JP2013215184A - 海域利用向け土木資材 - Google Patents
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Abstract
【課題】製鋼スラグを用いた単純な構成にて、海水のpH上昇抑制と海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を両立させる海洋環境用途に適した海域利用向け土木資材を提供する。
【解決手段】製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料1と酸性土壌2、例えば赤土を混合したものを透水性の袋3に封入した海域利用向け土木資材。
【選択図】図2
【解決手段】製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料1と酸性土壌2、例えば赤土を混合したものを透水性の袋3に封入した海域利用向け土木資材。
【選択図】図2
Description
本発明は海洋環境修復材として使用するのに適した、製鋼スラグを用いた海域利用向け土木資材に関する。
近年、海洋沿岸部においては岩場から海藻が消えて石灰藻に覆われる磯焼けや、水質の悪化、ヘドロの堆積に伴う藻場の消失が問題となっており、魚介類等の水産資源の減少が深刻な問題となっている。この要因の一つとして鉄分の不足が挙げられている。すなわち、森林の腐植土壌中に含まれる鉄分が河川を下り海へ供給されていたものが、近年の森林の荒廃やダム建設などによって河川からの鉄分の流入量が減少したため、海洋沿岸部で鉄分を必要とする海藻類や植物プランクトンの減少、ひいては水産資源の減少につながっている。
このような問題に対し、製鋼スラグを用いた海洋環境修復技術が提案されている。製鋼プロセスにおいて多量に生成する「製鋼スラグ」は、Fe、Ca、Mg、Si、Pなどの元素を含有しており、これらの元素が海水中で溶出すると、海洋生物の生育環境に有効であり海洋環境修復材として有用であることが知られている。
例えば特許文献1においては、廃木材チップに石炭溶融灰または転炉スラグを混合したものをココナッツ繊維性の袋に詰め、海中に沈設する磯焼け修復技術が提案されている。そして、この文献では、水域環境の保全材料として、二価鉄の含有物質として転炉スラグ、発酵後に腐食物質を含有する物質として廃木材チップ、また透水性を有する袋材としてココナッツ繊維性の袋が開示されている。発酵後に腐食物質を含有する物質は、二価の鉄イオンと錯体をつくることにより二価鉄イオンを安定に存在させる作用を奏するものである。
しかしながら、製鋼スラグは海水に投入すると、製鋼スラグ中に不可避的に含まれる未反応の可溶性CaO(フリーライム)が海水と反応することにより、周囲の海水のpH上昇及び白濁を引き起こす。このような現象は海洋環境および生物にとって悪影響であり、好ましくない。この点についてこの文献では、炭酸化処理することで周辺水域のpH上昇を抑制したものを用いてもよいと記載があるのみで、解決すべき課題としてpH上昇の抑制を取り上げていないし、海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出は検討していない。
しかしながら、製鋼スラグは海水に投入すると、製鋼スラグ中に不可避的に含まれる未反応の可溶性CaO(フリーライム)が海水と反応することにより、周囲の海水のpH上昇及び白濁を引き起こす。このような現象は海洋環境および生物にとって悪影響であり、好ましくない。この点についてこの文献では、炭酸化処理することで周辺水域のpH上昇を抑制したものを用いてもよいと記載があるのみで、解決すべき課題としてpH上昇の抑制を取り上げていないし、海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出は検討していない。
また、例えば特許文献2においては、製鋼スラグと浚渫土を混合してスラグからの溶出によるpH上昇を抑制し、反応により固化させて造成用材料として活用する技術が提案されている。しかしながら、浚渫土は透水性が低いため、転炉スラグと混合した場合に前述の海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出効果は期待できない。また反応により固化させているため、底生生物の生息環境としては不向きである。
上述のように、製鋼スラグは海洋生物の生育環境に有効な成分を多く含んでおり、海洋環境修復材として有用であるにもかかわらず、海水のpH上昇や白濁を引き起こす要因となりうるので、そのまま海水中に投入するには問題が多い。
製鋼スラグを海水に投入した際の海水のpH上昇および白濁現象は主として下記(1)〜(3)の反応によって起こると考えられている。
CaO+H2O→Ca(OH)2 (1)
Ca(OH)2→Ca2++2OH− (2)
Mg2++2OH−→Mg(OH)2 (3)
すなわち、製鋼スラグを海水に投入すると、(1)式のように可溶性CaO(フリーライム)が水と反応してCa(OH)2を生成する。このCa(OH)2は(2)式のように電離して水中のOH−イオン濃度を増大させ、その結果海水のpHが上昇する。一方、海水中にはMg2+イオンが存在するが、アルカリ雰囲気中では(3)式の反応が進行し、Mg(OH)2が生成する。このMg(OH)2が白濁の原因となる。そこで、海水のpH上昇抑制と海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を両立させるためにはスラグからのCa溶出に伴い増加したOH−イオンを中和する効果があり、かつ海洋環境及び生物に対して有効もしくは無害な材料の添加が効果的と考えられる。
CaO+H2O→Ca(OH)2 (1)
Ca(OH)2→Ca2++2OH− (2)
Mg2++2OH−→Mg(OH)2 (3)
すなわち、製鋼スラグを海水に投入すると、(1)式のように可溶性CaO(フリーライム)が水と反応してCa(OH)2を生成する。このCa(OH)2は(2)式のように電離して水中のOH−イオン濃度を増大させ、その結果海水のpHが上昇する。一方、海水中にはMg2+イオンが存在するが、アルカリ雰囲気中では(3)式の反応が進行し、Mg(OH)2が生成する。このMg(OH)2が白濁の原因となる。そこで、海水のpH上昇抑制と海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を両立させるためにはスラグからのCa溶出に伴い増加したOH−イオンを中和する効果があり、かつ海洋環境及び生物に対して有効もしくは無害な材料の添加が効果的と考えられる。
本発明はこのような現状に鑑み、より単純な構成により海水のpH上昇抑制と海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を両立させる、製鋼スラグを用いた海域利用むけ土木資材を提供しようというものである。
上記目的は、海域利用向け土木資材を
(1)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物からなる海域利用向け土木資材、または、
(2)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物を透水性の袋材に封入した海域利用向け土木資材、であり、さらに
(3)酸性土壌が赤土であることを特徴とする海域利用向け土木資材、さらにまたは、
(4)透水性を有する袋材が麻袋であることを特徴とする海域利用向け土木資材、
のいずれかの構成を採用することによって達成される。
(1)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物からなる海域利用向け土木資材、または、
(2)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物を透水性の袋材に封入した海域利用向け土木資材、であり、さらに
(3)酸性土壌が赤土であることを特徴とする海域利用向け土木資材、さらにまたは、
(4)透水性を有する袋材が麻袋であることを特徴とする海域利用向け土木資材、
のいずれかの構成を採用することによって達成される。
本発明によれば、製鋼スラグを海水中に投入した際のpH上昇を効率的に抑制することができる。さらに赤土からは植物プランクトンや藻類の生長に必要な栄養成分であるリン酸態リン、アンモニア態窒素、硝酸態窒素等が溶出するため、本発明の海域利用向け土木資材は、製鋼スラグからの鉄分の溶出等とあわせて海洋生物の生育環境に有効な成分の供給源となる。
本発明の海域利用向け土木資材は、特に以下の2点に特徴を有する。
(1)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物を海水中に浸漬することで、海水中において、製鋼スラグからのCa溶出に伴うpH上昇を酸性土壌によるpH低下で中和する。これによって、海水のpH上昇を防止または緩和することができ、海洋生物にとって良好な生息環境が確保されるとともに、製鋼スラグ及び酸性土壌の混合物から海洋生物の生育環境に有効な成分が供給される。
(1)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物を海水中に浸漬することで、海水中において、製鋼スラグからのCa溶出に伴うpH上昇を酸性土壌によるpH低下で中和する。これによって、海水のpH上昇を防止または緩和することができ、海洋生物にとって良好な生息環境が確保されるとともに、製鋼スラグ及び酸性土壌の混合物から海洋生物の生育環境に有効な成分が供給される。
(2)製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料を、透水性を有する袋材に封入して詰めて海中に浸漬投入することにより、袋材に封入された混合物からの海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を確保するとともに、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料及び赤土の微粉に起因する海水の濁りを抑制する効果も得られる。
本発明で対象とする製鋼スラグは、製鋼工程の転炉や電気炉などから生成する副産物であり、転炉スラグ、電気炉スラグの他に予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱硫スラグ、脱燐スラグ、脱珪スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグなどが該当する。これらのうち2種以上を混合して用いてもよいし、炭酸化処理や酸への浸漬処理等、pH上昇抑制のための処理を施したものを用いてもよい。
製鋼スラグにはFe、Pが豊富に含まれている。その量はFeが10〜20質量%程度、PがP2O5換算で1〜5質量%程度である。また、主成分であるCaの含有量はCaO換算で35〜55質量%程度であるが、SiO2等と結合していない可溶性のCaO(フリーライム)が1〜8質量%程度含まれているのが通常である。この可溶性CaOの含有量は湿式分析の過程において例えばエチレングリコールに溶解するCaO分として把握することができるものである。本明細書において、この可溶性CaOを「f−CaO」と表記することがある。
本発明で提供する製鋼スラグを含有する施肥材料は、農業、漁業などの分野で生物の生育促進のための栄養補給を目的とした材料であり、上述の製鋼スラグにN、P、K、Mg、Siなどの生物にとって栄養となる成分の供給源となりうる材料を混合したものである。栄養となる成分の供給源となりうる代表的な材料としては、硫酸アンモニウム、尿素、過リン酸石灰、熔成リン肥、リン酸カリウム、苦土石灰、硝酸マグネシウム、珪酸カリウムなどが該当する。また、植物油かす、家畜の糞尿、魚粉などに代表される農林水産副産物もこれに含まれる。これらのうち2種以上を混合して用いても良いし、必要に応じて適当なサイズに成形または造粒しても良い。
本発明で提供する製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料は、海中に投入して使用するため、粒状のものを対象とする。平均粒子径は、海域の覆砂材、埋め戻し材などへの利用や膨張安定性、良好な混合状態の確保という観点から、篩分けによる平均粒子径が1〜25mmであるものが好適であるが、1mm未満の微細な粒状(粉状に近いもの)も適用対象となる。
製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と混合する酸性土壌は、赤土や腐葉土など、海水に投入した際にpHの低下を生じるものであって、かつ水質の悪化、有害成分の溶出を生じるものでなければよい。ここでいう赤土とは、関東ローム層などを代表とする褐色で粘土質の火山灰土壌である。
海水中でpHの低下が起こるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のようなメカニズムであると推定される。土壌中に一般に含まれている粘土鉱物や腐植物質はその表面に負電荷を持ち、これを補う形で表面にはH+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+等の陽イオンが存在し、電気的中性を保っている。このような土壌を海水中に投入すると、粒子表面に吸着されている上記の陽イオンと海水中のCa2+のイオン交換が起こり、海水中のH+が増加するため、pHが低下する。
ただし、酸性土壌でも酸性硫酸塩土壌のような硫化物を多く含む土壌は海水中に硫化物イオンが溶出して水質汚染を起こす可能性があるため、本発明で用いる酸性土壌としては好ましくない。
また、酸性土壌の形状は、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料との良好な混合状態を得ることを考慮すると、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と同程度に成型または造粒したものが望ましい。しかし、海水投入時に海水の濁りを生じなければその限りではない。スラグに対する赤土等の酸性土壌の混合割合は特に限定されないが、十分な効果が得られ、かつ海水の濁りが問題とならない範囲が望ましく、具体的には10〜60質量%が好ましい。
海水中でpHの低下が起こるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のようなメカニズムであると推定される。土壌中に一般に含まれている粘土鉱物や腐植物質はその表面に負電荷を持ち、これを補う形で表面にはH+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+等の陽イオンが存在し、電気的中性を保っている。このような土壌を海水中に投入すると、粒子表面に吸着されている上記の陽イオンと海水中のCa2+のイオン交換が起こり、海水中のH+が増加するため、pHが低下する。
ただし、酸性土壌でも酸性硫酸塩土壌のような硫化物を多く含む土壌は海水中に硫化物イオンが溶出して水質汚染を起こす可能性があるため、本発明で用いる酸性土壌としては好ましくない。
また、酸性土壌の形状は、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料との良好な混合状態を得ることを考慮すると、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と同程度に成型または造粒したものが望ましい。しかし、海水投入時に海水の濁りを生じなければその限りではない。スラグに対する赤土等の酸性土壌の混合割合は特に限定されないが、十分な効果が得られ、かつ海水の濁りが問題とならない範囲が望ましく、具体的には10〜60質量%が好ましい。
本発明者らは海水中に赤土を投入すると、pHの低下ならびに植物プランクトンや藻類の栄養成分となるアンモニア態窒素、硝酸態窒素等の溶出が起こることを見出した。また赤土は上述のイオン交換によるpH低下が特に起こりやすい土壌であり、この点から、赤土は本発明で提供する海域利用向け土木資材の混合材料としては好適であると考えられる。
本発明で用いる袋材は、透水性を有する袋材であって、袋材内部に封入された材料からの海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出を確保するとともに、潮流や波浪による内部材料の流出や内部材料による海水の濁りの防止や、施工時の良好なハンドリングを確保するためのものである。
袋材の材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の無機化学材料、植物繊維等の天然有機材料、これらを組み合わせたものなどがあげられる。上記の目的を果たし、かつ水質の悪化、有害成分の溶出を生じるものでなければよい。編み目の間隙は、内部材料からの海洋生物の生育環境に有効な成分が溶出し、かつ、内部材料の流出及び内部材料による海水の濁りが防止される程度の大きさであればよい。必要に応じて袋に孔を空ける等の加工を施しても良い。
特に麻は天然繊維の中で最も靭性が強く、水に濡れるとさらに強度が上昇する性質を有する。また植物性繊維であることから生分解性にも優れており、最終的には自然に分解されて消失し、環境負荷はほとんどかからない。
また発明者らによる実験の結果、麻袋を海水中に浸漬するとpHが低下することを見出した。以上の点から麻袋は本発明で提供する海域利用向け土木資材に用いる袋材として好適である。
図1は、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料1と、赤土等の酸性土壌2の混合状態を模式的に示す図である。混合容器内に製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と赤土等の酸性土壌を装入し、均一な混合体を得るため十分混合する。混合時間は1分以上であれば十分である。混合方法としては特に限定されず、一般的なミキサーでも十分である。
続いて、十分に混合した製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と、赤土等の酸性土壌を、袋材に封入する。封入方法としては特に限定されず、例えば混合材を貯蔵したホッパーの排出口に袋材をセットし、所定の量の混合材を排出して袋材に封入投入する等の手法が可能である。
図2は、製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と赤土等の酸性土壌の混合材を、透水性を有する袋材3に詰めた状態を模式的に示す図である。封入した後の袋材の封止める方法は、例えば袋の口をひもで結う、ひもで縫製する等の手法が可能である。
上記の製造方法により提供される海域利用向け土木資材は、赤土等の酸性土壌を混合することにより製鋼スラグに起因する海水のpH上昇を抑制し、かつ海洋生物の生育環境に有効な成分を供給しようとするものである。従って、目的用途である海域利用用途において利用可能なことに加え、それ以外の高pH環境を好まない用途にも利用できる。
転炉スラグまたは転炉スラグを含有した施肥材料A、Bを用意した。施肥材料Aはアサヒミネラル工業製のミネリッチであり、転炉スラグをベースに熔成リン肥、珪酸カリウム等を混合したものである。また施肥材料Bはアサヒミネラル製の工業製のミネGスーパーであり、転炉スラグをベースに腐植酸、石灰、苦土等を混合したものである。これらはいずれも篩分けして粒径を2〜5mmに調整した。また、酸性土壌として赤土を用意した。赤土は市販の赤玉土を粉砕し、200μm以下にしたものを用いた。製鋼スラグと赤土の組成を表1に示す。
これらを、表2に示す各No.の重量比となるように混合器に投入し、1分間混合した。混合した材料30kgを、縦62cm、横48cmの麻袋に投入し、袋の口をひもで結んで土木資材とした。ひもは袋材と同一の材質のものを用いた。用いた麻袋は市販品で、その成分は表3のとおりである。
この土木資材を直径60cm、高さ30cmのプラスチック製容器に投入し、pH8.2、水温20℃の海水150リットルが入った水槽にプラスチック容器ごと投入して、全体を海水中に浸漬した。プロペラで海水を撹拌しながら土木資材を投入して3時間後の海水pH、濁りの状況、及び成分を観察した。結果を表2に示す。ここで、3時間後の海水のpHが8.6以下であれば合格とした。また、白濁は観察されなければ合格とした。海水の濁りは、濁りの指標であるSS(浮遊粒子)値を測定し、その値が0.2g/L未満であれば合格とした。
3時間後の海水を採取し、ろ過した後、成分分析に供した。FeはICP発光分光分析、PO4−P、NH4−Nは吸光光度法、NO3−Nはイオンクロマトグラフ法にて分析した。
この土木資材を直径60cm、高さ30cmのプラスチック製容器に投入し、pH8.2、水温20℃の海水150リットルが入った水槽にプラスチック容器ごと投入して、全体を海水中に浸漬した。プロペラで海水を撹拌しながら土木資材を投入して3時間後の海水pH、濁りの状況、及び成分を観察した。結果を表2に示す。ここで、3時間後の海水のpHが8.6以下であれば合格とした。また、白濁は観察されなければ合格とした。海水の濁りは、濁りの指標であるSS(浮遊粒子)値を測定し、その値が0.2g/L未満であれば合格とした。
3時間後の海水を採取し、ろ過した後、成分分析に供した。FeはICP発光分光分析、PO4−P、NH4−Nは吸光光度法、NO3−Nはイオンクロマトグラフ法にて分析した。
まず、評価結果のうち、比較例であるNo.11〜17について説明する。
No.14は、転炉スラグのみを袋材に封入することなく海水に浸漬したもので、製鋼スラグ中のフリーライムと水が反応してpHが上昇するとともに、さらにMg(OH)2が生成したため白濁が生じた。施肥材料Aと施肥材料Bをそれぞれ単独に海水に浸漬したNo.15とNo.16でも、同様に海水pHの上昇が認められたが、転炉スラグ単体の場合よりpH上昇の程度は抑えられており、白濁は生じなかった。材料を袋材に封入していないため、転炉スラグまたは施肥材料に含まれていた微粉により海水には濁りが生じた。No.11〜13は、転炉スラグまたは施肥材料AまたはBのみを麻袋に詰めて海水中に投入した場合である。いずれも麻袋の効果により製鋼スラグまたは施肥材料及び赤土の微粉に起因する海水の濁りは抑制されたものの、海水のpH上昇は抑制できなかった。また赤土のみを投入したNo.17においては、海水のpHは低下し、アンモニア態窒素(NH4−N)、硝酸態窒素(NO3−N)等の栄養成分の溶出が確認されたが、袋材に封入していないため、赤土の微粉に起因する海水の濁りが生じた。
No.14は、転炉スラグのみを袋材に封入することなく海水に浸漬したもので、製鋼スラグ中のフリーライムと水が反応してpHが上昇するとともに、さらにMg(OH)2が生成したため白濁が生じた。施肥材料Aと施肥材料Bをそれぞれ単独に海水に浸漬したNo.15とNo.16でも、同様に海水pHの上昇が認められたが、転炉スラグ単体の場合よりpH上昇の程度は抑えられており、白濁は生じなかった。材料を袋材に封入していないため、転炉スラグまたは施肥材料に含まれていた微粉により海水には濁りが生じた。No.11〜13は、転炉スラグまたは施肥材料AまたはBのみを麻袋に詰めて海水中に投入した場合である。いずれも麻袋の効果により製鋼スラグまたは施肥材料及び赤土の微粉に起因する海水の濁りは抑制されたものの、海水のpH上昇は抑制できなかった。また赤土のみを投入したNo.17においては、海水のpHは低下し、アンモニア態窒素(NH4−N)、硝酸態窒素(NO3−N)等の栄養成分の溶出が確認されたが、袋材に封入していないため、赤土の微粉に起因する海水の濁りが生じた。
一方、本発明例の方法で得られた海域利用向け土木資材No.1〜7について説明する。本発明例の海域利用向け土木資材No.1〜7は、いずれも海水のpH上昇および白濁を抑制する効果に優れ、Fe、リン酸態リン(PO4−P)、アンモニア態窒素(NH4−N)、硝酸態窒素(NO3−N)等の栄養成分の溶出が確認された。特に麻袋に封入して海水中に投入したNo.1〜4については、麻袋に封入しなかったNo.5〜7に比べて製鋼スラグ、施肥材料及び赤土の微粉に起因する海水の濁りも抑制され、栄養成分の溶出も認められた。
本発明の海域利用向け土木資材は、海域において覆砂材、深堀埋め戻し材、浅場・干潟・藻場造成材等の様々な用途に用いられる。洋環境への負荷も小さく、また、製鋼スラグに由来するFe分の溶出、赤土等の酸性土壌に由来する硝酸態窒素(NO3−N)等の栄養成分の溶出により海生物の生息環境としても好適であると考えられるため、本発明によって海洋環境の保全及び修復が図られ、豊かな海洋環境が維持される。
1・・・製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料
2・・・赤土等の酸性土壌
3・・・透水性を有する袋材
2・・・赤土等の酸性土壌
3・・・透水性を有する袋材
Claims (4)
- 製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物からなる海域利用向け土木資材。
- 製鋼スラグまたは製鋼スラグを含有する施肥材料と酸性土壌の混合物を透水性の袋材に封入した海域利用向け土木資材。
- 酸性土壌が赤土であることを特徴とする請求項1または2に記載の海域利用向け土木資材。
- 透水性の袋材が麻袋であることを特徴とする請求項2または3に記載の海域利用向け土木資材。
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