JP7084133B2 - 液晶性樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含む原料樹脂を、ナノダイヤモンド粒子の存在下で固相重合させる、液晶性樹脂の製造方法。
[2]ナノダイヤモンド粒子が、爆轟法により得られたものである、[1]に記載の液晶性樹脂の製造方法。
[3]ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が2nm以上50μm以下である、[1]又は[2]に記載の液晶性樹脂の製造方法。
[4]ナノダイヤモンド粒子の使用量が、反応物中0.001~5質量%である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の液晶性樹脂の製造方法。
[5]固相重合温度が、原料樹脂の液晶形成温度よりも10~120℃低い温度である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の液晶性樹脂の製造方法。
本発明者は、液晶性樹脂の製造方法について研究を重ねる過程で、ナノダイヤモンド粒子が、液晶性樹脂を固相重合する際の重縮合速度を上昇させる、触媒のような作用を有することを発見した。本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法は、この知見に基づくものであり、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含む原料樹脂を、ナノダイヤモンド粒子の存在下で固相重合させる工程を有する。
原料樹脂は、固相重合反応の原料となる樹脂であり、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含む。液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドとしては、特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルを用いることもできる。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、を挙げることができる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
原料樹脂は、粉粒体混合物の形態で用いてもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)の形態で用いてもよい。
ナノダイヤモンド粒子は、50μm以下のメディアン径(粒径D50)を有するダイヤモンド粒子のことをいう。ナノダイヤモンド粒子は、一次粒子であってもよく、一次粒子が複数集成して形成された二次粒子であってもよい。ナノダイヤモンドの一次粒子とは、粒径が10nm以下のナノダイヤモンドのことをいう。二次粒子は、一次粒子同士が強く相互作用して集成している凝着体であり、後述する爆轟法で得られる粗生成物は、通常、二次粒子である場合が多い。
原料樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のその他の熱可塑性樹脂を配合することができる。その場合のその他の熱可塑性樹脂の配合量は、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミド100質量部に対して、1~40質量部とすることができる。
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
充填材の配合量は、反応物中、1~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
また、原料樹脂には、その他の成分として、酸化防止剤、安定剤、滑剤、顔料、結晶核剤等の添加剤が配合されていてもよい。
固相重合工程では、上記した原料樹脂を、上記したナノダイヤモンド粒子の存在下で固相重合させる。固相重合により、原料樹脂の分子量の増加を図ることができ、強度や耐熱性に優れた液晶性樹脂(LCP)を得ることができる。
液晶性樹脂の製造方法は、固相重合工程の前に、原料樹脂を準備するための溶融重合工程を有していてもよい。溶融重合工程は、上記した液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドの調製方法と同様であるからここでは記載を省略する。液晶性樹脂の製造方法は、さらに溶融混練の工程等を有していてもよい。
本実施形態に係る製造方法により得られる液晶性樹脂の融点は、特に限定されず、250~380℃とすることができる。液晶性樹脂の溶融粘度は、特に限定されず、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が、5Pa・s以上100Pa・s以下であり、さらに好ましくは、10Pa・s以上50Pa・s以下である。「液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度」とは、液晶性樹脂が溶融粘度の測定が可能な程度まで溶融することができるシリンダー温度を意味しており、融点よりも何℃高いシリンダー温度とするかは、10~30℃の範囲で原料樹脂の種類によって異なる。
(原料樹脂LCP1の準備:溶融重合工程)
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズして原料樹脂LCP1ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1660g(73モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;837g(27モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
得られた原料樹脂LCP1ペレットとナノダイヤモンド粒子(株式会社ダイセル製、メディアン径6.7μm)、ガラス繊維(日東紡(株)製PF70E001、繊維径10μm、平均繊維長70μm)とを表1に示す配合量で、シリンダー温度300℃の二軸押出機で溶融混練して、ナノダイヤモンド粒子を含有する樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットの溶融粘度を測定したところ、69Pa・sであった。得られた樹脂ペレットを固相重合装置の反応容器内に入れ、窒素気流下、260℃で10時間の熱処理を行って、目的のポリマー(液晶性樹脂)を得た。途中、反応時間が3時間の段階で生成したポリマーを回収して溶融粘度を測定したところ、94Pa・sであった。反応終了後、得られたポリマーの溶融粘度を測定したところ、192Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度の測定方法については以下に示す。測定した溶融粘度から、原料樹脂の溶融粘度(固相重合0時間)に対する、それぞれの固相重合時間における溶融粘度の割合(比)を溶融粘度上昇率として算出し、算出した溶融粘度上昇率及び固相重合時間(h)の関係を図1に示した。
(原料樹脂LCP2の準備:溶融重合工程)
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズして原料樹脂LCP2ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;157g(5モル%)
テレフタル酸;484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル;388g(12.5モル%)
4-アセトキシアミノフェノール;160g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
得られた原料樹脂LCP2ペレットとナノダイヤモンド粒子(株式会社ダイセル製、メディアン径6.7μm)、ガラス繊維(日東紡(株)製PF70E001、繊維径10μm、平均繊維長70μm)とを表1に示す配合量で、シリンダー温度350℃の二軸押出機で溶融混練して、ナノダイヤモンド粒子を含有する樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットの溶融粘度を測定したところ、42Pa・sであった。得られた樹脂ペレットを固相重合装置の反応容器内に入れ、窒素気流下、290℃で10時間の熱処理を行って、目的のポリマー(液晶性樹脂)を得た。途中、反応時間が3時間の段階で生成したポリマーを回収して溶融粘度を測定したところ、61Pa・sであった。反応終了後、得られたポリマーの溶融粘度を測定したところ、141Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度の測定方法については以下に示す。測定した溶融粘度から実施例1と同様にして算出した溶融粘度上昇率、及び固相重合時間(h)の関係を図2に示した。
固相重合工程においてナノダイヤモンド粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして液晶性樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットの溶融粘度を測定したところ、66Pa・sであった。実施例1と同様に、反応時間が3時間の段階で生成したポリマーを回収して溶融粘度を測定したところ、82Pa・sであった。反応終了後、得られたポリマーの溶融粘度を測定したところ、121Pa・sであった。測定した溶融粘度から実施例1と同様にして算出した溶融粘度上昇率、及び固相重合時間(h)の関係を図1に示した。
固相重合工程においてナノダイヤモンド粒子を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして液晶性樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットの溶融粘度を測定したところ、44Pa・sであった。実施例2と同様に、反応時間が3時間の段階で生成したポリマーを回収して溶融粘度を測定したところ、64Pa・sであった。反応終了後、得られたポリマーの溶融粘度を測定したところ、131Pa・sであった。測定した溶融粘度から実施例1と同様にして算出した溶融粘度上昇率、及び固相重合時間(h)の関係を図2に示した。
実施例及び比較例の樹脂組成物ペレットについて、キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、以下の条件で、見かけの溶融粘度をISO 11443に準拠して測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
300℃(実施例1、比較例1)
360℃(実施例2、比較例2)
せん断速度:1000sec-1
Claims (4)
- 液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含む原料樹脂を、ナノダイヤモンド粒子の存在下で固相重合させ、
ナノダイヤモンド粒子の使用量が、反応物中0.001~5質量%である、液晶性樹脂の製造方法。 - ナノダイヤモンド粒子が、爆轟法により得られたものである、請求項1に記載の液晶性樹脂の製造方法。
- ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が2nm以上50μm以下である、請求項1又は2に記載の液晶性樹脂の製造方法。
- 固相重合温度が、原料樹脂の液晶形成温度よりも10~120℃低い温度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶性樹脂の製造方法。
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