JP7070136B2 - 乳化組成物及び飲料 - Google Patents
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Description
一方、飽和脂肪酸含有量が低く、不飽和脂肪酸含有量が高い油脂を用いた場合、飲料に用いた時の油脂のコク感が低く、殺菌や高温保存における油脂の酸化によって劣化臭が発生するため、飲料には不向きであった。
しかしながら、このような高圧乳化による乳化では、含有させることができる油脂の濃度に限界があり、油脂を高含有させすぎるとW/O型に転相してしまい、飲料中への分散が困難となるといった課題があった。
例えば、特許文献2(特許第4788462号公報)には、多価アルコール、親水性乳化剤と親油性乳化剤から成る、O/D型乳化組成物を希釈することで、微細なO/W型エマルションを得る方法が記載されている。
また、同様に特許文献3(特開2009-95253号公報)には、多価アルコール、親水性乳化剤、有酸モノグリセリド塩、親油性乳化剤を用いたO/D型乳化組成物が加温状態における安定性が優れることが記載されている。
更に、特許文献4(特開平8-205771号公報)には、重合度10以上のポリグリセリンと炭素数8~18の脂肪酸とのモノエステルのポリグリセリン脂肪酸エステルと、ショ糖と脂肪酸とのモノエステルを90%以上含むショ糖脂肪酸エステルと水を用いることで、油脂の乳化または可溶化状態を高温で保つことができることが記載されている。
特許文献5(特開2010-246466号公報)には、多価アルコールとHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルを配合した冷凍麺用高油分乳化油脂組成物が記載されている。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明の乳化組成物は、水、油脂、多価アルコール、及び乳化剤を含有する乳化組成物であって、該乳化剤が親水性乳化剤であるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含み、該油脂中の全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量が30%以上であり、該組成物中の該油脂の含有量が60~90重量%であり、該油脂の上昇融点が0℃以上、50℃以下であり、該多価アルコールの重量平均分子量が1500未満であり、該組成物中の該ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が該ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上であることを特徴とする。
本発明の乳化組成物では、多価アルコールと、特定の2種類の親水性乳化剤を用いてD相型乳化物を調製することで、高含油であっても、製造時および保存中に油が分離せず、更に分散性に優れる乳化組成物を得ることが出来る。また、親水性乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)という少なくとも2種類の親水性乳化剤を、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上となるように含有することで、油脂を高含有させることが可能で、かつ、界面膜を強固にし、低温で油脂が結晶化しても油脂の合一を抑制し、乳化物からの油脂分離を防ぐという作用効果を得ることができる。これらの結果、飽和脂肪酸含有量が高い油脂を60~90重量%という高含油であっても、低温保存下でも安定で、飲料に用いた際にも分散性、乳化安定性、風味に優れた乳化組成物とすることができる。
本発明で用いるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、いずれも親水性乳化剤である。
ここで、親水性乳化剤とは、該乳化剤のゲル-液晶転移点以上の温度での加熱条件下でミセル等を形成して安定に水に分散し、経時的に沈殿や不溶物を形成しない乳化剤のことであり、好ましくはHLBが5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上の乳化剤である。ここで、HLB値は、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性、疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えばGriffin、Davis、川上式、有機概念図等の方法が使用できる。また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
ショ糖脂肪酸エステル(A)としては、好ましくはHLBが5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上、とりわけ15~16で、構成脂肪酸の炭素数が12~18の飽和又は不飽和の脂肪酸であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。例えば、ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12~18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が飲料中での乳化安定性と風味の観点から好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸がさらに好ましく、特にステアリン酸が好ましい。
また、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)の混合物中のアルキル基を1つ有する構造をもつモノエステルの比率が、好ましくは40%以上85%以下、より好ましくは50%以上85%以下、さらに好ましくは50%以上75%以下、特に好ましくは50%以上65%以下であるものが、乳化組成物が油脂を高含有できるという観点から好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としては、特に制限はないが、HLBが7以上、特に11以上、とりわけ15以上で、グリセリンの平均重合度が4以上、特に6以上、とりわけ6~10であるものが乳化組成物の油の取り込みの観点から好ましい。
また、構成脂肪酸の炭素数が12~18の飽和又は不飽和の脂肪酸であるものが、飲料中での風味の観点から好ましい。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の構成脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12~18の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が飲料中での乳化安定性と風味の観点から好ましく、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましい。
本発明の乳化組成物において、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含む乳化剤の合計の含有量は、0.5~20重量%、特に1~15重量%、とりわけ3~10重量%であることが乳化安定性と風味の観点から好ましい。
油脂は脂肪酸のグリセリンエステルであり、通常、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラヘキサエン酸等の脂肪酸混合物のグリセリンエステルである。
2.2.4.2(1996)」などの方法で測定することができる。上昇融点が0℃未満の油脂は乳代替の油脂として用いた時、油脂によるコク感やマイルドさが不足する。また、上昇融点が50℃を超えるものでは口どけが悪いため、飲料には不向きである。そのため、本発明では、上昇融点が0~50℃、好ましくは10~45℃、より好ましくは15~43℃、更に好ましくは20~40℃の油脂を用いる。このような油脂としては、上記油脂のうち、乳脂、牛脂、豚脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カカオ油、硬化ヤシ油や硬化パーム核油などの硬化油脂や分別して得られる固体脂、および植物性油脂又は動物性油脂や加工油脂を原料としてエステル交換により調製したエステル交換油等が挙げられる。
飽和脂肪酸含有量(%)=(飽和脂肪酸ピーク面積の積算値/全構成脂肪酸ピーク面積の積算値)×100
本発明の乳化組成物の油脂の含有量は、特に70~85重量%であることが好ましく、とりわけ75~83重量%であることが好ましい。
多価アルコールとしては、通常、水溶性多価アルコールが用いられ、なかでも分子内に水酸基を3個以上有するものが好ましく用いられる。
また、多価アルコールはそのまま用いても、水に溶解して40~99.9重量%、好ましくは50~75重量%程度の水溶液として用いてもよい。水を含有した状態で市販されている多価アルコールをそのまま用いることもできる。
本発明の乳化組成物中の水の含有量は、上記の油脂含有量において、安定な乳化組成物を形成し得る程度であればよく、特に制限はないが、液状の多価アルコールを用いる場合は、実質、水を含有しなくてもよい。粉末状の多価アルコールを用いる場合、水の含有量は1~39重量%、特に3~35重量%、とりわけ4~30重量%であることが乳化組成物の低温安定性をより効果的に高めることができる点から好ましい。
本発明の乳化組成物は、上記のショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を必須とする乳化剤、油脂、多価アルコール及び水の他、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
風味付け素材としては、乳に特徴的な香気成分を含んだ乳酵素分解物が好ましく、原料としての乳製品に特に制限はないが、チーズ、クリームを原料としたものがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の乳化組成物は、常法に従って、配合成分を乳化処理することにより製造される。
乳化処理は、ショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含む乳化剤と多価アルコールと水を含む水相部に対して、油脂を徐々に添加して、市販の乳化機を用いて行えばよい。
乳化処理を複数回行うとは、乳化機に被処理物を導入して所定の条件下で乳化処理した後、乳化処理物を取り出す操作を複数回行うことをさす。ここで、複数回の乳化処理に用いる乳化機は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、本発明の乳化組成物のpHは、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、5.5~8.0であることが最も好ましい。
本発明の飲料は、本発明の乳化組成物を含有するものであり、通常、上述のようにして調製された本発明の乳化組成物に、飲料として必要な成分を混合して製造される。乳飲料であれば、更に少なくとも乳成分を混合して製造される。
コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶など)およびそのエキス
<豆類・穀物またはその粉末やペースト>
カカオ豆、大豆、小豆、アーモンド、ピーナッツ、胡桃、杏仁、コメ、麦などの豆類・穀物、またはその粉末やペースト
ココナッツミルク、ココナッツジュースなどの果汁や果肉、またはその粉砕物やペースト
レシチン、リゾレシチン、モノグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどの乳化剤。中でも以下に記載する静菌性乳化剤。
<pH調整剤>
有機酸およびその塩、重曹、リン酸塩等のpH調整剤
砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α-、β-、γ-シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン等の単糖やオリゴ糖、多糖類を含む糖類
エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール
<甘味料>
スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料
<タンパク質またはその分解物>
カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質またはその分解物
レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、バター香料、チーズ香料、ミルク香料等の香料
<色素>
β-カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素
<風味付け素材>
食塩(塩化ナトリウム)、粗塩、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁、ドロマイト、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カルシウム、鉄等などのミネラル類などの風味付け素材
<栄養素材>
ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド、DHA、EPA等のような栄養素材
ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤
<保存料>
カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤、ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料
リキュール、ウォッカ、焼酎などの酒類
以下の実施例及び比較例で乳化組成物の調製に用いた原料は次の通りである。
(ショ糖脂肪酸エステル(A))
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS-1670」、HLB=16、モノエステル含有量78重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS-1570」、HLB=15、モノエステル含有量71重量%
ショ糖ミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルM-1695」、HLB=16、モノエステル含有量83重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルS-1170」、HLB=11、モノエステル含有量58重量%
ショ糖ステアリン酸エステル:第一工業製薬社製「DKエステルF-160」、HLB=15、モノエステル含有量75重量%
デカグリセリンミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルM-7D」、HLB=16
デカグリセリンミリスチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルM-10D」、HLB=15
デカグリセリンパルミチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルP-8D」、HLB=16
デカグリセリンラウリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーポリグリエステルL-7D」、HLB=17
ヘキサグリセリンラウリン酸エステル:阪本薬品工業社製「SYグリスターML500」、HLB=13.4
ヘキサグリセリンオレイン酸エステル:阪本薬品工業社製「MO-5S」、HLB=11.6
ショ糖パルミチン酸エステル:三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルP-170」、HLB=1
無水バター:飽和脂肪酸含有量65%、上昇融点27℃
硬化ヤシ油:飽和脂肪酸含有量99%、10℃におけるSFCが90%、上昇融点32℃
ナタネ油:飽和脂肪酸含有量7%、上昇融点-20℃以下
麦芽糖液:日本食品化工社製「ハイマルトースシロップMC-45」(グルコース、マルトース、マルトトリオース混合物、平均分子量:310)、Brix:70%、水含有量30重量%
65%マルトース溶液:マルトース(分子量:342)を水に加温溶解させた65重量%マルトース水溶液
50%マルトース溶液:マルトースを水に加温溶解させた50重量%マルトース水溶液
70%グルコース溶液:グルコース(分子量:180)を水に加温溶解させた70重量%グルコース水溶液
50%グルコース溶液:グルコースを水に加温溶解させた50重量%グルコース水溶液
50%ショ糖溶液:ショ糖(分子量:342)を水に加温溶解させた50重量%ショ糖水溶液
50%還元水飴溶液:粉末還元水飴(ソルビトール、マルチトール混合物、平均分子量:300)を水に加温溶解させた50重量%還元水飴溶液
70%デキストリン溶液:デキストリン(DE25、平均分子量1887)を水に加温溶解させた70重量%デキストリン水溶液
70%ソルビトール溶液:物産フードサイエンス社製「ソルビトールC」(分子量182)、Brix:70%、水含有量30重量%
クリームフレーバー:TATUA社製「C890」(クリーム酵素分解物)
チーズフレーバー:TATUA社製「CH403」、TATUA社製「CH400」
(チーズ酵素分解物)
ミネラル:食塩(塩化ナトリウム)
<実施例1>
麦芽糖液15重量%と、ショ糖脂肪酸エステル(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16、「S-1670」)4重量%とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16、「M-7D」)1重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た。この水相部を80℃に保持しながらパドルミキサーを用いて300rpmで攪拌し、80℃で溶融させた無水バター80重量%を徐々に添加することで乳化組成物(pH6.0)を調製した。
なお、麦芽糖液は、水含有量30重量%であるため、麦芽糖液15重量%を配合することで、得られる乳化組成物の水含有量は4.5重量%、マルトース含有量は10.5重量%となる。
ショ糖脂肪酸エステル(A)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)の代わりにショ糖ステアリン酸エステル(HLB=15、「S-1570」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=15、「M-10D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンパルミチン酸エステル(HLB=16、「P-8D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにデカグリセリンラウリン酸エステル(HLB=17、「L-7D」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の代わりにヘキサグリセリンラウリン酸エステル(HLB=13.4、「SYグリスターML500」)を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ショ糖脂肪酸エステル(A)としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)4重量%と、ショ糖ミリスチン酸エステル(HLB=16、「M-1695」)0.5重量%を用い、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としてデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)0.5重量%を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりにマルトース9.75重量%を水5.25重量%に加温溶解した65重量%マルトース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりにグルコース10.5重量%を水4.5重量%に加温溶解した70%グルコース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりにマルトース7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%マルトース溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりにショ糖7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%ショ糖溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりに粉末還元水飴7.5重量%を水7.5重量%に加温溶解した50%還元水飴溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液20重量%、無水バター75重量%を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
無水バターの代わりに硬化ヤシ油を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の配合量をそれぞれ3重量%、2重量%に変更した他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ショ糖7.2重量%、水7.5重量%、ショ糖脂肪酸エステル(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11、「S-1170」)4重量%とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)1重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させたものに、乳酵素分解物としてクリームフレーバー(C890)0.6重量%、チーズフレーバー(CH403)0.3重量%、チーズフレーバー(CH400)1.7重量%を、ミネラルとして食塩(塩化ナトリウム)0.3重量%を添加して均一にして水相部を調製し、この水相部を80℃に保持しながらパドルミキサーを用いて300rpmで攪拌し、80℃で溶融させた無水バター77.4重量%を徐々に添加することで乳化組成物(pH6.0)を調製した。
ショ糖脂肪酸エステル(A)として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11)の代わりにショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)を用いた他は実施例16と同様に行って乳化組成物を調製した。
親水性乳化剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
親水性乳化剤として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
親水性乳化剤として、デカグリセリンパルミチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
親水性乳化剤として、デカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)5重量%のみを用い、更に親油性乳化剤であるショ糖パルミチン酸エステル(HLB=1、「P-170」)を1重量%用い、麦芽糖液を14重量%用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりにデキストリン10.5重量%を水4.5重量%に加温溶解した70%デキストリン溶液を用いた他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)とデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)の配合量をそれぞれ2重量%、3重量%に変更した他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりに70%ソルビトール溶液10重量%を用い、親水性乳化剤としてデカグリセリンミリスチン酸エステル(HLB=16)10重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
麦芽糖液の代わりに70%ソルビトール溶液10重量%を用い、親水性乳化剤としてデカグリセリンラウリン酸エステル(HLB=17)7.5重量%とヘキサグリセリンオレイン酸エステル(HLB=11.6、「MO-5S」)2.5重量%を80℃で攪拌して均一に溶解させて水相部を得た他は実施例1と同様に行って乳化組成物を調製した。
実施例1~17及び比較例1~8で調製した乳化組成物について、以下の評価を行った。
調製直後の乳化組成物2gに70℃の温水18gを加え、マグネチックスターラーを用いて攪拌分散させた。分散液の液面を目視観察し、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:油滴がほとんど見られない
○:わずかに油滴が見られるが、均一に分散
△:分散液に油滴が多数浮き、正確な粒度分布測定が困難
×:分散前から油脂が分離しており、分散しない
分散液の粒度分布をレーザー回析粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA-950」)で測定し、メジアン径を求めた。このメジアン径は、前述の通り0.01~20μm、特に0.05~10μm、とりわけ0.1~5μmの範囲であることが好ましい。
なお、分散する前から油脂が分離していたものや分散後に油分離が激しいものは、安定性がないと判定し、粒度分布の測定は行わなかった。
10℃以下の冷蔵庫で2週間から12週間保持した後、25℃恒温槽で一晩常温に戻した乳化組成物を、上記の分散性評価と同様に、70℃の温水に分散させて、液面観察と粒度分布を測定した。この評価で分散液が均一であり、求められるメジアン径が、調製直後と大きく変わっていないものが冷蔵安定性に優れる。
-20℃以下の冷凍庫で2週間保持した後、25℃恒温槽で一晩常温に戻した乳化組成物を、上記の分散性評価と同様に、70℃の温水に分散させて、液面観察と粒度分布を測定した。この評価で分散液が均一であり、求められるメジアン径が、調製直後と大きく変わっていないものが冷凍安定性に優れる。
実施例1~17の冷蔵安定性の評価結果を表1(表1A,表1B)に、実施例1および7の冷凍安定性の評価結果を表2に、比較例1~8の冷蔵安定性の評価結果を表3にそれぞれ示す。また、保存試験を行っていない保存区についてはN.T.(not tested)と記す。
なお、前述の通り、麦芽糖液は、4.5重量%の水を含有するものであるが、表1~3においては、このように水を含む麦芽糖液含有量を多価アルコールの含有量の欄に記載した。同様に、ソルビトールについても3重量%の水を含有するものであるが、表3においては、水を含む70%ソルビトール溶液含有量を多価アルコールの含有量の欄に記載した。また、表中の空欄は、乳化組成物の原料として用いていないことを示し、表中の「-」はその項目に該当しないことを示す。
表1A,1Bの実施例1~実施例7、実施例13~17より、ショ糖脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を併用し、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上含まれる本発明の乳化組成物は、低温保存を行っても乳化安定性が維持される。さらに表2より、実施例1と実施例7の乳化物は冷凍保存を行っても乳化安定性が維持されることが分かる。
これに対して、表3より、ショ糖脂肪酸エステル(A)のみを用いた比較例1では、油脂を高含油することができず、オイル分離してしまう。又、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のみを用いた比較例2~3、比較例7~8、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)と親油性乳化剤を用いた比較例4、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量未満の乳化組成物である比較例6では、低温保存を行うとオイルが分離し、安定な乳化状態を保てない。
また、表1Aの実施例1および8~12より、分子量1500未満の多価アルコールを用いた場合、その種類、濃度に関わらず、分散性、低温安定性が維持された乳化組成物が得られる。一方、表3の比較例5は、多価アルコールとして分子量1500以上のデキストリンを用いた点のみが実施例1等と異なるが、油脂を高含油することができず、オイル分離してしまうため、乳化物自体を調製することができない。
また、実施例1,15と比較例6との対比より、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量がポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量よりも少ないと、低温保存を行うとオイルが分離し、安定な乳化状態を保てないことが分かる。
以下の製造方法に従い、乳化組成物を添加したミルクコーヒー飲料を調製した。
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.2%)39重量%に、重曹0.1重量%、砂糖5.0重量%、脱脂粉乳0.96重量%、実施例1の乳化組成物0.47重量%、静菌性乳化剤としてショ糖パルミチン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製「リョートーシュガーエステルP-1670」)0.03重量%、水を加えて、100重量%にした後、十分に撹拌溶解した。その後、高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV-OA-2.4-2.2S」)で1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化し、缶容器に充填した後、121.1℃で30分間、レトルト殺菌して、缶容器詰めミルクコーヒー飲料を得た。
乳化組成物として、無水バターの代わりにナタネ油(飽和脂肪酸含有量7%)を用いた以外、実施例1と同様に調製した乳化物を用い、実施例18と同様に缶容器詰めミルクコーヒー飲料を調製した。
その結果、保存後も、実施例18のミルクコーヒー飲料は目立ったクリームの塊や浮上が見受けられず、訓練されたパネル3名で試飲した際の風味も、保存による酸化劣化や乳化不良に起因する油脂の劣化臭発生が、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒーと比べても大差なく、良好であった。
一方、飽和脂肪酸含有量が低く、上昇融点が0℃未満であるナタネ油を用いた比較例9のミルクコーヒー飲料は、殺菌直後から酸化による油脂の劣化臭(揮発性の油脂酸化生成物の不快な臭気)が強く、飲用には不向きであった。
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.2%)27重量%に、重曹0.1重量%、砂糖5.0重量%、脱脂粉乳3.9重量%、実施例16の乳化組成物1.7重量%、水を加えて、100重量%にした後、十分に撹拌溶解してミルクコーヒー飲料を調製した。
乳化組成物として実施例1の乳化組成物を用いた以外は実施例19と同様にミルクコーヒー飲料を調製した。
乳化組成物として実施例17の乳化組成物を用いた以外は実施例19と同様にミルクコーヒー飲料を調製した。
その結果、実施例19のミルクコーヒー飲料の表面に目立った油滴やクリームが見られず、乳化組成物の分散性が良好であった。また、訓練されたパネル3名で試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が特に優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べて同等以上に良好であった。
同じく、実施例20のミルクコーヒー飲料の表面に目立った油滴やクリームが見られず、乳化組成物の分散性が良好であった。試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べても大差なく、良好であった。
一方、実施例21のミルクコーヒー飲料は、試飲した際の風味は油脂の濃厚感、コク感が優れており、一般的な乳製品を含有するミルクコーヒー飲料と比べて同等以上に良好であったが、ミルクコーヒー飲料の表面には明確に油滴が見られた。
実施例19と実施例21との対比から、風味付け素材として乳酵素分解物やミネラル類を用いた場合は、ショ糖脂肪酸エステル(A)としてHLBが低めのものを用いる方が好ましいことが分かる。
Claims (6)
- 水、油脂、多価アルコール、及び乳化剤を含有する乳化組成物であって、
該乳化剤が親水性乳化剤であるショ糖脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含み、
該ショ糖脂肪酸エステル(A)がHLB7以上で、構成脂肪酸の炭素数が12~18であり、
該ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)がHLB7以上であり、
該油脂中の全構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸含有量が30%以上であり、
該組成物中の該油脂の含有量が60~90重量%であり、
該油脂の上昇融点が0℃以上、50℃以下であり、
該多価アルコールの重量平均分子量が1500未満であり、
該組成物中の該ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量が該ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量以上である乳化組成物。 - 該ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)がグリセリンの平均重合度が6以上であり、構成脂肪酸の炭素数が12~18である請求項1に記載の乳化組成物。
- 該組成物中の乳化剤の総含有量が0.5~20重量%である請求項1又は2に記載の乳化組成物。
- 該組成物中の油脂の含有量が70~85重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物。
- 飲料用であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の乳化組成物を含有する飲料。
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