JP7066336B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
このため、従来の画像形成装置は、カールした記録材に、記録材のカールの方向と逆方向に圧力(矯正力)を加えることにより、記録材のカールを矯正するカール矯正装置(以下、デカール装置と称する)を定着装置の下流に設けている。
通常、デカール装置は1枚のプリント中、一定の矯正力で記録材のカールを補正する。例えば、特許文献1では、記録材の厚さ、温度、湿度、画像密度情報からカール量を予測し、1枚毎の記録材に付与する矯正力を設定するデカール装置が開示されている。
また、特許文献2のように、既知の記録材先端部のカールに対して、記録材先端部がセンサフラグを押し回している間のみ、記録材先端部における矯正力を強くするデカール装置も示されている。
特に、近年は、省エネ性やオンデマンド性の観点から、加熱回転体に、薄肉の定着スリーブを介して加熱部材と加圧ローラで定着ニップ部を形成した低熱容量タイプの定着装置が使用されるようになってきた。この様な低熱容量タイプの定着装置を用いた場合、定着装置自体の暖気状態(温まり具合)によって、記録材のカール状態が大きく変わってしまう。
特許文献1のような従来のデカール装置では、1枚のプリント中一定の矯正力でカールを補正するため、記録材の前半と後半でカール状態が異なるような場合に対応できない。
また、特許文献2のようなデカール装置では、常に記録材先端部のカールを補正しようとするため、記録材の前半と後半で等しいカール状態の場合には記録材の先端部のみ過矯
正してしまい、均一に補正された記録材を得ることができない。加えて、記録材先端部以外にカールが発生している場合や、記録材の搬送方向における領域毎にカール状態が異なる場合は対応できない。
そこで、本発明の目的は、定着手段の搬送方向位置によって様々に変化する記録材のカールをカール矯正手段によって可及的に過不足なく矯正することのできる画像形成装置を提供することにある。
該定着手段に対して前記記録材の搬送方向の下流側に配置され、前記定着手段において前記記録材に生じたカールを矯正するカール矯正手段と、を備え、
前記カール矯正手段は、所定の加圧力で互いに圧接される一対の回転体によって構成される矯正ニップ部と、該矯正ニップ部の加圧力を切り替える加圧力切り替え手段と、を有する画像形成装置において、
前記記録材を搬送方向に複数の領域に区分し、前記記録材の前記領域ごとに予め定めた加圧力を設定しておき、前記記録材が前記矯正ニップ部を通過する際に、前記領域ごとに前記予め定めた加圧力となるように、前記加圧力切り替え手段を制御する制御手段を備え、
前記加圧力は、環境の湿度を複数段階に区分し、それぞれの段階で異なる設定となっており、
前記定着手段の暖まり具合が第1の状態と、前記第1の状態より温まった状態である第2の状態とし、
前記制御手段は、
前記第1の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせと、前記第1の状態で低湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせが、異なるように設定し、
前記第1の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わ
せと、前記第2の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせが、異なるように設定する、
ことを特徴とする。
<画像形成装置の全体構成>
まず、本発明が適用される画像形成装置の全体構成について説明する。
図1は、本実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。以下、画像形成装置の一例として、感光ドラム1を複数備えたフルカラーレーザビームプリンタ(以下、単にプリンタという)71を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、感光ドラムを1つ備えたモノクロの複写機、プリンタであってもよい。
図1に示すように、プリンタ71は、主な構成として、イエローY、マゼンタM、シア
ンC、ブラックKの各色に対応する画像形成ステーション7Y、7M、7C、7K、中間転写ベルト29、二次転写ローラ63、定着装置72、カール矯正装置としてのデカール装置73を備えている。なお、以下、特に区別を要しない場合、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して説明を行う。
プリンタ71の下部には、カセット61が引き出し可能に収納されている。カセット61には紙等の記録材Pが積載収容される。記録材Pはピックアップローラ62により給紙カセット61から給送され、フィード・リタードローラ対14により1枚毎に分離され、レジストローラ15に給送される。
各画像形成ステーション7には、像担持体としての感光ドラム1、帯電装置2、現像装置4、クリーニングブレード6、一次転写部8が設けられている。帯電装置2は、感光ドラム1の表面を一様に帯電する。現像装置4は、感光ドラム1上に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像ローラ5を有している。一次転写部8は、感光ドラム1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト29上に一次転写する。クリーニングブレード6は、一次転写されずに感光ドラム1上に残留したトナーを除去する。
さらに、画像形成ステーション7の下側には、帯電処理された各感光ドラム1に画像情報に基づいてレーザービームを照射して、各感光ドラム1上に静電潜像を形成するレーザースキャナ3Y、3M、3C、3Kが配置されている。一次転写部8で転写された中間転写ベルト29上のトナー像は、対向ローラ67と二次転写ローラ63によって形成される二次転写部N1で記録材Pに二次転写される。二次転写部N1で記録材Pに転写されずに中間転写ベルト29上に残った二次転写残トナーはベルトクリーニング装置66によって除去されて回収される。二次転写部N1を通過した記録材Pは、その後、定着装置72を通過し、トナー像が記録材P上に定着される。
トナー像が定着された記録材Pは、その後、デカール装置73を通過することによりカールが矯正され、排出ローラ対64に搬送される。排出ローラ対64を通過後、記録材Pは記録材積載部65に排出される。
なお、本実施例におけるプリンタ71は、A3サイズの記録材を通紙可能であり、記録材Pの通紙可能幅は、幅方向に320mmまで対応している。また、本実施例の画像形成装置71は中央基準で記録材Pを搬送している。
次に、図2を参照して、定着装置72及びデカール装置73の構成の詳細について説明する。図2(A)は定着装置72とデカール装置73の略式断面図、図2(B)は定着装置72のニップ部近傍の断面拡大図である。
すなわち、定着ニップ部N2を備えた定着装置27に対して記録材Pの搬送方向の下流側にカール矯正手段としてのデカール装置73が配置されている。
(定着装置)
定着装置72は、低熱容量タイプで、定着ニップ部N2を形成する定着スリーブ41を有する加熱回転体である加熱回転ユニット40と、加圧回転体としての加圧ローラ42とを有している。
加熱回転ユニット40は、筒状の可撓性部材である定着スリーブ41と、定着スリーブ41の内面と接触する加熱部材としてのヒータ30と、を有し、加圧ローラ42を、定着スリーブ41を介してヒータ30に加圧することにより定着ニップN2を形成している。この定着ニップ部N2にて、未定着トナー像が形成された記録材Pを挟持搬送し、トナー像
を加圧加熱して記録材Pに定着する。
また、加熱回転ユニット40には、定着スリーブ41に内接した温度検知素子33(以下、スリーブサーミスタと記す)と、ヒータ30に当接した温度検知素子34(以下、ヒータサーミスタと記す)が配置されている。これらの温度検知素子33,34の検知結果に基づいて、ヒータ30への通電が制御される。
定着スリーブ41は、エンドレス状に形成した基層41aの外周に弾性層41bを形成
し、その弾性層41bの外周に離型性層41cを形成したものである。この定着スリーブ41は、たとえば、外径が24mmの円筒形状をしている。
基層41aには、ポリイミド等の樹脂系材料、もしくはSUS等の金属系材料が用いられる。たとえば、強度との兼ね合いから厚さ30μmでエンドレス状に形成したSUSスリーブを用いることができる。
弾性層41bはクイックスタートの観点から極力熱伝導率の高い材質を用いることが望ましい。よって本実施例においては、弾性層41bとして、熱伝導率が約1.0×10-3cal/sec・cm・Kのシリコーンゴムで、厚みが約270μmのものを用いた。
離型性層41cは、定着スリーブ41の表面にトナーが一旦付着し、再度記録材Pに移動することで発生するオフセット現象を防止するために設けられている。離型性層41cの材料として、PTFE、PFA等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等が用いられる。本実施例においては、離型性層41cを厚さ約20μmのPFAチューブとし、そのPFAチューブを弾性層41bであるシリコーンゴムの外周面に被覆している。
ヒータ30は長手方向に細長い基板30aを有する。この基板30aは、窒化アルミやアルミナ等のセラミックから成る良熱伝導性の絶縁性基板である。
本実施例では基板30aは、熱容量と強度との兼ね合いから厚み0.6mm、幅9mm、長手サイズ390mmの長方形に形成した窒化アルミを用いている。
基板30aの裏面には、基板30aの長手方向に沿って発熱体としての抵抗発熱体層30bが形成されている。抵抗発熱体層30bは、AgPd合金や、NiSn合金、RuO2合金等を主成分とするものであり、厚さ約10μm、長さ310mm、幅5mmに成型されている。抵抗発熱体層30bは、両端部から不図示の電源により通電されることにより発熱する。
絶縁ガラス層30cは、抵抗発熱体層30bをオーバーコートし、外部導電性部材との絶縁性を確保する他、抵抗発熱体層30bについて酸化等による抵抗値変化を防ぐための耐食機能、さらに機械的な損傷を防止する役割などをもつ。絶縁ガラス層30cの厚さは80μmである。
30dは基板30aにおいて定着スリーブ41の内周面と摺動する表面に設けられる摺動層である。摺動層30dは、耐熱性、潤滑性、耐摩耗性に優れた機能を有し、定着スリーブ41の内周面との滑らかな摺動性を与える。摺動層30dの成分は、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂が用いられ、厚さは6μm程度である。
加圧ローラ42は、芯軸部42a、その芯軸部42aの外周面上に設けられている少なくとも1層以上の耐熱性弾性層42bと、その耐熱性弾性層42bの外周面上に設けられている離型層42cとを有する。耐熱性弾性層42bは、例えばシリコーンゴム又はフッ素ゴムなど一般的な耐熱性ゴム弾性材料を用いることができる。離型層42cは耐熱性弾性層42b上にPFA、PTFE、FEPなどのフッ素樹脂を単品もしくはブレンドしてコーティングするか、上記フッ素樹脂の単品あるいはブレンド品のチューブを耐熱性弾性層42bに被覆する。本実施例では、芯軸部42aとしてはφ17.5mmの鉄製芯金を用い、耐熱性弾性層42bには厚み4.45mmのシリコーンゴムを用いた。離型層42cとしては、PFAのチューブを50μm被覆させている。
サーモパイル35は、不図示の固定手段により定着装置72に取り付けられており、加圧ローラ42の長手中央位置における表面温度を検知温度として検出している。本実施例では、記録材Pが定着ニップ部N2に突入する直前の加圧ローラ42の表面温度情報から、定着装置72の暖気状態(暖まり具合)を判定している。
この暖気状態の判定方法は、加圧ローラ42の温度を間接的に予測する方法でも構わない。例えば、スリーブサーミスタ33やヒータサーミスタ34から得られる温度情報や、記録材の通紙履歴情報等を用いることによって、加圧ローラ42の温度を予測することができる。
すなわち、定着装置のヒータに取り付けられたヒータの温度検知素子の検知温度、または、定着スリーブに取り付けられた温度検知素子の検知温度、または、定着装置の通紙履歴のいずれか1つを用いて予測情報とする。
デカール装置73は、図2(A)に示すように、所定の加圧力で互いに圧接される一対の回転体であるデカールローラ80とデカール対向ローラ81によって矯正ニップ部N3が構成されている。
デカールローラ80は、芯軸部80a、その芯軸部80aの外周面上に設けられている弾性層80bと、弾性層80bの外周面上に設けられている離型層80cとを有する。
本実施例では、芯軸部80aとしてはφ10mmの鉄製芯金を用い、弾性層80bにはアスカーC硬度約30度の発泡シリコーンゴムを、厚み2mmで設けた。離型層80cとしては、PFAのチューブを70μm被覆させている。
デカール対向ローラ81は、芯軸部81a、その芯軸部81aの外周面上に設けられている離型層81bと、を有する。本実施例では、芯軸部81aとしてφ9.5mmの鉄製芯金を用い、離型層81bとしてPFAのチューブを100μm被覆させている。
このように、硬度の低い弾性層80bを被覆したデカールローラ80が、弾性層が無く硬度の高いデカール対向ローラ81により加圧されることで、デカール対向ローラ81の外径に沿ったデカールニップ部N3が形成される。これにより、記録材Pがデカールニップ部N3にて搬送される際、定着ニップ部N2で記録材に形成されたカールが矯正される。
図3(A)は、加圧力切り替え機構を含めたデカール装置の正面図、図3(B)は加圧力切り換えカムの形状を示す図である。
まず、図3(A)を用いて、デカール装置73の加圧力切り替え構成について説明する
。
加圧力切り替え機構85は、カム85a、85bによって、デカールローラ80とデカール対向ローラ81のデカールニップ部N3の加圧力を切り替えるようになっている。
すなわち、デカール対向ローラ81には駆動ギア87が取り付けられており、不図示のモータM2により駆動力が与えられている。一方で、デカールローラ80の芯軸部80aの両端部にはフランジ82a,82bが取り付けられており、加圧バネ83a,83bによりフランジ82a,82bに加圧力が付与されている。加圧バネ83a,83bは、加圧板金84a,84bを通して、加圧力切り替えカム85a,85bによりその侵入量を決められており、加圧力が可変になっている。加圧力切り替えカム85a,85bは、金属棒86を通して加圧力切り替えギア88に接続されており、加圧力切り替えギア88はモータM3により回転可能になっている。
本実施例においては、図3(B)の強圧位置に設定した時にはデカールニップ部N3に
3kgfの加圧力が加わる。また、中圧位置に設定した時にはデカールニップ部N3に2kgfの加圧力が加わり、弱圧位置に設定した時にはデカールニップ部N3に1kgfの加圧力が加わる侵入量に設定してある。
なお、加圧力の切り替えに要する時間としては、記録材Pの搬送に影響が出ない、且つ、カール補正に効果の出る時間を選択している。本実施例においては、0.2秒で各加圧力の位置に加圧力切り替えカム85a,85bが回転するよう設定している。
以上示したように、デカール装置73は、図3に示す機構により、その加圧力を適宜切り替えることが可能となっている。
本発明は、記録材Pを搬送方向に複数の領域に区分し、記録材Pの区分した領域ごとに予め定めた加圧力を設定しておく。そして、記録材Pがデカールニップ部N3を通過する際に、領域ごとに予め定めた加圧力となるように、制御手段としてのコントローラ100によって、加圧力切り替え機構85を制御するものである。
図4(A)は、デカール装置の加圧力切り替え装置85の簡単な制御ブロック図を示し
ている。すなわち、コントローラ100は、CPU101とメモリ102を備え、メモリ102には、記録材Pの区分した領域ごとに、予め設定された加圧力が記憶されている。CPU101には、湿度検知素子35や加圧ローラ42の温度検知素子36が接続されており、環境湿度の情報、加圧ローラの表面温度から暖気情報を判定する。これらの情報から、CPU101は、メモリ102に記憶された加圧力を選択し、記録材Pがデカールニップ部N3を通過中の搬送位置に応じて、加圧力の切り替え信号をカムモータM3に対して出力する。カムモータM3は、切り替え信号に基づいて、切り替えカム85a、85bを、強圧、中圧、弱圧位置のいずれかに切り替えるように制御する。
この実施例1では、記録材を搬送方向前半と後半の2つの領域に区分し、領域ごとに予め定めた加圧力は、環境湿度と、定着装置の暖気状態に応じて設定されている。
すなわち、環境湿度として、低湿度と、高湿度の2段階、暖気状態として、低温状態(コールド状態)が高温状態(ホット状態)の2段階に区分し、加圧力は、4通りの条件で、それぞれ設定されている。4通り条件は、低湿度でコールド状態、低湿度でホット状態、高湿度でコールド状態、高湿度でホット状態である。
図4(B)は、本発明の実施例1に係るデカール装置73の加圧力切り替え制御の手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザーがPC等の画像信号送付手段より画像形成装置に設けられたコントローラにプリントジョブを入力すると、ステップS101からステップS102へ移動し、たとえば、カセット61内に設置されている湿度検知素子36からの湿度情報から湿度が所定値以上かどうか判定する。
本実施例では、湿度65%を閾値とした。湿度が65%以上を高湿度環境と判定し、また65%未満を低湿度環境と判定する。
次に、この判定した結果に応じてステップS103、S104に移動し、デカール装置73の加圧力制御を決定する。ステップS102で湿度が所定値以上と判定された場合、ステップS103に移動し、記録材前半のデカール装置73の加圧力を中圧、記録材後半の加圧力を強圧にする制御を行う様に決定する。逆にステップS102で湿度が所定値未満と判定された場合、ステップS104に移動し、記録材前半のデカール装置73の加圧力を中圧、記録材後半の加圧力を弱圧にする制御を行う様に決定する。その後、ステップS105に移動して通紙を行い、次のステップS106でプリントを完了する。
ここに記載されている湿度の判定閾値、および、デカール装置73の加圧力は、記録材Pの種類、坪量、繊維方向、幅方向長さや、トナーの載り量情報等によって適宜変更されても構わない。
以上の構成及びデカール装置73の加圧力制御において、湿度条件が異なる高湿度環境(温度23℃、湿度80%)と低湿度環境(温度23℃、湿度50%)でプリント動作を行い、カール量を測定した。定着装置72の暖気状態はコールド状態(加圧ローラ表面温度50℃)とホット状態(加圧ローラ表面温度90℃)の2条件でそれぞれ測定した。
記録材Pは搬送方向サイズが210mmで幅方向サイズが297mmのA4サイズのGFR070(キヤノンマーケティングジャパン社製)を使用した。印刷には全面に文字と画像を含む印字率5%程度の画像を使用した。
カール量に関しては、下記の測定方法で定量化した。
まず、記録材を10枚連続通紙した後、それぞれを平たい机の上に3分間置いておく。その後、記録材の搬送方向前半と後半の両端部を机からの高さを定規で測り、その測定した値をカール量とする。この時、記録材の搬送方向前半の両端部のカール量平均値を記録材前半のカール量とする。同様の測定方法で記録材後半のカール量も決められる。この時の、記録材Pのカールの方向について、図5に示す様に印字面側が凸の時をマイナスカール、印字面側が凹の時をプラスカールと定義する。
以上のような条件のもと、各通紙条件におけるカール量を本実施例のデカール装置73を搭載したプリンタを用いて測定した。また、比較例1としてデカール装置73がない場
合を、比較例2として特許文献1のデカール装置のように、湿度情報でデカール圧を切り替えるが、1枚の記録材の途中では加圧力を切り替えないで通紙する場合を示す。
まず、比較例1としてデカール装置73がない構成で通紙した結果を表1に示す。
一般的に、カールは記録材中に含まれる水分の蒸発により発生すると言われている。比較例1においても、定着装置72の暖気状態に関わらず、高湿度環境の方が低湿度環境よりも水分の変化量が大きくなるため、カール量は高湿度環境の方が大きくなっている。
定着装置72がホット状態の場合、記録材の前半と後半で加圧ローラ42の温度はほとんど低下しない。故に、湿度条件に関わらず、記録材前半と記録材後半のカール量はほぼ等しくなる。一方で、定着装置72がコールド状態の場合、記録材Pが定着ニップN2を通過する際に定着スリーブ41と加圧ローラ42の温度差が大きくなることにより、記録材Pの表裏(定着スリーブ側の表面と加圧ローラ側の裏面)に温度差が生じる。故に、記録材前半から後半にかけて加圧ローラ42の表面温度が下がるため、記録材Pの搬送方向前半と後半でカール量に違いが出てくる場合がある。
定着装置72がコールド状態、且つ、高湿度環境で通紙された場合は、定着ニップN2を通過後、記録材Pに含まれている水分が表面の方から多く蒸発する。すると記録材表面への水分移動量が多くなるため、結果的に記録材表面の方が裏面よりも水分量が多くなる。そして、記録材表面の紙繊維の伸びが裏面よりも大きくなって、記録材Pにマイナスカールが生じる。この現象は、通紙時における加圧ローラ42の温度が低いほど発生しやすいため、記録材搬送中に加圧ローラ42の熱が奪われていく記録材Pの搬送方向後半でカールが発生しやすいと考えられる。故に、定着装置72がコールド状態、且つ、高湿度環境では、記録材後半部のカール量の方が前半よりも大きくなっている。
定着装置72がコールド状態、且つ、低湿度環境で通紙された場合は、水分の寄与が相対的に小さくなるため、熱による記録材Pの弾性率の変化も影響してくる。加圧ローラ42の温度が記録材Pに奪われていない記録材搬送方向前半の方が多くの熱量を与えられるため、記録材の弾性成分が相対的に小さくなることによって、カールした状態から復元しづらくなる。故に、定着装置72がコールド状態、且つ、低湿度環境では、記録材後半部のカール量の方が前半よりも大きくなっている。
次に、湿度情報によってデカール装置73の加圧力を変更するが、記録材Pの前半から後半において一律の矯正力を掛けて通紙をした場合を比較例2とし、その時の結果を表2に示す。通紙の際、定着装置72がコールド状態で発生するカール量が最大になるものを矯正できるようにするため、高湿度環境では高圧に、低湿度環境では中圧にデカール装置73の加圧力を設定した。
しかしながら、比較例2の構成では湿度情報から判別した環境毎に一律で矯正力を掛けていたため、マイナスカール量が少ない部分が過矯正されてしまい、プラスカールが発生していた。
次に、実施例1として湿度センサによる湿度情報の判定結果からデカール装置73の加圧力を記録材前半と後半で変えて制御した場合の結果を表3に示す。
以上説明したように、実施例1のデカール装置を用いることにより、記録材Pに発生するカールの状態に合わせた矯正力を与える事ができ、カールの発生を軽減することができる。
なお、上記説明では、環境の湿度を低湿度か、高湿度の2段階に区分しているが、3段階以上に区分し、各段階で適切な加圧力を設定するようにしてもよい。
また、定着装置の暖まり具合について、低温状態か、高温状態の2段階に設定されているが、前記定着装置の暖まり具合を3段階以上の複数段階に区分し、それぞれの段階で加圧力を設定してもよい。
以下に実施例2について説明する。実施例2の画像形成装置、定着装置、デカール装置
の構成は実施例1と同様であるため再度の説明を省く。
(デカール装置の加圧力切り替え制御)
実施例2におけるデカール装置73の加圧力切り替え制御を図6のフローチャートを用いて説明する。
実施例1では、高湿度環境、低湿度環境ともに、コールド状態とホット状態の加圧力は同じ条件に設定していたが、この実施例2では、高湿度環境及び低湿度環境それぞれについて、加圧力をコール状態とホット状態で切り替えている。
まず、ユーザーがPCよりコントローラ100にプリントジョブ入力すると、ステップS201からステップS202へ移動する。ステップS202ではサーモパイル等の温度検知素子35によって加圧ローラ42表面温度が所定値以下かどうか判定し、定着装置72の暖気状態を決定する。その判定した暖気状態の結果に応じてステップ203、またはステップS204に移動する。
本実施例では、加圧ローラ42の表面温度が70℃を閾値とした。その閾値以上をホット状態と判定し、また閾値未満をコールド状態と判定する。暖気状態がコールド状態と判定された場合はステップS203に移動する。ステップS203以降は実施例1と同様であるため説明を省く。逆に加圧ローラ42表面温度が所定値以上と判定された場合、ステップS204に移動し、記録材の前半と後半でデカール圧を切り替えないモードに設定され、ステップS206に移動する。ステップS206では、カセット61内に設置されている不図示の湿度センサによる湿度情報から湿度が所定値以上かどうか判定する。本実施例では、実施例1と同じ値の湿度65%を閾値とする。湿度が65%以上を高湿度環境と判定し、また65%未満を低湿度環境と判定する。
次に、この判定した結果に応じてステップS209、S210に移動し、デカール装置73の加圧力制御を決定する。ステップS206で湿度が所定値以上と判定された場合、ステップS209に移動し、記録材通紙中のデカール装置73の加圧力を中圧に制御を行う様に決定する。それとは逆にステップS206で湿度が所定値未満と判定された場合はステップS210に移動し、記録材通紙中のデカール装置73の加圧力を弱圧に制御を行う様に決定する。その後、ステップS211に移動し通紙を行い、次のステップS212でプリントを完了する。
ここに記載されている湿度と暖気状態の判定閾値、および、デカール装置73の加圧力は、記録材の種類、坪量、繊維方向、幅方向長さや、トナーの載り量情報等によって適宜変更されても構わない。
実施例2のデカール装置73の加圧力制御において、実施例1と同じプリント条件で記録材Pのカールを評価した結果を表4に示す。
mmであったが、比較例2では1.6mmまでカール量を少なくすることが可能になった。
その理由として、実施例1では湿度の判定結果のみで通紙中のデカール装置73の加圧力を制御していたのに対し、実施例2では湿度と暖気状態の判定結果から適切に加圧力を制御して通紙したため、平均カール量の総和を減らす事が可能となった。
以上説明したように、記録材Pに発生するカールの状態に合わせた矯正力を与える事によりカールの発生を軽減することができる。
以下に実施例3について説明する。実施例1の画像形成装置、定着装置、デカール装置の構成は実施例1と同様であるため再度の説明を省く。
実施例1、2では、記録材を前半と後半の2つの領域に区分したが、この実施例3は、長い記録材Pの場合に区分数を3つに増やし、それぞれ領域ごとに加圧力を設定したもの
である。すなわち、記録材Pの長さが予め定めた長さを閾値として、短い場合には前半と
後半の2区分、長い場合には前半、中間、後半の3領域に区分している。
(デカール装置の加圧力切り替え制御)
以下、本実施例3におけるデカール装置73の加圧力切り替え制御を、図7のフローチャートを用いて説明する。
本実施例3では、湿度80%の高湿度環境、および、加圧ローラ42の表面温度50℃のコールド状態で通紙した場合を例として説明する。
まず、ユーザーがPCよりコントローラにプリントジョブ入力すると、ステップS301からステップS302へ移動する。入力された記録材Pの搬送方向長さ情報から所定値未満かどうか判定する。本実施例では、記録材Pの搬送方向長さは240mmを閾値とした。この閾値以上の搬送方向長さの記録材Pをロング紙とし、閾値以下の搬送方向長さの記録材Pをショート紙として判定する。
例えばA3サイズの記録材を通紙した場合、搬送方向長さは420mmとなり、ロング紙と判定されるためステップS303に移動する。ステップS303では、記録材搬送方向で先端、中央、後端でデカール圧を切り替えるモードに変わる。ロング紙での、記録材Pの範囲の名称として、記録材搬送方向先端から120mmまでを記録材先端とし、同様に記録材搬送方向後端から120mmまでを記録材後端とする。それ以外の範囲を記録材中央とする。
本実施例の条件では、記録材先端のデカール装置73の加圧力を中圧、記録材中央を弱圧、記録材後半を強圧にする制御を行う様に決定する。その後、ステップS305に移動し通紙を行い、ステップS306でプリント完了となる。
一方、例えばA4サイズの記録材の長さが短い方から通紙をした場合、搬送方向長さは210mmとなり、ショート紙と判別されるためステップS304に移動する。ステップS304では記録材搬送方向で前半、後半でデカール圧を切り替えるモードに変わる。本実施例の条件では記録材前半のデカール装置73の加圧力を中圧、記録材後半では強圧にする制御を行う様に決定する。その後、ステップS305に移動し通紙を行い、ステップS306でプリント完了となる。
なお、ここに記載されている記録材長さの判定閾値、および、デカール装置73の加圧力は、記録材の種類、坪量、繊維方向、幅方向長さや、トナーの載り量情報、湿度、定着器の暖気状態等によって適宜変更されても構わない。
記録材Pの搬送方向長さは、ユーザーがプリント時に入力した情報やコントローラの有する画像情報等から得ることが出来る。また、画像形成装置71内に取り付けられた各種センサの検出結果や、各部材に流れる電流値等を読み取ることによって、記録材Pの搬送方向長さを得ても構わない。
例えば、給紙カセット61に設けられた不図示のセンサや、レジストローラ15と二次
転写ニップ部N1の間に設置されている紙サイズ検知素子16、二次転写ニップ部N1で流れる転写電流値等により、記録材Pの搬送方向長さを得ることが出来る。
(性能比較)
以上の構成及びデカール装置73の加圧力制御において、高湿度環境(温度23℃、湿度80%)でプリント動作を行い、カール量を測定した。定着装置72の暖気状態はコールド状態(加圧ローラ表面温度50℃)で測定した。
記録材Pは搬送方向サイズが210mmで幅方向サイズが297mmのA4サイズのGFR070(キヤノンマーケティングジャパン社製)をショート紙、搬送方向サイズが420mmで幅方向サイズが297mmのA3サイズのGFR070をロング紙として使用した。印刷には全面に文字と画像を含む印字率5%程度の画像を使用した。
以上のような条件のもと、各通紙条件におけるカール量を本実施例のデカール装置73の加圧力制御を用いて測定した。比較例4としてデカール装置73がない場合を、比較例5として実施例2で使用したデカール装置73の加圧力制御で通紙を行った場合を示す。実施例3として、記録材の長さに応じてデカール圧を切り替えて通紙する場合を示す。
まず、比較例4として、デカール装置73がない構成で通紙した結果を表5に示す。
次に、比較例5として、実施例2で使用したデカール装置73を使用して通紙を行った結果を表6に示す。
一方ロング紙の場合、比較例4の平均カール量が6.3mmであったが、比較例5では3.0mmまでしか平均カール量を減らす事が出来なかった。これは、ロング紙を流した際、矯正力が強いために記録材中央でプラスカールが発生していたためである。
次に、実施例3として記録材Pの搬送方向長さの判定結果からデカール装置73の加圧力を記録材の搬送方向長さで変えて制御した場合の結果を表3に示す。
以上説明したように、記録材Pの長さに応じて発生するカールの状態に合わせた矯正力を与える事によりカールの発生を軽減することができる。
また、記録材Pの領域ごとに予め定めた加圧力は、強圧、中圧、弱圧の3段階に切り替えられるように設定されているが、2段階でもよいし、4段階以上に切り替えるようにしてもよい。
また、記録材の領域ごとに予め定めた加圧力は、すべて異なる値としているが、前記記録材が前記矯正ニップ部を通過する際に、加圧力が少なくとも一回切り替わるように設定されていればよい。
72 定着装置(定着手段)
40 加熱回転ユニット(加熱回転体)
41 定着スリーブ(可撓性部材)、33 スリーブの温度検知素子
30 ヒータ(加熱部材)、34 ヒータの温度検知素子
42 加圧ローラ(加圧回転体)、35 加圧ローラの温度検知素子
N2 定着ニップ部
36 湿度検知素子
73 デカール装置(カール矯正装置)、
80 デカールローラ、81 デカール対向ローラ
N3 デカールニップ部
85 加圧力切り替え機構
85a,85b 加圧力切り替えカム
P 記録材
100 コントローラ(制御手段)
Claims (7)
- 定着ニップ部を形成する加熱回転体と加圧回転体を有し、定着ニップ部を挟持搬送して記録材に形成されたトナー像を定着する定着手段と、
該定着手段に対して前記記録材の搬送方向の下流側に配置され、前記定着手段において前記記録材に生じたカールを矯正するカール矯正手段と、を備え、
前記カール矯正手段は、所定の加圧力で互いに圧接される一対の回転体によって構成される矯正ニップ部と、該矯正ニップ部の加圧力を切り替える加圧力切り替え手段と、を有する画像形成装置において、
前記記録材を搬送方向に複数の領域に区分し、前記記録材の前記領域ごとに予め定めた加圧力を設定しておき、前記記録材が前記矯正ニップ部を通過する際に、前記領域ごとに前記予め定めた加圧力となるように、前記加圧力切り替え手段を制御する制御手段を備え、
前記加圧力は、環境の湿度を複数段階に区分し、それぞれの段階で異なる設定となっており、
前記定着手段の暖まり具合が第1の状態と、前記第1の状態より温まった状態である第2の状態とし、
前記制御手段は、
前記第1の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせと、前記第1の状態で低湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせが、異なるように設定し、
前記第1の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせと、前記第2の状態で高湿度環境の場合に設定する前記領域ごとの前記加圧力の組み合わせが、異なるように設定する、
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記加熱回転体は、筒状の可撓性部材と、該可撓性部材の内面と接触する発熱体を備えた加熱部材と、を有し、前記可撓性部材を介して前記加熱部材と前記加圧回転体によって定着ニップ部を形成する請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記記録材の領域ごとに予め定めた加圧力は異なる値であり、前記記録材が前記矯正ニ
ップ部を通過する際に、加圧力が少なくとも一回切り替わるように設定されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。 - 前記加圧力は、強圧、中圧、弱圧の3段階に切り替えられる請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記環境の湿度は、湿度検知素子により検知される情報である請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記記録材の前記領域ごとに予め定めた加圧力は、前記定着手段の暖まり具合を複数の段階に区分し、それぞれの段階で異なる設定となっており、
前記定着手段の暖まり具合は、前記定着手段の前記加圧回転体の表面温度を検知する温度検知素子の検知温度によって判別される請求項1乃至5のいずれかの項に記載の画像形成装置。 - 前記記録材の前記領域ごとに予め定めた加圧力は、前記定着手段の暖まり具合を複数の段階に区分し、それぞれの段階で異なる設定となっており、
前記定着手段の暖まり具合は、前記定着手段の加熱部材に取り付けられた温度検知素子の検知温度、または、前記可撓性部材に取り付けられた温度検知素子の検知温度、または、前記定着手段の通紙履歴のいずれか1つを用いて予測される前記加圧回転体の表面温度の予測情報であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
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