以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施形態]
図1~図4に示す本発明の第1の実施形態に係わるシートスライド装置101は車両用シートの前後方向への調節を手動で行う手動式である。シートスライド装置101は、車両の床面上に設置され、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、シート座部(図示せず)の裏面に設置され、ロアレール103の長手方向に沿って、ロアレール103内を相対移動自在に組付けられるアッパレール105とを備えている。ロアレール103とアッパレール105とでレール体106を構成しており、レール体106は左右一対設けられている。図3では、ロアレール103を省略している。なお、以下の説明(第2の実施形態も含む)で、「前」は図2、図3中で左側の車両前方FR側で、「後」は図2、図3中で右側の車両後方RR側であり、「左右」は車両後方から車両前方を見たときの左右方向である。
ロアレール103は、図4に示すように、車両前後方向に延びる長方形の板形状を具備するロア底壁103aを備えている。ロア底壁103aの車幅方向の両端縁から、左右一対のロア外側壁103bが、ロア底壁103aから上方に向けてやや外側に傾斜するように立ち上がっている。左右一対の両ロア外側壁103bの下端とロア底壁103aとの間にはロア斜壁103cが形成されている。左右一対の両ロア外側壁103bの上端縁から、互いに近づく方向にロア底壁103aと平行に延在する左右一対のロア上壁103dが設けられている。
左右一対のロア上壁103dの内端縁からロア底壁103aに向かって下方に垂下する、左右一対のロア内側壁103eが設けられている。なお、互いに平行な状態で対向するロア内側壁103e間の間隔は、ロアレール103内に収容されるアッパレール105が移動可能なように設定されている。
アッパレール105は、車体前後方向に延びる長方形の板形状を具備するアッパ天壁105aを備えている。アッパ天壁105aの車幅方向の両端縁から、左右一対のアッパ側壁105bが下方に向けて垂下している。両アッパ側壁105bの下端縁から、アッパ下方斜壁105cがそれぞれの外側斜め上方に向けて立ち上がっている。左右一対の両アッパ下方斜壁105cの上端縁から、屈曲部105dを介してアッパ上方斜壁105eがロア上壁103dに向かって斜め上方に向けて立ち上がっている。
ロアレール103のロア底壁103aとロア斜壁103cとの間の下方円弧部103fと、アッパレール105のアッパ下方斜壁105cとの間に、下方ガイドボール107を転動自在に配置している。ロアレール103のロア外側壁103bとロア上壁103dとの間の上方円弧部103gと、アッパレール105のアッパ上方斜壁105eとの間に上方ガイドボール109を転動自在に配置している。
下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109は、図5に示すように、図4では省略しているボールリテーナ111に回転自在に支持されている。ボールリテーナ111は、下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を2個ずつ、計4個を支持している。これら下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を支持した状態のボールリテーナ111は、ロア外側壁103b、ロア斜壁103c、ロア上壁103d及びロア内側壁103eに囲まれた収容部113(図4)内に、前後2カ所配置され、左右一対のレール体106に対して計4カ所配置される。
図2に示すように、アッパレール105の前方側におけるアッパ天壁105aには、リベットなどの固定具115によってロック部材117を固定している。ロック部材117は、板状のばね部材で構成している。ロック部材117は、固定具115によって固定される基部としての固定部119に、固定具115が挿入される固定孔119aを備えている。ここで、アッパレール105のアッパ天壁105aには、アッパ固定孔105fの周辺部分が、他のアッパ天壁105aの部分に対して下方に窪んで形成されている。これにより、固定具115の頭部がアッパレール105のアッパ天壁105aの他の上面よりも突出しないように設定される。
図8A、図8Bは取付け前の固定具115を示している。固定具115は、図2のB部の拡大図である図9にも示すように、固定孔119a及びアッパ固定孔105fに下方から挿入される挿入軸部115aと、挿入軸部115aの下部に形成されて挿入軸部115aよりも直径が大きい大径部115bと、大径部115bの挿入軸部115aと反対側の下部に形成されるフランジ部115cとを備えている。フランジ部115cは、側方に向けて突出する突部を構成している。
フランジ部115cは、図9及び図9のE-E断面図である図10に示すように、後述する図11に示す解除レバー131の左右の側壁147に設けてある係止突部147eの下方に位置している。係止突部147eは、図11に示すように、前後方向の中央位置よりもやや前方に位置し、解除レバー131の一部である側壁147から内側に向けて切起こして形成されたものである。
係止突部147eは、図10に示すように、上部が側壁147につながっていて、下部が側壁147に対して切断され、切断された下端面147e1がフランジ部115cの上面115c1に対向している。下端面147e1と上面115c1との間には隙間Tが形成されている。隙間Tを備えることで、解除レバー131の固定具115を設けた部分の揺動支点部151を支点とする前後方向の揺動を可能にしている。
図7に示すロック部材117の固定部119は、図2に示すアッパ天壁105aとほぼ平行に前後方向に延在し、固定部119の後端から後方斜め下方に傾斜する後方傾斜部121が形成される。後方傾斜部121の後端から固定部119とほぼ平行に後方に向けて延在する後方弾性変形部123が形成されている。後方弾性変形部123の後端部125は、図3にも示すように、後方弾性変形部123よりも左右方向(図3中で上下方向)の幅が広く、平面視で矩形となっている。後方弾性変形部123は後方付勢部を構成している。
後端部125には、左右両側縁部付近に前後方向に沿って二つずつの矩形の孔125aが形成されている。ここで、後端部125における各孔125aの前後方向に隣接する部分は、左右両側方に突出するロック部としてのロック歯125bを構成する。ロック歯125bは、左右両側にそれぞれ三箇所形成される。左右両側のそれぞれ三箇所のロック歯125bは、先端側が、前後方向に延びる接続部125cで接続された構成となる。
図6に示すように、アッパレール105の前後方向のほぼ中央付近において、左右両アッパ側壁105bから両アッパ下方斜壁105cにわたり、ロック歯受入凹部129を、前後方向に沿って左右それぞれ三箇所形成している。図2に示すように、三箇所のロック歯受入凹部129にロック部材117の三つのロック歯125bが下方から入り込んでいる。このとき、ロック歯受入凹部129相互間の突起126が、ロック部材117の孔125aに挿入される。その際、後端部125の接続部125c付近が、アッパレール105に干渉するのを避けるために、ロック歯受入凹部129の下部に連続する開口部128や、アッパ上方斜壁105eに形成した切欠開口130を、アッパレール105の左右両側に設けてある。
一方、図5に示すように、ロアレール103の左右のロア内側壁103eの前部付近及び後部付近を除く位置には、被ロック部としてのロック溝127を前後方向に沿って複数設けている。ロック溝127にロック部材117のロック歯125bが、ロック歯受入凹部129に位置している状態で下方から入り込むことで、ロック部材117がロアレール103に対してロックした状態となる。これにより、ロック部材117を取り付けてあるアッパレール105は、ロアレール103に対して前後方向の移動が規制される。
ロック部材117は、アッパレール105に取り付けた状態で、後方弾性変形部123が上方に弾性力を付与することで、ロック歯125bがロック溝127に入り込んだ状態が維持される。この状態から、図1、図2に示す操作ハンドル133を上方に向けて操作することで、解除レバー131を介してロック部材117の後端部125が下方に押され、ロックが解除される。操作ハンドル133は、アッパレール105内に前部から挿入されて解除レバー131と連動可能に配置される。
ロック部材117は、図3、図7に示すように、固定部119の固定孔119aに対応する位置の左右両側部から、それぞれ側方に向けて突出する被支持部としての突出部119bを備えている。突出部119bは、固定部119を含むロック部材117の板厚と同じ厚さで側方に突出していて、平面視で矩形状である。図2、図7に示すように、ロック部材117は、固定部119を境にして後方傾斜部121と反対側の前方に前方傾斜部135が形成されている。前方傾斜部135は、前方ほど下方となるよう傾斜している。
前方傾斜部135の前端(下端)から前方に向けて固定部119とほぼ平行に延在する前方弾性変形部141が形成されている。弾性変形部141は前方付勢部を構成している。
前方弾性変形部141の前端には、上方に向けて屈曲する嵌合突起としての前端爪部145が形成されている。前端爪部145は、図2、図15に示すように、操作ハンドル133の下面に形成してある嵌合凹部133aに下方から嵌合している。前方弾性変形部141は、前端爪部145を介して嵌合凹部133aを上方に向けて押圧している。前方弾性変形部141の嵌合凹部133aに対する押圧力は、後方弾性変形部123のロック歯125bによるロック溝127への押圧力よりも弱く設定している。
ロック部材117は、図2に示すように、アッパレール105に取り付けた状態で、前方弾性変形部141の前後方向のほぼ中央から前方側が、アッパレール105から前方に突出している。
図11~図14に示すように、解除レバー131は、左右の側壁147と、左右の側壁147の後方側の端部付近の領域において、左右の側壁147の上端相互をつなぐ上壁149とを備えている。ロック部材117は、前部付近及び後部付近を除く部位が、解除レバー131の左右の側壁147相互間に配置される。すなわち、解除レバー131は、ロック部材117とアッパレール105の長手方向及び上下方向で重なる位置に設けられている。
解除レバー131の前後方向の中間位置より前方側の側壁147の上側端部には、支持部としての凹所147aを形成している。凹所147aは、係止突部147eの上方に位置しており、上方が開放した円弧形状の凹曲面状となっている。凹所147aは、図15に示すように、ロック部材117の左右の突出部119bの下側に配置されて、突出部119bの下部が凹所147aに係合される。ロック部材117の突出部119b及び解除レバー131の凹所147aは、解除レバー131と操作ハンドル133とが一体的に上下に揺動する際の揺動支点部151を構成する。揺動支点部151は、ロック部材117によるアッパレール105に対する固定部位と前後方向で一致している。
解除レバー131は、上壁149から後方に延びる解除押圧部153を備えている。解除押圧部153の先端側の下部には、下方に湾曲するようにして突出する湾曲凸部153aが形成されている。湾曲凸部153aは、ロック部材117における後方弾性変形部123の後端部125の上面に当接している。上壁149には、上方に向けて切起こしにより形成した突起149aを形成している。突起149aは、解除レバー131及び操作ハンドル133が揺動支点部151を支点として図2中で反時計回り方向に揺動回転するときにアッパレール105のアッパ天壁105aに当接するストッパの役目を果たす。
解除レバー131の前端部の上端相互は、前部上壁157によりつながっている。左右両側壁147の前端下部には切欠部147fが形成され、左右両切欠部147fの上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する前方上側ガイド突起147gが形成されている。左右の前方上側ガイド突起147gの先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。
切欠部147fの後方の下部には後部切欠部147hが形成され、左右両後部切欠部147hの上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する前方下側ガイド突起147iが形成されている。前方上側ガイド突起147gと前方下側ガイド突起147iとの間には、上下方向に間隙S1(図13、図14)が形成されている。
前方上側ガイド突起147gの後方の両側壁147の上部には、互いに対向する側に向けて突出する後方上側ガイド突起147jが形成されている。後方上側ガイド突起147jは、側壁147の上端を長さ方向に沿ってブリッジ状に突出させたものであり、前後方向に長く形成されている。前方下側ガイド突起147iの後方の両側壁147の下部には、互いに対向する側に向けて突出する後方下側ガイド突起147kが形成されている。後方下側ガイド突起147kは、側壁147の下端を長さ方向に沿ってブリッジ状に突出させたものであり、後方上側ガイド突起147jの後方側の下方に位置している。
図13に示すように、後方下側ガイド突起147kは、後方上側ガイド突起147jに対向する上端縁に、前部よりも後部が上方位置となるよう傾斜する傾斜ガイド面147k1が形成されている。傾斜ガイド面147k1の後端に続く上端面147k2と、後方上側ガイド突起147jとの間には、上下方向に間隙S2が形成されている。
後方下側ガイド突起147kの上端面147k2は、上下方向で前方上側ガイド突起147gと前方下側ガイド突起147iとの間に位置し、傾斜ガイド面147k1の前端に続く前部上端面147k3は、下側ガイド突起147iの上端面よりも下方に位置している。後方上側ガイド突起147jの下端面は、前方上側ガイド突起147gの下端面よりも上方に位置している。したがって、間隙S2は間隙S1よりも全体として上方に位置している。
間隙S1は間隙S2よりも大きい(S1>S2)。間隙S1及び間隙S2に、解除レバー131の後述するフランジ169b3(図16A~図18)が挿入される。解除レバー131の左右の側面169b2相互間に対応する部分は、図14に示す左右の前方上側ガイド突起147g相互間及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間に挿入される。
前方上側ガイド突起147gは、操作ハンドル133が上方のロック解除方向に向けて回動操作されるときの力が、フランジ169b3を介して下方から上方に向けて付与される。このとき、操作ハンドル133の後端側は、後方下側ガイド突起147kの上端面147k2に対し、フランジ169b3を介して上方から下方へ向けて押し付ける。したがって、解除レバー131の前方上側ガイド突起147g及び後方下側ガイド突起147kが設けられた前端部周辺は、操作ハンドル133が操作されるときの力が付与される作動部159となる。すなわち、作動部159には、前方の上側、下側各ガイド突起147g,147i及び、後方の上側、下側各ガイド突起147j,147kがそれぞれ設けられている。作動部159は、揺動支点部151を境にして後方の解除押圧部153と反対の前方に位置している。
図16A、図16Bに示すように、操作ハンドル133は、図1に示す左右一対のレール体106に対応して設けられる左右一対のアーム部167と、一対のアーム部167同士をつないで車幅方向に延在する把持部168とを備えて、全体としてほぼU字状を有している。なお、図16A、図16Bでは、左側のアーム部167周辺を示し、右側は省略している。一対のアーム部167は、前後方向に延在し、左右それぞれのアッパレール105内に前端から挿入される。把持部168は、操作ハンドル133を乗員が操作するときに把持する。
アーム部167は、図2及び図15に示すように、後端部分が、解除レバー131の左右の側壁147相互間に挿入されている。アーム部167は、把持部168を含めた全体が円筒部材で構成しており、前述した嵌合凹部133aを備える部分より後方側が、円筒部分を上下から押し潰した形状の後方接続部としての連結部169となっている。
図16A~図18に示すように、連結部169は断面ほぼハット形状となっている。すなわち、連結部169は、上面169b1と、上面169b1の左右の両端部から下方に延びる側面169b2と、左右の側面169b2の下端から左右両側に向けて上面169b1とほぼ平行に延びるフランジ169b3とを備えている。ハット形状の下部は、開口していて、図18に示すように、ロック部材117の前方弾性変形部141の上方に位置する凹部170となっている。
フランジ169b3は、前述したように、間隙S1及び間隙S2に挿入配置された状態となっている。この状態で、操作ハンドル133を上方に向けて操作したときの力が、フランジ169b3を介して前方上側ガイド突起147gの下面に下方から付与される。また、前述したように、操作ハンドル133は、フランジ169b3より上に位置する側面169b2を備える部分が、左右の前方上側ガイド突起147g相互間及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間に入り込んでいる。このため、ハット形状の左右の側面169b2相互の間隔は、左右の前方上側ガイド突起147g相互間の間隔及び、左右の後方上側ガイド突起147j相互間の間隔よりも狭くなっている。
連結部169は、図17,図18に示すように、上面169b1の左右方向の幅に関し、ロック部材117の前端爪部145が入り込む前端部側(図16BのF-F断面に対応する図17に示す部分)が広く、当該前端部側より後方側(図16BのG-G断面に対応する図18に示す部分)が狭くなっている。このため、嵌合凹部133aに嵌合した状態の前端爪部145は、操作ハンドル133に対し前後方向の移動が規制される。
図11~図13に示すように、解除レバー131の左右の側壁147には、連結部169の後端の後方に対向する位置に、左右一対の凸部147cを設けてある。凸部147cは、解除レバー131の側壁147から内側に向けて切起こしにより突出しており、嵌合凹部133aに前端爪部145が嵌合した操作ハンドル133の組付け状態で、連結部169の後端面に対して離間している。
解除レバー131の前端におけるフランジ169b3の下方には、図15に示すように前方下側ガイド突起147iが位置している。この状態で、操作ハンドル133の把持部168が下方に押されたときに、操作ハンドル133が、前方弾性変形部141を弾性変形させながら、前方下側ガイド突起147iを支点として図2中で反時計回り方向に揺動する。このとき、前方下側ガイド突起147iより後方側の連結部169が上方に変位し、フランジ169b3が後方上側ガイド突起147jに下方から当接する。これにより、操作ハンドル133の把持部168の必要以上の下方への移動を規制する。ここで、解除レバー131は、係止突部147eが固定具115のフランジ部115cに当接して凹所147aがロック部材117の突出部119bから外れるのを規制するとともに、後部側の上壁149に設けてある突起149aが、アッパレール105のアッパ天壁105aに下方から当接して揺動を規制する。
次に、上記のように構成されたシートスライド装置101の動作を説明する。
図1~図3は、ロック部材117のロック歯125bがロアレール103のロック溝127に係合してロックされたロック保持状態である。この状態から、乗員が操作ハンドル133を上方に向けて操作すると、操作ハンドル133は、フランジ169b3の後方側が後方下側ガイド突起147kの上端面147k2を下方に向けて押し付ける一方、フランジ169b3の前方側が前方上側ガイド突起147gの下端面を上方に向けて押し付ける。このとき、操作ハンドル133の上方に向けての操作力が、解除レバー131に作動部159を介して伝達される。
これにより操作ハンドル133は、解除レバー131とともに、揺動支点部151を中心として図2中で時計回り方向に一体的に揺動回転する。このとき、解除レバー131は、揺動回転によって後方の解除押圧部153の湾曲凸部153aが、ロック部材117のロック部周辺に相当する後端部125を下方に押し下げ、後方弾性変形部123が下方に向けて弾性変形する。すなわち、解除押圧部153は、ロック部材117のロック歯125b周辺を押圧可能である。その結果、ロック歯125bがロアレール103のロック溝127から外れてロックが解除される。ロックが解除されることで、図示しないシートをアッパレール105とともに、ロアレール103側の車両の床面に対して前後に移動させることができ、乗員の希望とするシート位置を確保できる。
シート位置を決定した状態で、乗員が操作ハンドル133から手を離すと、ロック部材117の後方弾性変形部123が解除押圧部153を上方に押し付け、解除レバー131を揺動回転させて図2のロック保持状態に戻る。このとき、解除レバー131は、操作ハンドル133とともに、揺動支点部151を中心として図2中で反時計回り方向に揺動回転する。
図2の状態で、例えば車両が後方から衝突され、乗員の踵が操作ハンドル133に後方に向けて衝突した場合を想定する。この場合、操作ハンドル133が受ける荷重で、前端爪部145が嵌合凹部133aから外れ、操作ハンドル133が後方に移動する。操作ハンドル133の後方への移動によって、フランジ169b3が、図2、図3に示す解除レバー131の凸部147cに当接し、操作ハンドル133の解除レバー131に対する後方への移動を規制する。解除レバー131は、凸部147cが操作ハンドル133から後方に向けて荷重を受けることで、揺動支点部151における凹所147aがロック部材117の突出部119bから外れ、操作ハンドル133とともに後方に移動する。
これにより、乗員の踵が操作ハンドル133に衝突したときの衝撃が緩和される。
図15に示すように、ロック部材117と解除レバー131とは、これらをアッパレール105に組み付ける前に、互いに組み付けることができる。解除レバー131は、下部が長手方向全長にわたり開口しているので、下部の開口側から、ロック部材117を傾けた状態で左右の側壁147相互間に挿入する。突出部119bを備える固定部119が側壁147より上方位置となるまで挿入した状態で、ロック部材117を水平に戻し、その後下方に移動させることで、ロック部材117の突出部119bを解除レバー131の凹所147aに入り込ませる。
このとき、ロック部材117の後端部125の上に解除押圧部153の湾曲凸部153aが当接し、前方弾性変形部141の前後方向中央位置付近から前方部分が、解除レバー131の前端から前方に突出する。このようにして組み付けたロック部材117及び解除レバー131を、図1~図3に示すように、アッパレール105の左右のアッパ側壁105b相互間に入り込ませ、固定具115によってロック部材117の固定部119をアッパレール105のアッパ天壁105aに固定する。このように、ロック部材117と解除レバー131とは、あらかじめ互いに組み付けた状態で、アッパレール105に組み付けることができるので、組み付け作業性が向上する。
操作ハンドル133は、ロック部材117及び解除レバー131をアッパレール105に組み付けた状態で、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませつつ、連結部169を解除レバー131の前端開口から挿入する。操作ハンドル133は、凹部170を前方弾性変形部141に沿って移動させるように差し込む。ここで、ロック部材117の前端爪部145の左右の幅は、凹部170の左右の幅よりも大きい。
このため、前端爪部145は、凹部170に係合することなく、凹部170の下をすべりながら、あるいは凹部170に近接した状態で相対移動する。そして、連結部169のフランジ169b3が図13、図14に示す間隙S1,S2に挿入されるとともに、ロック部材117の前端爪部145が嵌合凹部133aに対応する位置まで挿入される。その結果、前端爪部145が嵌合凹部133aに係合して組み付けが完了する。このように、操作ハンドル133は、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませた状態で解除レバー131内に挿入するだけでよく、操作ハンドル133の組み付け作業性も向上する。
フランジ169b3を間隙S1,S2に挿入する際には、挿入方向先端(後方端部)が図13に示す傾斜ガイド面147k1に当接してガイドされることで、後方側の間隙S2への挿入が容易となる。このとき、後方下側ガイド突起147kの前部上端面147k3が、前方下側ガイド突起147iの上端面よりも下方に位置していることで、フランジ169b3の挿入方向先端(後方端部)は、後方下側ガイド突起147kの前端に干渉するのが抑制されて傾斜ガイド面147k1により確実に当接する。
間隙S2が間隙S1よりも全体として上方に位置していることで、操作ハンドル133の連結部169は、前方弾性変形部141により上方へ付勢された状態で、解除レバー131の軸線方向に対してほぼ平行となる。このとき、フランジ169b3の上面が、前方上側ガイド突起147gの下面に当接して、前方下側ガイド突起147iとの間に隙間を形成する。一方、フランジ169b3の後端側の下面は、後方下側ガイド突起147kの上端面147k2に当接して、後方上側ガイド突起147jとの間に隙間を形成する。
解除レバー131は、左右の側壁147が、アッパレール105の左右のアッパ側壁105bに沿って配置され、解除押圧部153と凹所147a(揺動支点部151)と作動部159における前方上側ガイド突起147gとが、前後方向に沿ってほぼ一直線上に配置される。このため、解除レバー131の上下方向の高さを小さくでき、アッパレール105内の狭いスペースに効率よく配置することができ、装置全体の小型化を達成できる。
本実施形態のロック部材117は、揺動支点部151を備えてアッパレール105に固定される固定部119と、固定部119よりも後方に位置してロック歯125bをロック方向に付勢する後方弾性変形部123と、固定部119よりも前方に位置して解除レバー131及び操作ハンドル133を上方に付勢し、後方弾性変形部123よりも付勢力が弱く設定された前方弾性変形部141と、をそれぞれ一体に備える板ばねで構成されている。
このように、本実施形態は、ロック部材117をロック方向に付勢する付勢手段(後方弾性変形部123)と、操作ハンドル133を上方に付勢する付勢手段(前方弾性変形部141)とを一体化させたばね部材としている。このため、これら二つの付勢手段を別々に設ける場合に比較して、部品点数を削減することができる。
解除レバー131は、後方側の解除押圧部153がロック部材117の後方弾性変形部123によって上方に付勢されている。一方、図15に示すように、操作ハンドル133のフランジ169b3が、解除レバー131の前方上側ガイド突起147gに下方から接触している。このため、解除レバー131は、前方弾性変形部141により嵌合凹部133aが上方に付勢される操作ハンドル133(フランジ169b3)を介して、前方上側ガイド突起147gが上方に付勢されることになる。
このように、ロック部材117は、上方に付勢する機能を備える後方弾性変形部123が後方側に設けられ、上方に付勢する機能を備える前方弾性変形部141が前方側に設けられている。このとき、解除レバー131は、前後方向ほぼ中央の揺動支点部151を介してロック部材117に揺動自在に支持されている。このため、ロック部材117及び解除レバー131の二部品を、アッパレール105に取り付ける前にユニット化して互いに組み付けることができ、組み付け作業性が向上する。
本実施形態は、操作ハンドル133が、解除レバー131の作動部159に設けた前方上側ガイド突起147g及び後方上側ガイド突起147jと、前方下側ガイド突起147i及び後方下側ガイド突起147kとの間に車両前後方向に沿って挿入されている。操作ハンドル133は、ロック解除操作に伴って揺動支点部151を支点として、解除レバー131とともに一体にロック解除方向に作動させる。このため、操作ハンドル133の操作力が解除レバー131に効率よく伝達され、ロック解除作業を円滑なものとすることができる。
本実施形態の揺動支点部151は、固定部119の左右両側端部から突出する一対の突出部119bと、解除レバー131の側壁の上側端部に設けた一対の凹所147aとが回転可能に係合するとともに、ロック部材117を構成する板ばねの付勢力により、係合が維持されている。この場合、一対の突出部119bと一対の凹所147aとの係合状態を、別途専用の保持具等を用いることなく、ロック部材117によって維持することができ、構造の簡素化を図ることができる。
本実施形態は、ロック部材117の固定部119をアッパレール105の下面に固定する固定具115が設けられている。固定具115は、図10に示すように、ロック部材117を間にしてアッパレール105のアッパ天壁105aと反対側に、側方に向けて突出するフランジ部115cを備えている。ここでの側方とは、図10において解除レバー131の側壁147に向かう方向である。解除レバー131は、フランジ部115cの上部に位置する係止突部147eを備えている。
この場合、操作ハンドル133を上方に向けて操作して、解除レバー131を、操作ハンドル133とともに揺動支点部151を支点として揺動回転させたときや、操作ハンドル133が下方に向けて押されたときには、解除レバー131が下方に向けて力を受けることがある。しかし、このとき解除レバー131の係止突部147eが、固定具115のフランジ部115cに対して上方から当接する。これにより、解除レバー131の揺動支点部151付近の下方への移動が規制され、解除レバー131の凹所147aがロック部材117の突出部119bから外れるのを抑制できる。
また、ロック部材117のロック歯125bが、ロアレール103のロック溝127に入り込まず、互いに隣接するロック溝127相互間の下面に乗り上げた場合が考えられる。この場合、解除レバー131は、ロック部材117の後方弾性変形部123による上方への付勢力を受けなくなる。しかし、このとき解除レバー131は、係止突部147eがフランジ部115cに上方から当接することで、下方への移動が抑制される。
すなわち、固定具115のフランジ部115cは、解除レバー131の下方への移動を規制するようにして保持する保持機能を備えている。このような保持機能は、固定具115にフランジ部115cを設ける一方、解除レバー131に係止突部147eを設けるだけでよく、別途専用の保持機能部品を設ける必要がない。このため、部品点数の増加を抑制できる。
ロック部材117を固定具115によりアッパレール105に固定する際には、固定具115を図2において下方から挿入する。その際、解除レバー131は、凹所147a付近が係止突部147eを介して固定具115のフランジ部115cに仮支持されるため、組み付け作業性が向上する。
本実施形態は、係止突部147eが、解除レバー131の一部である側壁147を切起こして形成されたものである。このため、係止突部147eを容易に形成することができる。
本実施形態のロック部材117の前方弾性変形部141は、解除レバー131の作動部159よりも前方の位置で、操作ハンドル133の連結部169に対し前後方向の相対移動が規制された状態で係合している。操作ハンドル133は、前方弾性変形部141によって上方へ付勢されることで、操作ハンドル133と前方下側ガイド突起147iとの間に隙間が形成されている。
この場合、操作ハンドル133をロック解除方向の上方へ回動操作するときに、操作ハンドル133が前方上側ガイド突起147gに接触した状態から速やかに回動することになるので、ロック解除作業が円滑になされる。その際、操作ハンドル133は、解除レバー131に対して長手方向へ抜けるのが規制されているので、ロック解除時の操作性が向上する。
本実施形態は、ロック部材117の前方弾性変形部141の前端が、解除レバー131の作動部159よりも前方の位置で上方に突出する前端爪部145を備え、操作ハンドル133の連結部169が、下部が開放された嵌合凹部133aを備えている。操作ハンドル133は、嵌合凹部133aに前端爪部145が下方から嵌合した状態で、前方弾性変形部141により上方へ付勢されている。
このため、操作ハンドル133と解除レバー131との連結状態がより確実なものとなり、ロック解除時の操作性が向上する。また、解除レバー131よりも前方側に突出するロック部材117の前端爪部145を含む前方弾性変形部141が、操作ハンドル133の連結部169の下側に配置されることで、前端爪部145を含む前方弾性変形部141の上側が連結部169により覆われている。このため操作者は、下方を見た場合に、前端爪部145を含む前方弾性変形部141が、操作ハンドル133の連結部169に隠された状態となり、安心して操作することができる。
本実施形態は、操作ハンドル133の嵌合凹部133aを形成する側面169b2の下端から左右外側に突出するフランジ169b3を有し、上側ガイド突起147g,147jと下側ガイド突起147i,147kとの上下方向の間隔は、解除レバー131の前側の上下の間隔S1が後側の上下の間隔S2よりも広く形成されている。操作ハンドル133は、上側ガイド突起147g,147jと下側ガイド突起147i,147kとの間にフランジ169b3が挿入されて、解除レバー131に対して上下に揺動可能に支持されるとともに、フランジ169b3が、前方弾性変形部141よって前方上側ガイド突起147gに下方から接した状態となるよう付勢支持されている。
この場合、操作ハンドル133をロック解除方向の上方へ回動操作するときに、操作ハンドル133のフランジ169b3が前方上側ガイド突起147gに接触した状態から速やかに回動することになるので、ロック解除作業が円滑になされる。
前側の間隔S1が後側の間隔S2よりも広いことで、操作ハンドル133の連結部169を上側ガイド突起147g,147jと下側ガイド突起147i,147kとの間に挿入する作業が容易となって組み付け性が向上するとともに、操作ハンドル133を上下に揺動しやすくなって操作性が向上する。また、後側の間隔S2が前側の間隔S1がよりも狭いことで、操作ハンドル133の解除レバー131に対する揺動支点となる連結部169の位置が安定し、操作性が向上する。
本実施形態のロック部材117は、固定部119と前方弾性変形部141とが、側面視で前方傾斜部135によりつながって前後方向に延在している。固定部119と前方弾性変形部141とが図2に示す互いにほぼ平行な状態では、前方弾性変形部141と後方弾性変形部123が弾性変形していて、当該各弾性変形により、前端爪部145と後端部125を上方に付勢している。
このため、ロック部材117は、平板形状の板ばね部材を折り曲げて形成すればよく、構造を簡素化でき、製造が容易である。
本実施形態は、ロック部材117の前方弾性変形部141の前端は、解除レバー131の作動部159よりも前方の位置に、上方に向けて突出する前端爪部145を備え、操作ハンドル133の下部に、前方弾性変形部141の前端爪部145が嵌合する嵌合凹部133aが形成されている。
このように、操作ハンドル133の嵌合凹部133aに前方弾性変形部141の前端爪部145が解除レバー131の作動部159よりも前方の位置で嵌合していることにより、操作ハンドル133の軸方向(前後方向)の移動を規制できる。これにより、操作ハンドル133の軸方向の力が、解除レバー131に直接作用することを抑制して、解除レバー131の軸方向移動を規制できる。また、操作ハンドル133は、前方弾性変形部141により上方への付勢力を受けることで、解除レバー131の前方上側ガイド突起147gを支点として連結部169の先端が下方に付勢される。このとき、解除レバー131は、前方上側ガイド突起147gが操作ハンドル133のフランジ169b3により上方に付勢されている。このため、解除レバー131は、揺動支点部151における凹所147aと突出部119bが係合した状態に保持されるとともに、操作ハンドル133の連結部169の先端が後方下側ガイド突起147kに押し付けられた状態が維持される。
また、ロック部材117の前方弾性変形部141が操作ハンドル133の凹部170と平行に延在していて、操作ハンドル133を上方に操作するときには、操作ハンドル133を上方に付勢している前方弾性変形部141が操作ハンドル133とともに移動する。この場合、前端爪部145及び前方弾性変形部141が、操作ハンドル133に対して上下方向に重なる位置にあり、左右方向の外側に突出していないため、安全性が高い。
本実施形態は、ロック部材117の前方弾性変形部141の前端爪部145は、アッパレール105の前端よりも前方に位置している。このため、操作ハンドル133を組み付けるときには、前方に突出した前方弾性変形部141を容易に下方に下げることができ、この状態で操作ハンドル133を解除レバー131内に容易に挿入することができる。
本実施形態は、操作ハンドル133が、前方の把持部168が下方に向けて荷重を受けたときに、前方弾性変形部141を撓ませつつ前方下側ガイド突起147iを支点として図2中で反時計回り方向に揺動する。このとき、連結部169の後端のフランジ169b3が、後方下側ガイド突起147kから離れるように上方に移動する。
これにより、操作ハンドル133は、フランジ169b3が後方上側ガイド突起147jに下方から当接することになり、操作ハンドル133の必要以上の揺動を抑制できる。このような操作ハンドル133の必要以上の揺動抑制効果は、アッパレール105がロアレール103に対して前方に突出した状態で有効である。
本実施形態の揺動支点部151は、板ばねで構成されているロック部材117のほぼ厚さの中に設定でき、揺動支点構造をよりコンパクトにできる。
解除レバー131が衝撃を受けて後方に向けて移動する際に、凹所147aが突出部119bから外れる。この際、解除レバー131は、図10に示す隙間Tだけ下方へ移動しつつ、凹所147aと突出部119bがわずかに塑性変形するだけなので、解除レバー131をロック解除方向へ回転させようとする力は極めて小さい。このため、凹所147aが突出部119bから外れたときに、解除レバー131がロック部材117を下方に押すことを抑制でき、ロック解除をより確実に抑制できる。
凹所147aが突出部119bから外れる際の荷重設定は、凹所147aまたは突出部119bの形状を変更することで容易にできる。例えば、突出部119bの下部を、凹所147aの曲面形状に合わせて下方に凸となる曲面形状としてもよい。凹所147aは、底部を平面形状とし、平面形状の底部の前後に傾斜面を設ける形状としてもよい。
なお、凹所147aが突出部119bから外れる際には、解除レバー131が下方に移動して、係止突部147eが固定具115のフランジ部115cに当接する。しかし、このときの解除レバー131が後方に向けて受ける荷重は極めて大きい。このため、例えば係止突部147eが変形することによって、凹所147aが突出部119bから外れることになる。
[第2の実施形態]
図19は、第2の実施形態に係わるシートスライド装置の図2に対応する側面断面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態に対し、解除レバー131の一部及び操作ハンドル133の一部が異なり、ロアレール103及びアッパレール105については第1の実施形態と同等である。
第2の実施形態のロック部材117は、第1の実施形態に対し、基本的な形状はほぼ同等であるが、図19及び図21Aに示すように、前方弾性変形部141の前端爪部145側に傾斜部141aが形成されている。傾斜部141aの前方傾斜部135側は平面部141bとなっている。傾斜部141aは、前端爪部145側が平面部141b側よりも上方位置となるよう傾斜している。
次に、解除レバー131Aについて説明する。図24~図27に、第2の実施形態の解除レバー131Aを示す。解除レバー131Aは、第1の実施形態の解除レバー131に対し、作動部159を備える前方側の形状が異なる。
作動部159の前部上壁157は、後方向けて円弧形状に突出する円弧突出部157aが形成されている。円弧突出部157aによって、前部上壁157は、第1の実施形態よりも平面視での面積が大きくなっている。前部上壁157の中心には、図20Bにも示すように、下方に向けて突出する係合突起157bが形成されている。係合突起17bは、前後方向に長い例えば長円形状としてあり、エンボス加工によって形成することができる。
係合突起157bは、後述する操作ハンドル133Aの上面に形成してある係合孔169cに係合する。操作ハンドル133Aが、ロック部材117の前方弾性変形部141によって上方に付勢されることで、係合孔169cが係合突起157bに係合する。すなわち、解除レバー131Aの作動部159及び、操作ハンドル133Aの曲面凹部169eに対応する位置の連結部169には、操作ハンドル133Aが前方弾性変形部141によって上方に付勢されたときに、互いに係合する係合突起157bと係合孔169cとからなる係合部が設けられている。
作動部159の後方の両側壁147の上部には、互いに対向する側に向けて突出する一対の突出形状部147mが形成されている。一対の突出形状部147mは、第1の実施形態における後方上側ガイド突起147jと同様に、側壁147の上端を長さ方向に沿ってブリッジ状に突出させたものであり、前後方向に長く形成されている。一対の突出形状部147m相互の間隔は、一対の後方上側ガイド突起147j相互の間隔よりも狭くなっている。一対の突出形状部147mの下方に操作ハンドル133Aの連結部169の先端側が配置される。
一対の突出形状部147mの下端部には、係止突起としての係止爪147m1が形成されている。係止爪147m1は、突出形状部147mの前後方向の略中央位置において、突出形状部147mの下端面から下方に向けて突出している。一方、図21Aに示すように、操作ハンドル133Aの先端側の上面には、略V字形状の係止溝169dが形成されている。
係止溝169dは、操作ハンドル133Aが、ロック解除方向とは逆の下方に押されるに伴って連結部169の先端側が上方に変位したときに、係止爪147m1に係止する。すなわち、解除レバー131Aの突出形状部147m及び、操作ハンドル133Aの断面略M字に形成された部位には、操作ハンドル133Aが下方に押されるに伴って連結部169の先端側が上方に変位したときに、互いに係止する係止爪147m1と係止溝169dとからなる係止部が設けられている。
作動部159側の端部における左右の側壁147は、下端縁から互いに接近する方向に向けて屈曲する下部フランジ147nが形成されている。図25に示すように、一対の下部フランジ147nの互いに接近する方向への突出量は、一対の突出形状部147mの互いに接近する方向への突出量と略同等である。
下部フランジ147nは、解除レバー131Aの前端部から突出形状部147mを超えた後方側までの領域に形成されている。下部フランジ147nの後端部には、上方に向けて屈曲するストッパ部147pが形成されている。ストッパ部147pは、突出形状部147mの後端部付近に位置する。ストッパ部147pの前方側の下部フランジ147nには、側壁147に向けて凹む切欠凹部147qが形成されている。
ストッパ部147pは、図27に示すように、上端が下端よりも左右方向の中心側に位置するように傾斜している。ストッパ部147pは、操作ハンドル133Aの後方側の先端に対向しており、操作ハンドル133Aが解除レバー131Aに対して後方に移動したときに、操作ハンドル133Aの後方側の先端が当接する。ストッパ部147pは、第1の実施形態における凸部147cに代わるものである。
図26に示すように、切欠凹部147qを間にしてストッパ部147pと反対側の下部フランジ147nには、当接部としての円弧突起147rが形成されている。円弧突起147rは、上面が前後方向に沿って円弧形状となるよう上方に向けて突出している。図21Aに示すように、円弧突起147rには、操作ハンドル133Aの連結部169側の下面が上方から当接する。円弧突起147rは、下部フランジ147nの少なくとも連結部169が当接する位置にあればよいが、下部フランジ147nの左右方向の全域にわたり形成してもよい。
次に、操作ハンドル133Aについて説明する。図28~図30Bに、第2の実施形態の操作ハンドル133Aを示す。操作ハンドル133Aは、第1の実施形態の操作ハンドル133に対し、連結部169周辺の形状が異なる。
連結部169は、第1の実施形態と同様に、円筒部材を上下から押し潰した形状としている。連結部169の押し潰した形状は、アーム部167側の前部169fと、前部169fを間にしてアーム部167と反対側の先端側(後方側)の後部169rとで異なる。
前部169fは、図30Aに示すように、下面が上方に向けて曲面形状に凹む曲面凹部169eを備えている。曲面凹部169eの左右両端は、湾曲している屈曲部169jを介して側壁部169kの下端につながっている。側壁部169kの上端は、上面の円弧形状部169sにつながっている。後部169rに近接する位置の円弧形状部169sの左右方向中央に、前述した係合孔169cが形成されている。後部169rは、図30Bに示すように、断面形状が略M字となっている。M字部分の加工は、例えば連結部169の全体を前部169fのように曲面凹部169eを加工した後に行う。
図28に示すように、前部169fと後部169rとは、下面が略同一面であり、上面については、後部169rが前部169fよりも上下方向で低い位置となっている。前部169f及び後部169rの上面に関し、前部169fと後部169rとの間は傾斜部169gとなって傾斜している。図29に示すように、前部169f及び後部169rの左右方向の幅は略同等である。
後部169rの略M字形状とした部位は、図30Bに示すように、左右両側位置で上下方向に延びる一対の縦壁部169r1と、一対の縦壁部169r1の上端から互いに接近する方向に延びる水平壁部169r2と、水平壁部169r2の縦壁部169r1と反対側の端部から斜め下方に互いに接近する方向に延びる傾斜壁部169r3と、を備えている。
左右一対の傾斜壁部169r3は、下端の接続部169r4において互いにつながっている。接続部169r4の下端は、縦壁部169r1の下端よりも上下方向で上方に位置している。なお、ここでの縦壁部169r1、水平壁部169r2、傾斜壁部169r3及び接続部169r4は、それぞれ円筒部材を上下に潰した状態の外側部分(上側部分)及び内側部分(下側部分)の両方を含むものとする。外側部分(上側部分)と内側部分(下側部分)とは互いに密着しておらず、相互間に隙間が形成されている。
図21Aに示すように、前部169fの前端付近の下部には、ロック部材117の前端爪部145が入り込む貫通孔169hが形成されている。前端爪部145が貫通孔169hに入り込んだ状態で、ロック部材117が前方弾性変形部141によって操作ハンドル133Aを上方に向けて押し付ける。貫通孔169hの前端部には内部に向けて折り曲げられた折曲片169iが形成されている。折曲片169iと前端爪部145とは、前後方向で互いに対向している。
この状態で、操作ハンドル133Aは、解除レバー131Aの係合突起157bに係合孔169cが係合しながら、前部169fの上面が前部上壁157(作動部159)の下面に下方から押し付けられる。一方、後部169rの略M字形状部の側壁部169r1の下端部は、円弧突起147rに上方から押し付けられて当接する。このとき、略M字形状部の左右の水平壁部169r2の上方に、解除レバー131Aの一対の突出形状部147mが位置する。
図23に示すように、解除レバー131Aの係合突起157bに係合孔169cが係合した状態で、前部169fの左右の側壁部169kは、解除レバー131Aの左右の側壁147に近接している。このとき、前部169fの下端(屈曲部169jの下端)は、解除レバー131Aの下部フランジ147nに対し、隙間Sを形成して離間している。
次に、上記のように構成されたシートスライド装置101Aの動作を説明する。
図19は、図22に示すロック部材117のロック歯125bが、ロアレール103のロック溝127に係合してロックされたロック保持状態である。この状態から、乗員が操作ハンドル133Aを上方に向けて操作すると、操作ハンドル133Aは、連結部169の後部169rが円弧突起147rを下方に向けて押し付ける一方、前部169fが作動部159の下面を上方に向けて押し付ける。このとき、操作ハンドル133Aの上方に向けての操作力が、解除レバー131Aに作動部159を介して伝達される。
これにより操作ハンドル133Aは、第1の実施形態と同様に、解除レバー131Aとともに、揺動支点部151を中心として図19中で時計回り方向に一体的に揺動回転する。このとき、解除レバー131Aは、解除押圧部153の湾曲凸部153aが、ロック部材117の後端部125を下方に押し下げ、ロックが解除される。
ロックが解除された状態でシートの前後位置を決定した後、乗員が操作ハンドル133Aから手を離すと、ロック部材117の後方弾性変形部123が解除押圧部153を上方に押し付け、解除レバー131を揺動回転させて図19のロック保持状態に戻る。このとき、解除レバー131Aは、操作ハンドル133Aとともに、揺動支点部151を中心として図19中で反時計回り方向に揺動回転する。
図19の状態で、例えば車両が後方から衝突され、乗員の踵が操作ハンドル133Aに後方に向けて衝突した場合を想定する。この場合、操作ハンドル133Aが受ける荷重で、前端爪部145が貫通孔169hから外れることがある。この場合、操作ハンドル133Aが後方に移動することによって、後部169rが、解除レバー131Aのストッパ部147pに当接し、操作ハンドル133Aの解除レバー131Aに対する後方への移動を規制する。
解除レバー131Aは、ストッパ部147pが操作ハンドル133Aから後方に向けて荷重を受けることで、揺動支点部151における凹所147aがロック部材117の突出部117bから外れ、操作ハンドル133Aとともに後方に移動する。これにより、第1の実施形態と同様に、乗員の踵が操作ハンドル133Aに衝突したときの衝撃が緩和される。
第2の実施形態においても、ロック部材117と解除レバー131Aとは、これらをアッパレール105に組み付ける前に、第1の実施形態と同様にして互いに組み付けることができる。このため、組み付け作業性が向上する。
操作ハンドル133Aは、第1の実施形態と同様に、ロック部材117及び解除レバー131Aをアッパレール105に組み付けた状態で、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませつつ、連結部169を解除レバー131Aの前端開口から挿入する。このとき、ロック部材117の前端爪部145は、略M字形状部位の接続部169r4の下端及び、曲面凹部169eの内面に対してすべりながら、あるいは近接した状態で相対移動する。
これにより、連結部169の後部169r(略M字形状部位)は、突出形状部147mと下部フランジ147nとの間に挿入され、ロック部材117の前端爪部145は、貫通孔169hに入り込む。その結果、図19及び図21Aに示すような組み付けが完了した状態となる。このように、操作ハンドル133Aは、第1の実施形態と同様に、ロック部材117の前方弾性変形部141を下方に撓ませた状態で解除レバー131A内に挿入するだけでよく、操作ハンドル133Aの組み付け作業性が向上する。
このとき、図21Aに示すように、係合突起157bと係合孔169cとが係合し、係止爪147m1と係止溝169dとが離間した状態となる。後部169rの後方側の先端とストッパ部147pとの間には隙間が形成される。
操作ハンドル133Aを解除レバー131A内に挿入する際には、後部169rに続いて前部169fの前後方向の略半分程度が挿入される。その際、図23に示すように、解除レバー131Aの下部フランジ147nと、操作ハンドル133Aの連結部169(前部169f)との間には、隙間Sが形成されている。このため、連結部169を解除レバー131A内に挿入する作業が容易になる。
解除レバー131Aの前端における作動部159の下方には、下部フランジ147nが位置している。この状態で、操作ハンドル133Aは、把持部168周辺が下方に押されたときに、前方弾性変形部141を弾性変形させながら、下部フランジ147nの前端部を支点として図19及び図21A中で反時計回り方向に揺動し図21Bの状態となる。操作ハンドル133Aの反時計回り方向の揺動は、図23に示すように、解除レバー131Aの下部フランジ147nと操作ハンドル133Aとの間に隙間Sが形成されていることで円滑になされる。
このとき、図21Bに示すように、係合突起157bと係合孔169cとの係合が外れ、連結部169の後部169rが上方に変位する。後部169rの上方への変位により、係止爪147m1と係止溝169dとが係止する。係止爪147m1は、係止溝169dに入り込むことで、操作ハンドル133Aの解除レバー131Aからの前方への抜けを抑制するように形成されている。
すなわち、第2の実施形態は、解除レバー131Aが、一対の突出形状部147mの下部に下方に突出する係止爪147m1を備えている。操作ハンドル133Aは、下方に押されるに伴って連結部169の先端側が上方に変位したときに、係止爪147m1に係止する係止溝169dが、断面略M字に形成された部位の上面に設けられている。
このため、操作ハンドル133Aは、下方への負荷を受けた場合に、解除レバー131Aからの前方への抜けを抑制でき、信頼性が向上する。操作ハンドル133Aの抜けを抑制することで、ロック部材117に対し前後方向へ負荷が作用することも抑制できる。また、略M字形状の後部169rの上面が、突出形状部147mの下端面に当接することで、操作ハンドル133Aの把持部168が必要以上に下方へ移動するのを規制できる。
第2の実施形態の解除レバー131Aは、作動部159が下方に向けて突出する係合突起157bを備えている。操作ハンドル133Aは、ロック部材117の前方弾性変形部141によって上方に付勢されることで、係合突起157bに係合する係合孔169cが、曲面凹部169eに対応する位置の連結部169の上面に設けられている。
このため、例えば操作ハンドル133Aを操作するときに、操作ハンドル133Aに対し前後方向へ作用する荷重が、係合突起157bと係合孔169cとの係合部を介して解除レバー131Aに伝達される。この場合、操作ハンドル133Aの荷重がロック部材117に作用するのを抑制でき、ロック部材117の耐久性が向上する。ロック部材117の耐久性向上により、ロック保持状態がより安定化し、ロック解除操作もより安定化するなど、信頼性が向上する。
第2の実施形態の操作ハンドル133Aの連結部169は、下面が上方に向けて曲面形状に凹む曲面凹部169eを備え、曲面凹部169eよりもさらに後方側の連結部169は、上端部が平面となる断面略M字に形成されている。このため、操作ハンドル133Aに対する操作力を解除レバー131Aに伝達する連結部169は、円筒形状のアーム部167や把持部168に比較して剛性が高まり、耐久性が向上する。
後部169rを略M字に形成するべく上下方向に例えばプレス加工することで、解除レバー131Aの突出形状部147m(係止爪147m1)と円弧突起147rとの間に挿入する必要のある後部169rの製造を精度よく行える。
第2の実施形態の解除レバー131Aは、作動部159の下方に位置して操作ハンドル133Aが下方に押されたときに接触し、左右の側壁147の下端から互いに接近する方向に向けて屈曲する下部フランジ147nと、作動部159よりも後方の下部に設けられ、連結部169の断面略M字に形成された部位の下部が、操作ハンドル133Aを前方弾性変形部141により上方に付勢するに伴い下方に向けて当接する円弧突起147rと、左右の側壁147から互いに接近する方向に突出し、断面略M字に形成された部位が円弧突起147rとの間に配置される一対の突出形状部147mと、断面略M字に形成された部位の先端に対向し、操作ハンドル133Aが解除レバー131Aに対して後方に移動したときに接触するスットッパ部147pと、を備えている。
この場合、操作ハンドル133Aをロック解除方向に操作するときに、連結部169の後部169rが円弧突起147rを下方に押し付けながら、前部169fが作動部159を上方に向けて押し付けることで、ロック解除を容易に行うことができる。一方、操作ハンドル133Aがロック解除方向とは逆の下方に押されたときには、操作ハンドル133Aは下部フランジ147nを支点として揺動し、後部169rが突出形状部147mの下端部に当接して必要以上の揺動を抑制する。操作ハンドル133Aが後方に向けて押され、前端爪部145が貫通孔169hから外れたときには、後部169rがストッパ部147pに当接する。このため、操作ハンドル133Aの解除レバー131Aに対する後方への移動を規制することができる。
第2の実施形態は、円弧突起147r及びスットッパ部147pが下部フランジ147nに一体に設けられている。このため、解除レバー131Aは構造が簡素化され、製造も容易となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
例えば、第1の実施形態の前方上側ガイド突起147g、後方上側ガイド突起147j、前方下側ガイド突起147i、後方下側ガイド突起147kは、解除レバー131の左右の側壁147から折り曲げあるいは切起こしによって形成しているが、側壁147とは別部材として側壁147に溶接等によって取り付ける構成でもよい。その際、前方上側ガイド突起147gと後方上側ガイド突起147jとを一つの部材で構成し、前方下側ガイド突起147iと後方下側ガイド突起147kとを一つの部材で構成してもよい。
第2の実施形態の円弧突起147r及びストッパ部147pは、下部フランジ147nに一体化して設けているが、下部フランジ147nとは別に、左右の側壁147にそれぞれ単独で設けるようにしてもよい。
第2の実施形態では、解除レバー131Aに係合突起157bを、操作ハンドル133Aに係合孔169cをそれぞれ設けているが、これとは逆に、解除レバー131Aに係合孔を、操作ハンドル133Aに係合突起をそれぞれ設けてもよい。また、第2の実施形態では、解除レバー131Aに係止爪147m1を、操作ハンドル133Aに係止溝169dをそれぞれ設けているが、これとは逆に、解除レバー131Aに係止溝を、操作ハンドル133Aに係止爪をそれぞれ設けてもよい。