以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1〜図3を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
固定子積層鉄心1は、図1に示されるように、積層体2(第2の鉄心部材)と、一対の端面部材3とを備える。積層体2は、図2及び図3に示されるように、円筒形状を呈している。すなわち、積層体2の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔2aが設けられている。貫通孔2a内には、回転子が配置可能である。
積層体2は、ヨーク部4と、複数のティース部5とを有する。ヨーク部4は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部4の径方向(以下、単に「径方向」という。)における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
各ティース部5は、ヨーク部4の内縁から中心軸Ax側に向かうように径方向(ヨーク部4に対して交差する方向)に沿って延びている。すなわち、各ティース部5は、ヨーク部4の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。各ティース部5は、周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部5の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット6が画定されている。
積層体2は、複数の打抜部材W1(第2の鉄心部材)が積み重ねられて構成されている。打抜部材W1は、後述する電磁鋼板ES(金属板;被加工板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体2と対応する形状を呈している。積層体2は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W1同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材W1を積層することをいう。転積は、主に積層体2の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
複数の打抜部材W1は、カシメ部7によって相互に接合されている。カシメ部7は、ヨーク部4及びティース部5にそれぞれ設けられている。カシメ部7は、図2に示されるように、積層体2の最下層以外をなす打抜部材W1に形成されたカシメ7aと、積層体2の最下層をなす打抜部材W1に形成された貫通孔7bとを有する。カシメ7aは、打抜部材W1の表面側に形成された凹部と、打抜部材W1の裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の打抜部材W1のカシメ7aの凹部は、隣り合う他の打抜部材W1のカシメ7aの凸部と嵌合可能である。貫通孔7bには、最下層の打抜部材W1に隣接する打抜部材W1のカシメ7aの凸部が接合される。貫通孔7bは、積層体2を連続して製造する際、既に製造された固定子積層鉄心1に対し、続いて形成された打抜部材W1がカシメ7aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
複数の打抜部材W1同士は、カシメ部7に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W1同士は、例えば、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材W1に仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材W1を締結して仮積層体を得た後、仮カシメを当該仮積層体から除去することによって、積層体2を得てもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材W1を一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(固定子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
積層体2は、図2及び図3に示されるように、複数の収容部8を含む。収容部8は、例えば、各ティース部5の上端面側及び下端面側にそれぞれ設けられている。収容部8は、図2に示されるような凹形状を呈する穴であってもよいし、高さ方向において積層体2内を延びる貫通孔であってもよい。この場合、各ティース部5の上端面側の収容部8は、積層体2の上端面側に位置する少なくとも一枚の打抜部材W1に設けられた貫通孔8aが重なり合うことで構成される。各ティース部5の下端面側の収容部8も同様に構成される。
一対の端面部材3はそれぞれ、積層体2の上端面側及び下端面側に配置されている。端面部材3は、打抜部材W2(第1の鉄心部材)と、樹脂被覆材10とを含む。打抜部材W2は、打抜部材W1と同様の形状を呈している。すなわち、打抜部材W2は、ヨーク部4に対応する部分と、ティース部5に対応する部分とを有する。そのため、一対の端面部材3がそれぞれ積層体2の上端面及び下端面に載置された状態において、打抜部材W2は、打抜部材W1と共に、固定子積層鉄心1の本体9を構成する。
本体9の上端側に位置する打抜部材W2の外表面は、本体9の上側の端面S1(上端面)を構成している。本体9の下端側に位置する打抜部材W2の外表面は、本体9の下側の端面S2(下端面)を構成している。端面S1,S2はそれぞれ、これらに樹脂被覆材10が形成される形成面として機能する。端面S1,S2はそれぞれ、ヨーク部4に対応するヨーク領域R1と、ティース部5に対応するティース領域R2とを含む。各ティース領域R2はそれぞれ、貫通孔R2aを含む。各貫通孔R2aは、対応する収容部8(貫通孔8a)と高さ方向で重なり合うように位置している。
樹脂被覆材10は、図1及び図2に示されるように、各打抜部材W2の端面S1,S2にそれぞれ設けられている。樹脂被覆材10は、複数の主部11と、環状部12と、複数の突出部13と、複数の突出部14とを含む。
各主部11はそれぞれ、対応するティース領域R2上に載置されている。そのため、各主部11はそれぞれ、打抜部材W2の径方向において直線状に延びており、対応するティース領域R2を全体的に被覆している。環状部12は、ヨーク領域R1上で且つヨーク領域R1の内径側に載置されている。そのため、環状部12は、打抜部材W2の周方向において環状に延びており、ヨーク領域R1を部分的に被覆している。
各突出部13はそれぞれ、対応するティース領域R2の先端部に位置している。各突出部14はそれぞれ、対応するティース領域R2と隣接するようにヨーク領域R1上に位置している。各突出部13,14はそれぞれ、高さ方向において外方に向けて突出している。これらの突出部13,14は、ティース部5の周囲に巻線が巻回される際に、巻線がティース部5から脱落するのを防ぐストッパとして機能する。突出部13の高さは、本実施形態では突出部14の高さよりも低く設定されているが、突出部14の高さと同程度であってもよいし、突出部14の高さよりも高くてもよい。
樹脂被覆材10には、複数の突起15(樹脂突起)が設けられている。各突起15はそれぞれ、図2に示されるように、対応する貫通孔R2aを充填しつつ、当該貫通孔R2aから端面S1,S2とは反対側に向けて突出している。すなわち、各突起15はそれぞれ、打抜部材W2から積層体2側に向けて突出している。一対の端面部材3がそれぞれ積層体2の上端面及び下端面に載置された状態において、各突起15は、対応する収容部8内に位置している。各突起15は、対応する収容部8と係合していてもよいし、係合していなくてもよい。
樹脂被覆材10及び突起15を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、図4及び図5を参照して、固定子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ESから固定子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、図4に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、樹脂注入装置140と、組立装置150と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて一方向に間欠的に順次送り出す。
電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材W1,W2を形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材W1を順次積層して積層体2を製造する機能とを有する。
積層体2及び打抜部材W2は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130、樹脂注入装置140及び組立装置150の間を延びるように設けられたコンベアCvに載置される。コンベアCvは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体2及び打抜部材W2を打抜装置130から樹脂注入装置140又は組立装置150に送り出す。なお、積層体2及び打抜部材W2は、例えば、コンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
樹脂注入装置140は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。樹脂注入装置140は、打抜装置130から排出された打抜部材W2に対して樹脂被覆材10を設けて、端面部材3を製造する機能を有する。樹脂注入装置140は、図5に示されるように、金型141,143と、中間型142と、複数のプランジャ144とを含む。
金型141は、樹脂被覆材10に対応する形状を呈するキャビティ141aを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、金型141は打抜部材W2の下方に配置される。より詳しくは、キャビティ141aの開口と端面S1,S2とが対向するように、打抜部材W2が金型141上に載置される。すなわち、金型141は、下型として機能する。
中間型142は、高さ方向において延びる複数の貫通孔142aを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、中間型142は打抜部材W2の上方に配置される。より詳しくは、各貫通孔142aが対応する貫通孔R2aとそれぞれ重なり合うように、中間型142が打抜部材W2上に載置される。貫通孔142aは、溶融樹脂が流通するランナとして機能する。
金型143は、高さ方向において延びる複数の貫通孔143aを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、金型143は中間型142の上方に配置される。より詳しくは、各貫通孔143aが対応する貫通孔142aとそれぞれ重なり合うように、金型143が中間型142上に載置される。すなわち、金型143は、上型として機能する。
貫通孔143aは、円柱形状を呈する樹脂ペレットPを少なくとも一つ収容する機能を有する。金型143には、図示しない内蔵熱源(例えば、ヒータ等)が設けられている。金型143の内蔵熱源によって樹脂ペレットPが加熱されると、貫通孔143a内において樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
複数のプランジャ144はそれぞれ、図示しない駆動源によって、対応する貫通孔143aに対して挿抜可能となるように構成されている。
組立装置150は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。組立装置150は、打抜装置130で得られた積層体2と、樹脂注入装置140で得られた端面部材3とを組み立てる機能を有する。
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、図4及び図5を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。
まず、積層体2を形成する。具体的には、コントローラCtrの指示に基づいて、送出装置120によって電磁鋼板ESを打抜装置130に送り出し、打抜装置130によって電磁鋼板ESの被加工部位を所定形状に打ち抜く。これにより、打抜部材W1が形成される。このとき、積層体2の上端部及び下端部を構成する打抜部材W1には、貫通孔8aがさらに形成される。この打抜加工を繰り返すことにより、複数の打抜部材W1が所定枚数積層されて、一つの積層体2が形成される。得られた積層体2は、コンベアCvによって組立装置150へと搬送される。
次に、打抜部材W2を形成する。具体的には、打抜部材W1と同様に、打抜装置130によって電磁鋼板ESの被加工部位が所定形状に打ち抜かれることにより、打抜部材W2が形成される。このとき、打抜部材W2には、貫通孔8aに対応する位置に貫通孔R2aが形成される。打抜装置130による打抜部材W2の形成は、積層体2の形成に先立って行われてもよいし、積層体2の形成と並行して行われてもよいし、積層体2の形成後に行われてもよい。得られた打抜部材W2は、コンベアCvによって樹脂注入装置140へと搬送される。
次に、樹脂注入装置140において打抜部材W2に樹脂被覆材10が設けられる。具体的には、図5に示されるように、打抜部材W2の端面S1,S2がキャビティ141aの開口と対向するように、打抜部材W2を金型141上に載置する。続いて、打抜部材W2上に、中間型142及び金型143を順次載置する。このとき、図5に示されるように、キャビティ141aと貫通孔R2a,142a,143aとが連通するように、金型141、打抜部材W2、中間型142及び金型143が積み重ねられた状態となる。
続いて、各貫通孔143a内に樹脂ペレットPを配置する。続いて、各貫通孔143a内にプランジャ144を一つずつ挿入する。この状態で、コントローラCtrが、中間型142の内蔵熱源を動作させると共に、プランジャ393を動作させる。これにより、溶融状態となった樹脂ペレットPがプランジャ144によって押し出され、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔142a、貫通孔R2a及びキャビティ141aの順に流れる。その後、成形時の加熱又は冷却による化学変化で溶融樹脂が固化することにより、打抜部材W2の端面S1,S2上に樹脂被覆材10が形成されると共に、貫通孔R2a,142a,143a内に固化樹脂が形成される。
続いて、金型141,143及び中間型142を離型する。このとき、貫通孔R2aと貫通孔142aの境界面に沿って固化樹脂が精密に破断されることは稀であり、一般に、貫通孔142a内において固化樹脂が破断される。そのため、貫通孔142a内の固化樹脂の一部が、樹脂被覆材10側に残される。このような残留固化樹脂は、「ゲート残り」とも呼ばれる。従って、固化樹脂は、貫通孔R2a内に充填される部分と、キャビティ141aとは反対側に向けて貫通孔R2aから外方に突出する部分(残留固化樹脂)とを含む。すなわち、キャビティ141aとは反対側に向けて貫通孔R2aから外方に突出した残留固化樹脂が、突起15となる。こうして、端面部材3が得られる。得られた端面部材3は、コンベアCvによって組立装置150へと搬送される。
次に、組立装置150において、積層体2と端面部材3とを組み立てる。具体的には、各突起15が対応する収容部8内に収容されるように、端面部材3を積層体2の上端面及び下端面に取り付ける。このとき、端面部材3の打抜部材W2と積層体2の各端面とは、溶接によって接合されてもよいし、接着剤によって接合されてもよいし、カシメ等により機械的に接合されてもよい。以上により、本体9のヨーク部4の内周縁部及び各ティース部5に樹脂被覆材10が設けられた固定子積層鉄心1が完成する。
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
(1)上記の実施形態では、図5に示されるように、キャビティ141aとは反対側である上方から溶融樹脂をキャビティ141a内に注入していたが、図6に示されるように、キャビティ141aに対して下方から溶融樹脂をキャビティ141a内に注入してもよい。
この場合、金型141は、キャビティ141aに接続された貫通孔141bをさらに含む。貫通孔141bは、キャビティ141aから下方に向けて延びている。中間型142には、貫通孔142aが設けられていない。金型143は、樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、各貫通孔143aが対応する貫通孔141bと重なり合うように、金型141の下方に配置される。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、各貫通孔143a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔141b、キャビティ141a及び貫通孔R2aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、キャビティ141aとは反対側に向けて貫通孔R2aから突出する残留固化樹脂が存在しない。従って、突起15を収容するための収容部8を積層体2に設ける必要がなくなる。
(2)上記の実施形態では、打抜部材W2に樹脂被覆材10が設けられた端面部材3を得た後に、当該端面部材3を積層体2に取り付けていたが、積層体2(本体9)に樹脂被覆材10を直接形成するようにしてもよい。この場合、図7に示されるように、打抜部材W1が積層されてなる積層体2には、高さ方向に延びる貫通孔2bが設けられている。貫通孔2bは、ヨーク部4に設けられていてもよいし、ティース部5に設けられていてもよい。本変形例では、積層体2の上端面が端面S1として機能し、積層体2の下端面が端面S2として機能する。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、各貫通孔143a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔142a、貫通孔2b及びキャビティ141aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、金型141,143及び中間型142を離型することにより、端面S2に樹脂被覆材10が直接形成される。しかも、端面S2上の樹脂被覆材10は、貫通孔2b内に充填された固化樹脂と接続されているので、樹脂被覆材10が端面S2から極めて脱落し難い。なお、端面S1に樹脂被覆材10を別途設けるようにしてもよいし、端面S1に樹脂被覆材10を設けなくてもよい。
(3)積層体2(本体9)に樹脂被覆材10を直接形成する他の例について、図8を参照して説明する。この場合も、図7に示される例と同様に、打抜部材W1が積層されてなる積層体2には、高さ方向に延びる貫通孔2bが設けられている。
本変形例に係る樹脂注入装置140は、金型145をさらに含む。金型145は、樹脂被覆材10に対応する形状を呈するキャビティ145aと、キャビティ145aに連通する開口145bとを含む。金型145は、樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、積層体2の端面S1と中間型142との間に配置される。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、各貫通孔143a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔142a、キャビティ145a、貫通孔2b及びキャビティ141aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、金型141,143,145及び中間型142を離型することにより、端面S1,S2のそれぞれに一度に樹脂被覆材10が設けられる。しかも、端面S1上の樹脂被覆材10と端面S2上の樹脂被覆材10とは、貫通孔2b内に充填された固化樹脂によって接続されているので、樹脂被覆材10が端面S1,S2から極めて脱落し難い。
(4)上記の変形例2では、端面S1,S2に対して一度に樹脂被覆材10を設けたが、端面S1,S2に対して個々に樹脂被覆材10を設けてもよい。この場合、図9に示されるように、打抜部材W1が積層されてなる積層体2には、高さ方向に延びる貫通孔2b,2cが設けられている。貫通孔2b,2cは、ヨーク部4に設けられていてもよいし、ティース部5に設けられていてもよい。本変形例では、積層体2の上端面が端面S1として機能し、積層体2の下端面が端面S2として機能する。
本変形例に係る樹脂注入装置140において、図9(a)に示されるように、各貫通孔142aが対応する貫通孔2bとそれぞれ重なり合うように、中間型142が積層体2上に載置される。
本変形例に係る樹脂注入装置140は、図9(b)に示されるように、金型146,148及び中間型147をさらに含む。金型146は、キャビティ141aよりも大きなキャビティ146aを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、金型146は積層体2の下方に配置される。より詳しくは、積層体2の貫通孔2cがキャビティ146aの開口と対向するように、積層体2が金型146上に載置される。
中間型147は、円環状を呈しており、中間型142の貫通孔142aと同様の貫通孔147aを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、中間型147は積層体2の上方に配置される。より詳しくは、貫通孔147aが積層体2の貫通孔2cと重なり合うように、中間型147が積層体2の端面S1上に載置される。
金型148は、金型143の貫通孔143aと同様の貫通孔148aと、図示しない内蔵熱源とを含む。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、金型148は中間型147の上方に配置される。より詳しくは、各貫通孔148aが対応する貫通孔147aとそれぞれ重なり合うように、金型148が中間型147上に載置される。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、まず、図9(a)に示されるように、金型141,143及び中間型142を用いて、積層体2の端面S1上に樹脂被覆材10が設けられる。具体的には、端面S1がキャビティ141aと向かい合うように金型141上に積層体2が載置された後、積層体2上に中間型142及び金型143が順次載置される。続いて、各貫通孔143a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔142a、貫通孔2b及びキャビティ141aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、金型141,143及び中間型142を離型することにより、端面S1に樹脂被覆材10が設けられる。しかも、端面S1上の樹脂被覆材10は、貫通孔2b内に充填された固化樹脂によって接続されているので、端面S1から極めて脱落し難い。
次に、図9(b)に示されるように、金型146,148及び中間型147を用いて、積層体2の端面S2上に樹脂被覆材10が設けられる。具体的には、端面S2がキャビティ146aと向かい合うように金型146上に積層体2が載置された後、積層体2上に中間型147及び金型148が順次載置される。このとき、端面S1上の樹脂被覆材10は、円環状を呈する中間型147の内側に位置する。
続いて、各貫通孔148a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔148a、貫通孔147a、貫通孔2c及びキャビティ146aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、金型146,148及び中間型147を離型することにより、端面S2に樹脂被覆材10が設けられる。しかも、端面S2上の樹脂被覆材10は、貫通孔2c内に充填された固化樹脂によって接続されているので、端面S2から極めて脱落し難い。
(5)上記の実施形態では、図5に示されるように、一枚の打抜部材W2に対して樹脂被覆材10を設けていたが、図10(a)に示されるように、複数枚の打抜部材W2に対して樹脂被覆材10を設けてもよい。このとき、図10(a)に示されるように、キャビティ141a寄りに位置する打抜部材W2の貫通孔R2aに対して、キャビティ141aとは離れて位置する打抜部材W2の貫通孔R2aが大きく設定されていてもよい。この場合、貫通孔R2a内に充填される固化樹脂により、より大きなアンカー効果が得られる。そのため、端面S1,S2から樹脂被覆材10が極めて脱落し難い。
(6)変形例4と同様の効果を得るために、図10(b)に示されるように、樹脂注入装置140が中間プレート149をさらに含んでいてもよい。中間プレート149は、複数の貫通孔149aを含む。中間プレート149は、樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、打抜部材W2と中間型142との間に配置される。より詳しくは、各貫通孔149aが対応する貫通孔R2aとそれぞれ重なり合うように、中間プレート149が打抜部材W2上に載置される。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、各貫通孔143a内に配置された樹脂ペレットPが、内蔵熱源によって溶融状態とされつつ、対応するプランジャ144によって押し出されると、当該溶融樹脂が、貫通孔143a、貫通孔142a、貫通孔149a、貫通孔R2a及びキャビティ141aの順に流れる。そのため、本変形例によれば、金型141,143、中間型142及び中間プレート149を離型することにより、貫通孔R2a,149a内に充填される固化樹脂により、より大きなアンカー効果が得られる。そのため、端面S1,S2から樹脂被覆材10が極めて脱落し難い。
(7)図11に示されるように、複数枚の打抜部材W2に対して樹脂被覆材10を設ける際に、隣り合う貫通孔R2aの大きさが互いに異なっていてもよい。この場合、貫通孔R2a内に充填される固化樹脂により、いっそう大きなアンカー効果が得られる。そのため、端面S1,S2から樹脂被覆材10が極めて脱落し難い。
(8)図11(b)に示されるように、中間型142が複数の突起部142bを含んでいてもよい。この場合、各貫通孔142aは、対応する突起部142bをそれぞれ通るように、高さ方向において中間型142内を延びている。樹脂注入装置140による樹脂注入処理の際に、中間型142が複数枚の打抜部材W2上に載置されると、各突起部142bは、対応する貫通孔R2a内に部分的に挿通される。すなわち、各突起部142bの高さは、複数枚の打抜部材W2の貫通孔R2aの全高よりも小さく設定されている。
本変形例に係る樹脂注入装置140によれば、樹脂注入処理が行われると、貫通孔142aの一部の固化樹脂(残留固化樹脂)が、貫通孔R2a内に位置する。すなわち、残留固化樹脂が貫通孔R2aから突出せず、突起15が形成されない。そのため、本変形例によれば、キャビティ141aとは反対側に向けて貫通孔R2aから突出する残留固化樹脂が存在しない。従って、突起15を収容するための収容部8を積層体2に設ける必要がなくなる。
(9)打抜部材W2の貫通孔R2aは、その開口面積が高さ方向において徐々に大きくなるように設定されていてもよい。すなわち、断面で見たときに、貫通孔R2aが台形状を呈していてもよい。このような貫通孔R2aの形成方法について、図12を参照して説明する。
打抜装置130は、図12(a)に示されるように、ダイプレート131と、ストリッパ132と、パンチ133とを含む。ダイプレート131は、ダイ131aを保持している。ストリッパ132は、ダイプレート131との間で電磁鋼板ESを挟持可能に構成されている。パンチ133は、ストリッパ132に設けられている貫通孔132a内を昇降可能に構成されている。パンチ133の外径とダイ131aの内径とのクリアランスCLは、比較的大きく設定されている。クリアランスCLは、例えば、板厚の8%程度であってもよい。
図12(b)に示されるように、電磁鋼板ESがダイプレート131とストリッパ132とで挟持された状態で、パンチ133がダイ131aに向けて降下すると、パンチ133によって電磁鋼板ESが打ち抜かれる。このとき、クリアランスCLが比較的大きく設定されているので、電磁鋼板ESは、当初はパンチ133の外形に沿ってせん断変形するが、途中からクラックが生じて破断する。こうして、断面が台形状を呈する貫通孔R2aが得られる。
このような貫通孔R2aが形成された打抜部材W2に対して樹脂被覆材10を設けた例について、図13を参照して説明する。図13(a)は、貫通孔R2aの開口が小さい側がキャビティ141a側に向くように一枚以上の打抜部材W2が金型141上に載置された状態で、樹脂注入処理が行われた例を示す。図13(b)は、貫通孔R2aの開口が大きい側同士が対向するように重ねられた2枚の打抜部材W2が金型141上に載置された状態で、樹脂注入処理が行われた例を示す。これらの場合、貫通孔R2a内に充填された固化樹脂が貫通孔R2aと係合する。そのため、いっそう大きなアンカー効果が得られる。従って、端面S1,S2から樹脂被覆材10が極めて脱落し難い。
(10)端面S1,S2に樹脂被覆材10をそれぞれ設ける場合、一方の樹脂被覆材10が突出部13,14を含んでいなくてもよい。すなわち、当該一方の樹脂被覆材10は端面上において平坦に延びていてもよい。
[実施形態の例示]
以下の例示的な形態は、本発明を説明するための一例として提示されるものである。
例1.固定子積層鉄心(1)の製造方法の一つの例は、複数の鉄心部材(W1,W2)が積層されてなる本体(9)であって、環状を呈するヨーク部(4)とヨーク部(4)から径方向に延びるティース部(5)とを含む本体(9)の端面(S1,S2)に対応する形成面を、キャビティ(141a)を含む金型(141)よりも上側に位置させることと、キャビティ(141a)内に溶融樹脂を充填することにより、形成面のうち少なくともティース部(5)に対応するティース領域(R2)に樹脂被覆材(10)を設けることとを含む。この場合、溶融樹脂がキャビティ(141a)内に充填される際、溶融樹脂の液面は、キャビティ(141a)の底面から徐々に上昇することとなる。そのため、キャビティ(141a)内に当初存在していた空気は、溶融樹脂によって上方に押し出され、キャビティ(141a)の外へと放出されやすくなる。従って、樹脂被覆材(10)に対応してキャビティ(141a)の形状が複雑になっていても、キャビティ(141a)内に空気が残り難い。その結果、樹脂被覆部材(10)におけるボイドの発生を抑制することが可能となる。
例2.例1の方法において、樹脂被覆材(10)を設けることは、形成面に設けられた貫通孔(R2a)を通じて、形成面の上方からキャビティ(141a)内に溶融樹脂を充填することを含んでもよい。この場合、溶融樹脂は、キャビティ(141a)内のみならず貫通孔(R2a)内も充填する。そのため、樹脂被覆材(10)には、貫通孔(R2a)内において固化した固化樹脂が一体的に設けられる。当該固化樹脂は貫通孔(R2a)と係合するので、樹脂被覆材(10)の形成面に対する取り付けが強固となる。従って、樹脂被覆材(10)の形成面からの脱落を抑制することが可能となる。
例3.例1又は例2の方法において、複数の鉄心部材(W1,W2,2)は、形成面を含む第1の鉄心部材(W2)と、第2の鉄心部材(W1,2)とを含み、樹脂被覆材(10)を設けることは、形成面のティース領域(R2)に樹脂被覆材(10)を設けることと、第1の鉄心部材(W2)と第2の鉄心部材(W1)とを積層することとを含んでもよい。この場合、第1の鉄心部材(W2)に樹脂被覆材(10)を設ける処理と並行して、第2の鉄心部材(W1,2)を用意しうる。そのため、固定子積層鉄心(1)の生産性を高めることが可能となる。
例4.例2の方法において、複数の鉄心部材(W1,W2,2)は、形成面を含み且つ貫通孔(R2a)が設けられた第1の鉄心部材(W2)と、収容部(8)が設けられた第2の鉄心部材(W1,2)とを含み、樹脂被覆材(10)を設けることは、貫通孔(R2a)を通じて形成面のティース領域(R2)に樹脂被覆材(10)を設けることで、貫通孔(R2a)から樹脂被覆材(10)とは反対側に突出する樹脂突起(15)が形成されることと、樹脂突起(15)が収容部(8)内に収容されるように第1の鉄心部材(W2)と第2の鉄心部材(W1,2)とを積層することとを含んでもよい。この場合、第1の鉄心部材(W2)に樹脂被覆材(10)を設ける処理と並行して、第2の鉄心部材(W1,2)を用意しうる。そのため、固定子積層鉄心(1)の生産性を高めることが可能となる。加えて、この場合、第1の鉄心部材(W2)と第2の鉄心部材(W1,2)とを積層する際に、第1の鉄心部材(W1)から突出する樹脂突起(15)(いわゆるゲート残り)が第2の鉄心部材(W1,2)の収容部(8)内に収容される。そのため、単に第1及び第2の鉄心部材(W1,W2,2)を積層する際に、樹脂突起(15)の除去処理が不要となる。従って、固定子積層鉄心(1)の生産性をさらに高めることが可能となる。
例5.例2の方法において、樹脂被覆材(10)を設けることは、本体(9)に設けられている貫通孔(2b)を通じて、本体の下端面(S2)である形成面のティース領域(R2)に樹脂被覆材(10)を設けることを含んでもよい。この場合、本体(9)の貫通孔(2b)内において溶融樹脂が固化するので、樹脂被覆材(10)の本体の下端面(S2)に対する取り付けが極めて強固となる。そのため、樹脂被覆材(10)の形成面からの脱落をいっそう抑制することが可能となる。
例6.例5の方法において、樹脂被覆材(10)を設けることは、本体(9)の上端面(S1)のティース部(5)に対応する領域にも溶融樹脂を供給することを含んでもよい。この場合、一つの溶融樹脂の充填工程により、本体の下端面(S2)のティース部(59に対応する領域と上端面(S1)のティース部(5)に対応する領域とが樹脂で覆われる。すなわち、樹脂被覆材(10)が、本体(9)の下端面(S2)と上端面(S1)とにそれぞれ一度に設けられる。そのため、固定子積層鉄心(1)の生産性をいっそう高めることが可能となる。