JP7027661B2 - 難燃性の面ファスナー - Google Patents

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Description

本発明は、織物からなる基布上に係合素子が形成された難燃性の耳部付の面ファスナーに関し、詳しくは、難燃性の他、耐ほつれ性および縫製性に関しても優れている耳部付の難燃性布製面ファスナーに関する。
現在、係合・剥離が容易で反復使用可能な結合材として、表面にフック状係合素子を有する面ファスナーとループ状係合素子を有する面ファスナーの組み合わせが各種用途に広く用いられている。そして用途のなかに、難燃性が高度に必要とされる、航空機、自動車、断熱材などの分野がある。
難燃性が要求される用途に用いられる面ファスナーとして、耐熱性が高く、高温下で面ファスナーとしての機能を損なわないスーパーエンジニアリングプラスチックを用いた面ファスナーが知られており、なかでも布製面ファスナーでは、耐熱性に優れた繊維であるポリフェニレンサルファイド系繊維を用いた織物製の面ファスナーを本出願人は発明し、それを特許出願している。そして、この特許発明の難燃性面ファスナーは、優れた難燃性を有していることから、防火服や消防服、高温作業服や高温ガスのフィルター固定材等の難燃性や耐熱性を要する分野に広く採用されている(特許文献1)。
具体的には、同特許の技術は、ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略す)系マルチフィラメント糸からなる経糸、PPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸、ならびにPPS系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から構成された基布の表面に該係合素子用糸から形成された係合素子を有しており、係合素子が該熱融着性の芯鞘型フィラメントにより基布に固定されている難燃性面ファスナーである。
従来、自動車、電車、航空機等の乗物用座席として、座席形状に成形した発泡樹脂製のクッション体の表面に布製または皮革製の表皮材を被せ、クッション体表面に取り付けた面ファスナーと表皮材裏面に取り付けた面ファスナーを係合させて、表皮材をクッション体表面に固定させた座席が用いられており、この分野に用いられる面ファスナーには従来から高度の難燃性が要求されてきたが、近年、より高度の難燃性を有する面ファスナーが求められている。
さらに、それ以外にも自動車や航空機や列車等の乗物の分野には難燃性が高度に要求される面ファスナーが必要とされる種々の用途があり、これらの要求に応え得る面ファスナーとして、上記特許の技術を用いて製造した面ファスナーが期待されている。
上記特許文献1に記載されている技術に基づき得られる難燃性の面ファスナーの場合には、上記したような自動車や航空機などの極めてハイレベルな難燃性が求められる分野に用いられる高度な難燃性を満足する織物製の面ファスナーを製造するためには、面ファスナーを構成するPPS繊維の割合を高め、熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸(以下、単に熱融着性繊維と称することがある)の割合を低くすることが有効であるが、単にPPS繊維の割合を高め熱融着性繊維の割合を低くすると、緯糸による経糸の固定が不十分となり、その結果、使用中あるいは洗濯により、端部に位置する経糸がほつれ出し、面ファスナーの見栄えを大きく損なうこととなる。
布製の面ファスナーにおいては、端部からのほつれを防ぐ目的で、面ファスナーの裏面にバックコート剤と呼ばれる種々の接着剤を塗布して、端部の経糸を面ファスナーに固定する対策が一般に施されている。しかし、裏面に接着剤を塗布すると、面ファスナーは柔軟性を失い剛直になり、面ファスナーを取り付けた布帛等の風合いが大きく低下する。さらに剛直となることにより係合し難くなり、係合性能も低下する。さらに面ファスナーを難燃性とするためにはバックコート用接着剤にも難燃剤を付与する必要があるため、接着剤の安定性や難燃剤のブリードアウトの問題も生じる。
そのようなことから、現在、上記特許の技術に基づく高度の難燃性を満足する面ファスナーにおいて、面ファスナー端部からの経糸のほつれが生じることを防ぐ方法として、バックコート用接着剤を裏面に塗布する方法ではなく、緯糸を端部でループ状に折り返して端部の経糸が端部から抜け出すことを阻止する方法が用いられている。
しかしながら、布製面ファスナーの場合、一般的に幅広の面ファスナーを織って、そして得られた幅広の面ファスナーを経糸方向にスリットとして同時に複数条の面ファスナーを製造する方法が用いられているが、上記したような緯糸を端部で折り返す方法を採用すると、スリットして多条の面ファスナーを同時に製造するという技術が使えず、生産性の点で大きな問題であった。縫製性に関しても、耳端部の凸凹部分で縫製時に蛇行が生じ、縫製性に問題があった。
さらに、端部の緯糸を折り返して、その端部からのほつれを解消する方法の場合には、その辺からのほつれは阻止できるが、四辺のもう一方の両側から緯糸が滑脱してくるという問題もあった。
以上要するに、高度の難燃性を満足するためにPPS繊維の割合を高めると、端部からのほつれが生じるために、スリットして多条の面ファスナーを同時に製造する方法を用いることができずに、その結果、生産性が低い単条の面ファスナーしか製造できず、一方、スリットしても耳部からのほつれが生じないように熱融着性繊維の割合を高めると、高度の難燃性は達成できず、航空機や自動車等の用途に使用できないという問題を有していた。
さらに、上記のように、端部で緯糸を折り返した面ファスナーの場合には、端面に耳部を設けてもこの耳部端から緯糸がループ状に飛び出して端部が凸凹しているので、面ファスナーを布帛等に縫製により取り付けた場合に、縫製品が悪い印象を持たれ、外観品位を損なうこととなる。
国際公開第2008/059958号
本発明は、このような問題点を解消するものであり、すなわち、高度の難燃性を有しているにも拘らず、耳部からの経糸のほつれがなく、その結果、経糸方向にスリットして多条の面ファスナーを同時に製造することができる技術を提供することを目的とするものである。さらに、裏面への接着剤の塗布や耳部からの緯糸の折り返しループによる縫製品の外観品位の低下という問題点も同時に解消することを目的とするものである。
すなわち本発明は、PPS系マルチフィラメント糸からなる経糸、PPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているPPS系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにPPS系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から構成された基布の表面に該係合素子用糸から形成された係合素子を有し、更に以下の構成1)および2)を満足していることを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナーである。
1)同面ファスナーの経糸方向に沿った両端部には係合素子が存在しない耳部が形成されていること、
2)耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていること、
なお、本発明において、「難燃性」とは、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法のいずれにも合格する難燃性を意味する。そして、本発明において、好ましくは、緯糸に用いられているPPS系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸である場合である。
また本発明において、好ましくは、面ファスナーを構成する全てのPPS系の糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が88:12~92:8の範囲であり、かつ緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である場合である。
さらに、本発明において、好ましくは、基布を構成する緯糸が2本合わさって経糸および係合素子用糸に対する浮沈関係を同一としている場合であり、また、面ファスナーの係合素子が存在しない面に樹脂層が存在していない場合である。
また本発明の難燃性の面ファスナーは、基布の表面にPPS系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子が存在し、裏面にPPS系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子が存在している場合であってもよいし、また基布の表面にPPS系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子とPPS系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子の両方が存在している場合であってもよい。
さらに本発明は、上記の難燃性面ファスナーの耳部を布製または皮革製のシートの裏面に縫い付けることにより難燃性面ファスナーがシートの表面または裏面に取り付けられている面ファスナー固定シート、さらにはこのようなシートが航空機用座席または自動車用座席の表面を覆う表皮材であり、シート裏面に取り付けられた難燃性面ファスナーと座席用の発泡樹脂からなるクッション体の表面に取り付けられた面ファスナーとの係合により表皮材がクッション体表面に固定されている座席である。
さらに本発明は、PPS系マルチフィラメント糸からなる経糸、PPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているPPS系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにPPS系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から以下の工程i)~iv)
i)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物であって、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子用糸が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織る工程、
ii)工程i)で得られた織物を、熱融着性芯鞘型フィラメントの鞘部を溶融させる温度以上の温度であって、芯部の溶融温度より8℃低い温度~芯部の溶融温度の範囲内の温度に加熱して、織物を構成している糸を熱融着性芯鞘型フィラメントにより融着固定させる工程、
iii)係合素子用糸がモノフィラメント糸である場合には、ループの片脚を切断してループをフック状係合素子とする工程、
iv)耳部領域で織物を経糸に平行にスリットして、織物を複数条の耳部付の難燃性面ファスナーに分割する工程、
を順次行うことを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナーの製造方法である。
本発明の難燃性の布製面ファスナーは、上記したように、PPS系繊維の割合が高く高度の難燃性を有している。それにも拘らず耳部断面の経糸が緯糸により強固に固定されており、耳部ほつれが生じない。
しかも本発明の難燃性面ファスナーは、耳部領域をスリットして同時多条生産されたものであり、生産性に優れる。また、ユーザーからの使用面でのニーズ、いわゆる多様な幅設計ができ、対応し易いとった評価も高い。さらに耳部端部で緯糸を折り返すようなことをしておらずに耳部の端部は緯糸の切断により形成されていることから、端部が直線となっており、折り返し糸による端部凹凸がなく、縫製した際に外観低下もない。従って、ユーザーでの加工自由度が従来品よりも向上する。
さらに従来品のように、耳部ほつれ防止のための裏面バックコート樹脂塗布が不要であることから、柔軟性に富んでおり、縫製の際の作業性に優れるとともに、面ファスナーを縫製で取り付けた布帛等の柔軟性等を大きく損なうことが少ない。
本発明の面ファスナーの耳部の一例を表面から見た図面代用写真であり、耳部端部で緯糸が切断されている。 従来のPPS繊維製の面ファスナーの耳部を表面から見た図面代用写真であり、端部で緯糸が折り返されている。 本発明の面ファスナーの耳部の一例を耳部長さ方向から見た図面代用写真であり、耳部端部で緯糸が切断されている。 従来のPPS繊維製の面ファスナーの耳部を耳部長さ方向から見た図面代用写真であり、緯糸が耳部端部で折り返されている。
以下,本発明の難燃性の布製面ファスナーについて詳細に説明する。本発明の布製面ファスナーの一例であるループ面ファスナーでは、図1に示すように、耳部端部がスリットされており、また断面を表した図3に示すように、緯糸の端部からのはみ出しによる凸凹がなく、縫製時の加工性が優れ、見栄えの点でも優れている。さらに、本発明の布製面ファスナーは、スリットにより形成された耳部端部であるにも拘らず、耳部端部の経糸は緯糸により強固に固定されており、耐ほつれ性に優れる。しかも、耐ほつれ性と相反する関係にある難燃性をも満足している。
それに対し、耳部端部で緯糸が折り返されている従来のPPS繊維製の面ファスナーの場合には、耳部端部からの耐ほつれ性では満足できるものの、図2や図4に示すように、緯糸が端部からループ状にはみ出しており、その結果、耳部端部が不揃いに凸凹しており、外観品位も悪く、縫製時の加工性に欠ける構造となっている。縫製性については、ミシンで縫製する際に、その不揃いの凸凹が悪さをし、真っすぐ直線に縫製することが困難である。
本発明の布製面ファスナーは、織物基布とその表面に形成された係合素子からなり、その両端には、係合素子が存在しない耳部が存在している。そして織物基布は、経糸、緯糸および係合素子用糸からなり、耳部は経糸と緯糸からなる。本発明では、経糸および緯糸として、ともに難燃性に優れたPPS系のマルチフィラメント糸が用いられる。係合素子がフック状係合素子の場合には、係合素子用糸としてPPS系のモノフィラメント糸、係合素子がループ状係合素子である場合には、係合素子用糸としてPPS系マルチフィラメント糸が用いられる。
本発明の面ファスナーに用いられるPPS系マルチフィラメント糸やPPS系モノフィラメント糸は、重量平均分子量が2万~10万のPPS樹脂を溶融紡糸し、所定の延伸を行い、さらに必要に応じて熱処理して得られるものであり、一般市販されており、さらにユーザーの要求に応じて好みの太さや集束本数のものが製造・提供されている。
経糸に用いられるPPS系マルチフィラメント糸は、30~100本のフィラメントが集束したトータル太さが200~300デシテックスのマルチフィラメント糸が用いられる。そして経糸に用いられるPPS系マルチフィラメント糸は、100~800turn/mの撚が付与されているものが製織時の安定性を得る上でおよび耳部端部からのほつれを防ぐ上で好ましい。
そして、緯糸には、基布を構成する係合素子用糸を基布に固定するためおよび織組織を固定するために、さらに本発明では耳部ほつれを防ぐために、熱融着性のフィラメントからなるマルチフィラメント糸を含んでいることが必要である。本発明では、熱融着性のフィラメントからなるマルチフィラメント糸として、熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸が、得られる面ファスナーの柔軟性や形態安定性の点で用いられ、さらにこのような熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸は難燃性を達成する上でPPS系マルチフィラメント糸との引き揃え糸にして用いられる。
本発明で言う芯鞘型フィラメントとは、一芯のものであっても、多芯のものであって、あるいは同心のものであっても、偏心のものであってもよく、さらに異形断面のものでも良い。
熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸(以下、熱融着性マルチフィラメント糸と称す)としては、鞘成分が低融点または低軟化点を有する融着成分となる樹脂で、芯成分が高融点を有する樹脂である芯鞘型のフィラメントからなるマルチフィラメント糸が面ファスナーの柔軟性や形態安定性の点で用いられる。特に、鞘成分樹脂として,PPSとの接着性に優れることからポリエステル系樹脂が好ましく、そして芯成分樹脂として、鞘成分樹脂との接着性に優れることから同系統のポリエステル系樹脂が好ましい。そして、鞘成分樹脂の融点または軟化点より40~100℃高い融点または軟化点を有する樹脂が芯成分に好ましい。より好ましくは50~90℃高い樹脂である。
具体的には、鞘成分として、イソフタル酸、スルホイソフタル酸ソーダ等の芳香族ジカルボン酸類、アジピン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオール類、ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸類等の共重合成分を共重合することにより融点または軟化点を140~210℃の範囲とした共重合ポリエチレンテレフタレート系または共重合ポリブチレンテレフタレフタレート系のポリエステルが好ましい。
また、鞘成分として、このような共重合を実質的に行っていないポリエチレンテレフタレートホモポリマーからなる場合が好ましい。
また、芯鞘型フィラメントの芯成分と鞘成分の質量比が8:2~5:5の範囲であることが、熱融着時の芯成分の収縮により係合素子用糸の固定等を確実とすることから好ましい。芯鞘型の熱融着性マルチフィラメント糸としては、単繊維太さが3~7デシテックスのフィラメントが12~48本集束しているトータル太さが100~140デシテックスのマルチフィラメント糸が好ましい。
また、本発明において、緯糸には、上記した熱融着性マルチフィラメント糸とPPS系マルチフィラメント糸との引き揃え糸が用いられる。織物を織る上で、良好な製織性を得るためには、通常、引き揃え糸に撚を掛けるのが一般的であるが、撚を掛けると熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸の熱融着能が低下することから、充分な熱融着能を得るためには熱融着性マルチフィラメント糸の割合を増やすことが必要となり、その結果、面ファスナーの難燃性が低下することとなる。したがって、本発明では緯糸に用いる熱融着性マルチフィラメント糸とPPS系マルチフィラメント糸との引き揃え糸は無撚で用いるのが好ましい。
ここでいう無撚とは、通常の撚糸のように撚数が数百~数千turn/mの撚が付与されているのではなく、付与されていても通常の巻取り等の際に自然と掛かることとなる程度の撚数、すなわち0~80turn/mの撚数であることが好ましい。
そして、本発明において、耳部からの経糸ほつれおよび難燃性が、緯糸として引き揃えられるPPS系マルチフィラメント糸を構成するフィラメントの細さと本数により影響されることを本発明者等は見出した。すなわち、緯糸に用いられているPPS系マルチフィラメント糸が、3.2~4.8デシテックスのPPS系フィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であることが耳部端部からの経糸ほつれ防止および難燃性に極めて有効であることを見出した。
前記した特許文献1の技術では、緯糸に用いられるPPSマルチフィラメント糸として5~50本のフィラメントが集束した150~300デシテックスのマルチフィラメント糸が好ましいと記載されており、その実施例では10本のフィラメントからなる167デシテックスのPPSマルチフィラメント糸が用いられている。この実施例のような太いフィラメントが数少ない本数で集束されているマルチフィラメント糸の場合には、係合素子用糸が基布から抜かれることを防ぐ程度の融着力は得られるが、耳部端部に位置する経糸を固定するには不十分である。
なぜ、緯糸を構成するPPSマルチフィラメント糸を形成するフィラメントが細くかつ集束本数が多い方が、耳部端部の経糸を固定する能力に優れているのかについては必ずしも明確ではないが、緯糸を構成するフィラメントが細くかつ集束本数が多い方が経糸と接する面積が多くなり、且つ曲がり易くて経糸にまつわり易く、更に熱融着性マルチフィラメントの溶融した鞘成分樹脂の浸透力が向上することによるものと考えられる。ただ、余りにも細すぎたり、本数が多すぎると面ファスナーを織る際に織りづらくなる。より好ましくは、3.5~4.5デシテックスのフィラメントが55~70本集束しているマルチフィラメント糸の場合である。
そして、本発明において、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲であるのが、難燃性と耳部ほつれ防止の両方を満足する上で好ましい。より好ましくは2.05:1~2.4:1の範囲である。
前記した特許文献1の発明では、167デシテックス/10フィラメントのPPSマルチフィラメント糸と84デシテックス/24フィラメントの熱融着性マルチフィラメント糸の引き揃え糸あるいは167デシテックス/10フィラメントのPPSマルチフィラメント糸と167デシテックス/48フィラメントの熱融着性マルチフィラメント糸の引き揃え糸が実施例で用いられており、したがって緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比は1:1または1.99:1であり、本発明の上記好適範囲から外れる。
本発明において、緯糸を構成する熱融着性マルチフィラメント糸の割合を低くできた理由は、緯糸を構成するPPSマルチフィラメント糸を構成するフィラメントを細くかつ集束本数を多くしたことによる効果であると推測される。
本発明において、上記した経糸および緯糸の他に、係合素子用モノフィラメント糸または係合素子用マルチフィラメント糸が用いられる。係合素子がループ状係合素子である場合にはPPS系マルチフィラメント糸が、また係合素子がフック状係合素子である場合にはPPS系モノフィラメント糸が用いられる。
ループ状係合素子用として用いられるPPS系マルチフィラメント糸としては、16~30本のフィラメントが集束した太さ250~400デシテックスのマルチフィラメント糸が好ましく、この集束本数は、通常のループ面ファスナーに用いられているループ係合素子用マルチフィラメント糸の集束本数より多い。これにより、高温条件下でも高い係合力が保持されている。より好ましくは、18~25本のフィラメントが集束した太さ300~380デシテックスのマルチフィラメント糸である。
このようなループ状係合素子用マルチフィラメント糸には、高い係合力を得る上で、マルチフィラメント糸は実質的に無撚の状態であるのが好ましく、具体的には撚数0~100turn/mの撚数であることが好ましい。
また、フック状係合素子用として用いられるPPS系モノフィラメント糸としては、直径150~250μmのモノフィラメント糸が好ましい。もちろん、モノフィラメントの断面は円形である必要はなく、異形断面であってもよい。
このような経糸、緯糸および係合素子用糸から面ファスナーが製造される。次に、本発明の面ファスナーの製造方法について説明する。
まず、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子用糸が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織る。
織物の織組織としては平織が用いられ、織物の織密度は、経糸は、25~65本/cm、特に経糸40~60本/cmが好ましく、緯糸は、13~20本/cm、特に緯糸16~20本/cmが好ましい。
本発明の布製面ファスナーにおいて、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸の打ち込み本数は、それぞれ、経糸20本(ループ状係合素子用マルチフィラメント糸またはフック状係合素子用モノフィラメント糸を含む)に対して2~8本程度が好ましく、係合素子用の糸は経糸に平行に打ち込まれる。特に好ましくは経糸20本に対して5本の割合である。なお、ループ状係合素子とフック状係合素子の両者が存在している場合も上記打ち込み本数が好ましい。
本発明の布製面ファスナーの基布の表面および裏面には、難燃性にマイナスとなる熱融着性マルチフィラメント糸が存在していない方が好ましく、そのためには熱融着性マルチフィラメント糸が存在している緯糸が基布の表面および裏面で極力露出していないようにするのが好ましい。具体的には、基布において緯糸は一直線に存在しており、その一直線に存在している緯糸に対して経糸が緯糸を中心に上下方向に蛇行しながら緯糸表面を覆う織組織を形成し、その結果、基布の表面および裏面の大部分、具体的には基布表面および裏面の60%以上が経糸により覆われているのが好ましい。
さらに、耳部に関しても、このような、経糸が上下に蛇行して存在している経糸表面を覆う織組織を有していることが難燃性の他に、耳部ほつれを防ぐ上でも効果がある。基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率は係合素子が表面に存在している場合には、係合素子を根元から刈り取り、そして表面および裏面の顕微鏡写真を撮ることにより容易に求められる。すなわち、経糸被覆率は、裏面と表面を上から顕微鏡写真を撮り、その写真において、織物面積(経糸と緯糸に囲まれる空間部分も含む)に占める経糸(係合素子用糸を含む)の面積の割合を求め、得られる基布の経糸被覆率と耳部の経糸被覆率の相加平均値を求めたものである。
このような織組織を形成するためには、面ファスナーを織る際に、緯糸方向に張力を掛け、かつ経糸に関しては極力張力が掛からないように織り、さらに、熱融着性マルチフィラメント糸として熱収縮性の糸を用い、織物形成後の熱融着性マルチフィラメント糸を熱融着させる際の加熱により同糸を収縮させるのが好ましい。
本発明の布製面ファスナーは、基布の表面にPPS系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子のみが存在している布製ループ面ファスナーであっても、また基布の表面にPPS系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子のみが存在している布製フック面ファスナーであってもよい。
更には、基布の表面にPPS系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子とPPS系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子の両方が存在しているフック・ループ混在型布製面ファスナーであってもよいし、また基布の表面にPPS系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子が存在し、裏面にPPS系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子が存在している片面フック・片面ループの布製面ファスナーであってもよい。
そして、このようなフック・ループ混在型布製面ファスナーや片面フック・片面ループの布製面ファスナーの場合には、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸およびフック状係合素子用モノフィラメント糸の合計で地経糸20本(ループ状係合素子用マルチフィラメント糸およびフック状係合素子用モノフィラメント糸を含む)に対して3~8本が好ましく、そしてループ状係合素子用マルチフィラメント糸とフック状係合素子用モノフィラメント糸の本数比が1:1~2:1の範囲が好ましい。特に好ましくは本数比が1.2:1~1.8:1の範囲で、経糸20本に対して5本の割合である。
なお、本発明の面ファスナーにおいて、織物を構成する緯糸が2本合わさって経糸および係合素子用糸に対する浮沈関係を同一としているように織られているのが好ましく、このように織ることにより緯糸を構成している熱融着性芯鞘型マルチフィラメントが経糸に囲まれた範囲内で分散され易く、耳部での経糸ほつれを防ぐ上で好ましい。このような緯糸2本合わさった織り方をするための具体的な方法としては、織る際に、経糸の開口に緯糸を一方向からのみ挿入させて反対側で折り返し、帰ってきた状態で綜絖を上下させる方法が挙げられる。
上記緯糸の織密度は、緯糸2本を1本として数えた本数であり、上記緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸や熱融着性マルチフィラメント糸を形成するフィラメントの本数や糸の太さは、2本合わせた本数や太さではなく、合わせる前の緯糸1本での本数や太さである。
基布の表面に形成するループの高さとしては、ループがループ状係合素子用である場合には2~3mm、特に2.1~2.8mm、ループがフック状係合素子用である場合には1.2~2mm、特に1.3~1.8mmが好ましい。また係合素子の密度としては耳部を除く基布の面積単位で35~70個/cmが好ましい。なお、面ファスナーがフック・ループ混在型の場合であっても、あるいは片面フック・片面ループの場合であっても、フック状係合素子とループ状係合素子の合計個数もこの範囲が好ましい。
そして、本発明の布製面ファスナー(耳部を含む)において、面ファスナーを構成する全てのPPS系の糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が88:12~92:8の範囲であるのが、難燃性と耳部ほつれ防止を両立させる上で好ましい。より好ましくは88.5:11.5~91.5:8.5の範囲である。
特に、この面ファスナーを構成する全てのPPS系の糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比の条件と、前記した、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲であるという条件をも同時に満足している場合が難燃性と耳部ほつれ防止を高度に両立させる上で好ましい。
本発明の布製面ファスナーの目付としては、加熱処理後で420~600g/mが好ましく、より好ましくは450~550g/mである。
本発明では、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織るのであるが、緯糸方向の係合素子領域の幅としては12~60mm、耳部領域の幅としては3~10mmが好ましく、より好ましくは係合素子領域の幅としては16~50mm、耳部領域の幅としては4~8mmであり、織物全体の緯糸方向の幅としては生産性の点から100~500mmである。したがって織物の緯糸方向には耳部領域が両端の2筋を合わせて3~9筋、係合素子領域が2~8筋経糸に平行に存在しているのが好ましい。
本発明の布製面ファスナーでは、耳部領域に係合素子用糸を打ち込まないのが柔軟性や耳部ほつれ防止の点で好ましい。従来から耳部にも係合素子用糸を打ち込み、係合素子の根元で刈り取り、耳部を形成する方法や、耳部に存在する係合素子を溶融させて、係合素子を取り除く方法なども行われているが、このような方法の場合には、係合素子の切り株が肌に刺激を与えたり、あるいは溶融により耳部が固くなり、風合いを損ない易い。
このようにして織られた面ファスナー用織物に、次に熱融着性マルチフィラメント糸の鞘成分樹脂を溶融させる温度以上の温度であって、芯成分樹脂の溶融温度より8℃低い温度~芯部の溶融温度の範囲内の温度に約1~3分間加熱して、織物を構成している糸を熱融着性マルチフィラメント糸により融着固定させる。
この温度条件は重要であり、この温度範囲より低い温度の場合には、耳部のほつれを防止することはかなり難しい。前記した特許文献1の実施例では、250℃で熱処理されており、この温度は芯部の溶融温度260℃より10℃低く、現に、この実施例を追試したところ耳部からのほつれを防ぐことはできなかった。この温度条件のみが原因とは言い切れないが、この温度条件が耳部ほつれに大きく影響していることは事実である。
そして、次に係合素子用糸がモノフィラメント糸である場合には、ループの片脚を切断してループをフック状係合素子とする。上記の熱処理によりループ形状が固定されていることから、その片脚を切断しても、フック形状は保たれ、ループ状係合素子と係合し、十分な係合力を有するものとなる。
そして、最後に、耳部領域で織物を経糸に平行にスリットして、織物を複数条の耳部付の難燃性面ファスナーに分割する。スリットは耳部領域の中央部を経糸方向にスリットするのが好ましい。これにより同時に複数本のリボン状の布製面ファスナーが得られることとなり、生産性に優れている。なお、両端部に位置する布製のスリットされた面ファスナーの外側には、緯糸が折り返された耳部が存在することとなるが、このような緯糸の折り返しが存在すると見栄え上および縫製上好ましくないので、そのような折り返しを切断除去して、通常のスリット耳部とするのが好ましい。
このようにして得られた布製面ファスナーは、面ファスナーの経糸方向に沿った両端部には係合素子が存在しない耳部が形成されており、且つ耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されている。そして、特に難燃性に優れており、且つ耳部ほつれを生じ難い。
具体的には、本発明の難燃性面ファスナーは、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法のいずれにも合格する難燃性を有している。さらに耳部ほつれ防止に関しても、本発明の布製面ファスナー(長さ25cm×幅2.5cmを経糸に添って20cmハサミでスリットを入れたもの)を家庭用渦型洗濯機(機種:日立2層式電気洗濯機PS-45A形)を用い、試験重量を1kg(負荷布を加えて1kg)にし、合成洗剤1g/l、液量36l、洗濯機の条件として、水流は標準に設定、という条件で8時間攪拌しても20cmハサミでスリットした箇所も耳部からも経糸のほつれが片端で2本以下であり、このことから、耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できる。
本発明の布製面ファスナーは、このように難燃性と耳部耐ほつれ性の点で高度に優れていることから、難燃性と見栄えが求められる用途に適しており、例えば自動車や飛行機や列車等の乗物の固定部材として使用できる。
具体的には、本発明の面ファスナーの耳部を布製または皮革製のシートの裏面に縫い付けることにより、難燃性面ファスナーがシートの裏面に取り付けられている面ファスナー固定シートを得て、これを乗物用座席の表面を覆う表皮材として用いることができる。
より具体的には、この表皮材の裏面に取り付けられた難燃性面ファスナーと座席用の発泡樹脂製のクッション体の表面に取り付けられた面ファスナーを係合させることにより表皮材がクッション体表面に固定されている座席とすることができる。
他にも航空機や自動車等の床材として用いられるカーペットやカーテンなどの取り付け固定材や表面材を構造体に取り付ける固定材等としても使用できる。
以下本発明を実施例により説明する。
なお、実施例中の難燃性試験は、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で実施した。
また耐ほつれ性は、長さ25cm×幅2.5cmの布製面ファスナーを準備し、経糸に添って20cmハサミでスリットを入れたものを家庭用渦型洗濯機(機種:日立2層式電気洗濯機PS-45A形)を用い、試験重量を1kg(負荷布を加えて1kg)にし、合成洗剤1g/l、液量36l、洗濯機の条件として、水流は標準に設定、という条件で8時間連続洗濯を行い、糸のほつれにより端部からはみ出した本数が一つの端面に付き2本以下ものを耳部ほつれで合格とした。
さらに、縫製性は、実際に綿布に面ファスナーの耳部をミシンで縫製し、縫製し易いか否かのテストを8人の縫製従事者が行い、その感触結果を総合して評価した。
実施例1
ループ面ファスナーを構成する経糸、緯糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸として次の糸を用意した。
[経糸(撚数:309turn/m)]
・PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント)
[緯糸(無撚引き揃え糸)]
・PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント)
・熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸(120デシテックス/24フィラメント)
芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
芯鞘比率(質量比): 70:30
190℃での乾熱収縮率:約15%
[ループ状係合素子用マルチフィラメント糸(撚数:40turn/m)]
・PPSマルチフィラメント糸(334デシテックス/20フィラメント)
上記3種の糸を用い、織密度(熱処理後)が経糸56本/cm(係合素子用糸を含む)、緯糸18.5本/cmとなるように織った。そして、経糸4本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメント糸を経糸に平行に打ち込み、緯糸3本を浮沈するごとに経糸1本跨いで2.3mmの高さのループを形成するようにした。そして、織物の表面には緯糸方向幅46mmの係合素子領域と緯糸方向幅5mmの耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しているが、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している緯糸方向幅110mmの織物を織った。なお、耳部領域には係合素子用糸は打ち込まれていない。
さらに、織る際には、緯糸が2本合わさって経糸および係合素子用糸に対する浮沈関係を同一としているように、緯糸を一方向からのみ挿入させて反対側で折り返す方法を用いた。
このようにして得られたループ面ファスナー用織物を255℃、約2分間熱処理して、緯糸を構成する熱融着性マルチフィラメント糸の鞘成分を溶融させて、ループ状係合素子用糸および経糸を固定した。そして、得られたループ面ファスナー用織物の耳部領域の中央部を経糸に平行にスリットし、さらに両端の耳部の緯糸織り返し部を除去して、幅2.5mmの耳部付の2本の幅51mm(耳部を含む)のループ面ファスナーを作製した。したがって、得られたループ面ファスナーの経糸方向に沿った両端部にはループ状係合素子が存在しない耳部が形成されており、耳部の経糸方向に沿った切断面が緯糸の切断により形成されている。
得られたループ面ファスナーの係合素子領域には、60個/cmの密度でループ状係合素子が存在しており、面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着性マルチフィラメント糸の質量比は90:10、緯糸を構成するPPSマルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.08:1、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は67%で、面ファスナーの目付は512g/mであった。
得られたループ面ファスナーを、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で難燃性を測定ところ、いずれの試験法にも合格する極めて優れた難燃性を有していた。
また耐ほつれ性に関しても、上記した家庭用洗濯機を用いて8時間連続洗濯試験を行ったところ、糸のほつれた本数が一つの端面から最大で1本であり、耐ほつれ試験にも合格し、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。
縫製性は、綿布に上記ループ面ファスナーの両耳部を、ミシンを用いての縫製により縫い付け、その際に縫製し易いか否かを前記8人の縫製従事者で行なったところ、全ての人が、蛇行することなく縫製性も極めて良好であるとの回答であった。
さらに、このループ面ファスナーを一般市販されているフック面ファスナー(クラレファスニング(株)製フック面ファスナー:A48600.71)と係合させたところ、初期係合力はシアー強力13.0N/cm、ピール強力1.40N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力12.6N/cm、ピール強力1.30N/cmであり、係合力に関しても極めて優れたループ面ファスナーであることが分かった。
さらにこの面ファスナーを230℃の熱風中に24時間放置した後、20℃で上記フック面ファスナーとの係合力を測定した。その結果、24時間放置後でもテスト前の係合力の90%以上を有しており、優れた耐熱係合力を有していた。
以上の結果、実施例で得られた面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力、耐熱係合力のいずれをも満足するループ面ファスナーであった。
実施例2
上記実施例1と同様の糸仕様で、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmから17.7本/cmに変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着マルチフィラメント糸の質量比が90:10であり、係合素子密度が60本/cm、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は65%で、面ファスナーの目付は496g/mであった。
得られたループ面ファスナーを、実施例1と同様に、難燃性テスト、耐ほつれ性テスト、縫製性テストを行ったところ、いずれのテストにも実施例1の面ファスナーと同様に合格する極めて優れたものであった。そして、この耐ほつれ性テストの結果、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。また係合力に関しても、初期係合力はシアー強力11.0N/cm、ピール強力1.34N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力12.6N/cm、ピール強力1.30N/cmと優れ、更に230℃で24時間放置後の係合保持力に関しても87%以上を有し、極めて優れたループ面ファスナーであった。
実施例3
上記実施例1で用いた経糸、緯糸を構成PPSマルチフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸は同一であって、熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸を、120デシテックス/24フィラメントのものから110デシテックス/24フィラメントのものに変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。なお、変更後の熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸は、芯成分樹脂、鞘成分樹脂および芯鞘比率は実施例1のものと同一である。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量比が91:9、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.27:1で、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は69%で、面ファスナーの目付は504g/mであった。
あった。
得られたループ面ファスナーを、実施例1と同様に、難燃性テスト、耐ほつれ性テスト、縫製性テストを行ったところ、いずれのテストにも実施例1と同様に合格し、極めて優れたものであった。そして、この耐ほつれ性テストの結果、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。また係合力に関しても、初期係合力はシアー強力12.6N/cm、ピール強力1.36N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力12.2N/cm、ピール強力1.31N/cmであり、係合力に優れており、更に230℃で24時間放置後の係合保持力に関しても85%以上と耐熱係合力に関しても極めて優れたループ面ファスナーであった。
実施例4
上記実施例3と同様の糸仕様で、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmから17.7本/cmに変更し、その他条件は実施例1と同一の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合は91.5:8.5であった。また、得られたループ面ファスナーの係合素子密度は60本/cm、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は68%で、面ファスナーの目付は488g/mであった。
得られたループ面ファスナーを、実施例1と同様に、難燃性テスト、耐ほつれ性テスト、縫製性テストを行ったところ、いずれのテストにも実施例1のものと同様に合格し、極めて優れたものであった。そして、この耐ほつれ性テストの結果、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。また係合力に関しても、初期係合力はシアー強力12.2N/cm、ピール強力1.32N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力12.0N/cm、ピール強力1.31N/cmであり、更に230℃で24時間放置後の係合保持力に関しても85%以上を示し、耐熱係合力に関しても極めて優れたループ面ファスナーであった。
比較例1
上記実施例1において、熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸を120デシテックス/24フィラメントから99デシテックス/24フィラメントに変更し、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmが17.3本/cmに変更し、さらに熱処理条件を240℃の約2分間に変更し、その他の条件は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の割合が91.7:8.3で、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が2.53:1であった。
得られたループ面ファスナーは、難燃性テストおよび縫製性テストに関しては合格したものの、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていないことが確認された。耐ほつれ性に関しては、耳部端部からのほつれた本数が一つの端面で4~5本であり、耐ほつれ性テストに不合格のものであった。
比較例2
上記実施例1において、緯糸はPPSマルチフィラメント糸を含まずに、熱融着性マルチフィラメント(99デシテックス/24フィラメント)を2本引き揃えに変更し、織密度(熱処理後)を緯糸18.5本/cmを16.9本/cmに変更し、熱処理条件を240℃の約2分間に変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合が80:20、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が0:1であった。
このようにして得られたループ面ファスナーの難燃性テストを行った結果、自動車用燃焼試験の方は一応合格したが、航空機用燃焼試験の方は不合格となり、耳部ほつれ性のテストを行う以前の段階の難燃性の点で劣るものであった。
比較例3
上記実施例1において、緯糸として、PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント)1本と熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸(120デシテックス/24フィラメント)を2本の計3本の引き揃え糸に変更する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーを構成するPPS:熱融着糸の比が、84:16、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が0.7:1であった。
得られたループ面ファスナーの難燃性テストを行った結果、自動車用燃焼試験の方は一応合格したが、航空機用燃焼試験の方は不合格となり、他の性能をテストする以前の段階の難燃性の点で劣るものであった。
比較例4
上記実施例1において、緯糸として、PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント)と下記の熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸の無撚引き揃え糸を用いる以外は実施例1と同様の方法によりループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーを構成するPPS:熱融着糸の質量比が92.6:7.4で、緯糸を構成するPPS系マルチフィラメント糸と熱融着性マルチフィラメント糸との質量比が1.99:1であった。
[熱融着性芯鞘型マルチフィラメント糸(84デシテックス/24フィラメント)]
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
芯鞘比率(重量比): 70:30
190℃での乾熱収縮率:約15%
得られたループ面ファスナーの耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていないことが確認された。また、耳部ほつれ性テストを行ったところ、耳部端部からほつれた本数が一つの端面で5本前後となり不合格であった。
比較例5
上記実施例1と同様の糸を用い、耳部を端部で折り返す方法、すなわち単条織の幅の狭い織物に変更し、最後にスリットする工程を省略する以外は実施例1と同様の条件でループ面ファスナーを作製した。得られたループ面ファスナーには、経糸方向に沿った両端部には係合素子用糸が存在しない耳部が形成されているものの、耳部の経糸方向に沿った端面は、緯糸の折り返しにより形成されており、緯糸の切断により形成されたものではない。
得られたループ面ファスナーは、難燃性と耐ほつれ性の点では満足できるものであったが、縫製性に関しては、耳端部の凸凹部分で縫製時に蛇行が生じ、縫製性が悪いといずれの縫製担当者も不合格と認定した。さらに、単条織であることから生産性の点で大きく劣るものであった。
実施例5
実施例1において、係合素子用糸を直径200μmのPPS製モノフィラメント糸に変更し、緯糸3本を浮沈する度に経糸1本跨いで高さ2.45mmのループを形成し、そして熱処理後にループの片脚を切断してフック状係合素子とする以外は実施例1と同様の方法によりフック面ファスナーを作製した。得られたフック面ファスナーの係合素子領域には、60個/cmの密度で高さ2.10mmのフック状係合素子が存在しており、面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合は、90:10で、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は67%で、面ファスナーの目付は502g/mであった。
得られたフック面ファスナーを、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で難燃性を測定ところ、いずれにも合格する極めて優れた難燃性を有していた。また耐ほつれ性に関しても、上記した家庭用洗濯機を用いて8時間連続洗濯試験したところ、糸のほつれた本数が一つの端面から1本もしくはそれ未満であり、耐ほつれ試験にも合格し、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。さらに縫製性においても上記実施例1と同様に優れており、満足できるものであった。
さらに、このフック面ファスナーを上記実施例1のループ面ファスナーと係合させたところ、初期係合力はシアー強力12.1N/cm、ピール強力1.32N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力11.9N/cm、ピール強力1.26N/cmであり、係合力に関しても極めて優れたフック面ファスナーであることが分かった。さらにこの面ファスナーの組み合わせを230℃の熱風中に24時間放置した後、20℃で係合力を測定した。その結果、テスト前の係合力の85%以上を保持しており、優れた耐熱係合力を有していた。
以上の結果、この実施例で得られたフック面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力、耐熱係合保持力のいずれをも満足する極めて優れたものであった。
実施例6
上記実施例1において、係合素子用糸として、実施例1で用いたループ状係合素子用PPSマルチフィラメント糸と実施例5で用いたフック状係合素子用モノフィラメント糸を併用し、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸とフック状係合素子用モノフィラメント糸が2本毎に交互に存在しているようにして、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸に関しては緯糸3本を浮沈する度に経糸1本跨いで高さ3.00mmのループを形成し、一方フック状係合素子用モノフィラメント糸に関しては緯糸3本を浮沈するごとに経糸3本跨いで高さ2.40mmのループを形成するように織物を織る以外は実施例1と同様にして織物を織り、そして実施例1と同様の熱処理後に、フック用係合素子用ループの片脚付け根部分を切断してフック状係合素子とした。
得られたフック・ループ混在型面ファスナーの係合素子領域には、60個/cmの密度で高さ2.00mmのフック状係合素子と60個/cmの密度で高さ2.40mmのループ状係合素子が存在しており、面ファスナー用織物のテープを構成するPPS:熱融着糸の質量割合は90:10で、基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は66%で、面ファスナーの目付は510g/mであった。
得られたフック・ループ混在型面ファスナーを、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で難燃性を測定ところ、いずれにも合格するものであった。また耐ほつれ性に関しても、上記した家庭用洗濯機を用いて8時間連続洗濯試験したところ、糸のほつれた本数が一つの端面から2本を超えるものはなく、耐ほつれ試験にも合格し、耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。さらに縫製性においてもいずれの作業員も縫製し易いとの高評価を与えた。
さらに、このフック・ループ混在型面ファスナー同士を係合させたところ、初期係合力はシアー強力10.0N/cm、ピール強力1.20N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力8.4N/cm、ピール強力0.91N/cmであり、係合力に関しても極めて優れたフック・ループ混在型面ファスナーであることが分かった。
以上の結果、この実施例で得られたフック・ループ混在型面ファスナーは、難燃性、耐ほつれ性、縫製性、係合力のいずれをも満足するものであった。
実施例7
上記実施例6において、ループ状係合素子用糸からなるループを基布の表面側に、フック状係合素子用糸からなるループを基布の裏面側に形成する以外は実施例6と同様の糸および方法により片面フック・片面ループの面ファスナーを作製した。基布および耳部の表面および裏面の経糸被覆率の平均値は66%で、面ファスナーの目付は510g/mであった。
得られた片面フック・片面ループの面ファスナーを、自動車用燃焼試験FMVSS-302の水平法と航空機用燃焼試験FAR.PART25-853bの垂直法で難燃性を測定ところ、いずれにも合格するものであった。また耐ほつれ性に関しても、上記した家庭用洗濯機を用いて8時間連続洗濯試験したところ、糸のほつれた本数が一つの端面から0本または1本であり、耐ほつれ試験にも合格し、このことから耳部の経糸方向に沿った切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていることが確認できた。さらに縫製性においても8人の作業員全員が縫製し易いと評価した。
さらに、この片面フック・片面ループ面ファスナー同士の表面側と裏面側を係合させたところ、初期係合力はシアー強力6.0N/cm、ピール強力0.50N/cmで、2000回係合剥離を行った後の係合力もシアー強力5.9N/cm、ピール強力0.55N/cmであり、更に230℃で24時間放置した後の係合力に関しても放置前の80%以上を保持しており、係合力および耐熱係合力の点でも極めて優れた片面フック・片面ループの面ファスナーであることが分かった。

Claims (8)

  1. ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなる経糸、ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにポリフェニレンサルファイド系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から構成された基布の表面に該係合素子用糸から形成された係合素子を有し、更に以下の構成1)および2)を満足していることを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナー。
    1) 同面ファスナーの経糸方向に沿った両端部には係合素子が存在しない耳部が形成されていること、
    2)耳部の経糸方向に沿った切断面が、緯糸の切断により形成されており、切断面に位置する経糸が緯糸により固定されていること、
  2. 面ファスナーを構成する全てのポリフェニレンサルファイド系の糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が88:12~92:8の範囲である請求項に記載の難燃性面ファスナー。
  3. 面ファスナーの係合素子が存在しない面に樹脂層が存在していない請求項1または2に記載の難燃性面ファスナー。
  4. 基布の表面にポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子が存在し、裏面にポリフェニレンサルファイド系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子が存在している請求項1~3のいずれかに記載の難燃性面ファスナー。
  5. 基布の表面にポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子とポリフェニレンサルファイド系モノフィラメント糸からなるフック状係合素子の両方が存在している請求項1~3のいずれかに記載の難燃性面ファスナー。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の難燃性面ファスナーの耳部を布製または皮革製のシートの表面または裏面に縫い付けることにより難燃性面ファスナーがシートの裏面に取り付けられている面ファスナー固定シート。
  7. 請求項に記載のシートが航空機用座席または自動車用座席の表面を覆う表皮材であり、シート裏面に取り付けられた難燃性面ファスナーと座席用クッション体の表面に取り付けられた面ファスナーとの係合により表皮材がクッション体表面に固定されている座席。
  8. ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸からなる経糸、ポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との引き揃え糸からなる緯糸であって、緯糸に用いられているポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸が3.2~4.8デシテックスのフィラメントが52~80本集束しているマルチフィラメント糸であり、かつ緯糸を構成するポリフェニレンサルファイド系マルチフィラメント糸と熱融着性の芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸との質量比が2.0:1~2.5:1の範囲である緯糸、ならびにポリフェニレンサルファイド系のマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸からなる係合素子用糸から、以下の工程i)~iv)
    i)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物であって、織物の表面には係合素子用糸からなる多数のループが存在している係合素子領域と係合素子用糸が存在していない耳部領域がそれぞれ経糸方向に連続して存在しており、緯糸方向には係合素子領域と耳部領域が交互に存在している織物を織る工程、
    ii)工程i)で得られた織物を、熱融着性芯鞘型フィラメントの鞘部を溶融させる温度以上の温度であって、芯部の溶融温度より8℃低い温度~芯部の溶融温度の範囲内の温度に加熱して、織物を構成している糸を熱融着性芯鞘型フィラメントにより融着固定させる工程、
    iii)係合素子用糸がモノフィラメント糸である場合には、ループの片脚を切断してループをフック状係合素子とする工程、
    iv)耳部領域で織物を経糸に平行にスリットして、織物を複数条の耳部付の難燃性面ファスナーに分割する工程、
    を順次行うことを特徴とする耳部付の難燃性面ファスナーの製造方法。
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