(第1実施形態)
以下、図1~図5を用いて、第1実施形態に係るユニット建物10について説明する。
(ユニット建物10の構成)
まず、図1、図2を用いて、ユニット建物10の概略構成について説明する。これらの図1、図2には、ユニット建物10の一部が図示されている。これらの図に示されるように、ユニット建物10は、図示しない基礎上に複数の建物ユニットを水平方向(建物ユニット単体の桁方向及び妻方向)に隣接配置しかつ相互に連結した後、更に当該建物ユニット上に別の建物ユニットを重ねて相互に連結することにより構成されている。
ユニット建物10を構成する建物ユニット12、14は、四隅に立設された3本の柱16及び取り外し可能な1本の仮柱18と、柱16及び仮柱18の上端部に接合された矩形枠状の天井フレーム20と、柱16及び仮柱18の下端部に接合された矩形枠状の床フレーム22と、によって構成されたユニット躯体フレーム15を備えている。天井フレーム20は、長短二種類の天井大梁24、26と、長辺側の天井大梁24間に所定間隔で架け渡された図示しない複数本の天井小梁と、を含んで構成されている。同様に、床フレーム22は、長短二種類の床大梁28、30と、長辺側の床大梁28間に所定間隔で架け渡された図示しない複数本の床小梁と、を含んで構成されている。
なお、天井大梁24、26及び床大梁28、30は軽量溝型鋼によって構成され、略コ字型の断面形状とされている。また、柱16は、断面形状が方形の鋼管柱とされている。なお、本実施形態では、天井フレーム20の長辺側の天井大梁24の長さは短辺側の天井大梁26の長さの略2倍とされている。同様に、床フレーム22の長辺側の床大梁28の長さは短辺側の床大梁30の長さの略2倍とされている。
図2に示されるように、ユニット建物10では、同一サイズの2個の建物ユニット12、14がその妻方向に並列的に配置されており、それぞれの建物ユニット12、14の妻側の天井大梁26が直線状に配置されている。加えて、建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに設けられたそれぞれの仮柱18同士が中央で隣接(対向)して配置されている。そして、この仮柱18が取り外されると、柱省略部P(図2において一点鎖線で示される領域)が形成される。これにより、建物ユニット12、14における妻側面12A、14Aには、建物ユニットの境界を越える大開口部34が形成されている。そして、この大開口部34が形成される壁面に後述する外壁付補強体40を取り付けることで、掃出し窓や引違玄関ドア等を備える外壁面36(図1参照)が形成されるようになっている。
(外壁付補強体40)
図2に示されるように、本実施形態の外壁付補強体40は、補強体42と、補強体42の外側面に取り付けられる外壁パネル44と、によって構成されている。
補強体42は、一例として、軽量溝形鋼で構成された1本の補強梁46と、軽量溝形鋼で構成され、補強梁46の両端部から直交する下方向へとそれぞれ延出された一対の支柱48と、軽量溝型鋼で構成され、一対の支柱48の下端部に両端部が固定された床梁50と、によって構成されている。つまり、補強体42は、正面視で略矩形状の枠体として構成されている。本実施形態では、支柱48の高さ寸法は、建物ユニット12、14の柱16の高さ寸法と略同一とされている。
補強梁46は、柱省略部Pを通りかつ建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに配置された天井大梁26に沿って配置されている。また、この補強梁46の鉛直方向における断面形状は、妻側面12A、14A側に開口した略コ字型として構成されている(図5参照)。
図2に示されるように、補強梁46は、複数の連結部材としてのブラケット52を介して妻側面12A、14Aに配置された天井大梁26に取り付けられている。本実施形態では、ブラケット52は天井大梁26の中央と、柱省略部Pの近傍にそれぞれ設けられており、補強梁46と建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに配置された天井大梁26とは、合計4箇所で固定されている(図4参照)。なお、ブラケット52による固定箇所は4箇所に限らず、建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに配置された各天井大梁26に対して少なくとも1箇所以上であればよい。
ここで、図3には、建物ユニット12、14の天井大梁26と補強梁46がブラケット52を介して接合された接合部を示す拡大図が示されている。なお、図3(A)には、当該接合部を天井大梁26の上方側から見た平面図が示されている。また、図3(B)には、接合部を天井大梁26の厚み方向に沿って建物ユニット12、14の内側から見た正面図が示されており、図3(C)には、接合部を天井大梁26の長手方向に沿って見た側面図が示されている。これらの図に示されるように、各ブラケット52は、正面視で略矩形の背面部54と、背面部54の短手方向の両側部から直交する一方向へ延出された一対の側壁55と、によって構成されている。背面部54には、背面部54の長手方向(高さ方向)に沿って2個の取付孔58Aが形成されており、天井大梁26には、天井大梁26の成方向に沿って2個の取付孔58Bが形成されている。そして、各取付孔58Bから対応する取付孔58A方向へボルト60の軸部を挿通させナット62で締結されている。なお、ナット62はウエルドナットである。これにより、それぞれのブラケット52が、天井大梁26に対して、天井大梁26の成方向(鉛直方向)に沿って2箇所で固定されている(図3(B)参照)。
一方、ブラケット52を構成する一対の側壁55の先端部は、対向して配置される補強梁46の内方空間である溝部64に挿嵌されている(図3(C)参照)。そして、図3(A)に示されるように、平面視でブラケット52の先端部と補強梁46とが重なる部位がアーク溶接等によって接合されている。
図3(C)に示されるように、ブラケット52を介して、妻側面12A、14Aに配置された天井大梁26に補強梁46を接合した状態では、補強梁46の上端部の水平位置が天井大梁26の上端部の水平位置と略同一となるように配置されている。換言すると、補強梁46の上端部が天井大梁26の上端部より上方側に突出しない構成とされている。
一方、補強体42の下縁を構成する床梁50も、柱省略部Pを通りかつそれぞれの建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに配置された床大梁30に沿って配置されている。また、本実施形態では、床梁50と床大梁30との間にブラケット52が配置されていない。従って、床梁50が床大梁30に固定されない構成とされている。なお、前述した補強体42と天井大梁26との関係同様に、床梁50がブラケット52を介して妻側面12A、14Aに配置された床大梁30に取り付けられる構成としてもよい。
前述した通り、一対の支柱48の高さ寸法は、建物ユニット12、14の柱16の高さ寸法と略同一とされている。また、一対の支柱48の上端部は、補強梁46の両端部にそれぞれ固定されており、一対の支柱48の下端部は床梁50の両端部にそれぞれ固定されている(図2参照)。補強梁46の両端部と支柱48の上端部との接続は、一例として以下のようになっている。補強梁46の長手方向の端部に矩形平板状の接合ブラケットを予め溶接しておき、補強梁46の長手方向の端部から張り出された接合ブラケットの端部を支柱48の屋内側の面に当接させて、上下複数点でボルト接合する。床梁50の両端部と支柱48の下端部との接続も同様とされている。これにより、一対の支柱48によって補強梁46及び床梁50の両端部が支持されている。そして、図2に示されるように、建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aと対向するように補強体42を自立させると、それぞれの天井大梁26の外側面と補強梁46の溝部64が対向して配置される。すなわち、一対の支柱48は、補強梁46を天井大梁26に対して対向する位置に位置させる位置決め機能をも有している。なお、それぞれの支柱48の水平方向での断面形状は、屋外側に開口する略コ字型とされている。
ここで、図4には、建物ユニット12、14と外壁付補強体40の組付け状態を示す要部拡大平面図が示されている。この図に示されるように、補強梁46を天井大梁26に固定した状態では、天井大梁26と補強梁46との間には、ブラケット52が介在することにより壁厚方向に所定の間隙66が形成されている。このため、補強梁46は、建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに対し、屋外側にオフセットして配置されている。すなわち、ブラケット52は、補強梁46を天井大梁26から離間させるオフセット量を決定する機能も有している。
一方、図2及び図4に示されるように、外壁パネル44は、ユニット建物10の外壁面36の意匠面を構成しており、複数の外壁フレーム68を介して、補強体42に固定された複数のパネルにより構成されている。外壁パネル44は、正面視では、中央に略矩形の開口部70(図1、図2参照)を備えており、略矩形状の枠体をなしている。そして、外壁パネル44を補強体42に取り付けた状態では、正面視で、補強体42全体が外壁パネル44に覆われている。
また、図1及び図2に示されるように、開口部70は、外壁付補強体40を建物ユニット12、14の妻側面12A,14Aに組付けたときに、ユニット建物10の屋外側から見て、柱省略部Pと重なる位置に形成される。
図5に示されるように、補強体42に外壁パネル44を組付けた状態では、外壁パネル44の上端部は補強梁46の外側面に固定され、外壁パネル44の下端部は床梁50の外側面に固定されている。また、開口部70には掃出し窓部72が設けられており、開口部70の周縁には、掃出し窓部72を構成するサッシ74が取り付けられ、このサッシ74にスライド可能に2枚の窓部材76が支持されている。
この図に示されるように、外壁パネル44の上端部の水平位置は、補強梁46の上端部と略同一の水平位置に配置されている。従って、補強梁46と同様に、外壁パネル44の上端部が、天井大梁26の上端部より上方側に突出しない構成とされている。また、開口部70の上端部70Aは、補強梁46の下端部より下方側に配置されている。そのため、補強梁46の下方側には、当該補強梁46の下端部から開口部70の上端部70Aに至る範囲に余長空間K(図5において一点鎖線で示される領域)が形成されている。これにより、例えば、必要に応じて補強梁46の断面サイズを大きくでき、又は、平板状の追加の補強梁等を補強梁46の下端部に接合し、補強梁46の下方に延出させることができる。その結果、補強梁断面を調整し、補強梁の強度を最適化することができる。なお、本実施形態では、開口部70の下端部70Bは、床梁50の上端部と略同一の水平位置に配置されているが、開口部70に形成される窓の種類に応じて、下端部70Bと床梁50の上端部の高さ関係を自由に設定することができる。
(ユニット建物の組み立て方法)
次に、第1実施形態に係るユニット建物10の組み立て方法について説明する。
まず、第1実施形態に係るユニット建物10では、予め工場で、仮柱18を備えた状態の建物ユニット12、14と、外壁付補強体40とがそれぞれ組み立てられる。そして、建物ユニット12、14ごとに輸送車両によって建築現場へ搬入される。この際に、外壁付補強体40は、建物ユニット12又は建物ユニット14の桁側面(天井大梁24及び床大梁28を含む建物ユニット12又は建物ユニット14の側面)に仮留めされて、一方の建物ユニットと一緒に建築現場に搬入される。そして、まず、図示しないクレーンを用いて、一階部分が構築される。具体的には、図示しない基礎上に、仮柱18を取付けた状態のままの建物ユニット12、14がそれぞれ据え付けられていく。このとき、建物ユニット12、14は、妻方向に並列配置され、妻側面12A、14Aに配置される天井大梁26が直線状に据え付けられる。加えて、建物ユニット12、14におけるそれぞれの仮柱18が中央で隣接するように据え付けられる。
次いで、工場内で予め組み立てた外壁付補強体40が、柱省略部Pを含む大開口部34が形成された建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aに取付けられる。具体的には、既に図示しない基礎上に据え付けられた建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aと補強体42とが対向するように、外壁付補強体40が図示しないクレーンで吊り込まれる。そして、図示しない基礎上に外壁付補強体40を自立させることで建物ユニット12、14の天井大梁26と補強梁46との位置決めがなされる。また、前述したブラケット52を用いて、補強梁46を天井大梁26から離間させるオフセット量が所定量に定められる。具体的には、ブラケット52の背面部54が天井大梁26のウェブの外側面に、相互のボルト挿通孔が同軸上となるように位置決めされた状態で当接される。その後、ボルト60がナット(ウエルドナット)62に締結される。その後、建物ユニット12、14から、それぞれの仮柱18が撤去される。
このようにして必要個数の建物ユニット12、14が図示しない基礎上に順次据え付けられると共に外壁付補強体40の組付及び仮柱18の撤去がなされてユニット建物10の一階部分の基本的な組み立て作業が完了する。
(作用及び効果)
次に、本実施形態に係るユニット建物10の作用及び効果を説明する。
上記のようにして構築されたユニット建物10では、柱省略部Pにかかる荷重は、建物ユニット12、14側と補強体42側とに分散して支持される。つまり、柱省略部Pにかかる荷重は、建物ユニット12、14の天井大梁26を介して端部に配置された一対の柱16に支持されるだけでなく、補強体42の補強梁46を介して一対の支柱48によっても支持される。従って、柱省略部Pにかかる荷重を、補強体42の補強梁46と支柱48とに分散させて支持できる分だけ、柱省略部Pが効率良く補強され、ひいては、建物ユニット12、14の経済的な設計が可能となる。
また、外壁パネル44は補強体42に固定されているため、建築地では、柱省略部Pを含む建物ユニット12、14の側面に、外壁付補強体40の補強梁46を建物ユニット12、14の天井大梁26に接合するだけでよく、補強体42と外壁パネル44とを別々に取り付ける必要がない。つまり、補強体42と外壁パネル44とが一体化されることで部品点数が削減される。このため、部品点数が削減される分、建築地での作業性が向上される。また、補強体42を構成する補強梁46は、支柱48によって支持されているため、建物ユニット12、14の妻側面12A、14Aと補強体42とが対向するように外壁付補強体40を自立させるだけで、天井大梁26と補強梁46との接合部(ブラケット52の接合部)の位置決めがなされる。この点でも、建築地における組付け作業性が向上される。
その結果、本実施形態によれば、柱省略部Pを含む複数の建物ユニット12、14に、当該柱省略部Pと重なる開口部70を備えた外壁パネル44を組付ける場合に、柱省略部Pを効率良く補強することができ、しかも、建築地における作業性を向上させることができる。
また、本実施形態では、外壁パネル44を支持する支柱部材(外壁フレーム68)が補強体42に一体的に取り付けられる構成としたので、外壁パネル44を図2に示す柱省略部Pを有しない建物ユニット12の側面に取り付けられる外壁パネル45と同様の構造とすることができる。これにより、外壁パネル44の汎用性を高めることができる。
さらに、第1実施形態に係るユニット建物10では、工場から建築地への搬送する際に、建物ユニット12又は建物ユニット14に外壁付補強体40を仮留めすることで、建物ユニットと外壁付補強体40とを一緒に搬送することができる。その結果、搬送効率が向上され、ひいては、建築コストを大幅に削減することができる。
また、本実施形態に係るに係るユニット建物10では、図5に示されるように、外壁付補強体40を建物ユニットに12、14に組付けた状態において、補強梁46の上端部及び外壁パネル44の上端部が天井大梁26の上端部より上方側に突出しない構成とされている。このため、建物ユニット12、14の上に別の構造物を設置する際に、外壁付補強体40が妨げとならない。すなわち、外壁付補強体40が建物ユニット12、14の上階部材に与える制約を抑制することができる。その結果、本実施形態によれば、外壁付補強体40が接合された建物ユニット12、14の上部に設けられる構造物の設計の自由度を高めることができる。別の言い方をすれば、この外壁付補強体40の汎用性は高いと言える。
例えば、建物ユニット12、14の上階部分に、この建物ユニット12、14と同様に柱省略部Pが形成される2つの建物ユニットを据え付ける(積み上げる)場合において、上階側の建物ユニット(12、14)に外壁付補強体(40)を組付けたとしても、下階側の建物ユニット12、14に組付けた外壁付補強体40と干渉することはない。このため、ユニット建物10における下階部分の開口部70と上階部分の開口部(70)のレイアウトの自由度が増すと共に、建物全体の強度を適切に確保することができる。さらに、後述する第2実施形態のように床梁のない門型の外壁付補強体にすれば、上階側の建物ユニット(12、14)の床大梁(30)を簡単に省略することができる。このため、上階側の建物ユニット(12、14)に玄関部を形成する際に、この玄関部のたたき床を同階の居住空間の床面より一段低い位置に床大梁(30)の制約を受けることなく形成することが容易になる。
また、補強梁46の上端部の水平位置は、上階側の建物ユニットの床大梁の水平位置まで達しないため、上階側の建物ユニットの床大梁に、キャンチ構造のバルコニーを連結させるといったことも可能になる。
また、本実施形態では、図5に示されるように、補強梁46の下端部が外壁パネル44の開口部70の上端部70Aより上方側に配置されているため、補強梁46の下方側には、余長空間Kが形成される。このため、補強梁46の下端を開口部の上端部70Aまで延出させて補強梁46のサイズアップさせることや、追加の補強梁を配置させることが可能とされている。このため、建物ユニット12、14の柱省略部Pの荷重負担に応じて最適な補強梁断面を保つことができる。つまり、構造物の設計に応じて補強梁の強度及び剛性を最適に調節することができる。
さらに、本実施形態では、図4及び図5に示されるように、補強梁46は、ブラケット52を介して天井大梁26に接合されることにより、補強梁46と既存の天井大梁26との間に空間的な余裕(間隙66)が生じ、無理なディテールにすることを回避できる。これにより、補強梁46の厚みを壁厚方向に拡張することができる。例えば、補強梁46を天井大梁26と同一の梁断面をなす軽量溝形鋼として構成することが可能となり、補強梁46を既存の天井大梁26とするなど、標準的なディテールとして共通化することも可能となる。
また、このことを別の見方で捉えると、外壁付補強体40を複数のブラケット52を介して天井大梁26に接合することにより、建物ユニット12、14の柱16に外壁付補強体40を干渉させることなく組付け作業を行うことができる。その結果、建築地における建設計画の自由度を高めることができる。例えば、建物ユニット12の左右及び上下に別ユニットが配置され、互いの建物ユニットの柱16を連結させた後であっても、外壁付補強体の組付け作業を容易に行うことができる。
さらに、補強梁46が、建物ユニット12、14の柱省略部Pを含む側面に対し外側にオフセットされることで、同時に外壁パネル44も外側にオフセットされる。その結果、建物ユニット12、14と外壁パネル44との間隙66が広がるため、室内空間を拡張することができる。
このように本実施形態によれば、外壁付補強体40を複数のブラケット52を介して天井大梁26に接合する構成を採ったので、ディテールの複雑化回避によるコスト削減、外壁付補強体40の組付タイミングの自由度拡大(フレキシブル化)による建設計画の合理化、及び室内空間の拡張を図ることができる。
また、本実施形態では、図3(B)に示されるように、補強梁46を固定するブラケット52が、天井大梁26の成方向に沿って2箇所で固定されているため、補強梁46を一体とした天井大梁26のねじれ剛性を向上させることができる。これにより、外壁パネル44の開口部70に玄関ドアを設ける場合などに、玄関ドアの上部の補強梁46に片持ち構造の庇を設けても充分な剛性を保つことができる(この構成については後述する第2実施形態で詳述する)。また、片持ち構造の玄関庇を取付けた状態で、建物ユニット12、14側の天井面を吹抜けにするなど付属空間の自由度を高めることができる。
さらに、本実施形態によれば、上記以外に以下の効果も得られる。外壁付補強体40の屋内側の面に、室内の内壁や断熱材を取付けたり、開口部材(サッシ)を取付けることも可能である。このため、外壁付補強体40に予め内壁等を組付けておくことにより、現地での施工性が更に向上する。また、このように外壁付補強体40に予め内壁等を組付けたとしても、外壁付補強体40の補強梁46と建物ユニット12、14の天井大梁26との間に間隔があるため、建物ユニット12、14の構成部材と干渉せず、この点においても施工性の向上に寄与する。
(第2実施形態)
以下、図6及び図7を用いて、第2実施形態に係るユニット建物110について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図6に示されるように、この第2実施形態では、建物ユニット12、14において、仮柱18の下端と直交する各ユニットの床大梁28、30が省略されており、建物ユニット12、14の妻側面12A,14Aには、正面視で略門型の大開口部111が形成されており、かつ、この妻側面12A,14Aに、正面視で略門型の外壁付補強体112が組付けられる点に特徴がある。
この図に示されるように、第2実施形態の建物ユニット12、14では、柱省略部Pの他、それぞれの仮柱18の下端と直交する床大梁28、30が省略される構成とされている。この建物ユニット12、14では、長辺側の床大梁28間に床小梁を設けることなく建物ユニット12、14の屋内側に玄関のたたき等の床面120(図7参照)が形成されている。
補足すると、通常、建物ユニットの屋内に形成される床面は、床小梁を床下地に床板等が固定されて床面が形成されている。それに対し、本実施形態の建物ユニット12、14の床面120は、玄関のたたき等の床面として利用することを想定しているため、通常の建物ユニットよりも床面の位置が低く設定されており、屋外側に続く玄関ポーチの床面との高低差が殆ど生じないように造られている。
一方、補強体114は、補強梁46と一対の支柱48を備えている。この補強梁46の妻方向の両端部には、支柱48の上端部がそれぞれ接合され、補強梁46が一対の支柱48によって支持されている。従って、補強体114は、正面視で略門型として構成されている。換言すると、この第2実施形態の補強体114は、第1実施形態の補強体42における床梁50を省略したものである。そして、この補強体114を覆うように、屋外側から正面視で略門型の外壁パネル116が取り付けられ、全体としても略門型の外壁付補強体112が構成されている。
また、略門型の外壁パネル116の内側には、鉛直下方に向けて開放された矩形状の開口部118が形成されている。そして、開口部118は、外壁付補強体112を建物ユニット12、14の妻側面12A,14Aに組付けたときに、ユニット建物110の屋外側から見て柱省略部Pと重なる位置に形成される。
前述した通り、ユニット建物110では、建物ユニット12、14の屋内側の玄関の床面120と屋外側の玄関ポーチの床面との高低差が殆ど生じない。このため、妻側面12A,14Aに外壁付補強体112を組付けることにより、ユニット建物110の屋内と屋外とをスムーズに連通させる開口部118が形成される。
図7に示されるように、引違玄関ドア部122は、玄関サッシ124と2枚の玄関扉126とで構成されており、玄関サッシ124の上端部が庇200を介して外壁パネル116の開口部118と連結されている。また、玄関サッシ124の下端部が床面120に設置されている。そして、2枚の玄関扉126が玄関サッシ124にスライド可能に支持されている。庇200は、本体部130と連結部128を備えている。本体部130は開口部118の上端部から、略水平方向に沿って屋外側に張り出されている。一方、連結部128は、本体部130の基端部から、略鉛直方向に沿って上下に延出する構造体により構成されている。開口部118の上端部より上方側では、外壁パネル116と補強梁46の間に連結部128の上部が挿入されており、補強梁46と外壁パネル116の双方に固定されている。また、連結部128の下端部は、玄関サッシ124の上端部に載置されている。なお、当該連結部128を、補強梁46と外壁パネル116とを連結させる外壁フレームとしての機能を兼ねた部材としてもよい。
(作用及び効果)
次に、第2実施形態に係るユニット建物110の作用及び効果について説明する。
上記構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。特に、本実施形態では、第1実施形態で説明したように、補強梁46を固定するブラケット52が、天井大梁26の成方向に沿って2箇所で固定されているため、補強梁46を一体とした天井大梁26のねじれ剛性を向上させることができる。これにより、外壁パネル44の開口部70に玄関ドアを設ける場合などに、玄関ドアの上部の補強梁46に片持ち構造の庇200を設けても充分なねじれ剛性を保つことができ、ひいては、片持ち構造の庇200の先端の垂れ下がりを抑制することができる。また、片持ち構造の玄関の庇200を取付けた状態で、建物ユニット12、14側の天井面を吹抜けにするなど付属空間の自由度を高めることができる。
その他、本実施形態によれば、以下の効果も得られる。すなわち、本実施形態では、建物ユニット12、14の屋内側の床面120と屋外側の玄関ポーチの床面との高低差が殆ど生じない開口部118が形成されるため、屋内空間の開放感が向上する。
また、建物ユニット12、14の床面120は、通常の建物ユニットの床面の水平位置よりも低く設定されているため、通常の建物ユニットの床面との高低差を生かした住宅設計をすることができる。例えば、共同住宅のように、住宅の2階部分に玄関部を設ける場合であっても、玄関部を建物ユニット12、14で形成することにより、2階部分の玄関部の床面と居住空間の床面に段差を設けると共に、広々とした玄関部を形成することができる。
〔上記実施形態の補足説明〕
(1)上述した実施形態では、2つの建物ユニット12、14の境界を越える大開口部34、111を形成したが、これに限らない。例えば、3つの建物ユニットの屋外側かつ妻側の天井大梁が直線状に配置され、かつ、仮柱同士が隣接するように並列配置された場合に、3つの建物ユニットのそれぞれの境界を越える開口部を形成してもよい。この場合、中央の建物ユニットには2本の仮柱が設けられ、当該建物ユニットの両側に位置する建物ユニットには1本の仮柱が隣接して配置されることになる。
(2)上述した実施形態では、補強梁46の成が天井大梁26の成と略同一に設定されていたが、これに限らず、補強梁の成を天井大梁26の成より小さく設定してもよく、逆に、大きく設定してもよい。
(3)上述した第1実施形態では、掃出し窓部72の上方側に庇は設けられていないが、第2実施形態と同様の庇200を掃出し窓部72の上方側に設けてもよい。また、庇に限らず、片持ち構造の床や、オーニング等の日除けとして用いられる片持ち構造の部材を設けてもよい。
(4)上述した第2実施形態では、略門型の外壁付補強体112の開口部118を引違玄関ドア部122として利用したが、これに限らず、インナガレージや、屋外テラスなどと連通される開口部として利用してもよい。
(5)上述した実施形態では、外壁付補強体40、112と下部構造との接続方法については言及していないが、通常の接続方法と同様で、下部構造体がコンクリート基礎であれば、アンカーボルトや後施工アンカーによって接続し、建物ユニットや外壁付補強体であればボルト接合により接続すればよい。接合箇所は二箇所以上であればよく、接合箇所を増やすことにより外壁付補強体の強度を向上させることができる。また、第1実施形態のように矩形枠状の外壁付補強体40を用いる場合には、補強体42の床梁50を下部構造体に接続することにより、外壁付補強体40の強度を更に向上させることができる。
(6)上述した実施形態では、支柱48に溝形鋼を用いたが、これに限らず、角型鋼管等の他の断面形状の部材を用いてもよい。溝形鋼を用いた場合は、補強梁46の長手方向の端部に溶接した矩形平板状の接合ブラケットに支柱48を当接させてボルト接合するなど、補強梁46と支柱48との接続が容易になるメリットがある。