JP6430947B2 - 飲料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、油脂を乳化処理して油脂乳化物を製造する方法に関するものであり、詳しくは、油脂として高飽和脂肪酸含有食用油脂を用いる油脂乳化物を含有する飲料の製造方法に関する。
嗜好飲料において大きな市場を持つ乳飲料において、従来用いられてきた乳脂肪を含有する乳製品(牛乳、生クリーム、全脂粉乳、濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳等)に代え、コストメリットのある植物油脂を使用した飲食品用の油脂乳化物を用いる技術が知られている。
このような油脂乳化物として、従来、次のようなものが提案されている。
(1) 主として、レトルト殺菌あるいはUltra−Heat−Treated(UHT)殺菌を行った飲料について、内容液の風味を良好としながら、特に高温殺菌、長期間の保存および冬季の製品ウォーマーでの加熱にも品質的に耐えうるような飲料を提供可能なものとして、植物油脂と、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはレシチンを含む植物油脂組成物(特許文献1)
(2) 冷蔵から高温保存に至る広い温度範囲での長期保存においても乳含有飲料中のオイルリングの発生、白色物の発生、油滴浮上等の品質劣化が防止できる安定な乳含有飲料を提供可能なものとして、構成する油脂の10℃におけるSFC(固形脂含量)の平均が40%以下となる水中油型乳化油脂組成物(特許文献2)
(3) 味わいや外観の点において、多様化した消費者の嗜好に訴求可能な飲料を提供可能なものとして、脂質、水及び乳化剤を含む成分からなるクリームをベース飲料に添加してなるクリーム添加飲料であって、全量を基準として0.3〜5.5重量%の脂質及び0.1重量%以下のタンパク質を含み、pHが5.0〜6.0であるクリーム添加飲料(特許文献3)
(4) トランス脂肪酸含量が低い液状クリーム用油脂組成物であって、特に、缶コーヒーに使用される液状クリームに適した油脂組成物として、下記油脂Aを5〜30質量%、下記油脂Bを5〜40質量%、下記油脂Cを30〜90質量%含有する液状クリーム用油脂組成物(特許文献4)
油脂A:ヤシ油
油脂B:パーム油
油脂C:全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油
(5) より高濃度の食用油脂を含有できると共に、油のコク味が良好に感じられ、かつ飲食品に添加された際にも、高い解凍耐性、及び耐熱性を備えた食用油脂乳化物の製造方法として、HLBが4〜14の乳化剤と、食用油脂と、水とから構成される食用油脂乳化物の製造方法であって、前記乳化剤を水に分散させて、平均粒子径が10nm〜600nmの乳化剤微粒子を形成させる第一工程と、前記第一工程によって調製された乳化剤微粒子分散水溶液に前記食用油脂を添加して乳化する第二工程とを含む食用油脂乳化物の製造方法(特許文献5)
日本国特開2005−341933号公報 日本国特開2007−166917号公報 日本国特開2009−153410号公報 日本国特開2010−4741号公報 日本国特開2012−125155号公報
しかし、これら従来の油脂乳化物は、乳化安定性には優れるが、これらはいずれも、近年問題となっているトランス脂肪酸が含まれる油脂を使用しているか、または油脂乳化物を添加した飲料での高温殺菌、長期間の保存および冬季の製品ウォーマーでの加熱において酸化臭の原因となる不飽和脂肪酸が含まれる油脂を使用しており、トランス脂肪酸および不飽和脂肪酸を含まない油脂についての検討が行われていなかった。
トランス脂肪酸および不飽和脂肪酸を含まない油脂は融点の高い飽和脂肪酸で構成される油脂(高飽和脂肪酸含有食用油脂)となるため、より結晶化傾向が強く、乳化の安定化が非常に困難であった。
また、高飽和脂肪酸含有食用油脂の乳化物を飲料に添加した際も、乳化安定性の悪い油脂乳化物では、特に常温流通時や冷蔵販売時等、実用上、飲料が長期間保管される油脂の融点以下の保存温度帯において、油脂の結晶成長による乳化破壊、それに続く、油滴の凝集、油脂の分離(オイルオフ)が生じ、その結果、油脂由来の脂肪酸臭などの影響で風香味に優れた飲料を得ることができない。
さらに、乳化安定性の良い油脂乳化物が調製できたとしても、飲料を製造する際に添加する他の乳化剤やタンパク質等の添加物と、競合的に作用してしまい、乳化の安定化が損なわれる場合があった。
本発明は、トランス脂肪酸および不飽和脂肪酸を実質的に含まない高飽和脂肪酸含有食用油脂を用いて、高い乳化安定性を有する油脂乳化物を製造する方法を提供することを課題とし、これを用いた乳化安定性および風香味に優れた飲料を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、トランス脂肪酸および不飽和脂肪酸を実質的に含まない高飽和脂肪酸含有食用油脂に対し、特定の乳化処理を施すことにより、得られる油脂乳化物が高い乳化安定性を有することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものに存する。
[1] 高飽和脂肪酸含有食用油脂に、高圧乳化処理を複数回行い、該複数回の高圧乳化処理における該食用油脂への処理圧力の合計を40MPa以上として調製して得られた油脂乳化物と、飲料成分とを混合する、飲料の製造方法。
[2] 該食用油脂と乳化剤を含有する油脂組成物を乳化処理する、[1]に記載の飲料の製造方法。
[3] 該乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、及びモノグリセリンコハク酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1以上の乳化剤である、[2]に記載の飲料の製造方法。
[4] 該油脂乳化物はタンパク質を実質的に含まない、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
[5] 該食用油脂が、完全硬化ヤシ油である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
[6] 1回あたりの高圧乳化処理の処理圧力が10MPa以上である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の製造方法により製造された飲料。
[8] 静菌性乳化剤を含有する、[7]に記載の飲料。
[9] レトルト殺菌またはUHT殺菌が行われた容器詰め飲料である、[7]または[8]に記載の飲料。
本発明によれば、トランス脂肪酸および不飽和脂肪酸を実質的に含まない高飽和脂肪酸含有食用油脂を原料として用いて、高い乳化安定性を有する油脂乳化物を提供することができ、このように乳化安定性に優れた油脂乳化物を用いて、乳化安定性に優れ、また、油脂由来の臭いや違和感のない風香味に優れた飲料を提供することができる。
特に、この油脂乳化物を飲料に適用しても、別に添加する乳化剤などの他の添加物と競合せず、むしろ乳化安定性を向上させるため、乳化不良およびその結果起こる風香味の低下を防止することができる。
図1は、実施例19,20における飲料の製造プロセスを示す。 図2は、比較例6〜8における飲料の製造プロセスを示す。 図3は、参考例4,5における飲料の製造プロセスを示す。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”とは同義である。
本発明の飲料の製造方法は、高飽和脂肪酸含有食用油脂に、高圧乳化処理を複数回行い、該複数回の高圧乳化処理における該食用油脂への処理圧力の合計を40MPa以上として調製して得られた油脂乳化物と、飲料成分とを混合して製造することを特徴とする。
[高飽和脂肪酸含有食用油脂]
まず、本発明で乳化処理する高飽和脂肪酸含有食用油脂について説明する。
高飽和脂肪酸含有食用油脂とは、ナタネ油、コーン油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマワリ油、サフラワー油、マカデミア種子油、ツバキ種子油、茶実油、米糠油、オリーブ油、綿実油等の植物性油脂;牛脂、乳脂、豚脂、羊脂、魚油等の動物性油脂;これら植物性油脂又は動物性油脂の液状又は固体状物を精製や脱臭、分別、硬化、エステル交換といった油脂加工した、MCT(中鎖脂肪酸油)、硬化ヤシ油、硬化パーム核油などの硬化油脂や加工油脂、更にこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等を、1つ、または2つ以上混合した食用油脂のうち、その主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合が好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であるものである。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、このうち、特にトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、炭素数が12以下の脂肪酸の割合が50質量%以上であるものが好ましい。
また、本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、沃素価が通常20.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは3.0以下、最も好ましくは1.0以下であることが、殺菌や高温保存時の酸化臭がなく、良好な風味となるため好適である。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、10℃におけるSFC(固形脂含量)が好ましくは45質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であることが、保存時の酸化臭がなく、かつ冷蔵状態でも風味のよい飲料を作るため好適である。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、酸価が通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.1以下であることが、酸化臭などの不快な風味が低減され、良好な風味となるため好適である。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、過酸化物価が通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、最も好ましくは、0.01以下であることが、殺菌や保存時の酸化臭がなく、良好な風味となるため好適である。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂は、上昇融点が好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、最も好ましくは25℃以上であることが、殺菌や保存時の酸化臭がなく、かつ冷蔵状態でも風味のよい飲料を作るため好適である。この上昇融点の上限は好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、最も好ましくは45℃以下であることが、良好な乳化安定性を得るために好適である。
本発明で用いる高飽和脂肪酸含有食用油脂としては、パーム核油、ヤシ油などの植物性油脂や、硬化したパーム核油(硬化パーム核油)、硬化したヤシ油(硬化ヤシ油)、MCT(中鎖脂肪酸油)などの硬化油脂や加工油脂が好ましく、硬化パーム核油、硬化ヤシ油、MCT(中鎖脂肪酸油)がより好ましく、硬化パーム核油、硬化ヤシ油がさらに好ましく、完全硬化したパーム核油(完全硬化パーム核油)、完全硬化したヤシ油(完全硬化ヤシ油)が特に好ましく、完全硬化ヤシ油が最も好ましい。
油脂は2種以上を組み合わせて用いてもよく、その場合、上記トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占めるトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合、トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、炭素数が12以下の脂肪酸の割合、沃素価、10℃におけるSFC、酸価、過酸化物価、上昇融点などは、2種以上の混合物の値となる。
[乳化剤及び油脂組成物]
本発明において、高飽和脂肪酸含有食用油脂は、乳化剤を含有する油脂組成物として乳化処理することが好ましい。すなわち、油脂組成物を乳化処理して本発明で特定される油脂乳化物を製造することができる。従って、本発明で特定される油脂乳化物は、以下詳述する油脂組成物に含まれるものを含むことができる。以下に、この乳化剤及び油脂組成物について説明する。
乳化処理の際に用いる乳化剤は、飲食品に用いるため、安全性が高く、食用可能な乳化剤であることが好ましい。また、乳化処理で用いる乳化剤は、後述の静菌性乳化剤であってもよい。
乳化剤としては、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、モノグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどのモノグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどが挙げられ、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステルが好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウムがより好ましい。該ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち50%以上が炭素数18の脂肪酸で、モノエステル含量が70質量%以下であるものが特に好ましい。
これらの乳化剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよいが、特に2種以上の乳化剤を組み合わせて用いることが好ましく、さらに3種以上の乳化剤を組み合わせることが、乳化安定性をより高めることができるため好ましい。
2種以上の乳化剤を組み合せて用いる場合、HLB5以上、好ましくはHLB5〜16、より好ましくはHLB5〜11、さらに好ましくはHLB6〜9の乳化剤と、HLB5未満、好ましくはHLB0〜4、より好ましくはHLB1〜3の乳化剤との併用が好ましい。
さらに、HLB5以上の乳化剤及びHLB5未満の乳化剤ともに、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。この場合、HLB5以上のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数は、12以上が好ましく、14以上がより好ましく、22以下が好ましく、18以下がさらに好ましい。また、HLB5未満のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数は、12以上が好ましく、16以上がより好ましく、22以下が好ましく、18以下が特に好ましい。
HLB5以上の乳化剤とHLB5未満の乳化剤とを併用する場合、その使用割合(質量比)は、これらを併用することによる乳化安定性化の効果を有効に得る上で、HLB5以上の乳化剤を1とした場合、HLB5未満の乳化剤は、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が特に好ましく、0.05以上が最好ましく、10以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、1.0以下が特に好ましく、0.5以下が最も好ましい。
また、2種以上の乳化剤を組み合せて用いる場合、ノニオン性乳化剤とイオン性乳化剤とを併用することが好ましい。
ノニオン性乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニンが好ましく、ショ糖脂肪酸エステルが特に好ましい。
イオン性乳化剤としては、レシチンおよびリゾレシチン、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、モノグリセリンジアセル酒石酸脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムが好ましく、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウムがさらに好ましく、ステアロイル乳酸ナトリウムが最も好ましい。
ノニオン性乳化剤とイオン性乳化剤とを併用する場合、その使用割合(質量比)は、これらを併用することによる乳化安定性化の効果を有効に得る上で、ノニオン性乳化剤を1とした場合、イオン性乳化剤は、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が特に好ましく、0.05以上が最も好ましく、10以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましく、0.5以下が最も好ましい。
特に、乳化剤としては、HLB5以上、好ましくはHLB5〜11のショ糖脂肪酸エステルと、HLB5未満、好ましくはHLB1〜3のショ糖脂肪酸エステルと、ステアロイル乳酸ナトリウムの3種の乳化剤を組み合わせて用いることが好ましく、その場合において、これらの乳化剤の使用割合(質量比)は、HLB5以上のショ糖脂肪酸エステル:HLB5未満のショ糖脂肪酸エステル:ステアロイル乳酸ナトリウム=1:0.01〜1.0:0.01〜1.0、とりわけ1:0.05〜0.5:0.05〜0.5であることが好ましい。
高飽和脂肪酸含有食用油脂と乳化剤を含有する油脂組成物における乳化剤の含有量は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下で、高飽和脂肪酸含有食用油脂の含有量は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
また、乳化剤と高飽和脂肪酸含有食用油脂の含有質量比は、乳化剤を1とした場合、高飽和脂肪酸含有食用油脂は通常0.5以上、好ましくは2以上、より好ましくは6以上、通常800以下、好ましくは140以下、より好ましくは60以下である。
油脂組成物中の高飽和脂肪酸含有食用油脂および乳化剤の含有量及びその含有比が上記範囲であることにより、その後の乳化処理を効率的に行って、乳化安定性に優れた油脂乳化物を製造しやすくなる。
油脂組成物は通常、高飽和脂肪酸含有食用油脂と乳化剤と水を用いて調製される。水の使用量、すなわち、油脂組成物中の水の含有量は、通常15質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、通常85質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下で、油脂組成物は、その固形分濃度が通常15質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、通常85質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下となるように調製することが、その後の乳化処理を効率的に行って、乳化安定性に優れた油脂乳化物を製造し、かつその後、飲料に用いる際に、過剰な水を含まず、効率的に油脂を添加する上で好適である。
乳化処理に供する油脂組成物には、高飽和脂肪酸含有食用油脂、乳化剤及び水以外のその他の成分が含まれていてもよい。
その他の成分としては、有機酸、重曹、リン酸塩等のpH調整剤、更に、効果に影響がない範囲で必要により、砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン等の単糖やオリゴ糖、多糖類を含む糖類;エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール;スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料;カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質とその分解物;レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル等の香料;β−カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素、食塩などの風味付け素材;カルシウム、鉄などのミネラル素材;ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド等のような栄養素材;ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤;カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤;ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料などを添加することも出来る。
ただし、本発明において、乳化処理を施す油脂組成物にはタンパク質を実質的に含有しないことが好ましい。油脂組成物中にタンパク質を含むと、高圧乳化処理を行って油脂を細分化した際、乳化剤と高分子のタンパク質が競合し、効率的な界面吸着が妨げられ、その結果、乳化安定性が損なわれる恐れがあるためである。なお、酵素等によりペプチドやアミノ酸まで充分分解されたタンパク質は含有されていてもよい。タンパク質を実質的に含有しないとは、油脂組成物中において、タンパク質の含有量が、乳化剤を1としたとき、質量比で、0.5以下であること、好ましくは0.1以下であること、さらに好ましくは0.05以下であること、最も好ましくは0.01以下であることを意味する。または、油脂組成物中において、タンパク質の含有量が、1.0質量%以下であること、好ましくは0.5質量%以下であること、さらに好ましくは0.3質量%以下であること、特に好ましくは0.1質量%以下であることを意味し、最も好ましくは全く含有しないことを意味する。
[乳化処理]
本発明における高飽和脂肪酸含有食用油脂の乳化処理、好ましくは上記油脂組成物の乳化処理について、以下に説明する。
本発明の製造方法は、該乳化処理として高圧乳化処理を複数回行うことを特徴とする。
高圧乳化処理とは、狭い均質バルブの隙間や流路、ノズル等にポンプで送液することで高圧状態となった被処理物を、一気に圧力低下させ、その圧力差のエネルギーで流速を速め、高速で被処理物をバルブやリング、または、被処理物同士で衝突させることで、乱流、キャビテーションやせん断力を生じさせ、そのエネルギーにより、被処理物を細分化、乳化する処理であり、SPX社製 GAURIN 125T、132T、イズミフードマシナリー社製HV−5H、HV−5E等のバルブ式、吉田機械興業社製ナノヴェイダ、スギノマシン社製スターバースト100等のノズル式、パウレック社製マイクロフルイダイザー等のチャンバー式など、市販の高圧乳化機を用いて実施することができる。
なお、高圧乳化機には、機内で高圧乳化処理を2段階で行う2段式等の多段式の乳化機もあるが、このような乳化機において、当該乳化機の処理圧力は、各段の処理圧力の合計の圧力としてとらえ、完全に大気圧に復圧せずに連続して行われる当該多段式高圧乳化処理は、1回の乳化処理とする。
中でも、工場で大量生産する場合は、高圧乳化処理を複数回実施するにあたり、より製造効率が高い、時間あたり処理能力が多い高圧乳化機が好ましい。時間あたりの処理能力としては、通常0.1t/h以上、好ましくは1t/h以上、より好ましくは5t/h以上、最も好ましくは10t/h以上であることで、複数回の高圧乳化処理を、製造効率を低減することなく実施することができる。上限は特にないが、通常500t/h以下である。
具体的に高圧乳化とは、1段式であればその高圧乳化時点の処理圧が、2段式等の多段式であれば、少なくとも1段の高圧乳化時点の処理圧が、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、最も好ましくは25MPa以上の状態で乳化することである。
本発明において、このような高圧乳化機を用いて、高圧乳化処理を複数回行う。ここで、高圧乳化処理を複数回行うとは、高圧乳化機に被処理物(好ましくは前述の油脂組成物)を導入して高圧条件下で乳化処理した後、乳化処理物を取り出す操作を複数回行うことをさす。ここで、複数回の高圧乳化処理に用いる高圧乳化機は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
本発明では、1機の高圧乳化機を用い、高圧乳化機内で高圧乳化処理されて排出された処理物を再びこの高圧乳化機の入り口側に戻す循環処理を行うことにより、複数回の高圧乳化処理を行ってもよく、また、複数機の高圧乳化機(この場合、複数機の高圧乳化機は同一のものでも異なるものでよい。)を直列に配置し、被処理物を順次複数の高圧乳化機に通すことにより複数回の高圧乳化処理を行ってもよい。
さらに、油脂乳化物の殺菌処理を行う場合には、複数回行う高圧乳化処理が、殺菌処理の前で全て行ってもよいし、殺菌処理の後で全て行ってもよいし、殺菌処理の前後両方で1回以上ずつ行ってもよい。特に殺菌処理によるダメージを最小限にするため、殺菌処理前に2回以上の高圧乳化処理を行うことが好ましく、加えて殺菌処理後に1回以上の高圧乳化処理を行うことが最も好ましい。
いずれの場合においても、本発明の油脂乳化物の製造方法では、高圧乳化機内で高圧乳化処理が施された後、高圧乳化機から排出されることにより、常圧に復圧した処理物が、再度、高圧乳化機に導入されて高圧乳化処理が施されることを繰り返すこと、すなわち、高圧乳化処理と高圧乳化処理との間に復圧されることで、乳化物中の粒子に加圧と圧力緩和の相反するエネルギーが付与され、乳化粒子のより一層の微細化と、オストワルドライプニングに起因する乳化不安定化の原因となる乳化粒子サイズのバラツキが最小化されることによる分散安定性の向上効果を得ることができる。
本発明において、高圧乳化処理の回数については、各回の処理圧力や処理時間によっても異なるが、上記の復圧による効果を十分に得る上では多い方が好ましく、工業的実用化における生産性の面では少ない方が好ましい。高圧乳化処理回数は2回以上、特に2〜6回であることが好ましく、2〜4回であることが最も好ましい。
また、各回の高圧乳化処理における圧力は、10MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましく、25MPa以上が最も好ましい。各回の高圧乳化処理の処理圧力は、高い程、油脂を十分に細かい微粒子として均一に乳化分散させることができることから好ましい。乳化安定性の面において、処理圧力の上限については特に制限はないが、用いる高圧乳化機の耐圧性や、工業的な実用化の面で通常200MPa以下である。なお、50MPa以上の超高圧乳化処理を行う場合、超高圧状態に耐えうる材質、設計等の装置の特殊性、超高圧状態に起因する備品の破損等で生じるランニングコストの負担、高圧状態を作り出すための電力や圧縮空気のためのエネルギーコスト等の経済性、超高圧状態での乳化処理は時間あたり処理量が少なくなってしまうという製造効率の観点から、必要最小限の圧力において高圧乳化する方が経済的なメリットがあるため、処理圧力は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは80MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下、最も好ましくは45MPa以下であることが望ましい。
なお、各回の高圧乳化処理の処理圧力は、上記の圧力範囲内において、同一であってもよく、異なっていてもよく、例えば、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と、順次高圧乳化処理の処理圧力を高くしたり、2回目で高くし、再び下げたり、圧力条件を変動させてもよい。
また、各回の高圧乳化処理時間は、処理量や処理圧力によっても異なるが、特に工場で大量生産する場合においては、生産性を損なうことなく、良好な乳化安定性を得る上で、通常0.005時間以上、好ましくは0.01時間以上、最も好ましくは0.1時間以上、通常20時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、特に好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下であり、複数回の高圧乳化処理の合計の処理時間は通常0.01時間以上、好ましくは0.02時間以上、最も好ましくは0.2時間以上、通常40時間以下、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、さらに好ましくは4時間以下、最も好ましくは2時間以下である。
また、複数回の高圧乳化処理の間に復圧条件となる時間(高圧乳化機から排出された乳化処理物が再び高圧乳化機に導入されるまでの時間)は、生産性を損なうことなく復圧の効果を十分に得るために、通常0.1分以上、特に0.5分以上、通常1200分以下、特に600分以下であることが好ましい。各回の乳化処理時間についても復圧条件となる時間についても、各回毎に異なっていても同一であってもよい。
高圧乳化処理時の温度は、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。処理温度が上記下限以上であることが、乳化効率の面で好ましく、また、乳化液の取り扱い性の面で、処理温度は上記上限以下であることが好ましい。この処理温度についても各回毎に異なっていてもよく、同一であってもよい。
また、高圧乳化処理時の油脂組成物のpHについては、用いる乳化剤が水に充分分散し、効率良く油脂を乳化するという点から好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、通常9.0以下、好ましくは8.0以下である。油脂組成物のpHは、油脂組成物に重曹、リン酸塩等のpH調整剤、その他の添加剤を添加することにより調製することができる。
本発明においては、上記のような高圧乳化処理を複数回行い、複数回の高圧乳化処理の処理圧力の合計(各回の乳化処理圧力を単純に加算した値。以下、単に「合計圧力」と称す。)を40MPa以上とすることを特徴とする。合計圧力が40MPa未満では乳化安定性に優れた油脂乳化物を得ることができない。
合計圧力は、高い程、油脂を十分に細かい微粒子として均一に乳化分散させることができることから好ましく、45MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、60MPa以上であることが最も好ましい。乳化安定性の面において、合計圧力の上限については特に制限はないが、用いる高圧乳化機の耐圧性や、処理回数等、工業的な実用化の面で通常600MPa以下である。なお、先に述べた装置の特殊性、経済性、製造効率の観点から、必要最小限の合計圧力において高圧乳化する方が経済的なメリットがあり、かつ過剰な粒子の微細化は、油脂の味質を感じにくくすることで、風味を損なうことになるため、乳化粒子の微細化は、乳化安定化に必要な最低限の範囲での行うことが好ましく、合計圧力は、好ましくは150MPa以下、より好ましくは120MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下、最も好ましくは80MPa以下であることが望ましい。
なお、油脂乳化物の製造においては、上記の高圧処理以外の乳化処理を施してもよく、例えば、上記の高圧乳化処理に先立ち、パドルミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ニーダー、インラインミキサー、スタティックミキサー、オンレーター等を用いて、低圧または常圧条件での予備乳化を行ってもよい。
この予備乳化は、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下で、通常0.005〜20時間、好ましくは0.01〜10時間行われる。
また、高圧乳化処理後には、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、通常160℃以下、好ましくは150℃以下で、通常0.01分以上、好ましくは0.03分以上、通常60分以下、好ましくは30分以下程度の殺菌処理を行ってもよい。殺菌方法は特に制限はないが、連続生産が可能な連続式殺菌法が好ましく、UHT殺菌がさらに好ましい。
このようにして製造される本発明の油脂乳化物は、乳化安定性と、適度な油脂の呈味性のバランスを保つため、レーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所製のLA−950等)で、粒度分布を測定した際に得られる、メジアン径が通常0.01μm以上、さらに0.05μm以上、特に0.1μm以上であることが好ましく、通常1.0μm以下、好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。また、pHが、5.0以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましく、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがさらに好ましく、6.5〜7.5であることが最も好ましい。
本発明で特定される油脂乳化物は通常液状物として得られるが、この液状物を粉末化することにより、粉末油脂乳化物として、各種用途に用いてもよい。粉末化には、噴霧乾燥法、気流乾燥法、ドラム乾燥法、円筒乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法などを用いることができるが、大量生産に適した噴霧乾燥法が好ましい。
また、粉末化の際に用いる粉末基剤としては、澱粉加水分解物として、ゲル浸透クロマトグラフィーで分子量分布を測定した際の総ピーク面積に対する、分子量8500以上18500以下の範囲のピーク面積の割合が15%以下である澱粉加水分解物が好ましい。
本発明で特定される油脂乳化物(以下「本発明の油脂乳化物」という場合がある)は、後述の本発明の飲料に好適に用いることができる。
[飲料]
次に、上記のようにして調製された油脂乳化物を用いて飲料を製造する。飲料としては、例えば、乳飲料、スープ飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、茶飲料(紅茶、緑茶、中国茶など)、豆類・穀物飲料、酸性飲料、粉末飲料、粉末スープ等が挙げられ、中でも、乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料が好ましい。
本発明の油脂乳化物と以下の様な飲料成分を混合して飲料を製造する。
(飲料成分)
コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶など)およびそのエキス;カカオ豆、大豆や小豆、アーモンド、ピーナッツ、胡桃、杏仁、コメ、麦などの豆類・穀物、またはその粉末やペースト;ココナッツミルク、ココナッツジュースなどの果汁や果肉およびその粉砕物やペースト;乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、ホエー、チーズなどの乳成分;レシチンおよびリゾレシチン、モノグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどの乳化剤、中でも以下に記載する静菌性乳化剤;有機酸およびその塩、重曹、リン酸塩等のpH調整剤;砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、微結晶セルロース、発酵セルロース、キトサン、ファーセラン、でんぷん、加工でんぷん、イヌリン等の単糖やオリゴ糖、多糖類を含む糖類;エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール;スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物などの各種甘味料;カゼインナトリウム、ホエータンパク質、アルブミン、ゼラチン、大豆タンパク質などの各種動物および植物由来のタンパク質とその分解物;レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、バター香料、ミルク香料等の香料;β−カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素、食塩などの風味付け素材;カルシウム、鉄などのミネラル素材;ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド、DHA、EPA等のような栄養素材;ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物などの酸化防止剤;カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤;ナイシン、ソルビン酸およびその塩などの保存料;二酸化炭素;リキュール、ウォッカ、焼酎などの酒類;エタノール
また、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、食用油脂、およびその乳化物、または粉末化物を飲料成分として含有していてもよい。
飲料成分としては、コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶など)およびそのエキスを用いることが好ましい。
上記静菌性乳化剤とは、飲料における危害菌である耐熱性菌に対して効果を持つ食品用乳化剤であり、その効果を有する食品用乳化剤であれば、特に制限なく使用することができるが、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドが好ましく、これらの中でも、特に、構成する脂肪酸の炭素数が14以上のものが好ましく、16以上のものがより好ましく、22以下のものがより好ましく、18以下のものがさらに好ましい。
特に、構成する脂肪酸の炭素数が16〜18の、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、これらは菌に対する有効性が高いため好適である。また、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル含量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であることが、菌に対する有効性が高いため好適である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2以上であることが好ましく、5以下であることが好ましく、さらに3以下であることが、菌に対する有効性が高いため最も好ましい。
本発明の飲料中の本発明の油脂乳化物の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5.0質量%以下である。油脂乳化物の含有量が上記下限値以上であると、油脂の濃厚感、コクを付与することにより、良好な味質の飲料が生産可能であり、また、上記上限値以下であることにより、飲料の殺菌や保存中における乳化安定性を良好な状態で保つことができる。
本発明の飲料における乳化剤の含有量は、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、通常1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。なお、ここで、飲料の乳化剤の含有量とは、本発明の油脂乳化物中に乳化剤を含む場合、その乳化剤をも含む合計の乳化剤の含有量をいう。
特に、本発明の飲料は、静菌性乳化剤を含有することが好ましく、本発明の飲料における静菌性乳化剤の含有量は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、通常0.6質量%以下、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
なお、高飽和脂肪酸含有食用油脂を含む油脂乳化物と静菌性乳化剤とが共存すると、乳化が不安定になり、分離した油脂が凝集したり、結晶化し、結果飲料の風味を低下させる場合があるが、本発明の油脂乳化物は、静菌性乳化剤と競合せず、むしろ乳化安定性を向上させるため、乳化不良およびその結果起こる風香味の低下を防止することができる。
飲料に用いる場合の、飲料中の無脂乳固形分量は、特に制限はないが、より濃厚な乳の風味が必要な場合は、通常0.5質量%以上、好ましくは1.0%質量以上、より好ましくは1.4質量%以上、最も好ましくは1.5質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5.0%質量以下、より好ましくは4.0質量%以下、最も好ましくは3.0質量%以下である。飲料中の無脂乳固形分量を、この範囲にすることにより、製品が安定で、かつ高飽和脂肪酸含有食用油脂とのバランスの良い乳風味が得られるため好ましい。
本発明の油脂乳化物を含有する飲料は、以下のように製造される。
まず、前述の油脂乳化物の他、上記飲料に含まれていてもよいものとして例示した材料である飲料成分を、必要に応じて水などと共に混合して混合液を調製する。
次いで、得られた混合液を撹拌して乳化する。乳化方法としては、通常食品に用いられる均質乳化方法であれば特に制限なく使用することができ、例えば、ホモジナイザーを用いる方法や、コロイドミルを用いる方法、ホモミキサーを用いる方法などいずれも用いることができる。この均質乳化処理は、通常40〜80℃の加温条件下で行われる。
なお、ホモジナイザーを用いた均質乳化処理として、上述の油脂乳化物の調製で行うような高圧乳化処理を適用することも好ましい。1段式であればその高圧乳化時点の処理圧が、2段式等の多段式であれば、少なくとも1段の高圧乳化時点の処理圧が、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、最も好ましくは25MPa以上、通常200MPa以下、好ましくは100MPa以下の高圧乳化処理を行うことで、安定な飲料を得ることができる。高圧乳化処理の回数としては1回以上、好ましくは2回以上である。
なお、該均質乳化処理は、油脂乳化物の添加の前後のいずれで行ってもよい。油脂乳化物添加後に行う場合は、静菌性乳化剤も混合液中に含まれていることが、より一層乳化安定性を向上させるという点で好ましい。
この均質乳化処理後には、UHT殺菌、レトルト殺菌などの殺菌処理を行う。通常レトルト殺菌は、110〜140℃、例えば121℃で、10〜40分の条件で行われる。一方、PETボトル用飲料などに用いられるUHT殺菌は、より高温、例えば殺菌温度120〜150℃で、且つ121℃での殺菌価(Fo)が10〜50に相当する超高温殺菌である。UHT殺菌は飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
尚、製造された本発明の飲料は、容器詰め飲料に好適であり、例えば、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料、ビン詰飲料などに適用することができる。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<完全硬化ヤシ油>
以下の製造例で用いた完全硬化ヤシ油は、主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合が0.1質量%未満、トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合が61質量%で、沃素価0.47、10℃におけるSFCが90質量%、酸価0.04、過酸化物価0、上昇融点32℃のものである。
また、パーム油中融点画分(PMF)とは、原料であるパーム油を融点によって分画した際に、高融点画分(パームステアリン)および低融点部分(パームスーパーオレイン)を除いた際に得られる画分であり、主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合が45質量%で、トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合が0.2質量%で、沃素価45.6、酸価0.04、過酸化物価0のものである。
さらに、用いたその他の油脂の詳細は以下の通りである。
<部分硬化ヤシ油>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=0.2質量%
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=61質量%
上昇融点=32℃
<完全硬化パーム核油>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=0.1質量%未満
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=52質量%
<MCT>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=0.1質量%未満
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=100質量%
酸価=0.01
沃素価=0.08
<精製ヤシ油>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=8質量%
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=62質量%
10℃におけるSFC=82質量%
酸価=0.04
沃素価=8.75
過酸化物価=0
<調整食用油脂>
無水乳脂:68質量%、ヤシ油:32%
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=25質量%
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=28質量%
<無水乳脂>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=32質量%
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=13質量%
<部分硬化パームオレイン>
主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合=53質量%
トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸のうち、炭素数が12以下の脂肪酸の割合=0.5質量%
上昇融点=36℃
また、用いた乳化剤の詳細は以下の通りである。
<ショ糖脂肪酸エステル(S−1670)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1670」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=80質量%
HLB=16
<ショ糖脂肪酸エステル(S−1170)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−770」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=60質量%
HLB=7
<ショ糖脂肪酸エステル(S−770)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−770」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=40質量%
HLB=7
<ショ糖脂肪酸エステル(S−370)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−370」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=17質量%
HLB=3
<ショ糖脂肪酸エステル(S−570)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−570」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=30質量%
HLB=5
<ショ糖脂肪酸エステル(S−170)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−170」
脂肪酸の炭素数=16および18
HLB=1
<ショ糖脂肪酸エステル(P−1570)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルP−1570」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=70質量%
HLB=15
<ショ糖脂肪酸エステル(P−1670)>
三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルP−1670」
脂肪酸の炭素数=16および18
モノエステル含量=80質量%
HLB=16
<ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)>
HLB=7〜9
<モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル>
脂肪酸の炭素数=16および18
<ポリグリセリン脂肪酸エステル S−10D>
三菱化学フーズ社製「リョートーポリグリエステルS−10D」
脂肪酸の炭素数=16および18
[参考例1]
1回の高圧乳化処理における最適な圧力条件を把握するため、以下の組成のモデル油脂乳化物を混合、調製し、1段バルブ式タイプの高圧乳化機(三丸機械工業社製「エコナイザーLABO−01」)を用い、65℃にて、表1に示す各所定圧力で、1回高圧乳化処理した後、冷却後の油脂乳化物の平均径と、より粗大な乳化粒子の粒子径を示す累積90%径を堀場製作所製「LA−950V2」を用いて測定した(以後の例における粒度分布の測定についても、同測定機器を用いた。)。
また、高圧乳化後の平均径、または累積90%径について、減少率および処理圧力から乳化効率を求め、下記の基準により効果を判定した。乳化効率は、用いたエネルギーに対する乳化粒子微細化の効率性を示す。
「減少率」=(「高圧乳化後」/「高圧乳化前」)×100
「乳化効率」=(圧力値Xで高圧処理した時の減少率」−「圧力値Yで高圧処理した時の減少率」)/(「圧力の差分」=Y−X)
なお、Y>Xである。
(例)(5MPa時の減少率−10MPa時の減少率)/(10MPa−5MPa)
さらに、粒度分布測定の結果から算出された算術標準偏差と、平均径から、粒度分布の単分散性、多分散性の指標である「CV値」=(「算術標準偏差」/「平均径」)×100を求めた。表1、2に各値を示す。
<油脂乳化物の組成>
生クリーム(乳脂を35質量%含有):2.72質量%
P−1670:0.08質量%
水:97.2質量%
(高圧乳化前の平均径:3.64μm、累積90%径:5.65μm)
<1回の高圧乳化における圧力値の効果>
○:効果的、効率的に乳化粒子を微細化している(減少率が20%未満、乳化効率は0以上)
△:乳化粒子に対する微細化効果がやや弱い(減少率が20%以上、50%未満)、または、乳化効率が悪い(乳化効率が0未満、−1以上)
×:乳化粒子に対する微細化効果が弱い(減少率が50%以上)、または、圧力が過剰であり、効率が悪いか、または、逆効果になり粒子が粗大化している(乳化効率が−1未満)
<油脂乳化物における乳化粒子の分散状態>
◎:比較的単分散性が高い CV値が50%以下
○:やや単分散性が高い CV値が50%より大きく、75%以下
△:やや単分散性が低い CV値が75より大きく、100%以下
×:多分散状態である CV値が100%より大きい
Figure 0006430947
Figure 0006430947
1回の高圧乳化における圧力は、5MPaでは、乳化粒子を微細化するには不足していた。一方、10MPa以上で微細化効果を発揮しており、15MPa以上で、より効率よく微細化する傾向がみられた。また、50MPaでは微細化は起こっているが、40MPaよりも平均径や累積90%径が大きくなっており、よりエネルギーを与えているにも関わらず、微細化に関しての効率はやや悪いことがわかった。
また、1回の高圧乳化の圧力を上昇させ、乳化粒子を微細化するほど、CV値は上昇し、粒度分布は多分散状態となっていくこともわかった。
[参考例2]
さらに、1回の高圧乳化における超高圧状態における乳化の効果を検証するため、製造例1と同じ組成のモデル油脂乳化物を混合、調製し、ノズル式タイプの超高圧乳化機(吉田機械興業社製「ナノヴェイダ」)を用い、65℃にて、表3に示す各所定圧力で、1回または複数回乳化処理した後、冷却後の油脂乳化物について、製造例1と同様の評価を行った。なお、複数回高圧乳化処理した場合の「乳化効率」は、1回目と2回目または2回目と3回目の「減少率の差分」を1回分の「圧力」で除することで算出した。
(例)(50MPa、2回実施時の減少率−50MPa、1回実施時の減少率)/(50MPa)
結果を表3、4に示す。
Figure 0006430947
Figure 0006430947
一般的により効率が良いといわれる超高圧乳化を行った結果も、参考例1と同様、1回の高圧乳化における圧力は、高ければ高いほどよいという結果ではなく、100MPaでは微細化は起こっているが、より低い圧力で処理した結果よりも平均径や累積90%径が大きくなっており、大きなエネルギーを与えているにも関わらず、微細化に関しての効率はやや悪いことがわかり、さらに200MPaでは逆に乳化粒子が粗大化する減少が起こり、やや圧力が過剰となった結果、効率が悪化することが分かった。
また、参考例1と同様、1回の高圧乳化の圧力を上昇させ、乳化粒子を微細化するほど、CV値は上昇し、粒度分布は多分散状態となっていくこともわかった。
これに対し、50MPaで複数回処理することで、同じ合計圧力であるが1回のみ高圧乳化処理をした結果と比較して(50MPa、2回処理と、100MPa、1回処理を比較して)、より効率的で、かつCV値の低い、比較的単分散性が高く安定なエマルションを調製できることが分かった。
[参考例3]
参考例1、2より、1回の高圧乳化における最適な圧力値と、1回の高圧乳化処理よりも、複数回の乳化処理が有効であることが分かったため、より最適な1回の高圧乳化処理の圧力、および処理回数をを検証するため、製造例1と同じ組成のモデル油脂乳化物を混合、調製し、1段バルブ式タイプの高圧乳化機(三丸機械工業社製「エコナイザーLABO−01」)を用い、65℃にて、表5に示す各所定圧力と回数にて、複数回の高圧乳化処理した後、冷却後の油脂乳化物について、参考例1と同様、CV値の算出と、分散状態の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 0006430947
結果、表5に示すように、1回の高圧乳化圧力が10MPaの場合、4回まで乳化回数を増やすことで、CV値が低下していく傾向がみられた。さらに1回の高圧乳化圧力が20、30MPaの場合は、乳化回数を増やすことで顕著にCV値を低減できることが分かった。同じ合計圧力で比較すると、1回の高圧乳化圧力が10MPaで、乳化回数が4回よりも、20MPaで、乳化回数が2回(両方とも合計圧力=40MPa)の方が、CV値が低くなる傾向がみられた。
以上の参考例1〜3の結果から、最適な高圧乳化処理の圧力、回数に関する条件が見出されたため、当該条件を用いて、本願の実施例・比較例に関する試験を実施した。
[製造例1〜5]
完全硬化ヤシ油45質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−770)2.0質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−370)0.2質量%、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル0.2質量%、重曹0.02質量%、水52.58質量%を、ホモミキサーを用いて65℃で0.1時間予備乳化した後、1段バルブ式タイプの高圧乳化機(三丸機械工業社製「エコナイザーLABO−01」)を用い、65℃、20MPaで1〜5回(合計圧力20〜100MPa)乳化処理し、次いで90℃で10分間殺菌して油脂乳化物#1〜#5を得た。
なお、2回以上の高圧乳化処理は、1機の高圧乳化機で循環処理することにより行い、各回の乳化処理時間は0.05時間であった。
得られた油脂乳化物を、5℃で一晩静置した後、pHとメジアン径(測定には堀場製作所製「LA−950V2」を用いた。以後の例におけるメジアン径も同測定機器を用いた。)を測定するとともに、流動性と味質を以下の基準で確認した。結果を表6に示す。
<保存後のエマルションの流動性>
○: 流動性が良好である
△: やや増粘している
×: 著しく増粘しており、流動性が悪い、または、完全に固化しており、流動しない
<油脂乳化物の味質>
◎: 油脂の味を強く感じ、濃厚感がある
○: やや油脂の味が薄く、少し水っぽく感じる
△: 油脂の味が薄く、水っぽく感じる
×: 非常に水っぽく、油脂の味を感じない
Figure 0006430947
油脂乳化物#2〜#5が、5℃で一晩静置後も流動性を維持していたにも関わらず、#1は増粘、固化が起こっており、乳化状態が非常に不安定であった。
さらに、油脂乳化物#2〜#5を、5℃で4週間静置後、pHとメジアン径を測定し、メジアン径については、以下の基準で増加率を算出し、評価するとともに、流動性を先述の基準により確認した。あわせて、製造例1と同様にCV値を算出し、分散状態を評価した。結果を表7に示す。
<5℃4週間保存後のエマルションの粒子のメジアン径増加率>
◎: 増加率=保存後の粒子のメジアン径/保存前の粒子のメジアン径が、1.1以下である
○: 上記増加率が、1.1より大きく、1.5以下である
△: 上記増加率が、1.5より大きく、2.0以下である
×: 上記増加率が、2.0より大きい
Figure 0006430947
油脂乳化物#3〜#5は、5℃で1カ月静置後も流動性を維持し、メジアン径の増大もみられず、乳化が非常に安定していた。油脂乳化物#2は流動性は維持しているものの、ややメジアン径の増大がみられ、乳化が油脂乳化物#3〜5に比べるとやや安定性に劣る傾向であった。
以上の結果から、合計圧力を40MPa以上とすることで、安定な油脂乳化物を製造できることが分かり、さらに合計圧力を60MPa以上とすることで、非常に安定な油脂乳化物を製造できることが明らかになった。
また、合計圧力が増加するにつれて、より乳化粒子が微細化するため、油脂の味を感じにくくなる傾向がみられ、安定性と味質のバランスに好適な範囲があることがわかった。
[製造例6〜21]
表8に示す種類および質量比率にて、油脂、乳化剤、タンパク質、重曹、水を混合し、ホモミキサーを用いて65℃で0.1時間予備乳化した後、2段バルブ式タイプの高圧乳化機(SPX社製「GAURIN 15MR」)を用い、65℃で、表9に記載の1段目および2段目圧力、回数、合計圧力で乳化処理し、次いで90℃で10分間殺菌して、油脂乳化物#6〜#21を得た。評価結果を表9に示す。
なお、高圧乳化処理は1機の高圧乳化機で循環処理することにより行い、各回の乳化処理時間は0.05時間であった。
得られた油脂乳化物を、5℃で一晩静置した後、pHとメジアン径を測定するとともに、5℃で4週間静置後のメジアン径を測定し、メジアン径については、製造例2〜5の基準により増加率を算出し、評価するとともに、流動性も評価した。結果を表9に示す。一部、やや増粘傾向を示すものもあるが、メジアン径の増大はみられず、いずれも、安定な油脂組成物を得ることができた。
Figure 0006430947
Figure 0006430947
[実施例1〜12、比較例1〜4]
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.0%)58質量%に、重曹0.1質量%、砂糖5.0質量%、製造例6〜21の油脂乳化物0.84質量%、静菌性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(P−1670)0.03質量%を混合し、水を加えて、100質量%とした後、充分に撹拌溶解した後、2段バルブ式タイプの高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV−OA−2.4−2.2S」)で、1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化し、缶容器に充填した後、121.1℃で30分間、レトルト殺菌して、pH5.6〜5.8である缶容器詰めミルクコーヒーを得た。得られたコーヒー飲料を、表10に示す温度条件および期間保管後、以下の基準により乳化安定性と風香味を評価した。また、乳化安定性と風香味の両者の結果から、以下の基準により点数をつけ、総合評価とした。結果を表10に示す。
<乳化安定性の評価>
保存後の缶容器詰めミルクコーヒーを開缶後、内容液をプラスチックカップに注ぎ、よく撹拌した後の液面の状態と、缶内面に付着したクリームの付着量を、目視観察し、以下の基準で評価した。
○: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着がないか、わずかに認められる。
△: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着がはっきりと認められる。
×: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着が多量に認められ、乳化が壊れている。
<風香味(油脂由来の臭い)>
保存後のPET詰めミルクティーを室温にて試飲者3名で飲用し、以下の基準で風香味を判定した。
○: 油脂由来の臭いはないか、わずかに感じられる程度で、違和感はない。
△: 明らかに油脂由来の臭い、および/または、酸化劣化臭を感じる。
×: 強く油脂由来の臭い、および/または、酸化劣化臭を感じ、違和感がある。
<総合評価>
前述の乳化安定性の「○」を「4」、「△」を「2」、「×」を「0」、風香味の「○」を「6」、「△」を「3」、「×」を「0」として、各保存条件ごとの合計点数を算出した。また、それらの点数の平均も、あわせて算出した。
Figure 0006430947
[製造例22]
製造例3において、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル0.2質量%をSSL0.2質量%に変更した以外は同様にして油脂乳化物#22を得た。
なお、2回以上の高圧乳化処理は、1機の高圧乳化機で循環処理することにより行い、各回の乳化処理時間は0.05時間であった(以下製造例23,24も同様)。
[製造例23]
製造例3において、モノグリセリンコハク酸脂肪酸エステル0.2質量%をモノグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.2質量%に変更した以外は同様にして油脂乳化物#23を得た。
[製造例24]
製造例3において、ショ糖脂肪酸エステル(S−370)0.2質量%をモノグリセリン脂肪酸エステル0.5質量%に、水52.58質量%を52.28質量%に変更した以外は、同様にして油脂乳化物#24を得た。
製造例22〜24において得られた油脂乳化物は、5℃で4週間静置後もメジアン径の増大はみられず、流動性も良好で、いずれも、安定な油脂組成物を得ることができた。
参考例13〜15]
インスタントコーヒー1.54質量%に、重曹0.09質量%、砂糖5.0質量%、製造例22〜24の油脂組成物0.84質量%、静菌性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(P−1670)0.03質量%を混合し、水を加えて、100質量%とした後、充分に撹拌溶解した後、65℃の条件でパドルミキサーで乳化し、缶容器に充填した後、121.1℃で30分間、オートクレーブ殺菌して、pH5.9である缶容器詰めミルクコーヒーを得た。得られたコーヒー飲料を、表11に示す温度条件および期間保管後、以下の基準により乳化安定性と風香味を評価し、総合評価を行った。結果を表11に示す。
Figure 0006430947
[製造例25]
タンパク質であるカゼインナトリウムの添加量の影響を確認した。
具体的には、完全硬化ヤシ油20質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−570)2.5質量%、澱粉加水分解物(デキストロース当量=25、コーンスターチ由来)27.5質量%、および、0.001〜1.0質量%のカゼインナトリウムを水で100質量%となるよう調製し、混合した。この混合液を65℃でホモミキサーを用いて分散させた後、1段バルブ式タイプの高圧乳化機(三丸機械工業社製「エコナイザーLABO−01」)を用い、65℃、30MPaで2回(合計圧力60MPa)乳化処理し、得られた乳化液2.2gを100mlの水に分散した希釈エマルションを調製した。得られた希釈乳化液を、40℃で保存したときの経時的な層分離の度合いを観察し、乳化安定性を以下の基準で評価した。結果を表12に示す。
<乳化安定性の評価>
○: 層分離がない、または、ごくわずかに認められる。
△: 層分離が認められる。
×: 明確に層分離している。または、オイル粒やオイル層が多量に認められ、乳化が破壊されている。
Figure 0006430947
[製造例26]
完全硬化ヤシ油45質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−770)2.0質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−370)0.2質量%、ステアロイル乳酸ナトリウム0.2質量%、重曹0.02質量%、水52.58質量%を、ホモミキサーを用いて65℃で0.1時間予備乳化した後、バルブ式タイプの2段式高圧乳化機(SPX社製「GAURIN 15MR」)を用い、65℃、1段目:15MPa、2段目:5MPa、計:20MPaで3回(合計圧力60MPa)乳化処理し、次いで90℃で10分間殺菌して、メジアン径が0.35μmである油脂乳化物Aを得た。
なお、高圧乳化処理に供した油脂組成物のpHは7.0であった。また、3回の高圧乳化処理は、1機の高圧乳化機で循環処理することにより行い、各回の乳化処理時間は0.05時間であった。
[製造例27]
製造例26において、高圧乳化処理を、1段目:25MPa、2段目:5MPa、計:30MPaで2回(合計圧力60MPa)行ったこと以外は同様にして、メジアン径が0.31μmである油脂乳化物Bを得た。
[製造例28]
製造例26において、高圧乳化処理を、1段目:15MPa、2段目:5MPa、計:20MPaで2回(合計圧力40MPa)行ったこと以外は同様にして、メジアン径が0.53μmである油脂乳化物Cを得た。
[製造例29]
パーム油中融点画分(PMF)45質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−570)2.0質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−170)0.2質量%、ステアロイル乳酸ナトリウム0.2質量%、重曹0.007質量%、水52.59質量%を、製造例28と同様に、予備乳化、高圧乳化および殺菌を行って油脂乳化物Dを得た。
なお、高圧乳化処理に供した油脂組成物のpHは5.9であった。
[実施例16〜18、比較例5]
インスタントティー0.15質量%と、砂糖7.0質量%と、脱脂粉乳1.86質量%と、油脂乳化物A(実施例16)、油脂乳化物B(実施例17)、油脂乳化物C(実施例18)、又は油脂乳化物D(比較例5)2.83質量%と、静菌性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(P−1570)0.03質量%と、水88.13質量%とを、それぞれ充分に撹拌溶解した後、2段バルブ式タイプの高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV−OA−2.4−2.2S」)で、1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化し、139℃で30秒間、UHT殺菌後、PETボトルに充填し、乳成分を含有するPET詰めミルクティーを得た。得られた乳飲料を、20℃で3ヶ月保管後、以下の基準により乳化安定性と風香味を評価し、総合評価を行った。結果を表13に示す。
<乳化安定性の評価>
保存後のPET詰めミルクティーを開栓後、内容液をプラスチックカップに注ぎ、よく撹拌した後の液面の状態と、PETボトル内面に付着したクリームの付着量を、目視観察し、以下の基準で評価した。
○: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着がないか、わずかに認められる。
△: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着がはっきりと認められる。
×: オイルオフや分散しないクリーム塊や付着が多量に認められ、乳化が壊れている。
<風香味(油脂由来の臭い)>
保存後のPET詰めミルクティーを室温にて試飲者3名で飲用し、以下の基準で風香味を判定した。
○: 油脂由来の臭いはないか、わずかに感じられる程度で、違和感はない。
△: 明らかに油脂由来の臭い、および/または、酸化劣化臭を感じる。
×: 強く油脂由来の臭い、および/または、酸化劣化臭を感じ、違和感がある。
<総合評価>
前述の乳化安定性の「○」を「4」、「△」を「2」、「×」を「0」、風香味の「○」を「6」、「△」を「3」、「×」を「0」として、各保存条件ごとの合計点数を算出した。また、それらの点数の平均も、あわせて算出した。
Figure 0006430947
[実施例19,20、比較例6〜8]
インスタントティー0.15質量%と、砂糖7.0質量%と、脱脂粉乳1.86質量%と、油脂乳化物A 2.83質量%に相当する添加量の、完全硬化ヤシ油1.274質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−770)0.0566質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−370)0.0057質量%、ステアロイル乳酸ナトリウム0.0057質量%と、静菌性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(P−1570)0.03質量%と、水89.62質量%とを、図1(実施例19,20)または図2(比較例6〜8)に示す方法にて調製し、乳成分を含有するPET詰めミルクティーを得た。
高圧乳化処理の回数は、実施例19では2回(合計圧力40Mpa)、実施例20では3回(合計圧力60Mpa)、比較例6では0回(合計圧力0Mpa)、比較例7では1回(合計圧力20Mpa)、比較例8では2回(合計圧力40Mpa)とした。
得られた乳飲料を、所定温度、所定期間保管後、前述の基準により乳化安定性と風香味を評価した。結果を表14に示す。
[参考例4、5]
比較例6、8における、完全硬化ヤシ油1.274質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−770)0.0566質量%、ショ糖脂肪酸エステル(S−370)0.0057質量%、ステアロイル乳酸ナトリウム0.0057質量%、に変えて、市販粉末油脂(硬化パーム核油34.5質量%、乳タンパクを含有。)当該粉末油脂を水に1質量%となるように溶解し、調製したエマルションのメジアン径:0.2μm)3.71質量%に変更し、脱脂粉乳を1.60質量%に変更した以外は同様にして、図3に示す方法で、乳成分を含有するPET詰めミルクティーを得た。
高圧乳化処理の回数は、参考例4では0回(合計圧力0Mpa)、参考例5は1回(合計圧力20Mpa)とした。
得られた乳飲料を、所定温度、所定期間保管後、前述の基準により乳化安定性と風香味を評価し、総合評価を行った。結果を表14に示す。
Figure 0006430947
[実施例21〜23]
インスタントコーヒー(ネスレ社製 ベトナムソリュブルコーヒー(ロブスタ))1.65質量%、重曹0.17質量%、砂糖7.5質量%、脱脂粉乳2.72%、油脂乳化物A1.5質量%と、表15に示す乳化剤を混合し、水を加えて、100質量%とした後、充分に撹拌溶解した後、2段バルブ式タイプの高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV−OA−2.4−2.2S」)で、1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化した。その後、缶に充填し、121.1℃で30分間、レトルト殺菌して、乳成分を含有する缶詰めミルクコーヒーを得た。得られた乳飲料を、所定温度、所定期間保管後、[実施例1〜12、比較例1〜4]と同様の基準により乳化安定性と風香味を評価し、総合評価を行った。結果を表15に示す。
Figure 0006430947
[実施例24]
コーヒー抽出液(コーヒー焙煎豆:ユニカフェ社製コロンビアEX、L値:20より抽出。Brix:3.0%)50質量%に、重曹0.06質量%、砂糖5.0質量%、油脂乳化物A0.74質量%、脱脂粉乳2.16質量%、チーズ乳化物(乳脂を31質量%含有)1.9質量%、静菌性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(P−1670)0.03質量%を混合し、水を加えて、100質量%とした後、充分に撹拌溶解した後、2段バルブ式タイプの高圧乳化機(イズミフードマシナリー社製「HV−OA−2.4−2.2S」)で、1段目:15MPa、2段目:5MPa、合計:20MPa、65℃の条件で乳化し、139℃で30秒間、UHT殺菌後、PETボトルに充填し、乳成分を含有するPET詰めミルクコーヒーを得た。
得られた乳飲料を5℃12週間、20℃8週間、35℃8週間、60℃4週間、いずれの保存条件においても、良好な乳化安定性と風香味を保存後も維持していた。
この結果、本発明によれば、高飽和脂肪酸含有食用油脂を用いて、高い乳化安定性を有する油脂乳化物を製造することができ、この油脂乳化物を用いて、乳化安定性および風香味に優れた乳飲料を得ることができることが分かる。
これに対して、比較例では、乳化が不十分で、乳飲料に添加した際の乳化が不安定となり、結果的に不飽和脂肪酸が酸化し、異臭の原因となったため、乳化安定性および風香味に劣るものとなった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2013年9月6日出願の日本特許出願(特願2013−185273)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (6)

  1. トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下である高飽和脂肪酸含有食用油脂、HLB6〜9の乳化剤及びHLB1〜3の乳化剤を含有し、該HLB6〜9の乳化剤及び該HLB1〜3の乳化剤がともに、ショ糖脂肪酸エステルである油脂組成物に、高圧乳化処理を複数回行い、
    該複数回の高圧乳化処理における該油脂組成物への処理圧力の合計を40MPa以上として調製して得られた油脂乳化物と、飲料成分とを混合した混合液を、さらに高圧乳化処理する、
    飲料の製造方法。
  2. 該油脂組成物が、さらにステアロイル乳酸ナトリウム、及びモノグリセリンコハク酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1以上の乳化剤を含む、請求項に記載の飲料の製造方法。
  3. 該油脂組成物はタンパク質の含有量が1.0質量%以下である、請求項1または2に記載の飲料の製造方法。
  4. 該食用油脂が、完全硬化ヤシ油である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
  5. 1回あたりの高圧乳化処理の処理圧力が10MPa以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
  6. 前記飲料は飲料成分として、静菌性乳化剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
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