接続する際に、周方向にずれが生じる。3枚の接続鋼板50によって生じる周方向のずれによって、永久磁石30の右側面30Aが磁石挿入孔13Aと当接するとともに、左側面30Bが磁石挿入孔13Bと当接する。
図15Bは、図15AのD-D断面図である。図15Cは、図15AのE-E断面図である。
図15Bには、接続鋼板50の端面が示されている。接続鋼板50は、電磁鋼板11と同等の材質で構成されており、複数の磁石挿入孔51が設けられ、それらの磁石挿入孔51には永久磁石30が挿入される。また、シャフト孔52にはシャフト20が挿入されている。そして、隣接する磁石挿入孔13の周方向の間かつ内径側に、上カシメ機構53と下カシメ機構54とが周方向に交互に設けられている。なお、上カシメ機構53、及び、下カシメ機構54は、軸方向に直交する断面においては周方向に長手方向の辺が設けられる長方形状に構成されている。
上カシメ機構53は、接続鋼板50から、2つの長辺と、短辺のうちの反時計回り方向側の位置にある短辺55とにおいて切り離されている。そのため、時計回り方向側の位置にある短辺56において、上カシメ機構53は接続鋼板50と接続されている。そして、上カシメ機構53は、短辺56を屈曲点として紙面手前方向に向かって斜め方向に折れ曲がっている。
下カシメ機構54は、接続鋼板50から、2つの長辺と、短辺のうちの時計回り方向側の位置にある短辺57とにおいて切り離されている。そのため、反時計回り方向側の位置にある短辺58において、下カシメ機構54は接続鋼板50と接続されている。そして、下カシメ機構54は、短辺58を屈曲点として紙面奥方向に向かって斜め方向に折れ曲がっている。
図15Cには、第2電磁鋼板11Bの軸方向に直交する方向における断面が示されている。永久磁石30は、磁石挿入孔13Bと周方向の時計回り側にある側面と当接している。そして、第2電磁鋼板11Bには、積層された状態において図15Bに示した接続鋼板50の上カシメ機構53及び下カシメ機構54と重なる位置に、カシメ孔19が設けられている。なお、第1電磁鋼板11Aにおいても接続鋼板50の上カシメ機構53及び下カシメ機構54と重複する位置にカシメ孔19が設けられている。
図15Dは、図15CのF-F断面図である。図15Eは、図15CのG-G断面図が示されている。なお、これらの図においては、接続鋼板50だけでなく、第1電磁鋼板11A、及び、第2電磁鋼板11Bも示されている。
図15Dに示されるように、上カシメ機構53は、紙面手前奥方向に延在する短辺のうちの右方の短辺55が接続鋼板50から切り離されるとともに、左方の短辺56が接続鋼板50と接続されている。なお、上カシメ機構53は、左右方向の長辺が接続鋼板50から切り離されているため、端面から斜め上方向に立ち上がるように構成される。
上カシメ機構53においては、短辺56が接続鋼板50と接続された状態で接続鋼板50の上方向に折り曲げられるため、接続鋼板50と同一平面にカシメ孔59が設けられる。そして、1つの接続鋼板50の上カシメ機構53は、積層された状態で、その上方にある接続鋼板50のカシメ孔59、及び、第1電磁鋼板11Aのカシメ孔19の内部に配置されることで、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとを軸方向に接続するとともに周方向にズレを生じさせる。
図15Eには、下カシメ機構54が示されている。下カシメ機構54は、上カシメ機構53と上下方向において対称に構成されている。下カシメ機構54は、板状部材であり、短辺58は接続鋼板50と接続されて、端面から斜め下方向に立ち下がるように構成される。そして、1つの接続鋼板50の下カシメ機構54は、その下方にある接続鋼板50のカシメ孔59、及び、第2電磁鋼板11Bのカシメ孔59の内部に配置されることで、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとを軸方向に接続するとともに周方向にズレを生じさせる。
このようにすることで、ロータ100の組立において周方向に回転させるように力を作用させることや、キー14の磁石挿入孔13に対する位置を第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとで周方向にずれるようにオフセットされる構造を有さなくても、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの間に周方向のずれを発生させて、永久磁石30を固定することができる。
第9実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第9実施形態のロータ100によれば、ロータコア10は、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとの間に接続鋼板50が設けられている。接続鋼板50は、端面に上カシメ機構53と下カシメ機構54とを有している。そして、上カシメ機構53及び下カシメ機構54は、積層された状態で、接続鋼板50に設けられるカシメ孔59や、第1電磁鋼板11A及び第2電磁鋼板11Bに設けられるカシメ孔19の中に配置されることで、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとを周方向にずれた状態で積層することができる。
このようにすることで、第1実施形態に示したように周方向に回転させる力を作用させる方法や、第1変形例に示したようにキー14と磁石挿入孔13との位置を第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとで周方向にずらす機構ではない方法で、第1電磁鋼板11Aと第2電磁鋼板11Bとを周方向にずれを生じさせて、永久磁石30の磁石挿入孔13における固定を確実に行うことができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。