JP5134610B2 - 製鋼スラグの炭酸化処理方法および固定床処理装置 - Google Patents

製鋼スラグの炭酸化処理方法および固定床処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、製鉄所で発生する予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグ等のCaOを含有する製鋼スラグを、藻場、漁礁等の海洋資材として活用するにあたり、製鋼スラグからCaOを起因とするアルカリが溶出して海水のpHを上昇させることを防止するために、製鋼スラグを海洋資材として活用する前に炭酸化処理してpH上昇を抑制する製鋼スラグの炭酸化処理方法、およびその炭酸化処理に用いられる固定床処理装置に関するものである。
製鉄所で発生する予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグは、蒸気エージング等を行うことで、道路の路盤材や土木、建築用の材料として好適に用いられてきたが、近年、藻場、漁礁等の海洋資材として活用することも増加してきている。
しかしながら、製鋼スラグにはCaOが含有されており、製鋼スラグをそのまま藻場、漁礁等の海洋資材として用いた場合、製鋼スラグ中の遊離CaOが起因となって海水中にアルカリが溶出することで、周囲の海水のpHを上昇させることがあり、海水の汚染原因となるという問題がある。特に、海水のpHが9.5以上に上昇した場合には、水酸化マグネシウムが析出して海水が白濁することがあり問題となっていた。
製鋼スラグをそのまま藻場、漁礁等の海洋資材として用いた場合、以上のような問題が発生するが、CaOは二酸化炭素と容易に反応して炭酸化カルシウム(CaCO)になるため、製鋼スラグの炭酸化処理技術として以下に示すような提案がなされている。
特許文献1として、CaO分含有廃材および/または鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする石材用原料を、炭酸化反応で固結させることにより塊状石材とする方法が提案されている。具体的には、容器内に水分が添加された石材用原料を装入して原料充填層を形成し、該容器内を閉鎖空間とした状態で容器の底部から炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスからなる原料ガスを吹き込むことにより、主として主原料中に含まれるCaOの炭酸化反応により生成させたCaCOをバインダーとして原料充填層を炭酸固化させ、原料充填層が塊状化した石材を得るという方法である。
また、特許文献2として、製鋼スラグ中に存在するCaO分を炭酸化するに際し、製鋼スラグを機械攪拌を付与しつつ、CO含有ガスを供給して炭酸化反応を行わせる製鋼スラグの処理方法が提案されている。
また、特許文献3として、大気雰囲気下、加圧雰囲気下または水蒸気雰囲気下でエージング処理が施された製鋼スラグに、自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、その水分値よりも少ない値以上の範囲となるように添加する炭酸水量を調整した後に、炭酸ガスを含有し相対湿度が75〜100%のガスを流す製鋼スラグの安定化処理方法が提案されている。
これら特許文献1〜3には、確かにCaOを含有する製鋼スラグ等を炭酸化処理する技術内容が記載されており、これら技術により得られた材料を、藻場、漁礁等の海洋資材として用いた場合、周囲の海水のpHの上昇を抑制する効果が得られることは確かである。しかしながら、特許文献1記載の技術は、炭酸化処理の時間が長く、生産性の低いことが課題となっている。また、特許文献2には、処理時間の短縮化を図ることが可能な有効な技術が記載されているが、重量物であるスラグの機械的に攪拌する必要があり、大がかりな設備と動力が必要となる。また、特許文献3には、処理するスラグの水分量、流通させるガスの湿度を管理して簡易な処理を目指した技術が記載されているが、炭酸化時の発熱による乾燥などで水分量を調整することは、大量処理時には厳しい管理が必要となる。
特開2000−203903号公報 特開2005−200234号公報 特開2005−47789号公報
日本化学会編、「現代界面コロイド化学の基礎」、丸善株式会社、平成9年5月20日、p.113−115
本発明は、これら従来の問題を解決せんとしてなされたもので、アルカリが溶出して海水のpHを上昇させることがない藻場、漁礁等の海洋資材の材料として長期間に亘り安定して活用することができる製鋼スラグを、簡易な手法で作製することができる製鋼スラグの炭酸化処理方法と、その炭酸化処理方法に用いられる固定床処理装置を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、製鋼スラグに二酸化炭素を含有するガスを投入して製鋼スラグの炭酸化処理を行うにあたり、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグを用いることで、固定床方式により炭酸化処理を行うことを特徴とする製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項2記載の発明は、前記製鋼スラグの限界粒子径は、前記製鋼スラグの粒子径と嵩容積の関係から求めた屈曲点であることを特徴とする請求項1に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項3記載の発明は、前記製鋼スラグは、蒸気エージング処理を終了した製鋼スラグであることを特徴とする請求項1または2に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項4記載の発明は、前記製鋼スラグは、その製鋼スラグの限界粒子径以上の目開きのスクリーンで分級された、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項5記載の発明は、前記製鋼スラグが、カルシウムイオンを含有する水溶液によって炭酸化処理前に濡らされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項6記載の発明は、前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、前記製鋼スラグを原料として作製された水溶液であることを特徴とする請求項5に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項7記載の発明は、前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、堆積された製鋼スラグのカルシウムイオンが含有されたドレン水であることを特徴とする請求項6に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項8記載の発明は、前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、回収されたドレン水にカルシウム化合物を添加した水溶液であることを特徴とする請求項6または7に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項9記載の発明は、前記ドレン水に添加されるカルシウム化合物は、製鋼スラグの限界粒子径以上の目開きのスクリーンで分級されて除かれた最小粒子径が限界粒子径未満の製鋼スラグに含有されるカルシウム化合物であることを特徴とする請求項8に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項10記載の発明は、前記製鋼スラグの上面が密閉シートで被覆されると共に、前記密閉シートに形成された開口より排気ダクトを介して炭酸化処理後のガスが排気されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法である。
請求項11記載の発明は、少なくとも三面の側壁を有し、それら側壁で囲まれた空間内に製鋼スラグを堆積させるエージングピットと、前記エージングピット内に製鋼スラグを堆積させるにあたり前記製鋼スラグを分級することで前記エージングピット内に堆積させる最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグを得る分級手段と、前記エージングピット内に堆積された製鋼スラグに上方より水を散布する散水手段と、前記エージングピット内に堆積された製鋼スラグに水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスを供給するガス供給手段を有して構成されることを特徴とする固定床処理装置である。
請求項12記載の発明は、前記エージングピットの底面にはドレン水を回収する水回収手段が設けられていると共に、前記水回収手段で回収したドレン水を貯蔵するタンクが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の固定床処理装置である。
請求項13記載の発明は、前記タンクには、前記水回収手段で回収したドレン水にカルシウム化合物を添加するカルシウム添加手段が備えられていることを特徴とする請求項12に記載の固定床処理装置である。
請求項14記載の発明は、前記散水手段により散布される水は、カルシウムイオンを含有する水溶液であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の固定床処理装置である。
請求項15記載の発明は、前記ガス供給手段から供給されるガスは、水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスであることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の固定床処理装置である。
請求項16記載の発明は、前記ガス供給手段はエージングピットの底面に配置された配管であり、前記一本の配管からは水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスが供給されることを特徴とする請求項15に記載の固定床処理装置である。
請求項17記載の発明は、前記二酸化炭素を含有するガスは、燃焼排ガスであることを特徴とする請求項16に記載の固定床処理装置である。
請求項18記載の発明は、前記分級手段により分級された製鋼スラグは、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグであることを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載の固定床処理装置である。
請求項19記載の発明は、前記分級手段により分級されて除かれた最小粒子径が限界粒子径未満の製鋼スラグは、カルシウム化合物として前記水回収手段で回収したドレン水に添加されることを特徴とする請求項11乃至18のいずれかに記載の固定床処理装置である。
本発明の製鋼スラグの炭酸化処理方法によると、アルカリが溶出して周囲の海水のpHを上昇させ、白濁させることがない藻場、漁礁等の海洋資材の材料として長期間に亘り安定して活用することができる製鋼スラグを、製鋼スラグの最小粒子径を規定するだけの簡易な手法で、炭酸化処理により容易に作製することができる。
また、最小粒子径が限界粒子径の以上の製鋼スラグを用いて炭酸化処理を行うことで、その処理時の固結の生成を抑制することができる。固結が生成するとガスの偏流が発生し、製鋼スラグに未反応の炭酸化部位が発生する。その製鋼スラグを、藻場、漁礁等の海洋資材の材料として用いた場合には、海水のpH上昇を安定して抑制することが困難になるが、固結の生成を抑制できることで、均一な炭酸化処理を行うことができ、その製鋼スラグを、藻場、漁礁等の海洋資材の材料として用いることで、海水のpH上昇を抑制することができる。
また、製鋼スラグの炭酸化処理にあたり、製鋼スラグを事前にカルシウムイオンを含有する水溶液によって濡らすことで、アルカリが溶出して海水のpHを上昇させることがない藻場、漁礁等の海洋資材の材料として長期間に亘り安定して活用することができる製鋼スラグを、より確実に作製することができる。
また、本発明の固定床処理装置を用いて、藻場、漁礁等の海洋資材の材料を作製することで、アルカリが溶出して海水のpHを上昇させることがない藻場、漁礁等の海洋資材の材料として長期間に亘り安定して活用することができる製鋼スラグを作製することができる。また、本発明の固定床処理装置を炭酸化処理に用いることで、製鋼スラグの蒸気エージング処理に加えて、炭酸化処理も実施することができ、蒸気エージング処理を行った製鋼スラグを、炭酸化処理を行う設備に移動させる必要なく、製鋼スラグの炭酸化処理を実施することができる。
本発明の一実施形態に係る固定床処理装置の概要を示す斜視図である。 同実施形態に係る固定床処理装置を示し、製鋼スラグの炭酸化処理においてエージングピット内の製鋼スラグに水を散水する前の状態を示す図1のA−A方向縦断面図である。 同実施形態に係る固定床処理装置を示し、炭酸化処理後のエージングピットからガスを自然換気で排気している状態を示す要部斜視図である。 同実施形態に係る固定床処理装置を示し、炭酸化処理後のエージングピットからガスを強制的に排気している状態を示す図1のB−B方向縦断面図である。 様々な粒子の限界粒子径を示すグラフ図である。 実施例の転炉スラグの炭酸化処理に用いた実験装置を示す説明図である。 炭酸化処理が施された各転炉スラグを海水に浸漬し、周囲の海水のpHの経時変化を測定した結果を示す実施例1に係るグラフ図である。 転炉スラグの粒子径と、転炉スラグの嵩容積、並びに転炉スラグを海水に1000時間浸漬したしたときの周囲の海水のpHとの関係を示す実施例2に係るグラフ図である。 蒸気エージング処理を実施した転炉スラグと、蒸気エージング処理を実施していない転炉スラグの、炭酸化処理時におけるCOガス吸着量を示す実施例3に係るグラフ図である。 炭酸化処理前にカルシウムイオンを含有する水溶液によって濡らした限界粒子径以上の転炉スラグを海水に浸漬し、その周囲の海水のpHの経時変化を測定した結果を示す実施例4に係るグラフ図である。
本発明者らは、製鉄所で発生する予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグを、藻場、漁礁等の海洋資材として活用するにあたり、その製鋼スラグを、海中でアルカリが溶出して海水のpHを上昇させ、また、海水を白濁させることがない材料とすることができる処理方法を見出すために鋭意研究を重ねた。その結果、製鋼スラグに二酸化炭素を含有するガスを投入する炭酸化処理法を採用し、その炭酸化処理を実施する際に最小粒子径(以下、単に粒子径と説明することもある。)が限界粒子径以上の製鋼スラグを用い、固定床方式により炭酸化処理を行うことで、所望の効果を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
また、固定床処理装置を炭酸化処理に用いることで、製鋼スラグの蒸気エージング処理と炭酸化処理を同じ固定床処理装置で実施できることを確認した。
更には、この製鋼スラグを炭酸化処理するにあたり、処理前の製鋼スラグを事前にカルシウムイオンを含有する水溶液で濡らすことで、その製鋼スラグを、藻場、漁礁等の海洋資材として用いた場合に、更に確実に海水へのアルカリの溶出のない材料とすることができ、海水のpH上昇を更に確実に抑制することができることを確認した。
以下、本発明を、実施形態を示す図面に基づいて更に詳細に説明する。
図1〜4は本発明に係る固定床処理装置の概要を示し、特に、図2は製鋼スラグの炭酸化処理においてエージングピット内の製鋼スラグに水を散水する前の状態の固定床処理装置を、図3、4はエージングピットから炭酸化処理後のガスを排気している状態を、夫々示す。また、1は三方に配置される側壁、2はその三面の側壁1で囲まれたエージングピット、3はそのエージングピット2内に堆積された製鋼スラグ、4はエージングピット2の内の製鋼スラグに水を散布する散水ノズル(散水手段)、5はエージングピット2内の製鋼スラグ3に水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスを供給する配管(ガス供給手段)、6はエージングピット2の底面に設けられた溝(水回収手段)、7は溝6で回収された水を貯蔵するタンク、8は堆積された製鋼スラグ3の上面を被覆する密閉シート、9は密閉シート8の開口から炭酸化処理後のガスを排気する排気ダクトである。
以上説明した固定床処理装置を用いて、製鋼スラグ3の炭酸化処理は行われるが、この固定床処理装置では、炭酸化処理の前に蒸気エージング処理も併せて実施される。以下、この固定床処理装置を用いた製鋼スラグ3の蒸気エージング処理と炭酸化処理を、順を追って説明する。
最初に、この固定床処理装置では製鋼スラグ3の蒸気エージング処理が実施されるが、この蒸気エージング処理とは、製鋼スラグ3に水蒸気を吹き込むことにより製鋼スラグ3の膨張を安定化させる促進エージング処理のことをいう。
まず、三方に配置された側壁1で囲まれたエージングピット2内に、分級手段により、限界粒子径以上の目開きのふるい(スクリーン)で分級することで得た最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグ3を、エージングピット2の側壁1が存在しない側からパワーショベル等によって搬入し、堆積させる。尚、この製鋼スラグ3の分級は、JIS A 1102に記載された「骨材のふるい分け試験方法」に準拠して実施することができる。その試験方法には、呼び寸法(目開き)が様々な大きさのふるいを用いてふるい分け(分級)することが記載されているが、例えば、呼び寸法、すなわち、目開きが2mmのふるいを用いて分級することで、そのふるい上に留まった製鋼スラグ3を、最小粒子径が2mm以上の製鋼スラグ3とすることができる。
また、ここで示す製鋼スラグ3の最小粒子径は、製鋼スラグ3の破砕作業の破砕や分級工程での負荷低減を考慮すると、2mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがより好ましい。
この製鋼スラグ3の限界粒子径は、図5に例示するような、製鋼スラグ3の粒子径と嵩容積の関係から求めた屈曲点のことを示し、詳しくは非特許文献1に記載されている。この限界粒子径の前後で、製鋼スラグ3の粒子にかかる引力と斥力の力関係が逆転する。限界粒子径未満では、粒子間の引力が斥力に勝るために粒子が凝集しやすい状態となり、炭酸化処理時に固結しやすくなる。一方、限界粒子径以上では、斥力が引力に勝るために粒子が凝集しにくく、炭酸化処理時の固結を抑制することができる。尚、製鋼スラグ3の限界粒子径は、2mm程度のものが殆どであるが、大きくても5mm程度である。
また、三方に配置された側壁1のうち、両側の側壁1は傾斜面で重ね合わされた上下2段の構成となっており、上部の壁体は下部の壁体により傾斜面で支持されているが、これは製鋼スラグ3の膨張に合わせて側壁1の上部が動くように構成されているためである。
全ての堆積が終了した製鋼スラグ3の上面には、密閉シート8が被せられ堆積された製鋼スラグ3の上面は被覆される。尚、この密閉シート8は保温機能も備えている。堆積された製鋼スラグ3の上面の被覆が完了した後、エージングピット2の底面に配置された複数本の配管5から水蒸気が製鋼スラグ3内に吹き込まれ、蒸気エージング処理が実施される。尚、この配管5の表面にはその全体に亘り多数の細孔が設けられており、これら細孔から水蒸気が、堆積された製鋼スラグ3の全体に亘り満遍なく吹き込まれる。
この蒸気エージング処理が終了した後の製鋼スラグ3に対して、二酸化炭素を含有するガスが投入されて炭酸化処理が実施される。製鉄所で発生する製鋼スラグ3にはCaOが含有されている。CaOは吸湿等によってCa(OH)に変化するが、製鋼スラグ3に二酸化炭素(CO)を含有するガスを投入することで、製鋼スラグ3では、Ca(OH)+CO→CaCO+HOという化学反応が起こり、CaOをCaCOとして安定化させることができる。尚、二酸化炭素を含有するガスとしては、製鉄所内等で発生する燃焼排ガスを用いることができ、資源の再利用につなげることができる。
この製鋼スラグ3の炭酸化処理にあたり、まず、蒸気エージング処理の際に製鋼スラグ3の上面を被覆していた密閉シート8を外し、堆積された製鋼スラグ3の上面に向けて、図2に示すような散水手段である散水ノズル4から水を散布する。この実施形態では、散水ノズル4は、固定床処理装置を跨るようにして設置された架台10の上を走行する台車11に設けられているが、堆積された製鋼スラグ3の上面に向けて散水できるものであれば、単なるホース等どのような形態であっても良い。
図2に示すように、このノズル4で散水する水は、エージングピット2の底面に形成された図4に示すような溝6で回収したドレン水をタンク7に貯蔵しておき、そのタンク7から送水される水であることが好ましい。エージングピット2の底面に形成された溝6で回収したドレン水は、主に蒸気エージング処理の際に製鋼スラグ2を透過し、その製鋼スラグ2のカルシウム成分を含んだカルシウムイオンを含有する水溶液であるが、この炭酸化処理において、製鋼スラグ3を透過した水(カルシウムイオンを含有する水溶液)も含む。
また、タンク7にはドレン水にカルシウム化合物を添加するカルシウム添加手段を備えておくこともできる。このようにカルシウム添加手段を設けることで、ドレン水をより多くのカルシウムイオンを含有する水溶液とすることができる。また、上記したカルシウム化合物としては、分級手段により分級されて除かれた最小粒子径が限界粒子径未満の製鋼スラグ3を用いることができ、資源の再利用につなげることができる。
このように、カルシウムイオンを含有する水溶液を、堆積された製鋼スラグ3や分級手段により分級されて除かれた製鋼スラグ3を原料として作製することで、改めてカルシウムイオンを含有する水溶液を準備する必要がなくなる。
堆積された製鋼スラグ3の上面への散水を全て終了した後、製鋼スラグ3の上面を、再度、密閉シート8で被覆する。その後、エージングピット2の底面に配置された複数本の配管5から、二酸化炭素を含有するガスを製鋼スラグ3内に吹き込む。この配管5は、蒸気エージング処理の際に水蒸気を製鋼スラグ3内に吹き込む配管5と兼用しても良いし、また、二酸化炭素を含有するガス専用の配管5であっても良い。配管5が専用の配管5である場合にも、その配管5の表面にはその全体に亘り多数の細孔が設けられており、配管5が兼用・専用のどちらの場合であっても、配管5の表面に形成された多数の細孔から二酸化炭素を含有するガスが、堆積された製鋼スラグ3の全体に亘り満遍なく吹き込まれる。
堆積された製鋼スラグ3の全体に亘り満遍なく吹き込まれた二酸化炭素(CO)を含有するガスは、製鋼スラグ3に含有されたCaO、特に製鋼スラグ3の表面を覆うCa(OH)と接触し、Ca(OH)+CO→CaCO+HOという化学反応を起こし、製鋼スラグ3の表面等は安定したCaCOで被覆された状態となる。
堆積された製鋼スラグ3を上に向けて透過した炭酸化処理後のガスは、図3および図4に示すように、密閉シート8に形成された開口より排気ダクト9を介して排気される。尚、図3は自然換気によりガスを排気している状態を、図4は機械換気で強制的に排気している状態を、夫々示す。
図3に示す自然換気では、排気ダクト9にCOセンサー12を設けると、炭酸化処理における製鋼スラグのCO吸収量を測定することが可能である。一方、機械換気では、炭酸化処理後の二酸化炭素を含有するガスと共に、大気も吸い込んで併せて排気するため、酸欠状態が発生せず安全な換気法であると考えられる。
以上の蒸気エージング処理、炭酸化処理を実施して得た製鋼スラグ3を、藻場、漁礁等の海洋資材として活用することで、製鋼スラグ3からの溶出成分によって、周囲の海水のpHが上昇すること、更には、周囲の海水が白濁することを抑制することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
実施例1では、製鋼スラグの粒子径の違いによる海水のpHの上昇の程度を確認した。この実施例1では、粒子径が、0.42〜2.36mm(中央値1.39mm)、4.75〜13.0mm(中央値8.88mm)、19.0〜26.5mm(中央値22.75mm)の転炉スラグ3kgを夫々準備し、各転炉スラグに蒸留水100gを散布、混合して、満遍なく転炉スラグを濡らした状態とした。
この転炉スラグを、図6に示す実験装置の内径130mmの反応容器に充填し、反応容器の下方から加湿させたCOガスを投入し、流量1NL/min.で5時間流通させた。
このCOガスの流通により炭酸化処理が施された転炉スラグを、海水に固液比1:5の条件で浸漬し、周囲の海水のpHの経時変化を測定した。その測定結果を図7に示す。
粒子径が、限界粒子径以上の8.88mmと22.75mmの炭酸化処理を施した転炉スラグでは、周囲の海水のpHは9.5程度までしか上昇しなかったのに対し、粒子径が、限界粒子径未満の1.39mmの炭酸化処理を施した転炉スラグでは、周囲の海水のpHが11程度まで上昇した。この測定結果により、粒子径が、限界粒子径以上の炭酸化処理を施した製鋼スラグ(転炉スラグ)を、藻場、漁礁等の海洋資材として活用することで、製鋼スラグからの溶出成分による周囲の海水のpHが上昇を、抑制することができることを確認できた。
(実施例2)
実施例2では、まず、転炉スラグの粒子径と転炉スラグの嵩容積の関係を調査し、その屈曲点、すなわち転炉スラグの限界粒子径を求めた。この調査では、転炉スラグの粒子径と転炉スラグの嵩容積の関係については、転炉スラグの粒子径が、0.25mm(0.075〜0.42mm)、1.39mm(0.42〜2.36mm)、3.56mm(2.36〜4.75mm)、8.88mm(4.75〜13.0mm)、16.0mm(13.0〜19.0mm)、22.75mm(19.0〜26.5mm)のデータを得た。
図8に転炉スラグの粒子径と転炉スラグの嵩容積の関係を示す。図8によると、この転炉スラグの屈曲点(限界粒子径)は、1.39mmと3.56mの間、すなわち、2mm〜3mm付近にあることが分かる。
また、実施例1で求めた転炉スラグの粒子径と、1000時間海水に浸漬した転炉スラグの周囲の海水のpHの関係についても図8に併せて示す。図8によると、1000時間海水に浸漬した転炉スラグの周囲の海水のpHと、転炉スラグの嵩容積の、粒子径に対する関係には同様の傾向があることが分かる。この結果は、製鋼スラグ(転炉スラグ)の限界粒子径は、製鋼スラグの粒子径と嵩容積の関係から求めた屈曲点であり、製鋼スラグの炭酸化処理を行うにあたり、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグを用いるという本発明の要件が、正しいことを示している。
(実施例3)
実施例3では、実施例1での転炉スラグの炭酸化処理時における炭酸カルシウムの増量分からCOガス吸着量を算出した。また、この実施例3では、蒸気エージング処理を終了した転炉スラグのほかに、蒸気エージング処理を実施していない転炉スラグも用いて炭酸化処理時のCOガス吸着量を測定した。その測定結果を図9に示す。
この測定結果によると、炭酸化処理の前に蒸気エージング処理を施すことで、転炉スラグの炭酸化処理時のCOガス吸着量が増加し、転炉スラグの炭酸化が促進されることが分かる。
(実施例4)
実施例4では、炭酸化処理前の製鋼スラグを、カルシウムイオンを含有する水溶液によって濡らすことで、海水のpHの上昇の抑制できることを確認した。
この実施例4では、粒子径が4.75〜35mm限界粒子径以上の転炉スラグ13kgを準備し、その転炉スラグに、カルシウムイオンを含有する水溶液555gを散布、混合して、満遍なく転炉スラグを濡らした状態とした。この転炉スラグを、図6に示す実験装置の内径130mmの反応容器に充填し、反応容器の下方から加湿させたCOガスを投入し、流量0.2NL/min.で5時間流通させた。
このCOガスの流通により炭酸化処理が施された転炉スラグを、海水に固液比1:5の条件で浸漬し、周囲の海水のpHの経時変化を測定した。その試験結果を図12に示す。試験結果によると、周囲の海水のpHは9.5程度までしか上昇しなかった。この結果は、カルシウムイオンを含有する水溶液によって濡らした後に炭酸化処理を実施した製鋼スラグ(転炉スラグ)を、藻場、漁礁等の海洋資材として活用することで、製鋼スラグからの溶出成分によって、周囲の海水のpHが上昇することを抑制することができることを示している。
1…側壁
2…エージングピット
3…製鋼スラグ
4…散水ノズル(散水手段)
5…配管(ガス供給手段)
6…溝(水回収手段)
7…タンク
8…密閉シート
9…排気ダクト
10…架台
11…台車
12…COセンサー

Claims (19)

  1. 製鋼スラグに二酸化炭素を含有するガスを投入して製鋼スラグの炭酸化処理を行うにあたり、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグを用いることで、固定床方式により炭酸化処理を行うことを特徴とする製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  2. 前記製鋼スラグの限界粒子径は、前記製鋼スラグの粒子径と嵩容積の関係から求めた屈曲点であることを特徴とする請求項1に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  3. 前記製鋼スラグは、蒸気エージング処理を終了した製鋼スラグであることを特徴とする請求項1または2に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  4. 前記製鋼スラグは、その製鋼スラグの限界粒子径以上の目開きのスクリーンで分級された、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  5. 前記製鋼スラグが、カルシウムイオンを含有する水溶液によって炭酸化処理前に濡らされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  6. 前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、前記製鋼スラグを原料として作製された水溶液であることを特徴とする請求項5に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  7. 前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、堆積された製鋼スラグのカルシウムイオンが含有されたドレン水であることを特徴とする請求項6に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  8. 前記カルシウムイオンを含有する水溶液は、回収されたドレン水にカルシウム化合物を添加した水溶液であることを特徴とする請求項6または7に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  9. 前記ドレン水に添加されるカルシウム化合物は、製鋼スラグの限界粒子径以上の目開きのスクリーンで分級されて除かれた最小粒子径が限界粒子径未満の製鋼スラグに含有されるカルシウム化合物であることを特徴とする請求項8に記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  10. 前記製鋼スラグの上面が密閉シートで被覆されると共に、前記密閉シートに形成された開口より排気ダクトを介して炭酸化処理後のガスが排気されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれに記載の製鋼スラグの炭酸化処理方法。
  11. 少なくとも三面の側壁を有し、それら側壁で囲まれた空間内に製鋼スラグを堆積させるエージングピットと、前記エージングピット内に製鋼スラグを堆積させるにあたり前記製鋼スラグを分級することで前記エージングピット内に堆積させる最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグを得る分級手段と、前記エージングピット内に堆積された製鋼スラグに上方より水を散布する散水手段と、前記エージングピット内に堆積された製鋼スラグに水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスを供給するガス供給手段を有して構成されることを特徴とする固定床処理装置。
  12. 前記エージングピットの底面にはドレン水を回収する水回収手段が設けられていると共に、前記水回収手段で回収したドレン水を貯蔵するタンクが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の固定床処理装置。
  13. 前記タンクには、前記水回収手段で回収したドレン水にカルシウム化合物を添加するカルシウム添加手段が備えられていることを特徴とする請求項12に記載の固定床処理装置。
  14. 前記散水手段により散布される水は、カルシウムイオンを含有する水溶液であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の固定床処理装置。
  15. 前記ガス供給手段から供給されるガスは、水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスであることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の固定床処理装置。
  16. 前記ガス供給手段はエージングピットの底面に配置された配管であり、前記一本の配管からは水蒸気および/または二酸化炭素を含有するガスが供給されることを特徴とする請求項15に記載の固定床処理装置。
  17. 前記二酸化炭素を含有するガスは、燃焼排ガスであることを特徴とする請求項16に記載の固定床処理装置。
  18. 前記分級手段により分級された製鋼スラグは、最小粒子径が限界粒子径以上の製鋼スラグであることを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載の固定床処理装置。
  19. 前記分級手段により分級されて除かれた最小粒子径が限界粒子径未満の製鋼スラグは、カルシウム化合物として前記水回収手段で回収したドレン水に添加されることを特徴とする請求項11乃至18のいずれかに記載の固定床処理装置。
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