以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[回転子積層鉄心の構成]
まず、図1及び図2を参照して、回転子積層鉄心1(鉄心製品)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、図示しない端面板及びシャフトが回転子積層鉄心1に取り付けられることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータの一部を構成してもよいし、他の種類のモータの一部を構成してもよい。
回転子積層鉄心1は、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14と、レーザ痕22とを備える。
積層体10は、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。軸孔10aは、積層体10の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通される。
積層体10には、複数の磁石挿入孔16(樹脂注入部)が形成されている。磁石挿入孔16は、図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は高さ方向に延びている。
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。複数の打抜部材Wのうち最上層の打抜部材Wの表面が、積層体10の上端面S1を構成する。複数の打抜部材Wのうち最下層の打抜部材Wの表面が、積層体10の下端面S2を構成する。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。
積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、積層体10の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、図1及び図2に示されるように、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
永久磁石12は、図1及び図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入された状態の磁石挿入孔16内に充填された溶融状態の樹脂材料(後述する溶融樹脂M)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定するように構成されている。固化樹脂14は、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されている。
レーザ痕22は、上端面S1よりも積層体10の内側に向けて窪む凹部である。レーザ痕22は、例えば、円形状を呈していてもよいし、矩形状を呈していてもよい。
レーザ痕22は、積層体10及び固化樹脂14に跨がるように上端面S1に形成されていてもよい。この場合、図1及び図2に示されるように、レーザ痕22は、固化樹脂14側に設けられた第1の部分22a(レーザ痕)と、積層体10側に設けられた第2の部分22b(別のレーザ痕)とを含む。第1の部分22aと、第2の部分22bとは、連続して繋がっている。
第1の部分22aは、上方から見たときに、第2の部分22bと同じ形状及び大きさを呈していてもよいし、異なる形状及び大きさを呈していてもよい。第1の部分22aの深さは、第2の部分22bの深さよりも深くてもよいし、第2の部分22bと同程度の深さであってもよい。この場合、第1の部分22aの底面からは、磁石挿入孔16内の永久磁石12が露出していなくてもよい。
一方、レーザ痕22は、その全体が固化樹脂14に位置するように上端面S1に形成されていてもよい。この場合、レーザ痕22の底面からは、磁石挿入孔16内の永久磁石12が露出していなくてもよい。
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図3~図7を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから回転子積層鉄心1を製造するように構成されている。製造装置100は、図3に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、磁石取付装置200と、レーザ照射装置300と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される金属板MSを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成するように構成されている。打抜装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を形成するように構成されている。打抜装置130によって形成された積層体10は、例えば、図3に示されるコンベアCvによって磁石取付装置200に搬送されてもよいし、人手によって磁石取付装置200に搬送されてもよい。
磁石取付装置200は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置200は、各磁石挿入孔16に永久磁石12を一つずつ挿通するように構成されている。磁石取付装置200は、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂Mを充填するように構成されている。磁石取付装置200は、図4に示されるように、下型210(第2の挟持部材)と、上型220と、複数のプランジャ230とを含む。
下型210は、ベース部材211と、ベース部材211に設けられた挿通ポスト212とを含む。ベース部材211は、板状部材であり、例えば矩形状、円形状を呈している。ベース部材211は、積層体10を載置可能に構成されている。挿通ポスト212は、ベース部材211の略中央部に位置しており、ベース部材211の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト212は、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。
上型220は、下型210と共に、積層体10を高さ方向において挟持可能に構成されている。上型220と下型210とが積層体10を挟持する際、積層体10には高さ方向から所定の荷重が付与される。
上型220は、ベース部材221と、内蔵熱源222とを含む。ベース部材221は、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材221には、一つの貫通孔221aと、複数の収容孔221bとが設けられている。貫通孔221aは、ベース部材221の略中央部に位置している。貫通孔221aは、挿通ポスト212に対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト212が挿通可能である。
複数の収容孔221bは、ベース部材221を貫通しており、貫通孔221aの周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各収容孔221bは、下型210及び上型220が積層体10を挟持した際に、積層体10の磁石挿入孔16にそれぞれ対応する箇所に位置している。各収容孔221bは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容可能である。
内蔵熱源222は、例えば、ベース部材221に内蔵されたヒータである。コントローラCtrからの指示信号に基づいて内蔵熱源222が動作すると、ベース部材221が加熱され、ベース部材221に接触している積層体10が加熱されると共に、各収容孔221bに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂Mに変化する。
複数のプランジャ230は、上型220の上方に位置している。各プランジャ230はそれぞれ、駆動源231と接続されていてもよい。各駆動源231は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、対応するプランジャ230を上下動させるように構成されている。そのため、各プランジャ230は、駆動源231によって、対応する収容孔221bに対してそれぞれ独立して挿抜されてもよい。一つの駆動源231が複数のプランジャ230を同時に上下動作させてもよい。
各磁石挿入孔16内に充填された溶融樹脂Mが固化して、上型220が積層体10から取り外されると、図5及び図6に示されるように、回転子積層鉄心1の中間体2が形成される。中間体2は、複数のゲート痕20をさらに含む以外は、回転子積層鉄心1と同様に構成されている。磁石取付装置200によって形成された中間体2は、下型210に載置された状態で、例えば、図3に示されるコンベアCvによってレーザ照射装置300に搬送されてもよいし、人手によってレーザ照射装置300に搬送されてもよい。
ゲート痕20は、上型220が積層体10から取り外される際に、収容孔221b内の固化樹脂が収容孔221bの中途で破断して、固化樹脂14と一体化した状態で積層体10に残ったものである。すなわち、複数のゲート痕20はそれぞれ、対応する固化樹脂14と一体化されており、積層体10の上端面S1から外方(上方)に突出している。
ゲート痕20の突出量は、例えば、0.1mm~1.0mm程度であってもよい。上方から見たときに、ゲート痕20の一部が固化樹脂14と重なり合い且つゲート痕20の残部が積層体10と重なり合っていてもよいし、ゲート痕20の全体が固化樹脂14と重なり合っていてもよい。なお、各磁石挿入孔16内への溶融樹脂Mの注入時において、積層体10の下端面S2はベース部材211と当接しているので、下端面S2にはゲート痕が形成されていない。
レーザ照射装置300は、各ゲート痕20にレーザ光を照射して、各ゲート痕20を除去するように構成されている。レーザ照射装置300は、図7に示されるように、挟持部材310(第1の挟持部材)と、レーザ加工機320と、ブロア330と、測定機340(撮像部)とを含む。
挟持部材310は、下型210と共に、中間体2を高さ方向において挟持可能に構成されている。挟持部材310は、矩形状を呈する板状部材である。挟持部材310には、一つの貫通孔311と、複数の貫通孔312とが設けられている。貫通孔311は、挟持部材310の略中央部に位置している。貫通孔311は、挿通ポスト212に対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト212が挿通可能である。
複数の貫通孔312は、挟持部材310を貫通しており、貫通孔311の周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各貫通孔312は、下型210及び挟持部材310が中間体2を挟持した際に、ゲート痕20にそれぞれ対応する箇所に位置している。すなわち、下型210及び挟持部材310が中間体2を挟持した状態において、各貫通孔312からは、対応するゲート痕20がそれぞれ露出する。
レーザ加工機320は、挟持部材310の上方に配置されている。レーザ加工機320は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、挟持部材310の各貫通孔312に向けて下方にレーザ光を照射するように構成されている。レーザ光の照射領域は、上方から見たときに、ゲート痕20と同等の大きさであってもよいし、ゲート痕20よりも大きくてもよい。
レーザ加工機320は、例えば、固体レーザ(YAGレーザ、ファイバレーザ等)、ガスレーザ(CO2レーザ等)などであってもよい。レーザ加工機320から照射されるレーザ光は、例えば、レーザクリーニング用のパルス発振レーザ光であってもよい。レーザ加工機320から照射されるレーザ光の出力は、ゲート痕20を除去するが積層体10を溶融させない程度の出力であり、例えば1W~50W程度であってもよい。
ブロア330は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、ノズル331にガス(例えば空気)を送り込むように構成されている。ノズル331は、挟持部材310に向かうように配置されている。そのため、ブロア330から送り出されたガスは、ゲート痕20の周囲(貫通孔312の周囲)に吹き付けられる。ブロア330は、例えば、常温の空気を送風するように構成された送風機であってもよいし、熱風又は温風を送風するように構成されたドライヤであってもよい。
測定機340は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作して、積層体10の上端面S1の凹凸の状態を測定するように構成されている。測定機340は、例えば、上端面S1のうち各ゲート痕20に対応する領域の高さを測定するように構成されていてもよい。測定機340によって測定された測定データは、コントローラCtrに送信される。測定機340は、接触式であってもよいし、非接触式(例えば、レーザ測定機、撮像カメラ)であってもよい。測定機340が撮像カメラである場合には、撮像カメラで撮像された上端面S1の撮像画像に基づいてコントローラCtrが画像処理を実行し、上端面S1の凹凸が計算される。
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、磁石取付装置200及びレーザ照射装置300をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図4~図7を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。ここでは、打抜装置130により積層体10を形成する工程の説明は省略し、その後の工程について説明する。
まず、積層体10を磁石取付装置200に搬送して、図4に示されるように、挿通ポスト212が軸孔10aに挿通された状態となるように磁石取付装置200の下型210に積層体10を載置する。次に、各磁石挿入孔16内に永久磁石12を挿入する。各磁石挿入孔16内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、磁石取付装置200が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。
次に、上型220を積層体10上に載置する。その後、積層体10は、下型210及び上型220で高さ方向から挟持され、積層体10が加圧される。次に、各収容孔221bに樹脂ペレットPを投入する。上型220の内蔵熱源222により樹脂ペレットPが溶融状態となると、コントローラCtrが各駆動源231を制御し、溶融樹脂Mをプランジャ230によって各磁石挿入孔16内に注入する。このとき、積層体10は、内蔵熱源222により、例えば150℃~180℃程度に加熱されてもよい。
その後、溶融樹脂Mが固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成されると共に、収容孔221b内に固化樹脂が形成される。次に、上型220を積層体10から取り外す。この際、収容孔221b内の固化樹脂が収容孔221bの中途で破断して、図5及び図6に示されるように、ゲート痕20として積層体10に残る。こうして、中間体2が形成される。
形成された中間体2において、永久磁石12は、上端面S1から所定の距離だけ離間した状態で、磁石挿入孔16内において固化樹脂14で固定されていてもよい。上端面S1と、永久磁石12の上端との直線距離は、例えば、0.8mm以下であってもよい。
次に、中間体2は、下型210に載置された状態で、レーザ照射装置300に搬送される。次に、挿通ポスト212が貫通孔311内に位置し、且つ、対応する貫通孔312内に各ゲート痕20がそれぞれ位置するように、挟持部材310を中間体2上に載置する。次に、コントローラCtrがレーザ加工機320及びブロア330を制御し、ノズル331からガスを挟持部材310に吹き付けた状態で、レーザ加工機320からレーザ光を各ゲート痕20に照射する。これにより、ゲート痕20が中間体2から除去される。
ゲート痕20の一部が固化樹脂14と重なり合い且つゲート痕20の残部が積層体10と重なり合っている場合には、積層体10及び固化樹脂14の上端面S1に至るまで、レーザ光が照射されてもよい。この場合、レーザ光によって、積層体10及び固化樹脂14に跨がるようにレーザ痕22が形成されてもよい。あるいは、レーザ光の出力によっては、積層体10にはレーザ痕22が形成されず、固化樹脂14にレーザ痕22が形成されてもよい。
一方、ゲート痕20の全体が固化樹脂14と重なり合っている場合には、固化樹脂14の上端面S1に至るまで、レーザ光が照射されてもよい。この場合、積層体10にはレーザ痕22が形成されず、固化樹脂14にレーザ痕22が形成されてもよい。
次に、コントローラCtrが測定機340を制御して、積層体10の上端面S1の凹凸の状態を測定する。測定機340は、測定結果をコントローラCtrに送信する。コントローラCtrは、上端面S1のうち各ゲート痕20に対応する領域の高さが、上端面S1の高さと略同一であるか否かを判断する。上端面S1のうち各ゲート痕20に対応する領域の高さが、上端面S1の高さと略同一であると判断された場合には、ゲート痕20が中間体2に存在しないことが確認されたため、回転子積層鉄心1が完成する。上端面S1のうち各ゲート痕20に対応する領域の高さが、上端面S1の高さよりも高いと判断された場合には、コントローラCtrがレーザ加工機320及びブロア330を再び制御して、残存するゲート痕20を除去してもよい。
[作用]
以上の例によれば、積層体10の上端面S1から外方に突出するゲート痕20が、レーザ光によって加熱されて気化する。そのため、ゲート痕20を極めて容易に除去することが可能となる。その結果、回転子積層鉄心1の製造過程又は動作時において、ゲート痕20と他の部材との干渉の発生が防止される。例えば、積層体10の上端面S1に配置される端面板に対して、ゲート痕20との干渉を避けるための凹部又は貫通孔を設ける必要がなくなる。
以上の例によれば、レーザ光によってゲート痕20が除去されているので、固化樹脂14に外力が作用し難い。そのため、亀裂等の破損が固化樹脂14に生ずる虞を大幅に抑制することが可能となる。さらに、レーザ痕22の有無に応じて、回転子積層鉄心1の表裏を識別することが可能となる。
以上の例によれば、積層体10の上端面S1からゲート痕20が突出していない回転子積層鉄心1が得られる。このような回転子積層鉄心1を複数積み重ねることで、より大型の回転子積層鉄心を容易に得ることが可能となる。この際、各回転子積層鉄心1をスキューしながら積み重ねてもよい。「スキュー」とは、中心軸Axに対して捩れ角を有するように複数の回転子積層鉄心1を積層することをいう。スキューは、コギングトルク、トルクリップル等の低減を目的に実施される。スキューの角度は、任意の大きさに設定されてもよい。
レーザ光の照射領域がゲート痕20よりも大きい場合には、レーザ光が上端面S1にも照射される。上端面S1のうちレーザ光が照射された領域は、レーザ光により加熱され、色味が変化することがある。この場合、上端面S1の色味の変化を目視で観察することにより、ゲート痕20が除去されたか否かを確認することができる。
以上の例によれば、ブロア330によってゲート痕20の周囲にガスを供給しながら、ゲート痕20に対してレーザ光を照射している。そのため、レーザ光の照射により気化した樹脂(ゲート痕20)が、上端面S1の周囲から除去される。そのため、気化した樹脂が再固化して粒子状となり上端面S1に付着してしまうことを抑制することが可能となる。
以上の例によれば、対応する貫通孔312内に各ゲート痕20がそれぞれ位置するように、下型210と挟持部材310とで中間体2が挟持された状態で、レーザ加工機320からレーザ光が各ゲート痕20に照射される。そのため、レーザ光の照射時において、上端面S1のうちゲート痕20の近傍以外の領域は、挟持部材310によって覆われている。したがって、気化した樹脂が再固化して粒子状となり上端面S1に付着してしまうことが、挟持部材310によってより確実に防止される。
以上の例によれば、測定機340によって測定された上端面S1の状態に基づいて、ゲート痕20の有無を判断している。そのため、中間体2からゲート痕20が除去されたか否かが自動的に判断されるので、ゲート痕20が除去された回転子積層鉄心1をより確実に得ることが可能となる。
以上の例によれば、永久磁石12は、第1の部分22a(レーザ痕22の)底面から露出していなくてもよい。この場合、固化樹脂14内に保持されている永久磁石12に対して、レーザ光の照射による影響が生じ難い。そのため、永久磁石12の性能を効果的に発揮させることが可能となる。
以上の例によれば、上記のように上端面S1と永久磁石12の上端とが離間しうる。この場合、永久磁石12がレーザ光の照射による影響を受け難くなる。そのため、欠けや焦げなどの欠陥が永久磁石12に生ずる虞を抑制することが可能となる。
以上の例によれば、ゲート痕20が固化樹脂14及び積層体10と重なり合っている場合には、積層体10及び固化樹脂14の上端面S1に至るまで、レーザ光が照射されうる。そのため、連続して繋がる第1の部分22a及び第2の部分22bが、固化樹脂14及び上端面S1に形成される。この場合、上端面S1のうち磁石挿入孔16に隣接する領域に薄膜状のバリ(「薄バリ」ともいう。)が生じていても、レーザ光の照射によって、ゲート痕20と共に薄バリも除去される。そのため、回転子積層鉄心1の製造過程又は動作時において、薄バリと他の部材との干渉の発生を防止することが可能となると共に、薄バリの脱落による異物の発生を抑制することが可能となる。
以上の例によれば、第1の部分22aの深さが第2の部分22bの深さよりも深くなりうる。この場合、第1の部分22a及び第2の部分22bを画像処理で検査する際に、第1の部分22aと第2の部分22bとの間にコントラストが生じやすくなる。そのため、画像検査による第1の部分22a及び第2の部分22bの検出精度を高めることが可能となる。
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
(1)上端面S1が水平面(図7のXY平面)に沿って延びるように、下型210と挟持部材310とで中間体2が挟持されていてもよい。すなわち、上端面S1が水平面と略平行となるように、下型210と挟持部材310とで中間体2が挟持されていてもよい。この場合、レーザ加工機320の焦点距離をゲート痕20に対して位置合わせしやすくなる。そのため、ゲート痕20に対してより精度よくレーザ光を照射することが可能となる。
(2)レーザ光をゲート痕20に照射して、ゲート痕20を除去する過程において、レーザ痕22が回転子積層鉄心1に形成されなくてもよい。すなわち、レーザ光の照射によって、積層体10及び固化樹脂14が加工されることなく、ゲート痕20が除去されてもよい。
(3)図8に示されるように、レーザ照射装置300は、下型210を支持する支持機構350をさらに含んでいてもよい。支持機構350は、回動部材351と、ベース部材352とを含む。回動部材351は、内部に収容空間Vを有している。回動部材351の上部は、ベース部材221の下面の中央部に固定されている。回動部材351の下部には、収容空間Vと連通する貫通孔351aが設けられている。
ベース部材352は、円柱状を呈している。ベース部材352の下部は、床面等の構造物に固定されている。ベース部材352の上端面Fは、先端に向けて凸の球面状を呈している。ベース部材352の中央部352aは、括れており、貫通孔351aと若干の隙間を有した状態で貫通孔351aと係合している。
上端面Fは、収容空間Vの内側底面と当接している。そのため、収容空間Vの内側底面は、球面状を呈する上端面Fに沿って回動する。例えば、回動部材351は、鉛直方向(図8のZ軸方向)に交差する所定の軸周り(例えば、図8のX軸周り又はY軸周り)に回動可能に構成されていてもよい。
図8に示される例によれば、積層体10の積厚に偏りが存在しても(積層体10に積厚が高い箇所と積厚が低い箇所とが存在しても)、挟持部材310と下型210とで積層体10が挟持される際に、下型210が所定の軸周りに回動して積層体10の下端面S2に沿って傾く。そのため、挟持部材310と下型210とで積層体10が均一に加圧されるので、挟持部材310の下面と積層体10の上端面S1との間の隙間が極めて小さくなる。したがって、挟持部材310と下型210との間で積層体10の位置ずれが生じ難くなる。以上より、ゲート痕20に対して極めて精度よくレーザ光を照射することが可能となる。
図8に示される例においても、上端面S1が水平面(図8のXY平面)に沿って延びるように、下型210と挟持部材310とで中間体2が挟持されていてもよい。すなわち、上端面S1が水平面と略平行となるように、下型210と挟持部材310とで中間体2が挟持されていてもよい。
ベース部材352は、図8の例に限られず、積層体10の下端面S2の状態に応じて姿勢を変化可能に構成されていてもよい。例えば、ベース部材352は、積層体10の下端面S2に押しつけられたときに下端面S2に倣って傾くように、バネ等の付勢部材によって積層体10に対して付勢されてもよい。
(4)レーザ加工機320は、中間体2に対して相対的に移動可能に構成されていてもよい。すなわち、レーザ加工機320が図示しない駆動機構により中間体2に対して移動可能であってもよいし、中間体2を載置する下型210が図示しない駆動機構によりレーザ加工機320に対して移動可能であってもよいし、レーザ加工機320及び下型210の両者が図示しない駆動機構によって移動可能であってもよい。
(5)以上の例によれば、ブロア330によってゲート痕20の周囲にガスを供給しながら、ゲート痕20に対してレーザ光を照射していたが、吸気装置などによってゲート痕20の周囲から気体を吸気しながら、ゲート痕20に対してレーザ光を照射してもよい。この場合も、気化した樹脂が再固化して粒子状となり上端面S1に付着してしまうことを抑制することが可能となる。ブロア330による送気や、吸気装置などによる吸気が行われなくてもよい。
(6)磁石取付装置200において形成された中間体2を下型210から取り出して、レーザ照射装置300に搬送してもよい。この場合、レーザ照射装置300は、中間体2を載置するための治具をさらに含んでおり、当該治具と挟持部材310とで中間体2が挟持されてもよい。
(7)レーザ加工機320は、ゲート痕20にレーザ光を照射する前後において、積層体10の上端面S1にもレーザ光を照射して、上端面S1に識別マークを刻印してもよい。この場合、ゲート痕20にレーザ光を照射してゲート痕20を除去する処理と、上端面S1にレーザ光を照射して識別マークを形成する処理とが、同一又は近接した工程で実施されうる。そのため、回転子積層鉄心1の製造にあたり、工程数の増加を抑制することが可能となる。
識別マークは、回転子積層鉄心1に関する情報を保持するものである。識別マークは、例えば、数字、文字、記号、所定の規則によって生成される模様状符号であってもよい。などであってもよい。模様状符号は、明模様と暗模様との組み合わせにより情報を保持することが可能なものであってもよく、例えば、バーコードであってもよいし、二次元コードであってもよい。
(8)上型220と上端面S1との間には、微視的に見ると、微細な隙間(例えば、数10μm程度の隙間)が存在する。溶融樹脂Mは、毛細管現象により当該隙間に浸透して、磁石挿入孔16の近傍にバリが生ずることがある。そのため、当該バリに対してレーザ光を照射して、ゲート痕20と共に当該バリを除去してもよい。
(9)溶融樹脂Mは、磁石挿入孔16に対して下から注入されてもよい。この場合、積層体10の下端面S2から下方に突出するゲート痕20が形成される。
(10)ゲート痕20が下方に位置するように積層体10が保持された状態で、レーザ加工機320によってレーザ光をゲート痕20に向けて上向きに照射してもよい。あるいは、ゲート痕20及び積層体10の姿勢に応じて、レーザ光の照射方向を適宜設定してもよい。
(11)測定機340を用いたゲート痕20の有無の判断が行われなくてもよい。
(12)回転子積層鉄心1以外の他の鉄心製品に含まれるゲート痕に対して、レーザ光を照射してもよい。他の鉄心製品は、例えば、固定子積層鉄心、非積層型の固定子鉄心、非積層型の回転子鉄心であってもよい。固定子鉄心は、複数の鉄心片が組み合われて構成される分割型の固定子鉄心であってもよいし、非分割型の固定子鉄心であってもよい。非分割型の固定子積層鉄心は、円環状を呈する打抜部材Wが複数積層されたものであってもよい。あるいは、非分割型の固定子積層鉄心は、一つのヨークに複数のティースが設けられており、ティース間において折り曲げられることによって環状となる折り曲げ型の打抜部材が複数積層されたものであってもよい。非積層型の回転子鉄心又は固定子鉄心は、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
(13)高さ方向に延びる樹脂注入部(例えば、貫通孔、溝など)に溶融樹脂Mを充填する工程を含む鉄心製品の製造方法に、本技術を適用してもよい。例えば、固定子鉄心と巻線との間を絶縁するための樹脂膜を固定子鉄心のスロットの内周面に設ける際に、本技術を適用してもよい。
(14)複数の永久磁石12が一つの磁石挿入孔16内に挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔16内において積層方向に沿って隣り合うように並んでいてもよいし、磁石挿入孔16の長手方向に並んでいてもよい。
[他の例]
例1.鉄心製品(1)の製造方法の一例は、鉄心本体(10)の樹脂注入部(16)に溶融樹脂(M)を注入及び固化することにより、樹脂注入部(16)に配置された固化樹脂(14)と、固化樹脂(14)と一体化され且つ鉄心本体(10)の端面(S1)から外方に突出するゲート痕(20)とを形成することと、ゲート痕(20)に対してレーザ光を照射することにより、ゲート痕(20)を除去することとを含む。この場合、鉄心本体の端面から外方に突出するゲート痕が、レーザ光によって加熱されて気化する。そのため、ゲート痕を極めて容易に除去することが可能となる。その結果、鉄心製品の製造過程又は動作時において、ゲート痕と他の部材との干渉の発生が防止される。
例2.例1の方法において、ゲート痕(20)を除去することは、ゲート痕(20)の周囲に送気しながら又はゲート痕(20)の周囲から気体を吸気しながら、ゲート痕(20)に対してレーザ光を照射することを含んでいてもよい。この場合、レーザ光の照射により気化した樹脂(ゲート痕)が、鉄心本体の端面の周囲から除去される。そのため、気化した樹脂が再固化して粒子状となり端面に付着してしまうことを抑制することが可能となる。
例3.例1又は例2の方法は、ゲート痕(20)を除去することの後に、測定機(340)によって測定された端面(S1)の状態に基づいて、ゲート痕(20)の有無を判断することをさらに含んでいてもよい。この場合、鉄心本体からゲート痕が除去された鉄心製品をより確実に得ることが可能となる。
例4.例1~例3のいずれかの方法において、ゲート痕(20)を除去することは、端面(S1)が水平面に沿って延びるように鉄心本体(10)を保持しつつ、ゲート痕(20)に対してレーザ光を照射することを含んでいてもよい。この場合、レーザ光の照射装置の焦点距離をゲート痕に対して位置合わせしやすくなる。そのため、ゲート痕に対してより精度よくレーザ光を照射することが可能となる。
例5.例4の方法において、ゲート痕(20)を除去することは、水平面に沿って延びる第1の挟持部材(310)に対して端面(S1)が当接するように第1の挟持部材(310)と第2の挟持部材(210)とで鉄心本体(10)を挟持しつつ、ゲート痕(20)に対してレーザ光を照射することを含み、第2の挟持部材(210)は、鉛直方向に対して交差する軸周りに回動可能に構成されていてもよい。この場合、鉄心本体の高さに偏りが存在していても、第1の挟持部材と第2の挟持部材とで鉄心本体が挟持される際に、第2の挟持部材が所定の軸周りに回動して鉄心本体の他の端面に沿って傾く。そのため、第1及び第2の挟持部材によって鉄心本体が均一に加圧されるので、第1及び第2の挟持部材の間で鉄心本体の位置ずれが生じ難くなる。したがって、ゲート痕に対して極めて精度よくレーザ光を照射することが可能となる。
例6.鉄心製品(1)の一例は、樹脂注入部(16)が設けられた鉄心本体(10)と、樹脂注入部(16)に配置された固化樹脂(14)とを備える。固化樹脂(14)は、レーザ光の照射によって、固化樹脂(14)の端面に形成された凹状のレーザ痕(22a)を含む。この場合、レーザ光によってゲート痕を除去することで生ずるレーザ痕が、固化樹脂の端面よりも窪んでいる。そのため、回転子鉄心の製造過程又は動作時において、他の部材との干渉を大幅に抑制することが可能となる。また、レーザ光によってゲート痕が除去されているので、固化樹脂に外力が作用し難い。そのため、亀裂等の破損が固化樹脂に生ずる虞を大幅に抑制することが可能となる。さらに、レーザ痕の有無に応じて、鉄心製品の表裏を識別することが可能となる。
例7.例6の鉄心製品(1)において、鉄心本体(10)は、レーザ光の照射によって、鉄心本体(10)の端面(S1)に、レーザ痕(22a)と連続して繋がるように形成された凹状の別のレーザ痕(22b)を含んでいてもよい。この場合、レーザ光が鉄心本体の端面にも照射される。そのため、鉄心本体の端面のうち樹脂注入部に隣接する領域に薄薄バリが生じていても、レーザ光の照射によって、ゲート痕と共に薄バリも除去される。したがって、鉄心製品の製造過程又は動作時において、薄バリと他の部材との干渉の発生を防止することが可能となると共に、薄バリの脱落による異物の発生を抑制することが可能となる。
例8.例7の鉄心製品(1)において、レーザ痕(22a)の深さは別のレーザ痕(22b)の深さよりも深くてもよい。この場合、レーザ痕及び別のレーザ痕を画像処理で検査する際に、レーザ痕と別のレーザ痕との間にコントラストが生じやすくなる。そのため、画像検査の精度を高めることが可能となる。
例9.例6~例8のいずれかの鉄心製品(1)は、固化樹脂(14)によって樹脂注入部(16)に保持された永久磁石(14)をさらに備え、永久磁石(12)は、レーザ痕(22a)の底面から露出していなくてもよい。この場合、固化樹脂内に保持されている永久磁石に対して、レーザ光の照射による影響が生じ難い。そのため、欠けや焦げなどの欠陥が永久磁石に生ずる虞を抑制することが可能となる。