JP7014746B2 - スラグのエージング方法、土木材料の製造方法、およびスラグのエージング処理用炭酸化促進剤 - Google Patents
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Description
[1]遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを水和させるエージング処理を行う工程(A)と、
該工程(A)を経たCaO及び/又はMgOの水和物を含有するスラグに対して、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上からなる炭酸化促進剤を接触させた状態で、前記水和物を炭酸化させるエージング処理を行う工程(B)を有することを特徴とするスラグのエージング方法。
[3]上記[1]のエージング方法において、工程(B)で用いる炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするスラグのエージング方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかのエージング方法において、工程(B)のエージング処理が温水エージングであることを特徴とするラグのエージング方法。
[6]上記[5]のエージング方法において、複数ロットのスラグを順次エージング処理する際に、工程(B)において、1つのロットのスラグの温水エージングに用いた溶液を、次にエージング処理するロットのスラグの温水エージングに用いることを特徴とするスラグのエージング方法。
[8]上記[7]のエージング方法において、炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするスラグのエージング方法。
[9]上記[7]のエージング方法において、炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするスラグのエージング方法。
[11]上記[7]~[10]のいずれかのエージング方法において、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより炭酸化促進剤を再生させることを特徴とするスラグのエージング方法。
[12]上記[11]のエージング方法において、複数ロットのスラグを順次エージング処理する際に、1つのロットのスラグ温水エンージングに用いた溶液を、次にエージング処理するロットのスラグの温水エージングに用いることを特徴とするスラグのエージング方法。
[14]遊離CaO及び/又は遊離MgO若しくはそれらの水和物を含有するスラグのエージング処理用の炭酸化促進剤であって、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とするスラグのエージング処理用炭酸化促進剤。
[15]上記[14]の炭酸化促進剤において、炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするスラグのエージング処理用炭酸化促進剤。
[16]上記[14]の炭酸化促進剤において、炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするスラグのエージング処理用炭酸化促進剤。
また、本発明のエージング方法は、特別な大型設備を設けるなどの設備的負担を要することなく、比較的簡便な設備を用いて実施することができる。
エージング処理の対象となるスラグの粒度は特に制限はないが、一般にはJIS A5015で規定する路盤材粒度で53mm以下が対象となる。また、スラグの微粒部分に膨張や高アルカリ水溶出の原因となる遊離CaOや遊離MgOが偏在する傾向があることから、例えば、粒度4.75mm以下のスラグを対象としてもよい。
このエージング方法は、遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを水和させるエージング処理を行う工程(A)と、この工程(A)を経たCaO及び/又はMgOの水和物を含有するスラグに対して、特定の炭酸化促進剤を接触させた状態で、前記水和物を炭酸化させるエージング処理を行う工程(B)を有するものである。以下、説明の便宜上、遊離CaOを「CaO」、遊離MgOを「MgO」という。
エージング処理は、温水エージング、蒸気エージング、大気エージングなどのいずれでもよい。
エージング処理の処理時間(エージング期間)に特別な制限はないが、通常、スラグ中のCaO、MgOの水和が十分に進み、スラグの膨張抑制(水浸膨張比の低減)を達成できるように設定される。例えば、水浸膨張比(測定方法は実施例参照)1.0%以下を達成できるように処理時間が設定される。
また、エージング処理を実施する設備に特別な制限はなく、温水エージング、蒸気エージングなどを行う公知の設備を使用できる。
なお、この工程(A)で行うエージング処理では、CaOやMgOの水和反応を特に促進できる好ましい実施形態があり、これについては後に詳述する。
炭酸塩、炭酸水素塩の種類は特に制限はないが、例えば、炭酸塩としては炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)などが挙げられ、また、炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
Ca(OH)2+Na2CO3 → CaCO3+2NaOH …(1a)
Mg(OH)2+Na2CO3 → MgCO3+2NaOH …(1b)
CaO+H2O+Na2CO3 → CaCO3+2NaOH …(1c)
MgO+H2O+Na2CO3 → MgCO3+2NaOH …(1d)
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O …(2)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(3a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(3b)
Ca(OH)2+K2CO3 → CaCO3+2KOH …(4a)
Mg(OH)2+K2CO3 → MgCO3+2KOH …(4b)
CaO+H2O+K2CO3 → CaCO3+2KOH …(4c)
MgO+H2O+K2CO3 → MgCO3+2KOH …(4d)
2KOH+CO2 → K2CO3+H2O …(5)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(6a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(6b)
Ca(OH)2+(NH4)2CO3 → CaCO3+2NH3+2H2O …(7a)
Mg(OH)2+(NH4)2CO3 → MgCO3+2NH3+2H2O …(7b)
CaO+H2O+(NH4)2CO3 → CaCO3+2NH3+2H2O …(7c)
MgO+H2O+(NH4)2CO3 → MgCO3+2NH3+2H2O …(7d)
2NH3+H2O+CO2 → (NH4)2CO3 …(8)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(9a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(9b)
Ca(OH)2+NaHCO3 → CaCO3+NaOH+H2O …(10a)
Mg(OH)2+NaHCO3 → MgCO3+NaOH+H2O …(10b)
CaO+H2O+NaHCO3 → CaCO3+NaOH+H2O …(10c)
MgO+H2O+NaHCO3 → MgCO3+NaOH+H2O …(10d)
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O …(11)
Na2CO3+CO2+H2O → 2NaHCO3 …(12)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(13a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(13b)
Ca(OH)2+KHCO3 → CaCO3+KOH+H2O …(14a)
Mg(OH)2+KHCO3 → MgCO3+KOH+H2O …(14b)
CaO+H2O+KHCO3 → CaCO3+KOH+H2O …(14c)
MgO+H2O+KHCO3 → MgCO3+KOH+H2O …(14d)
2KOH+CO2 → K2CO3+H2O …(15)
K2CO3+CO2+H2O → 2KHCO3 …(16)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(17a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(17b)
Ca(OH)2+NH4HCO3 → CaCO3+NH3+2H2O …(18a)
Mg(OH)2+NH4HCO3 → MgCO3+NH3+2H2O …(18b)
CaO+H2O+NH4HCO3 → CaCO3+NH3+2H2O …(18c)
MgO+H2O+NH4HCO3 → MgCO3+NH3+2H2O …(18d)
2NH3+H2O+CO2 → (NH4)2CO3 …(19)
(NH4)2CO3+H2O+CO2 → 2NH4HCO3 …(20)
Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O …(21a)
Mg(OH)2+CO2 → MgCO3+H2O …(21b)
工程(B)のエージング処理において、炭酸化促進剤をスラグに接触させる方法は任意であるが、温水エージングの場合には、温水に炭酸化促進剤を添加し、この炭酸化促進剤を含む温水によりスラグをエージング処理すればよい。また、蒸気エージングや大気エージングの場合には、(i)炭酸化促進剤を含む溶液(水溶液など)をスラグに散布する、(ii)スラグに炭酸化促進剤を混合する、(iii)炭酸化促進剤を含む溶液(水溶液など)にスラグを一時的に浸漬する、などのような方法を採ればよい。
工程(B)においてスラグ中又は温水中にCO2(ガス)を吹き込むには、CO2含有ガス(例えば、冶金炉排ガス、燃焼排ガス、石灰焼成炉排ガスなど)を用いてもよい。CO2含有ガスのCO2濃度は特に制限はないが、処理効率上、CO2濃度が10vol%以上のCO2含有ガスを用いることが好ましい。
また、スラグ中にCO2(CO2含有ガスの場合を含む)を吹き込むには、例えば、吹き込みノズルを備えた蒸気配管が敷設された着生床の上にスラグを積み付け、蒸気配管の吹き込みノズルからスラグ層にCO2を吹き込むなどの方法を採ることができる。
スラグ中の可溶性CaO、可溶性MgO(水和し得るCaO、MgO)の含有量は、例えば、以下のような測定方法で求めることができる。
粒径0.075mm以下に粉砕したスラグ2gに蒸留水5gを加え、180℃のオートクレーブで24時間養生する。この処理により水和し得るCaO、MgOを全てCa(OH)2、Mg(OH)2に変換させる。この水和処理したスラグについて、以下のような熱重量分析を行う。この熱重量分析の条件は、温度範囲は常温~600℃、昇温速度は10℃/分、アルゴン雰囲気で流量は200mL/分とする。300-400℃での質量減少をMg(OH)2の脱水反応、400-500℃での質量減少をCa(OH)2の脱水反応によるものと考え、下記のように水和可能CaO量(可溶性CaO量)、水和可能MgO量(可溶性MgO量)を算出する。
水和可能MgO(mass%)=W300-400*40.3/18.0
水和可能CaO(mass%)=W400-500*56.1/18.0
ここで W300-400:300-400℃での脱水量(mass%)
W400-500:400-500℃での脱水量(mass%)
工程(B)のエージング処理の処理時間に特別な制限はないが、通常、スラグ中のCa(OH)2、Mg(OH)2の炭酸化が十分に進み、スラグの膨張抑制(水浸膨張比の低減)及びスラグからの高アルカリ水の溶出抑制(スラグ溶出水のpH低減)を達成できるように設定される。例えば、水浸膨張比(測定方法は実施例参照)1.0%以下、タンクリーチング試験で測定されるpH(測定方法は実施例参照)10.0以下を達成できるように処理時間が設定される。本発明のエージング方法によれば、従来法(単純な温水エージングや蒸気エージング)に較べてエージング期間を大幅に短縮できる利点がある。
水和処理槽1では、CaOを含有するスラグが投入され、工程(A)のエージング処理(温水エージング)が行われる。
工程(A)を終えたCa(OH)2を含有するスラグは炭酸化処理槽2に移され、ここで工程(B)のエージング処理(温水エージング)が行われる。炭酸化処理槽2では、温水中に炭酸化促進剤としてNa2CO3が添加され、スラグ中のCa(OH)2が炭酸化してCaCO3が生じる。また、この工程(B)では、Ca(OH)2の炭酸化のために消費された炭酸化促進剤(Na2CO3)を再生させるために、エージング処理中及び/又はエージング処理終了後に温水中にCO2を吹き込む。
なお、図1の実施形態とは異なり、温水中にCO2を吹き込まない場合には、処理中に炭酸化促進剤(Na2CO3)が再生されないので、炭酸化促進剤は相応の添加量が必要となる。
工程(B)を終えたスラグは炭酸化処理槽2から取り出され、脱水槽5で脱水処理された後、中和処理槽6で付着水のアルカリ分(NaOH)の中和処理がなされ、製品スラグとなる。中和処理槽6には、炭酸化促進剤再生槽3を出たCO2含有ガスが供給され、アルカリ分(NaOH)の中和処理がなされる。
このエージング方法は、遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、特定の炭酸化促進剤を接触させた状態で、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを炭酸化させるエージング処理を行うものである。以下、説明の便宜上、遊離CaOを「CaO」、遊離MgOを「MgO」という。
さきに述べた本発明の第一のエージング方法と同様、炭酸化促進剤としては、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上を用い、この炭酸化促進剤は、スラグ中のCaO、MgOと反応し、それらの炭酸化を促進させる。
炭酸塩、炭酸水素塩の種類は特に制限はないが、例えば、炭酸塩としては炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)などが挙げられ、また、炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
CaO+H2O+Na2CO3 → CaCO3+2NaOH …(22a)
MgO+H2O+Na2CO3 → MgCO3+2NaOH …(22b)
また、上記(22a)、(22b)式の反応によりNaOHが生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(23)式に示すとおり炭酸化促進剤(Na2CO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(24a)、(24b)式のとおりとなる。
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O …(23)
CaO+CO2 → CaCO3 …(24a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(24b)
CaO+H2O+K2CO3 → CaCO3+2KOH …(25a)
MgO+H2O+K2CO3 → MgCO3+2KOH …(25b)
また、上記(25a)、(25b)式の反応によりKOHが生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(26)式に示すとおり炭酸化促進剤(K2CO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(27a)、(27b)式のとおりとなる。
2KOH+CO2 → K2CO3+H2O …(26)
CaO+CO2 → CaCO3 …(27a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(27b)
CaO+H2O+(NH4)2CO3 → CaCO3+2NH3+2H2O …(28a)
MgO+H2O+(NH4)2CO3 → MgCO3+2NH3+2H2O …(28b)
また、上記(28a)、(28b)式の反応によりNH3が生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(29)式に示すとおり炭酸化促進剤((NH4)2CO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(30a)、(30b)式のとおりとなる。
2NH3+H2O+CO2 → (NH4)2CO3 …(29)
CaO+CO2 → CaCO3 …(30a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(30b)
CaO+H2O+NaHCO3 → CaCO3+NaOH+H2O …(31a)
MgO+H2O+NaHCO3 → MgCO3+NaOH+H2O …(31b)
また、上記(31a)、(31b)式の反応によりNaOHが生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(32)、(33)式に示すとおり炭酸化促進剤(NaHCO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(34a)、(34b)式のとおりとなる。
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O …(32)
Na2CO3+CO2+H2O → 2NaHCO3 …(33)
CaO+CO2 → CaCO3 …(34a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(34b)
CaO+H2O+KHCO3 → CaCO3+KOH+H2O …(35a)
MgO+H2O+KHCO3 → MgCO3+KOH+H2O …(35b)
また、上記(35a)、(35b)式の反応によりKOHが生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(36)、(37)式に示すとおり炭酸化促進剤(KHCO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(38a)、(38b)式のとおりとなる。
2KOH+CO2 → K2CO3+H2O …(36)
K2CO3+CO2+H2O → 2KHCO3 …(37)
CaO+CO2 → CaCO3 …(38a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(38b)
CaO+H2O+NH4HCO3 → CaCO3+NH3+2H2O …(39a)
MgO+H2O+NH4HCO3 → MgCO3+NH3+2H2O …(39b)
また、上記(39a)、(39b)式の反応によりNH3が生成するが、エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグ中又はスラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより、下記(40)、(41)式に示すとおり炭酸化促進剤(NH4HCO3)を再生させることができ、このCO2吹き込みを行う場合のエージング処理の総括反応は、下記(42a)、(42b)式のとおりとなる。
2NH3+H2O+CO2 → (NH4)2CO3 …(40)
(NH4)2CO3+H2O+CO2 → 2NH4HCO3 …(41)
CaO+CO2 → CaCO3 …(42a)
MgO+CO2 → MgCO3 …(42b)
エージング処理において、炭酸化促進剤をスラグに接触させる方法は任意であるが、温水エージングの場合には、温水に炭酸化促進剤を添加し、この炭酸化促進剤を含む温水によりスラグをエージング処理すればよい。また、蒸気エージングや大気エージングの場合には、(i)炭酸化促進剤を含む溶液(水溶液など)をスラグに散布する、(ii)スラグに炭酸化促進剤を混合する、(iii)炭酸化促進剤を含む溶液(水溶液など)にスラグを一時的に浸漬する、などのような方法を採ればよい。
スラグ中又は温水中にCO2(ガス)を吹き込むには、CO2含有ガス(例えば、冶金炉排ガス、燃焼排ガス、石灰焼成炉排ガスなど)を用いてもよい。CO2含有ガスのCO2濃度は特に制限はないが、処理効率上、CO2濃度が10vol%以上のCO2含有ガスを用いることが好ましい。
また、スラグ中にCO2(CO2含有ガスの場合を含む)を吹き込むには、例えば、吹き込みノズルを備えた蒸気配管が敷設された着生床の上にスラグを積み付け、蒸気配管の吹き込みノズルからスラグ層にCO2を吹き込むなどの方法を採ることができる。
スラグ中の可溶性CaO、可溶性MgO(水和し得るCaO、MgO)の含有量の測定方法は、さきに本発明の第一のエージング方法に関して述べたとおりである。
エージング処理の処理温度(炭酸化反応温度)に特別な制限はないが、20~80℃程度が好ましく、40~60℃程度がより好ましい。したがって、この処理温度の点からも、エージング処理は温水エージングが好ましい。
エージング処理の処理時間に特別な制限はないが、通常、スラグ中のCaO、MgOの炭酸化が十分に進み、スラグの膨張抑制(水浸膨張比の低減)及びスラグからの高アルカリ水の溶出抑制(スラグ溶出水のpH低減)を達成できるように設定される。例えば、水浸膨張比(測定方法は実施例参照)1.0%以下、タンクリーチング試験で測定されるpH(測定方法は実施例参照)10.0以下を達成できるように処理時間が設定される。本発明のエージング方法によれば、従来法(単純な温水エージングや蒸気エージング)に較べてエージング期間を大幅に短縮できる利点がある。
炭酸化処理槽2では、温水中に炭酸化促進剤としてNa2CO3が添加され、スラグ中のCaOが炭酸化してCaCO3が生じる。また、CaOの炭酸化のために消費された炭酸化促進剤(Na2CO3)を再生させるために、エージング処理中及び/又はエージング処理終了後に温水中にCO2を吹き込む。
なお、図2の実施形態とは異なり、温水中にCO2を吹き込まない場合には、処理中に炭酸化促進剤(Na2CO3)が再生されないので、炭酸化促進剤は相応の添加量が必要となる。
エージング処理を終えたスラグは炭酸化処理槽2から取り出され、脱水槽5で脱水処理された後、中和処理槽6で付着水のアルカリ分(NaOH)の中和処理がなされ、製品スラグとなる。中和処理槽6には、炭酸化促進剤再生槽3を出たCO2含有ガスが供給され、アルカリ分(NaOH)の中和処理がなされる。
この実施形態の工程(A)では、遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、特定の水和促進剤を接触させた状態で、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを水和させるエージング処理を行うものである。以下、説明の便宜上、遊離CaOを「CaO」、遊離MgOを「MgO」という。
水和促進剤としては、NaOH、KOH、NH3の中から選ばれる1種以上を用いる。この水和促進剤は、スラグ中のCaO、MgO(CaO及び/又はMgO)と反応し、CaO、MgOの水和を促進させるが、水和反応に消費されることはなく、水和反応に対して触媒的な働きをする。
CaO+2NaOH → Ca(OH)2+Na2O …(43a)
MgO+2NaOH → Mg(OH)2+Na2O …(43b)
Na2O+H2O → 2NaOH …(44)
CaO+H2O → Ca(OH)2 …(45a)
MgO+H2O → Mg(OH)2 …(45b)
CaO+2KOH → Ca(OH)2+K2O …(46a)
MgO+2KOH → Mg(OH)2+K2O …(46b)
K2O+H2O → 2KOH …(47)
CaO+H2O → Ca(OH)2 …(48a)
MgO+H2O → Mg(OH)2 …(48b)
CaO+H2O+2NH3 → Ca(OH)2+2NH3 …(49a)
MgO+H2O+2NH3 → Mg(OH)2+2NH3 …(49b)
エージング処理において、水和促進剤をスラグに接触させる方法は任意であるが、温水エージングの場合には、温水に水和促進剤を添加し、この水和促進剤を含む温水によりスラグをエージング処理すればよい。また、蒸気エージングや大気エージングの場合には、(i)水和促進剤を含む溶液(水溶液など)をスラグに散布する、(ii)スラグに水和促進剤を混合する、(iii)水和促進剤を含む溶液(水溶液など)にスラグを一時的に浸漬する、などのような方法を採ればよい。
水和促進剤の添加量に特別な制限はない。添加量が少ないと処理効率が低くなり、一方、添加量が多くなるとスラグに付着する水和促進剤成分の後処理(中和処理など)のための負荷が増大するので、水和促進剤の添加量はこれらの点を考慮して決めればよい。また、水の添加量も、エージングの種類に応じて適宜決めればよい。
エージング処理の処理時間(エージング期間)に特別な制限はないが、通常、スラグ中のCaO、MgOの水和が十分に進み、スラグの膨張抑制(水浸膨張比の低減)を達成できるように設定される。例えば、水浸膨張比(測定方法は実施例参照)1.0%以下を達成できるように処理時間が設定される。
また、エージング処理を実施する設備に特別な制限はなく、温水エージング、蒸気エージングなどを行う公知の設備を使用できる。
また、以上述べたエージング方法に使用される本発明のエージング処理用炭酸化促進剤は、遊離CaO及び/又は遊離MgO若しくはそれらの水和物を含有するスラグのエージング処理用の炭酸化促進剤であって、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上からなるものである。炭酸塩、炭酸水素塩の種類は特に制限はないが、例えば、炭酸塩としては炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)などが挙げられ、また、炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)などが挙げられ、これらの1種以上で炭酸化促進剤を構成することができる。
各実施例でエージング処理されたスラグ及び未エージングのスラグについて、以下に示すような測定法により水浸膨張比と溶出水pHを測定した。その結果を、各実施例のエージング条件とともに表1に示す。
・発明例1
本発明の第一のエージング方法(図1の処理フロー参照)の実施例であり、水和処理槽において温水エージング(50℃)を7日間行った後、スラグを炭酸化処理槽に移し、CO2含有ガス(CO2濃度17vol%)を継続的に吹込みつつ(平均CO2供給量0.17Nm3/h)、炭酸化促進剤としてNa2CO3(14.2kg)を用いて温水エージング(50℃)を3日間行った。処理後のスラグは、脱水・中和槽において付着水をCO2で中和しながら脱水した。
・発明例2
本発明の第二のエージング方法(図2の処理フロー参照)の実施例であり、炭酸化処理槽において、CO2含有ガス(CO2濃度17vol%)を継続的に吹込みつつ(平均CO2供給量0.08Nm3/h)、炭酸化促進剤としてNa2CO3(14.2kg)を用いて温水エージング(50℃)を6日間行った。処理後のスラグは、脱水・中和槽において付着水をCO2で中和しながら脱水した。
本発明の第二のエージング方法の実施例であり、スラグをNa2CO3水溶液(Na2CO3濃度1.3mol/L)に1日間浸漬し、水切り後、ヤードに積み付け、その積み付けたスラグ層の下部から空気(CO2濃度0.035vol%、125Nm3/分)を吹き込むエージング処理を189日間行った。
・発明例4
本発明の第一のエージング方法(図1の処理フロー参照)の実施例であり、水和処理槽において水和促進剤としてNaOH(10.7kg)を用いて温水エージング(50℃)を3日間行った後、スラグを炭酸化処理槽に移し、CO2含有ガス(CO2濃度17vol%)を継続的に吹込みつつ(平均CO2供給量0.17Nm3/h)、炭酸化促進剤としてNa2CO3(14.2kg)を用いて温水エージング(50℃)を3日間行った。処理後のスラグは、脱水・中和槽において付着水をCO2で中和しながら脱水した。
炭酸化促進剤を用いることなく、水和処理槽において温水エージング(50℃)を7日間行った。処理後のスラグは脱水槽において脱水した。
・比較例2
炭酸化促進剤を用いることなく、反応容器(内径0.6m、内容積0.2m3)において蒸気エージング(100℃)を3日間行った。
・比較例3
反応容器(内径0.6m、内容積0.2m3)において蒸気エージング(100℃)を3日間行った後、炭酸化促進剤を用いることなく、回転ドラムタイプの反応容器(内径0.6m、内容積0.2m3)において回転(10rpm)を付与しながらCO2含有ガス(CO2濃度17vol%、湿度100%)の吹込みによるガス炭酸化エージング(25℃)を3日間行った。
・比較例4
炭酸化促進剤を用いることなく、回転ドラムタイプの反応容器(内径0.6m、内容積0.2m3)において回転(10rpm)を付与しながらCO2含有ガス(CO2濃度17vol%、湿度100%)の吹込みによるガス炭酸化エージング(25℃)を3日間行った。
・比較例5
炭酸化促進剤を用いることなく、大気エージング(25℃)を189日間行った。
・水浸膨張比:JIS A5015「道路用鉄鋼スラグ」の付属書Bの試験方法に基づき、スラグの水浸膨張比を求めた。
・溶出水のpH測定:JIS K0058-1「タンクリーチング試験方法」の利用有姿の溶出試験の検液を用い、スラグ溶出水のpH測定を行った。
2 炭酸化処理槽
3 炭酸化促進剤再生槽
4 貯留槽
5 脱水槽
6 中和処理槽
7 ガス吹込み手段
8a,8b 経路
Claims (11)
- 遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを水和させるエージング処理を行う工程(A)と、
該工程(A)を経たCaO及び/又はMgOの水和物を含有するスラグに対して、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上からなる炭酸化促進剤を接触させた状態で、前記水和物を炭酸化させるエージング処理を行う工程(B)を有するエージング方法であって、
工程(B)のエージング処理が温水エージングであり、該温水エージングでは処理槽内の温水中にスラグを浸漬させることを特徴とするスラグのエージング方法。 - 工程(B)で用いる炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のスラグのエージング方法。
- 工程(B)で用いる炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のスラグのエージング方法。
- 工程(B)のエージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより炭酸化促進剤を再生させることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスラグのエージング方法。
- 複数ロットのスラグを順次エージング処理する際に、工程(B)において、1つのロットのスラグの温水エージングに用いた溶液を、次にエージング処理するロットのスラグの温水エージングに用いることを特徴とする請求項4に記載のスラグのエージング方法。
- 遊離CaO及び/又は遊離MgOを含有するスラグに対して、炭酸塩、炭酸水素塩の中から選ばれる1種以上からなる炭酸化促進剤を接触させた状態で、前記遊離CaO及び/又は遊離MgOを炭酸化させるエージング処理を行うエージング方法であって、
前記エージング処理が温水エージングであり、該温水エージングでは処理槽内の温水中にスラグを浸漬させることを特徴とするスラグのエージング方法。 - 炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のスラグのエージング方法。
- 炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウムの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のスラグのエージング方法。
- エージング処理中又は/及びエージング処理終了後に、スラグを浸漬した温水中にCO2を吹き込むことにより炭酸化促進剤を再生させることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載のスラグのエージング方法。
- 複数ロットのスラグを順次エージング処理する際に、1つのロットのスラグの温水エージングに用いた溶液を、次にエージング処理するロットのスラグの温水エージングに用いることを特徴とする請求項9に記載のスラグのエージング方法。
- スラグを請求項1~10のいずれかに記載のエージング方法でエージング処理することにより、土木材料を製造することを特徴とする土木材料の製造方法。
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