JPWO2003037825A1 - 珪酸質肥料用原料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、珪酸質肥料用原料及びその製造方法に関するものである。
背景技術
珪酸質肥料は主に水稲に対する珪酸の補給を目的とした肥料であり、可溶性珪酸を10mass%ないしは20mass%以上、アルカリ分を25mass%ないしは30mass%以上含んでおり、水田の土壌保全や老朽水田の土壌改質剤として大量に使用されている。また、近年では珪酸質肥料が植物体を強化し、病虫害にかかり難くする作用が注目されており、水稲のみならず、キュウリ等の野菜にも使用されるようになってきた。
珪酸質肥料は天然資源である珪灰石からも製造されるが、現在では多くの珪酸質肥料が高炉スラグを原料として製造されている。高炉スラグから珪酸質肥料を製造するには、例えば特開昭55−113687号公報に示されるように、高炉から排出された溶融状態の高炉スラグを徐冷して固化させ、この固化した塊状の高炉スラグを乾燥させた後に粉砕し、所定の粒度に調整して珪酸質肥料とする。
ところで、高炉スラグの塩基度(CaO/SiO2)は、高炉内での脱硫反応を促進させるために通常1.24〜1.26程度の範囲内に調整されるため、高炉スラグを原料とする珪酸質肥料の塩基度も当然にその程度のものとなり、アルカリ分の比較的多い肥料となる。また、一般に高炉スラグにはAl2O3が13〜15mass%程度も含まれており、当然このような多量のAl2O3が珪酸質肥料に含まれることになる。したがって、このような珪酸質肥料を使用することにより、土壌には珪酸が投入されるとともに、アルカリ資材やAl2O3も投入されることになる。
わが国の農地は元々酸性土壌が多く、このため上記のようなアルカリ分の多い珪酸質肥料を使用することは土壌改良の目的にも沿うものであった。しかしながら、昨今、珪酸質肥料をはじめとする肥料の施肥量の増加に伴い酸性土壌の問題は減少しており、このため従来使用されてきたようなアルカリ分の多い珪酸質肥料に代わって、珪酸含有量が高く且つアルカリ分の少ない珪酸質肥料が求められている。
また、高炉スラグを原料とする珪酸質肥料に多量に含まれているAl2O3は肥料として有効な成分ではなく、一方において、Al2O3は土壌中のリン酸を固定して植物が利用できない形態にしたり、珪酸の溶出性を阻害するという問題も指摘されている。
発明の開示
本発明の目的は、珪酸(可溶性珪酸)の含有量が多く且つアルカリ分が少なく、好ましくはAl2O3含有量が少ない珪酸質肥料を安価に得ることができる珪酸質肥料用原料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記珪酸質肥料用原料を得るのに好適な珪酸質肥料用原料の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記珪酸質肥料用原料を用いた珪酸質肥料及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは肥料の組成及び製造コストの面で上記の要求にかなう珪酸質肥料用原料について検討を重ね、その結果、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収される特定のスラグが珪酸質肥料の原料として極めて好適であり、特殊な処理を加えることなくそのまま珪酸質肥料用原料として利用でき、しかも肥料として優れた性能を示すことを見い出した。また、そのなかでも、特定の塩基度を有するスラグ、さらに好ましくは特定の冷却条件で得られたスラグが、肥料として特に優れた性能を示すことが判った。
このような知見に基づき、本発明により提供される珪酸質肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素を酸化させることにより生成した珪酸を含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする珪酸質肥料用原料である。
上記珪酸質肥料用原料は、可溶性珪酸の含有量がなるべく高いことが好ましく、可溶性珪酸を20mass%以上、さらに望ましくは30mass%以上含有することが好ましい。
ここで、上記珪酸質肥料用原料のうち下記(1)、(2)のものは、可溶性珪酸を20mass%以上含有するものとなるため、好ましい肥料用原料である。
(1)溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.52〜2.0のスラグからなる珪酸質肥料用原料。
(2)溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.49〜2.0のスラグからなる珪酸質肥料用原料。
また、上記珪酸質肥料用原料のうち下記(3)のものは、可溶性珪酸を30mass%以上含有するものとなるため、特に好ましい肥料用原料である。
(3)溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.50〜1.5のスラグからなる珪酸質肥料用原料。
上記珪酸質肥料用原料において、肥料を低アルカリとするという観点からは、スラグの塩基度(CaO/SiO2)は1.24未満であることが好ましい。また、肥料を低アルカリとし且つ珪酸の所望の溶解特性を得るなどの観点からは、スラグの塩基度(CaO/SiO2)は0.50以上、1.24未満であることが好ましい。また、肥料中の有効成分を高め且つ珪酸の溶出性を高めるという観点からは、スラグのAl2O3含有量は10mass%以下であることが好ましい。
上記珪酸質肥料用原料となるスラグとしては、上述したスラグの条件を容易に満足できるという観点から、溶銑脱珪スラグを用いるのが好ましい。
上記珪酸質肥料用原料は、そのまま珪酸質肥料となるか、若しくは珪酸質肥料の主原料となる。したがって、本発明はそのような珪酸質肥料を提供する。
上記珪酸質肥料用原料を珪酸質肥料とする際には、珪酸質肥料用原料は破砕処理及び/又は整粒されることが好ましい。
上記珪酸質肥料用原料、特に破砕処理及び/又は整粒された珪酸質肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸質肥料とすることが好ましく、このような珪酸質肥料は、施肥時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題が生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取扱い性も良好である。
上述したような条件を満足する珪酸質肥料用原料を得るには、下記の製造方法が好適である。
(1)高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑に酸素源を供給して溶銑中の珪素を酸化させることにより珪酸を生成させ、この珪酸を含むスラグを回収して固化させることにより、可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグを得る珪酸質肥料用原料の製造方法。
また、上述した点からして、この製造方法における特に好適な条件は以下のとおりである。
(2)上記(1)の製造方法において、溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.52〜2.0のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を20mass%以上含有するスラグを得る珪酸質肥料用原料の製造方法。
(3)上記(1)の製造方法において、溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.49〜2.0のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を20mass%以上含有するスラグを得る珪酸質肥料用原料の製造方法。
(4)上記(1)の製造方法において、溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.50〜1.5のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を30mass%以上含有するスラグを得る珪酸質肥料用原料の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの製造方法において、溶銑にCaO系造滓剤を添加するとともに、その添加量を調整することにより、回収するスラグの塩基度(CaO/SiO2)を調整する珪酸質肥料用原料の製造方法。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの製造方法において、溶銑予備処理工程が脱珪処理工程である珪酸質肥料用原料の製造方法。
また、上記の各製造方法で得られた珪酸質肥料用原料を用いて珪酸質肥料が製造される。したがって、本発明はそのような珪酸質肥料の製造方法を提供する。また、その際には、上述した珪酸質肥料用原料の破砕工程及び/又は整粒工程、バインダーを添加した造粒工程が実施されることが好ましい。
以上述べた本発明の珪酸質肥料用原料は、可溶性珪酸の含有量が多く且つアルカリ分が少なく、しかも溶銑予備処理で生成したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することができる。このため従来の高炉スラグを原料とした珪酸質肥料に代わる極めて有用な珪酸質肥料を得ることができ、また、溶銑予備処理で生成したスラグの有効利用という面からも工業的な価値が大きい。また、本発明の珪酸質肥料用原料の製造方法によれば、そのような珪酸質肥料用原料を安定して製造することができる。
発明の詳細な説明
以下、本発明の珪酸質肥料用原料及びその製造方法の詳細と好ましい実施形態について説明するとともに、その珪酸質肥料用原料から得られる珪酸質肥料及びその製造方法についても説明する。
本発明の珪酸質肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素を酸化させることにより生成した珪酸を含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上、好ましくは20mass%以上、特に好ましくは30mass%以上含有するスラグからなるものである。ここで、可溶性珪酸とは0.5molの塩酸溶液可溶分の珪酸(肥料公定分析法による)を指す。
本発明の珪酸質肥料用原料となるスラグとしては、特に、高炉溶銑の脱珪処理工程で回収される脱珪スラグが好ましい。溶銑予備処理として行われる溶銑の脱燐処理では、溶銑中の珪素濃度が低いほど脱燐処理効率が高まるため、脱燐処理前に溶銑の脱珪処理が行われる。この脱珪処理は高炉鋳床の溶銑樋内や溶銑保持容器内で行われ、溶銑中に酸素ガスや酸化鉄などの酸素源を添加することにより行われる。この溶銑中に添加された酸素源は溶銑中の珪素と反応して珪酸が生成し、この珪酸を含んだ所謂脱珪スラグが生成する。ここで、高炉からの出銑の際には溶銑とともに高炉スラグ(CaO−SiO2−Al2O3−MgO系スラグ)も排出され、この高炉スラグは高炉鋳床に設けられたスキンマにより溶銑と分離されるが、一部の高炉スラグは不可避的に溶銑保持容器に流入する。このため上記脱珪処理後に回収されるスラグ(脱珪スラグ)は、脱珪反応で生じた珪酸と高炉スラグとが融合したものとなり、その組成は珪酸を主成分とし、これに適量のCaOと、少量のAl2O3、MgO、MnO、FeO等が含まれたものとなり、また可溶性珪酸の含有量も珪酸質肥料として必要な水準(10mass%以上)を満足したものとなる。
例えば、一般的な脱珪スラグの組成は、SiO2:25〜50mass%、CaO:7.5〜50mass%、MgO:0.5〜3mass%、Al2O3:1〜5mass%、MnO:1〜10mass%程度であり、塩基度も高炉スラグに較べて低く、通常は0.30以上、1.24未満の範囲に入る。したがって、このような脱珪スラグそのものを原料とする珪酸質肥料は、高炉スラグを原料とする珪酸質肥料に較べて、SiO2含有量が高く(したがって、可溶性SiO2含有量も高い)、アルカリ分が低いという特徴を有するとともに、植物にとって不要な(場合によっては有害な)Al2O3の含有量が少なく、さらに植物にとって有用な微量成分であるMnOやFeも含有するため、非常に優れた珪酸質肥料であると言える。また、脱珪処理を溶銑保持容器内で行う場合に、混入した高炉スラグをさらに取り除いた後に脱珪処理を行うことにより、珪酸含有量がより高い脱珪スラグを得ることもできる。
また、肥料を低アルカリとするという観点からは、珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグの塩基度(CaO/SiO2)は1.24未満、好ましくは1.00以下、さらに好ましくは0.70以下が望ましい。
脱珪スラグの塩基度は、脱珪処理の際のCaO系造滓剤の添加量を調整すること、或いはSiO2源を投入すること等により調整することができる。
また、脱珪スラグに含まれるAl2O3は植物にとって不要な成分であり、Al2O3含有量が多いと肥料の有効成分量が相対的に少なくなる。さらに、Al2O3は珪酸の溶出性を阻害するとともに、土壌中のリン酸を固定して植物が利用できない形態にするおそれがあるので、極力少ない方がよい。Al2O3含有量が10mass%を超えると、それらの問題点が顕在化するおそれがあるので、Al2O3含有量は10mass%以下、好ましくは5mass%以下とするのがよい。一般に脱珪スラグ中のAl2O3の大部分は高炉スラグに由来するものであり、したがって溶銑保持容器内に溶銑とともに流入した高炉スラグを脱珪処理前に取り除くことにより、脱珪スラグ中のAl2O3含有量を低減させることができる。このため、高炉スラグからなる珪酸質肥料用原料は通常Al2O3を14〜18mass%程度も含むのに対し、本発明の珪酸質肥料用原料では、Al2O3含有量を容易に5mass%以下とすることができる。
珪酸質肥料は、当然のことながら可溶性珪酸の含有量が高いことが好ましいが、本発明者らによる検討の結果、可溶性珪酸の含有量を高める上で、スラグ(特に、脱珪スラグ)の塩基度(CaO/SiO2)、さらには回収後のスラグの冷却速度に好適な条件が存在することが判った。
図1は、高炉溶銑の脱珪処理工程で回収された種々の塩基度(CaO/SiO2)を有するスラグであって、回収された直後のスラグを通常の方法で徐冷したものと、鉄板上排滓などの方法で急冷したものについて、それらの塩基度と珪酸可溶率(=(可溶性珪酸量/トータル珪酸量)×100)との関係を調べた結果を示したものである。また、図2は、図1の結果をスラグ中の可溶珪酸含有量で整理して示したものであり、図3は図2中の塩基度(CaO/SiO2):0.3〜0.7の範囲を拡大して示したものである。
これらによれば、全体としてスラグ塩基度(CaO/SiO2)が高くなると珪酸可溶率が高くなる。また、スラグ塩基度が高くなると可溶性珪酸含有量は増加するが、所定の塩基度以上になると全珪酸量が少なくなるため減少する。しかし、回収されたスラグを徐冷した場合と、急冷した場合とでは、スラグ塩基度と可溶性珪酸含有量との関係に差があり、また特に、得られる可溶性珪酸含有量のレベルが大きく異なる。すなわち、回収されたスラグを徐冷した場合には、スラグ塩基度:0.52〜2.0の範囲において可溶性珪酸含有量:20mass%以上が得られ、また、スラグ塩基度:0.63〜1.0の範囲において可溶性珪酸含有量:30mass%以上が得られている。一方、回収されたスラグを急冷した場合には、スラグ塩基度:0.49〜2.0の範囲において可溶性珪酸含有量:20mass%以上が得られ、また、スラグ塩基度:0.50〜1.5の範囲において可溶性珪酸含有量:30mass%以上が得られ、さらに、スラグ塩基度:0.51〜0.95の範囲において可溶性珪酸含有量:40mass%以上が得られている。
このように脱珪処理工程で回収されたスラグを通常の形態で徐冷した場合と、急冷した場合において、それぞれ高い可溶性珪酸含有量を得るのに好適なスラグ塩基度の範囲がある。このように特定の塩基度の範囲で可溶性珪酸含有量が高くなるのは、脱珪スラグの主要鉱物はSi長鎖のCaSiO3(ウォラストナイト)であるため溶解しにくい性質があるが、塩基度が高まると珪酸の長鎖がCaで切断され、溶解性が高まるためであると考えられる。
また、特定の塩基度のスラグを急冷した場合には、通常の形態で徐冷した場合と較べて、可溶性珪酸含有量のレベルを飛躍的に高めることができる。これはスラグを急冷することにより、スラグ組織が溶解性の向上に適したガラス構造となるためであると考えられる。
本発明者が検討した結果では、急冷による図1及び図2に示されるような効果を得るためには、回収されたスラグを少なくとも1300〜1000℃、好ましくは1400〜950℃の温度領域で10℃/分以上、好ましくは20℃/分以上の冷却速度で冷却(急冷)すればよいことが判った。この10℃/分以上というスラグの冷却速度は、通常のスラグの冷却形態(徐冷)に較べると十分に速い冷却速度であると言える。このような冷却条件で融体または過冷却液体温度領域にあるスラグを急冷することにより、先に述べたような溶解性に優れたスラグ組織を得ることができる。なお、上記温度領域外での冷却条件は、形成されるスラグ組織には大きな影響を与えないため任意である。
以上述べた理由から本発明においては、下記(1)又は(2)のスラグによって、可溶性珪酸が20mass%以上の珪酸質肥料用原料が得られる。
(1)回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.52〜2.0のスラグ
(2)回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.49〜2.0のスラグ
また、本発明では、下記(3)又は(4)のスラグによって、可溶性珪酸が30mass%以上の珪酸質肥料用原料が得られる。
(3)回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.63〜1.0のスラグ
(4)回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.50〜1.5のスラグ
さらに本発明では、下記(5)のスラグによって、可溶性珪酸が40mass%以上の珪酸質肥料用原料が得られる。
(5)回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.51〜0.95のスラグ
なお、回収されたスラグを上述した特定の温度領域において上記冷却速度で急冷するための具体的な方法は特に制限はないが、例えば、生成したスラグに高圧空気を吹きつけて飛散させることにより、スラグを冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、生成したスラグに高圧水を吹きつけて飛散させることにより、スラグを冷却するとともに粒状化する方法(水砕法)、生成したスラグを厚鋼板上に流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱によりスラグを冷却する方法などが考えられ、いずれの方法でもよい。また、通常の冷却形態である徐冷の場合は、一般に、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
一般に、肥料中の有効態珪酸である可溶性珪酸の含有量は、0.5mol塩酸溶液という強酸性の環境下で測定(肥料公定分析法)されるが、実際の多くの土壌はpH7程度の中性環境であるため、上記可溶性珪酸量の測定値と実際の作物による吸収との相関は必ずしも一定でないと考えられる。このため珪酸質肥料の性能としては、通常の0.5mol塩酸溶液中での珪酸の溶解性とともに、pH7付近での珪酸の溶解性も重要である。検討の結果、本発明の珪酸質肥料用原料は、通常の土壌のpHであるpH7付近での珪酸の溶解性(中性領域での溶解性)が、従来の高炉水砕スラグからなる珪酸質肥料用原料に較べて格段に高いことが判った。本発明者らが、具体的に0.2Mリン酸塩溶液(pH7)中での珪酸の溶解率について確認した例では、従来の高炉水砕スラグから得られる珪酸質肥料では0.1%程度の溶解率しか得られなかったのに対して、本発明の珪酸質肥料は0.9%〜4.3%という高い溶解率が得られた。また、そのなかでも、1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却(急冷)して得られたスラグからなるものが、特に高い溶解率が得られた。
以上述べた本発明の珪酸質肥料用原料は、そのままで或いは破砕(粉砕)処理及び/又は整粒(粒度調整)を施した上で珪酸質肥料とすることができる。また、上記珪酸質肥料用原料、特に破砕処理及び/又は整粒された珪酸質肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸質肥料とすることが好ましく、このような珪酸質肥料は施肥の時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題が生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取り扱い性も良好である。
また、本発明の珪酸質肥料用原料に他の添加成分を配合し、珪酸質肥料としてもよい。
次に、本発明の珪酸質肥料用原料の製造方法について説明する。
図4は本発明の製造方法の一実施形態を示すもので、図に示す設備は溶銑の脱珪処理設備である。高炉(図示せず)から出銑された溶銑2を収納した取鍋型の溶銑保持容器1は、台車3に搭載されて図4に示す脱珪処理設備まで搬送されてくる。この脱珪処理設備には、上吹き酸素ランス6とインジェクションランス7とが装備されている。これら上吹き酸素ランス6及びインジェクションランス7は上下動可能であり、溶銑保持容器1内に挿入されて使用される。
前記インジェクションランス7には、貯蔵タンク10から粉体状の固体酸素源5が、貯蔵タンク11から粉体状の造滓剤8(CaO系造滓剤)が、貯蔵タンク12から粉体状の成分調整剤9がそれぞれ供給される。これらの粉体は、単独又は混合された状態で窒素ガスを搬送ガスとしてインジェクションランス7に供給され、その先端から溶銑2中に吹き込み添加される。この場合、インジェクションランス7の先端位置を調整すれば、前記粒体を脱珪スラグ4中にも吹き込むことができる。また、インジェクションランス7の先端を脱珪スラグ4の上方のある高さに配置することで、前記粒体を脱珪スラグ4の表面に投射して添加することもできる。
なお、図において13〜15は貯蔵タンク10〜12から粉体を切り出すためのリフトタンク、16はディスペンサーである。貯蔵タンク10内の固体酸素源5と、貯蔵タンク11内の造滓剤8と、貯蔵タンク12内の成分調整剤9とは、リフトタンク13〜15によってそれぞれ独立に添加量及び添加時間を制御して吹き込むことができ、またインジェクションランス7から窒素ガスのみを吹き込んで溶銑2を攪拌することも可能である。
ここで、前記固体酸素源5は溶銑2中の珪素を酸化するために添加されるものであり、ミルスケールや鉄鉱石などの鉄酸化物が用いられる。
前記造滓剤8は、脱珪処理により生成する珪酸と化合物を形成し、生成する脱珪スラグ4の融点を低下させるために添加されるものであり、通常CaOが用いられる。また、撹拌効果を得るため或いはスラグのフォーミング抑制のため石灰石を投入する場合がある。
前記成分調整剤9は、生成される脱珪スラグ4の成分を調整するために添加されるものであり、例えば、珪酸質肥料にFe2O3、MgO、MnOなどを含有させたい場合には、それぞれ鉄鉱石、マグネシアクリンカー、マンガン鉱石などのような所望の成分を含有する物質を成分調整剤9として添加する。これにより生成される脱珪スラグ4を所望の組成とすることができる。また、SiO2分を増量したい場合には、珪砂や珪石などのSiO2含有物質を成分調整剤9として添加することもできる。このように成分調整剤9は、Fe2O3、MgO、MnO、SiO2などの1種以上を主成分とする物質を目的に応じて使用する。
脱珪処理設備には、さらにホッパー17〜19と、これらホッパーからの原料切り出し装置20〜22と、切り出された原料(固体酸素源、造滓剤、成分調整剤)の搬送装置23と、原料を溶銑保持容器1内に装入するためのシュート24とからなる原料供給設備Aが併設されており、この原料供給設備Aによってホッパー17内の固体酸素源5、ホッパー18内の造滓剤8及びホッパー19内の成分調整剤9を、それぞれ溶銑保持容器1内に上置き添加することができる。この上置き添加される固体酸素源5、造滓剤8及び成分調整剤9としては、通常は塊状のものが用いられる。
図4に示すような脱珪処理設備では、固体酸素源5、造滓剤8及び成分調整剤9の溶銑保持容器1内への供給は、前記インジェクションランス7による吹き込み添加、前記原料供給設備Aによる上置き添加のいずれか一方又は両方で行うことができる。
以下、上述した脱珪処理設備を用いて溶銑の脱珪処理を行い、珪酸質肥料用原料である脱珪スラグを製造する方法について説明する。
溶銑保持容器1内で溶銑2の脱珪処理を行なうが、生成される脱珪スラグ4の組成を正確に把握するために、脱珪処理の前に溶銑保持容器1内に存在する高炉スラグの量及び組成を把握することが好ましい。この高炉スラグ量は、スラグ厚さの測定又は溶銑2の湯面を覆うスラグの面積率の目視観察などにより把握することができる。スラグ組成は化学分析により把握するが、経験的に凡その組成が分かる場合には化学分析は不要である。
脱珪処理では、例えば、固体酸素源5をシュート24から溶銑保持容器1内に上置き添加するとともに、上吹き酸素ランス6から酸素ガスを溶銑2の湯面に吹き付け、さらに、インジェクションランス7から窒素ガスを吹き込んで溶銑2と固体酸素源5とを攪拌混合させる。このようにすることで、酸素ガス及び固体酸素源5中の酸素が溶銑2中の珪素と反応して珪酸を生成する。生成した珪酸は上述した高炉スラグと混合・融合し、溶銑2上に珪酸を主成分とする脱珪スラグ4が生成される。
この場合、生成する脱珪スラグ4を低融点化するために、インジェクションランス7又はシュート24を介して造滓剤8を添加することが好ましい。また、インジェクションランス7を介して粉体状の固体酸素源5を吹き込んでもよい。粉体状の造滓剤8及び粉体状の固体酸素源5を使用した場合には、塊状のものを使用した場合に比較して反応界面積が大きくなり、脱珪処理を迅速に且つ安定して実施することができる。
脱珪スラグ4の組成は生成する珪酸量に左右される。したがって、脱珪処理前の溶銑2の珪素濃度と脱珪処理後の溶銑2の目標珪素濃度に応じて、酸素ガス及び固体酸素源5の使用総量を設定する。その際、酸素ガスを使用する場合には溶銑2の温度が上昇し、一方、固体酸素源5を使用する場合には溶銑2の温度は低下するので、酸素ガスと固体酸素源5との配合比率は、添加される酸素純分量が同一となる条件で、溶銑2の温度に応じて適宜変更すればよく、例えば温度条件が良好な場合には、固体酸素源5のみを使用することもできる。
また、生成する珪酸の量及び元から存在している高炉スラグの量に応じて、生成する脱珪スラグ4の塩基度が上述した好ましい範囲になるように造滓剤8(CaO系造滓剤)の添加量を決定する。通常、塩基度が1.24未満であれば、アルカリ分の少ない珪酸質肥料を得ることができるが、造滓剤8の添加量を調整して脱珪スラグ4の塩基度を下げるほど、さらに低アルカリの珪酸質肥料を得ることができる。また、MgOなどの成分を調整する場合には、インジェクションランス7又はシュート24を介して所望の成分調整剤9を添加する。
このようにして溶銑2は脱珪処理され、溶銑2上には珪酸質肥料組成の脱珪スラグ4が生成する。脱珪処理終了後、脱珪スラグ4を溶銑保持容器1から取り出し、冷却して固化させる。冷却・固化は、溶銑保持容器1から取り出す際に行なってもよいし、容器に収納した後、その容器から取り出す際に行なってもよい。
冷却固化の方法としては、先に述べたように、融体又は過冷却液体温度領域を急冷する場合には、例えば、生成した脱珪スラグ4に高圧空気を吹きつけて飛散させることにより、スラグを冷却するとともに粒状化する方法(風砕法)、生成した脱珪スラグ4に高圧水を吹きつけて飛散させることにより、スラグを冷却するとともに粒状化する方法(水砕法)、生成した脱珪スラグ4を厚鋼板上に流出させ、厚鋼板による強制冷却と空気への放熱によりスラグを冷却する方法、などの方法を採ることができる。また、徐冷する場合には、スラグを滓ポットに受け、その後、スラグ処理場に排滓する。
このような冷却・固化を経て珪酸質肥料用原料である脱珪スラグが得られる。
なお、以上説明した実施形態は脱珪処理を溶銑保持容器1内で行うものであるが、脱珪処理は上記実施形態に限られるものではなく、高炉から出銑され、スキンマにて高炉スラグと分離された後の高炉鋳床樋内又は傾注樋内の溶銑2に酸素ガスや固体酸素源を添加して行なう脱珪処理であってもよい。但し、この場合には、高炉スラグの混入量をリアルタイムで把握することはできないので、経験的に把握される高炉スラグの混入量に基づき造滓剤の添加量を決める必要がある。
また、以上説明した実施形態は取鍋型の溶銑保持容器1を用いた脱珪処理であるが、溶銑保持容器1は上記の取鍋型に限られるものではなく、トーピードカー等のような任意に溶銑保持容器を用いることができる。また、脱珪処理設備の詳細や攪拌ガスの吹き込み方式等も上記実施形態に限定されるものではない。
また、脱珪処理される溶銑は、事前に脱硫処理を施したものであってもよい。
以上のようにして製造される珪酸質肥料用原料は、粒度が適当であればそのまま珪酸質肥料とすることができるが、冷却・固化後の形状が塊状等の場合には、破砕処理及び/又は整粒(篩い分けなどにより粒度調整)を行い珪酸質肥料とする。また、場合によっては他の添加成分を配合して珪酸質肥料としてもよい。
珪酸質肥料用原料の破砕(粉砕)方法に特別な制限はなく、どのような方法を採用してもよい。例えば、ジョークラッシャー、ロッドミル、フレッドミル、インペラブレーカーなどの粉砕機を用いて粉砕処理することができる。また、整粒は任意の篩い分け装置などを用いて行えばよく、珪酸質肥料用原料を粉砕処理した後、整粒を行ってもよい。
また、破砕処理及び/又は整粒された珪酸質肥料用原料は、適当なバインダーを用いた造粒工程を経て珪酸質肥料とすることが好ましく、このようにして造粒された珪酸質肥料は、施肥時の飛散、雨水による流出、地面の通水性や通気性の阻害といった問題を生じにくい。また、形状が規則的で且つ球状に近く、角張っていないため、取扱い性も良好である。
造粒方法に特別な制限はなく、一般的な造粒方法を採用することができるが、例えば、上記粉砕処理によって得られた粉砕物とバインダーとを混合機で混合し、適量の水を加えながら造粒機で造粒し、しかる後、乾燥するという方法を採ることができる。
造粒機としては、一般的に使用されるもの、例えば、回転皿型造粒機、回転円筒型造粒機等を用いることができ、造粒後に所定の粒度範囲に入らないものは直接又は粉砕などの処理をした後に再度混合機に戻し、原料の一部として再利用する連続造粒方法を採ることが好ましい。
図5は、珪酸質肥料用原料の造粒工程の一例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物(珪酸質肥料用原料)25がショベルローダー等によりホッパー26に装入され、計量された粉砕物25がホッパー26からコンベア27を介してドラム式回転型造粒機28に供給される。このドラム式回転型造粒機28には容器30に貯留されたバインダー29も所定量供給され、ドラム式回転型造粒機28が回転することにより粉砕物25とバインダー29とが混合されて造粒される。その後、造粒物はドライヤー31で乾燥され、エレベーター32により篩い装置33に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー34で冷却されて造粒肥料となる。なお、クーラー34で冷却後に篩い分けして造粒肥料とすることも可能である。
図6は、珪酸質肥料用原料の造粒工程の他の例を示すもので、上記粉砕処理によって得られた粉砕物25がホッパー36に装入され、計量された粉砕物25がホッパー36からミキサー39に装入される。また、容器38に貯留されたバインダー37も所定量ミキサー39に装入される。そして、ミキサー39において粉砕物25とバインダー37とが混合され、この混合物が皿形造粒機40に供給され、この皿形造粒機40において造粒される。皿形造粒機40で造粒された造粒物はベルトコンベヤー41に載せられ、後は図5の工程と同様、ドライヤー31で乾燥され、エレベーター32により篩い装置33に供給されて篩い分けされ、さらにクーラー34で冷却されて造粒肥料となる。
造粒工程で用いるバインダーにも特別な制限はなく、例えば、リン酸、粘土、ベントナイト、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、糖蜜、リグニン、硫酸マグネシウム、デンプン等の中から選ばれる1種以上を単独で又は混合して用いることができるが、造粒性と施肥後における肥料粒子の崩壊性の面で、デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンが適しており、これらの中から選ばれる1種以上をバインダーの主成分として用いることが好ましい。
珪酸質肥料用原料を造粒して造粒物である肥料を製造する場合、バインダーに要求される特性としては、▲1▼優れた造粒性が得られること、▲2▼施肥後において肥料粒子(造粒物)が容易に崩壊して土壌中に分散できること、▲3▼製造中及び流通から施肥までの取り扱い中に粒子が崩壊しないような硬度を有すること、▲4▼バインダー成分が土壌を含めた環境に悪影響を与えないこと、などが挙げられ、上記デンプン、硫酸マグネシウム、リグニンはこれらの特性をすべて満足している。また、そのなかでもデンプンを用いた場合には、造粒された肥料粒子の硬度が特に高く、また、デンプンは雨や土壌中の水分で溶解して適度な速度で肥料粒子を崩壊させるため、特に好ましい。また、デンプンは水分を加えることにより糊化し、その後乾燥させることにより固化するので、造粒性にも優れており、さらに、土中微生物等により分解されるので、植物や環境に悪影響を及ぼすこともない。
バインダーとして使用されるデンプンは、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、コメ等を原料としたものが挙げられる。これらのデンプンは、原料によって構成成分であるアミロース(d−グルコースが長い直鎖状に結合したもの)とアミロペクチン(d−グルコースが枝分かれ状に結合したもの)の割合が異なり、モチ米やモチトウモロコシ等ではアミロペクチンの割合が多い。さらに、デンプンの種類としては、そのままの生デンプンでも、熱や酸、アルカリ、塩、酵素等で処理した加工デンプンでもよい。これらのデンプンは、その種類に拘りなく、糊化する性質を有しているものが造粒バインダーとして適している。
このようにして造粒された珪酸質肥料の平均粒径は0.5〜6mmが好ましい。平均粒径が0.5mm未満では施肥する時に風に吹き飛ばされたりして取り扱い性が悪くなり、一方、6mmを超えると均一に散布することが困難になる。より好ましい粒径は1〜5mmである。
なお、本発明の珪酸質肥料用原料であるスラグは、溶銑予備処理工程において特別な処理、例えば、カリ肥料を製造する場合のようにカリ原料を添加したり、或いはこのカリ原料を溶融させるための付加的な工程を行ったりすることなく、本来的な溶銑予備処理工程を実施するだけで得られるものである。
実施例
[実施例1]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.5mass%、珪素;0.25mass%、燐;0.105mass%、硫黄;0.032mass%であり、溶銑温度は1410℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:42mass%、SiO2:33mass%、MgO:7mass%、Al2O3:15mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から360kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.03mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を150Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1900kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.55として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を300kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:900〜920Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:180〜200kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:20〜40kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、10分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.03mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを、溶銑保持容器から鋳鋼製の取鍋(以下、「ノロパン」と記す)内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて1342kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:55.4mass%、塩基度:0.55、珪酸可溶率(可溶性珪酸の全珪酸分に対する比率:S−SiO2/SiO2):39mass%であった。
[実施例2]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.7mass%、珪素;0.24mass%、燐;0.103mass%、硫黄;0.042mass%であり、溶銑温度は1395℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:44mass%、SiO2:35mass%、MgO:6mass%、Al2O3:13mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.12mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を74Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1100kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.75として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を220kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:850〜950Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:200〜240kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:40〜50kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.12mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1337℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを、溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて955kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:41.3mass%、塩基度:0.75、珪酸可溶率:81mass%であった。
[実施例3]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.4mass%、珪素;0.20mass%、燐;0.100mass%、硫黄;0.030mass%であり、溶銑温度は1400℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:42mass%、SiO2:33mass%、MgO:6mass%、Al2O3:13mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から370kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.12mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を55Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を700kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を1.03として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を225kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:600〜650Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:120〜140kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:40〜50kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.12mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1370℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを、溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて768kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:41.0mass%、塩基度:1.03、珪酸可溶率:76mass%であった。
[実施例4]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.5mass%、珪素;0.24mass%、燐;0.105mass%、硫黄;0.041mass%であり、溶銑温度は1392℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:44mass%、SiO2:36mass%、MgO:6mass%、Al2O3:13mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から450kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.12mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を74Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1100kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を1.3として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を513kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:850〜950Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:200〜240kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰のうち250kgを上置き添加するとともに、残りの生石灰(生石灰添加速度:45〜55kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.12mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1337℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて1280kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:31.0mass%、塩基度:1.27、珪酸可溶率:78mass%であった。
[実施例5]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.4mass%、珪素;0.14mass%、燐;0.105mass%、硫黄;0.040mass%であり、溶銑温度は1400℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:43mass%、SiO2:34mass%、MgO:6mass%、Al2O3:12mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から380kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を47Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を604kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を1.6として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を400kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:550〜570Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:110〜130kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:70〜90kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを、溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて941kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:32.3mass%、塩基度:1.62、珪酸可溶率:83mass%であった。
[実施例6]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.2mass%、珪素;0.26mass%、燐;0.100mass%、硫黄;0.038mass%、溶銑温度は1410℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:42mass%、SiO2:34mass%、MgO:7mass%、Al2O3:15mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を131Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1689kgとした。また、珪酸質肥料のMgO含有量を7mass%以上に高めるため、焼成ドロマイトを成分調整剤として189kg添加することとし、さらに、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.5として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を100kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:700〜900Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:160〜180kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:10kg/min)と成分調整剤である焼成ドロマイト粉(焼成ドロマイト粉添加速度:18〜20kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、10分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。なお、焼成ドロマイト189kg中で、MgO分は79kg、CaO分は110kgである。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出し、次いで風砕法により冷却・固化させ、1326kgの粒径3mm以下の粒状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得てこれをそのまま珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を前述の表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:51.1mass%、塩基度:0.50、珪酸可溶率:64mass%であった。
[実施例7]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.2mass%、珪素;0.25mass%、燐;0.100mass%、硫黄;0.038mass%、溶銑温度は1400℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:42mass%、SiO2:34mass%、MgO:7mass%、Al2O3:15mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を439Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1582kgとした。また、珪酸質肥料のMgO含有量を10mass%以上に高めるため、焼成ドロマイトを成分調整剤として343kg添加することとし、さらに、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.66として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を100kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:1470〜1480Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹きつけ、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:310〜320kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:20kg/min)と成分調整剤である焼成ドロマイト粉を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。なお、焼成ドロマイト343kg中で、MgO分は143kg、CaO分は200kgである。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出し、次いで風砕法により冷却・固化させ、1446kgの粒径3mm以下の粒状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得てこれをそのまま珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を前述の表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:44.4mass%、塩基度:0.66、珪酸可溶率:99mass%であった。
[実施例8]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は125トン、溶銑組成は炭素;4.2mass%、珪素;0.18mass%、燐;0.105mass%、硫黄;0.038mass%、溶銑温度は1390℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:43mass%、SiO2:34mass%、MgO:7mass%、Al2O3:12mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を66Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を852kgとした。また、珪酸質肥料のMgO含有量を10mass%以上に高めるため、焼成ドロマイトを成分調整剤として257kg添加することとし、さらに、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.95として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を100kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:800〜900Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:160〜180kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:20kg/min)と成分調整剤である焼成ドロマイト粉(焼成ドロマイト粉添加速度:40〜60kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。なお、焼成ドロマイト257kg中で、MgO分は107kg、CaO分は150kgである。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出し、次いで風砕法により冷却・固化させ、1053kgの粒径3mm以下の粒状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得てこれをそのまま珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を前述の表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:37.3mass%、塩基度:0.95、珪酸可溶率:99mass%であった。
[実施例9]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は125トン、溶銑組成は炭素;4.2mass%、珪素;0.26mass%、燐;0.105mass%、硫黄;0.038mass%、溶銑温度は1390℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:44mass%、SiO2:35mass%、MgO:7mass%、Al2O3:12mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を109Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1407kgとした。また、珪酸質肥料のMgO含有量を10mass%以上に高めるため、焼成ドロマイトを成分調整剤として257kg添加することとし、さらに、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.66として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を100kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:1200〜1400Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:260〜300kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:20kg/min)と成分調整剤である焼成ドロマイト粉(焼成ドロマイト粉添加速度:40〜60kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1390℃であった。なお、焼成ドロマイト257kg中で、MgO分は107kg、CaO分は150kgである。
その後、生成した脱珪スラグを、溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出した。次いで、建屋内に設けられた厚み15〜20mmの厚鋼板で底面及び側面を構築した鉄箱内に脱珪スラグを流し込み、冷却・固化させて1282kgの塊状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得た。この塊状スラグを粒径2mm以下に破砕して珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:45.5mass%、塩基度:0.66、珪酸可溶率:70mass%であった。
[実施例10]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.7mass%、珪素;0.24mass%、燐;0.103mass%、硫黄;0.042mass%であり、溶銑温度は1395℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:43mass%、SiO2:35mass%、MgO:7mass%、Al2O3:12mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.09mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を104Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を1333kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.51として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を145kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:1200〜1300Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:250〜300kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:25〜35kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.09mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1390℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出し、次いで風砕法により冷却・固化させ、1100kgの粒径3mm以下の粒状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得てこれをそのまま珪酸質肥料した。この珪酸質肥料の成分分析値を前述の表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:48.8mass%、塩基度:0.51、珪酸可溶率:99mass%であった。
[実施例11]
図4に示す脱珪処理設備を用い、溶銑の脱珪処理を実施して珪酸質肥料用原料となる脱珪スラグを製造し、この脱珪スラグから珪酸質肥料を得た。
高炉から出銑された溶銑を脱珪処理設備に搬送した。溶銑重量は150トン、溶銑組成は炭素;4.4mass%、珪素;0.16mass%、燐;0.100mass%、硫黄;0.030mass%であり、溶銑温度は1400℃であった。溶銑保持容器内には前工程から高炉スラグ(CaO:43mass%、SiO2:34mass%、MgO:7mass%、Al2O3:12mass%)が流入しており、この高炉スラグ量はスラグ厚みの測定結果から400kgであった。
脱珪処理後の溶銑中珪素濃度の目標値を0.07mass%として酸素ガスと固体酸素源である鉄鉱石焼結粉の添加量を定め、酸素ガス総量を62Nm3、鉄鉱石焼結粉総量を800kgとした。また、生成される脱珪スラグの塩基度の目標値を0.99として造滓剤である生石灰の添加量を定め、生石灰添加量を250kgとした。
脱珪処理は、上吹き酸素ランスから酸素ガス(酸素ガス流量:700〜800Nm3/hr)を溶銑湯面に連続して吹き付け、鉄鉱石焼結粉(鉄鉱石焼結粉添加速度:150〜170kg/min)を連続して上置き添加し、さらに、造滓剤である生石灰(生石灰添加速度:40〜60kg/min)を窒素ガスとともにインジェクションランスにて連続して溶銑中に吹き込み、5分間で脱珪処理を終了した。脱珪処理後の溶銑中珪素濃度は0.07mass%であり、脱珪処理後の溶銑温度は1380℃であった。
その後、生成した脱珪スラグを溶銑保持容器からノロパン内に、滓掻機を用いて一旦掻き出し、次いで風砕法により冷却・固化させ、910kgの粒径3mm以下の粒状スラグ(珪酸質肥料用原料)を得てこれをそのまま珪酸質肥料とした。この珪酸質肥料の成分分析値を表1に示す。表1に示すように、得られた珪酸質肥料は、SiO2含有量:40.6mass%、塩基度:0.99、珪酸可溶率:99mass%であった。
[実施例12]
実施例3,4,6,8の珪酸質肥料と、高炉水砕スラグから得られた珪酸質肥料について、中性域での溶解性を調査した。各珪酸質肥料1gを、リン酸1アンモニウムとリン酸2アンモニウムから調整した0.2Mリン酸塩溶液(pH7)150ml中で振とう抽出した。この抽出は30℃で1時間実施し、ろ過液中の珪酸濃度から中性域での珪酸の溶解率を求めた。その結果を表2に示す。
表2に示すように、中性域(pH7)での溶解率は、高炉水砕スラグから得られた珪酸質肥料が0.1%であるのに対し、本発明例の珪酸質肥料では0.9〜4.3%という高い値が得られている。また、そのなかでも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却(急冷)して得られたスラグからなるものは、特に高い溶解率が得られている。
産業上の利用分野
この発明の珪酸質肥料用原料は、可溶性珪酸の含有量が多く且つアルカリ分が少なく、しかも溶銑予備処理で生成したスラグをそのまま利用できるため極めて安価に製造することができる。このため安価で且つ優れた肥料特性を有する珪酸質肥料の製造に有用なものである。また、この発明の珪酸質肥料用原料の製造方法は、上記スラグを安定して製造できるため、安価で且つ優れた肥料特性を有する珪酸質肥料用原料の製造方法として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、脱珪スラグの塩基度と珪酸可溶率との関係を示すグラフである。
図2は、脱珪スラグの塩基度と可溶性珪酸含有量との関係を示すグラフである。
図3は、図2の塩基度(CaO/SiO2):0.3〜0.7の範囲を拡大して示したグラフである。
図4は、本発明による珪酸質肥料用原料の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
図5は、本発明の珪酸質肥料用原料の造粒工程の一例を示す説明図である。
図6は、本発明の珪酸質肥料用原料の造粒工程の他の例を示す説明図である。
Claims (22)
- 高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、溶銑中の珪素を酸化させることにより生成した珪酸を含み、且つ可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする珪酸質肥料用原料。
- 可溶性珪酸を20mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする請求の範囲1に記載の珪酸質肥料用原料。
- 可溶性珪酸を30mass%以上含有するスラグからなることを特徴とする請求の範囲1に記載の珪酸質肥料用原料。
- 溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.52〜2.0のスラグからなることを特徴とする請求の範囲2に記載の珪酸質肥料用原料。
- 溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.49〜2.0のスラグからなることを特徴とする請求の範囲2に記載の珪酸質肥料用原料。
- 溶銑予備処理工程で回収された後、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して得られたスラグであって、且つ塩基度(CaO/SiO2)が0.50〜1.5のスラグからなることを特徴とする請求の範囲3に記載の珪酸質肥料用原料。
- スラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.24未満であることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4、5又は6に記載の珪酸質肥料用原料。
- スラグの塩基度(CaO/SiO2)が0.50以上、1.24未満であることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4、5又は6に記載の珪酸質肥料用原料。
- スラグのAl2O3含有量が10mass%以下であることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の珪酸質肥料用原料。
- スラグが溶銑脱珪スラグであることを特徴とする請求の範囲1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載の珪酸質肥料用原料。
- 請求の範囲1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に記載の珪酸質肥料用原料からなる又は該珪酸質肥料用原料を主原料としたことを特徴とする珪酸質肥料。
- 珪酸質肥料用原料が破砕処理及び/又は整粒されたものであることを特徴とする請求の範囲11に記載の珪酸質肥料。
- 珪酸質肥料用原料にバインダーを添加して造粒することにより得られた造粒物であることを特徴とする請求の範囲11又は12に記載の珪酸質肥料。
- 高炉溶銑の溶銑予備処理工程において、溶銑に酸素源を供給して溶銑中の珪素を酸化させることにより珪酸を生成させ、該珪酸を含むスラグを回収して固化させることにより、可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグを得ることを特徴とする珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.52〜2.0のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を20mass%以上含有するスラグを得ることを特徴とする請求の範囲14に記載の珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.49〜2.0のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を20mass%以上含有するスラグを得ることを特徴とする請求の範囲14に記載の珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 溶銑予備処理工程で回収された塩基度(CaO/SiO2)が0.50〜1.5のスラグを、少なくとも1300〜1000℃の温度領域を10℃/分以上の冷却速度で冷却して固化させることにより、可溶性珪酸を30mass%以上含有するスラグを得ることを特徴とする請求の範囲14に記載の珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 溶銑にCaO系造滓剤を添加するとともに、その添加量を調整することにより、回収するスラグの塩基度(CaO/SiO2)を調整することを特徴とする請求の範囲14、15、16又は17に記載の珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 溶銑予備処理工程が脱珪処理工程であることを特徴とする請求の範囲14、15、16、17又は18に記載の珪酸質肥料用原料の製造方法。
- 請求の範囲14、15、16、17、18又は19で得られた珪酸質肥料用原料を用いて珪酸質肥料を製造することを特徴とする珪酸質肥料の製造方法。
- 珪酸質肥料用原料を破砕処理及び/又は整粒する工程を有することを特徴とする請求の範囲20に記載の珪酸質肥料の製造方法。
- 珪酸質肥料用原料にバインダーを添加して造粒する工程を有することを特徴とする請求の範囲20又は21に記載の珪酸質肥料の製造方法。
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