JP4320514B2 - 水中油型乳化脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温処理、例えばUHT、レトルト処理等の高温殺菌、パン類・菓子類の焼成、加熱調理、電子レンジ等の加熱処理等、を行っても乳化安定であり油分離等が生じず、またホワイトソース等を作成した場合に問題となる、褐変を生じさせないことも可能な水中油型乳化脂組成物からなるレトルト食品用クリーム及びその製造方法並びにこのレトルト食品用クリームを用いたレトルト食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にクリーム等の水中油型乳化脂組成物を使用する食品において、保存性の向上のため及び調理の過程で非常に過酷な条件及び温度で加熱されることは多々あり、加熱によるクリーム等の乳化破壊を防止するため、油と水、その他の成分を人為的に乳化させて作る合成クリームでは、これまで乳化剤により乳化を安定にすることが多く試みられてきた。即ち、乳化剤により油の界面張力を低下させ、油の粒子径を細かくすることでより白濁させ、強く安定な乳化をさせる方法である。例えば、リゾレシチンとポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することを特徴とした特開平4−330258号や、また、本出願人による特開2000−152749のように飽和系の乳化剤と不飽和系の乳化剤の組み合わせによりレトルト時に乳化破壊が起こらないにする方法など、乳化剤の種類などを検討することが提案されてきた。また、蛋白質を使用する方法も提案されている。例えば、特開平7−39350号公報には、カゼインナトリウムを含む水中油型乳化液を含有するホワイトソースが開示され、特開2000−139346には、蛋白質及びカラギーナンを含有し、乳化剤を含まない水中油型乳化組成物が開示されている。
【0003】
上記のような、乳化剤の種類を検討したり、蛋白質を使用したり、あるいはカラギーナン等の増粘多糖類を使用することによる水中油型乳化脂組成物の乳化を安定させる方法は、クリーム単独では耐熱性や褐変防止に大きな効果が見られる。しかし、これらのクリーム等を使用する食品では、それ単一の原料であることは少なく、クリーム等の水中油型乳化脂組成物以外の食品原料が併用されることが多く、加熱時に他の食品原料がクリーム等の乳化に及ぼす影響は大きい。特に塩類、多糖類、澱粉等の食品原料によりクリーム等の乳化が破壊されることが多く、これらクリーム等の水中油型乳化脂油脂とそれ以外の食品原料と混合された食品の場合、乳化剤を用いた乳化系や多糖類を使用する乳化系では乳化破壊が完全には抑制されていないのが実状である。例えば、前記特開平7−39350号に記載のようにカゼインナトリウムを使用した場合にも、乳化剤を使用した場合には食品中のクリーム等の乳化破壊を完全に抑制することはできない。更に、特開2000−139346のようにカラギーナン等の多糖類を使用する場合には、加熱による褐変という問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の状況に鑑み、本発明の目的は、他原料と混合された食品系であっても高温加熱した際に油分離等の乳化破壊が生ずることのないレトルト食品用クリームを提供せんとするものである。また、本発明の他の目的は、高温加熱時の乳化破壊を防止するとともに褐変を生じさせることのないレトルト食品用クリームを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決する方法を鋭意検討した結果、合成クリームと比較して乳化が不安定である天然の生クリームでは高温加熱時に油分離等生じにくいことに着目し、従来とは逆に、生クリームと同様に乳化剤の乳化力を使用することなく蛋白質のみの乳化力を用いて乳化することにより、同時に使用される他の食品原料の影響を受け難くなり、高温加熱時であっても乳化が安定であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明の第1は、レトルト食品用クリームであって、少なくとも水、なたね油、乳由来の蛋白質を含有し、乳化剤を使用することなく脂肪球のメジアン径が3μm以下になるように乳化させることにより高温加熱耐性を付与してなる水中油型乳化脂組成物からなるレトルト食品用クリームである。前記レトルト食品用クリームにおいては、前記蛋白質がカゼイン系蛋白質であることが好ましい。また前記レトルト食品用クリームは、油脂を3〜70重量%、蛋白質を0.2〜20重量%含有することが好ましい。また、本発明の第2は、前記のような水中油型乳化脂組成物からなるレトルト食品用クリームを製造する方法であって、油脂を含有する油相部と、蛋白質を含有する水相部とを攪拌して予備乳化したのち、3〜50MPaの圧力で脂肪球のメジアン径が3μm以下になるように均質化してなることを特徴とするレトルト食品用クリームの製造方法である。更に、本発明の第3は、前記のような本発明のレトルト食品用クリームを使用してなることを特徴とするレトルト食品である。
なお、本発明にいう前記脂肪球のメジアン径とは、水中脂型乳化脂組成物中の脂肪球の粒子径分布をレーザ回折粒度分布測定装置により測定した場合の累積分布の50%に相当する粒子径である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に記述する。
【0008】
本発明の水中油型乳化脂組成物は、水、油脂、蛋白質を最低限必須な構成要素としている。本発明の最大の特徴は、所謂、乳化剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライドやレシチン及びその酵素分解物等の乳化剤を使用することなく脂肪球(エマルション粒子)のメジアン径が3μm以下になるように乳化して高温加熱耐性や耐褐変性を有する水中油型乳化脂組成物とした点にある。即ち、本発明においては、蛋白質のみで乳化させ乳化剤を使用しないことで、高温加熱時の乳化破壊を防止してなる。
【0009】
本発明における高温加熱耐性とは、概ね80℃を越えて加熱を行った際にも水中油型乳化脂組成物の乳化状態が保たれ、油分離等が殆ど生じない状態を言う。加熱条件としては、一般的にレトルト処理が最もよく行われている作業であり、110〜140℃で10〜60分間加熱殺菌が行われる。また、本発明にいう耐褐変性とは、上記加熱時において、加熱前と比較して色の変化、主に褐変が生じにくいことをいう。これら水中油型乳化脂組成物の高温加熱耐性と耐褐変性は、具体的には色差計におけるL値を用いて評価することが出来、水中油型乳化脂組成物が乳化破壊又は褐変した場合、それぞれの影響によりL値が低く示される。即ち、色差計のL値とは測定物の色の白さ(黒さ)を測定するものであり、測定物が白いほどL値が高い。クリームの白さは、原料の白さもあるが、基本的には乳化された脂肪粒による光の拡散によって白く見えることから、乳化が破壊されて脂肪球の数が減ったり、脂肪球が壊れた状態になると白く見えなくなり、L値が減少する。糖類を含まない乳化系では加熱による褐変は殆ど生じないことから、L値の減少は脂肪球の破壊によるものと考えることができることから、L値を乳化の安定性を示す指標とすることができる。また、水中油型乳化脂組成物が褐変すると当然、L値は低くなる。また、水中油型乳化脂組成物に乳化破壊が生ずると油と水の比重差から油が水に浮いたり、又は脂肪球が合一して大きな油粒子を形成するため、目視により状態の判断が可能となる。従って、油分離が生じていない場合のL値の減少は、褐変によるものと考えることができる。油分離が生じている場合は、乳化破壊は必ず生じており、褐変と油分離との両方が生じている可能性がある。このように、色差計におけるL値は、高温加熱耐性と耐褐変性との両方の指標とすることができる。従って、本発明の水中油型乳化脂組成物においては、加熱前後のL値の差が小さいほど好ましく、好ましくは差が3以下であることが望ましい。
【0010】
本発明で使用する蛋白質は、乳化性を有すれば特に限定される物ではなく、乳由来、卵由来、大豆、小麦等の穀粉由来等の蛋白質、これらの酵素分解物、濃縮物等を一種若しくは二種以上を組み合わせて使用することができる。例えば、乳由来の蛋白質としては、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン、トータルミルクプロテイン及びそれらの酵素分解物、牛乳、脱脂乳及びそれらの濃縮物、全脂粉乳、脱脂粉乳等に含まれる乳蛋白質等が挙げられる。また、卵由来の蛋白質としては、卵黄、卵白及びそれらの粉末、冷凍品等が挙げられ、穀粉由来の蛋白質としては、大豆蛋白質やグルテン等が挙げられる。本発明の水中油型乳化脂組成物は、一般に生クリーム及び牛乳の代替目的で使用されることが多いため、乳由来の蛋白質を用いることが好ましく、更に好ましくは加熱後の凝集を生じさせないためにアルブミン系よりカゼイン系の蛋白質を多く用いることがよい。また、加熱処理による褐変及び増粘、凝集等が問題になる食品の場合、褐変の原因である乳糖が少なく、また蛋白質が熱変性しにくい蛋白質部分のみである、例えば、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン、トータルミルクプロテイン、大豆蛋白質、グルテン(小麦蛋白質)等で乳化させることが更に好ましい。
【0011】
蛋白質の添加量は油分量によって異なるため限定されるものではないが、本発明では乳化剤を使用しないことから、安定な乳化を保つためには、水中油型乳化脂組成物中、好ましくは0.2〜20重量%であり、更に望ましくは0.5〜10重量%である。蛋白質の添加量が0.2重量%に満たない場合は安定な乳化を保つことが困難であり、また20重量%を越えると蛋白質を十分に水に溶解させることができず、また、できた水中油型乳化脂組成物も可塑化を起こしやすく安定な水中油型乳化脂組成物とはなり難い。また、蛋白質自身が熱凝集、増粘等を引き起こすため、20重量%以上の蛋白質組成は好ましくない。
【0012】
本発明で使用する油脂としては、通常使用される食用の動植物性油脂、例えばコーン油、大豆油、菜種油、ヤシ油、サフラワー油、綿実油、パーム油等の植物性油脂、乳脂肪、牛脂、豚脂等の動物性油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、硬化油等であり、これらのうち一種または二種以上を組み合わせ使用することが出来る。
【0013】
油脂の含有量は乳化できる量で有れば特に限定はされないが、本発明は蛋白質乳化であることから水中油型乳化脂組成物中、70重量%以下の添加量が望ましく、更には60重量%以下の添加量が好ましい。70重量%を越えての配合は、油脂配合量が多すぎて、蛋白質のみでは水中油型の乳化をすることが困難になる場合がある。一方、油脂の含有量の下限については、乳化性の点からは特に制限はないが、油脂の含有量が少ない乳化物は、通常、牛乳の代替物として使用されており、牛乳の油分は約3.5重量%であることから、3重量%以上の油脂を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の水中油型乳化脂組成物としては、油脂を3〜70重量%、蛋白質を0.2〜20重量%を含有するものが好ましく、更に油脂3〜60重量%、蛋白質を0.5〜10重量%含有するものがより好ましい。また、製造ラインのUHTを流しやすくし、また得られる乳化脂組成物の安定性を考慮した場合、例えば油脂3重量%に対し蛋白質10重量%、油脂30重量%に対し蛋白質3重量%、あるいは油脂50重量%に対し蛋白質1.5重量%といった組み合わせが好ましい。
【0015】
本発明の水中油型乳化脂組成物は、油脂と水と蛋白質を含んでなるが、通常、水中油型乳化脂組成物に添加するような例えば、油溶性香料等、無脂乳固形分、糖類、香料、調味料、多糖類、澱粉、塩類、リン酸塩及びその他の食品原料を含んでいてもよい。乳化剤を必ずしも必要としないこと以外は、通常の乳化脂組成物と何ら変わりはない。
【0016】
本発明に使用できる食品原料としては乳化剤以外で有れば、特に限定されるものではなく、可食可能なものであれば何ら問題はない。また、乳化剤であっても本発明の効果にあまり影響が生じない程度の添加量であれば、添加しても何ら効果に問題はない。
【0017】
本発明の水中油型乳化脂組成物の製造方法としては、油脂及び必要に応じて添加される油溶性香料等の油溶性食品原料からなる油相部、蛋白質とそれらを含む無脂乳固形分、糖類、香料、調味料、多糖類、澱粉、塩類、リン酸塩及びその他の水溶性食品原料を水に溶解した水相部を60℃前後で攪拌しながら予備乳化させる。次に、好ましくは、衛生上から高温短時間殺菌滅菌装置を使用して製造し、従来の公知の方法に準じてバルブ式ホモジナイザー等の乳化装置により均質化すれば製造可能である。例えば、上記の予備乳化させた本発明の水中油型乳化脂組成物の乳化液に蒸気を直接混入させ、140〜150℃で4秒程度の滅菌を行い過剰の水分を減圧フラッシュさせた後、ホモジナイザーによる均質化を行い、冷却して容器に充填する。なお、前記殺菌装置としては、例えばプレート式、チューブラー式、掻き取り式、バッチ式等の装置でも問題なく、また、均質化装置はホモミキサー、コロイドミル等でも良い。
【0018】
均質化圧力は、3〜50MPa程度の処理圧力が好ましく、更に好ましくは7〜25MPaが好ましく、この均質化により脂肪球の乳化安定の為に乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径を3μm以下にする。前記処理圧力が3MPaに満たない場合は、脂肪球のメジアン径を3μm以下にすることは困難である。また、50MPaを越えると逆に圧力が強すぎて乳化を壊すおそれがある。本発明の水中油型乳化脂組成物は、乳化剤を使用せずに蛋白質のみで乳化させることから、この均質化による物理的乳化に物性が左右される。脂肪球のメジアン径が3μmを越える場合、クリーミング等が生じて製造された水中油型乳化脂組成物が安定的に保存できず、また、高温加熱時に油分離等が生じやすくなる。前記脂肪球のメジアン径とは、水中脂型乳化脂組成物中の脂肪球の粒子径分布をレーザ回折粒度分布測定装置により測定した場合の累積分布の50%に相当する粒子径である。測定条件としては、例えば、粒子径間隔は0.1〜200μmの間を56に対数等分割した固定間隔で、また粒子径基準は体積基準で測定する。
【0019】
以上のようにして製造された本発明の水中油型乳化脂組成物を使用して高温加熱耐性を有する食品を製造することができる。本発明に言う食品とは、主に従来牛乳や生クリームを用いて製造されていたような食品が挙げられ、具体的には、ホワイトソース、シチュー、カレー、カスタードクリーム、グラタン、クリームソース、飲料等が挙げられる。このような食品に本発明の水中油型乳化脂組成物を使用することにより、乳化剤を使用して乳化させていた従来の水中油型乳化脂組成物と比較した場合、例えば、レトルトや電子レンジ、加熱調理等により加熱されるホワイトソース、シチュー、カレー、カスタードクリーム、グラタン、クリームソース、飲料等において、これまで見られなかった乳化安定性が得られ、加熱による褐変も生じず、また、パン類、菓子類の生地中に練り込んだ場合には、その乳化安定性による新しいクリーム感のある食感、風味が得られる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例、比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はここに例示する実施例に限定されるものではない。なお、配合中の%は全て重量%を示す。
【0021】
(実施例1)
なたね油40%を油相として用い、水58.9%に、カゼインナトリウム1%を使用して、ポリリン酸Na0.1%を加えた水相を60℃にて作成、混合乳化して実施例1の予備乳化液を得た。それをUHT殺菌にて145℃、4秒間殺菌した後、バルブ式ホモゲナイザーにて10MPaで均質化処理を行った後、5℃まで冷却を行い、容器に充填した水中油型乳化脂組成物を得た。得られた水中油型乳化脂組成物をレーザ回折粒度分布測定装置LA−500(株式会社堀場製作所製)にて脂肪球の粒子径を測定したところ、メジアン径は1.61μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離、褐変等はなく、色差計Σ80(日本電色工業株式会社製)にて色差を測定したところ、加熱(レトルト)前のL値が90.12で加熱(レトルト)後もL値88.65と高い値を示した。
また、この水中油型乳化脂組成物20%に小麦粉7%、食塩1%、水72%を混合し、80℃にて加熱撹拌してホワイトソース状にした。そのホワイトソースをレトルト袋に充填して、120℃、30分間レトルト殺菌を行った。その結果、表1のごとく乳化破壊による油分離はなく、また褐変も全くなくレトルト前と大きな差は見られなかった。色差計により測定したところレトルト後であっても白さを示すL値が87.04と高い値を示した。
【0022】
(実施例2)
実施例1において、カゼインナトリウムをトータルミルクプロテインに替えた他は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製した。この水中油型乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径は1.73μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離、褐変等なく、また色差計により測定したところ加熱(レトルト)前のL値が89.56で加熱(レトルト)後もL値88.25と高い値を示した。
また、この水中油型乳化脂組成物を用いて実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行った。その結果、表1のごとく乳化破壊による油分離はなく、また褐変も全くなくレトルト前と大きな差は見られなかった。また、色差計により測定したところレトルト後であっても白さを示すL値が85.18と高い値を示した。
【0023】
(実施例3)
実施例1において、カゼインナトリウムをラクトアルブミンに替えた他は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製した。この水中油型乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径は1.68μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離、褐変等なく、また色差計により測定したところ加熱(レトルト)前のL値が89.78で加熱(レトルト)後もL値88.36と高い値を示した。
また、この水中油型乳化脂組成物を用いて実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行った。その結果、若干蛋白質の凝集が見られたが、表1のごとく乳化破壊による油分離はなく、褐変も全くなかった。また、色差計により測定したところレトルト後であっても白さを示すL値が85.94と高い値を示した。
【0024】
(実施例4)
実施例1において、カゼインナトリウム1%を脱脂粉乳2.6%に替え、その分、水を1.6%減じた他は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製した。この水中油型乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径は1.78μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌行ったところ、油分離はなかったが、色差計による測定では加熱(レトルト)前のL値が89.16で加熱(レトルト)後はL値82.58と若干褐変しており、液が増粘していた。
また、この水中油型乳化脂組成物を用いて実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行った。その結果、表1のごとく乳化破壊による油分離はなく、褐変も全くなくレトルト前と大きな差は見られなかった。色差計により測定したところレトルト後であっても白さを示すL値が85.11と高い値を示した。
この実施例では、脱脂粉乳には乳糖が含まれており、水中油型乳化脂組成物自体(原液)では若干褐変したが、ホワイトソースにした場合1/5となるため、大きな影響はなかった。
【0025】
(実施例5)
実施例1において、カゼインナトリウム1%の内、0.2%をラクトアルブミンに替えた他は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製した。この水中油型乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径は1.63μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離、褐変等なく、また色差計により測定したところ加熱(レトルト)前のL値が89.36で加熱(レトルト)後もL値88.52と高い値を示した。
また、この水中油型乳化脂組成物を用いて実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行った。その結果、表1のごとく乳化破壊による油分離、褐変等は全くなくレトルト前と大きな差は見られなかった。また、色差計により測定したところレトルト後であっても白さを示すL値が86.40と高い値を示した。
【0026】
(比較例1)
カゼインナトリウムを使用せずに、なたね油、水、ポリリン酸Naのみで、実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製したが、水中油型乳化脂組成物を作成することはできなかった。
【0027】
(比較例2)
実施例1において、更に油相部にポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB4)(商品名:サンファットPS−66、太陽化学株式会社製)0.3%を加え、水相部にポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)(商品名:MSW−750、阪本薬品工業株式会社製)0.5%と酵素分解レシチン(商品名:サンレシチンS、太陽化学株式会社製)0.2%を加え、その分、水を1%減じた他は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製した。この水中油型乳化脂組成物のメジアン径は1.26μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離、褐変等なく、また色差計により測定したところ加熱(レトルト)前のL値が89.34で加熱(レトルト)後もL値87.47と高い値を示した。
しかし、実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行ったところ、表1のごとく乳化破壊による油分離が激しく生じており、油滴が目視できる状態であった。また、色差計により測定したところレトルト後は白さを示すL値が53.85と低い値を示した。
この結果から、蛋白質を含む水中油型乳化脂組成物であっても、乳化剤を使用して乳化した場合には、それ自体の高温加熱耐性は優れていても、この水中油型乳化脂組成物を澱粉、塩類等の他の食品原料と併用した食品は、これらの食品材料の影響により乳化が破壊され、高温加熱耐性が得られないことが明らかである。
【0028】
(比較例3)
実施例1において、均質化圧力を2.5MPaにする以外は実施例1と同様に水中油型乳化脂組成物を調製したところ、できた水中油型乳化脂組成物の脂肪球のメジアン径は3.5μmであった。
この水中油型乳化脂組成物を2週間5℃で冷蔵保存したところ上方に実施例1では見られなかったクリーミングが生じた。
また、この水中油型乳化脂組成物を、120℃、30分間レトルト殺菌を行ったが、油分離が生じており、また色差計により測定したところ加熱(レトルト)前のL値が88.86で加熱(レトルト)後はL値84.28と低い値であった。
また、この水中油型乳化脂組成物を用いて実施例1と同様にホワイトソースを作成し、レトルト殺菌を行ったところ、表1のごとく乳化破壊による油分離が生じていた。色差計により測定したところレトルト後は白さを示すL値が72.98と低い値を示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
レトルト等の高温加熱される食品に、本発明の水中油型乳化組成物からなるレトルト食品用クリームを添加した場合、塩、澱粉、増粘剤等が含有されていても加熱により乳化破壊等が生じることなく加熱前後で物性の差の少ない良好な食品が得られる。また、その物性によりこれまで得られなかった新たな食感を持つ食品の製造が可能となる。
Claims (5)
- レトルト食品用クリームであって、少なくとも水、なたね油、乳由来の蛋白質を含有し、乳化剤を使用することなく脂肪球のメジアン径が3μm以下となるように乳化させることにより高温加熱耐性を付与してなる水中油型乳化脂組成物からなるレトルト食品用クリーム。
- 蛋白質がカゼイン系蛋白質である請求項1に記載のレトルト食品用クリーム。
- 油脂を3〜70重量%、蛋白質を0.2〜20重量%含有する請求項1又は2に記載のレトルト食品用クリーム。
- 油脂を含有する油相部と、蛋白質を含有する水相部とを攪拌して予備乳化したのち、3〜50MPaの圧力で脂肪球のメジアン径が3μm以下になるように均質化してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のレトルト食品用クリームを製造する方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のレトルト食品用クリームを使用してなることを特徴とするレトルト食品。
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