JP6044565B2 - 酸性土壌改良材 - Google Patents

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本発明は、酸性土壌を改良して中性域などに保持するための土壌改良材であって、特に、鉄鋼製造プロセスの副産物である鉄鋼スラグのアルカリ性を制御して活用することができる酸性土壌改良材に関する。
日本の土壌の多くは酸性土壌であるといわれており、地域によっては強酸性を示す土壌もあることが知られている。この原因は、土中に含まれる硫化物が酸化することによって、酸性硫酸土壌になるためであるといわれている(例えば、材料,Vol.53,pp.1351-1358(2004))。また、それ以外にも、人工林の土壌が管理条件によって酸性化するとの知見もある。これに加えて、近年では酸性雨問題が顕在化しており、これによる土壌の酸性化も進んでいる。
土壌が過度に酸性となった場合、植物の生育に障害が発生するため、適切な土壌改良が必要となる。代表的な方法としては、アルカリ資材を土壌に供給して改善する方法があり、このほかにアルカリ土壌と有機物資材を混合して酸性遮断層をつくる方法も提案されている。特に前者は簡便で有効な方法であるが、アルカリ資材を過度に供給すると土壌pHがアルカリ側に変化してしまい、逆効果になってしまうという問題があった。
製鋼スラグは、成分中にカルシウムを多量に含むため、アルカリ資材としての利用が可能である。例えば、特許文献1では、整粒した製鋼スラグを酸性化する恐れのある土壌、または酸性化した土壌に供給することにより、酸性化防止と重金属の溶出抑制ができるとしている。しかし、この発明でのpH範囲は6〜13であり、過剰なアルカリ供給に対する対応は、スラグの整粒だけでは実現できないことが示唆されている。また、特許文献2では、転炉スラグ及びバーク堆肥を含有する有機質資材と種子とを混合撹拌してなる客土を酸性緩和基盤材とする方法を提案している。この方法は、土壌pHが著しく低下して機能不全となっている土壌構造を対象としていることから、そのような土壌には有効に作用するものと推定されるが、それほど酸性ではない土壌や、今後酸性になる可能性がある土壌を改良することは難しい。
特開2000−282034号公報 特許第5179456号公報
上述したように、アルカリ資材を混合して酸性土壌を改良する方法がもっとも簡便で効果的であるが、添加量が直接アルカリ供給量につながるため、土質が経時的に変化したり、或いは場所により土質に変動がある場合には、十分に対応できないという問題があった。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、過剰なアルカリを供給することがなく、しかも、土質が変化した場合でも、それに応じて自律的にアルカリ供給ができ、これにより、長期的に土壌のpHをある一定の幅に安定的に保持することができる酸性土壌改良材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について検討を重ねた結果、次のような着想を得た。鉄鋼スラグのようなアルカリ供給源となる材料(以下、「鉄鋼スラグ」を例に説明する)を何らかの物質で被覆することで、アルカリの供給を抑止するとともに、おかれた環境がある程度過剰な酸性である場合には、その被覆が崩壊もしくは溶解することによって鉄鋼スラグが露出し、初めてアルカリを供給できるようになる、という機構である。加えて、これを土中に一定量混合させた場合、酸性化が進んだエリアでまず被覆が取れてアルカリが供給され、その結果、周辺の土壌が中性〜弱アルカリ化することで、他の混合してある鉄鋼スラグの被覆は保護され、そこからはアルカリは供給されなくなる。これによって、過剰なアルカリになることも回避され、且つ、これが段階的に進むことによって、長期的に土壌のpHを一定の幅に安定的に保持することが可能となる。
以上を実現するためには、鉄鋼スラグ表面に安定した皮膜を形成することができるとともに、ある程度過剰な酸性環境におかれた場合に崩壊もしくは溶解するような皮膜材料を見出すことが必要となる。また、土質材であるので、経済合理性も同時に必要となる。
従来、鉄鋼スラグの被覆技術が幾つか提案されている。例えば、特開2004−313818号公報には、製鋼スラグをセメント系化合物で被覆する方法が開示されており、製鋼スラグに比べてpH上昇が抑制されるような傾向が示されているが、セメントそのものが強アルカリ性の材料であり、常に過剰のアルカリを供給することとなるため、本発明の課題を解決する方法としては適していない。
また、鉄鋼スラグを炭酸化処理する方法が知られており、この方法によれば、スラグ表面に炭酸カルシウム等の皮膜が形成される。炭酸カルシウムそのものは酸性になった場合に溶解が進むため、実際の土壌の酸性改良にも用いられており、炭酸カルシウムでスラグ表面をうまく全域が皮膜できれば機能する可能性がある。また、炭酸カルシウムは弱アルカリ性であるため、通常の鉄鋼スラグを混合する場合に比べて、穏便なpH改善効果が得られることが期待できる。しかしながら、炭酸化皮膜はCOガスがスラグの表面付着水を通じて反応することで形成されるものであること、鉄鋼スラグには様々な鉱物相が存在しており、そのなかには炭酸化しやすい相と炭酸化しにくい相が混在していること、などの理由から炭酸化皮膜をスラグ表面全体に安定して形成することが難しい場合が多く、結果として、母材の鉄鋼スラグが部分的に露出してしまう可能性が高く、pH感受性のあるカプセル材としての効果はやや小さくなる。
上述した方法以外に、バイオフィルムという有機系の皮膜を形成させる方法も提案されている。この方法は、養分を与えることでスラグ表面全体にバイオフィルムを順次生成させていき、死骸も含めて表面を覆う技術である。この技術は、有効に機能させることができれば、最初はスラグの表面を完全には覆い切れていない場合でも、最終的にはほぼ全体を被覆することが可能であると考えられる。ところが、微生物には初期のアルカリが比較的強い環境で生存できるものはあまり多くなく、鉄鋼スラグに対してバイオフィルムを発達させることが容易ではない場合も多くあることが判った。また、pHが酸性になったときに膜がなくなるかどうかは、微生物に依存するため、使用環境の影響が大きくなる可能性があり、安定した効果が期待できないという問題もある。
以上のような従来技術に対して、本発明者らは、鉄鋼スラグ表面に安定した皮膜を形成でき、且つ、酸性になった際に溶解もしくは崩壊する皮膜材料として、高分子物質であるキトサンが有望であることを見出した。キトサンは、カニやエビのような甲殻類などに含まれるキチンを処理して製造される高分子であり、生態親和性が高く低毒性の物質である。例えば、キトサンを溶液状としたものを乾燥させれば皮膜状のものが形成可能となる。キトサンは弱酸性で溶液状態とすることができるが、これをアルカリ性に振ると、ゲル化が進行し固体化する。すなわち、キトサンを溶液状態として、これを鉄鋼スラグ表面に付着させる(例えば散布する)と、鉄鋼スラグから溶出するアルカリの作用によってキトサンが固体化し、鉄鋼スラグの表面に比較的緻密でアルカリ溶出を効果的に抑制できる安定した皮膜(キトサン皮膜)が形成されることを見出した。さらに、この皮膜を酸性環境においた場合、膜が段階的に(若しくは徐々に)なくなってスラグからアルカリが供給されることが判明した。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]粉粒状又は塊状のアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を有することを特徴とする酸性土壌改良材。
[2]上記[1]の酸性土壌改良材において、アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位に、アルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成されていることを特徴とする酸性土壌改良材。
[3]上記[1]の酸性土壌改良材において、炭酸化処理したアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を有することを特徴とする酸性土壌改良材。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの酸性土壌改良材において、アルカリ資材が鉄鋼スラグであることを特徴とする酸性土壌改良材。
[5]上記[4]の酸性土壌改良材において、鉄鋼スラグが、溶銑予備処理スラグ、脱炭炉スラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする酸性土壌改良材。
[6]粉粒状又は塊状のアルカリ資材にキトサン溶液を付着させることにより、アルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
[7]上記[6]の製造方法において、キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面にキトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を炭酸化処理することを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
[8]上記[6]の製造方法において、キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面にキトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を6ヶ月以上大気エージングすることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
[9]上記[6]の製造方法において、事前に炭酸化処理したアルカリ資材にキトサン溶液を付着させることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
[10]上記[6]〜[9]のいずれかの製造方法において、アルカリ資材が鉄鋼スラグであることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
[11]上記[10]の製造方法において、鉄鋼スラグが、溶銑予備処理スラグ、脱炭炉スラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
本発明の酸性土壌改良材は、アルカリ資材の表面に形成されるキトサン皮膜が、アルカリ環境では固体状に安定して維持され、酸性環境では非固体化する皮膜であるため、接触する土壌が酸性の場合には、固体状のキトサン皮膜が失われてアルカリ資材が環境曝露されることにより周辺にアルカリが供給され、土壌の酸性を改良する(例えば中性化ないし弱アルカリ化)ことができる。また、以上のメカニズムにより、一部の土壌改良材によってその周辺の酸性土壌が改良された場合、その周辺は中性から弱アルカリ性となるため、周囲に存在する他の土壌改良材は、アルカリ資材がキトサン皮膜で被覆された状態のまま維持され、これにより、一度に多量のアルカリが供給されることが回避される。このため、酸性が強くなったときに始めて改善効果が発現し、且つ長期的に土壌のpHを一定の幅に安定的に保持することが可能となる。
また、キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面にキトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を、炭酸化処理又は一定期間大気エージングすることにより得られる酸性土壌改良材は、アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位(皮膜欠陥部)に、アルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成されたものとなり、キトサン皮膜の形成ムラによる脆弱部が強化されるため、アルカリ供給がより適切に制御されるものとなる。
また、事前に炭酸化処理したアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させた酸性土壌改良材も、アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位(皮膜欠陥部)に、アルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成されたものとなり、キトサン皮膜の形成ムラによる脆弱部が強化されるため、アルカリ供給がより適切に制御されるものとなる。
表面にキトサン皮膜を形成させた製鋼スラグを、初期pHを4.0、5.0、6.5にそれぞれ調整した水溶液に浸漬して、タンクリーチング試験法(JIS K0058−1)による溶出試験を実施し、浸漬時間によるpHの変化を調べた結果を示すグラフ 実施例1で得られた本発明の土壌改良材を混合した土壌、未処理の製鋼スラグを混合した土壌などの試料に対して、pH2.5の水溶液を滴下し、その透過水のpHを測定した試験において、水溶液の投入総量に対する透過水のpHの推移を示すグラフ 実施例2で得られた本発明の土壌改良材を混合した土壌、未処理の製鋼スラグを混合した土壌などの試料に対して、pH6の水溶液を滴下し、その透過水のpHを測定した試験において、水溶液の投入総量に対する透過水のpHの推移を示すグラフ
本発明の酸性土壌改良材は、鉄鋼スラグのような粉粒状又は塊状のアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を有するものであり、このような酸性土壌改良材は、粉粒状又は塊状のアルカリ資材にキトサン溶液を付着させ、アルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させることにより製造される。
以下、アルカリ資材が鉄鋼スラグである場合を例に説明する。
鉄鋼スラグは、CaO成分、MgO成分を多量に含んでおり、その表面と水が接触した際、これらの成分が水と反応してOH−イオンを生成し、これが周辺のpHを上昇させる。したがって、鉄鋼スラグ粒子の表面を、アルカリ環境では安定した固体の状態を維持し、酸性環境において溶解する材料により安定的に被覆できれば、酸性環境でのみアルカリを供給するような、土質に応じて自律的にアルカリ供給できる土壌改良材とすることができる。
キトサン皮膜を形成した鉄鋼スラグの性能(作用効果)を調べるため、次のような試験を行った。キトサンを有機酸に溶解させ、キトサン濃度1mass%に調整した溶液を、塩基度(CaO/SiO)3.5の製鋼スラグ(粒径5〜30mm)に散布し、これを大気中で3日間養生し、スラグ粒子表面にキトサン皮膜を形成させた。この製鋼スラグを、pHを4.0、5.0、6.5にそれぞれ調整した水溶液(pHはイオン交換水に硫酸を添加して調整)に、液固比が10:1になるように浸漬し、撹拌翼により回転数200rpmで撹拌するタンクリーチング試験法(JIS K0058−1)による溶出試験を実施し、浸漬時間によるpHの変化を調べた。その結果を図1に示す。
図1によると、水溶液の初期pHが6を超える(pH6.5)の場合には、pH9をやや超える程度までしか上昇していない。これは、浸漬初期には微量のアルカリ分が溶出するが、その後はキトサン皮膜によってアルカリ分の溶出が抑えられるためであると考えられる。また、浸漬初期での微量のアルカリ分の溶出は、キトサン皮膜形成の際にスラグから拡散したカルシウムなどのアルカリ成分がキトサン皮膜中に含まれ、浸漬初期にこのアルカリ成分が溶け出すためであると考えられる。一方、水溶液の初期pH4.0、5.0のような酸性環境の場合には、それに応じてpHが下がるのではなく、逆にpHが11程度まで上昇している。これは、酸性環境にキトサン皮膜をさらすことによって、皮膜が除かれ、内部の製鋼スラグが直接水に接触して、アルカリが外部に供給されるためであると考えられる。
したがって、キトサン皮膜を有する鉄鋼スラグが酸性土壌に接した場合、或いは、酸性土壌の影響を強く受けた場合、その鉄鋼スラグの固体状のキトサン皮膜が失われて鉄鋼スラグが環境曝露されることにより周辺にアルカリが供給され、土壌の酸性を改良する(例えば中性化ないし弱アルカリ化)ことができる。また、一部の土壌改良材によってその周辺の酸性土壌が改良された場合、その周辺に存在する他の土壌改良材は、鉄鋼スラグがキトサン皮膜で被覆された状態のまま維持されるため、一度に多量のアルカリが供給されることが回避される。このため、酸性が強くなったときに始めて改善効果が発現し、且つ長期的に土壌のpHを一定の幅に安定させることが可能となる。
本発明において、キトサン皮膜を形成させるアルカリ資材としては、Caイオン、Mgイオンなどのアルカリ供給能があり且つ粉粒状又は塊状であれば、特に種類に制限はない。例えば、石灰石、炭酸カルシウム、コンクリートガラ(廃材)、貝殻、珊瑚屑、鉄鋼スラグなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアルカリ資材の1種以上を用いることができる。また、特に鉄鋼スラグは、各種微量成分が含まれることで土壌の肥料としても有効であることが知られており、より望ましい。
鉄鋼スラグは、アルカリ供給ができるものであればよいので、高炉スラグ、製鋼スラグともに対象となる。但し、土壌のアルカリ改善効果を考えた場合、より塩基度(CaO/SiO)が高い製鋼スラグが望ましい。
製鋼スラグとしては、溶銑予備処理スラグ(脱燐スラグ、脱硫スラグなど)、転炉などの脱炭炉で発生する脱炭炉スラグ、電気炉スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの製鋼スラグの1種以上を用いることができる。なお、これらの中でも塩基度(CaO/SiO)が3を超えるものは、遊離CaOを含有している場合が多く、周辺へのアルカリ供給能力も大きいため、本発明の対象としては適している。但し、塩基度が5を超えるようなものは、キトサン皮膜の有無にかかわらず体積安定性を確保することが難しくなるので、製鋼スラグの塩基度は5以下が望ましい。
また、製鋼スラグのなかでも、土工用材などに適した塊状もしくは粉粒用材料として生産されていること、塩基度が比較的安定していることなどの理由から、特に溶銑予備処理スラグ、脱炭炉スラグが好ましく、これらの1種以上を用いるのが好ましい。
製鋼スラグは、粉粒状、塊状のいずれでもよいが、土壌改良材はそのまま土壌の一部となることを考えると、粒径は30mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。また、他のアルカリ資材についても同様である。
本発明の酸性土壌改良材において、鉄鋼スラグ(アルカリ資材)表面のキトサン皮膜は、粉粒状又は塊状の鉄鋼スラグにキトサン溶液を付着させることにより得ることができる。通常、キトサン溶液を付着させた後には、通常、養生を行う。
鉄鋼スラグにキトサン溶液を供給し、スラグ表面に付着させる(スラグ表面を濡らす)方法は任意であるが、通常は、鉄鋼スラグにキトサン溶液を散布し又は鉄鋼スラグをキトサン溶液に浸漬する方法が採られる。キトサン溶液のキトサン濃度については、濃度が低すぎると皮膜の被覆度が十分に確保できない。この観点から、キトサン濃度は0.1mass%以上が好ましい。一方、溶液のキトサン濃度が高いほど皮膜厚を確保できるが、濃度が高すぎると粘性が高まり、皮膜を効率よく形成することが難しくなる。この観点からは、キトサン濃度は3mass%以下が好ましく、1mass%以下がより好ましい。
また、鉄鋼スラグへのキトサン溶液の散布量は、スラグ表面がほぼ安定してキトサン溶液に覆われる程度が望ましく、溶液質量が鉄鋼スラグの1mass%以上が望ましい。特に、粉分が多い鉄鋼スラグについては、1mass%程度では十分でない場合があり、その場合には3mass%以上が望ましい。上限は特にないが、余剰にあっても反応に関与しない溶液が周辺に残るため、15mass%程度を目安とするのが良い。
また、鉄鋼スラグにキトサン溶液を散布する方法では、キトサン溶液がスラグ全体に行き渡るようにするため、溶液散布後の鉄鋼スラグをミキサーや撹拌機などで撹拌してもよい。
キトサンは、カニやエビのような甲殻類などに含まれるキチンを処理して製造される高分子であるが、キトサンそのものは水にほとんど不溶であり、キトサン溶液としては、キトサンを酸(弱酸性溶液)に溶解させて溶液としたものを用いる。酸の種類は、塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸などの有機酸のいずれも使用できるが、溶液中のCa濃度を高く保つことができるという理由から有機酸がより望ましい。また、有機酸のなかでも酢酸および乳酸が特に好ましい。
鉄鋼スラグにキトサン溶液を供給してスラグ表面に付着させた後、通常、養生させるが、この養生の方法は、大気中での養生、後述する炭酸化養生(炭酸化処理)などで行うことができる。養生の期間はキトサン皮膜を安定させるために、大気中であれば3日間以上、望ましくは7日間以上が好ましい。炭酸化処理などのようにガス流通効果もあって乾燥が進む場合は、6時間程度でもよい。
以上のような溶液処理と養生により、鉄鋼スラグの各スラグ粒子の表面には、キトサン皮膜が形成される。このキトサン皮膜は、この鉄鋼スラグから溶出するアルカリの効果によって、スラグ表面に付着したキトサンが固体化して形成されたものであり、比較的緻密でアルカリ溶出を効果的に抑制できるような安定した皮膜である。また、アルカリ資材が鉄鋼スラグ以外の材料の場合であっても、同様である。
鉄鋼スラグ(特に製鋼スラグ)は、遊離CaOなどを含むため、水と接触するとpHが12強に上昇するポテンシャルがある。本発明の酸性土壌改良材では、酸性土壌において鉄鋼スラグを被覆するキトサン皮膜が徐々に崩壊し、アルカリ溶出することで酸性土壌を改良するため、鉄鋼スラグに事前処理をすることなくキトサン皮膜を形成させたものでも特に問題はないが、この場合には、スラグ直近部はやや高いアルカリになる可能性がある。このような条件を避けたい場合には、事前に鉄鋼スラグを炭酸化処理し、この炭酸化処理した鉄鋼スラグにキトサン皮膜を形成するのが好ましい。鉄鋼スラグを事前に炭酸化させれば、遊離CaO分はCaCOとなっており、これによりアルカリ供給がより適切に制御(抑制)されたものとなる。このため、スラグ直近部のアルカリはそれほど高いものにはならず、土壌の急激な変化を緩和することができる。
また、より望ましい方法は、キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面にキトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を炭酸化処理する方法であり、これにより、鉄鋼スラグ表面におけるキトサン皮膜の非形成部位(皮膜欠陥部)に、鉄鋼スラグ成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成(充填)された酸性土壌改良材となる。鉄鋼スラグの場合、スラグ成分であるCa又は/及びMgの炭酸化反応で炭酸カルシウム又は/及び炭酸マグネシウムが生成し、この生成物(炭酸化皮膜)がキトサン皮膜の非形成部位(皮膜欠陥部)に被覆(充填)される。これにより、キトサン皮膜と炭酸化物が複合化した皮膜(キトサンを主体とし、これに炭酸カルシウム又は/及び炭酸マグネシウムが複合化した有機−無機複合皮膜)が形成される。この有機−無機複合皮膜は、より安定な皮膜であり、膜の分解を緩和することでアルカリ供給速度をやや緩和することができる。つまり、キトサン皮膜の形成ムラによる脆弱部が炭酸化物で強化されるため、アルカリ供給がより適切に制御(抑制)されたものとなる。
また、大気養生を一定期間以上実施することによっても炭酸化は進行するので、キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面にキトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を一定期間以上大気エージングしてもよい。これにより、炭酸化処理したとほぼ同様の酸性土壌改良材、すなわち、鉄鋼スラグ表面におけるキトサン皮膜の非形成部位(皮膜欠陥部)に、鉄鋼スラグ成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成(充填)された複合皮膜を有する酸性土壌改良材となる。
大気エージングは、2ヶ月以上である程度の炭酸化の進行がおこるが、より安定した複合皮膜を形成するためには、6ヶ月以上の大気エージングが好ましい。
事前に鉄鋼スラグを炭酸化処理する場合、キトサン処理した鉄鋼スラグを炭酸化処理する場合、のいずれの場合でも、炭酸化処理は、適当な水分量(好ましくは表面付着水を有する水分量)に調整された鉄鋼スラグにCO含有ガスを供給することによりなされる。具体的な方法としては、例えば、スラグ積み山にCO含有ガスを吹き込む方法、スラグを容器内に収納し、容器の底部から容器内のスラグにCO含有ガスを吹き込む方法、鉄鋼スラグを撹拌しながら、その容器中にCOを吹き込む方法などの方法を採ることができる。また、鉄鋼スラグを水中に浸漬させ、その水中にCO含有ガスを吹き込む方法も可能である。CO含有ガスとしては、例えば、製鉄所内の各種設備などから排出される排ガスなどが使用できる。
以上はアルカリ資材が鉄鋼スラグである場合を例に説明したが、他の材料の場合でも同様である。
[実施例1]
製鋼スラグ(脱炭炉スラグ、塩基度(CaO/SiO):3.5、粒度:0−25mm)にキトサン溶液を散布した後、養生し、本発明の土壌改良材を得た。養生は、炭酸化養生で行った。炭酸化養生は、キトサン処理した後に、容器に入れ、1気圧COで6時間処理した。
上記のようにして得られた本発明の土壌改良材を、土(関東ローム)と混合し、充填率が80%程度となるようにφ150mmのモールドに150mm厚みになるように詰め、本発明材の試料とした。ここに硫酸と硝酸を2:1の比率で混合した酸でpH2.5に調整した水溶液を滴下し、透過水のpHを測定した。また、比較として、土(関東ローム)のみの試料、無処理の製鋼スラグのみの試料についても、同様の試験を実施した。
図2に、水溶液の投入総水量に対する透過水のpH推移を示す。土のみの試料の場合、水溶液の投入総量が増加するに従ってpHが低下し、pH5を下回ってしまうのに対し、本発明材の試料の場合は、最初はpHがやや低いものの、一定水量を透過したのちに、pH7近傍に上昇して安定している。一方、無処理の製鋼スラグのみの試料の場合は、pHが10近くとなり、過剰なアルカリ環境となっている。
[実施例2]
製鋼スラグ(脱炭炉スラグ、塩基度(CaO/SiO):3.5、粒度:0−25mm)にキトサン溶液を散布した後、養生し、本発明の土壌改良材を得た。養生は、炭酸化養生で行った。炭酸化養生は、キトサン処理した後に、容器に入れ、1気圧COで6時間処理した。
上記のようにして得られた本発明の土壌改良材を、土(関東ローム)と混合し、充填率が80%程度となるようにφ150mmのモールドに150mm厚みになるように詰め、本発明材の試料とした。ここにpH6のイオン交換水を滴下し、透過水のpHを測定した。また、比較として、土(関東ローム)のみの試料、無処理の製鋼スラグのみの試料、無処理の製鋼スラグを土(関東ローム)と混合した試料についても、同様の試験を実施した。
図3に、水の投入総水量に対する透過水のpH推移を示す。無処理の製鋼スラグを土(関東ローム)に混合した試料の場合は、当初はpH7近傍にあるが、透過水量が増加すると、急激にアルカリが上昇し始めている。一方、本発明材の試料の場合は、長期間pH7近傍に維持されており、中性の水が滴下した場合にも、強アルカリになることを抑制できることが確認できる。

Claims (9)

  1. 粉粒状又は塊状のアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を有するとともに、該アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位に、アルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成されていることを特徴とする酸性土壌改良材。
  2. 炭酸化処理したアルカリ資材の表面にキトサン皮膜を有することを特徴とする請求項1に記載の酸性土壌改良材。
  3. アルカリ資材が鉄鋼スラグであることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸性土壌改良材。
  4. 鉄鋼スラグが、溶銑予備処理スラグ、脱炭炉スラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の酸性土壌改良材。
  5. 粉粒状又は塊状のアルカリ資材にキトサン溶液を付着させることにより、アルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させるとともに、前記キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面に前記キトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を炭酸化処理することにより、該アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位に、前記炭酸化処理によるアルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜を形成することを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
  6. 粉粒状又は塊状のアルカリ資材にキトサン溶液を付着させることにより、アルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させるとともに、前記キトサン溶液を付着させたアルカリ資材又は表面に前記キトサン皮膜を形成させたアルカリ資材を6ヶ月以上大気エージングすることにより、該アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位に、前記大気エージングによるアルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜を形成することを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
  7. 事前に炭酸化処理した粉粒状又は塊状のアルカリ資材にキトサン溶液を付着させることにより、アルカリ資材の表面にキトサン皮膜を形成させ、該アルカリ資材表面におけるキトサン皮膜の非形成部位には、前記炭酸化処理によるアルカリ資材成分の炭酸化により生成した炭酸化皮膜が形成されたものとすることを特徴とする酸性土壌改良材の製造方法。
  8. アルカリ資材が鉄鋼スラグであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の酸性土壌改良材の製造方法。
  9. 鉄鋼スラグが、溶銑予備処理スラグ、脱炭炉スラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の酸性土壌改良材の製造方法。
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