JP7078424B2 - 積層鉄心の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、積層鉄心の製造方法に関する。
回転子積層鉄心は、通常、金属板(例えば、電磁鋼板)を所定形状に打ち抜いて得られる複数の打抜部材を積層することにより得られる。一般に、金属板(例えば、電磁鋼板)の厚さは、完全に均一ではなく、僅かに変動している。そのため、金属板から打抜部材を所定形状で打ち抜いて1枚ずつ積層し、回転子積層鉄心を得た場合、回転子積層鉄心の積厚(積層方向における回転子積層鉄心の高さ)にばらつきが生ずる場合がある。回転子積層鉄心ごとに積厚のばらつきが存在すると、当該回転子積層鉄心を用いてモータを構成した場合、モータのトルクにばらつき等が生じ、モータ性能に影響を及ぼすことがある。
そこで、特許文献1に開示される回転子積層鉄心の製造方法は、金属板から打抜部材を打ち抜いて1枚ずつ積層することにより仮積層体を得ることと、仮積層体を加圧して積層体を得ることと、積層体の積厚を測定することとを含む。仮積層体が加圧されることにより、打抜部材同士の間にある隙間が低減される。そのため、積厚測定時において積層体の積厚が安定する。従って、より正確な積厚が得られるので、積厚測定後に打抜部材の積層枚数を調節(増減)することにより、回転子積層鉄心ごとの積厚のばらつきが抑制される。
特開2010-143125号公報
ところで、仮積層体から荷重を除荷すると、積層体を構成する打抜部材が積層方向において拡がろうとする現象(「スプリングバック」とも呼ばれる)が生ずることがある。この場合、積層体の積厚を測定する積厚測定処理の後から、積層体をさらに加工する加工処理までの間に、積層体の積厚が変化してしまいうる。加工処理では、積厚測定処理において測定された積厚を基準に実施されるので、積厚の変化によって加工処理の良否に影響が生ずる可能性がある。
そこで、本開示は、後続の加工処理を良好に実施することが可能な積層鉄心の製造方法を説明する。
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の製造方法は、複数の打抜部材を積層して仮積層体を形成することと、第1の荷重で仮積層体を加圧して積層体を得ることと、第1の荷重以下の第2の荷重で積層体を加圧しつつ積層体を加工することとを含む。
本開示に係る積層鉄心の製造方法によれば、後続の加工処理を良好に実施することが可能となる。
図1は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図である。 図2は、図1のII-II線断面図である。 図3は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。 図4は、磁石取付装置により回転子積層鉄心の磁石挿入孔に永久磁石を取り付ける様子を説明するための断面図である。 図5は、回転子積層鉄心の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[回転子積層鉄心の構成]
まず、図1及び図2を参照して、回転子積層鉄心1(積層鉄心)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、図示しない端面板及びシャフトが回転子積層鉄心1に取り付けられることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。本実施形態における回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータに用いられる。
回転子積層鉄心1は、図1に示されるように、積層体10と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
積層体10は、図1に示されるように、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。すなわち、軸孔10aは、積層体10の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)に延びている。積層方向は、中心軸Axの延在方向でもある。本実施形態において積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通される。
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は、図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は積層方向に延びている。
磁石挿入孔16の形状は、本実施形態では、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔である。磁石挿入孔16の数は、本実施形態では6個である。磁石挿入孔16は、上方から見て時計回りにこの順に並んでいる。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、図1及び図2に示されるように、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
永久磁石12は、図1及び図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入された後の磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定する機能と、積層方向(上下方向)で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂14を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図3及び図4を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、加圧装置200と、積厚測定装置300と、磁石取付装置400と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して仮積層体11を製造する機能とを有する。本明細書において、仮積層体11とは、積層体10と同様に複数の打抜部材Wが積層され且つカシメ部18により互いに締結された状態ではあるが、打抜部材W同士が密着しておらず、打抜部材W同士の間にある程度の隙間が存在している状態のものをいう。
仮積層体11は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と加圧装置200との間を延びるように設けられたコンベアCvに載置される。コンベアCvは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、仮積層体11を加圧装置200に送り出す。なお、打抜装置130と加圧装置200との間において、仮積層体11はコンベアCv以外によって搬送されてもよい。例えば、仮積層体11は、コンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
加圧装置200は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。加圧装置200は、積層方向から所定の荷重P1(第1の荷重)を仮積層体11に付与する機能を有する。仮積層体11に付与される荷重P1は、積層体10のサイズによって種々の大きさとなりうるが、例えば、0.1トン~50トン程度であってもよいし、0.5トン~30トン程度であってもよいし、1トン~10トン程度であってもよい。荷重P1が0.1トン以上であると、スプリングバックが生じ難くなる傾向にある。一方、仮積層体11に必要以上の大きな荷重が付与されると、形成された積層体10が変形してしまうことがありうるが、荷重P1が50トン以下であると、そのような積層体10の変形が生じ難くなる傾向にある。
加圧装置200は、一対の挟持部材201,202と、昇降機構203とを含む。一対の挟持部材201,202は、矩形状を呈する平板である。一対の挟持部材201,202は、上下方向に並ぶように位置している。下側に位置する挟持部材201の上面には、上方に向けて延びる複数の案内シャフトが設けられていてもよい。各案内シャフトは、挟持部材201の各角部にそれぞれ位置している。上側に位置する挟持部材202の各角部には、対応する案内シャフトが挿通可能な貫通孔が設けられていてもよい。
昇降機構203は、挟持部材202に接続されている。昇降機構203は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、挟持部材202を上下方向において往復動させる。すなわち、昇降機構203は、案内シャフトに沿って挟持部材202を上下動させることにより、挟持部材201,202を互いに近接及び離間させるように構成されている。なお、昇降機構203は、挟持部材202を上下動させるのであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等であってもよい。
積厚測定装置300は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。積厚測定装置300は、積層体10の積厚(積層方向における積層体10の高さ)を測定する機能を有する。積厚測定装置300は、積層方向から所定の荷重P2を積層体10に付与した状態で積層体10の積厚を測定する。
積層体10に付与される荷重P2は、荷重P1以下に設定されている。荷重P2は、積層体10のサイズによって種々の大きさとなりうるが、例えば、加圧後の積層体10の厚さTが、加圧前の積層体10の厚さT0の99.9%以上で且つ厚さT0未満(0.999T0≦T<T0)を満たす大きさであってもよい。
積厚測定装置300は、一対の挟持部材301,302と、昇降機構303と、距離センサ304とを含む。一対の挟持部材301,302は、矩形状を呈する平板である。一対の挟持部材301,302は、上下方向に並ぶように位置している。下側に位置する挟持部材301の上面には、上方に向けて延びる複数の案内シャフトが設けられていてもよい。各案内シャフトは、挟持部材301の各角部にそれぞれ位置している。上側に位置する挟持部材302の各角部には、対応する案内シャフトが挿通可能な貫通孔が設けられていてもよい。
昇降機構303は、挟持部材302に接続されている。昇降機構303は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、挟持部材302を上下方向において往復動させる。すなわち、昇降機構303は、挟持部材302を上下動させることにより、挟持部材301,302を互いに近接及び離間させるように構成されている。なお、昇降機構303は、挟持部材302を上下動させるのであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等であってもよい。
距離センサ304は、例えば、図3に示されるように挟持部材302に設けられている。距離センサ304は、挟持部材301,302が積層体10を挟持した状態で、挟持部材301と挟持部材302との離間距離を測定するように構成されている。すなわち、距離センサ304は、積層体10の積厚を間接的に測定する。距離センサ304によって測定された積層体10の積厚のデータは、コントローラCtrに送信される。積厚が測定された積層体10は、積厚測定装置300と磁石取付装置400との間において、コンベアによって搬送されてもよいし、コンテナに載置された状態で人手によって搬送されてもよい。
磁石取付装置400は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置400は、各磁石挿入孔16に永久磁石12を挿通する機能と、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填する機能とを有する。磁石取付装置400は、図4に詳しく示されるように、下型410と、上型420と、複数のプランジャ430とを含む。
下型410は、ベース部材411と、ベース部材411に設けられた挿通ポスト412とを含む。ベース部材411は、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材411は、積層体10を載置可能に構成されている。挿通ポスト412は、ベース部材411の略中央部に位置しており、ベース部材411の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト412は、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。
上型420は、下型410と共に積層体10を積層方向(積層体10の高さ方向)において挟持可能に構成されている。上型420が下型410と共に積層体10を挟持する際、積層体10には積層方向から所定の荷重P3(第2の荷重)が付与される。積層体10に付与される荷重P3は、荷重P1以下に設定されている。荷重P3は、積層体10のサイズによって種々の大きさとなりうるが、例えば、0.1トン~10トン程度であってもよい。
上型420は、ベース部材421と、内蔵熱源422とを含む。ベース部材421は、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材421には、一つの貫通孔421aと、複数の収容孔421bとが設けられている。貫通孔421aは、ベース部材421の略中央部に位置している。貫通孔421aは、挿通ポスト412に対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト412が挿通可能である。
複数の収容孔421bは、ベース部材421を貫通しており、貫通孔421aの周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各収容孔421bは、下型410及び上型420が積層体10を挟持した際に、積層体10の磁石挿入孔16にそれぞれ対応する箇所に位置している。各収容孔421bは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容する機能を有する。
内蔵熱源422は、例えば、ベース部材421に内蔵されたヒータである。内蔵熱源422が動作すると、ベース部材421が加熱され、ベース部材421に接触している積層体10が加熱されると共に、各収容孔421bに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
複数のプランジャ430は、上型420の上方に位置している。各プランジャ430は、図示しない駆動源によって、対応する収容孔421bに対して挿抜可能となるように構成されている。
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、加圧装置200、積厚測定装置300及び磁石取付装置400をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
コントローラCtrは、積厚測定装置300によって測定された積厚のデータが基準内であるか否かを判断する機能を有する。積厚が基準内にある積層体10は、コントローラCtrにおいて良品と判断され、磁石取付装置400に搬送される。一方、積厚が基準外にある積層体10は、コントローラCtrにおいて不良品と判断され、製造ラインから除外される。
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図3~図5を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、打抜装置130により電磁鋼板ESを順次打ち抜きつつ打抜部材Wを積層して、仮積層体11を形成する(図5のステップS11参照)。
次に、仮積層体11を加圧装置200に搬送して、挟持部材201上に仮積層体11を載置する。次に、コントローラCtrが昇降機構203に指示して、挟持部材202を降下させる。これにより、仮積層体11が挟持部材201,202に挟持され、仮積層体11が荷重P1にて加圧される。その結果、打抜部材W同士の間の隙間が減じられて、積層体10が形成される(図5のステップS12参照)。
次に、積層体10を積厚測定装置300に搬送して、挟持部材301上に積層体10を載置する。次に、コントローラCtrが昇降機構303に指示して、挟持部材302を降下させる。これにより、積層体10が挟持部材301,302に挟持され、積層体10が荷重P2にて加圧される。この状態で、コントローラCtrが距離センサ304に指示して、挟持部材301,302間の離間距離を測定する。距離センサ304は、測定したデータを積層体10の積厚のデータとしてコントローラCtrに送信する。これにより、積層体10の積厚が測定される(図5のステップS13参照)。
次に、コントローラCtrは、距離センサ304から送信された積厚のデータが、所定の基準内であるか否かを判断する(図5のステップS14参照)。積層体10の積厚が所定の基準外であるとコントローラCtrが判断すると(図5のステップS14でNO)、当該積層体10が不良品である可能性が高いので、当該積層体10を製造ラインから除外する(図5のステップS15参照)。なお、積層体10の積厚が所定の基準よりも大きい場合には、当該積層体10の積厚が所定の基準内となるよう少なくとも1枚の打抜部材Wを当該積層体10から取り外して、製造ラインに戻してもよい。
一方、積層体10の積厚が所定の基準内であるとコントローラCtrが判断すると(図5のステップS14でYES)、当該積層体10を磁石取付装置400に搬送して、図4に示されるように、磁石取付装置400の下型410に積層体10を載置する。次に、各磁石挿入孔16内に永久磁石12を挿入する。各磁石挿入孔16内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、磁石取付装置400が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。
次に、上型420を積層体10上に載置する。その後、積層体10は、下型410及び上型420で積層方向から挟持され、積層体10が荷重P3にて加圧される。次に、各収容孔421bに樹脂ペレットPを投入する。上型420の内蔵熱源422により樹脂ペレットPが溶融状態となると、溶融樹脂をプランジャ430によって各磁石挿入孔16内に注入する。このとき、積層体10は、内蔵熱源422により、例えば150℃~180℃程度に加熱される。その後、溶融樹脂が固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成される。こうして、積層体10に永久磁石12が固化樹脂14と共に取り付けられる(図5のステップS16参照)。下型410及び上型420が積層体10から取り外されると、回転子積層鉄心1が完成する。
[作用]
以上のような本実施形態では、仮積層体11が加圧される荷重P1は、積層体10のモールド加工時における荷重P3以上に設定されている。そのため、仮積層体11が十分に加圧されるので、積層体10のモールド加工時においてスプリングバックが抑制される。換言すれば、仮積層体11の加圧時の荷重P1を積層体10のモールド加工時の荷重P3以上とすることで、積層体10の積厚が、積層体10のモールド加工の前後で変化し難くなる。従って、加圧処理の後続のモールド加工処理を良好に実施することが可能となる。
仮に、仮積層体11の加圧処理がされない場合、荷重P3で加圧しつつモールド加工が実施されると、複数の打抜部材W同士の隙間がある程度縮まった状態で複数の打抜部材W同士が固化樹脂14によって接合される。ところが、スプリングバックにより複数の打抜部材Wが積層方向において拡がろうとするので、固化樹脂14に損傷(クラック等)が生じうる。しかしながら、本実施形態では、積層体10の積厚が積層体10の加工の前後で変化し難いので、固化樹脂14の損傷が生じ難くなる。
本実施形態では、荷重P1で仮積層体11が加圧されて、積層体10の積厚が変化し難くなった後に、積層体10の積厚が測定される。そのため、積層体10の積厚をより正確に測定することが可能となる。またこの場合、積層体10の加工処理の前に積層体10の積厚が測定されるので、積層体10の積厚が基準を満たしているか否かを、加工処理の前に判定しうる。そのため、加工処理を経た後に不良品が発生して、材料と加工処理のコストとが無駄になってしまうことを抑制することが可能となる。
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
(1)上記の実施形態では、積層体10の形成後で且つ積層体10に対するモールド加工前に積層体10の積厚を測定していたが、積層体10の積厚測定処理は、積層体10の形成後の任意の時点で行われてもよい。例えば、積層体10に対するモールド加工後に、積層体10の積厚が測定されてもよい。また、例えば、積層体10の形成後に積層体10の積厚が測定され(第1回目の積厚測定)、続いて積層体10に対してモールド加工が行われ、さらに続いて積層体10の積厚が測定されてもよい(第2回目の積厚測定)。これらの場合も、荷重P1で仮積層体11が加圧されて、積層体10の積厚が変化し難くなった後に、積層体10の積厚が測定されるので、積層体10の積厚をより正確に測定することが可能となる。
(2)上記の実施形態では、積層体10に対してモールド加工(溶融樹脂の磁石挿入孔16への注入)を行っていたが、積層体10に対して他の加工が行われてもよい。例えば、積層体10の周面に対して溶接加工が行われてもよいし、積層体10の表面に識別コードが形成されてもよい(刻印加工)。
積層体10に溶接加工が行われる場合、溶接ビードによって複数の打抜部材Wが接合される。仮に、仮積層体11の加圧処理がされない場合、荷重P3で加圧しつつ溶接加工が実施されると、複数の打抜部材W同士の隙間がある程度縮まった状態で複数の打抜部材W同士が溶接ビードによって接合される。ところが、スプリングバックにより複数の打抜部材Wが積層方向において拡がろうとするので、溶接ビードに損傷(クラック等)が生じうる。しかしながら、本開示の積層体10の積厚が積層体10の加工の前後で変化し難いので、溶接ビードの損傷が生じ難くなる。
積層体10に刻印加工が行われる場合、積層体10の表面(例えば、上端面、下端面等)にレーザビームが照射されることにより、識別コードが形成される。仮に、仮積層体11の加圧処理がされない場合、積層体10の表面に識別コードを形成しようとレーザビームを積層体に照射する際に、積層体10の積厚が安定しないので、レーザ光源と積層体10との間の距離が変動してしまいうる。そのため、識別コードの品質にばらつきが生じることがある。しかしながら、本開示の積層体10の積厚は積層体10の加工の前後で変化し難いので、積層体10の表面に形成される識別コードの品質を良好に維持することが可能となる。なお、積層体10の刻印加工に際しても、積層体10が所定の荷重(例えば、荷重P3)で加圧されていてもよいし、積層体10が加圧されていなくてもよい。
識別コードは、当該識別コードを備える回転子積層鉄心1の個体(例えば、品種、製造日時、使用材料、製造ライン等)を識別するための個体情報を保持する機能を有する。識別コードは、明模様と暗模様との組み合わせにより当該個体情報を保持することができれば特に限定されず、例えば、バーコードであってもよいし、二次元コードであってもよい。二次元コードとしては、例えば、QRコード(登録商標)、DataMatrix、Vericode等であってもよい。あるいは、識別コードは、コントラストを高めることができれば、白色及び黒色の他に、他の種々の色を組み合わせて構成されていてもよい。例えば、識別コードは、階層化二次元コード(色情報を多層化してなる二次元形状コード)であってもよい。階層化二次元コードとしては、例えば、PMコード(登録商標)等であってもよい。
(3)2つ以上の永久磁石12が組み合わされた一組の磁石組が、一つの磁石挿入孔16内にそれぞれ挿入されていてもよい。この場合、一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の長手方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の延在方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が当該長手方向に並ぶと共に複数の永久磁石12が当該延在方向において並んでいてもよい。
(4)上記の実施形態では、上型420の収容孔421b内に収容されている樹脂ペレットPを内蔵熱源422により溶融し、永久磁石12が挿入されている磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂(溶融樹脂)を注入していたが、他の種々の方法によって永久磁石12を磁石挿入孔16内に保持させてもよい。例えば、磁石挿入孔16内に永久磁石12及び樹脂ペレットPが投入された状態で積層体10を加熱し、樹脂ペレットPを溶融させることにより、磁石挿入孔16内に樹脂を充填してもよい。また例えば、磁石挿入孔16内に樹脂ペレットPが投入された状態で、加熱された永久磁石12を磁石挿入孔16に挿入して、永久磁石12の熱で樹脂ペレットPを溶融させることにより、磁石挿入孔16内に樹脂を充填してもよい。
(5)上記の実施形態では、回転子積層鉄心1について説明したが、固定子積層鉄心に本発明を適用してもよい。この場合、複数の鉄心片が組み合わされてなる分割型の固定子積層鉄心であってもよいし、非分割型の固定子積層鉄心であってもよい。
[摘記]
例1.本開示の一つの例に係る積層鉄心(1)の製造方法は、複数の打抜部材(W)を積層して仮積層体(11)を形成することと、第1の荷重(P1)で仮積層体(11)を加圧して積層体(10)を得ることと、第1の荷重(P1)以下の第2の荷重(P3)で積層体(10)を加圧しつつ積層体(10)を加工することとを含む。この場合、仮積層体(11)が加圧される第1の荷重(P1)は、積層体(10)の加工時における第2の荷重(P3)以上である。そのため、仮積層体(11)が十分に加圧されるので、積層体(10)の加工時においてスプリングバックが抑制される。換言すれば、仮積層体(11)の加圧時の荷重(第1の荷重)(P1)を積層体(10)の加工時の荷重(第2の荷重)(P3)以上とすることで、積層体(10)の積厚が、積層体(10)の加工の前後で変化し難くなる。従って、加圧処理の後続の加工処理を良好に実施することが可能となる。なお、特許文献1には、積層体の加工時の荷重について記載も示唆もされていない。そのため、当業者は、特許文献1に接したとしても、仮積層体(11)の加圧時の荷重(P1)と積層体(10)の加工時の荷重(P3)との関係に想到するに至らない。
例2.例1の方法において、積層体(10)を加工することは、積層体(10)に対してモールド加工すること、積層体(10)に対して溶接加工すること、又は、積層体(10)にレーザビームを照射して積層体(10)の表面に識別コードを形成することを含んでもよい。仮に、仮積層体(11)の加圧処理がされない場合、第2の荷重(P3)で加圧しつつモールド加工または溶接加工すると、複数の打抜部材(W)同士の隙間がある程度縮まった状態で複数の打抜部材(W)同士が樹脂又は溶接ビードによって接合される。ところが、スプリングバックにより複数の打抜部材(W)が積層方向において拡がろうとするので、樹脂または溶接ビードに損傷(クラック等)が生じうる。しかしながら、例2によれば、積層体(10)の積厚が積層体(10)の加工の前後で変化し難いので、樹脂又は溶接ビードの損傷が生じ難くなる。一方、仮に、仮積層体(11)の加圧処理がされない場合、積層体(10)の表面に識別コードを形成しようとレーザビームを積層体(10)に照射する際に、積層体(10)の積厚が安定しないので、レーザ光源と積層体(10)との間の距離が変動してしまいうる。そのため、識別コードの品質にばらつきが生じることがある。しかしながら、例2によれば、積層体(10)の積厚が積層体(10)の加工の前後で変化し難いので、積層体(10)の表面に形成される識別コードの品質を良好に維持することが可能となる。
例3.例1又は2の方法は、積層体(10)を得ることの後に、積層体(10)の積厚を測定することをさらに含んでもよい。この場合、第1の荷重(P1)で仮積層体(11)が加圧されて、積層体(10)の積厚が変化し難くなった後に、積層体(10)の積厚が測定される。そのため、積層体(10)の積厚をより正確に測定することが可能となる。
例4.例1又は2の方法は、積層体(10)を得ることの後で且つ積層体(10)を加工することの前に、積層体(10)の積厚を測定することをさらに含んでもよい。この場合、第1の荷重(P1)で仮積層体(11)が加圧されて、積層体(10)の積厚が変化し難くなった後に、積層体(10)の積厚が測定される。そのため、積層体(10)の積厚をより正確に測定することが可能となる。またこの場合、積層体(10)の加工処理の前に積層体(10)の積厚が測定されるので、積層体(10)の積厚が基準を満たしているか否かを、加工処理の前に判定しうる。そのため、加工処理を経た後に不良品が発生して、材料と加工処理のコストとが無駄になってしまうことを抑制することが可能となる。
例5.例1~4のいずれかの方法において、第1の荷重(P1)は0.1トン以上であってもよい。第1の荷重(P1)が0.1トン以上であると、スプリングバックが生じ難くなる傾向にある。
例6.例1~5のいずれかの方法において、第1の荷重(P1)は50トン以下であってもよい。仮積層体(11)に必要以上の大きな荷重が付与されると、積層体(10)が変形してしまうことがありうるが、第1の荷重(P1)が50トン以下であると、そのような積層体(10)の変形が生じ難くなる傾向にある。
1…回転子積層鉄心(積層鉄心)、10…積層体、11…仮積層体、100…回転子積層鉄心の製造装置、130…打抜装置、200…加圧装置、300…積厚測定装置、400…磁石取付装置、P1…荷重(第1の荷重)、P3…荷重(第2の荷重)、W…打抜部材。

Claims (5)

  1. 複数の打抜部材を積層して仮積層体を形成することと、
    第1の荷重で前記仮積層体を加圧して積層体を得ることと、
    前記第1の荷重以下の第2の荷重で前記積層体を加圧しつつ前記積層体を加工することとを含み、
    前記積層体を加工することは、前記積層体に対してモールド加工すること、又は、前記積層体に対して溶接加工することを含む、積層鉄心の製造方法。
  2. 前記積層体を得ることの後に、前記積層体の積厚を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記積層体を得ることの後で且つ前記積層体を加工することの前に、前記積層体の積厚を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第1の荷重は0.1トン以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記第1の荷重は50トン以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
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