本発明は、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む、多重特異性Fab融合タンパク質(MSFP)を使用してがんを処置する方法を提供する。一部の実施形態では、MSFPは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドのN末端各々が、抗EpCAM scFvに融合している抗CD3 Fab断片を含む。乏しい製造可能性、凝集、短い半減期、重度の有害効果および長い注入時間に苦しむ本分野における現在の抗がん二重特異性抗体とは異なり、本明細書に記載の多重特異性Fab融合タンパク質は、改善された安定性および安全性プロファイルを有し、このことは、より低い投与量および減少した投与頻度を使用し、望ましくない有害効果、例えばサイトカインストームの誘導を避ける処置方法を可能にした。投与頻度の減少および注入時間の短縮は、患者の生活の質を改善する助けとなり、患者の処置を促進する。例えば、驚くべきことに、本明細書に記載のMSFPは、約0.01μg/kg~約250μg/kg、例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kgの用量で投与することができることが分かった。新規の抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片がさらに提供される。
本明細書に記載のMSFPは、本分野で公知の他の多重特異性Fab融合タンパク質と比較して以下の利点を有する。MSFPは、より高い安定性およびがん細胞を殺滅することにおける強化された効力を有する。本MSFPの延長された半減期は、より低い投与頻度およびより短い注入時間を可能にし、患者にとってより便利である。霊長類、例えばカニクイザルとの本MSFPの交差反応性は、毒性学研究を促進する。本MSFPは、カニクイザルにおけるより少ない有害効果(減少した神経効果を含む)、優れた安全性および耐容性を有する。
したがって、一態様では、本発明は、個体においてがんを処置するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を前記個体に投与するステップを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、(1)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(2)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および(3)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(2)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および(3)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
また、本明細書に記載の方法に有用なキットおよび製造物品が提供される。
I.定義
本発明の実施は、反対の事項が具体的に示されない限り、本分野の技術内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来法を用い、その多くを、例示の目的のために以下に説明する。そのような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.(2009);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;SambrookおよびRussell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版、2001);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis (N.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins編、1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins編、1984);Animal Cell Culture(R.Freshney編、1986);Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)および他の同様の参考文献を参照のこと。
本明細書で使用されるとき、「処置」という用語は、臨床的病理学の過程中に、処置される個体または細胞の自然な過程を変更するために設計される臨床的介入を指す。望ましい処置の効果は、疾患進行速度の減少、疾患状態の好転(ameliorating)または緩和および寛解または予後の改善を含む。例えば、がん性細胞の増殖の低減(または破壊)、疾患から生じる症状の減少、疾患を患う人の生活の質の増大、疾患を処置するために必要とされる他の薬物治療の用量の減少および/または個体の生存の延長を含むが、これらに限定されない、がんと関連付けられる1つまたは複数の症状が軽減または排除された場合、個体はうまく「処置される」。
本明細書で使用されるとき、「有効量」は、被験体において疾患または障害を処置するために有効な薬剤または薬物の量を指す。がんの場合、有効量の薬剤は、がん細胞の数を低減し、腫瘍サイズを低減し、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度まで遅延させ、好ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度まで遅延させ、好ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度まで阻害し、かつ/またはがんと関連付けられる症状の1つもしくは複数をある程度まで和らげ得る。臨床的状況で理解されるように、有効量の薬物、化合物または医薬組成物は、別の薬物、化合物または医薬組成物と共に達成されてもよく、または達成されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つまたは複数の治療剤を投与する状況において考慮してもよく、1つまたは複数の他の薬剤と共に望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、単一の薬剤は、有効量で与えられると考えてもよい。
本明細書で使用されるとき、「個体」または「被験体」は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。一部の実施形態では、個体はヒトである。
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的にモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および所望の生物学的活性または機能を示す限り抗体断片を包含する。本明細書で使用されるとき、「免疫グロブリン」(Ig)および「抗体」という用語は、相互変換可能に使用される。
「ネイティブ抗体」、「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で相互変換可能に使用される。用語は特に、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。ネイティブ抗体は通常、2本の同一な軽(L)鎖および2本の同一な重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合的ジスルフィド結合により重鎖に連結され、一方でジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。また、各重鎖および軽鎖は、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)および他方の末端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間で界面を形成すると考えられている。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する免疫グロブリンの他の部分、可変ドメインと比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメイン(集合的に、CH)ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは一般的に、抗体の最も可変性の部分であり、抗原結合部位を含有する。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が抗体間で配列において大規模に異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体を通して均一に分布していない。それは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR、CDRとも称される)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高く保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブ重鎖および軽鎖の可変ドメイン各々は、4つのFR領域を含み、主として、3つのHVRにより接続しているベータシート配置を取り、HVRはベータシート構造を接続する、一部の場合ベータシート構造の部分を形成する、ループを形成する。各鎖のHVRは、FR領域により近接して一緒に保持され、他の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991年)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接的には関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性における抗体の参加を示す。
任意の哺乳動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に別個の種類の1つに割り当てることができる。
IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、本明細書で使用されるとき、それらの定常領域の化学的特徴および抗原性特徴により定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
抗体(免疫グロブリン)は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、様々なクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γおよびμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置は周知であり、一般的に例えば、Abbasら、Cellular and Mol. Immunology、第4版(W.B. Saunders, Co.、2000年)に記載されている。抗体は、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの抗体の共有結合的または非共有結合的会合により形成される、より大きな融合分子の部分であり得る。
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合性領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合性断片である。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化は、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一な抗原結合性断片と、残りの「Fc」断片とを産生し、「Fc」断片の名称は、それが容易に結晶化できることを反映する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、まだ抗原を架橋結合できるF(ab’)2断片をもたらす。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小限の抗体断片である。一実施形態では、2本鎖Fv種は、緊密な非共有結合的会合にある1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとのダイマーからなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が2本鎖Fv種のものと類似する「ダイマー」構造で会合し得るように、可撓性ペプチドリンカーにより共有結合的に連結され得る。各可変ドメインの3つのHVRがVH-VLダイマーの表面上の抗原結合部位を画定するように相互作用するのは、この配置である。集合して、6つのHVRは、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、全結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、また軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する、2本のポリペプチド鎖を有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端の数個の残基の付加によりFab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書での名称である。F(ab’)2抗体断片は元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。また、抗体断片の他の化学的カップリングが公知である。
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概略については、例えばPluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies.、Springer Berlin Heidelberg、1994年、269~315頁を参照のこと。
「Fc」断片は、ジスルフィドにより一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、またこの領域は、ある特定の種類の細胞で見られるFc受容体(FcR)により認識される部分である。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指し、例えば、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある変異、例えば天然に存在する変異を除いては同一である。したがって、修飾語「モノクローナルの」は、別個の抗体の混合物ではない、抗体の性質を示す。一部の実施形態では、そのようなモノクローナル抗体は典型的に、標的を結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合性ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合性ポリペプチド配列の選択を含むプロセスにより得られた。例えば、選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローンまたは組換えDNAクローンのプールからの独特のクローンの選択であり得る。選択された標的結合性配列は、例えば標的に対する親和性を改善するために、標的結合性配列をヒト化するために、細胞培養物におけるその産生を改善するために、in vivoでのその免疫原性を低減させるために、多重特異性抗体を創出するためになど、さらに変更することができること、およびまた、変更された標的結合性配列を含む抗体は、本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。典型的に様々な決定基(エピトープ)に指向された様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向されている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的に他の免疫グロブリンにより汚染されていない点で有利である。
修飾語「モノクローナルの」は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の性質を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein, Nature 256:495-97(1975);Hongoら、Hybridoma 14(3):253-260(1995)、Harlowら、Antibody: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibody and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature 352:624-628(1991);Marksら、J. Mol. Biol. 222:581-597(1992);Sidhuら、J. Mol. Biol. 338(2):299-310(2004);Leeら、J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093(2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472(2004);およびLeeら、J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照のこと)、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の部分または全てを有する動物におけるヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255-258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol. 7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号;Marksら、Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonbergら、Nature 368:856-859(1994);Morrison, Nature 368:812-813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol. 14:845-851(1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14:826(1996);およびLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93(1995)を参照のこと)を含む様々な技術により作製することができる。
本明細書のモノクローナル抗体は、具体的に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、または相同であり、一方で鎖(複数可)の残りの部分が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、または相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻:6851~6855頁(1984年)を参照のこと)。キメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば目的の抗原でマカクザルを免疫化することにより、産生された抗体に由来する、PRIMATTZED(登録商標)抗体を含む。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類のHVRからの残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために行われ得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。また、ヒト化抗体は任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature 321:522-525(1986);Riechmannら、Nature 332:323-329(1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。また、例えば、VaswaniおよびHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115(1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038(1995);HurleおよびGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生され、かつ/または本明細書で開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された、抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は具体的に、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、本分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol. 227巻:381頁(1991年);Marksら、J. Mol. Biol. 222巻:581頁(1991年)。また、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、77巻(1985年);Boernerら、J. Immunol. 147巻(1号):86~95頁(1991年)に記載されている方法は、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。また、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr. Opin. Pharmacol. 5巻:368~74頁(2001年)を参照のこと。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変したが、それらの内因性遺伝子座は無効にしたトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウス(xenomouse)に抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術について米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照のこと)。また、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により発生するヒト抗体についてLiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103巻:3557~3562頁(2006年)を参照のこと。
「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、本明細書で使用されるとき、配列において超可変性であり、かつ/または構造的に規定されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6つのHVR:VHの3つ(H1、H2、H3)およびVLの3つ(L1、L2、L3)を含む。ネイティブ抗体では、H3およびL3は、6つのHVRの中で最大の多様性を示し、H3は特に、抗体に微細な特異性を与えることにおいて独特の役割を果たすと考えられている。例えばXuら、Immunity 13巻:37~45頁(2000年);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248巻:1~25頁(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003年)を参照のこと。実際に、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科(camelid)抗体は、軽鎖の非存在下で機能的および安定である。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363巻:446~448頁(1993年);Sheriffら、Nature Struct. Biol. 3巻:733~736頁(1996年)を参照のこと。また、HVRは、「CDR」または「相補性決定領域」とも称される。
免疫グロブリン可変領域の構造および位置は、現在インターネット上で入手可能な(immuno.bme.nwu.edu)、Kabat, E. A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest. 第4版、米国保健福祉省、1987年およびその更新版を参照して決定することができる。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
本明細書で使用されるとき、「結合する」、「~に特異的に結合する」または「~に特異的」であるという用語は、生物学的分子を含む不均質な分子集団の存在下で標的の存在を決定する、測定可能かつ再現性のある相互作用、例えば標的と抗体との間の結合を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、または特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するより大きな親和性、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間でこの標的に結合する抗体である。一実施形態では、非関連標的への抗体の結合の程度は、例えば放射免疫測定法(RIA)により測定される標的への抗体の結合の約10%未満である。一部の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態では、抗体は、異なる種からのタンパク質の中で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的な結合を含み得るが、これを必要としない。
本明細書で使用されるとき、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列についての「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」および「相同性」は、最大パーセント配列同一性を達成するように配列を整列し、必要に応じてギャップを導入し、配列同一性の部分として任意の保存的置換を考慮しなかった後に、特定のペプチドまたはポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、例えば、公に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、本分野の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸の、別のアミノ酸での置き換えを含み得るが、これに限定されない。例示的な置換を、表Aに示す。アミノ酸置換を目的の抗体に導入してもよく、生成物を所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングしてもよい。
アミノ酸は、共通の側鎖特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheに従ってグループ分けすることができる。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスで交換することを伴う。
本明細書で使用されるとき、「Fab融合タンパク質」は、Fab断片と比較して異なる特徴を有する1つまたは複数の結合ドメインに共有結合的に連結されたFab断片を有するタンパク質を指す。特徴は、生物学的特徴、例えばin vitroまたはin vivo活性であってもよい。また、特徴は、単純な化学的特性または物理的特性、例えば標的分子への結合、触媒反応などであってもよい。Fab断片および1つまたは複数の結合ドメインは、単一のペプチド結合により直接接続しても、ペプチドリンカーにより接続してもよいが、互いにインフレーム様式である。
「多重特異性」という用語は、抗体(例えばFab融合タンパク質)に関連して使用されるとき、ポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物学的分子上の2つ、3つもしくはそれよりも多い異なるエピトープに特異的に結合することができるか、または2つ、3つもしくはそれよりも多い異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる)抗体(例えばFab融合タンパク質)を指す。
「二重特異性」という用語は、抗体(例えばFab融合タンパク質)に関連して使用されるとき、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができるか、または2つの異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる抗体(例えばFab融合タンパク質)を指す。別に示されない限り、二重特異性抗体により結合される抗原が二重特異性抗体またはFab融合タンパク質の名称で列挙される順序は任意である。すなわち、「抗CD3/EpCAM」、「抗EpCAM/CD3」、「EpCAM×CD3」および「CD3×EpCAM」という用語は、CD3およびEpCAMの両方に特異的に結合する二重特異性抗体(例えば二重特異性Fab融合タンパク質)に言及するために相互変換可能に使用することができる。
「多重特異性Fab融合タンパク質」および「MSFP」という用語は、ポリエピトープ特異性を有するFab融合タンパク質に言及するために本明細書で相互変換可能に使用される。
本明細書で使用されるとき、ポリペプチドの「C末端」は、ポリペプチドの最後のアミノ酸残基を指し、このアミノ酸残基はそのアミン基を、それと隣接したアミノ酸残基のカルボキシル基とペプチド結合を形成するために提供する。ポリペプチドの「N末端」は、本明細書で使用されるとき、ポリペプチドの最初のアミノ酸を指し、このアミノ酸はそのカルボキシル基を、それと隣接したアミノ酸残基のアミン基とペプチド結合を形成するために提供する。
「ベクター」という用語は、本明細書で使用されるとき、それが連結される別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。用語は、自己複製核酸構造としてのベクターおよびベクターが導入された宿主細胞のゲノム内に組み込まれるベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を指向させることができる。そのようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
「細胞」という用語は、初代被験体細胞およびその子孫を含む。
「サイトカインストーム」という用語は、「サイトカインカスケード」または「高サイトカイン血症(hypercytokinemia)」としても公知であり、非常に高レベルの様々なサイトカイン(例えばINF-γ、IL-10、IL-6、CCL2など)を伴う、典型的にサイトカインと免疫細胞との間の正のフィードバックループからなる潜在的に致死性の免疫反応である。
本明細書に記載の本発明の実施形態は、実施形態「からなる」、および/または実施形態「から本質的になる」ことを含むと理解される。
本明細書で「約」の付いた値またはパラメータについての言及は、その値またはパラメータそれ自体に指向された変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
本明細書で使用されるとき、ある値またはパラメータ「でない」ことについての言及は一般的に、値またはパラメータ「以外」を意味し、記載する。例えば、「方法はX型のがんを処置するために使用されない」は、方法がX以外の型のがんを処置するために使用されることを意味する。
本明細書で使用される「約X~Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
本明細書で使用されるとき、および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈が明らかに別に示さない限り、複数の指示物を含む。
II.がんを処置する方法
本出願の一態様は、個体(例えば、ヒト)においてがんを処置するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を個体に投与するステップを含み、結合ドメイン(例えば、scFv)が、Fab断片のN末端に融合しており、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法を提供する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)においてがん細胞を殺傷するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を個体に投与するステップを含み、結合ドメイン(例えば、scFv)が、Fab断片のN末端に融合しており、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、MSFPによって媒介される腫瘍細胞死滅率は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより多くのいずれかである。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)においてがん細胞の増殖を阻害するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を個体に投与するステップを含み、結合ドメイン(例えば、scFv)が、Fab断片のN末端に融合しており、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)において末梢T細胞の再分布を誘導するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を個体に投与するステップを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、MSFPは、CD3およびEpCAMに特異的に結合する二重特異性Fab融合タンパク質である。
一部の実施形態では、MSFPは、2つを超える(例えば3つまたはそれよりも多い)エピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、MSFPは、EpCAMではない細胞表面タンパク質、例えば腫瘍抗原に特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)をさらに含む三重特異性Fab融合タンパク質である。一部の実施形態では、MSFPは、多重特異性(例えば二重特異性)結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、MSFPは、EpCAMに特異的に結合する単一の結合ドメインを含む。一部の実施形態では、結合ドメインは、単一のポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、結合ドメインは、scFvである。一部の実施形態では、単一の結合ドメインは、Fab断片の重鎖ポリペプチドのN末端に融合している。一部の実施形態では、単一の結合ドメインは、Fab断片の軽鎖ポリペプチドのN末端に融合している。
一部の実施形態では、MSFPは、EpCAMに特異的に結合する2つの結合ドメインを含む。一部の実施形態では、2つの結合ドメインは、EpCAMの同じエピトープを標的にする。一部の実施形態では、2つの結合ドメインは、同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、2つの結合ドメインは、異なるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、2つの結合ドメインは、EpCAMの異なるエピトープを標的にする。一部の実施形態では、2つの結合ドメインの各々は、単一のポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、2つの結合ドメインの各々は、scFvである。一部の実施形態では、一方の結合ドメインは、Fab断片の重鎖ポリペプチドのN末端に融合しており、他方の結合ドメインは、Fab断片の軽鎖ポリペプチドのN末端に融合している。
したがって、一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)においてがんを処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvはFab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvはFab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は同じ配列を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)においてがん細胞を殺傷する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvはFab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvはFab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は同じ配列を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)においてがん細胞の増殖を阻害する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvはFab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvはFab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は同じ配列を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)において末梢T細胞の再分布を誘導する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvはFab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvはFab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は同じ配列を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
Fab断片は、本分野で公知の任意の好適な抗CD3抗体に由来してもよい。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、SP34に由来する。一部の実施形態では、Fab断片は、SP34の重鎖可変領域の任意の1つ、2つまたは3つのHVR(またはCDR)、例えば配列番号1~3のアミノ酸配列を含むHVRを含む。一部の実施形態では、Fab断片は、SP34の軽鎖可変領域の任意の1つ、2つまたは3つのHVR(またはCDR)、例えば配列番号4~6のアミノ酸配列を含むHVRを含む。一部の実施形態では、Fab断片は、SP34のVH、例えば配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、Fab断片は、SP34のVL、例えば配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、Fab断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域1(CH1)、例えば配列番号9のアミノ酸配列を含むCH1を含む。一部の実施形態では、Fab断片のCH1およびCLは、1つまたは複数のジスルフィド結合により接続している。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む。
したがって、一部の実施形態では、個体においてがんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメイン(例えば、scFv)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えばヒト)においてがんを処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、Fab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)が、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2の結合ドメイン(例えば、scFv)が、Fab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(本明細書でEpCAM結合ドメインとも称される)は、抗EpCAM抗体の抗原結合性断片である。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、抗EpCAM抗体の単鎖抗原結合性断片である。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、scFvである。一部の実施形態では、scFvは、N-VH-VL-C融合ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、配列番号13~15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHVRの任意の1つ、2つまたは3つを含む、本発明のEpCAM抗体に由来する。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、配列番号16~18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のHVRの任意の1つ、2つまたは3つを含む。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含むscFvである。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
したがって、一部の実施形態では、個体(例えばヒト)においてがんを処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片(例えば、CD3イプシロンのN末端1~27アミノ酸)と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、(3)EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvが、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvが、Fab断片のVLのN末端に融合しており、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体(例えばヒト)においてがんを処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、Fab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、(3)EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvが、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvが、Fab断片のVLのN末端に融合しており、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
EpCAM結合ドメインは、リンカー、例えば可撓性ペプチドリンカー、例えばグリシンおよびセリンを含むペプチドリンカーによりFab断片の重鎖ポリペプチドのN末端および/または軽鎖ポリペプチドのN末端に融合してもよい。一部の実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む。
したがって、一部の実施形態では、個体においてがんを処置する方法であって、個体に、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドおよび配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
本明細書で提供される方法は、補助療法の設定(adjuvant setting)において実行してもよい。一部の実施形態では、方法は、新補助療法の設定(neoadjuvant setting)において実行される、すなわち、方法は、主要な/最終的な療法の前に行ってもよい。一部の実施形態では、方法は、以前に処置された個体を処置するために使用される。本明細書で提供される処置方法のいずれも、以前に処置されていない個体を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、方法は、第1選択療法として使用される。一部の実施形態では、方法は、第2選択療法として使用される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
本明細書に記載の方法は、がん処置の種々の態様のために有用である。一部の実施形態では、個体において細胞増殖(例えば、腫瘍成長)を阻害する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%の(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかを含む)細胞増殖が阻害される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において腫瘍転移を阻害する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%の(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかを含む)転移が阻害される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において既存の腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を低減(例えば、根絶)する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%の(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかを含む)転移が低減される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において既存の腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)の発生または負荷を低下させる方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において腫瘍サイズを減少させる方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、腫瘍サイズは、少なくとも約10%の(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかを含む)減少する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体においてがんの疾患進行までの時間を延長する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間のいずれかだけ疾患進行までの時間を延長する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、がんを有する個体の生存を延長する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18または24か月間のいずれかだけ個体の生存を延長する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、がんを有する個体において1つまたは複数の症状を軽減する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
本明細書に記載の方法は、固形がんおよび液状がんの両方を含む、様々ながんを処置するために好適である。方法は、初期がん、非転移性がん、原発がん、進行がん、局所進行がん、転移性がんまたは寛解中のがんを含む、全てのステージのがんに適用可能である。本明細書に記載の方法は、補助療法の設定または新補助療法の設定において、第1の療法、第2の療法、第3の療法または本分野で公知の他の種類のがん療法、例えば化学療法、手術、放射線、遺伝子療法、免疫療法、骨髄移植、幹細胞移植、標的化療法、凍結療法、超音波療法、光ダイナミック療法、ラジオ波焼灼などとの組合せ療法として使用することができる。一部の実施形態では、がんは、以前の療法について難治性であった。
本発明の方法により処置され得るがんの例として、副腎皮質癌(adenocortical carcinoma)、AIDS関連がん(例えばAIDS関連リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫(例えば小脳および大脳の)、基底細胞癌、胆管がん(例えば肝外の)、膀胱がん、骨がん(骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍(例えば神経膠腫、脳幹神経膠腫、小脳または大脳星状細胞腫(例えば重細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、未分化(悪性)星状細胞腫)、悪性神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫(oligodenglioma)、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫(haemangioblastoma)、髄芽腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、視路および視床下部神経膠腫ならびに神経膠芽腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍(例えば消化管カルチノイド腫瘍)、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、慢性骨髄増殖性障害、子宮内膜がん(例えば子宮がん)、上衣腫、食道がん、ユーイング腫瘍ファミリー、眼がん(例えば眼内黒色腫および網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん(例えば肝癌および肝細胞腫(heptoma))、下咽頭がん、膵島細胞癌(膵内分泌部)、喉頭がん、喉頭がん、白血病、口唇および口腔(oral cavity)がん、口腔(oral)がん、肝臓がん、肺がん(例えば小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌)、リンパ系新生物(例えばリンパ腫)、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性頸部扁平上皮がん、口腔(mouth)がん、多発性内分泌腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、中咽頭がん、卵巣がん(卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍(ovarian low malignant potential tumor))、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、腹膜のがん、咽頭(pharyngeal)がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(小膠細胞腫)、直腸がん、腎がん、腎盂および尿管がん(移行上皮がん)、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん(例えば非黒色腫(例えば扁平上皮癌)、黒色腫およびメルケル細胞癌)、小腸がん、扁平上皮がん、精巣がん、咽頭(throat)がん、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、尿道がん、膣がん、外陰がん、ウィルムス腫瘍および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症と関連付けられる異常血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍と関連付けられる浮腫)ならびにメグズ症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、方法は、がん細胞の表面上にEpCAMを過剰発現するがん、例えばEpCAM陽性固形がんを処置するために好適である。一部の実施形態では、個体のがん細胞は、正常細胞と比較して少なくとも約2、5、10、20、50、100、200、500、1000倍を超えるもののいずれか、またはそれよりも多いEpCAMを発現する。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、癌腫または腺癌である。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
したがって、一部の実施形態では、個体においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)と、(3)EpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvが、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvが、Fab断片のVLのN末端に融合しており、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の結合ドメイン(例えば、scFv)は、同じ配列を有する。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えば、scFv)とを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメイン(例えば、scFv)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体(例えばヒト)においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片(例えば、CD3イプシロンのN末端1~27アミノ酸)、(2)EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、(3)EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvが、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvが、Fab断片のVLのN末端に融合しており、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体(例えばヒト)においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、(1)CD3に特異的に結合するFab断片であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、Fab断片と、(2)EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、(3)EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、第1のscFvが、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvが、Fab断片のVLのN末端に融合しており、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体においてEpCAM陽性固形がん(例えば癌腫または腺癌)を処置する方法であって、個体に、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドおよび配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、EpCAM陽性固形がんは、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される。
一部の実施形態では、個体において小腸がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvとEpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において結腸直腸がん(例えば、結腸直腸腺癌)を処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、結腸直腸がんは、腺癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫(leiomysarcoma)、黒色腫または扁平上皮癌である。
一部の実施形態では、個体において肺がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。NSCLCの例として、大細胞癌、腺癌、神経内分泌肺腫瘍および扁平上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、個体において子宮頸がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。
一部の実施形態では、個体において肝臓がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、肝臓がんは、肝臓細胞癌、肝細胞癌の線維層板型バリアント(fibrolamellar variant)または混合型肝細胞胆管癌である。
一部の実施形態では、個体において胃がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、胃がんは、腺癌、リンパ腫、消化管間質腫瘍(GIST)、カルチノイド腫瘍、扁平上皮癌、小細胞癌または平滑筋肉腫である。
一部の実施形態では、個体において膵臓がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、膵臓がんは、漿液性嚢胞性新生物(serous cystic neoplasm)、粘液性嚢胞性新生物(mucinous cystic neoplasm)、膵管内乳頭状粘液性新生物(intraductal papillary mucinous neoplasm)、膵臓腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、印環細胞癌、未分化癌、巨細胞を伴う未分化癌、固形偽乳頭状新生物(solid pseudopapillary neoplasm)、膨大部がん(ampullary cancer)または膵内分泌腫瘍である。一部の実施形態では、膵臓がんは、膵臓腺癌である。
一部の実施形態では、個体において皮膚がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、皮膚がんは、黒色腫である。一部の実施形態では、黒色腫は、表在拡大型黒色腫、悪性黒子由来黒色腫(lentigo maligna melanoma)、結節性黒色腫、粘膜黒色腫、ポリープ状黒色腫(polypoid melanoma)、線維形成性黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、軟組織黒色腫または末端部黒子黒色腫である。
一部の実施形態では、個体において腎臓がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、がんは、腎細胞癌である。一部の実施形態では、腎細胞癌は、腺癌である。一部の実施形態では、腎細胞癌は、腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌(色素親和性腎細胞癌とも呼ばれる)、嫌色素性腎細胞癌、集合尿細管腎細胞癌(collecting duct renal cell carcinoma)、顆粒状腎細胞癌、混合型顆粒状腎細胞癌、腎血管筋脂肪腫または紡錘腎細胞癌(spindle renal cell carcinoma)である。
一部の実施形態では、個体において膀胱がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、膀胱がんは、低悪性度膀胱がんである。一部の実施形態では、膀胱がんは、高悪性度膀胱がんである。一部の実施形態では、膀胱がんは、筋肉浸潤性(例えばT2、T3またはT4)である。一部の実施形態では、膀胱がんは、非浸潤性(例えばTa、T1 Cis、Taおよび/またはT1を伴うCis)である。一部の実施形態では、膀胱がんは、移行上皮癌または尿路上皮癌(例えば転移性尿路上皮癌)であり、乳頭状腫瘍および扁平癌(flat carcinoma)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、膀胱がんは、扁平上皮癌、非扁平上皮癌、腺癌または小細胞癌である。
一部の実施形態では、個体において甲状腺がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、甲状腺がんは、乳頭状癌、濾胞状癌、ヒュルトレ細胞癌、甲状腺髄様癌、退形成癌、甲状腺リンパ腫、甲状腺肉腫または副甲状腺がんである。
一部の実施形態では、個体において前立腺がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、前立腺がんは、腺癌である。一部の実施形態では、前立腺がんは、肉腫、神経内分泌腫瘍、小細胞がん、腺管がんまたはリンパ腫である。
一部の実施形態では、個体において卵巣がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、サイトカインストームを誘導しない。一部の実施形態では、卵巣がんは、卵巣上皮がんである。
一部の実施形態では、個体において子宮内膜がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、子宮内膜がんは、腺癌、癌肉腫、扁平上皮癌、未分化癌、小細胞癌または移行性癌である。
一部の実施形態では、個体において乳がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、乳がんは、初期乳がん、非転移性乳がん、進行乳がん、IV期乳がん、局所進行乳がん、転移性乳がん、寛解中の乳がん、補助療法の設定における乳がんまたは新補助療法の設定における乳がんである。一部の実施形態では、乳がんは、線維腺腫または管内乳頭腫である。一部の実施形態では、乳がんは、HER2陽性またはHER2陰性である。一部の実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。
一部の実施形態では、個体において胆管がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、胆管がんは、肝内胆管がん、肺門周囲胆管がん(perihilar bile duct cancer)、遠位胆管がんである。一部の実施形態では、胆管がんは、胆管癌、肉腫、リンパ腫または小細胞がんである。
一部の実施形態では、個体において頭頚部がんを処置する方法であって、個体に、CD3に特異的に結合するFab断片とEpCAMに特異的に結合する結合ドメイン(例えばscFv)とを含む有効量の多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質を投与することを含み、結合ドメインが、Fab断片のN末端に融合しており、多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kg(例えば約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kgまたは約2.5μg/kg~約100μg/kg)の用量で投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、以下の生物学的活性:(1)がん細胞を殺滅すること、(2)がん細胞の増殖を阻害することおよび(3)末梢T細胞の再分布を誘導することの1つまたは複数を有する。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、EpCAMに特異的に結合する第1の結合ドメイン(例えば、scFv)とEpCAMに特異的に結合する第2の結合ドメイン(例えば、scFv)とを含み、第1のscFvは、Fab断片のVHのN末端に融合しており、第2のscFvは、Fab断片のVLのN末端に融合している。一部の実施形態では、第1のscFvおよび第2のscFvは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端(例えばN末端の1~27個のアミノ酸)に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、第1のscFvおよび/または第2のscFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、静脈内投与される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、低頻度で投与される。一部の実施形態では、方法は、個体にグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、頭頸部がんは、頭頸部の扁平上皮癌である。一部の実施形態では、頭頸部がんは、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、潜在性原発性の転移性頸部扁平上皮がん(metastatic squamous neck cancer with occult primary)、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔および鼻腔がんまたは唾液腺がんである。
例示的な多重特異性Fab融合タンパク質(MSFP)の投与経路として、経口、静脈内、体腔内(intracavitary)、腫瘍内、動脈内、筋内、皮下、非経口、経粘膜、経皮、眼、局所、腹腔内、頭蓋内、胸膜内および表皮の経路が挙げられるが、これらに限定されず、またはリンパ節、体腔、がん細胞を含有することが知られている器官もしくは組織に送達される。一部の実施形態では、MSFPは、静脈内投与される。一部の実施形態では、MSFPは、注入により投与される。一部の実施形態では、MSFPは、皮下投与される。一部の実施形態では、MSFPは、注射により投与される。
一部の実施形態では、MSFPは、静脈内注射によって投与される。一部の実施形態では、MSFPは、個体に約24時間、20時間、15時間、10時間、8時間、6時間、3時間、2時間、1時間、30分間、またはそれ未満のいずれか以下の期間にわたって注入され得る。一部の実施形態では、MSFPは、約30分間~約1時間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~約10時間、約10時間~約12時間、約12時間~約18時間、約18時間~約24時間、約30分間~約2時間、約2時間~約5時間、約5時間~約10時間、約10時間~約20時間、約30分間~約10時間、または約30分間~約20時間のいずれか1つの期間にわたって個体に注入される。MSFPは、個体に任意の好適な速度で注入され得る。一部の実施形態では、MSFPは、約0.01μg/kg/hr、0.02μg/kg/hr、0.05μg/kg/hr、0.1μg/kg/hr、0.2μg/kg/hr、0.5μg/kg/hr、0.6μg/kg/hr、0.7μg/kg/hr、0.8μg/kg/hr、0.9μg/kg/hr、1μg/kg/hr、1.5μg/kg/hr、2μg/kg/hr、3μg/kg/hr、4μg/kg/hr、5μg/kg/hr、10μg/kg/hr、15μg/kg/hr、20μg/kg/hr、25μg/kg/hr、50μg/kg/hr、75μg/kg/hr、100μg/kg/hrまたはそれより多くのいずれかより大きな速度で注入され得る。
個体に投与されるMSFPの投与レジメンは、特定のMSFP組成物、投与方法ならびに処置されるがんの特定の種類およびステージにより変動し得る。一部の実施形態では、MSFPの有効量は、組成物が個体に投与されたときに、毒性学的効果(すなわち、臨床的に許容されるレベルの毒性を超える効果)を誘導するレベル未満であるか、または潜在的な副作用が制御され得るか、もしくは許容され得るレベルである。
一部の実施形態では、MSFPの有効量は、中枢神経系で有害効果を誘導するレベル未満である。例えば、抗体療法で観察される有害効果は、注入関連副作用、例えばサイトカイン放出症候群(「CRS」)の発生であり、サイトカイン放出症候群の重度の症例は、「サイトカインストーム」として公知である。「サイトカインストーム」が誘導されると、健康な個体の免疫系が活性化され、大量の炎症促進性サイトカイン、例えばINF-γ、CCL2、IL-10、IL-6などを放出する。それは、非常に高レベルの様々なサイトカインを伴う、典型的にサイトカインと免疫細胞との間の正のフィードバックループからなる潜在的に致死性の免疫反応である。CRSと関連付けられると説明されている他の有害副作用は、疲労、嘔吐、頻脈、高血圧、背痛であるが、また、中枢神経系反応(CNS反応)、例えば発作、脳症、脳浮腫、無菌性髄膜炎および頭痛もある。一部の実施形態では、MSFPは、サイトカイン放出症候群、例えばサイトカインストームを誘導しない用量で投与される。一部の実施形態では、MSFPは、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、TNFおよびINF-γからなる群より選択される1つまたは複数のサイトカインの顕著な放出を誘導しない用量で投与される。一部の実施形態では、サイトカインの顕著な放出は、少なくとも約1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間のいずれかまたはそれよりも長い過程にわたるサイトカインの持続放出である。一部の実施形態では、サイトカインの顕著な放出は、少なくとも約1、5、10、20、50、100、200、500、1000pg/mLのいずれかまたはそれよりも高い濃度のサイトカインの血清レベルまたは血液レベルである。任意の理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のMSFPは、T細胞を動員および活性化するために、標的腫瘍細胞上のEpCAMへの結合を必要とする。そのような要件は、所望の標的腫瘍細胞の非存在下での不必要なサイトカインストーム、および不必要なT細胞活性化を大いに低減し得る。
一部の実施形態では、MSFPは、約0.01μg/kg、0.05μg/kg、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kgまたは1mg/kgのいずれか1つ以下の用量で投与される。一部の実施形態では、MSFPの用量は、以下の範囲のいずれか以内であり、この範囲は、0.05μg/kg、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kgまたは1mg/kgのいずれかの上限、および、0.01μg/kg、0.05μg/kg、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kgまたは900μg/kgのいずれかの独立して選択される下限を有し、下限は上限未満である。一部の実施形態では、MSFPは、約0.01μg/kg~約0.05μg/kg、約0.05μg/kg~約0.1μg/kg、約0.1μg/kg~約0.5μg/kg、約0.5μg/kg~約1μg/kg、約0.01μg/kg~約0.1μg/kg、約0.1μg/kg~約1μg/kg、約1μg/kg~約5μg/kg、約5μg/kg~約10μg/kg、約10μg/kg~約15μg/kg、約15μg/kg~約20μg/kg、約20μg/kg~約25μg/kg、約25μg/kg~約30μg/kg、約5μg/kg~約15μg/kg、約10μg/kg~約30μg/kg、約30μg/kg~約50μg/kg、約50μg/kg~約100μg/kg、約0.01μg/kg~約1μg/kg、約0.01μg/kg~約5μg/kg、約0.01μg/kg~約30μg/kg、約0.01μg/kg~約250μg/kg、約0.1μg/kg~約10μg/kg、約0.1μg/kg~約30μg/kg、約0.1μg/kg~約250μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約1μg/kg~約20μg/kg、約1μg/kg~約30μg/kg、約1μg/kg~約250μg/kg、約100μg/kg~約250μg/kg、約5μg/kg~約250μg/kg、約250μg/kg~約500μg/kg、約500μg/kg~約1000μg/kgまたは約0.01μg/kg~約1000μg/kgのいずれか1つの用量で投与される。本明細書に記載の用量は、カニクイザルに好適な用量、その等価なヒト用量または特定の種の個体についての等価な用量を指し得る。一部の実施形態では、MSFPは、カニクイザルについて約0.1μg/kg~約100μg/kg(例えば約0.3μg/kg~約5μg/kgまたは約5μg/kg~約20μg/kg)に等価な用量で投与される。一部の実施形態では、MSFPは、カニクイザルについて約30μg/kg以下(例えば約20、15または10μg/kg以下)に等価な用量で投与される。
一部の実施形態では、MSFPは、約0.1μg/kg~約10μg/kg、例えば約0.3、0.5、0.6、1、1.2、2、2.4、3.6または4μg/kgのいずれか1つの用量で投与される。
有効量のMSFPは、単回用量で、または複数回用量で投与することができる。複数回用量でのMSFPの投与を含む方法について、例示的な投与頻度として、毎日、絶え間なく毎日、毎週、絶え間なく毎週、3週のうちの2週について毎週、4週のうちの3週について毎週、3週毎に1回、2週毎に1回、毎月、6カ月毎、毎年などが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、MSFPは、約2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、6週毎に1回または8週毎に1回投与される。一部の実施形態では、MSFPは、1週間に少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回(すなわち毎日)のいずれかで投与される。一部の実施形態では、各投与の間の間隔は、約3年間、2年間、12か月間、11か月間、10か月間、9か月間、8か月間、7か月間、6か月間、5か月間、4か月間、3か月間、2か月間、1か月間、4週間、3週間、2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間または1日間のいずれか未満である。一部の実施形態では、各投与の間の間隔は、約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、2年間または3年間のいずれかより大きい。一部の実施形態では、投与スケジュール中に中断はない。
一部の実施形態では、MSFPは、第1の期間の間第1の用量で投与され、引き続いて、MSFPは、第2の期間の間第2の用量で投与され、第2の用量は、第1の用量を超える。第1の期間および第2の期間は、例えば約1、2、3、4、5、6週間のいずれか1つまたはそれよりも長い期間を含む、任意の好適な長さのものであってもよい。一部の実施形態では、第2の期間は、第1の期間を超える。一部の実施形態では、第1の期間は、少なくとも約7日間である。一部の実施形態では、第2の期間は、少なくとも約2週間、3週間、4週間、5週間、6週間のいずれか1つまたはそれよりも長い。第1の用量および第2の用量は、上記の任意の好適な用量のものであってもよい。一部の実施形態では、第1の用量は、約2、1.5、1、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1μg/kgのいずれか1つ以下またはそれ未満である。一部の実施形態では、第2の用量は、約0.1μg/kg~約10μg/kg、例えば約0.3μg/kg~約5μg/kgである。一部の実施形態では、第2の用量は、約0.3、0.6、1.2、2.4または3.6μg/kgのいずれか1つである。
一部の実施形態では、MSFPは低頻度で、例えば、1か月毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回、4か月毎に1回、5か月毎に1回、6か月毎に1回、7か月毎に1回、8か月毎に1回、9か月毎に1回、10か月毎に1回、11か月毎に1回、1年毎に1回、18か月毎に1回、2年毎に1回、3年毎に1回、またはそれ未満のいずれか1つ以下で投与される。一部の実施形態では、MSFPは、単回用量で投与される。一部の実施形態では、MSFPは、毎週2回投与される。
MSFPの投与は、延長された期間、例えば、1日間~約1週間、約1週間~約1か月間、約1か月間~約1年間、約1年間~約数年間にわたって延長されてもよい。一部の実施形態では、MSFPは、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれより長くのいずれかの期間にわたって投与される。
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のグルココルチコイドの投与をさらに含む。グルココルチコイド(GC)は、ヒトを含む、ほとんど全ての脊椎動物細胞に存在する、グルココルチコイド受容体(GR)に結合するステロイドホルモンのクラスである。これらの化合物は、炎症の原因にかかわらず、強い抗炎症剤である。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8およびIFN-γからなる群より選択される1つまたは複数のサイトカインの放出を抑制する。好適なグルココルチコイドとして、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾール、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デフラザコート、フルドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾール、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デフラザコート、フルドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾンおよびこれらの薬学的に許容されるエステル、塩または複合体からなる群より選択される。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンである。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンの薬学的に許容されるエステル、塩または複合体である。
グルココルチコイドは、個体にMSFPと同時に投与しても、MSFPの投与前に投与してもよい。グルココルチコイドは、MSFPの投与から約3時間、2時間、1時間、30分のいずれか1つ以下またはそれ未満の時間に投与され得る。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、MSFPの各用量と同時に、またはそれより前に投与される。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、MSFPの第1の用量と同時に、またはそれより前に投与される。MSFPが第1の期間の間第1の用量で投与され、引き続いて、MSFPが第2の期間の間第2の用量で投与される一部の実施形態では、グルココルチコイドは、第1の期間の間MSFPの第1の投与前(例えば約1時間前)に投与され、グルココルチコイドは、第2の期間の間MSFPの第1の投与前(例えば約1時間前)に投与される。一部の実施形態では、個体が高い肝臓酵素レベル(例えばALT、TBilおよび/またはALP)および/または高いサイトカインレベル(例えばIL-6)を有する場合、グルココルチコイドは、MSFPの投与前に投与される。グルココルチコイドは、例えば少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、5mg/kgのいずれか1つまたはそれよりも多く含む、任意の好適な投与量で投与され得る。一部の実施形態では、グルココルチコイドは、少なくとも約1、2、5、10、15、20、25mgのいずれか1つまたはそれよりも多い用量で投与される。
一部の実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンである。一部の実施形態では、方法は、MSFPの第1の用量の投与前に個体にデキサメタゾンを投与することを含む。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、約0.1mg/kg~約5mg/kgの用量で投与される。
多重特異性Fab融合タンパク質
本明細書に記載の方法で使用される多重特異性Fab融合タンパク質(MSFP)は、Fab断片のVHのN末端で第1のEpCAM結合ドメインおよび/またはFab断片のVLのN末端で第2のEpCAM結合ドメインに融合した抗CD3 Fab断片を含む。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、抗EpCAM scFvである。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、リンカーにより抗CD3 Fab断片のVHまたはVLに接続している。本発明の方法に有用な例示的な二重特異性Fab融合タンパク質を図1に示す。
Fab断片
本明細書に記載のMSFPのFab断片は、CD3、例えばヒトCD3に特異的に結合する。「CD3」は、6本の鎖の多タンパク質複合体として本分野で公知である(AbbasおよびLichtman、2003年;Janewayら、172および178頁、1999年を参照のこと)。哺乳動物では、複合体は、CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、2本のCD3イプシロン鎖およびCD3ゼータ鎖のホモダイマーを含む。CD3ガンマ、CD3デルタおよびCD3イプシロン鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連する細胞表面タンパク質である。CD3ガンマ、CD3デルタおよびCD3イプシロン鎖の膜貫通領域は、負に荷電しており、これは、これらの鎖が、正に荷電しているT細胞受容体鎖と会合することを可能にする特徴である。CD3ガンマ、CD3デルタおよびCD3イプシロン鎖の細胞内尾部各々は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知の単一の保存されたモチーフを含有し、一方で、各CD3ゼータ鎖は3つを有する。理論に束縛されるものではないが、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に重要であると考えられる。CD3は、本明細書で使用されるとき、ヒト、霊長類、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含む、様々な動物種からであってもよい。
一部の実施形態では、MSFPのFab断片は、個々のCD3鎖、例えばCD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖またはCD3イプシロン鎖に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、2本またはそれよりも多い個々のCD3鎖から形成される複合体(例えば1本を超えるCD3イプシロン鎖の複合体、CD3ガンマおよびCD3イプシロン鎖の複合体、CD3デルタおよびCD3イプシロン鎖の複合体)に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロン鎖に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3イプシロンのアミノ酸1~27に特異的に結合する。
Fab断片は、本分野で公知の様々な方法により発生させることができる(例えば米国特許第6,291,161号、同第6,291,158号を参照のこと)。Fabの供給源は、ヒト、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマから;Hamers-Castermanら(1993年)Nature、363巻:446頁およびNguyenら(1998年)J. Mol. Biol.、275巻:413頁)、サメ(Rouxら(1998年)Proc. Nat’l. Acad. Sci. (USA) 95巻:11804頁)、魚類(Nguyenら(2002年)Immunogenetics、54巻:39頁)、げっ歯類、鳥類またはヒツジを含む、様々な種からのモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、ヒトまたはヒト化抗体に由来する。
一部の実施形態では、Fab断片は、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)CD3の両方に特異的に結合する。サルCD3と交差反応性を有する例示的な抗ヒトCD3抗体として、SP34マウスモノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Pressano, S. The EMBO J. 4:337-344, 1985;Alarcon, B. EMBO J. 10:903-912, 1991;Salmeron A.ら、J. Immunol. 147:3047-52, 1991;Yoshino N.ら、Exp. Anim 49:97-110, 2000;Conrad M L.ら、Cytometry 71A:925-33, 2007;およびYangら、J. Immunol. 137:1097-1100: 1986を参照のこと)。サルCD3と交差反応性を有する抗CD3 Fab断片を有するMSFPは、非ヒト霊長類における毒性研究を促進することができ、このことは、チンパンジーにおける毒性研究を行う、または代理分子を使用することなく、ヒト臨床試験候補物質についてのより関連のある安全性評価を提供し得る。
一部の実施形態では、Fab断片は、非ヒト霊長類と交差反応性を有しない抗CD3抗体に由来する。例示的な抗CD3抗体として、Cris-7モノクローナル抗体(Reinherz, E. L.ら(編)、Leukocyte typing II, Springer Verlag, New York, (1986))、BC3モノクローナル抗体(Anasettiら(1990) J. Exp. Med. 172:1691)、OKT3(Ortho multicenter Transplant Study Group(1985) N. Engl. J. Med. 313:337)およびその誘導体、例えば、OKT3 ala-ala(Heroldら(2003) J. Clin. Invest. 11:409)、ビシリズマブ(Carpenterら(2002) Blood 99:2712)、および145-2C11モノクローナル抗体(Hirschら(1988) J. Immunol. 140: 3766)が挙げられる。本明細書で企図されるさらなるCD3結合分子として、UCHT-1(Beverley, P C and Callard, R. E.(1981) Eur. J. Immunol. 11: 329-334)およびWO2004/106380;WO2010/037838;WO2008/119567;WO2007/042261;WO2010/0150918に記載されるCD3結合分子が挙げられる。
一部の実施形態では、Fab断片は、免疫グロブリン重鎖の1つの定常領域および1つの可変領域ならびに免疫グロブリン軽鎖の1つの定常領域および1つの可変領域を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域および可変領域は、軽鎖可変領域および定常領域とヘテロダイマー化し、重鎖定常領域と軽鎖定常領域との間のジスルフィド結合により共有結合的に連結している。一部の実施形態では、Fab断片は、基本構造NH2-VL-CL-S-S-CH1-VH-NH2を有する。一部の実施形態では、Fab断片のCH1およびCLは、1つまたは複数のジスルフィド結合により接続している。一部の実施形態では、Fabの重鎖の第1の定常領域(CH1)と軽鎖定常(CL)との間のジスルフィド結合の数は、少なくとも1つ、例えば2つ、3つ、4つまたはそれよりも多い。一部の実施形態では、ジスルフィド結合を導入するために、システイン残基を、Fab断片内(例えばCH1およびCL領域内)に作出する。
一部の実施形態では、MSFPのFab断片は、ジスルフィド結合を含まない。例えば、ジスルフィド結合を必要とすることなく安定的に相互作用するように、重鎖および軽鎖を作出してもよい。一部の実施形態では、重鎖または軽鎖を作出して、システイン残基を除去してもよく、ここで重鎖および軽鎖はそれでもFabとして安定的に相互作用および機能する。一部の実施形態では、重鎖と軽鎖との間の安定な相互作用を促進するために、変異が行われる。例えば「ノブイントゥーホール(knobs into holes)」作出戦略は、Fabの重鎖と軽鎖との間のダイマー化を促進するために使用され得る(例えば1996年 Protein Engineering、9巻:617~621頁を参照のこと)。特定の目的のために設計されたバリアントFab断片、例えばCH1および/またはCLの定常ドメイン内のアミノ酸変化ならびにジスルフィド結合の除去または精製のためのタグの付加などもまた、本明細書における使用に企図される。
一部の実施形態では、Fab断片内の可変領域および定常領域の配置は、ネイティブFabで見られる配置とは異なってもよい。一部の実施形態では、可変領域および定常領域の配向は、1本の鎖でVH-CL、および別の鎖でVL-CH1であってもよい(例えばShaeferら(2011年)、PNAS、108巻:111870~92頁を参照のこと)。
一部の実施形態では、MSFPのFab断片は、モノクローナル抗体に由来する。好適なモノクローナル抗体は、IgA、IgM、IgD、IgG、IgEならびにそれらのサブタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の種類のモノクローナル抗体であってもよい。軽鎖ドメインは、カッパまたはラムダ鎖に由来し得る。一部の実施形態では、Fab断片は、組換えで設計される。
一部の実施形態では、Fab断片は、ヒト免疫グロブリンCH1を含む。一部の実施形態では、ヒト免疫グロブリンCH1は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、ヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。一実施形態では、ヒトラムダ軽鎖定常領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
MSFPのFab断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域と(VHとVLと)の間に形成される抗原結合部位を介してCD3に特異的に結合する。抗原結合部位は、免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つ(例えば1つ、2または3つ)のHVRおよび/または免疫グロブリン軽鎖の少なくとも1つ(例えば1つ、2または3つ)のHVRを含む。一部の実施形態では、MSFPは、CD3に特異的に結合する全長抗体のVHおよびVL配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てのHVRを含む。
一部の実施形態では、Fab断片は、SP34に由来する。一部の実施形態では、Fab断片は、米国特許第8,846,042号に記載されているCD3 Fab断片である。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号8からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7からの3つのHVRを含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号8からの3つのHVRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1~3から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号4~6から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43からなる群より選択される配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号8および44~47からなる群より選択される配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するV
HまたはVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含むFab断片は、CD3に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、HVRの任意の1つまたは複数において、1つまたは2つのアミノ酸が置換、挿入および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)起こる。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号8および44~47から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドおよび/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
一部の実施形態では、抗CD3 Fab断片の特定のVHおよび/またはVLを使用して、望ましい特性、例えばCD3に対する増大した親和性を有するVH/VLを特定するために相補的可変領域のライブラリーをスクリーニングしてもよい。そのような方法は、例えば、Portolanoら、J. Immunol.(1993) 150:880-887;Clarksonら、Nature(1991) 352:624-628;およびKlimkaら、British Journal of Cancer(2000) 83:252-260;Beiboerら、J. Mol. Biol.(2000) 296:833-849;およびRaderら、PNAS(1998) 95:8910-8915に記載されている。
EpCAM結合ドメイン
本明細書に記載のMSFPは、EpCAMに特異的に結合する1つまたは2つの結合ドメインを含む。上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)は、17-1A、ESA、AUA1、EGP40などとしても公知であり、314個のアミノ酸から構成される40kDの膜貫通糖タンパク質である。EpCAMは、細胞シグナル伝達、遊走、増殖および分化に関連する。EpCAMは、様々な種類の上皮細胞および主要な種類のヒト悪性疾患において特異的に発現される。例えば、EpCAMは、結腸がん、肺がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんおよび卵巣がんで高く発現され、したがって、多様ながんのための診断マーカーとして使用することができる。EpCAMはまた、ワクチン、マウス化またはヒト化モノクローナル抗体および細菌毒素または化学療法薬にコンジュゲートした抗体、例えばEpCAM特異的抗体ING-1、アデカツムマブ(adecatumumab)、エドレコロマブなどを含む、免疫療法戦略のための潜在的な標的である。
MSFP内の、EpCAM結合ドメインを含む、結合ドメインは、追加の結合特異性および特性の向上(例えば血清半減期の増大または免疫活性化カスケードの活性化)を提供するのみでなく、VHおよび/またはVL鎖のN末端への融合に起因して、立体障害を創出してCD3へのFab断片の結合親和性を顕著に低減させる。これは、他のFab融合タンパク質、例えばFab断片のC末端で追加の結合ドメインに融合しているTRIBODIES(商標)とは全く対照的である(例えばJournal of Immunology、2000年、165巻:7050~7057頁を参照のこと)。結合ドメインは、他の公知の融合タンパク質、例えばWO2008/024188およびWO2009/149185に記載されているものとは異なり、ダイマー化することが意図されていない。MSFPのさらに際立った特徴は、MSFPが腫瘍細胞上の細胞表面標的、例えばEpCAMに結合していない場合、結合ドメインがCD3へのFabの結合親和性を低減することである。
一部の実施形態では、MSFPは、抗CD3 Fab単独と比較して、延長されたin vivo半減期を有する。一部の実施形態では、MSFPの半減期は、抗CD3 Fab断片単独の半減期の少なくとも約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍のいずれかまたはそれよりも長い。
EpCAMを含む結合ドメインは、抗原結合ドメイン、例えばscFvまたはscTCR、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体のリガンドまたはその受容体結合ドメインおよび腫瘍結合タンパク質から選択してもよい。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、scFv、VH、VL、ドメイン抗体バリアント(dAb)、ラクダ科抗体(VHH)、フィブロネクチン3ドメインバリアント、アンキリン反復バリアントおよび他のタンパク質スキャフォールドに由来する他の抗原特異的結合ドメインから選択される。
一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、EpCAMに特異的に結合するscFv(本明細書で抗EpCAM scFvとも称される)である。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvのVHおよびVLは、ペプチドリンカー、例えばグリシンおよび/またはセリンを含む可撓性リンカーを介して互いに接続している。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvのVHおよびVLは、互いに直接的に接続している。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、N-VH-VL-C融合ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、N-VL-VH-C融合ポリペプチドを含む。
EpCAM結合ドメイン(例えばscFv)は、任意の好適な抗EpCAM抗体に由来してもよい。一部の実施形態では、抗EpCAM抗体は、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)の両方に特異的に結合する。一部の実施形態では、EpCAM結合ドメインは、ヒトEpCAMを特異的に認識するが、非ヒト霊長類との交差反応性を有しない。例示的な抗EpCAM抗体は、本分野で公知であり、例えば米国特許第8,884,602号を参照されたい。抗EpCAM結合ドメインは、免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つ(例えば1つ、2つまたは3つ)のHVRおよび/または免疫グロブリン軽鎖の少なくとも1つ(例えば1つ、2つまたは3つ)のHVRを含み得る。一部の実施形態では、抗EpCAM結合ドメインは、EpCAMに特異的に結合する全長抗体のVHおよびVL配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てのHVRを含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19からの3つのHVRを含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20からの3つのHVRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号13~15から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号16~18から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号20の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFv、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
リンカー
本明細書に記載のMSFPは、Fab断片のVHまたはVLと結合ドメインとの間に位置するリンカー(例えばペプチドリンカー)を含み得る。一部の実施形態では、Fab断片のVHと第1の結合ドメインとの間のリンカーは、Fab断片のVLと第1の結合ドメインとの間のリンカーと同じである。一部の実施形態では、Fab断片のVHと第1の結合ドメインとの間のリンカーは、Fab断片のVLと第1の結合ドメインとの間のリンカーとは異なる。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、scFvのVHとVLとの間に位置するリンカー(例えばペプチドリンカー)を含み、これは、Fab断片のVHおよびVLと結合ドメインとの間のリンカーのいずれかと同じであっても、異なっていてもよい。
リンカーは、任意の長さのペプチドリンカーであり得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、1アミノ酸~10アミノ酸長、2アミノ酸~15アミノ酸長、3アミノ酸~12アミノ酸長、4アミノ酸~10アミノ酸長、5アミノ酸~9アミノ酸長、6アミノ酸~8アミノ酸長または1アミノ酸~20アミノ酸長である。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長のいずれかである。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長のいずれかである。一部の実施形態では、ペプチドリンカーのN末端は、結合ドメインのC末端に共有結合的に連結しており、ペプチドリンカーのC末端は、Fab断片のVHまたはVLのN末端に共有結合的に連結している。
一部の実施形態では、リンカーは、可撓性リンカーである。例示的な可撓性リンカーとして、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば(GS)n、(GSGGS)nおよび(GGGS)nを含み、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマーおよび本分野で公知の他の可撓性リンカーが挙げられる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的不定形であり、それゆえ構成要素間の中間テザーとして働くことができ得る。グリシンは、アラニンよりいっそう顕著にphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに少なく制限される(Scheraga、Rev. Computational Chem. 11巻、173~142頁(1992年)を参照のこと)。例示的な可撓性リンカーとして、Gly-Gly、Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号24)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly(配列番号25)、Gly-Ser-Gly-Ser-Gly(配列番号26)、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly(配列番号27)、Gly-Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号28)、Gly-Ser-Ser-Ser-Gly(配列番号29)などが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHとEpCAM結合ドメイン(例えばscFv)との間のリンカーは、Gly-Glyである。一部の実施形態では、抗CD3 Fab断片のVLとEpCAM結合ドメイン(例えばscFv)との間のリンカーは、Gly-Glyである。当業者は、MSFPの設計は、リンカーが可撓性リンカー部分およびあまり可撓性のない構造を与える1つまたは複数の部分を含んで、所望のMSFP構造を提供し得るように、全てまたは部分的に可撓性であるリンカーを含み得ることを認識する。
一部の実施形態では、Fabと結合ドメインとの間のリンカーは、安定なリンカーである(プロテアーゼ、とりわけMMPにより切断可能でない)。
一部の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。一部の実施形態では、Fab VHまたはVLと結合ドメインとの間のリンカーは、プロテアーゼ基質切断配列、例えばMMP基質切断配列を含む。基質中の周知のPLGLAGペプチド配列(配列番号30)は、ほとんどのMMPにより切断することができる。MMPにより切断され得る基質配列は、広範に研究されている。例えば、PLGLAG配列(配列番号30)は、ほとんどのMMPにより切断することができる。一部の実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、MMP-2、MMP-9またはこれらの組合せにより認識される。
一部の実施形態では、MSFPは、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、MSFPは、配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、MSFPは、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドおよび配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む。配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドおよび配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、MSFPおよびその組成物(例えば医薬組成物)がさらに提供される。
III.EpCAM抗体
本出願によりさらに提供されるのは、抗EpCAM抗体に由来する抗原結合性断片を含む多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質を含む、新規抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片である。当技術分野において公知の抗EpCAM抗体および断片と比較して、本明細書に記載の抗EpCAM抗体およびそれらの抗原結合性断片は、向上した安定性および被発現能力を有する。加えて、本発明の抗EpCAM抗体およびそれらの抗原結合性断片は、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)両方からのEpCAMに対して交差反応性を有し、これは、EpCAM抗体またはそれらの誘導体(例えば、MSFP)を評価するためのヒト臨床研究への、サルにおける毒性および有効性研究からの結果の外挿に有益である。
本発明の抗体は、EpCAMエピトープに、≦1μM、例えば、≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMの平衡結合定数(Kd)で結合する。例えば、本明細書で提供される抗EpCAM抗体は、おおよそ≦1nM~約1pMの間の範囲のKdを示す。
本発明の抗EpCAM抗体は、広く分布しているEpCAMの機能活性を、完全にまたは部分的に、調節する、遮断する、阻害する、低下させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉するのに役立つ。EpCAM抗体は、本明細書に記載の抗EpCAM抗体との結合の非存在下でのEpCAM機能活性レベルと比較してEpCAM抗体の存在下でのEpCAM機能活性レベルが少なくとも95%、例えば、96%、97%、98%、99%または100%減少された場合、EpCAM機能活性を、完全に、調節する、遮断する、阻害する、低下させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉すると考えられる。抗EpCAM抗体は、本明細書に記載の抗EpCAM抗体との結合の非存在下でのEpCAM活性レベルと比較して抗EpCAM抗体の存在下でのEpCAM活性レベルが少なくとも50%、例えば、55%、60%、75%、80%、85%または90%減少された場合、EpCAM機能活性を、有意に、遮断する、阻害する、低下させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉すると考えられる。抗EpCAM抗体は、本明細書に記載の抗EpCAM抗体との結合の非存在下でのEpCAM活性レベルと比較して抗EpCAM抗体の存在下でのEpCAM活性レベルが95%未満、例えば、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%または90%減少された場合、EpCAM機能活性を、部分的に、調節する、遮断する、阻害する、低下させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉すると考えられる。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体部分は、細胞の表面に存在するEpCAMに特異的に結合する。一部の実施形態では、細胞は、その表面に、異常に高レベルのEpCAMを提示する。一部の実施形態では、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態では、がん細胞は、固形腫瘍である。一部の実施形態では、がん細胞は、転移性がん細胞である。
一部の実施形態での抗EpCAM抗体部分は、特異的配列を含むか、またはそのような配列のある特定のバリアントを含む。一部の実施形態では、バリアント配列におけるアミノ酸置換は、EpCAMに結合する抗EpCAM抗体部分の能力を実質的に低下させない。例えば、EpCAM結合親和性を実質的に低減させない変更を加えることができる。EpCAM結合親和性を実質的に向上させる変更、あるいは何らかの他の特性、例えば、特異性、免疫原性、ADCCもしくはCDC、および/またはEpCAMの関連バリアントとの交差反応性に影響を与える変更も、企図される。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号19からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20からの1つ、2つもしくは3つのHVR(またはCDR)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号19からの3つのHVRを含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20からの3つのHVRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体または抗原結合性断片は、(1)配列番号13の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-H1、(2)配列番号14の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-H2、および/または(3)配列番号15の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-H3を含むVHを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM抗体または抗原結合性断片は、(1)配列番号16の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-L1、(2)配列番号17の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-L2、および/または(3)配列番号18の1つもしくは2つのアミノ酸置換を有するHVR-L3を含むVLを含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号19の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号20の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するVHまたはVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含むFab断片は、EpCAMに結合する能力を保持する。一部の実施形態では、HVRの任意の1つまたは複数において、1つまたは2つのアミノ酸が置換、挿入および/または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)起こる。一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片(例えば、scFv)は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体は、完全長抗体である。一部の実施形態では、完全長抗EpCAM抗体は、免疫グロブリン、例えばIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、からのFc配列を含む。一部の実施形態では、完全長抗EpCAM抗体は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれかのFc配列を含む。一部の実施形態では、完全長抗EpCAM抗体は、ヒト免疫グロブリンのFc配列を含む。一部の実施形態では、完全長抗EpCAM抗体は、増強された抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)エフェクター機能を有するように変更されたまたは別様に変化したFc配列を含む。
本明細書に記載の抗EpCAM抗体のいずれかと、EpCAMとの結合について競合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片も提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗EpCAM抗体のいずれかと同じエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片が提供される。所望の特異性を有する抗体のスクリーニング方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および当技術分野の中で公知の他の免疫学的に媒介される技法が挙げられるが、これらに限定されない。
あるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体(例えば、配列番号19の可変重鎖と配列番号20の可変軽鎖とを有する抗EpCAM抗体)と同じ特異性を有するかどうかを、過度の実験なしに、そのモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体のEpCAMへの結合を妨げるかどうかを確かめることにより、決定することが可能であることは、当業者には分かるであろう。試験されるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体による結合の減少により示されるように、本発明のモノクローナル抗体と競合する場合には、それら2つのモノクローナル抗体は、同じエピトープに結合するか、または密接に関連しているエピトープに結合する。
あるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するかどうかを決定する代替方法は、本発明のモノクローナル抗体を可溶性EpCAMタンパク質(本発明のモノクローナル抗体と通常は反応性である)とプレインキュベートし、次いで、試験されるモノクローナル抗体を添加して、試験されるモノクローナル抗体のEpCAMに結合する能力が阻害されるかどうかを決定する方法である。試験されるモノクローナル抗体が阻害された場合には、ほとんど確実に、試験されるモノクローナル抗体は、本発明のモノクローナル抗体と同じまたは機能的に等価のエピトープ特異性を有する。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体は、モノクローナル抗体、例えば、一価抗体である。一部の実施形態では、抗EpCAM抗原結合性断片は、Fab、Fab’、F(ab)’2、単鎖Fv(scFv)、Fv断片、ダイアボディ、または線形抗体の形態である。
一部の実施形態では、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗EpCAM scFvが提供される。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号19のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM scFvは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体は、EpCAMに結合するが1つまたは複数の他の標的にも結合し、任意選択でそれらの機能を阻害する、多重特異性抗体である。多重特異性抗体は、2つまたはそれより多くの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体(例えば、少なくとも2つの抗原に対する結合特異性を有する二重特異性抗体)である。例えば、結合特異性の一方は、EpCAMタンパク質に対する結合特異性であってもよく、他方の結合特異性は、任意の他の抗原に対する結合特異性であってもよい。一部の実施形態では、他の抗原は、細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットである。例えば、細胞表面タンパク質は、CD3、例えば、CD3イプシロンであってもよい。したがって、一実施形態によれば、本発明の二重特異性抗体は、EpCAMと例えば第2の細胞表面受容体との両方に結合することができる。
一部の実施形態では、多重特異性抗EpCAM分子は、例えば、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、直鎖状ダイマーscDb(LD-scDb)、環状ダイマーscDb(CD-scDb)、ジダイアボディ、タンデムscFv、タンデムジscFv(例えば、二重特異性T細胞係合剤(engager))、タンデムトリscFv、トリ(ア)ボディ、二重特異性Fab2、ジミニ抗体(di-miniantibody)、テトラボディ(tetrabody)、scFv-Fc-scFv融合体、二重親和性再標的化(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)抗体、IgG-scFab、scFab-ds-scFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、ドックアンドロック(dock and lock)(DNL)抗体、ノブイントゥーホール(KiH)抗体(KiH技術により調製された二重特異性IgG)、DuoBody(DuoBody技術により調製された二重特異性IgG)、ヘテロマルチマー抗体、またはヘテロコンジュゲート抗体である。一部の実施形態では、多重特異性抗EpCAM分子は、タンデムscFv(例えば、二重特異性T細胞係合剤などのタンデムジscFv)である。
上記の抗EpCAM抗体またはそれらの抗原結合性断片のうちのいずれかを含む、融合タンパク質、コンジュゲートまたは単離された細胞が、さらに提供される。
一部の実施形態では、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、多重特異性(例えば二重特異性)Fab融合タンパク質が提供される。
一部の実施形態では、多重特異的Fab融合タンパク質は、Fab断片の重鎖ポリペプチドまたはFab断片の軽鎖ポリペプチドのN末端に融合している、単一の抗EpCAM抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、2つの抗EpCAM抗原結合性断片を含むか、または2コピーの抗EpCAM抗原結合性断片を含む。
一部の実施形態では、Fab断片と抗EpCAM抗原結合性断片とを含む多重特異性(例えば、二重特異性)Fab融合タンパク質であって、Fab断片の重鎖ポリペプチドのN末端または軽鎖ポリペプチドのN末端が、抗EpCAM抗原結合性断片に融合しており、抗EpCAM抗原結合性断片が、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1と配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2と配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1と配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2と配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、多重特異性Fab融合タンパク質が提供される。一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、Fab断片、第1の抗EpCAM抗原結合性断片、および第2の抗EpCAM抗原結合性断片を含み、Fab断片の重鎖ポリペプチドのN末端は、第1の抗EpCAM抗原結合性断片に融合しており、Fab断片の軽鎖ポリペプチドのN末端は、第2の抗EpCAM抗原結合性断片に融合している。一部の実施形態では、第1の抗EpCAM抗原結合性断片は、第2の抗EpCAM抗原結合性断片と同じ配列を有する。一部の実施形態では、抗EpCAM抗原結合性断片は、配列番号19のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM抗原結合性断片は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗EpCAM抗原結合性断片は、配列番号21のアミノ酸配列を含むscFvなどの、scFvである。
本明細書に記載の1つまたは複数の抗EpCAM抗原結合性断片を含む多重特異性Fab融合タンパク質は、上記のセクションII「がんを処置する方法」のサブセクション「多重特異性Fab融合タンパク質」に記載の多重特異性Fab融合タンパク質の1つまたは複数の特徴をさらに含むことができる。
一部の実施形態では、多重特異性Fab融合タンパク質は、免疫エフェクター分子に特異的に結合するFab断片を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、T細胞受容体に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、CD3ε鎖に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIa、NKG2D、CD25、CD28、CD137、CTLA-4、FAS、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、GITR、LTβR、TLR、TRAIL受容体1、TRAIL受容体2、EGFR、Her2/neu、およびErbB3から選択される細胞表面標的に結合する。
一部の実施形態では、Fab断片は、CD3、例えば、CD3イプシロンのN末端、例えば、CD3イプシロンのN末端1~27アミノ酸に、特異的に結合する。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに/または配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、Fab断片は、配列番号7および39~43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVH、ならびに/または配列番号8および44~47からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む。実施形態の一部では、多重特異性Fab融合タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号23のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドとを含む。
一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片は、治療剤(例えば、細胞傷害性薬剤、放射性同位体および化学療法剤)とコンジュゲートされるか、またはイメージングにより患者試料中もしくはin vivoでEpCAMを検出するための標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素および酵素)とコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片は、毒素とコンジュゲートされる。
一部の実施形態では、a)本明細書に記載の抗EpCAM抗体または抗原結合性断片のうちのいずれかを含む細胞外ドメインおよびb)細胞内シグナル伝達ドメインを含む、抗EpCAMキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。膜貫通ドメインが細胞外ドメインと細胞内ドメインの間に存在していてもよい。抗EpCAM CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間に、または抗EpCAM CARの細胞内ドメインと膜貫通ドメインの間に、スペーサードメイン、例えば、ペプチドリンカー(例えば、可撓性ペプチドリンカー)があってもよい。本発明の抗EpCAM CARにおいて使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始するように協調的に作用する、T細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質側配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアント、ならびに同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。CARを作製するための任意の方法が本明細書において使用することができる。例えば、US6,410,319、US7,446,191、US7,514,537、WO2002/077029、US2010/065818、US2010/025177、US2007/059298、およびBerger C.ら、J. Clinical Investigation 118: 1 294-308(2008)を参照のこと。
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗EpCAM抗体または抗原結合性断片のうちのいずれかを含む細胞外ドメインを含む、抗EpCAM組換えT細胞受容体(TCR)が提供される。TCRを作出する方法は、例えば、Stone J.D.ら、T Cell receptor engineering、Methods Enzymol.(2012年)503巻:189~222頁に記載されており、それを参照されたい。
抗EpCAM CARまたはTCRを発現する単離された細胞、例えば、CAR-TまたはTCR-T細胞も提供され、その抗EpCAM CARもしくはTCR、または抗EpCAMもしくはそのTCRを発現する細胞を使用して、疾患(例えば、がん)を処置する方法も提供される。
本明細書に記載の抗EpCAM抗体または抗原結合性断片を、様々な治療および診断方法に使用することができる。個体のがんを処置する方法であって、上記の抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらの医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む方法がさらに提供される。例えば、頭頸部がん、膵臓がん、結腸直腸がんおよび肺がんを含むがこれらに限定されない、異常なEpCAM発現を特徴とする疾患の処置に、抗EpCAM抗体(またはそれらの抗原結合性断片)を単独で使用または他の薬剤と併用することができる。本明細書で提供される抗体は、患者におけるまたは患者試料中のEpCAMタンパク質を検出するために使用することもできる。
モノクローナル抗体
本発明のモノクローナル抗体のスクリーニングを、例えば、EpCAM媒介シグナル伝達を測定し、試験モノクローナル抗体が、EpCAM媒介シグナル伝達を調節する、遮断する、阻害する、低減させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉することができるかどうかを決定することによって、行うこともできる。これらのアッセイは、競合結合アッセイを含むことができる。加えて、これらのアッセイは、生物学的読み出しを測定することができる。
当技術分野の中で公知の様々な手順を、EpCAMに対する、またはその誘導体、断片、アナログ、ホモログもしくはオルソログに対する、モノクローナル抗体の産生に使用することができる。(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Antibodies: A Laboratory Manual、Harlow EおよびLane D、1988年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照されたい)。完全ヒト抗体は、CDRを含む軽鎖および重鎖両方の全配列がヒト遺伝子から生じる、抗体分子である。そのような抗体は、本明細書では「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、例えば、下記で提供される実施例に記載の手順を使用して、調製される。トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(例えば、Kozborら、1983年、Immunol Today 4巻:72頁を参照されたい)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985年、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁を参照されたい)を使用することによって、ヒトモノクローナル抗体を調製することもできる。ヒトハイブリドーマの使用(Coteら、1983年、Proc Natl Acad Sci USA 80巻:2026~2030頁を参照されたい)により、またはin vitroでのエプスタイン・バーウイルスを用いるヒトB細胞の形質転換(Coleら、1985年、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁を参照されたい)により、ヒトモノクローナル抗体を利用することおよび産生することができる。
抗体は、免疫血清のIgG画分を主としてもたらす、プロテインAまたはプロテインGを使用するアフィニティクロマトグラフィなどの、周知の技法により精製される。その後、またはその代わりに、求められている免疫グロブリンの標的である特異的抗原またはそのエピトープをカラム上に固定化して、イムノアフィニティクロマトグラフィにより免疫特異的抗体を精製してもよい。免疫グロブリンの精製は、例えば、D.Wilkinson(The Scientist、出版元The Scientist, Inc.、Philadelphia PA、14巻、8号(2000年4月17日)、25~28頁)により論じられている。
本発明のEpCAM抗体は、モノクローナル抗体である。EpCAM媒介細胞シグナル伝達を調節する、遮断する、阻害する、低減させる、それに対して拮抗する、それを中和する、またはそれに対して別様に干渉するモノクローナル抗体は、例えば、膜結合および/または可溶性EpCAM、例えば、ヒトEpCAMまたはその免疫原性断片、誘導体もしくはバリアントなどを用いて動物を免疫化することにより、生成される。あるいは、動物は、EpCAMが発現され、トランスフェクトされた細胞の表面と会合するように、EpCAMをコードする核酸分子を含有するベクターがトランスフェクトされた細胞を用いて免疫化される。あるいは、抗体は、抗体または抗原結合ドメイン配列を含有するライブラリーをEpCAMとの結合についてスクリーニングすることにより得られる。このライブラリーは、例えば、バクテリオファージにおいて、組み立てられたファージ粒子の表面で発現され、ファージ粒子内に含有されているDNA配列にコードされているバクテリオファージコートタンパク質との、タンパク質またはペプチド融合体として調製される(すなわち、「ファージディスプレイライブラリー」である)。その後、骨髄腫/B細胞融合の結果として得られるハイブリドーマがEpCAMとの反応性についてスクリーニングされる。
モノクローナル抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256巻:495頁(1975年)により記載されたものなどのハイブリドーマ法を使用して調製される。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物は、典型的に、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を惹起するために免疫化剤を用いて免疫化される。あるいは、in vitroでリンパ球を免疫化することができる。
免疫化剤は、典型的に、タンパク質抗原、その断片またはそれらの融合タンパク質を含むことになる。一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合には末梢血リンパ球が使用され、または非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合には脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。その後、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために好適な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して不死化細胞株と融合させる(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、Academic Press、(1986年)59~103頁)。不死化細胞株は、通常は、形質転換された哺乳動物細胞、特に、齧歯動物、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が利用される。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において培養することができる。例えば、親細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)がない場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含むことになり(「HAT培地」)、これらの物質が、HGPRT欠乏細胞の増殖を防止する。
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性であるものである。より好ましい不死化細胞株はマウス骨髄腫系統であり、これは、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection、Manassas、Virginiaから入手することができる。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株も、モノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York(1987) pp. 51-63)を参照のこと)。
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、またはin vitro結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。そのような技法およびアッセイは、当技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)のスキャッチャード分析によって決定することができる。さらに、モノクローナル抗体の治療適用では、標的抗原に対する高い程度の特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によりサブクローニングし、標準的方法により増殖させることができる。(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、Academic Press、(1986年)59~103頁を参照されたい)。このために好適な培地としては、例えば、ダルベッコ変性イーグル培地およびRPMI-1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物において腹水としてin vivoで増殖させることができる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地または腹水液から従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティクロマトグラフィなどによって、単離または精製することができる。
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載のものなどの、組換えDNA法により作製することもできる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離およびシークエンシングすることができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。単離したら、DNAを発現ベクター内に配置することができ、これらのベクターが、その後、他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞、サルCOS細胞、PER.C6 、NS0細胞、SP2/0、YB2/0、または骨髄腫細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAは、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を使用することにより改変することもでき(米国特許第4,816,567号;Morrison、Nature 368巻、812~13頁(1994年)を参照されたい)、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を共有結合により連結させることによって改変することもできる。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに使用することができ、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに使用してキメラ二価抗体を創出することができる。
ヒト抗体、および抗体のヒト化
本発明のモノクローナル抗体は、完全ヒト抗体またはヒト化抗体を含む。これらの抗体は、ヒトへの投与に好適であり、投与された免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を生じさせない。
抗EpCAM抗体は、当技術分野において公知の任意の手順を使用して生成することができる。例えば、マウスにおける改良RIMMS(複数部位の反復免疫化(Repetitive Immunization Multiple Sites))の免疫化戦略およびその後のハイブリドーマ生成を使用して、抗EpCAM抗体を同定することができる。他の代替方法では、例えば、ヒト配列のみを含有する抗体を使用するファージディスプレイ方法を使用して、抗EpCAM抗体を発生させる。そのようなアプローチは、当技術分野において、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO92/01047および米国特許第6,521,404号において周知である。このアプローチでは、EpCAMまたはその断片の天然または組換え供給源を使用して、ランダムな軽鎖と重鎖の対を有するファージのコンビナトリアルライブラリーがスクリーニングされる。別のアプローチでは、その少なくとも1つのステップが、ヒトEpCAMタンパク質を用いてトランスジェニック非ヒト動物を免疫化することを含むプロセスによって、抗EpCAM抗体を産生させることができる。このアプローチでは、この異種非ヒト動物の内在性重鎖および/またはカッパ軽鎖遺伝子座の一部は無効にされており、免疫グロブリンをコードする遺伝子を抗原に応答して生成するために必要な再配列を行うことができない。加えて、少なくとも1つのヒト重鎖遺伝子座および少なくとも1つのヒト軽鎖遺伝子座は、動物に安定にトランスフェクトされている。したがって、投与された抗原に応答して、ヒト遺伝子座が再配列して、抗原に対して免疫特異的なヒト可変領域をコードする遺伝子をもたらす。そのため、免疫化すると、ゼノマウスは、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。
異種非ヒト動物を産生させる様々な技法が当技術分野において周知である。例えば、米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照されたく、これらの特許文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。この一般戦略は、1994年に発表された最初のXenoMouse(商標)系統の生成に関連して実証された。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Greenら、Nature Genetics 7巻:13~21頁(1994年)を参照されたい。また、米国特許第6,162,963号;同第6,150,584号;同第6,114,598;6,075,181号;および同第5,939,598号、ならびに日本特許3068180B2、3068506B2および3068507B2、ならびに欧州特許EP0463151B1ならびに国際特許出願WO94/02602、WO96/34096、WO98/24893、WO00/76310ならびに関連するファミリーメンバーを参照のこと。
代替アプローチで、「小遺伝子座(minilocus)」アプローチを利用した者もおり、このアプローチでは、Ig遺伝子座からの小片(個々の遺伝子)を含めることによって外因性Ig遺伝子座が模倣される。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、ミュー定常領域、および第2の定常領域(好ましくは、ガンマ定常領域)が、動物への挿入用の構築物内に形成される。例えば、米国特許第5,545,806号;同第5,545,807号;同第5,591,669号;同第5,612,205号;同第5,625,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,643,763号;同第5,661,016号;同第5,721,367号;同第5,770,429号;同第5,789,215号;同第5,789,650号;同第5,814,318号;同第5,877;397号;同第5,874,299号;同第6,023,010号;および同第6,255,458号;ならびに欧州特許0546073B1;ならびに国際特許出願WO92/03918、WO92/22645、WO92/22647、WO92/22670、WO93/12227、WO94/00569、WO94/25585、WO96/14436、WO97/13852およびWO98/24884ならびに関連するファミリーメンバーを参照のこと。
微小核体融合によって大きい染色体片または全染色体が導入されたマウスからのヒト抗体の生成も実証されている。欧州特許出願第773288号および同第843961号を参照されたい。
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答は、業界をキメラ抗体または他の方法でヒト化された抗体を調製するように導いた。キメラ抗体は、ヒト定常領域および免疫可変領域を有するが、特に、抗体の慢性または複数回用量利用の際に、ある特定のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が観察されると予想される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または影響を低下させるまたは別様に緩和するためにEpCAMに対する完全ヒト抗体を提供することが望ましいであろう。
免疫原性が低下した抗体の産生は、適切なライブラリーを使用するヒト化、キメラ化およびディスプレイ法によっても果たされる。当技術分野において周知の技法を使用してマウス抗体または他の種からの抗体をヒト化または霊長類化(primatize)することができることは、理解されるであろう。例えば、WinterおよびHarris、Immunol Today 14巻:43 46 (1993年)ならびにWrightら、Crit, Reviews in Immunol.、12125-168 (1992年)を参照されたい。目的の抗体を、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列で置換するような組換えDNA法によって、作出することができる(WO92102190ならびに米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,792号、同第5,714,350号および同第5,777,085号を参照されたい)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用は、当技術分野において公知である(Liuら、P.N.A.S. 84巻:3439頁(1987年)およびJ. Immunol. 139巻:3521頁(1987年))。mRNAは、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞から単離され、cDNAを産生させるために使用される。目的のcDNAを、特異的プライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により増幅させることができる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)。あるいは、目的の配列を単離するために、ライブラリーが作製され、スクリーニングされる。次いで、抗体の可変領域をコードするDNA配列が、ヒト定常領域配列に融合される。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatら(1991年)Sequences of Proteins of immunological Interest、N.I.H.発行番号91-3242において見つけることができる。ヒトC領域遺伝子は、公知のクローンから容易に入手することができる。アイソタイプの選択は、所望のエフェクター機能、例えば、補体結合、または抗体依存性細胞傷害性の活性によって導かれることになる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、カッパまたはラムダのいずれかを使用することができる。その後、キメラ、ヒト化抗体は、従来の方法により発現される。
抗体断片、例えば、Fv、F(ab’)2およびFabをインタクトなタンパク質の切断により、例えば、プロテアーゼまたは化学的切断により、調製することができる。あるいは、短縮された遺伝子が設計される。例えば、F(ab’)2断片の一部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含み、続いて、短縮された分子を生じさせるために翻訳終結コドンを含むことになる。
HおよびL J領域のコンセンサス配列は、V領域セグメントのヒトC領域セグメントへのその後の連結に有用な制限部位をJ領域に導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するために使用することができる。C領域cDNAを、部位特異的変異誘発によって制限部位をヒト配列の類似位置に配置するように改変することができる。
発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来エピソームおよびこれらに類するものを含む。好都合なベクターは、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入および発現することができるように作出された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターでは、スプライシングは、通常、挿入されたJ領域内のスプライスドナー部位とヒトC領域の前にあるスプライスアクセプター部位との間で起こり、ヒトCHエクソン内に存在するスプライス領域でも起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流のネイティブ染色体部位で起こる。結果として得られるキメラ抗体を、いずれの強力なプロモーターと連結させてもよく、そのようなプロモーターとしては、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayamaら、Mol. Cell. Bio. 3巻:280頁(1983年))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gormanら、P.N.A.S. 79巻:6777頁(1982年))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedlら、Cell 41巻:885頁(1985年))が挙げられる。また、理解されるであろうが、ネイティブIgプロモーターおよびこれに類するものを使用してもよい。
さらに、当技術分野において周知の技法を使用して、限定ではないがファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイおよび他の技法を含む、ディスプレイ型の技法によってヒト抗体または他の種からの抗体を生成することができ、結果として得られる分子を、そのような技術が当技術分野において周知であるように、親和性成熟などのさらなる成熟に付すことができる。Wrightら、Crit, Reviews in Immunol. 12125-168(1992), Hanes and Plueckthun PNAS USA 94:4937-4942(1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith Gene 73:305-318(1988)(ファージディスプレイ)、Scott, TIBS, vol. 17:241-245(1992)、Cwirlaら、PNAS USA 87:6378-6382(1990)、Russelら、Nucl. Acids Research 21:1081-1085(1993)、Hoganboomら、Immunol. Reviews 130:43-68(1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH; 10:80-8A(1992)および米国特許第5,733,743号。ディスプレイ技術を利用してヒト抗体でない抗体を産生した場合、そのような抗体を上で説明したようにヒト化することができる。
これらの技法を使用して、EpCAM発現細胞、可溶性形態のEpCAM、それらのエピトープまたはペプチドに対する抗体、およびそれらの発現ライブラリーを生成することができ(例えば、米国特許第5,703,057号を参照されたい)、その後、それらを本明細書に記載の活性について上で説明したようにスクリーニングすることができる。
本発明のEpCAM抗体を、上記の単鎖抗体をコードするDNAセグメントを含有するベクターにより発現させることができる。
これらは、ベクター、リポソーム、裸のDNA、アジュバント補助DNA、遺伝子銃、カテーテルなどを含み得る。ベクターには、標的化部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)を有する化学的コンジュゲート、例えばWO93/64701に記載されているもの;ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター);融合タンパク質、例えば、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含有する融合タンパク質であるPCT/US95/02140(WO95/22618)に記載されているもの;プラスミド;ファージなどが含まれる。ベクターは、染色体ベクターであってもよく、非染色体ベクターであってもよく、または合成ベクターであってもよい。
好ましいベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、ポックスベクター、例えば、オルソポックスまたはトリポックスベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターが含まれる(Geller, A. I.ら、J. Neurochem, 64:487(1995);Lim, F.ら、in DNA Cloning:Mammalian Systems, D. Glover編(Oxford Univ. Press, Oxford England)(1995);Geller, A. I.ら、Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603(1993);Geller, A.I.ら、Proc Natl. Acad. Sci USA 87:1149(1990)を参照のこと)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalleら、Science, 259:988(1993);Davidsonら、Nat. Genet 3:219(1993);Yangら、J. Virol. 69:2004(1995)を参照のこと)およびアデノ随伴ベクター(Kaplitt, M. G.ら、Nat. Genet. 8:148(1994)を参照のこと)。
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。トリポックスウイルスベクターは、核酸のほんの短期の発現しかもたらさない。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、神経細胞への核酸の導入に好ましい。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4カ月)より短期の発現(約2カ月)をもたらし、そしてまたアデノ関連ウイルスは、HSVベクターより短い。選択される特定のベクターは、標的細胞および処置される状態に依存することになる。導入は、標準的技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換により得る。遺伝子移入様式の例としては、例えば、裸のDNA、CaPO4沈殿法、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合法、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが挙げられる。
ベクターを利用して、本質的にあらゆる所望の標的細胞を標的とすることができる。例えば、定位注射を使用して、ベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に指向させることができる。加えて、SynchroMed Infusion Systemなどのミニポンプ注入システムを使用して脳室内(icv)注入により粒子を送達することができる。対流と呼ばれる、総体流(bulk flow)に基づく方法も脳の拡張エリアへの大型分子の送達に有効であることが証明されており、標的細胞へのベクターの送達に有用であり得る。(Boboら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:2076~2080頁(1994年);Morrisonら、Am. J. Physiol. 266巻:292~305頁(1994年)を参照されたい)。使用することができる他の方法には、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内および皮下注射、ならびに経口または他の公知の投与経路が含まれる。
これらのベクターは、様々な方法で使用することができる大量の抗体を発現させるために使用することができる。例えば、試料中のEpCAMの存在を検出するために。抗体は、EpCAMに結合してEpCAM媒介シグナル伝達を妨害することを試みるために使用することもできる。
本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に技法を適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照されたい)。加えて、Fab発現ライブラリーの構築に方法を適合させて(例えば、Huseら、1989年、Science 246巻:1275~1281頁を参照されたい)、タンパク質またはその誘導体、断片、アナログもしくはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で有効な同定を可能にすることができる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含有する抗体断片は、当技術分野において公知の技法により産生させることができ、これらに限定されないが、(i)抗体分子のペプシン消化により産生されるF(ab’)2断片、(ii)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成されるFab断片、(iii)パパインおよび還元剤での抗体分子の処理により生成されるFab断片、および(iv)Fv断片を含む。
本発明は、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2抗EpCAM断片、単鎖EpCAM抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディまたはVHH)、多重特異性(例えば、二重特異性)抗EpCAM抗体、ならびにヘテロコンジュゲート抗EpCAM抗体も含む。
二重特異性抗体の作製方法は、当技術分野において公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2本の重鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づく(MilsteinおよびCuello、Nature、305巻:537~539頁(1983年))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな取り合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じさせ、そのうちの1個だけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常はアフィニティクロマトグラフィステップにより果たされる。同様の手順が、1993年5月13日に発行されたWO93/08829において、およびTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655~3659頁(1991年)において開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させることができる。好ましくは、融合は、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNAおよび必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121巻:210号(1986年)を参照されたい。
WO96/27011に記載の別のアプローチによれば、1対の抗体分子間の界面を、組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーの百分率を最大にするように作出することができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つまたは複数の小さいアミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖と同一のまたは同様のサイズの代償的「空洞」が、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって第2の抗体分子の界面に創出される。これは、他の望ましくない最終生成物、例えばホモダイマーより、ヘテロダイマーの収量を増加させるメカニズムを提供する。
二重特異性抗体を完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。抗体断片から二重特異性抗体を生成する技法は、文献に記載されている。例えば、化学連結を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら、Science 229巻:81頁(1985年)には、インタクトな抗体をタンパク質分解的に切断してF(ab’)2断片を生成する手順が記載されている。これらの断片は、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接ジチオールを安定させ、分子内ジスルフィド形成を防止する。生成されたFab’断片は、その後、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’-TNB誘導体の一方がメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。生じた二重特異性抗体を酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
加えて、Fab’断片をE.coliから直接回収し、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら、J. Exp. Med. 175巻:217~225頁(1992年)には、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生が記載されている。各Fab’断片をE.coliから別々に分泌させ、in vitroで指向性化学的カップリングに付して、二重特異性抗体を形成した。
組換え細胞培養物から二重特異性抗体断片を直接作製および単離する様々な技法も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生された。Kostelnyら、J. Immunol.148巻(5号):1547~1553頁(1992年)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に結合させた。抗体ホモダイマーをヒンジ領域において還元してモノマーを形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法を抗体ホモダイマーの産生に利用することもできる。Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444~6448頁(1993年)により記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替メカニズムを提供した。これらの断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続している重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、ある断片のVHおよびVLドメインは、別の断片の相補的VLおよびVHドメインと対合するように強いられ、その結果、2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(scFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を作製する別の戦略も報告されている。Gruberら、J. Immunol. 152巻:5368頁(1994年)を参照されたい。
2価より大きい価数を有する抗体も企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら、J. Immunol. 147巻:60頁(1991年)。
例示的二重特異性抗体は、少なくとも一方が本発明のタンパク質抗原に由来する2つの異なるエピトープに結合することができる。あるいは、免疫グロブリン分子の抗抗原性アームと、白血球上の誘発分子、例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28もしくはB7)、またはIgGのFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)に結合するアームとを組み合わせて、特定の抗原を発現する細胞に細胞防御メカニズムを集中させることができる。二重特異性抗体を使用して、特定の抗原を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を指向させることもできる。これらの抗体は、抗原結合アームと、細胞傷害性薬剤または放射性核種キレート剤、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTAもしくはTETAに結合するアームとを有する。目的の別の二重特異性抗体は、本明細書に記載のタンパク質抗原に結合し、さらに組織因子(TF)に結合する。
ヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合で連結している2つの抗体から構成される。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化するために(米国特許第4,676,980号を参照されたい)、およびHIV感染症の処置のために(WO91/00360、WO92/200373、EP03089を参照されたい)、提案された。架橋剤を含むものを含む、合成タンパク質化学において公知の方法を使用して、抗体をin vitroで調製することができることも企図される。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を構築することができる。このために好適な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデートならびに例えば米国特許第4,676,980号において開示されているものが挙げられる。
本発明の抗体を、エフェクター機能に関して、例えば、異常なEpCAMシグナル伝達に関連する疾患および障害を処置する際の抗体の有効性を増強するように、改変することが望ましいこともある。例えば、システイン残基をFc領域に導入することによって、この領域内での鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にすることができる。このようにして生成されたホモダイマー抗体は、向上した内在化能力ならびに/または増大した補体媒介細胞殺滅および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有することができる。(Caronら、J. Exp Med.、176巻:1191~1195頁(1992年)およびShopes、J. Immunol.、148巻:2918~2922頁(1992年)を参照されたい)。あるいは、二重Fc領域を有し、その結果、増強された補体溶解およびADCC能力を有することができる抗体を、作出することができる。(Stevensonら、Anti-Cancer Drug Design、3巻:219~230頁(1989年)を参照)。
本発明は、細胞傷害性薬剤、例えば、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはその断片)とコンジュゲートしている抗体、または放射性同位体とコンジュゲートしている抗体(すなわち、ラジオコンジュゲート(radioconjugate))を含む、イムノコンジュゲートにも関する。
使用することができる酵素的に活性な毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、体外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosaからのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、Momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類が挙げられる。様々な放射性核種がラジオコンジュゲート抗体の産生に利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reが挙げられる。
抗体と細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジプイミデートHCL)、活性エステル類(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性(bis-active)フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、Vitettaら、Science 238巻:1098頁(1987年)に記載されているようにリシン免疫毒素を調製することができる。炭素14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするための例示的キレート剤である。(WO94/11026を参照されたい)。
可能性のある多種多様な部分を本発明の結果としての抗体とカップリングさせることができることは、当業者には分かるであろう。(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J. M. CruseおよびR. E. Lewis, Jr(編集)、Carger Press、New York、(1989年)を参照されたく、この参考文献の全内容は参照により本明細書に組み込まれている)。
抗体および他の部分がそれらのそれぞれの活性を保持する限り、2つの分子を結合させるいかなる化学反応によってカップリングを果たしてもよい。この連結は、多くの化学的機構、例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合および錯化を含み得る。しかし、好ましい結合は、共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合または外部の架橋分子の組込みのいずれかによって達成することができる。多くの二価または多価結合剤が、本発明の抗体などのタンパク質分子を他の分子とカップリングさせるのに有用である。例えば、代表的なカップリング剤としては、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンなどの、有機化合物を挙げることができる。この列挙は、当技術分野において公知のカップリング剤の様々なクラスを網羅することを意図したものではなく、むしろ、より一般的なカップリング剤の典型例である。(KillenおよびLindstrom、Jour. Immun. 133巻:1335~2549頁(1984年);Jansenら、Immunological Reviews 62巻:185~216頁(1982年);およびVitettaら、Science 238巻:1098頁(1987年)を参照されたい)。
好ましいリンカーは、文献に記載されている。(例えば、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの使用を記載しているRamakrishnan, S.ら、Cancer Res. 44巻:201~208頁(1984年)を参照されたい)。オリゴペプチドリンカーにより抗体とカップリングされたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載している米国特許第5,030,719号も参照されたい。特に好ましいリンカーとしては、(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド塩酸塩、(ii)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem.Co.、Cat.(21558G))、(iii)SPDP(スクシンイミジル-6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ番号21651G)、(iv)Sulfo-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ番号2165-G)、および(v)EDCとコンジュゲートしているsulfo-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド:Pierce Chem.Co.、カタログ番号24510)が挙げられる。
上記のリンカーは、異なる特質を有する成分を含有し、したがって、異なる物理化学的特性を有するコンジュゲートをもたらす。例えば、アルキルカルボキシレートのsulfo-NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのsulfo-NHSエステルより安定性が高い。リンカーを含有するNHSエステルは、sulfo-NHSエステルより溶解性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害ジスルフィド結合を含有し、安定性が増したコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド連結は、in vitroで切断されるため、一般に、他の連結より安定性が低く、その結果、それほど多くのコンジュゲートを得ることができない。sulfo-NHSは、特に、カルボジイミドカップリングの安定性を増強することができる。カルボジイミドカップリング(例えば、EDC)は、sulfo-NHSと併用された場合、単独でのカルボジイミドカップリング反応よりも加水分解に対する抵抗性の高いエステルを形成する。
本明細書で開示される抗体をイムノリポソーム(immunoliposome)として製剤化することもできる。抗体を含有するリポソームは、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻:3688頁(1985年);Hwangら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、77巻:4030頁(1980年);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているものなどの、当技術分野において公知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは、米国特許第5,013,556号において開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて逆相蒸発法により生成することができる。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを生じさせるために、画定された孔径のフィルターに通して押し出される。本発明の抗体のFab’断片を、Martinら、J. Biol. Chem.、257巻:286~288頁(1982年)に記載されているようなリポソームと、ジスルフィド交換反応によってコンジュゲートさせることができる。
EpCAMに対する抗体の使用
本発明による治療用実体は、好適な担体、賦形剤、ならびに改善された移入、送達、耐容性およびこれらに類するものをもたらすために製剤に組み込まれる他の薬剤と共に投与されることになることは、理解されるであろう。多くの適切な製剤を、全ての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences(15版、Mack Publishing Company、Easton、PA (1975年))、特に、その中のBlaug、Seymourによる87章において見いだすことができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、(カチオン性またはアニオン性)脂質含有小胞(例えば、Lipofectin(商標))、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール類)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。前述のいずれの混合物も、本発明による処置および治療に適したものであり得るが、ただし、その製剤中の活性成分が製剤化により不活性化されないこと、およびその製剤が投与経路に生理学的に適合し、生理学的に許容されることを条件とする。Baldrick P.、「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」、Regul. Toxicol Pharmacol. 32巻(2号):210~8頁(2000年)、Wang W.、「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」、Int. J. Pharm. 203巻(1-2巻):1~60頁(2000年)、Charman WN、「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.」、J Pharm Sci. 89巻(8号):967~78頁(2000年)、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA J Pharm Sci Technol. 52巻:238~311頁(1998年)およびこれらの中の薬剤師に周知の製剤、賦形剤および担体に関する追加情報についての引用も参照されたい。
一実施形態では、本発明のモノクローナル抗体を含む、本発明の抗体を、治療剤として使用することができる。そのような薬剤は、被験体における異常なEpCAM発現、活性および/またはシグナル伝達に関連する疾患または病理を診断、予後判定(prognose)、モニター、処置、軽減および/または予防するために一般に利用されることになる。治療レジメンは、異常なEpCAM発現、活性および/またはシグナル伝達に関連する疾患または障害、例えば、がんまたは他の新生物障害に罹患している(またはそのような疾患もしくは障害を発症するリスクがある)被験体、例えば、ヒト患者を、標準的な方法を使用して同定することにより、行われる。抗体調製物、好ましくは、その標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有するものが、被験体に投与され、そのような抗体調製物には、一般に、標的とのその結合に起因して効果がある。抗体の投与は、標的(例えば、EpCAM)の発現、活性および/もしくはシグナル伝達機能をなくすもくしは阻害することができ、またはそのような発現、活性および/もしくはシグナル伝達機能に干渉することができる。抗体の投与は、標的(例えば、EpCAM)とそれが自然に結合する内因性リガンドとの結合をなくすもしくは阻害することができ、またはそのような結合に干渉することができる。例えば、抗体は、標的に結合し、EpCAM発現、活性および/もしくはシグナル伝達を調節するか、遮断するか、阻害するか、低減させるか、EpCAM発現、活性および/もしくはシグナル伝達に拮抗するか、EpCAM発現、活性および/もしくはシグナル伝達を中和するか、またはEpCAM発現、活性および/もしくはシグナル伝達に別様に干渉する。
異常なEpCAM発現、活性および/またはシグナル伝達に関係する疾患または障害としては、非限定的な例として、血液がんおよび/または固形腫瘍が挙げられる。血液がんは、例えば、白血病、リンパ腫および骨髄腫を含む。ある特定の形態の白血病としては、非限定的な例として、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性障害/新生物(MPDS)、および脊髄形成異常症候群が挙げられる。ある特定の形態のリンパ腫としては、非限定的な例として、ホジキンリンパ腫、低悪性度および侵襲性両方の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、ならびに濾胞性リンパ腫(小細胞型および大細胞型)が挙げられる。ある特定の形態の骨髄腫としては、非限定的な例として、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫が挙げられる。固形腫瘍としては、例えば、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ腫瘍(melanoma tumor)、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝臓腫瘍および腎臓腫瘍が挙げられる。
がんおよび他の新生物障害に関連する症状としては、例えば、炎症、発熱、全身倦怠感、発熱、疼痛(炎症部に局在することが多い)、食欲減退、体重減少、浮腫、頭痛、疲労、発疹、貧血、筋力低下、筋疲労、および腹部症状、例えば、腹痛、下痢または便秘が挙げられる。
本発明の抗体の治療有効量は、一般に、治療目的を達成するために必要な量に関係する。上で述べたように、この治療目的は、抗体とその標的抗原間の結合相互作用であり得、この相互作用は、ある特定の場合には標的の機能に干渉する。投与すべき必要量は、抗体のその特異的抗原に対する結合親和性にさらに依存することになり、投与される抗体がその投与を受ける他の被験体の自由体積から枯渇される速度にも依存することになる。本発明の抗体または抗体断片の治療有効投与の一般的範囲は、非限定的な例として、体重1kg当り約0.1mg~体重1kg当り約100mgであり得る。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回~週1回の範囲であり得る。
処置の有効性は、特定の炎症関連障害を診断または処置する任意の公知の方法に関連して決定される。炎症関連障害の1つまたは複数の症状の軽減は、抗体が臨床的有益性を付与することを示す。
別の実施形態では、EpCAMに対する抗体は、EpCAMの局在定位(localization)および/または定量に関する当技術分野の中で公知の方法において(例えば、適切な生理学的試料中のEpCAMのレベルの測定に使用するために、診断方法において使用するために、タンパク質のイメージングに使用するために、など)使用することができる。所与の実施形態では、EpCAMに特異的な抗体、または抗体由来の抗原結合ドメインを含有する抗体の誘導体、断片、アナログもしくはホモログは、薬理学的活性化合物(本明細書では以降「治療薬」と称される)として利用される。
別の実施形態では、EpCAMに対して特異的な抗体を使用して、免疫親和性、クロマトグラフィまたは免疫沈降法などの標準的技法により、EpCAMポリペプチドを単離することができる。EpCAMタンパク質(またはその断片)に対する抗体を診断的に使用して、例えば、所与の処置レジメンの有効性を決定するために、例えば、臨床試験手順の一部として、組織内のタンパク質レベルをモニターすることができる。抗体を検出可能な物質とカップリングする(すなわち、物理的に結合させる)ことにより、検出を助長することができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料が挙げられる。好適な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、好適な放射性材料の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
さらに別の実施形態では、本発明による抗体は、試料中のEpCAM(またはそのタンパク質断片)の存在を検出するための薬剤として使用することができる。一部の実施形態では、抗体は、検出可能な標識を含有する。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルである。インタクトな抗体、またはその断片(例えば、Fab、scFv、もしくはF(ab’)2)が使用される。プローブまたは抗体に関して、用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体とカップリングする(すなわち、物理的に連結させる)ことによりプローブまたは抗体を直接標識すること、ならびに直接標識されている別の試薬との反応性によりプローブまたは抗体を間接的に標識することも包含する。間接標識することの例は、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出;および蛍光標識されたストレプトアビジンでビオチンを検出することができるようにビオチンでDNAプローブの末端を標識することを含む。用語「生体試料」は、被験体から単離された組織、細胞および生体液、ならびに被験体内に存在する組織、細胞および流体も含むことを意図したものである。したがって、用語「生体試料」の用法の範囲には、血液および血液の画分または成分(血清、血漿もしくはリンパ液を含む)が含まれる。つまり、本発明の検出方法を使用して、生体試料中の検体mRNA、タンパク質またはゲノムDNAをin vitroならびにin vivoで検出することができる。例えば、検体mRNAのin vitroでの検出法としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。検体タンパク質のin vitroでの検出法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法が挙げられる。検体ゲノムDNAのin vitroでの検出法としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。イムノアッセイを行うための手順は、例えば、「ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology」、42巻、J. R. Crowther(編集) Human Press、Totowa、NJ、1995年;「Immunoassay」、E. DiamandisおよびT. Christopoulus、Academic Press, Inc.、San Diego、CA、1996年;ならびに「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、P. Tijssen、Elsevier Science Publishers、Amsterdam、1985年に記載されている。さらに、検体タンパク質のin vivoでの検出法は、標識された抗検体タンパク質抗体を被験体に導入することを含む。例えば、被験体内のその存在または位置を標準的なイメージング法により検出することができる放射性マーカーを用いて抗体を標識することができる。
IV.調製方法
本明細書に記載のMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)は、当技術分野において公知のタンパク質発現および精製方法のいずれによって調製してもよい。
一部の実施形態では、本出願は、本明細書に記載のMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)のいずれか1つについてのポリペプチド鎖の1つまたは複数をコードする、単離された核酸を提供する。一部の実施形態では、単離された核酸は、配列番号31または配列番号32の核酸配列を含む。単離された核酸は、DNAであってもよく、またはRNAであってもよい。
一部の実施形態では、単離された核酸は、ベクター、例えば、発現ベクター、ウイルスベクターまたはクローニングベクターに挿入される。核酸の発現のために、ベクターを宿主細胞に導入して、宿主細胞内での核酸の発現を可能にすることができる。発現ベクターは、発現を制御するための様々なエレメントを含有することができ、そのようなエレメントとしては、限定ではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択マーカー、およびシグナル配列が挙げられる。これらのエレメントを当業者は必要に応じて選択することができる。例えば、ベクター内のポリヌクレオチドの転写を促進するためにプロモーター配列を選択してもよい。好適なプロモーター配列としては、限定ではないが、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、EF1aプロモーター、CMVプロモーター、およびSV40プロモーターが挙げられる。核酸の転写を増進させるためにエンハンサー配列を選択してもよい。ベクターが挿入された宿主細胞を挿入されていないものから選択できるようにするために選択マーカーを選択してもよく、例えば、選択マーカーは、抗生物質耐性を付与する遺伝子であってもよい。発現されたポリペプチドを宿主細胞の外に輸送できるようにするためにシグナル配列を選択してもよい。一部の実施形態では、単離された核酸は、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、配列番号34の核酸配列を含む。
一部の実施形態では、上記のベクターを含有する、単離された宿主細胞が提供される。ベクターを含有する宿主細胞は、単離された核酸の発現またはクローニングに有用であり得る。好適な宿主細胞としては、限定ではないが、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、または高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞を挙げることができる。E.coliなどの原核細胞における抗体および抗原結合性断片の発現は、当技術分野において十分に確立されている。総説については、例えば、Pluckthun, A.、BioTechnology 9巻:545~551頁(1991年)を参照されたい。培養での真核細胞における発現も、抗体またはそれらの抗原結合性断片の産生の選択肢として当業者は利用できる。最近の総説、例えば、Ref, M.E. (1993年) Curr. Opinion Biotech. 4巻:573~576頁;Trill J. J.ら(1995年) Curr. Opinion Biotech 6巻:553~560頁を参照されたい。高等真核細胞、特に、多細胞生物に由来するものを、グリコシル化ポリペプチドの発現に使用することができる。好適な高等真核細胞としては、限定ではないが、無脊椎動物細胞および昆虫細胞、ならびに脊椎動物細胞が挙げられる。
当技術分野において公知のいずれの好適な方法を使用してベクターを宿主細胞に導入してもよく、そのような方法としては、DEAE-デキストラン媒介送達、リン酸カルシウム沈殿法、カチオン性脂質媒介送達、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃(microprojectile bombardment)、受容体媒介遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサンおよびペプチドにより媒介される送達が挙げられるが、これらに限定されない。目的のベクターの発現のための細胞の標準的なトランスフェクションおよび形質転換方法は、当技術分野において周知である。一部の実施形態では、宿主細胞は、第1のポリペプチドをコードする第1のベクター、および第2のポリペプチドをコードする第2のベクターを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードする単離された核酸を含む単一のベクターを含む。
一部の実施形態では、本出願は、本明細書に記載のMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)のいずれかを発現させる方法であって、ベクターを含有する単離された宿主細胞を培養するステップ、および細胞培養物からMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)を回収するステップを含む方法を提供する。単離された宿主細胞は、ベクターに挿入された単離された核酸の発現を可能にする条件下で培養される。ポリヌクレオチドの発現に好適な条件としては、限定ではないが、好適な培地、培養培地中の宿主細胞の好適な密度、必要栄養素の存在、補足因子の存在、好適な温度および湿度、ならびに微生物夾雑物の非存在を挙げることができる。当業者は、発現のために必要に応じて好適な条件を選択することができる。
一部の実施形態では、宿主細胞において発現されたポリペプチドは、ダイマーを形成することができ、したがって、本明細書に記載のMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)を産生することができる。一部の実施形態では、宿主細胞において発現されたポリペプチドは、ホモダイマーであるポリペプチド複合体を形成することができる。宿主細胞が第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドを発現する一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、ヘテロダイマーであるポリペプチド複合体を形成することができる。
一部の実施形態では、ポリペプチド複合体(例えば、MSFPまたは抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片)を宿主細胞内で形成することができる。例えば、適切な酵素および/または補因子の補助のもと、宿主細胞内でダイマーを形成することができる。一部の実施形態では、ポリペプチド複合体を細胞から外に分泌させることができる。一部の実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、宿主細胞から外に分泌され、宿主細胞の外部でダイマー(例えば、MSFPまたは抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片)を形成することができる。
一部の実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを好適な条件下で別々に発現させ、ダイマー化させて、MSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)を形成することができる。例えば、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを好適な緩衝液中で併せ、第1のタンパク質モノマーおよび第2のタンパク質モノマーを疎水性相互作用など適切な相互作用によってダイマー化させることができる。一部の実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのダイマー化を促進することができる酵素および/または補因子を含有する好適な緩衝液中で、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを併せることができる。一部の実施形態では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを好適なビヒクル中で併せ、好適な試薬および/または触媒の存在下で互いに反応させることができる。
発現されたポリペプチド(複数可)および/またはポリペプチド複合体を、任意の好適な方法を使用して収集することができる。ポリペプチド(複数可)および/またはポリペプチド複合体を細胞内で細胞膜周辺腔において発現させることができ、または細胞の外部の培地に分泌させることができる。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体が細胞内で発現された場合、ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を含有する宿主細胞を溶解することができ、遠心分離または限外濾過により望ましくない残屑を除去することによってポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を溶解物から単離することができる。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体が、E.coliの細胞膜周辺腔に分泌された場合、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)などの薬剤の存在下で約30分間解凍し、細胞残屑を遠心分離により除去することができる(Carterら、BioTechnology 10巻:163~167頁(1992年))。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体が、培地に分泌された場合、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AminconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、細胞培養物の上清を収集し、濃縮することができる。プロテアーゼ阻害剤および/または抗生物質を収集および濃縮ステップに含めて、タンパク質分解および/または夾雑微生物の増殖を阻害することができる。
一部の実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを好適な条件下で別々に発現させ、ダイマー化させて、MSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはその抗原結合性断片)を形成することができる。例えば、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを好適な緩衝液中で併せ、第1のタンパク質モノマーおよび第2のタンパク質モノマーを疎水性相互作用など適切な相互作用によってダイマー化させることができる。一部の実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのダイマー化を促進することができる酵素および/または補因子を含有する好適な緩衝液中で、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを併せることができる。一部の実施形態では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを好適なビヒクル中で併せ、好適な試薬および/または触媒の存在下で互いに反応させることができる。
一部の実施形態では、ポリペプチドおよび/またはポリペプチドダイマー複合体をアフィニティクロマトグラフィにより精製することができる。一部の実施形態では、プロテインAクロマトグラフィまたはプロテインA/G(プロテインAとプロテインGの融合タンパク質)クロマトグラフィは、抗体CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインに由来する成分を含むポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Lindmarkら、J. Immunol. Meth. 62巻:1~13頁(1983年);Zettlit, K. A.、Antibody Engineering、Part V、531~535頁、2010年)。一部の実施形態では、プロテインGクロマトグラフィは、IgGγ3重鎖を含むポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Gussら、EMBO J. 5巻:1567 1575頁(1986年))。一部の実施形態では、プロテインLクロマトグラフィは、κ軽鎖を含むポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Sudhir, P.、Antigen engineering protocols、26章、出版元Humana Press、1995年;Nilson, B. H. K.ら、J. Biol. Chem.、267巻、2234~2239頁(1992年))。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリクスも利用可能である。機械的に安定なマトリクス、例えば、細孔制御ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成することができるものより速い流量および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。
V.医薬組成物、単位投与量、製造物品、およびキット
本出願によりさらに提供されるのは、本明細書に記載のMSFPまたは抗EpCAM抗体(もしくはそれらの抗原結合性断片)のいずれか1つと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
医薬組成物は、例えば全身投与または限局投与を含む、本明細書に記載の様々な投与様式に好適であり得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍部位への局所投与用に製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内注射用に製剤化される。
本明細書で使用される「担体」は、用いられる投与量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含む。生理的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);保存薬(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む);キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、5.0~約8.0、約6.5~約7.5、または約6.5~約7.0のうちのほぼいずれか1つのpH範囲を含む、約4.5~約9.0の範囲のpHを有するように製剤化される。一部の実施形態では、グリセロールなどの好適な張度調節物質(tonicity modifier)の添加により、医薬組成物を血液と等張にすることもできる。
in vivo投与に使用されることになる医薬組成物は、一般に、無菌の、実質的に等張性のものとして、かつアメリカ食品医薬品局の全ての適正製造基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)を完全に順守して製剤化される。無菌性は、滅菌濾過膜による濾過によって容易に果たされる。一部の実施形態では、組成物は病原体を含まない。注射のために、医薬組成物は、例えば、ハンクス液またはリンゲル液などの生理学的に適合性の緩衝液中の、液体溶液の形態であり得る。加えて、医薬組成物は、固体形態であり得、使用の直前に再溶解または再懸濁され得る。凍結乾燥組成物も含まれる。
一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、腹腔内または硝子体内注射に適合された医薬組成物として、通例の手順に従って製剤化される。典型的に、注射用の組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化剤、および注射部位の疼痛を和らげるための局所麻酔薬、例えばリグノカインも含むことがある。一般に、成分は、別々にまたは一緒に混合されて、単位剤形で、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサッシェ(sachette)などの密封容器内の乾燥した凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。組成物が注入によって投与されることになる場合、医薬品グレードの滅菌水または食塩水を含む注入ボトルで組成物を分配することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように注射用滅菌水または食塩水用のアンプルを提供することができる。
一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。一部の実施形態では、医薬組成物は、単回使用密封バイアルなどの単回使用バイアルに収容されている。一部の実施形態では、医薬組成物は、複数回使用バイアルに収容されている。一部の実施形態では、医薬組成物は、バルクで容器に収容されている。一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結保存される。
MSFP、抗EpCAM抗体(またはその抗原結合断片)、またはその組成物の単位剤形もまた提供される。それぞれの投与量は、約0.01μg~約10mg、例えば、約0.01μg~約10mg、約0.01μg~約5mg、約0.01μg~約1mg、約0.1μg~約300μg、約0.1μg~約200μg、約0.1μg~約100μg、約0.1μg~約90μg、約0.1μg~約80μg、約0.1μg~約70μg、約0.1μg~約60μg、約0.1μg~約50μg、約0.1μg~約40μg、約0.1μg~約30μg、約0.1μg~約20μg、約0.1μg~約10μg、約0.1μg~約5μgまたは約0.1μg~約1μgのいずれかを含み得る。一部の実施形態では、MSFP、抗EpCAM抗体(またはその抗原結合断片)、またはその組成物の単位剤形は、以下のいずれかの範囲内であり、この範囲は、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、or30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、1000μg、1500μg、2000μg、2500μg、3000μg、6000μgまたは10000μgのいずれかの上限、および0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、or30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、1000μg、1500μg、2000μg、2500μg、3000μg、6000μgまたは10000μgのいずれかの独立して選択される下限を有し、下限は上限未満である。用語「単位剤形」は、各々の単位が、所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性物質を好適な医薬担体、希釈剤または賦形剤と会合した状態で含有する、個体への単位投与量として好適な物理的に個別の単位を意味する。これらの単位剤形を、単一のまたは複数の単位投薬量で好適なパッケージング内に保管することができ、さらに滅菌および密封することもできる。
本出願は、好適なパッケージング内の本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)を含む、製造物品をさらに提供する。本明細書に記載の組成物(例えば、MSFPまたは抗EpCAM抗体組成物)のための好適なパッケージングは、当技術分野において公知であり、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、器、アンプル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージング(例えば、密封マイラーまたはプラスチックバッグ)およびこれらに類するものを含む。これらの製造物品をさらに滅菌および/または密封することができる。
本出願は、本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)を含むキットであって、本明細書に記載の使用などの、組成物の使用の方法に関する指示をさらに含むこともあるキットも提供する。本明細書に記載のキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、および本明細書に記載するいずれかの方法を行うための指示を伴う添付文書をはじめとする、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むこともある。
例示的実施形態
本発明は、以下の実施形態を提供する:
1.個体においてがんを処置するための方法であって、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメインとを含む有効量の多重特異性Fab融合タンパク質を前記個体に投与するステップを含み、前記結合ドメインが、前記Fab断片のN末端に融合しており、前記多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.01μg/kg~約250μg/kgの用量で投与される、方法。
2.前記結合ドメインが、scFvである、実施形態1に記載の方法。
3.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、前記第1のscFvが、前記Fab断片のVHのN末端に融合しており、前記第2のscFvが、前記Fab断片のVLのN末端に融合している、実施形態2に記載の方法。
4.前記第1のscFvおよび前記第2のscFvが、同じ配列を有する、実施形態3に記載の方法。
5.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、静脈内投与される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、低頻度で投与される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、毎週2回投与される、実施形態6に記載の方法。
8.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、カニクイザルについて約0.1μg/kg~約100μg/kgに等しい用量で投与される、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、カニクイザルについて約30μg/kg以下に等しい用量で投与される、実施形態9に記載の方法。
11.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、前記個体に第1の期間の間第1の用量で投与され、引き続いて、前記多重特異性Fab融合タンパク質が、前記個体に第2の期間の間第2の用量で投与され、前記第2の用量が、前記第1の用量を超える、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.前記第2の期間が前記第1の期間を超える、実施形態11に記載の方法。
13.前記第1の期間が少なくとも約7日間である、実施形態11または実施形態12に記載の方法。
14.前記第2の期間が少なくとも約2週間である、実施形態11~13のいずれか一項に記載の方法。
15.前記第1の用量が約1μg/kg以下である、実施形態11~14のいずれか一項に記載の方法。
16.前記第2の用量が、約0.1μg/kg~約10μg/kgである、実施形態11~14のいずれか一項に記載の方法。
17.前記個体にグルココルチコイドを投与することをさらに含む、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
18.前記グルココルチコイドが、デキサメタゾンである、実施形態17に記載の方法。
19.前記グルココルチコイドが、前記多重特異性Fab融合タンパク質の前記第1の用量の前に投与される、実施形態17または実施形態18に記載の方法。
20.前記グルココルチコイドが、約0.1mg/kg~約5mg/kgの用量で投与される、実施形態17~19のいずれか一項に記載の方法。
21.前記個体が、ヒト個体である、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
22.前記Fab断片が、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
23.前記Fab断片が、CD3イプシロンのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する、実施形態22に記載の方法。
24.前記Fab断片のVHが、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、実施形態23に記載の方法。
25.前記Fab断片のVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態23または実施形態24に記載の方法。
26.前記Fab断片のVHが、配列番号7および39~43からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態23~25のいずれか一項に記載の方法。
27.前記Fab断片のVLが、配列番号8および44~47からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態23~26のいずれか一項に記載の方法。
28.前記Fab断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖定常領域1(CH1)を含む、実施形態23~27のいずれか一項に記載の方法。
29.前記Fab断片が、配列番号10のアミノ酸配列を含むヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、実施形態23~28のいずれか一項に記載の方法。
30.前記Fab断片のCH1およびCLが、1つまたは複数のジスルフィド結合により接続している、実施形態23~29のいずれか一項に記載の方法。
31.前記Fab断片が、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む、実施形態30に記載の方法。
32.前記Fab断片が、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、実施形態30または実施形態31に記載の方法。
33.前記がんが、EpCAM陽性固形がんである、実施形態1~32のいずれか一項に記載の方法。
34.前記EpCAM陽性固形がんが、癌腫または腺癌である、実施形態33に記載の方法。
35.前記がんが、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される、実施形態1~34のいずれか一項に記載の方法。
36.前記がんが、結腸直腸腺癌である、実施形態35に記載の方法。
37.前記がんが、肺腺癌である、実施形態35に記載の方法。
38.前記scFvが、N-VH-VL-C融合ポリペプチドを含む、実施形態2~37のいずれか一項に記載の方法。
39.前記scFvのVHが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、実施形態2~38のいずれか一項に記載の方法。
40.前記scFvのVLが、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態2~39のいずれか一項に記載の方法。
41.前記scFvのVHが、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態2~40のいずれか一項に記載の方法。
42.前記scFvのVLが、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態2~41に記載の方法。
43.前記scFvが、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態42に記載の方法。
44.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む、実施形態1~43のいずれか一項に記載の方法。
45.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、実施形態1~44のいずれか一項に記載の方法。
46.(1)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(2)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および(3)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(2)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および(3)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む、抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片。
47.重鎖可変ドメイン配列が、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む、実施形態46に記載の抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片。
48.軽鎖可変ドメイン配列が、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む、実施形態46または実施形態47に記載の抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片。
49.抗EpCAM抗体が、ヒトIgGのFc配列を含む、実施形態46~48のいずれか1項に記載の抗EpCAM抗体またはその抗原結合性断片。
50.多重特異性抗体である、実施形態46~49のいずれか一項に記載の抗EpCAM抗体。
51.単鎖Fv(scFv)である、実施形態46~48のいずれか一項に記載の抗EpCAM抗体の抗原結合性断片。
52.前記scFvが、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態51に記載の抗EpCAM抗体の抗原結合性断片。
53.実施形態46~48および51~52のいずれか一項に記載の抗EpCAM抗原結合性断片を含む、多重特異性Fab融合タンパク質。
54.CD3に特異的に結合するFab断片と、抗EpCAM抗原結合性断片の第1のコピーと、抗EpCAM抗原結合性断片の第2のコピーとを含み、前記抗EpCAM抗原結合性断片の前記第1のコピーが、前記Fab断片のVHのN末端に融合しており、前記抗EpCAM抗原結合性断片の前記第2のコピーが、前記Fab断片のVLのN末端に融合している、実施形態53に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
55.前記Fab断片が、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する、実施形態54に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
56.前記Fab断片が、CD3イプシロンのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する、実施形態55に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
57.前記Fab断片のVHが、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、実施形態56に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
58.前記Fab断片のVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態56または実施形態57に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
59.前記Fab断片のVHが、配列番号7および39~43からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態56~58のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
60.前記Fab断片のVLが、配列番号8および44~47からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態56~59のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
61.前記Fab断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖定常領域1(CH1)を含む、実施形態53~60のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
62.前記Fab断片が、配列番号10のアミノ酸配列を含むヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、実施形態53~61のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
63.前記Fab断片のCH1およびCLが、1つまたは複数のジスルフィド結合により接続している、実施形態53~62のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
64.前記Fab断片が、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む、実施形態56~63のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
65.前記Fab断片が、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、実施形態56~64のいずれか一項に記載の多重特異性Fab融合タンパク質。
66.実施形態46~65のいずれか1項に記載の抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片または多重特異性Fab融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
67.実施形態66に記載の単離された核酸分子をコードする、発現ベクター。
68.実施形態67に記載の発現ベクターを含む、単離された宿主細胞。
69.抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片または多重特異性Fab融合タンパク質を産生させる方法であって、実施形態68に記載の単離された宿主細胞を培養するステップ、および細胞培養物から抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片または多重特異性Fab融合タンパク質を回収するステップを含む、方法。
70.実施形態46~65のいずれか一項に記載の抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片または多重特異性Fab融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
71.個体においてがんを処置する方法であって、実施形態70に記載の組成物の有効量を個体に投与するステップを含む、方法。
72.個体においてがんを処置するための医薬の調製における、実施形態46~65のいずれか一項に記載の抗EpCAM抗体もしくはその抗原結合性断片または多重特異性Fab融合タンパク質の使用。
73.個体においてがんを処置するための医薬の調製における多重特異性Fab融合タンパク質の使用であって、前記多重特異性Fab融合タンパク質が、CD3に特異的に結合するFab断片と、EpCAMに特異的に結合する結合ドメインとを含み、前記結合ドメインが、前記Fab断片のN末端に融合している、使用。
74.前記結合ドメインが、scFvである、実施形態73に記載の使用。
75.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、EpCAMに特異的に結合する第1のscFvと、EpCAMに特異的に結合する第2のscFvとを含み、前記第1のscFvが、前記Fab断片のVHのN末端に融合しており、前記第2のscFvが、前記Fab断片のVLのN末端に融合している、実施形態74に記載の使用。
76.前記第1のscFvおよび前記第2のscFvが、同じ配列を有する、実施形態75に記載の使用。
77.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、静脈内投与される、実施形態73~76のいずれか一項に記載の使用。
78.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、低頻度で投与される、実施形態73~77のいずれか一項に記載の使用。
79.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、毎週2回投与される、実施形態78に記載の使用。
80.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、約0.1μg/kg~約250μg/kgの用量で投与される、実施形73~79のいずれか一項に記載の使用。
81.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、カニクイザルについて約0.1μg/kg~約100μg/kgに等しい用量で投与される、実施形態80に記載の使用。
82.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、サイトカインストームを誘導しない用量で投与される、実施形態63~81のいずれか一項に記載の使用。
83.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、前記個体に第1の期間の間第1の用量で投与され、引き続いて、前記多重特異性Fab融合タンパク質が、前記個体に第2の期間の間第2の用量で投与され、前記第2の用量が、前記第1の用量を超える、実施形態63~82のいずれか一項に記載の使用。
84.前記第2の期間が前記第1の期間を超える、実施形態83に記載の使用。
85.前記第1の期間が少なくとも約7日間である、実施形態83または実施形態84に記載の使用。
86.前記第2の期間が少なくとも約2週間である、実施形態83~85のいずれか一項に記載の使用。
87.前記第1の用量が約1μg/kg以下である、実施形態83~86のいずれか一項に記載の使用。
88.前記第2の用量が、約0.1μg/kg~約10μg/kgである、実施形態83~87のいずれか一項に記載の使用。
89.前記個体にグルココルチコイドを投与することをさらに含む、実施形態83~88のいずれか一項に記載の使用。
90.前記グルココルチコイドが、デキサメタゾンである、実施形態89に記載の使用。
91.前記グルココルチコイドが、前記多重特異性Fab融合タンパク質の前記第1の用量の前に投与される、実施形態89または実施形態90に記載の使用。
92.前記グルココルチコイドが、約0.1mg/kg~約5mg/kgの用量で投与される、実施形態89~91のいずれか一項に記載の使用。
93.前記個体が、ヒト個体である、実施形態73~92のいずれか一項に記載の使用。
94.前記Fab断片が、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する、実施形態73~93のいずれか一項に記載の使用。
95.前記Fab断片が、CD3イプシロンのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する、実施形態94に記載の使用。
96.前記Fab断片のVHが、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、実施形態95に記載の使用。
97.前記Fab断片のVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態95または実施形態96に記載の使用。
98.前記Fab断片のVHが、配列番号7および39~43からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態95~97のいずれか一項に記載の使用。
99.前記Fab断片のVLが、配列番号8および44~47からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態95~98のいずれか一項に記載の使用。
100.前記Fab断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖定常領域1(CH1)を含む、実施形態95~99のいずれか一項に記載の使用。
101.前記Fab断片が、配列番号10のアミノ酸配列を含むヒトラムダ軽鎖定常領域を含む、実施形態95~100のいずれか一項に記載の使用。
102.前記Fab断片のCH1およびCLが、1つまたは複数のジスルフィド結合により接続している、実施形態95~101のいずれか一項に記載の使用。
103.前記Fab断片が、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む、実施形態102に記載の使用。
104.前記Fab断片が、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、実施形態102または実施形態103に記載の使用。
105.前記がんが、EpCAM陽性固形がんである、実施形態73~104のいずれか一項に記載の使用。
106.前記EpCAM陽性固形がんが、癌腫または腺癌である、実施形態105に記載の使用。
107.前記がんが、小腸がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、皮膚がん、腎がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、乳がん、胆管がんおよび頭頸部がんからなる群より選択される、実施形態73~106のいずれか一項に記載の使用。
108.前記がんが、結腸直腸腺癌である、実施形態107に記載の使用。
109.前記がんが、肺腺癌である、実施形態107に記載の使用。
110.前記scFvが、N-VH-VL-C融合ポリペプチドを含む、実施形態74~109のいずれか一項に記載の使用。
111.前記scFvのVHが、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2および配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、実施形態74~110のいずれか一項に記載の使用。
112.前記scFvのVLが、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L2および配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態74~111のいずれか一項に記載の使用。
113.前記scFvのVHが、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74~112のいずれか一項に記載の使用。
114.前記scFvのVLが、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74~113に記載の使用。
115.前記scFvが、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態114に記載の使用。
116.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む、実施形態73~115のいずれか一項に記載の使用。
117.前記多重特異性Fab融合タンパク質が、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、約100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドを含む、実施形態73~116のいずれか一項に記載の使用。
下記の実施例は、本発明の単なる典型例であることを意図したものであり、したがって、いかなる点においても本発明を限定するものと考えるべきではない。以下の実施例および詳細な説明は、実例として提供するものであり、限定として提供するものではない。実験方法の詳細を記載しない実施形態については、そのような方法を、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)に記載のものなどの従来の条件に従って行うか、または製造業者によって示唆される通りに行う。
(実施例1:例示的二重特異性Fab融合タンパク質の発現および精製)
1.一過性発現
標準的プロトコールを使用して、Fab断片またはFab融合タンパク質を発現させた。Fab融合タンパク質の軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を発現ベクターpcDNAにクローニングして、軽鎖および重鎖を発現する構築物を生成した。構築物は、軽鎖および重鎖タンパク質の分泌を助長するためのシグナルペプチドをコードする配列も含有した。シークエンシング結果は、正しい遺伝子挿入を示した。構築物をE.coliに形質転換して、トランスフェクショングレードのプラスミドDNAを得た。HEK293F細胞をEXPI293(商標)発現培地(Invitrogen)で増殖させた。トランスフェクションのために、プラスミドDNAと25kDポリエチレンイミン(PEI;1:3のDNA/直鎖状25kD PEI重量比)を含有する10mLの培地を90mLの細胞培養物に添加した。トランスフェクトされた細胞を約6日間、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、125rpm)において培養し、その後、上清を収集した。
2.安定発現
例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(以降、ITAB1002と呼ぶ)の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号32)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子を有する発現ベクターにクローニングした。EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の重鎖をコードするDNA断片(配列番号31)を、ピューロマイシン耐性遺伝子を有する発現ベクターにクローニングした。Fab融合タンパク質の軽鎖および重鎖をコードするDNA断片は、各々、コザック配列およびシグナルペプチド配列(アミノ酸配列を配列番号33として示し、核酸配列を配列番号34として示す)も含み、DNA断片をHindIII制限酵素部位とNotI制限酵素部位の間にクローニングして、軽鎖および重鎖を発現する構築物をそれぞれ生成した。重鎖遺伝子または軽鎖遺伝子をそれぞれ有する40μgのDNAプラスミドを、対数増殖期のCHO-S懸濁細胞に、細胞数が約8×108になったら、エレクトロポレーション(MaxCyte)によってトランスフェクトした。24時間後に細胞を計数した。次いで、トランスフェクトされた細胞を、5μg/mLのピューロマイシン(Invitrogen)および200μg/mLのハイグロマイシンB(HyClone)を含有するCD OptiCHO培地(Invitrogen)に、細胞約1.5×106個/mLの密度で播種し、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、125rpm)において培養した。トランスフェクトされた細胞が正常な増殖速度に戻るまで2~3日ごとに新鮮培地を交換し、その後、対数増殖期の細胞を収集し、安定にトランスフェクトされた細胞集団を保管し、限界希釈により単一細胞クローンを得た。安定にトランスフェクトされた細胞集団を、1×グルタミン酸および1g/LのPF68を補充したCD OptiCHO培地(Invitrogen)で培養した(37℃、5%CO2、125rpm)。細胞密度が、少なくとも細胞3×106個/mLに達したら、細胞を32℃インキュベーション(HF511 2.5%、HF502 0.2%、MednaBio)に移し、培地を2日ごとに交換した。2~4回の培地交換後、上清を収集した。
細胞培養上清をIgG-CH1アフィニティクロマトグラフィ(Thermo Fisher Scientific)で精製して、標的タンパク質を得た。細胞培養上清を0.22μm滅菌膜に通して濾過し、150mM NaClおよび10mM リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.5)で平衡させたIgG-CH1アフィニティマトリクスにロードし、150mM NaClおよび50mM NaAc緩衝液(pH3.5)で溶出した。溶出物を2M Tris溶離液で7.2のpHに調整し、10kDの分子量カットオフを有するVivaspin遠心濃縮機(Sartorius)で濃縮した。精製されたタンパク質を4℃で保管した。4~20%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して非還元および/または還元(5%β-メルカプトエタノール)条件下でタンパク質を分析した。分析結果を図2Aおよび2Bに示す。非還元および/または還元キャピラリー電気泳動(CE-SDS、Beckman Coulter、PA 800プラス)を行って、精製Fab融合タンパク質を分析した。結果を図3Aおよび3Bに示す。HPLC分析は、精製Fab融合タンパク質の純度が>90%であることを示した。
図2Aおよび2Bは、精製EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質のSDS-PAGE分析結果を示す。図2Aは、非還元SDS-PAGEの結果を示す。レーン1は、上から下に分子量が200、150、120、100、85、70、60、50、40、30、25、20、15、10kDである、タンパク質分子量標準PAGERULER(商標)未染色タンパク質ラダー(Thermo Scientific)を含む。レーン2は、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の理論分子量に類似の、約100kDの分子量を有する精製タンパク質を含む。図2Bは、還元SDS-PAGEの結果を示す。レーン1は、上から下に分子量が116、66.2、45、35、25、18.4、14.4である、タンパク質分子量標準PIERCE(商標)未染色タンパク質MWマーカー(Thermo Scientific)を含む。レーン2は、分子量が45~66kDの間である、精製タンパク質を含む。
図3Aおよび3Bは、精製EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質のキャピラリー電気泳動(CE-SDS)の結果を示す。図3Aは、泳動時間約21.59分に単一タンパク質ピークを示す、非還元CE-SDS結果を示す。図3Bは、Fab融合タンパク質の軽鎖および重鎖にそれぞれ対応する泳動時間約18.37分および約18.84分に2つの単一タンパク質ピークを示す、還元CE-SDS結果を示す。
(実施例2:EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の結合親和性の決定)
抗原結合親和性
例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の抗EpCAMおよび抗CD3ドメインと対応するヒトおよびカニクイザル抗原との結合親和性を、Octet QKeと抗ヒトIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサーを使用して測定した。ヒトEpCAM抗原構築物(huEpCAM.Fc)およびカニクイザルEpCAM抗原構築物(cynoEpCAM.Fc)は、ヒトIgG Fcに融合している完全長EpCAMタンパク質を有した。ヒトCD3抗原構築物(CD3εAA 1-27.Fc)およびカニクイザルCD3抗原構築物(cynoCD3εAA 1-27.Fc)は、ヒトIgG Fcに融合しているCD3イプシロンのアミノ酸1~27からなるペプチドを有した。抗原構築物の発現は、米国特許第8,846,042号に記載されている。抗原構築物を希釈液(PBS、0.1%BSA、0.02%Tween-20、0.05%NaN3)で0.02mg/mLに希釈し、次いで、抗hIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサーに固定化した。ITAB1002を様々な濃度に希釈し、黒色マイクロプレートに200μL/ウェルで添加した。PBSのみを含有する対照ウェルも設定した。ForteBio Data AcquisitionおよびForteBio Data Analysisソフトウェアを使用して、検出結果を分析した。
表1に示すように、抗EpCAMおよび抗CD3ドメインは、ヒトおよびカニクイザルEpCAMおよびCD3構築物両方に対してin vitro結合親和性をそれぞれ有した。これは、ヒトおよびカニクイザルにおけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の交差反応性を示す。
細胞結合親和性
例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)と標的抗原を発現する細胞との結合親和性を決定するために、以下の結合アッセイを行った。
蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して、ITAB1002とヒトおよびカニクイザル末梢血単核細胞(hPBMCまたはcynoPBMC)との結合親和性を決定した。
hPBMC調製:健常な成人からの白血球濃縮物試料をPBS緩衝液(Gibco)で希釈し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により遠心分離してPBMCを得、PBSで2回洗浄し、次いで室温、1000gで10分間、遠心分離した。細胞を収集し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。
cynoPBMC調製:カニクイザルからの全血試料をPBS緩衝液(Gibco)で希釈し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により遠心分離してPBMCを得、PBSで2回洗浄し、次いで室温、1000gで10分間、遠心分離した。細胞を収集し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。
FACS緩衝液(1%FBSを含有するPBS)を使用してITAB1002を様々な濃度に希釈し、約3.6×105個のhuPBMCと混合し、その後、室温で45分間インキュベートした。ITAB1002を含有しない対照群(1%FBS/PBS+hPBMC)も設定した。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、CD4抗体(RFT-4g)APC-Cy7(登録商標)コンジュゲート(Invitrogen)およびPEマウス抗ヒト軽鎖λ(BD Pharmingen(商標))を補充した50μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、室温で45分間インキュベートした。150μLのFACS緩衝液を最後に添加し、ACCURI(登録商標)C6 Cytometer(BD Biosciences)を使用して試料を分析した。検出結果を図4Aに示す。
50μLのFACS緩衝液(1%FBSを含有するPBS)中にITAB1002を様々な濃度に希釈し、約4×105個のcynoPBMCと混合し、その後、室温で60分間インキュベートした。ITAB1002を含有しない陰性対照群も設定した。細胞を、CD4抗体(RFT-4g)APC-Cy7(登録商標)コンジュゲート(Invitrogen)およびPEマウス抗ヒト軽鎖λ(BD Pharmingen(商標))で染色し、室温で45分間インキュベートした。150μLのFACS緩衝液を最後に添加し、ACCURI(登録商標)C6 Cytometer(BD Biosciences)を使用して試料を分析した。検出結果を図4Bに示す。
図4Aおよび4Bに示されているように、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、ヒトおよびカニクイザルPBMCとの強力な結合親和性を示したが、陰性対照群は、ヒトPBMCまたはカニクイザルPBMCとの結合親和性を実質的に有さなかった。
加えて、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)とEpCAM+細胞との結合親和性を決定するために、以下の結合アッセイを行った。
ヒト結腸がん細胞株SW480(Cell Bank、Committee on Type Culture Collection of Chinese Academy of Sciences)、およびカニクイザルEpCAMをトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(本明細書では以降、CyEpCAM-CHOと呼ぶ)を使用して、ITAB1002とEpCAMの結合親和性を決定した。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を用いてSW480細胞およびCyEpCAM-CHO細胞をトリプシン処理し、FACS緩衝液に再懸濁させた。FACS緩衝液を使用してITAB1002を様々な濃度に希釈し、約1×105個のSW480細胞またはCyEpCAM-CHO細胞とそれぞれ等体積で混合し、その後、4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、50μLのFACS緩衝液に再懸濁させた。マウス抗ヒトIgG Fab二次抗体PEコンジュゲート(Invitrogen)を添加し、4℃で30分間インキュベートした。150μLのFACS緩衝液を最後に添加し、ACCURI(登録商標)C6 Cytometer(BD Biosciences)を使用して試料を分析した。検出結果を図5に示す。
図5に示されているように、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、ヒトEpCAMを発現するSW480細胞(EC50=411.2ng/mL)およびカニクイザルEpCAMを細胞表面で発現するCHO細胞(CyEpCAM-CHO、EC50=107.6ng/mL)両方に対する強力な結合親和性を示した。
したがって、例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質ITAB1002は、in vitroでヒトおよびカニクイザル抗原に対して交差反応性を示した。二重特異性Fab融合タンパク質の交差反応性は、カニクイザルでの毒性および有効性研究結果のヒト臨床研究への外挿を助長することができる。
(実施例3:EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質によるヒトPBMCの腫瘍依存性活性化)
CD4およびCD8は、典型的なT細胞表面抗原であり、このことからT細胞をCD4+サブタイプとCD8+サブタイプに分けることができる。CD69は、T細胞活性化によってアップレギュレートされる、細胞表面受容体である。CD4+CD69+およびCD8+CD69+サブタイプの百分率は、T細胞の活性化状態の有効な指標として役立ち得る。FACSに基づくT細胞活性化アッセイを行って、T細胞活性化における例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の能力を決定した。
実施例2で説明した方法に従ってヒトPBMCを調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を用いてSW480細胞をトリプシン処理し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地に再懸濁させた。50μL/ウェルの細胞混合物を、96ウェルプレートの各ウェルに、SW480細胞10,000個/ウェルおよび1ウェル当り100,000個のPBMCの最終密度で添加した。ITAB1002またはOKT3(Sigma)をRPMI 1640培地で様々な濃度に希釈し、50μLの希釈されたITAB1002またはOKT3を各ウェルに添加した。SW480細胞を含有しない対照ウェル(PBMC+ITAB1002)も設定した。全ての試料を24時間、37℃でインキュベートした。その後、上清を廃棄し、細胞を50μLのFACS緩衝液に再懸濁させた。抗体のCD4抗体(RFT-4g)APC-Cy7(登録商標)コンジュゲート(Invitrogen)、CD8抗体(3B5)RPEコンジュゲート(Invitrogen)およびFITCマウス抗ヒトCD69(BD Pharmingen(商標))を再懸濁細胞に添加し、室温で30分間インキュベートした。150μLのFACS緩衝液を添加し、ACCURI(登録商標)C6 Cytometer(BD Biosciences)を使用して試料を分析した。検出結果を図6Aおよび6Bに示す。
図6Aおよび6Bに示されているように、SW480細胞の存在下で、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、CD4+T細胞集団とCD8+T細胞集団の両方においてCD69発現を用量依存的にアップレギュレートした(CD4+T細胞においてEC50=149.6ng/mL、CD8+T細胞においてEC50=68.78ng/mL)。SW480細胞の非存在下では、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、T細胞上でのCD69発現を有意にはアップレギュレートしなかった。その一方で、OKT3は、CD4+T細胞集団とCD8+T細胞集団の両方においてCD69発現をアップレギュレートした。
加えて、Ki-67は、増殖についての細胞表面マーカーである。CD4+細胞中のCD4+Ki-67+サブタイプの百分率、およびCD8+細胞中のCD8+Ki-67+サブタイプの百分率は、T細胞の増殖状態の有効な指標として役立ち得る。FACSに基づくT細胞増殖アッセイを行って、T細胞増殖に関する例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の能力を決定した。
実施例2で説明した方法に従ってヒトPBMCを調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を用いてSW480細胞をトリプシン処理し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地に再懸濁させた。細胞混合物を、96ウェルプレートの各ウェルに、SW480細胞20,000個/ウェルおよび1ウェル当り300,000個のPBMCの最終密度で添加した。ITAB1002を、10%FBSを含むRPMI 1640培地で様々な濃度に希釈し、細胞に添加した。PBMCおよびITAB1002のみを含有するウェル(PBMC+ITAB1002)、PBMCおよびSW480細胞のみを含有するウェル(PBMC+SW480)、ならびにPBMCのみを含有するウェルを対照として設定した。37℃で72時間のインキュベーションを行った。その後、上清を廃棄し、Fixation/Permeabilization Solution(BD Pharmingen)中で20分間、4℃で細胞を固定して透過性にし、次いで50μLのBD Perm/Wash(商標)緩衝液に再懸濁させた。CD4抗体(RFT-4g)APC-Cy7(登録商標)コンジュゲート(Invitrogen)、CD8抗体(3B5)RPEコンジュゲート(Invitrogen)およびFITC Mouse Anti-Ki-67 Set(BD Pharmingen(商標))を用いて30分間、暗所で細胞を染色した。ACCURI(登録商標)C6 Cytometer(BD Biosciences)を使用して試料を分析した。検出結果を図6Cおよび6Dに示す。
図6Cおよび6Dに示されているように、SW480細胞の存在下で、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、CD4+T細胞集団とCD8+T細胞集団の両方においてKi-67発現を用量依存的にアップレギュレートした。SW480細胞の非存在下では、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、T細胞上でのKi-67発現を有意にはアップレギュレートしなかった。
上記データは、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質によるT細胞活性化が特異的であり、その腫瘍抗原標的に依存することを実証する。
(実施例4)
腫瘍細胞に対するEpCAM×CD3媒介PBMC細胞傷害性(細胞傷害性アッセイ)
実施例2で説明した方法に従ってヒトおよびカニクイザルPBMCを調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。
0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を用いてSW480細胞(標的細胞)をトリプシン処理し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地に再懸濁させた。50μL/ウェルの細胞混合物を、96ウェルプレートの各ウェルに、SW480細胞10,000個/ウェルおよび1ウェル当り100,000個のPBMCの最終密度で添加した。例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)を実験設計に従う濃度で細胞に添加した。薬物なしのウェル(PBMC+標的細胞)、標的細胞のみを含有するウェル、PBMCのみを含有するウェル、および培地のみを含有するウェルを、対照として設定した。5%CO2で37℃での約18時間のインキュベーションを行った。CYTOTOX 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を行って乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を測定し、ELISA Microplate Reader(Molecular Devices、Versa Max)を使用してOD490を測定した。次の式を使用してEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質媒介細胞傷害性を算出した:
死滅率=(OD試料ウェル-OD薬物なしの対照ウェル)/(OD最大溶解を有する標的細胞対照ウェル-OD自発的放出がある標的細胞対照ウェル)×100%
GraphPad Prism 6.0ソフトウェアをデータ分析に使用した。死滅率をy軸として設定し、薬物濃度をx軸として設定した。4パラメータロジスティックモデルを使用して曲線をフィットさせEC50を決定した。アッセイ結果を図7に示す。SW480細胞に対するITB1002媒介ヒトPBMC細胞傷害性のEC50は、41.4ng/mLであった。SW480細胞に対するITB1002媒介カニクイザルPBMC細胞傷害性のEC50は、35.5ng/mLであった。
図7に示されているように、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、カニクイザルPBMCまたはヒトPBMCによるSW480細胞などの腫瘍細胞の殺滅を媒介することができた。ヒトおよびカニクイザルPBMCについての腫瘍細胞に対する細胞傷害性は、同等であった。
(実施例5:腫瘍細胞に対するEpCAM×CD3媒介ヒトPBMC細胞傷害性(細胞傷害性アッセイ))
実施例2で説明した方法に従ってヒトPBMCを調製し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させた。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を用いて腫瘍細胞(標的細胞)をトリプシン処理し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地に再懸濁させた。50μL/ウェルの細胞混合物を、96ウェルプレートの各ウェルに、腫瘍細胞10,000個/ウェルおよび1ウェル当り100,000個のPBMCの最終密度で添加した。例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)を実験設計に従う濃度で細胞に添加した。薬物なしのウェル(PBMC+標的細胞)、標的細胞のみを含有するウェル、PBMCのみを含有するウェル、および培地のみを含有するウェルを、対照として設定した。5%CO2で37℃での約18時間(H1975およびN87細胞については48時間)のインキュベーションを行った。CYTOTOX 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を行ってLDH放出を測定し、ELISA Microplate Reader(Molecular Devices、VersaMax)を使用してOD490を測定した。次の式を使用してEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質媒介細胞傷害性を算出した:
死滅率=(OD試料ウェル-OD薬物なしの対照ウェル)/(OD最大溶解を有する標的細胞対照ウェル-OD自発的放出がある標的細胞対照ウェル)×100%
GraphPad Prism 6.0ソフトウェアをデータ分析に使用した。死滅率をy軸として設定し、薬物濃度をx軸として設定した。4パラメータロジスティックモデルを使用して曲線をフィットさせEC50を決定した。アッセイ結果を表2および図8に示す。
(実施例6:免疫不全マウスにおける皮下ヒト結腸腫瘍異種移植片の殺滅におけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の有効性アッセイ)
ヒト結腸腫瘍異種移植片の増殖の阻害に対する例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の効果を調査するために、SW480腫瘍細胞を移植した免疫不全マウスを用いてin vivo薬物有効性アッセイを行った。
雌免疫不全マウスNOD SCID(NOD.CB17-Prkdcscid/NcrCrl)をShanghai Lingchang Biotechnology Co.,Ltd.から購入し、SPFレベルの動物施設で飼育した。
ヒト結腸がん細胞SW480をin vitroで培養して収集し、氷上で予冷した無血清L-15培地(Gibco)を用いて再懸濁させ、後の使用のために氷上に置いた。健常ヒトドナーにより提供された白血球濃縮物を収集し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により遠心分離してPBMCを得、氷上で予冷したRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させ、後の使用のために氷上に置いた。腫瘍細胞とヒトPBMCを等体積で混合し、NOD SCIDマウスに皮下接種した(動物1匹当りSW480細胞約5.0×106個およびヒトPBMC約5.0×106個)。
接種の1時間後、無作為に割り当てた群のマウスに薬物を与えた。マウス30匹の各セットを1群当りマウス6匹を有する5群に分け、それぞれ、ビヒクル対照群、2.5μg/kg ITAB1002処置群、25μg/kg ITAB1002処置群、250μg/kg ITAB1002処置群、およびセツキシマブ30mg/kg 対照群と名付けた。接種および群分けの日をD0と定義した。試験されるITAB1002を、ビヒクル(PBS+0.05%Tween-80)を使用して必要な濃度に希釈し、2.5μg/kg、25μg/kgおよび250μg/kgの用量で動物の尾部にそれぞれ静脈内投与した。投与体積は、体重10g当り0.1mLであった。動物に連続5日間(D0~D4)、1日1用量を投与した。ビヒクル対照群の動物には同じ体積のビヒクルを投与した。ビヒクルを使用して対照薬物セツキシマブ(Merck Serono)を必要な濃度に希釈し、体重10g当り0.1mLの体積である30mg/kgの用量で、連続3週間、1週間に2用量で、動物の尾部に静脈内投与した。
一方、動物にヒトPBMCを接種しない対照処置群を設定した。NOD SCIDマウスにはSW480腫瘍細胞約5.0×106個を皮下接種した。接種の1時間後、マウスを無作為に群に割り当て、様々な用量のITAB1002をそれらの動物の尾部にそれぞれ静脈内投与した。
動物の体重および腫瘍サイズを毎週検査した。腫瘍体積は、式:腫瘍体積(mm3)=長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)×0.5に従って算出した。腫瘍増殖阻害率(TGI%)を使用して薬物有効性を評価した。TGI%=[1-(avTi-avT0)/(avCi-avC0)]×100(式中、avTi-avT0は、処置群についてのi日目の平均腫瘍サイズ-0日目の平均腫瘍サイズであり、avCi-0は、ビヒクル対照群についてのi日目の平均腫瘍サイズ-0日目の平均腫瘍サイズである)。腫瘍体積評価結果を図9Aに示す。実験の最後にマウスから単離したSW480腫瘍の写真を図9Bに示す。
図9Aおよび9Bに示されているように、ビヒクル対照群では、SW480腫瘍細胞およびヒトPBMCの共接種後、腫瘍細胞は正常に増殖し、接種後56日目の平均腫瘍サイズは1414.06mm3であった。ITAB1002の投与は、in vivoでのSW480腫瘍の増殖を用量依存的に有効に阻害した。56日目のTGI%は、2.5μg/kg、25μg/kgおよび250μg/kg ITAB1002処置群において、それぞれ、46.93%、89.90%および99.35%であった。30mg/kg セツキシマブ群における56日目のTGI%は、-16.97%であった。これは、SW480のin vivo腫瘍増殖の阻害がないことを示唆する。対照的に、ヒトPBMCの共接種がないと、腫瘍細胞は正常に増殖し、いずれの対照処置群も腫瘍退縮の徴候を示さなかった(データを示さない)。したがって、マウスにおけるSW480異種移植片に対する例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の細胞傷害性は、ヒトPBMCに依存する。
これらの結果は、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質が、免疫細胞に腫瘍細胞を殺滅するように再指示(redirect)することができ、腫瘍増殖をin vivoで用量依存的に有意に阻害することができることを示した。
(実施例7:免疫再構築マウスモデルにおける皮下ヒト結腸腫瘍異種移植片の殺滅におけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の有効性アッセイ)
ヒト結腸腫瘍異種移植片の増殖の阻害に対する例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の効果を調査するために、ヒトリンパ球を用いて免疫系を再構築してSW480腫瘍細胞を移植した免疫不全マウスを用いて、in vivo薬物有効性アッセイを行った。
雌免疫不全マウスNOG(NOD.Cg-PrkdcscidII2rgtm1Sug/JicCrl)をBeijing Weitong Lihua Experimental Animal Technology Co.,Ltd.から購入し、SPFレベルの動物施設で飼育した。
NOGマウスが20gの体重に達した後、実験を開始した。マウスを先ずブスルファン(Sigma)で処置して、骨髄細胞を根絶させた。2日目に、in vitroで培養したヒト結腸がんSW480細胞を収集し、入念に混合し、氷上で予冷した無血清L-15培地(Gibco)を用いて再懸濁させ、NOGマウスに皮下接種した(各動物に腫瘍細胞約2.5×106個を接種した)。接種日をD0と定義した。2週間後、健常な人々により供与された白血球濃縮物試料を収集し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により遠心分離してPBMCを得、氷上で予冷したRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させ、NOGマウスに皮下接種した(各動物に腫瘍細胞約3.0×106個を接種した)。腫瘍体積が150~250mm3に達したら、マウスを無作為に群に割り当て、薬物を投与した。40匹の動物を、モデル群、2.5μg/kg ITAB1002処置群、25μg/kg ITAB1002処置群、250μg/kg ITAB1002処置群および30mg/kg セツキシマブ対照群を含む5群(1群当り8匹)に分けた。
試験されるITAB1002を、滅菌濾過したビヒクル(PBS+0.05%Tween-80)を使用して様々な濃度に希釈し、体重10g当り0.1mLの体積(2.5μg/kg、25μg/kgおよび250μg/kgの用量にそれぞれ対応する)で、連続25日間、毎日マウスに腹腔内投与した。滅菌濾過したビヒクル(PBS+0.05%Tween-80)を使用して対照薬物セツキシマブ(Merck Serono)を必要な濃度に希釈し、30mg/kgの用量で連続25日間、週2回、マウスに腹腔内投与した。モデル群の動物には同じ体積のビヒクルを投与した。
動物を体重および腫瘍サイズについて毎週評価した。腫瘍体積は、式:腫瘍体積(mm3)=長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)×0.5に従って算出した。腫瘍増殖阻害率(TGI%)を使用して薬物有効性を評価した。TGI%=[1-(avTi-avT0)/(avCi-avC0)]×100(式中、avTi-avT0は、処置群についてのi日目の平均腫瘍サイズ-0日目の平均腫瘍サイズであり、avCi-0は、ビヒクル対照群についてのi日目の平均腫瘍サイズ-0日目の平均腫瘍サイズである)。実験の最後に、抗凝固処理全血試料を収集し、PE-Cy(商標)5マウス抗ヒトCD3(BD Pharmingen)で染色した。赤血球を溶解した。FACSを使用して、血液試料中のヒトCD3+T細胞の百分率を分析した。図10Aは、腫瘍体積評価結果を示す。図10Bは、実験の最後にマウスから単離したSW480腫瘍の写真を示す。
図10Aおよび図10Bは、ヒトPBMCを接種した免疫再構築NOGマウスにおける皮下SW480異種移植腫瘍に対するITAB1002の増殖阻害効果を示す。これらの結果は、ヒトPBMCを用いて免疫再構築されたNOGマウスへのSW480腫瘍細胞の皮下接種後に腫瘍細胞が正常に増殖することができたことを実証する。接種の46日後、平均腫瘍体積は、738.78mm3に達した。ITAB1002の投与は、SW480腫瘍のin vivo増殖を有効に阻害し、腫瘍退縮をもたらすことができた。2.5μg/kg ITAB1002処置群において、40日目のTGI%は、13.29%であった。25μg/kg ITAB1002処置群において、46日目のTGI%は、68.55%であった。250μg/kg ITAB1002処置群において、46日目のTGI%は、131.65%であった。30mg/kg セツキシマブ処置群において、セツキシマブは、SW480腫瘍のin vivo増殖を阻害することができず、46日目のTGI%は、8.91%であった。図10Cに示されているように、マウスの全白血球中のヒトT細胞の平均百分率は26.84%であった。これは、NOGマウスにおけるヒトT細胞免疫系の成功裏の再構築を示す。
したがって、NOGマウスの骨髄のブスルファンコンディショニング、およびヒトPBMCを使用する免疫系の再構築後、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の投与は、マウスにおけるヒト結腸がん細胞SW480のin vivo増殖を有効に阻害することができた。これは、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質が、in vivoでの免疫細胞による腫瘍細胞殺滅を媒介することができ、腫瘍増殖を用量依存的に有意に阻害することができたことを示す。
(実施例8:免疫再構築マウスモデルにおける皮下ヒト肺腫瘍異種移植片の殺滅におけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の有効性アッセイ)
ヒト肺腫瘍異種移植片の増殖の阻害に対する例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の効果を調査するために、ヒトPBMCを用いて免疫系を再構築してヒト肺がん腫瘍細胞(NCI-H1975)を移植した免疫不全マウスを用いて、in vivo薬物有効性アッセイを行った。
雌免疫不全マウスNOG(NOD.Cg-PrkdcscidII2rgtm1Sug/JicCrl)をBeijing Weitong Lihua Experimental Animal Technology Co.,Ltd.から購入し、SPFレベルの動物施設で飼育した。
NOGマウスが20gの体重に達した後、実験を開始した。マウスを先ずブスルファン(Sigma)で処置して、骨髄細胞を根絶させた。2日目に、in vitroで培養したヒト肺がん細胞NCI-H1975を収集し、入念に混合し、氷上で予冷した無血清L-15培地(Gibco)を用いて再懸濁させ、NOGマウスに皮下接種した(各動物に腫瘍細胞約2.5×106個を接種した)。接種日をD0と定義した。2日目に、健常ヒトドナーにより供与された白血球濃縮物試料を収集し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により遠心分離してPBMCを得、氷上で予冷したRPMI 1640培地(Gibco)に再懸濁させ、NOGマウスに皮下接種した(対照群の動物を除き、各動物にPBMC約3.0×106個を接種した)。腫瘍体積が100~150mm3に達したら、対照群(腫瘍細胞を接種する群、n=6)、モデル群(腫瘍細胞およびPBMCを接種する群、n=5)および250μg/kg ITAB1002処置群(腫瘍細胞およびPBMCを接種する群、n=7)を含む3群に、18匹のマウスを無作為に割り当て、薬物を投与した。
試験されるITAB1002を、滅菌濾過したビヒクル(PBS+0.05%Tween-80)を使用して必要な濃度に希釈し、体重10g当り0.1mLの体積(250μg/kgの用量に対応する)で、連続25日間、毎日処置群のマウスに腹腔内投与した。モデル群および対照群の動物には同じ体積のビヒクルを投与した。動物を体重および腫瘍サイズについて毎週評定した。
図11は、ヒトPBMCを接種した免疫再構築NOGマウスにおける皮下NCI-H1975異種移植腫瘍に対するITAB1002の増殖阻害効果を示す。結果は、腫瘍細胞が対照群およびビヒクル群両方において正常に増殖することができ、接種の28日後にそれぞれ1382.63mm3および1432.15mm3の平均腫瘍体積に達したことを実証する。250μg/kgでのITAB1002の投与は、NCI-H1975腫瘍のin vivo増殖を完全に阻害することができ、完全腫瘍退縮をもたらした。250μg/kg ITAB1002処置群における34日目の平均腫瘍体積は、7.77mm3であった。
したがって、例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の投与は、ヒトPBMCを用いて免疫再構築したNOGマウスにおけるヒト肺がん細胞NCI-H1975のin vivo増殖を有効に阻害することができた。これは、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質が、免疫細胞による腫瘍細胞殺滅を媒介することができ、in vivoでの腫瘍増殖を有意に阻害することができたことを示す。
(実施例9:カニクイザルにおけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の誘導T細胞再分布、サイトカイン放出および薬物動態)
カニクイザル(通常グレード)、年齢:3~5歳、体重:3.0~5.0kg。16匹のカニクイザルを、例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002)の投与のために4群に分け、それぞれ、0.5μg/kg投与量群(n=3)、5μg/kg投与量群(n=4)、15μg/kg投与量群(n=6)および50μg/kg投与量群(n=3)と名付けた。
試験されるITAB1002をビヒクル(PBS+0.5%サル血清)で様々な濃度に希釈し、体重1kg当り2.0mLの体積で投与した。0.5μg/kg、5μg/kg、15μg/kgおよび50μg/kgの投与量をそれぞれ用いて、1時間にわたる前腕への静脈内注入、単回用量によって、ITAB1002を投与した。動物の症状、行動、精神状態、糞便などを毎日観察した。
全血採取:薬物注入前に、および薬物注入後の様々な時点で、EDTA-K2被覆VACUTAINER(登録商標)抗凝固性採血管(BD Bioscience)を使用して、0.3mL血液試料を採取した。採取した抗凝固性血液試料を、2つの部分に分け、血液の一方の部分(100μL)は、自動血球計数器(Siemens、ADVIA(登録商標)2120)を使用してリンパ球亜型について分析し、血液のもう一方の部分(200μL)は、CD4およびCD8抗原について染色し(APC Mouse Anti-Human CD4およびPE Mouse Anti-Human CD8、BD PHARMINGEN(商標))、FACS(Beckman Coulter、Cytomics FC 500)を使用してCD4+およびCD8+リンパ球亜型の分析に付した。
血清採取:薬物注入前に、および薬物注入後の様々な時点で、抗凝固剤なしの採血管も使用して1.2mL血液試料を採取した。凝固後に血清を収集し、-80℃で保管した。Non-Human Primate Th1/Th2 Cytokine Kit(BD PHARMINGEN(商標))を使用して、血清中のIL-2、IL-4、IL-5、IL-6、TNFおよびIFN-γサイトカインの分泌を検出した。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、血清中の薬物濃度を測定した。PK Solver 2.0ソフトウェアを使用して、薬物動態パラメータを算出した。
実験期間中にいずれのサル群においても、死亡も瀕死も観察されなかった。全てのサル群は、正常な自発行動、良好な精神状態、清潔な皮膚および毛髪を有した。注入部に刺激もただれも観察されなかった。EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、カニクイザルにおいて良好な安全性および耐容性を示した。
図12Aは、様々な投与量のEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与後のカニクイザルの血液中のCD4+T細胞数の経時変化のプロットを示す(x軸の「H」は時間であり、「D」は、日である)。薬物投与後、血液中のCD4+T細胞の数は減少し、最小細胞数が薬物注入の8時間後に観察され、その後、細胞数は徐々に回復し始めた。
図12Bは、様々な投与量のEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与後のカニクイザルの血液中のCD8+T細胞数の経時変化のプロットを示す(x軸の「H」は時間であり、「D」は、日である)。薬物投与後、血液中のCD8+T細胞の数は減少し、最小細胞数が薬物注入の8時間後に観察され、その後、細胞数は徐々に回復し始めた。
図13A~13Fは、様々な投与量でのEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与後のカニクイザルの血清中のIL-2(図13A)、IL-4(図13B)、IL-5(図13C)、IL-6(図13D)、TNF(図13E)およびIFN-γ(図13F)の濃度の経時変化を示す。これらの結果は、EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与後、IL-2、IL-6、TNFおよびIFN-γの血清中濃度が様々な程度に増加し、そしてピーク濃度に達した後、減少してベースラインレベルに戻り、用量依存的関係を示すこと、その一方でIL-4およびIL-5の血清中濃度が有意には変化しないことを示した。
図14は、様々な投与量でのEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与後のカニクイザルの血清中の薬物濃度の経時的変化を示す。
これらの結果は、3つの投与量群(5μg/kg、15μg/kgおよび50μg/kg)全てについて、薬物の血清中濃度がEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の単回静脈内投与の1時間後にピークレベルに達し、その後、徐々に減少することを示した。EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質は、カニクイザルにおけるin vivo半減期増加を示した。
EpCAM×CD3融合タンパク質の詳細な薬物動態パラメータを表3に示す。
(実施例10:腫瘍細胞に対するITAB1002媒介PBMC細胞傷害性とITAB1012媒介PBMC細胞傷害性の比較)
ITAB1012は、ITAB1002のEpCAM scFv中のHVRとは異なるHVRを有するEpCAM scFvを含む、EpCAMA×CD3 Fab融合タンパク質である。ITAB1012を実施例1で説明したように一過的に発現させ、精製した。ITAB1012の重鎖は、配列番号35のアミノ酸配列を有し、配列番号37の核酸配列によりコードされている。ITAB1012の軽鎖は、配列番号36のアミノ酸配列を有し、配列番号38の核酸配列によりコードされている。下記の配列中のEpCAM scFv断片のHVRに下線を引く。ITAB1012のEpCAM scFvは、以前に米国特許第8,846,042号に記載されている。
実施例5で説明したヒトPBMCを使用する細胞傷害性アッセイでITAB1002およびITAB1012を試験した。結果を図15に示す。SW480細胞に対するITAB1002媒介ヒトPBMC細胞傷害性のEC50は、3.54ng/mLであった。比較して、SW480細胞に対するITAB1012媒介ヒトPBMC細胞傷害性のEC50は、223.3ng/mLであった。したがって、ITAB1002は、腫瘍細胞に対するヒトPBMC細胞傷害性の媒介について、ITAB1012と比較して有意に高い活性を示した。
加えて、例示的EpCAM×CD3 Fab融合タンパク質(すなわち、ITAB1002およびITAB1012)の抗EpCAMおよび抗CD3ドメインとヒト抗原との結合親和性を、実施例2で説明した方法を使用して測定した。表4に示すように、ITAB1012と比較して、ITAB1002は、EpCAMとの強い結合親和性を示したが、CD3とのその結合親和性は弱い。
(実施例11:ステロイドの存在下での腫瘍細胞に対するEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質媒介ヒトPBMC細胞傷害性。)
ITAB1002により誘導されるヒトT細胞による腫瘍細胞殺滅活性およびサイトカイン放出に対するステロイド前処置の効果を評価するためにin vitro予備的アッセイを行った。
細胞傷害性アッセイは、実施例5で説明した通りに行った。PBMCを健常ドナーから単離し、3μMの濃度でのデキサメタゾン(DXM)とともに1時間インキュベートし、その後、96ウェルプレートのウェルに1ウェル当りSW480細胞30,000個およびPBMC 300,000個の最終密度で添加した。混合した細胞を、37℃、5%CO2で、0.15μMの最終DXM濃度で、約18時間インキュベートした。細胞殺滅を乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイにより測定し、算出した。同じアッセイで、サイトカイン(すなわち、IL-6)放出を、human IL-6 ELISA Set(BD Biosciences)により分析した。
図16は、ITAB1002媒介SW480細胞殺滅活性に対するデキサメタゾン(DXM)の効果を示す。ITAB1002は、デキサメタゾンの存在下で、単独でのITAB1002と比較して同等の殺滅活性をSW480細胞に対してin vitroで示した。
図17は、サイトカイン放出アッセイからの結果を示す。IL-6は、ITAB1002によって誘導されて活性化T細胞により放出された。しかし、IL-6放出は、デキサメタゾンの存在下ではほぼ完全に阻害された。これは、DXM処置がITAB1002を受容する患者においてサイトカイン放出症候群(CRS)を制御するための有効な前投薬戦略であり得ることを示唆する。
(実施例12:カニクイザルにおけるEpCAM×CD3 Fab融合タンパク質の前臨床研究)
ITAB1002処置を受けたカニクイザルにおいて起こり得る毒性の軽減に対するデキサメタゾン前処置の効果を評価するために予備的研究を行った。6匹のサル(ITAB1002+DXM)を第1週目に0.5μg/kgのITAB1002で週2回(1日目および4日目に)静脈内(IV)注入によって処置した。第2週目には、動物を1.0μg/kgのITAB1002で週2回(8日目および11日目)、IV注入により処置した。第3週目には、動物を2.0μg/kgのITAB1002で週2回(15日目および18日目)、IV注入により処置した。第4週目および第5週目には、動物を4.0μg/kgのITAB1002で週2回(22、25、29および32日目)、IV注入により処置した。1mg/kgの用量のデキサメタゾンを各動物に、各用量レベルでの1回目の注入の約1時間前に、静脈内注射(IV)によって投与した。5週目にデキサメタゾンを2mg/kgに増加させた。DXM前処置なしの群(n=10)には、いずれのDXM前処置も用いずに、各サルにITAB1002を2.0μg/kgで週2回、静脈内注入によって投与した。異なる時点で血液試料を採取し、血清化学パラメータを分析した。血清中IL-6レベルをhuman IL-6 ELISA Set(BD Biosciences)により分析した。
ITAB1002の前のDXMでの前処置は、血清中ALT(図18A~18B)、TBil(図19A~19B)およびALPレベル(図20A~20B)を著しく低下させ、DXM前処置なしでの処置と比較してIL-6放出を阻害した(図21A~21B)。これらの結果は、ITAB1002で処置したサルにおけるIL-6放出の早期誘導および肝臓での副作用をDXM前処置によって好転させることができることを実証した。
(実施例13:ヒトがん患者におけるITAB1002の臨床試験)
ITAB1002の安全性および有効性をヒトがん患者における臨床治験で評価した。この治験の目的は、標準治療が存在しない、または標準治療に効果がないもしくは耐えられないことが証明された、局所進行性または転移性固形腫瘍を有する成人被験体において、ITAB1002の安全性、耐容性、薬物動態、免疫原性および抗腫瘍活性を評価することである。0.3、0.6、1.2、2.4および3.6μg/kgの5つの用量レベルを用量漸増により評価する。従来の3+3デザイン(1用量コホート当り患者3名で、毒性をさらに評価するために同じコホートに追加の患者3名を加える可能性がある)を用量漸増およびMTD決定に適用する。1群当り患者約6名を有する5つのコホートを登録する。
全ての患者に、第1週目に、0.3μg/kgのコンディショニング用量のITAB1002を2回(1日目および4日目に)静脈内(IV)注入によって与える。次の3週間には、5つのコホートの患者に週2回、IV注入により次の用量のうちの1つのITAB1002をそれぞれ与える:0.3μg/kg、0.6μg/kg、1.2μg/kg、2.4μg/kgおよび3.6μg/kg。20mgの用量のデキサメタゾンを、ITAB1002の初回コンディショニング用量および初回増加用量(0.3μg/kgから3.6μg/kgへ)の1時間前に与える。ITAB1002の後続用量の前のデキサメタゾンの投与は、臨床評価に基づいて20mgまたは10mgのどちらかで与える。下の表4は、この研究における5つのコホートの投与スケジュールを示す。
本発明で述べた全ての参考文献は、それらの参考文献の各々が個々に参照により組み込まれたかのごとく、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書は、特定の実施形態に言及したものであるが、これらの特定の詳細の変形形態を用いて本発明を実施することができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明を本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。