JP5966195B2 - 布製面ファスナーの組み合わせ - Google Patents

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Description

本発明は、係合素子がともにポリエステル系の繊維で構成された布製のフック面ファスナーと布製のループ面ファスナーの組み合わせであって、両者の係合素子の風合いが柔らかく、さらに優れた係合力と係合耐久性を有する面ファスナーの組み合わせに関する。
従来から、布製の面ファスナーの組み合わせとして、モノフィラメント糸からなるフック状係合素子を基布の表面に有するフック面ファスナー(A)と、該フック状係合素子と係合し得るマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を基布の表面に有するループ面ファスナー(B)からなる組み合わせが広く知られており、市場ではこれら(A)と(B)の両者を係合させた状態で袋詰めして販売されており、これらは、衣類、靴、帽子、ベルト、サポーター、枕カバー、鞄バッグ類、血圧計、その他日用雑貨、結束テープ、梱包用資材、土木建築用資材、農漁業用資材、玩具等の多くの分野に広く用いられている。
このようなフック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)は、一般に、地経糸と地緯糸からなる基布を製造する際に、フック面ファスナー(A)は、フック状係合素子となるモノフィラメント糸を地経糸に平行に基布に打ち込み、ところどころ同モノフィラメント糸をループ状に基布上に突出させたのち、ループ形状を熱により固定し、さらに該ループの片足側部をカットしてフック状係合素子とする方法により、またループ面ファスナー(B)は、ループ状係合素子となるマルチフィラメント糸を地経糸に平行に打ち込み、ところどころ該マルチフィラメント糸をループ状に基布上に突出させてループ状係合素子とする方法によりそれぞれ製造されている。
これらフック面ファスナー(A)あるいはループ面ファスナー(B)は、上記したように、地経糸、地緯糸、フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸から主として構成されることとなるが、これら地経糸、地緯糸、フック状係合素子用モノフィラメント糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸として、従来は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、これらを主成分とする共重合体などのポリアミド系ポリマーからなる繊維が一般に用いられている。しかしながら、ポリアミド系繊維を用いた場合には、吸水・吸湿や熱により基布の形状が変化し、場合によっては、吸湿や吸水、熱により基布が波打ったりして形態が損なわれるという現象が生じ、その結果、面ファスナーを取り付けた製品の品質や高級感を損なうという大きな問題点を有しており、さらに面ファスナーとして最も重要な係合力も必ずしも高くないという問題点も有している。
さらに、今日、衣料品は、そのほとんどが、ポリエステル系の繊維から製造されているが、それに取り付ける面ファスナーがポリアミド製のものである場合には、両者の染色性が全く相違するため、両者を同一の染色条件で同時に同色に染色することが極めて難しく、両者での色調を揃えるためには、最終製品の色調を有する数多くの面ファスナーを予め在庫として用意しなければならないという問題点も有している。
このようなポリアミド系繊維を用いた場合の問題点を解消する技術として、最近、吸水・吸湿性の低いポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、あるいはこれらを主成分とする共重合体などのポリエステル系ポリマーからなる繊維を用いることが考えられ、現にポリエステル系繊維を面ファスナーに用いることを記載した文献も存在している。
例えば特許文献1には、面ファスナーを構成する係合素子およびこれらが存在する織編物を構成する繊維として、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系ポリマーからなる合成繊維の他に、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略す)、これらを主成分とする共重合体などのポリエステル系ポリマーからなる合成繊維も使用できることが記載されている。
また特許文献2には、面ファスナーの基布を構成する繊維として、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド類からなる繊維の他に、PETやPBT等のポリエステル類からなる繊維も使用できること、さらにフック状係合素子にはナイロンまたはポリエステル製のモノフィラメント糸、ループ状係合素子にはナイロンまたはポリエステル製のマルチフィラメント糸が好ましいことが記載されている。
確かに、PET系のポリエステル繊維をフック面ファスナーやループ面ファスナーに使用すると、ポリアミド系繊維を用いた場合の大きな問題点である吸水・吸湿、熱により面ファスナーが波打つという大きな欠点や、今日の衣類を構成する主要繊維と同一のポリエステルであることから染色性の違いによる多くの色調の面ファスナーを在庫として持たなければならないという問題点が解消できるが、その反面、PET系ポリエステルからなるモノフィラメント糸をフック面ファスナーのフック状係合素子として使用した場合には、フック状係合素子が剛直過ぎることから、ループ状係合素子が切断され易く、さらに剛性が原因で瞬間的な負荷すなわち衝撃繰り返し剥離が生じるとフックが伸びて変形し回復しづらく、またPET系ポリエステルからなるマルチフィラメント糸をループ面ファスナーのループ状係合素子用糸として用いた場合には、ループを構成するマルチフィラメント糸のバラケが少なく、さらに繰り返し剥離によりループにへたりが生じやすく、これらのことから係合力および係合耐久性が低下すること、また面ファスナーを縫製する際に、係合素子が縫糸により倒された場合に倒された係合素子部分を擦過しても係合素子が立ち上がらないという欠点を有している。さらに係合素子の剛性が高く、肌触りが固く、衣料品や日用雑貨等の肌触り感が柔軟であることが求められる用途には必ずしも適したものではないこと等の問題点を有している。
また、PBT系ポリエステルからなるマルチフィラメント糸をループ面ファスナーのループ状係合素子用糸として用いた場合には、ループ密度が多いとマルチフィラメント糸がバラケやすため係合するための空間が埋まり、ループ状係合素子同士が邪魔し合ってフック状係合素子と係合し難く、起毛等で係合空間確保が必要となり、かつPBT系ポリエステルからなるモノフィラメント糸をフック面ファスナーのフック状係合素子に使用した場合には、フック状係合素子にループが係合しても、糸が柔軟であるため低い張力によりフック状係合素子が伸びて係合が外れるという問題を有している。
特開2002−238621号公報 0027段落 特開2002−223817号公報 0007段落および0008段落
本発明は、ポリアミド系繊維を用いた面ファスナーのように、吸水・吸湿・熱による形態変化や染色性の違いによる多色品の在庫を用意しておかなければならないと言う問題点を有さず、さらに、PET系繊維を用いた面ファスナーのように、係合素子の剛直による肌触りの固さ、倒れた係合素子が立ち上がりにくく、またフック状係合素子のフック形状の伸びやすさやループ状係合素子の切断し易さやへたり易さやループ状係合素子のバラケ難さによる係合力および係合耐久性が低いという問題点を有さず、さらにPBT系繊維を用いた場合の係合力が低いという問題点を解消することを目的とするものである。
すなわち本発明は、モノフィラメント糸からなるフック状係合素子を基布の表面に有するフック面ファスナー(A)と、該フック状係合素子と係合し得るマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を基布の表面に有するループ面ファスナー(B)からなる組み合わせにおいて、フック面ファスナー(A)およびループ面ファスナー(B)の基布を構成している地経糸および地緯糸がともにポリエステル系樹脂から形成されている糸であり、かつ該モノフィラメント糸がPBT系のポリエステル樹脂から形成された直径0.14〜0.20mmのモノフィラメント糸であり、該マルチフィラメント糸がPBT系のポリエステル樹脂から形成されたマルチフィラメント糸であり、さらに該フック状係合素子の密度および該ループ状係合素子の密度がそれぞれ50〜80個/cm、30〜50個/cmであり、かつ該フック状係合素子の密度が該ループ状係合素子の密度より高いことを特徴とする布製面ファスナーの組み合わせである。
そして、好ましくは、地緯糸が芯鞘型の熱融着性繊維を含み、さらにフック状係合素子およびループ状係合素子の根元が、基布を構成する該地緯糸の鞘成分樹脂により固定されてる上記の布製面ファスナーの組み合わせである。
また、好ましくは、ループ面ファスナー(B)のループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸が、4〜15本のフィラメントからなるトータルデシテックスが160〜300デシテックスのマルチフィラメント糸である上記の布製面ファスナーの組み合わせである。
さらに好ましくは、地緯糸として、芯鞘型の熱融着性繊維からなり、芯成分と鞘成分の重量比率は60:40〜80:20で、200℃乾熱収縮率が12%以上の糸が使用されている上記の布製面ファスナーの組み合わせである。また好ましくは、面ファスナー(A)と(B)の基布の裏面と係合素子面が識別可能な別々の色調に染色されている上記の布製面ファスナーの組み合わせである。
本発明の布製面ファスナーの組み合わせでは、ループ面ファスナー(B)のループ状係合素子を構成するマルチフィラメントがPBT系のポリエステルから構成され、かつその素子密度が低いことから、ループ状係合素子はバラケ易くかつへたりが少なく、その結果、フック面ファスナー(A)のフック状係合素子と係合し易くかついつまでも高い係合力を保持し、またフック面ファスナー(A)のフック状係合素子を構成するモノフィラメント糸はPBT系の柔軟なポリエステルであり、かつ細くて係合素子密度が高いことから、肌触りが柔らかく、さらにループ糸を切断することもなくかつフック形状をいつまでも保ち易く、さらに係合素子が倒れても立ち上がり易く、フック内に多くのループ繊維が進入し易いことから高い係合力と優れた係合耐久性が得られる。そしてループ状係合素子密度がフック状係合素子密度より低いことにより、高い係合力が一層向上する。しかも、ポリアミド系繊維を用いた面ファスナーのように、吸水・吸湿・熱による形態変化や衣類構成繊維との染色性の違いによる多色の在庫を有しておかなければならないと言う問題点も有さない。
従来から、面ファスナーの係合力を高めるためおよび係合耐久性が高めるために、フック面ファスナーのフック状係合素子を構成するモノフィラメント糸を太くして、フック形状が容易に開かないようにすること、またフック状係合素子の密度を低くして、すなわちフック状係合素子間隔をあけることにより容易にフック状係合素子のフック内にループ状係合素子を構成する繊維が進入し易くすること、さらに、ループ面ファスナーのループ状係合素子の密度を高くして、多くのループ状係合素子構成繊維がフック状係合素子のフック内に進入するようにすることが一般的に行われている。
しかしながら、PBT系ポリエステルからなる係合素子を有する面ファスナーに上記した係合力および係合耐久性の向上策を採用しても所期の効果が得られない。本発明は、PBT系のポリエステルからなるモノフィラメント糸からなるフック状係合素子を有するフック面ファスナーおよびPBT系ポリエステルからなるマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を有する面ファスナーの組み合わせの場合には、上記の一般的常識では係合力および係合耐久性の問題点が解消されないことを見出し、すなわち、従来の一般的な常識とは全く相反する、フック面ファスナーのフック状係合素子を構成するモノフィラメント糸の太さを細くし、かつフック状係合素子の密度を高め、さらにループ状係合素子の密度を低くするという手段が、面ファスナーの係合力を高め、係合耐久性を高める上で極めて効果的であることを見出したものである。同時に、PBT系繊維からなる係合素子を有する面ファスナーは、PET系繊維からなる係合素子を有する面ファスナーと比べて、はるかに柔軟であり肌触りが良好であり、かつへたり難いことを見出したものである。
そして、好ましくは、基布を構成する地緯糸および地経糸が共にポリエステル系の繊維であることから、地緯糸を溶融させると、フック状係合素子およびループ状係合素子が共にポリエステル系の繊維であることから強固に基布に融着され、繰り返しの係合剥離によっても、係合素子が基布から引き抜かれることがなく、よりすぐれた耐久性のある係合力がいつまでも得られることとなる。
従来の面ファスナーでは、フック状係合素子やループ状係合素子が係合剥離の際の張力により基布から引き抜かれないように、基布裏面に接着剤(いわゆるバックコート樹脂)を塗布して係合素子用の糸を基布に固定して係合素子の耐引抜性を得ているが、基布裏面に接着剤を塗布した場合には、基布が接着剤で固められることから剛直なものとなり、柔軟性が要求される衣類分野には適さないこととなる。それに対して、本発明のようにポリエステル系の繊維を用い、かつポリエステル系の熱融着性の繊維を地緯糸として用いると、このようなバックコート樹脂塗布による問題点が解消できることとなる。
さらにポリアミド系繊維の場合には、熱により繊維の劣化や着色を生じることから、熱融着させる技術では商品価値ある面ファスナーは得られないのに対して、本発明ではこのような問題点も解消できる。
さらに、本発明では、面ファスナーを構成する繊維は、実質的に全てポリエステル系の繊維であることから、染色した場合に同一の染色工程で染色できることとなるが、基布部にPET繊維を用いると、PBTからなる係合素子部とPETからなる基布部の両者間の染着性の違いを利用して、濃淡差識別が可能になり、小片にしたものを縫製する際、面ファスナーの表裏の識別が容易となり、従来から生じやすく問題となっている縫製間違いをなくすことができる。
本発明において、フック状係合素子を構成するモノフィラメント糸とループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸は、ともにPBT系のポリエステルであらねばならない。
従来から、フック面ファスナーとループ面ファスナーは同一のメーカーにより製造されており、両者は、面ファスナーの組み合わせとしてセットで市販されているが、いずれも、フック状係合素子とループ状係合素子は同一の樹脂からなるものであり、本発明においても同一のPBT系のポリエステルが用いられる。その理由は、フック面ファスナーとループ面ファスナーを取り付ける対象物が通常は同一であることから、フック面ファスナーとループ面ファスナーは同一の染色性を有していることが求められることによる。
まず、本発明を構成するフック面ファスナー(A)は、主としてフック状係合素子用モノフィラメント糸、地経糸および地緯糸からなり、一方、係合相手のループ面ファスナー(B)は、主としてループ状係合素子用マルチフィラメント糸、地経糸および地緯糸から形成される。
フック面ファスナー(A)を構成するフック状係合素子には、柔軟性および繰り返し剥離に対するフック形状保持性が求められ、そのために、従来は、太い合成繊維製のモノフィラメント糸が用いられている。本発明では、このモノフィラメント糸として、特に繰り返し剥離に対するフック形状保持性に優れたPBT系ポリエステルから形成されたモノフィラメント糸が用いられる。
PBT系のポリエステルとは、ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、主としてテレフタル酸と1,4―ブタンジオールからの縮合反応により得られるポリエステルであり、若干ならばテレフタル酸や1,4―ブタンジオール以外の重合単位が付加されていてもよい。このような重合単位の代表例としては、イソフタル酸、スルホイソフタル酸ソーダ、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール類、ヒドロキシ安息香酸、乳酸等のオキシカルボン酸、安息香酸で代表されるモノカルボン酸等が挙げられる。更に、上記PBT系ポリエステルには、それ以外のポリマーが少量添加されていても良い。
このようなポリエステルからなるフック状係合素子用モノフィラメント糸の太さとしては、直径0.14〜0.20mmのものが用いられる。0.14mmより細い場合には、十分な係合力が得られず、フック密度を増やしても一本当たりの強度が低いので、ループ密度を増やすしかなく、また0.20mmを超える場合にはモノフィラメントの基布打込みを少なくしないと織製できず、織製できても太くて粗い組織になるので、柔軟な手触り感が得られない。
ここで言う直径とは、モノフィラメント糸の断面形状を中実の円に換算した場合の直径であり、したがって断面は三角、四角、五画等の多角断面、矩形、楕円形、中空等の異型であっても良い。本発明で規定するフック状係合素子用モノフィラメントの直径は、従来の一般的面ファスナーに用いられているフック状係合素子用モノフィラメントの太さと比べてやや細い。この太さが後述するループ面ファスナー(B)の組み合わせにおいて、高い係合性と柔らかい手触り感をもたらす。好ましくは直径0.15〜0.19mm、より好ましくは直径0.17〜0.185mmのモノフィラメント糸である。
次に、本発明において、ループ面ファスナー(B)を構成するループ状係合素子は、フック状係合素子と同様、PBT系のポリエステルから構成されたマルチフィラメント糸である。
このようなPBT系ポリエステルからなるループ状係合素子用マルチフィラメント糸としては、4〜15本のフィラメントからなるトータルデシテックスが160〜300デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。熱融着によりループ状係合素子を基布に強固に固定するためには、ループ状係合素子を構成するフィラメントの本数を少なくする方が溶融樹脂の浸透性の点で好ましく、本発明を構成するループ状係合素子用マルチフィラメントのフィラメント本数は、従来一般に用いられているループ状係合素子を構成するマルチフィラメントのフィラメント本数より若干低いのが好ましい。より好ましくは、4〜12本、もっとも好ましくは6〜10本のフィラメントからなるトータルデシテックスが200〜260デシテックスのマルチフィラメント糸である。なお、本発明において、ループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸には、PBT系ポリエステルからマルチフィラメント糸に、少数の他のフィラメント糸が引き揃えられていてもよい。
本発明において、フック面ファスナー(A)のフック状係合素子の基布面からの高さとしては1.3〜2.5mm、ループ状係合素子(B)のループ状係合素子の基布面からの高さとしては1.8〜3.0mmが好ましい。
そして、本発明において、フック面ファスナー(A)のフック状係合素子の密度としては、50〜80個/cmの範囲が必要で、50個/cm未満の場合には高い係合力が得られず、また80個/cmを超える場合には、フック状係合素子同士が邪魔しあってループ状係合素子との係合を妨げることとなる。好ましくは55〜75個/cmの範囲である。
そして、ループ面ファスナー(B)のループ状係合素子の密度としては、マルチフィラメント単位で30〜50個/cmの範囲が必要であり、50個/cmを超える場合には、ループ状係合素子同士が邪魔し合って、高い係合力が得られず、また30個/cm未満の場合には、係合が少なく、高い係合力が得られない。好ましくは35〜45個/cmの範囲である。
本発明を構成するループ面ファスナーでは、ループ状係合素子はPBT系のマルチフィラメント糸から構成されているが、PBT系のマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子は、フィラメント繊維がバラケ易く、その結果、PET系のループ状係合素子と比べてフック状係合素子と係合し易く、高い係合力が得られる。
さらに、本発明において、フック状係合素子の密度がループ状係合素子の密度より高いと、1個のループ状係合素子が2個以上のフック状係合素子と係合する機会が増加し、係合が安定し、その結果、高い係合力と優れた係合耐久性が得られることから、本発明において重要な条件である。好ましくは、フック状係合素子の密度がループ状係合素子の密度より5個/cm以上、より好ましくは10個/cm以上高い場合である。そして、フック状係合素子とループ状係合素子はともに、基布表面に均一に分散されて存在しているのが好ましい。
本発明において、フック面ファスナー(A)のフック状係合素子を構成するモノフィラメント糸およびループ面ファスナー(B)のループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸は、ともに地経糸に平行に基布に挿入され、フック状係合素子の場合には所々で地経糸をまたぎ、またいだ箇所でループを構成して、フックを地経糸方向から傾いた方向に向け、一方ループ状係合素子の場合には地経糸をまたぐことなく地経糸にほぼ平行にループを構成するのが、ループ状係合素子にフック状係合素子が引っかかり易く、高い係合力が得られる点から好ましい。
そして、本発明の面ファスナーの組み合わせを製造する過程で、フック状係合素子のフック形状およびループ状係合素子のループ形状を固定するために、フック面ファスナー用織地およびループ面ファスナー用織地には熱が加えられる。本発明の面ファスナーの組み合わせにおいては、フック形状およびループ形状を固定するために加えられる熱が同時に基布を構成する熱融着性繊維を融着させ、ループ状係合素子およびフック状係合素子を基布に固定することとなる。したがって、加えられる熱の温度としては、熱融着性繊維が溶融する温度で、かつフック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸が熱固定される温度である150〜210℃が一般的に用いられ、より好ましくは170〜200℃の範囲である。
そして、フック面ファスナー(A)においては、フック状係合素子用ループは、そのループ脚部の片脚側部が切断され、フック状係合素子とされる。そして、フック状係合素子を形成するためにフック状係合素子用ループの片側部を切断するために用いられる切断装置は、地経糸方向に走行するフック面ファスナー用布のフック状係合素子用ループの片脚を2本の固定刃の間を可動切断刃の往復運動によって切断する構造となっているのが好ましく、そのために、フック状係合素子用のループは、上記したように地経糸をまたぐ場所で形成していると、ループの片足だけを容易に切断できることから好ましい。
次に、本発明のフック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)の組み合わせにおいて、基布を構成する地経糸としては、ともに、ポリエステル系のマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。特に、耐熱性に優れたPET系のマルチフィラメント糸や柔軟性に優れたPBT系のマルチフィラメント糸が好ましい。もちろん、若干の共重合成分や他のポリマーや他のフィラメントを含んでいてもよいが、地経糸は、面ファスナーの長さ方向に連続して存在することにより、面ファスナーを製造する上で工程安定性をもたらす糸であることから、熱処理条件において、収縮等の変化が少ない糸であることが好ましく、したがってPETのホモポリマーから形成されているのがより好ましい。
地経糸を構成するマルチフィラメントの太さとしては、16〜96本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜250デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが100〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸を熱処理後の織密度として45〜90本/cmとなるように基布を構成する。
なお、フック状係合素子を構成するモノフィラメント糸およびループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸は前述したように地経糸に平行に基布に打ち込まれる。フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の打ち込み本数は、それぞれ、後述する熱処理後で地経糸本数20本(フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸を含む)に対して3〜8本程度が好ましい。
最後に、本発明の組み合わせを構成する面ファスナーの基布に用いられる地緯糸としては、上記熱処理条件下で熱融着してフック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の根元を基布に強固に固定できるポリエステル系の樹脂からなるものが好ましい。例えば、芯成分は熱処理条件で溶融しないが鞘成分は溶融する芯鞘型の断面を有するポリエステル系繊維が好適例として挙げられる。
具体的には、PETを芯成分とし、イソフタル酸やアジピン酸等で代表される共重合成分を多量に共重合、例えば20〜30モル%共重合した共重合PETを鞘成分とする芯鞘型ポリエステル繊維が代表例として挙げられる。鞘成分の融点または軟化点としては、100〜200℃であり、かつ地経糸やフック状係合素子用モノフィラメント糸あるいはループ状係合素子用マルチフィラメント糸の融点より20〜100℃低いのが好ましい。
そして、地緯糸を構成する繊維中に占める熱融着性繊維の割合としては、特に地緯糸の全てが実質的に芯鞘型の熱融着性繊維で形成されている場合には、フック状係合素子およびループ状係合素子がともに強固に基布に固定されることとなるため好ましい。繊維の全てが熱融着性のポリマーで形成されている場合には、溶けて再度固まった熱融着性ポリマーは脆く割れ易くなり、縫製した場合等は縫糸部分から基布が裂け易くなる。したがって、熱融着性繊維は、熱融着されない樹脂を含んでいるのが好ましく、芯鞘の断面形状を有している場合が好ましいということになる。そして、芯成分と鞘成分の重量比率は60:40〜80:20の範囲が好ましい。
さらに、フック状係合素子およびループ状係合素子を共に強固に基布に固定するためには、地緯糸として用いられた熱融着性繊維が熱融着すると共に、繊維自身が収縮してフック状係合素子およびループ状係合素子の根元を両サイドから締め付けるのが好ましく、そのためには、地緯糸として用いられる熱融着性繊維は熱処理条件下で大きく熱収縮を生じる繊維が好ましい。具体的には、200℃での乾熱収縮率が12%以上である繊維が好適である。より好ましくは200℃での乾熱収縮率が14〜20%の繊維である。
なお、地緯糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、24〜72本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜300デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸を熱処理後の織密度として15〜30本/cmとなるように基布に打ち込むのが好ましい。そして、地緯糸の重量割合としては、面ファスナーを構成するフック状係合素子用モノフィラメント糸あるいはループ状係合素子用マルチフィラメント糸と地経糸および地緯糸の合計重量に対して15〜40%が好ましい。
なお、上記したように、本発明は、基布構成繊維を熱融着させることにより、従来のように基布裏面に接着剤(いわゆるバックコート樹脂)を塗布しない面ファスナーに適しているが、もちろん、基布裏面に接着剤を塗布する面ファスナーにも適用でき、その場合には、基布を構成する地緯糸は熱融着性を有するものである必要はなく、さらに基布を構成する地経糸および地緯糸はポリエステル系のものである必要もない。しかし、染色性の点で、好ましくは、基布を構成する地経糸および地緯糸がともにポリエステル系の糸であり、かつ基布を構成する地緯糸が熱融着性のバインダー繊維からなる場合である。
基布の織組織としては、フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸を地経糸の一部とした平織が好ましく、これら係合素子用糸は、地経糸と平行に存在しつつ、組織の途中で基布面から立ち上がり、フック面ファスナー(A)の場合にはループを形成しつつ地経糸を1〜3本飛び越えて地経糸間にもぐり込むような織組織で、一方、ループ面ファスナー(B)の場合には地経糸をまたぐことなく地経糸に平行に存在している織組織が、フック状係合素子用ループの片足側部を容易に切断でき、さらにフック状係合素子とループ状係合素子が係合し易いことから好ましい。
本発明のフック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)の組み合わせは、従来の面ファスナーが用いられている用途分野に用いることができ、例えば、衣類、靴、バッグ、帽子、手袋等の他、血圧計、サポーター類、荷造りの縛りバンド、結束テープ、各種おもちゃ類、土木建築用シートの固定、各種パネルや壁材の固定、太陽電池の屋根への固定、電気部品の固定、組み立て・解体自在の収納箱や梱包ケース、小物類、カーテンの取り付け具等の幅広い分野に使用できる。
本発明の面ファスナーの組み合わせは、全て、ポリエステル系の繊維で構成されている場合には、色むらを生じることなく均一に染色することができ、特に衣類がポリエステル系の繊維で形成されている場合には、同一の染色条件下で面ファスナーも同色に同時染色できることから、従来のごとく、染色する色に合わせた多色の多くの面ファスナーを在庫として用意する必要がなく、極めて好ましい。
さらに、係合素子部と基布部の剛性差、融点差による染着差を利用し濃淡差を出すことで、係合素子面(表面)と基布面(裏面)との識別が容易となり、小片での縫製取り付け時に表裏着け間違いがなくなる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、乾熱収縮率(フィラメント収縮率 B法)はJIS−L−1013にしたがって測定した。
実施例1
面ファスナーの基布を構成する地経糸および地緯糸、フック状係合素子用モノフィラメント糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント糸として次の糸を用意した。
[地経糸]
・融点260℃のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:167dtexで30本
[地緯糸(芯鞘型複合繊維からなるマルチフィラメント系熱融着糸)]
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:180℃)
・芯鞘比率(重量比): 70:30
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:110dtexで24本
・200℃での乾熱収縮率:18%
[フック状係合素子用モノフィラメント糸]
・ポリブチレンテレフタレート繊維(融点:220℃)
・繊度:330dtex(直径:0.18mm)
[ループ状係合素子用マルチフィラメント糸]
・ポリブチレンテレフタレート繊維(融点:220℃)
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:265dtexで7本
上記4種の糸を用いて、以下の条件でフック面ファスナー(A)およびループ面ファスナー(B)を製造した。
[フック面ファスナー(A)]
上記地経糸、地緯糸およびフック状係合素子用モノフィラメントを用いて、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が地経糸55本/cm、地緯糸20本/cmとなるように織った。そして、地経糸4本に1本の割合でフック状係合素子用モノフィラメント糸を地経糸に平行に打ち込み、地緯糸3本を浮沈したのちに地経糸3本をまたぐようにし、またいだ箇所でループを形成するように基布上にループを形成した。
上記条件にて織成されたフック面ファスナー用テープを、地緯糸の鞘成分のみが熱溶融し、なおかつ、地経糸、フック係合素子用モノフィラメント、さらには地緯糸の芯成分が熱溶融しない温度域、すなわち190℃で熱処理を施した。地緯糸は収縮するとともに鞘成分が溶融して近隣に存在する糸を融着させた。その結果、基布は地緯糸方向に9%収縮した。そして、得られた織物を冷却させたのち、フック状係合素子用ループの片脚部を切断して、フック状係合素子を形成した。
得られたフック面ファスナー(A)のフック状係合素子密度は60個/cmであり、さらにフック状係合素子の基布面からの高さは1.6mmであった。
[ループ面ファスナー(B)]
上記地経糸、地緯糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸を用いて、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が地経糸55本/cm、地緯糸22本/cmとなるように織った。そして、地経糸4本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメントを地経糸をまたぐことなく地経糸に平行に打ち込み、地緯糸5本を浮沈したのちループを形成するように基布上にループを形成した。
上記条件にて織成されたループ面ファスナー用テープを、地緯糸の鞘成分のみが熱溶融し、なおかつ、地経糸、ループ係合素子用マルチフィラメント、さらには地緯糸の芯成分が熱溶融しない190℃で熱処理を施した。地緯糸は大きく収縮するとともに鞘成分が溶融して近隣に存在する糸を融着させた。その結果、基布は地緯糸方向に12%収縮した。そして、得られた織物を冷却させた。得られたループ面ファスナー(B)のループ状係合素子密度は44個/cmであり、さらにループ状係合素子の基布面からの高さは2.4mmであった。
このようにして得られたフック面ファスナー(A)およびループ面ファスナー(B)を、ともに、PET繊維が染色可能な高圧条件で135℃で45分間処理し、分散染料で紺色に染色したところ、ともに、高級感ある濃紺色に染色することができた。さらに染着差を利用して、同様に130℃で30分間染色処理すると、係合素子部を濃色、基布部を淡色に染め分けることができ、小片で縫製される時の係合素子部と基布部が容易に識別可能となり、縫製間違いを防ぐことができた。
このフック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)を水中に10分間浸漬したのち、水中から取り出したが、形態および係合力に何ら変化がなく、基布は平坦な状態を有していた。
次に、得られた面ファスナーの係合剥離耐久性、衝撃せん断剥離耐久性、係合素子の倒伏回復性、風合い(剛軟度)、引裂き強度を測定した。その結果を表1に示す。
なお、係合強力は、JIS−L−3416法にしたがい、剥離耐久性は手剥離にて3000回実施し、強力測定した。また、衝撃せん断剥離は、D環付バンドにて、片側端部にフック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)を連続して取り付けしたもので、フック面ファスナー(A)とループ面ファスナー(B)の中央部をD環を通して折り曲げて、25mm巾3cm長で係合させ、直径20cmの曲面上で他端に8kgの重りを取り付け、重りを垂直下に落下させ、瞬間剥離させた。さらに係合素子の倒伏回復性は、工業用ミシンで係合素子面を押圧縫製し倒れ程度をみた。風合いは、JIS−L−1096 D法(ハートループ法)にしたがい、剛軟度を測定した。引裂き強度はJIS−L−1096 A-1法(シングルタング法)にしたがい測定した。
同表から明らかなように、係合剥離耐久性は、初期係合強力が高く、係合・剥離を3000回繰り返した後であっても、係合強力は殆ど低下することなく、極めて耐久性に優れたものであることが分かる。さらに、衝撃せん断剥離は、フック状係合素子、ループ状係合素子の変形も極めて少なく、優れたものであった。
係合素子の倒伏回復性は、工業用ミシン縫製での押圧部の係合素子は、縫製時倒れがみられたが、縫製後は十分回復していた。剛軟度は、ハートループ法にて、基布が極めて柔らかい数値を示した。引裂き力は、極めて高く、縫製部から引裂かれる懸念はなかった。また、フック面ファスナーの表面を手のひらで撫でたところ、極めて柔軟であり、手触り感に優れたものであった。
比較例1
フック面ファスナー(A)として、フック状係合素子がPETからなるモノフィラメント[融点:260℃、太さ:390デシテックス(直径:0.19mm)]、基布を構成する地経糸および地緯糸がともにポリエステル系の糸であり、かつ基布を構成する地緯糸が芯鞘型の熱融着性のバインダー繊維からなり、係合素子密度が40個/cmであるフック面ファスナー(クラレファスニング株式会社製A8693Y)を用い、ループ面ファスナー(B)として、ループ状係合素子がPETからなるマルチフィラメント(融点:260℃、トータルデシテックス:265dtex、フィラメント本数:7本)、基布を構成する地経糸および地緯糸がともにポリエステル系の糸であり、かつ基布を構成する地緯糸が芯鞘型の熱融着性のバインダー繊維からなり、係合素子密度が40個/cmであるループ面ファスナー(クラレファスニング株式会社製B2790Y) の組み合わせを使用して、実施例1で得たフック面ファスナーとループ面ファスナーとの組み合わせたものに行ったのと同様の測定方法により、係合剥離耐久性、衝撃せん断剥離耐久性、係合素子の倒伏回復性、風合い(剛軟度)、引裂き強度を測定した。その結果を表1に記載する。なお、フック面ファスナーとループ面ファスナー、特にフック面ファスナーは、表面の手触り感が硬く、肌に直接触れる箇所に使用する上で問題となる可能性がある物であった。
比較例2
フック面ファスナー(A)として、フック状係合素子がPETからなるモノフィラメント[融点:260℃、太さ:310デシテックス(直径:0.17mm)]、基布を構成する地経糸および地緯糸がともにポリエステル系の糸であり、かつ基布を構成する地緯糸が熱融着性の芯鞘型のバインダー繊維からなり、係合素子密度が40個/cmであるフック面ファスナー(クラレファスニング製A8493)を用い、ループ面ファスナー(B)として、比較例1と同じ物を用い、この組み合わせを使用して実施例1で得たフック面ファスナーとループ面ファスナーとの組み合わせに行ったのと同一の測定を行い、係合剥離耐久性、衝撃せん断剥離耐久性、係合素子の倒伏回復性、風合い(剛軟度)、引裂き強度を測定した。その結果を表1に記載する。
このフック面ファスナーとループ面ファスナーの組み合わせ、特にフック面ファスナーも、上記比較例1のものと同様に、表面の手触り感が硬く、肌に直接触れる箇所に使用する上で問題となる可能性がある物であった。
表1の結果から明らかなように、実施例1のものは、比較例1および2のものよりも遥かに優れた結果であった。
Figure 0005966195
実施例2〜3および比較例3〜4
上記実施例1において、フック状係合素子用モノフィラメント糸やループ状係合素子の打ち込み本数やループ形成のために地緯糸をまたぐ本数等を変更して、表2に記載のフック状係合素子密度、ループ状係合素子密度を有するフック面ファスナーとループ面ファスナーの組み合わせを作製し、実施例1と同様に面ファスナー性能を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005966195
表2の結果から明らかなように、発明で規定しているフック状係合素子密度およびループ状係合素子密度を満足している面ファスナーの組み合わせが優れた面ファスナー性能を有していることがわかる。さらに、上記実施例2および3の面ファスナーの組み合わせは、手触り感がやさしく、人の肌に直接触れる用途に使用しても問題ないと予想されるほど柔軟性に優れたものであった。
実施例4および比較例5〜6
実施例1において、フック状係合素子として使用するPBTモノフィラメント糸の太さを表3に示すように変更する以外は実施例1と同様にしてフック面ファスナーを製造した。この面ファスナーの係合相手として、実施例1で製造したループ面ファスナーを用いて、フック面ファスナーとループ面ファスナーの係合力を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0005966195
上記表3から、フック状面ファスナーを構成しているモノフィラメント糸の太さが本発明で規定している範囲にあるものが優れた面ファスナー性能を有していることがわかる。
さらに、実施例4のものは手触り感も極めて柔軟であり、人の肌に直接触れる箇所に使用しても問題のない柔軟性を有しているものであった。

Claims (5)

  1. モノフィラメント糸からなるフック状係合素子を基布の表面に有するフック面ファスナー(A)と、該フック状係合素子と係合し得るマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を基布の表面に有するループ面ファスナー(B)からなる組み合わせにおいて、フック面ファスナー(A)およびループ面ファスナー(B)の基布を構成している地経糸および地緯糸がともにポリエステル系樹脂から形成されている糸であり、かつ該モノフィラメント糸がポリブチレンテレフタレート系のポリエステル樹脂から形成された直径0.14〜0.20mmのモノフィラメント糸であり、該マルチフィラメント糸がポリブチレンテレフタレート系のポリエステル樹脂から形成されたマルチフィラメント糸であり、さらに該フック状係合素子の密度および該ループ状係合素子の密度がそれぞれ50〜80個/cm、30〜50個/cmであり、かつ該フック状係合素子の密度が該ループ状係合素子の密度より高いことを特徴とする布製面ファスナーの組み合わせ。
  2. 地緯糸が芯鞘型の熱融着性繊維を含み、さらにフック状係合素子およびループ状係合素子の根元が、基布を構成する該地緯糸の鞘成分樹脂により固定されてる請求項1に記載の布製面ファスナーの組み合わせ。
  3. ループ面ファスナー(B)のループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸が、4〜15本のフィラメントからなるトータルデシテックスが160〜300デシテックスのマルチフィラメント糸である請求項1または2に記載の布製面ファスナーの組み合わせ。
  4. 地緯糸として、芯鞘型の熱融着性繊維からなり、芯成分と鞘成分の重量比率が60:40〜80:20で、200℃での乾熱収縮率が12%以上である糸が使用されている請求項2に記載の布製面ファスナーの組み合わせ。
  5. 面ファスナー(A)と(B)の基布の裏面と係合素子面が識別可能な別々の色調に染色されている請求項1〜4のいずれかに記載の布製面ファスナーの組み合わせ。
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