JP7027661B2 - 難燃性の面ファスナー - Google Patents
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Description
さらに、端部の緯糸を折り返して、その端部からのほつれを解消する方法の場合には、その辺からのほつれは阻止できるが、四辺のもう一方の両側から緯糸が滑脱してくるという問題もあった。
1)同面ファスナーの経糸方向に沿った両端部には係合素子が存在しない耳部が形成されていること、
2)耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていること、
i)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物であって、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子用糸が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織る工程、
ii)工程i)で得られた織物を、熱融着性芯鞘型フィラメントの鞘部を溶融させる温度以上の温度であって、芯部の溶融温度より8℃低い温度~芯部の溶融温度の範囲内の温度に加熱して、織物を構成している糸を熱融着性芯鞘型フィラメントにより融着固定させる工程、
iii)係合素子用糸がモノフィラメント糸である場合には、ループの片脚を切断してループをフック状係合素子とする工程、
iv)耳部領域で織物を経糸に平行にスリットして、織物を複数条の耳部付の難燃性面ファスナーに分割する工程、
を順次行うことを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナーの製造方法である。
しかも本発明の難燃性面ファスナーは、耳部領域をスリットして同時多条生産されたものであり、生産性に優れる。また、ユーザーからの使用面でのニーズ、いわゆる多様な幅設計ができ、対応し易いとった評価も高い。さらに耳部端部で緯糸を折り返すようなことをしておらずに耳部の端部は緯糸の切断により形成されていることから、端部が直線となっており、折り返し糸による端部凹凸がなく、縫製した際に外観低下もない。従って、ユーザーでの加工自由度が従来品よりも向上する。
さらに従来品のように、耳部ほつれ防止のための裏面バックコート樹脂塗布が不要であることから、柔軟性に富んでおり、縫製の際の作業性に優れるとともに、面ファスナーを縫製で取り付けた布帛等の柔軟性等を大きく損なうことが少ない。
本発明で言う芯鞘型フィラメントとは、一芯のものであっても、多芯のものであって、あるいは同心のものであっても、偏心のものであってもよく、さらに異形断面のものでも良い。
また、鞘成分として、このような共重合を実質的に行っていないポリエチレンテレフタレートホモポリマーからなる場合が好ましい。
このようなループ状係合素子用マルチフィラメント糸には、高い係合力を得る上で、マルチフィラメント糸は実質的に無撚の状態であるのが好ましく、具体的には撚数0~100turn/mの撚数であることが好ましい。
織物の織組織としては平織が用いられ、織物の織密度は、経糸は、25~65本/cm、特に経糸40~60本/cmが好ましく、緯糸は、13~20本/cm、特に緯糸16~20本/cmが好ましい。
本発明の布製面ファスナーの目付としては、加熱処理後で420~600g/m2が好ましく、より好ましくは450~550g/m2である。
より具体的には、この表皮材の裏面に取り付けられた難燃性面ファスナーと座席用の発泡樹脂製のクッション体の表面に取り付けられた面ファスナーを係合させることにより表皮材がクッション体表面に固定されている座席とすることができる。
他にも航空機や自動車等の床材として用いられるカーペットやカーテンなどの取り付け固定材や表面材を構造体に取り付ける固定材等としても使用できる。
なお、実施例中の難燃性試験は、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で実施した。
また耐ほつれ性は、長さ25cm×幅2.5cmの布製面ファスナーを準備し、経糸に添って20cmハサミでスリットを入れたものを家庭用渦型洗濯機(機種:日立2層式電気洗濯機PS-45A形)を用い、試験重量を1kg(負荷布を加えて1kg)にし、合成洗剤1g/l、液量36l、洗濯機の条件として、水流は標準に設定、という条件で8時間連続洗濯を行い、糸のほつれにより端部からはみ出した本数が一つの端面に付き2本以下ものを耳部ほつれで合格とした。
さらに、縫製性は、実際に綿布に面ファスナーの耳部をミシンで縫製し、縫製し易いか否かのテストを8人の縫製従事者が行い、その感触結果を総合して評価した。
ループ面ファスナーを構成する経糸、緯糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸として次の糸を用意した。
[経糸(撚数:309turn/m)]
・PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント)
[緯糸(無撚引き揃え糸)]
・PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント)
・熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸(120デシテックス/24フィラメント)
芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
芯鞘比率(質量比): 70:30
190℃での乾熱収縮率:約15%
[ループ状係合素子用マルチフィラメント糸(撚数:40turn/m)]
・PPSマルチフィラメント糸(334デシテックス/20フィラメント)
さらに、織る際には、緯糸が2本合わさって経糸および係合素子用糸に対する浮沈関係を同一としているように、緯糸を一方向からのみ挿入させて反対側で折り返す方法を用いた。
また耐ほつれ性に関しても、上記した家庭用洗濯機を用いて8時間連続洗濯試験を行ったところ、糸のほつれた本数が一つの端面から最大で1本であり、耐ほつれ試験にも合格し、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。
さらに、このループ面ファスナーを一般市販されているフック面ファスナー(クラレファスニング(株)製フック面ファスナー:A48600.71)と係合させたところ、初期係合力はシアー強力13.0N/cm2、ピール強力1.40N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力12.6N/cm2、ピール強力1.30N/cmであり、係合力に関しても極めて優れたループ面ファスナーであることが分かった。
以上の結果、実施例で得られた面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力、耐熱係合力のいずれをも満足するループ面ファスナーであった。
上記実施例1と同様の糸仕様で、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmから17.7本/cmに変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着マルチフィラメント糸の質量比が90:10であり、係合素子密度が60本/cm2、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は65%で、面ファスナーの目付は496g/m2であった。
上記実施例1で用いた経糸、緯糸を構成PPSマルチフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸は同一であって、熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸を、120デシテックス/24フィラメントのものから110デシテックス/24フィラメントのものに変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。なお、変更後の熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸は、芯成分樹脂、鞘成分樹脂および芯鞘比率は実施例1のものと同一である。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量比が91:9、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.27:1で、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は69%で、面ファスナーの目付は504g/m2であった。
あった。
上記実施例3と同様の糸仕様で、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmから17.7本/cmに変更し、その他条件は実施例1と同一の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合は91.5:8.5であった。また、得られたループ面ファスナーの係合素子密度は60本/cm2、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は68%で、面ファスナーの目付は488g/m2であった。
上記実施例1において、熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸を120デシテックス/24フィラメントから99デシテックス/24フィラメントに変更し、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmが17.3本/cmに変更し、さらに熱処理条件を240℃の約2分間に変更し、その他の条件は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の割合が91.7:8.3で、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.53:1であった。
上記実施例1において、緯糸はPPSマルチフィラメント糸を含まずに、熱融着性マルチフィラメント(99デシテックス/24フィラメント)を2本引き揃えに変更し、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmを16.9本/cmに変更し、熱処理条件を240℃の約2分間に変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合が80:20、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が0:1であった。
上記実施例1において、緯糸として、PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント)1本と熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸(120デシテックス/24フィラメント)を2本の計3本の引き揃え糸に変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーを構成するPPS:熱融着糸の比が、84:16、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が0.7:1であった。
上記実施例1において、緯糸として、PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント)と下記の熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸の無撚引き揃え糸を用いる以外は実施例1と同様の方法によりループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーを構成するPPS:熱融着糸の質量比が92.6:7.4で、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が1.99:1であった。
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
芯鞘比率(重量比): 70:30
190℃での乾熱収縮率:約15%
得られたループ面ファスナーの耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていないことが確認された。また、耳部ほつれ性テストを行ったところ、耳部端部からほつれた本数が一つの端面で5本前後となり不合格であった。
上記実施例1と同様の糸を用い、耳部を端部で折り返す方法、すなわち単条織の幅の狭い織物に変更し、最後にスリットする工程を省略する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーには、経糸方向に沿った両端部には係合素子用糸が存在しない耳部が形成されているものの、耳部の経糸方向に沿った端面は、緯糸の折り返しにより形成されており、緯糸の切断により形成されたものではない。
実施例1において、係合素子用糸を直径200μmのPPS製モノフィラメント糸に変更し、緯糸3本を浮沈する度に経糸1本跨いで高さ2.45mmのループを形成し、そして熱処理後にループの片脚を切断してフック状係合素子とする以外は実施例1と同様の方法によりフック面ファスナーを作製した。得られたフック面ファスナーの係合素子領域には、60個/cm2の密度で高さ2.10mmのフック状係合素子が存在しており、面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合は、90:10で、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は67%で、面ファスナーの目付は502g/m2であった。
以上の結果、この実施例で得られたフック面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力、耐熱係合保持力のいずれをも満足する極めて優れたものであった。
上記実施例1において、係合素子用糸として、実施例1で用いたループ状係合素子用PPSマルチフィラメント糸と実施例5で用いたフック状係合素子用モノフィラメント糸を併用し、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸とフック状係合素子用モノフィラメント糸が2本毎に交互に存在しているようにして、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸に関しては緯糸3本を浮沈する度に経糸1本跨いで高さ3.00mmのループを形成し、一方フック状係合素子用モノフィラメント糸に関しては緯糸3本を浮沈するごとに経糸3本跨いで高さ2.40mmのループを形成するように織物を織る以外は実施例1と同様にして織物を織り、そして実施例1と同様の熱処理後に、フック用係合素子用ループの片脚付け根部分を切断してフック状係合素子とした。
以上の結果、この実施例で得られたフック・ループ混在型面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力のいずれをも満足するものであった。
上記実施例6において、ループ状係合素子用糸からなるループを基布の表面側に、フック状係合素子用糸からなるループを基布の裏面側に形成する以外は実施例6と同様の糸および方法により片面フック・片面ループの面ファスナーを作製した。基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は66%で、面ファスナーの目付は510g/m2であった。
Claims (8)
- ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなる経糸、ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにポリフェニレンサルファイド系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から構成された基布の表面に該係合素子用糸から形成された係合素子を有し、更に以下の構成1)および2)を満足していることを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナー。
1) 同面ファスナーの経糸方向に沿った両端部には係合素子が存在しない耳部が形成されていること、
2)耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていること、 - 面ファスナーを構成する全てのポリフェニレンサルファイド系の糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が88:12~92:8の範囲である請求項1に記載の難燃性面ファスナー。
- 面ファスナーの係合素子が存在しない面に樹脂層が存在していない請求項1または2に記載の難燃性面ファスナー。
- 基布の表面にポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子が存在し、裏面にポリフェニレンサルファイド系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子が存在している請求項1~3のいずれかに記載の難燃性面ファスナー。
- 基布の表面にポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子とポリフェニレンサルファイド系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子の両方が存在している請求項1~3のいずれかに記載の難燃性面ファスナー。
- 請求項1~5のいずれかに記載の難燃性面ファスナーの耳部を布製または皮革製のシートの表面または裏面に縫い付けることにより難燃性面ファスナーがシートの裏面に取り付けられている面ファスナー固定シート。
- 請求項6に記載のシートが航空機用座席または自動車用座席の表面を覆う表皮材であり、シート裏面に取り付けられた難燃性面ファスナーと座席用クッション体の表面に取り付けられた面ファスナーとの係合により表皮材がクッション体表面に固定されている座席。
- ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなる経糸、ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにポリフェニレンサルファイド系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から、以下の工程i)~iv)
i)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物であって、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子用糸が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織る工程、
ii)工程i)で得られた織物を、熱融着性芯鞘型フィラメントの鞘部を溶融させる温度以上の温度であって、芯部の溶融温度より8℃低い温度~芯部の溶融温度の範囲内の温度に加熱して、織物を構成している糸を熱融着性芯鞘型フィラメントにより融着固定させる工程、
iii)係合素子用糸がモノフィラメント糸である場合には、ループの片脚を切断してループをフック状係合素子とする工程、
iv)耳部領域で織物を経糸に平行にスリットして、織物を複数条の耳部付の難燃性面ファスナーに分割する工程、
を順次行うことを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナーの製造方法。
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