JP2016131750A - 難燃性で粘着機能を有する面ファスナーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粘着剤層と面ファスナーとの間で剥離が生じにくく、難燃性能が大きく損なわれない面ファスナーを提供する。
【解決手段】経糸、緯糸、係合素子用糸がポリフェニレンサルファイド系の繊維からなる織物基布2の表面にフック状3又はループ状の係合素子を裏面にポリウレタンからなる層6を介してアクリル系の難燃性粘着剤層5を有する難燃性で、粘着機能を有する面ファスナー1において、以下条件1)〜4)を満足する難燃性の面ファスナー。1)緯糸にポリフェニレンサルファイド系の繊維に加え、更に熱融着性繊維が含まれ、係合素子用糸が該熱融着性繊維の融着により織物基布に固定される。2)ポリウレタンが織物基布の表面まで浸透していない。3)ポリウレタンがポリエーテル系のポリウレタンで同ポリウレタンからなる層の厚さが20〜55μmである。4)粘着剤層が臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを有し、かつ層の厚さが300〜550μmである。
【選択図】図1

Description

本発明は、難燃性で粘着機能を有する面ファスナーに関し、詳細には表面にフック状またはループ状の係合素子を有する織物製面ファスナーの裏面に粘着剤層を有する面ファスナーであって、難燃性で粘着機能を有する面ファスナーに関する。
従来から、住居や乗物等において、壁材や天井材などを基礎材に固定するのに面ファスナーが多く用いられている。また乗物の座席等にも、座席形状の発泡樹脂成形物の表面を覆う表皮材を発泡樹脂成形物の表面に固定するのに面ファスナーが多く用いられている。これら用途に用いられる面ファスナーには、難燃性が要求されることが多く、特に、航空機や列車などに用いられる面ファスナーには、高度の難燃性が求められる。
難燃性を有する面ファスナーとして、面ファスナーを構成する繊維としてポリフェニレンサルファイド系の耐炎性繊維を使用したものが公知であり(特許文献1)、同特許文献には、面ファスナーを構成する経糸、緯糸および係合素子用糸としてポリフェニレンサルファイド系の繊維からなる糸を用い、そしてこれら糸からなる織物基布の表面にフック状またはループ状の係合素子を存在させ、さらに緯糸の一部として熱融着性繊維を用いて、係合素子用糸が該熱融着性繊維の融着により織物基布に固定されている面ファスナーが難燃性に優れていることが記載されている。
ところが、これら難燃性の面ファスナーを使用する場合には、縫製により面ファスナーを取り付ける場合には、大きな支障は生じないが、粘着剤により取り付ける場合には、面ファスナーと粘着剤層との間で剥離が生じ易く、大きな引張力が係る場所には使用できないという問題点を有している。
国際公開2008/059958パンフレット(特許請求の範囲)
本発明は、上記特許文献に記載された難燃性面ファスナーの裏面に粘着剤層を有する、粘着機能を有する難燃面ファスナーに関し、粘着剤層と面ファスナーとの間で剥離が生じにくく、しかも粘着剤層が剥離しないように面ファスナー裏面に接着性の樹脂層を存在させても、難燃性能が大きく損なわれない技術を提供するものである。
すなわち、本発明は、
経糸、緯糸および係合素子用糸からなり、これら糸がともにポリフェニレンサルファイド系の繊維からなる織物基布の表面にフック状またはループ状の係合素子を、裏面にポリウレタンからなる層を介してアクリル系の難燃性粘着剤層を有する難燃性でかつ粘着機能を有する面ファスナーであってにおいて、以下の条件1)〜4)を全て満足していることを特徴とする難燃性で粘着機能を有する面ファスナーである。
1)緯糸にはポリフェニレンサルファイド系の繊維に加えて、さらに熱融着性繊維が含まれており、かつ係合素子用糸が該熱融着性繊維の融着により織物基布に固定されていること、
2)ポリウレタンが実質的に織物基布の表面まで浸透していないこと、
3)ポリウレタンがポリエーテル系のポリウレタンであり、同ポリウレタンからなる層の厚さが20〜55μmであること、
4)粘着剤層が臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを有し、かつ粘着剤層の厚さが300〜550μmであること、
そして好ましくは、上記面ファスナーにおいて、熱融着性繊維が、低融点樹脂を鞘成分とし、高融点樹脂を芯成分とする芯鞘型の複合繊維である場合であり、さらに芯成分および鞘成分がともにポリエステル系の樹脂である場合である。そして好ましくは、緯糸が、ポリフェニレンサルファイドからなるマルチフィラメント糸と熱融着性のマルチフィラメント糸との撚数が50turn/m以下の引き揃え糸である場合、また緯糸中に占める熱融着性繊維の量が20〜50質量%である場合である。
さらに本発明は、
以下の工程(1)〜(5)または工程(1)、(2)、(4)および(5)を順次行うことを特徴とする難燃性で粘着機能を有する難燃面ファスナーの製造方法である。
(1)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物基布であって、これら糸がともにポリフェニレンサルファイド系の繊維からなり、緯糸にはポリフェニレンサルファイド系の繊維に加えて以外さらに熱融着性繊維が含有まされておりいる織物基布であって、織物基布その表面には該係合素子用糸からなるループが存在している織物基布を製織する工程、
(2)該熱融着性繊維を融着・させるとともに収縮させて、緯糸により係合素子用糸を織物基布に固定し、するとともに織物基布の目を詰める工程、
(3)係合素子用糸がフック状係合素子用糸の場合には、工程(1)のループの片脚を切断してフック状係合素子を存在させとする工程、
(4)織物基布の係合素子を有する面とは反対側の面にポリエーテル系のポリウレタン樹脂液を織物基布の表面にポリウレタンが実質的に浸透しないように塗布して厚さ20〜55μmのポリウレタンからなる層を形成する工程、
(5)ポリウレタンからなる層の織物基布側とは反対側の面上に、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを含有する厚さ300〜550μmのアクリル系粘着剤層を付与する工程、
上記特許文献1に記載されている難燃性面ファスナーの裏面に難燃性の粘着剤層を直接付与しても、面ファスナーは粘着剤層との界面で剥離を生じ易い。上記したように、粘着剤層を特定のポリウレタンからなる層を介して織物基布の裏面に存在させることにより剥離の問題は解消するが、その反面、面ファスナー織物基布裏面に塗布したポリウレタンが表面側まで浸透し、面ファスナーの柔軟性や難燃性を損なうこととなる。
本発明では、面ファスナーを構成する緯糸の一部として熱融着性と熱収縮性を有する繊維を使用し、この繊維を融着させるとともに収縮させて係合素子用糸を織物基布に固定するとともに織物基布の目を詰める技術を用いるものであり、これにより、裏面にポリウレタンを塗布しても面ファスナーの表面側までポリウレタンが浸透しないようにして、面ファスナーの難燃性が損なわれないようにした発明である。
従来より面ファスナーの織物基布から係合素子用糸が引き抜かれることを防止するために、基布の裏面にポリウレタンを塗布して、係合素子用糸を織物基布内に固定する技術が広く行われており、この従来の技術では、裏面に塗布したポリウレタンが表面側まで浸透して面ファスナーの織物基布全体がポリウレタンにより固められている。一方、上記の特許文献1に記載されている難燃性面ファスナーでは緯糸の一部として使用した熱融着性繊維が係合素子用糸を固定することから裏面にポリウレタンを塗布する必要がない。むしろ、裏面にポリウレタンを塗布すると基布がポリウレタンで固められるため面ファスナーが硬くなり、柔軟性が要求される用途に適さないこととなる。
本発明では、熱融着性繊維を緯糸の一部として使用していることから裏面にポリウレタンを塗布する必要がないにもかかわらず、基布の裏面に特定のポリウレタンを特定量塗布しており、これにより、粘着剤層が織物基布面から剥離することを防止している。しかも、熱融着性繊維として、熱収縮を生じる繊維を用いることにより、熱収縮により織物基布の目が詰まり、これにより裏面に塗布した該ポリウレタンが織物基布の表面に浸透することを防止し、ひいては表面に浸透したポリウレタンが面ファスナーの難燃性を損なうことを防止している。さらに、裏面に存在させる粘着剤層に関しても、特定のものとすることにより難燃性と粘着力をともに満足できるものとなる。
本発明の難燃性で粘着機能を有する面ファスナーであって、係合素子がフック状係合素子である場合を模式的に示した側面図である。 本発明の難燃性で粘着機能を有する面ファスナーであって、係合素子がループ状係合素子である場合を模式的に示した側面図である。
本発明の難燃性で粘着機能を有する面ファスナー(1)は、図1および図2に示すように、織物基布(2)、この基布上に形成されたフック状係合素子(3)またはループ状係合素子(4)、および織物基布の裏面にポリウレタンからなる層(6)を介して存在させた難燃性粘着剤層(5)からなる。そして、織物基布を構成している経糸はポリフェニレンサルファイド系繊維(以下、PPS繊維と略す。)から形成され、緯糸はPPS繊維と熱融着性繊維から形成されている。さらにフック状係合素子およびループ状係合素子もPPS繊維からなる。
本発明に用いられるPPS繊維としては、重量平均分子量が2万〜10万のPPSを溶融紡糸し、延伸し、さらに必要に応じて熱処理して得られる繊維が好ましく、このようなPPS繊維は現在市販されている。
本発明に使用する織物基布の経糸としては、40〜70本のPPS繊維フィラメントからなるトータルデシテックスが150〜300デシテックスのPPS製マルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸には、100〜800turn/mの撚が付与されているのが、製織性の点で好ましい。
本発明の面ファスナーの緯糸として用いられる糸は、PPS繊維と熱融着性繊維からなる。緯糸を構成するPPS繊維としては、5〜20本のフィラメントからなるトータルデシテックスが100〜200デシテックスのマルチフィラメント糸が好ましい。そして、このようなマルチフィラメント糸は撚数が50turn/m以下、好ましくは0〜30turn/mの撚数の、いわゆる無撚糸が熱融着性繊維を有効に働かせて係合素子用糸を基布に強固に固定できること、織物の目を詰めてポリウレタンからなる層を面ファスナーの表面まで浸透させない点から好ましい。
そして、緯糸の一部を構成する熱融着性繊維は、繊維の少なくとも一部が210℃以下の温度で溶融して、そばに存在しているPPS繊維同士等を溶融物が接着固定することとなる繊維である。熱融着性繊維としては、PPS繊維との接着性等の点からポリエステル系の樹脂からなる繊維が好ましい。
さらに熱融着時の取り扱い易さ等より低融点のポリエステル系樹脂を鞘成分、熱融着性繊維を熱融着させる際の温度では溶融しない高融点のポリエステル系樹脂を芯成分とする芯鞘断面繊維が好ましく、具体的には、鞘成分がイソフタル酸やスルホイソフタル酸やアジピン酸、プロピレングリコール等の共重合成分を共重合して融点を210℃以下、特に120〜200℃にしたポリエチレンテレフタレート系やポリブチレンテレフタレート系の共重合体が好ましい。
そして、芯成分は、高融点のポリエステル、具体的には共重合されていない、または共重合されていても鞘成分樹脂よりも融点が20〜100℃高いポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレートホモポリマー、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーからなる繊維である。
そして、芯鞘断面繊維の断面形状は、一芯芯鞘であってもあるいは多芯芯鞘であってもよく、また同心芯鞘でも偏心芯鞘であってもよい。さらにバイメタル状の断面繊維であってもよい。芯成分と鞘成分の質量比率としては75/25〜30/70の範囲が好ましい。
そして、熱融着性繊維は、単繊維繊度が2〜6デシテックスのフィラメントからなるトータルデシテックスが50〜250デシテックスのマルチフィラメント糸が好適に用いられる。
本発明において、上記の熱融着性繊維は、熱溶融する際に大きく収縮するものが用いられる。大きく熱収縮することにより、織物基布の織目が詰められ、その結果、織物基布が目の詰まった織物となり、裏面に塗布するポリウレタン液が表面まで浸透しなくなる。具体的には、200℃での乾熱収縮率が10%以上である繊維が用いられる。熱収縮率を高めるためには、紡糸・延伸して得られて繊維の熱処理を不十分となるようにすればよい。
緯糸は、上記したように、PPS繊維と熱融着性繊維からなる。PPS繊維と熱融着性繊維の質量割合としては80:20〜50:50の範囲が、難燃性や係合素子固定性の点で好ましく、より好ましくは75:25〜60:40の範囲である。
フック状係合素子を形成することとなる繊維としては、PPSモノフィラメントが好ましく、200〜600デシテックスのPPSモノフィラメントがより好ましい。また、ループ状係合素子を形成することとなる繊維としては、PPSマルチフィラメント糸が好ましく、特に、マルチフィラメントループ糸が、10〜40本のフィラメントからなる全繊度が100〜400デシテックスのPPSマルチフィラメント糸が好ましい。
本発明では、上記したような経糸、緯糸および係合素子用糸からなり、その表面には該係合素子用糸からなるループが存在している織物基布をまず製織する。係合素子用糸は、経糸の一部として用いるのが耐引抜性の点で好ましい。織密度は、経糸(係合素子用糸を含む)25〜65本/cm、緯糸13〜20本/cmが好ましく、経糸2〜5本に1本の割合で係合素子用糸を挿入するのが好ましい。なお、上記緯糸本数は、緯糸を1方向から挿入する場合の本数で、緯糸が往復で1本とカウントした場合の本数である。
そして、係合素子用糸からなるループが織物基布表面から1〜3mmの高さに突出するループを形成するように製織するのが好ましい。
織構造としては、通常の平織が好ましい。ループ織物を得るための製織方法は特に限定されず、織物の製造に従来使用されている方法で行えばよい。そして、係合素子がフック状係合素子である場合には、後の工程で係合素子用ループの片脚を切断してフック状係合素子とする必要上、ループを形成する箇所で係合素子用糸は経糸の複数本を跨ぐ織構造が、片脚の切断しやすさの点で好ましい。ループの密度としては、30〜70個/cmが好ましい。
このようにして製織された表面にループを有する織物は、次に緯糸に含まれている熱融着性繊維を融着させるとともに収縮させて、係合素子用糸を織物基布に固定するとともに織物基布の目を詰める。溶融させる際の温度としては、150〜210℃が好ましく、より好ましくは160〜200℃の範囲である。この温度条件で織物を処理することにより緯糸に包含されている熱融着性繊維が溶融して、そばに存在しているPPS繊維同士を接着するとともに、織物を緯糸方向に収縮させる。収縮の程度としては、緯糸方向に4〜15%が好ましい。これにより係合素子用糸が基布に強固に固定されるとともに、織物基布の織目が締め付けられ、目の詰まった織物となる。
次に、係合素子用糸がフック状係合素子用糸の場合には、ループの片脚を切断してフック状係合素子とする。具体的には、ループの片脚の側面の1箇所または2箇所をバリカン様の切断装置で切断して、フック状係合素子を形成する。係合素子がループ状係合素子の場合には、片脚を切断する必要はないが、係合力を高めるために、針布等で表面を擦ることによりループ状係合素子を構成しているマルチフィラメント糸をループ部でバラケさせるのが好ましい。
このようにして得られたフック面ファスナーあるいはループ面ファスナーの裏面に粘着機能を付与するためにアクリル系の難燃性粘着剤層を存在させる。しかしながら、アクリル系の難燃性粘着剤層を面ファスナーの裏面に直接付与しても、本発明の織物基布の場合、裏面を構成する織物の目が詰まっており、粘着剤が十分に織物の内部に浸透せずアンカー効果は期待できず、さらに面ファスナーの裏面とアクリル系の難燃性粘着剤層との界面で容易に剥離を生じ、難燃性かつ粘着機能を有する面ファスナーとしては実用上不十分となることを本発明者等は見出した。本発明では、前記粘着剤層と面ファスナーとの間の剥離強力を構造させるために、織物基布の裏面、すなわち粘着剤層を付与する側の面にポリエーテル系のポリウレタン樹脂液を塗布して厚さ20〜55μmのポリウレタンからなる層を形成している。
前記した特許文献1に記載されているように、従来は、係合素子が基布から引き抜かれるのを防止するために、面ファスナーの裏面にポリウレタン等の接着樹脂液を塗布するとともに織物基布内に同ポリウレタンを織物基布の表面まで浸透させていたのを、特許文献1に記載された技術は、裏面に接着樹脂液を塗布する技術に置き換えて、熱融着性繊維を緯糸の一部として使用することにより係合素子の引き抜きを防止する技術である。したがって、本発明の技術も、熱融着性繊維を緯糸の一部として使用する技術であることから、元来、面ファスナーの裏面にポリウレタン等の接着樹脂液を塗布する必要は全くないこととなる。
本発明は、本来、このように面ファスナーの裏面にポリウレタン等の接着樹脂液を塗布する必要性のない技術であるにもかかわらず、裏面側にポリウレタン樹脂液を塗布するものであり、塗布する目的が従来の技術とは全く相違している。すなわち、従来の場合には、係合素子用糸が基布に完全に固定されるように裏面に塗布した樹脂液が表面側まで浸透するように塗布しているのに対して、本発明では、粘着剤層が面ファスナー裏面から剥離しないために、界面に存在させているのであり、しかも本発明では、難燃性が損なわれないように、裏面に塗布した樹脂液が表面まで浸透しないように、熱融着性繊維を収縮させている。したがって、本発明で面ファスナーの裏面に存在させるポリウレタンからなる層は、従来技術とは、目的や構成において全く相違するものである。
本発明において、裏面に塗布するポリウレタンは、柔軟性と本発明のアクリル系難燃性粘着剤層との接着性の点でポリエーテル系のものであらねばならない。ポリエーテル系のポリウレタンとは、水酸基を持つ化合物として、ポリオキシプロピレングリコールやポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコールなどのポリエーテル系の化合物を用いたポリウレタンである。ポリウレタンとしては、エチレングリコールやプロピレングリコールとアジピン酸等を反応させたポリエステル系ポリウレタンが広く知られているが、本発明にはポリエーテル系のポリウレタンが粘着剤層と面ファスナーの裏面との接着性の点や、柔軟性に優れる。ポリエステル系やポリカーボネート系のポリウレタンでは、上記接着性や柔軟性に劣る。なお、ポリエーテル系のポリウレタンは難燃剤が存在しない方が粘着剤層と界面剥離が生じ難い点でより好ましい。
また、ポリウレタンからなる層の厚さとしては、20〜55μmであることが重要である。20μmより薄い場合には、必要な接着力が得られず、また55μmを超えると満足できる難燃性能が得られない。好ましくは25〜50μmの範囲である。また、ポリウレタンは、織物基布の裏面に実質的に浸透していないことが、柔軟性と接着性の点で好ましい。なお、本発明で言う厚さとは平均値であり、任意の10箇所を選び、断面を形成して顕微鏡で厚さを測定し、それら値の平均値を求めることにより容易に求めることができる。
そして、本発明では、面ファスナー基布の表面側にこのポリウレタンが実質的に存在していないことが重要であり、面ファスナーを製造させる際に基布を収縮させて、織目を緻密にして裏面に塗布したポリウレタン液が表面まで浸透しないようにすることにより達成される。表面側にまで浸透している場合には、面ファスナーの表面側に存在しているポリウレタンが難燃性を損なうこととなり、航空機等に求められる高度な難燃性を満足することができない。
基布裏面に存在させるポリウレタンからなる層は、基布裏面にポリウレタンの水性分散液や溶液を塗布し、乾燥させることにより形成される。
そして、このように裏面にポリウレタンからなる層を存在させた面ファスナーの裏面側に、アクリル系の難燃性粘着剤層を付与する。粘着剤層は、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを含有する厚さ300〜550μmのアクリル系粘着剤層であることが重要である。粘着剤にはポリウレタン系のもの、シリコーン系のもの、ゴム系のもの、ポリエステル系のもの、アクリル系のものなど各種存在し、市販されているが、本発明ではアクリル系のものが織物基布とポリウレタンを介して接着性、耐熱性および耐候性に優れる点で用いられる。
アクリル系の粘着剤とは、(メタ)アクリル酸、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマーの重合体、または共重合体、あるいはこれらアクリル系モノマーと他のビニル系単量体、たとえば酢酸ビニルやスチレン、ビニルピロリドン等を共重合したもののことであり、場合によりイソシアネート系やエポキシ系の架橋剤が添加されていてもよい。
そして、このようなアクリル系の粘着剤には、難燃剤が含有されていなければならない。難燃剤としては、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンがアクリル樹脂に対する難燃性、粘着性を兼ね備える点で必須である。臭素系難燃剤としては、臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有エポキシ化合物、臭素含有アリールエーテル化合物、臭素含有芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物等が挙げられるが、なかでも臭素化ビスアリール化合物が好ましく、特に1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンが好ましい。また、三酸化アンチモンとしては、市販のものがそのまま用いることができ、好ましくは粒径が0.3〜2μmのものが挙げられる。
臭素系難燃剤の添加量としては、アクリル系粘着剤100質量部に対して10〜60質量部、三酸化アンチモンの添加量としては、アクリル系粘着剤100質量部に対して5〜20質量部が好ましい。難燃剤としてリン系のものも一般的に用いられているが、リン系のものの場合には、満足できる難燃性が得られない。
そして、このような難燃性粘着剤の厚さとしては、300〜550μmの範囲であることが重要である。300μm未満の場合には、粘着剤層としての自由度が小さくなり十分な粘着力が得られず難燃性能も若干低下する。また550μmを超える場合には、粘着剤層としての自由度が大きくなりすぎこれまた十分な粘着力が得られない。なお、粘着剤層には、紙や不織布等の補強シートが間に挟まれていてもよい。このようなシートが粘着剤層に存在していることにより、粘着剤層の経時変化を防止できる。
本発明において、アクリル系の難燃性粘着剤層の付与方法としては、裏面にポリウレタンからなる層を存在させた面ファスナーの裏面側(すなわちポリウレタンからなる層側)に粘着剤を両面に有するシートを重ね合わせ、ローラー等により圧着させることにより形成される。もちろん、粘着剤のポリウレタンからなる層側と反対側の表面には、付与作業を円滑にするために、離型紙で覆われていてもよい。
このようにして得られた本発明の難燃性で粘着機能を有する面ファスナーは、難燃性を高度に満足しており、さらに面ファスナーを取り付けた対象物に対する粘着性においても高度に満足している。したがって本発明の面ファスナーは、難燃性が高度に求められる用途、例えば、航空機の内壁を構造材に固定するのに、さらには航空機の座席等に好適に用いられ、さらに病院や公共施設、学校、劇場等の建築物に壁材や天井材等の部材を取り付ける材料として、さらに列車や船舶の内装材の固定や座席の表皮材固定等に好適に用いられる。
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
なお、実施例および比較例において、難燃性に関しては、垂直難燃試験法を用いた。燃焼試験機に試料(80mm×39cm長)を治具(枠51mm幅×36cm長)に取り付け、試料を垂直にして、下からハンドバーナーを12秒間接炎したときの燃焼状態を観測したものである。燃焼時間は、バーナーを離してから自己消火するまでの時間を、また燃焼距離は、自己消火するまでに燃焼した試料の長さを、また滴下物は燃焼により下に落下した落下物が自己消火するまでの時間を表す。測定は5回実施し、その平均値を求めた。
また粘着性に関しては、ステンレス板に常温で面ファスナーの裏面の粘着剤層面を重ね合わせ、そして上から2kgローラーを3回往復させて25mm×5cm長を圧着させ、この状態で24時間放置したのち、引張試験機で引張速度300mm/分にて90度引き剥がし粘着力および剥離状態を観測したものであり、測定は5回実施し、粘着力はその平均値を求めた。貼付面積は25mm×60mmである。
また保持力は、ステンレス板に常温で面ファスナー粘着品を25mm×25mm面積で貼り合せ、係合相手面ファスナーに、1000gの荷重をかけられるようにしたものを、垂直せん断方向に係合させ、60℃の雰囲気に放置し24時間後の保持状態または落下するまでの時間および剥離状態を観察したものであり、測定は5回実施し、保持力は落下までの平均時間を求めた。
さらに、係合性に関しては、25mm巾のフック面ファスナーとループ面ファスナーを用い、JIS−L−3416に準じて測定し、5回の測定結果の平均値を採用した。
実施例1
下記の経糸(1)、緯糸(2)およびフック状係合素子用糸(3)からフック面ファスナー(4)を作製し、そしてその裏面にポリウレタンからなる層および粘着剤層を形成して、難燃性で粘着機能を有するファスナー(5)を作製した。
(1)経糸:500turn/mの撚が付与された撚糸
PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント:東洋紡績(株)
製、商品名“プロコンT/#40 G250−60−PFD”)
(2)緯糸:無撚引き揃え糸
・PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント:東洋紡績(株)
製、商品名“プロコンT/#7 G167−10−PFD”)糸を走行させた際に自然に発生した10turn/m程度の撚を有する。
・芯鞘断面熱融着性マルチフィラメント糸(99デシテックス/24フィラメント)200℃での乾熱収縮率が18%(延伸後の熱処理を不十分に行ったもの)
鞘部:低融点共重合ポリエチレンテレフタレート(PET) 共重合成分:イソフタル酸25モル%融点:155℃
芯部:高融点非共重合PET 融点:260℃
熱融着性繊維の使用量:緯糸全体の37質量%
(3)フック状係合素子用糸
PPSモノフィラメント(クレハ合繊(株)製、商品名“KPS糸0.20mm、5P”) 直径:0.20mm(380デシテックス)
(4)フック面ファスナーの製造
織密度は、経糸56本/cm、緯糸17本/cmであり、フック状係合素子用モノフィラメントを経糸4本に1本の割合で挿入した。なお、緯糸は1方向からのみ挿入し往復させた。したがって上記緯糸密度17本/cmは、往復する見かけ上2本の緯糸を1本とカウントして求めた数値である(以下同様)。フック状係合素子用ループの高さは2mmであり、ループ形成密度は基布1cm当たり50個であった。得られた面ファスナー用織物を200℃、1分間熱風にて熱処理した。この処理により緯糸方向に9%収縮するとともにフック状係合素子用ループ糸は織物基本中に強固に固定された。次いでフック状係合素子用ループの片脚をカットしてフック状係合素子を形成し、フック面ファスナーを得た。
この面ファスナーの裏面から光を当てて織目の詰まり状況を観測した結果、この面ファスナーでは織目がほぼ完全に詰まっていることが確認できた。
(5)難燃性で粘着機能を有する面ファスナーの製造
次にこのフック面ファスナーの裏面に、ポリエーテル系ポリウレタンの液(日華化学社製KMN−NO2)を塗布し、120℃で5分間乾燥させ、そして80℃で9時間エージング処理を行い、裏面に平均厚さ40μmのポリウレタンからなる層を有する面ファスナーを形成した。ポリウレタンは、面ファスナーの表面側には全く浸透していないことが表面の顕微鏡観察により確認できた。
そして、このポリウレタンからなる層に、臭素系難燃剤35質量%と三酸化アンチモン8質量%を含有するアクリル系粘着剤を両面に有する粘着テープ(厚さ400μm)を貼り合わせ、2kgローラーを3回往復させて面ファスナーの裏面にアクリル系の難燃性粘着剤層(以下、単に粘着剤層と称する場合もある。)を密着させた。
このようにして得られた粘着剤層を有する難燃性フック面ファスナーの係合力、難燃性能および粘着性を測定した。なお、係合力を測定する係合相手としては、実施例2のループ面ファスナーを用いた。
これら測定結果のうち、係合力に関しては、引張せん断強さは8.9N/cm、剥離強さは1.6N/cmで、1000回係合・剥離を繰り返した後の引張せん断強さは5.8N/cm2、剥離強さは1.2N/cmであった。1000回係合・剥離後の係合力保持率は65%以上であり、係合力に関しては極めて優れたものであった。
さらに係合した状態のフック面ファスナーとループ面ファスナーを180℃の熱風中に48時間放置した後、20℃で係合性を同様に測定した。引張せん断強さは8.6N/cm、剥離強さは1.1N/cmであり、耐熱係合力保持率は70%以上であり、極めて優れたものであった。難燃性と粘着性に関しては表1に示す。
実施例2
下記の経糸(6)、緯糸(7)、ループ状係合素子用糸(8)から製織し、そして得られたループ面ファスナー(9)の裏面にポリウレタンからなる層および粘着剤層を形成することにより粘着機能を有する難燃性ループ面ファスナー(10)を製造した。
(6)経糸
上記PPSマルチフィラメント糸(250デシテックス/60フィラメント)
(7)緯糸:無撚引き揃え糸
・上記PPSマルチフィラメント糸(167デシテックス/10フィラメント)
・芯鞘断面熱融着性マルチフィラメント糸(99デシテックス/24フィラメント)200℃での乾熱収縮率が18%(延伸後の熱処理を不十分に行ったもの)
鞘部:低融点共重合ポリエチレンテレフタレート(PET) 共重合成分:イソフタル酸(25モル%)融点:155℃
芯部:高融点非共重合PET 融点:260℃
熱融着性繊維の使用量:緯糸全体の37質量%
(8)ループ状係合素子用糸
上記PPSマルチフィラメント(167デシテックス/10フィラメント)
(9)ループ面ファスナーの製造
織密度は、経糸52本/cm、緯糸18本/cmであり、ループ用マルチフィラメントを経糸4本に1本の割合で挿入した。ループの高さは2.5mm、ループ形成密度は基布1cm当たり53個であった。得られたループ織物を200℃、1分間熱風にて熱処理した。この処理により織物は緯糸方向に9%収縮するとともにループ状係合素子用糸は織物基本中に強固に固定された。得られたループ面ファスナーの裏面から光を当てて織目の詰まり状況を観測した結果、この面ファスナーでは織目がほぼ完全に詰まっていることが確認できた。
(10)難燃性で粘着機能を有する面ファスナーの製造
次にこのループ面ファスナーの裏面に、ポリエーテル系ポリウレタンの液(日華化学社製KMN−NO2)を塗布し、120℃で5分間乾燥させ、そして80℃で9時間エージング処理を行い、裏面に平均厚さ40μmのポリウレタンからなる層を有する面ファスナーを形成した。ポリウレタンは、面ファスナーの表面側には全く浸透していないことが表面の顕微鏡観察により確認できた。
そして、このポリウレタンからなる層に、臭素系難燃剤35質量%と三酸化アンチモン8質量%を含有するアクリル系粘着剤を両面に有する厚さ400μmの粘着テープを貼り合わせ、2kgローラーを3回往復させて面ファスナーの裏面に粘着剤層を密着させた。
このようにして得られた粘着機能を有する難燃性ループ面ファスナーの係合力、難燃性能および粘着性を測定した。なお、係合力を測定する際の係合相手となるフック面ファスナーとして、上記実施例1のフック面ファスナーを用いた。係合力に関しては、引張せん断強さは9.1N/cm、剥離強さは1.7N/cmであった。1000回係合・剥離を繰り返した後の引張せん断強さは5.9N/cm、剥離強さは1.3N/cmであった。この結果、1000回係合・剥離後の係合力保持率は65%以上であり、係合素子の耐引抜性も優れていることが確認できた。さらに係合した状態のフック面ファスナーとループ面ファスナーを180℃の熱風中に48時間放置した後、20℃で係合性を同様に測定した。引張せん断強さは8.8N/cm、剥離強さは1.1N/cmであり、耐熱係合力保持率は70%以上で極めて優れたものであった。係合力以外の測定値に関しては表1に示した。
比較例1
上記実施例1において、緯糸に芯鞘断面の熱融着性繊維を用いることを省き、フック状係合素子用ループの片脚を切断する工程を裏面にポリウレタンを塗布する工程の後に置き、そして裏面に塗布するポリウレタンの量を固形分で60g/mと変更する以外は同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。顕微鏡で得られたフック面ファスナーの基布表面を観察した結果、得られたフック面ファスナーの表面側には、裏面に塗布したポリウレタンが所々滲み出していることが観察された。
得られた難燃粘着剤層付のフック面ファスナーの難燃性と粘着性を測定した結果を表1に示す。この粘着剤層付のフック面ファスナーは表1から明らかなように、難燃性能において、劣っていた。なお、係合力に関しては、実施例のものよりわずかに劣り、かつ、面ファスナー祖ものが硬く、柔軟性の点で実施例1のものより劣るものであった。
また、合否判定は、難燃性に関しては、以下の条件3つを全て満足するものを○、ひとつでも満足しないものを×、粘着性に関しては、以下の条件2つを全て満足するものを○、ひとつでも満足しないものを×とした。
難燃性(垂直難燃試験法)
燃焼時間:15秒以下 燃焼距離:20cm以下 滴下物燃焼時間:5秒以下
粘着性
粘着力:12N/cm以上 せん断保持力:4時間以上保持
比較例2
上記実施例1において、面ファスナーの裏面にポリウレタンを塗布する工程を省略し、裏面に直接アクリル粘着層を形成する以外は実施例1と同様の方法により、粘着剤層付のフック面ファスナーを作製した。得られた粘着剤層付のフック面ファスナーの難燃性能と粘着力を表1に示す。この粘着剤層付のフック面ファスナーは、粘着剤層が面ファスナー裏面から容易に剥離して、力が掛かる用途には使用することができないものであった。係合力に関しては、実施例1のものと同等であった。
比較例3
上記実施例1において、面ファスナー裏面に塗布するポリウレタンとして、ポリエチレンプロピレンアジペートからなるポリエステル系のポリウレタンの有機溶剤液を用いる以外は実施例1と同様に方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。得られた粘着剤層付のフック面ファスナーの難燃性能と粘着力、保持力を表1に示す。この結果から明らかなように、この粘着剤層付のフック面ファスナーは保持力の点で実施例1のものより大きく劣り、さらに難燃性の点でもわずかに劣るものであった。なお、係合力に関しては、実施例1のものと同等であった。
比較例4〜7、
上記実施例1において、面ファスナーの裏面に形成するポリウレタンからなる層の厚さを15μmに変更する(比較例4)、またポリウレタンからなる層の厚さを60μmに変更する(比較例5)以外は実施例1と同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。
また、上記実施例1において、ポリウレタンからなる層に貼り合わせるアクリル系粘着剤層の厚さを250μmに変更する(比較例6)、またアクリル系粘着剤層の厚さを600μmに変更する(比較例7)以外は実施例1と同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。
得られた面ファスナーの難燃性能および粘着性能を表2に示す。表2から明らかなように、難燃性能および粘着性能のいずれかにおいて実施例1のものより大きく劣っており、特に高い難燃性と粘着性が同時に要求される航空機等の用途には使用できるものではなかった。なお、係合力に関しては、いずれも実施例1のものと同等であった。
比較例8〜9
上記実施例1において、アクリル粘着剤層に添加する難燃剤として、リン系の難燃剤に置き換え、添加量を30質量%とする(比較例8)以外は実施例1と同様の方法によりフック面ファスナーを製造した。また上記実施例1において、粘着剤層として、アクリル系の粘着剤に置き換えてゴム系の粘着剤(台湾日邦社製#3540)を用い、厚さを350μmに変更する(比較例9)以外は実施例1と同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。
これら得られた面ファスナーの難燃性能および粘着性能は表2および3に示す。表2および3から明らかなように、難燃性および粘着性の点で大きく劣るものであった。なお、係合力に関しては、いずれも実施例1のものと同等であった。
実施例3〜6
上記実施例1において、面ファスナー裏面に塗布するポリウレタンからなる層の厚さを30μmに変更する(実施例3)、50μmに変更する(実施例4)以外は実施例1と同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。
また上記実施例1において、ポリウレタンからなる層に貼り合わせるアクリル系粘着剤層の厚さを350μmに変更する(実施例5)、500μmに変更する(実施例6)以外は実施例1と同様の方法により粘着剤層付のフック面ファスナーを製造した。
これら実施例で得られた粘着剤層付のフック面ファスナーの性能を表3に示す。表3から明らかなように、得られたフック面ファスナーは難燃性能および粘着性能のいずれかで実施例1のものよりわずかに劣るものの、その程度はわずかであり、実用上大きな問題となるものではなかった。なお、係合力に関しては、いずれも実施例1のものと同等であった。
1:面ファスナー
2:織物基布
3:フック状係合素子
4:ループ状係合素子
5:難燃性粘着剤層
6:ポリウレタンからなる層

Claims (6)

  1. 経糸、緯糸および係合素子用糸からなり、これら糸がともにポリフェニレンサルファイド系の繊維からなる織物基布の表面にフック状またはループ状の係合素子を、裏面にポリウレタンからなる層を介してアクリル系の難燃性粘着剤層を有する面ファスナーであって、以下の条件1)〜4)を満足していることを特徴とする難燃性で粘着機能を有する面ファスナー。
    1)緯糸にはポリフェニレンサルファイド系の繊維に加えて、さらに熱融着性繊維が含まれており、係合素子用糸が熱融着性繊維により織物基布に固定されていること、
    2)ポリウレタンが実質的に織物基布の表面まで浸透していないこと、
    3)ポリウレタンがポリエーテル系のポリウレタンであり、ポリウレタンからなる層の厚さが20〜55μmであること、
    4)粘着剤層が臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを有し、かつ粘着剤層の厚さが300〜550μmであること、
  2. 熱融着性繊維が、低融点樹脂を鞘成分とし、高融点樹脂を芯成分とする芯鞘型の複合繊維である請求項1に記載の難燃性で粘着機能を有する面ファスナー。
  3. 芯成分および鞘成分がともにポリエステル系の樹脂である請求項2に記載の難燃性で粘着機能を有する面ファスナー。
  4. 緯糸が、ポリフェニレンサルファイドからなるマルチフィラメント糸と熱融着性のマルチフィラメント糸との撚数が50turn/m以下の引き揃え糸である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性で粘着機能を有する面ファスナー。
  5. 緯糸中に占める熱融着性繊維の量が20〜50質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性で粘着機能を有する面ファスナー。
  6. 以下の工程(1)〜(5)または工程(1)、(2)、(4)および(5)を順次行うことを特徴とする難燃性で粘着機能を有する面ファスナーの製造方法。
    (1)経糸、緯糸および係合素子用糸からなる織物基布であって、これら糸がともにポリフェニレンサルファイド系の繊維からなり、緯糸にはポリフェニレンサルファイド系の繊維に加えてさらに熱融着性繊維が含まれており、織物基布の表面には係合素子用糸からなるループが存在している織物基布を製織する工程、
    (2)熱融着性繊維を融着・収縮させて、緯糸により係合素子用糸を織物基布に固定し、織物基布の目を詰める工程、
    (3)係合素子用糸がフック状係合素子用糸の場合には、工程(1)のループの片脚を切断してフック状係合素子を存在させる工程、
    (4)織物基布の係合素子を有する面とは反対側の面にポリエーテル系のポリウレタン樹脂液を織物基布の表面にポリウレタンが実質的に浸透しないように塗布して厚さ20〜55μmのポリウレタンからなる層を形成する工程、
    (5)ポリウレタンからなる層の織物基布側とは反対側の面に、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを含有する厚さ300〜550μmのアクリル系粘着剤層を付与する工程、
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