JP4856661B2 - 製鋼スラグの安定化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鉄所などで発生する転炉スラグ、予備処理スラグまたは二次精錬スラグ等の製鋼スラグの安定化処理方法に関する。
製鉄所などで転炉、予備処理炉あるいは二次精錬炉といった各種製鋼炉から発生する製鋼スラグは、その精錬処理中に完全に溶融しきれない成分あるいは精錬後冷却時に晶出する成分を含有する。これらの成分の中で、CaOやMgOなどの水和性成分(以下、それぞれ、「遊離CaO」、「遊離MgO」という。)は、水分と接触して水和する際に、体積が約2倍に増加することに起因するスラグの膨張現象を生じる。また、製鋼スラグ中に含まれる遊離CaOが水に溶出することに起因するpHの上昇や、製鋼スラグが海水中に置かれた場合には、遊離CaOが海水に溶出してpHが増加し、海水中のMg(OH)が析出してくることに起因する白濁現象を生じることから、製鋼スラグを、路盤材、骨材、石材、海底覆砂材といった土木工事用材料として利用を図る際の阻害要因の一つとなっている。
このような製鋼スラグの有する問題のうち、前者の膨張現象については、その原因である遊離CaOや遊離MgOを減少させる安定化処理方法として、大気雰囲気下に数ヶ月から数年暴露させて十分に水和反応を進行させる「大気エージング処理」や、大気圧下または加圧下で強制的に水蒸気と反応させて水和処理反応を促進させる「蒸気エージング処理」や、「加圧エージング処理」が広く知られている。
一方、後者のpH上昇や白濁現象といったアルカリ成分の溶出現象については、上記のエージング処理を施しても、残存する遊離CaOのみならず、エージング後の水和処理生成物であるCa(OH)も水に溶出し、アルカリ溶出源となり得るため、エージング処理のみではスラグから水へのアルカリ溶出現象を防止することができない。そのため、このような遊離CaOやCa(OH)等の石灰成分を水に対して不溶化する安定化処理方法として、従来から、製鋼スラグに炭酸ガスを含むガス(以下、「炭酸ガス含有ガス」という。)を流すことにより、石灰成分を炭酸化する炭酸化処理が行われている。
このような炭酸化処理としては、例えば、未炭酸化Caを含む固体粒子(例えば、スラグ)の集合体が水分を含んだ状態で充填された任意の大きさの反応槽内に、炭酸ガス含有排ガスを導入して炭酸ガスを吸収固定させる際に、充填層内での排ガスの吹き抜けを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
ところが、特許文献1に記載の技術では、反応槽からのガスの吹き抜けを抑制するために、(a)振動装置を付設し、(b)反応槽の内壁面を傾斜させ、(c)反応槽内部の水平断面形状を円形状等に構成し、(d)反応槽上部に排ガス導入部、底部に排ガス排出部を設けているものの、複数の反応容器を多段に配置しなければならないため、大量のスラグの処理には適さない、という問題があった。なお、特許文献1に記載の技術では、CaOやCa(OH)を含む固体粒子に適当な水分の存在下で、より好ましくは固体粒子の表面付着水を介して排ガスを接触させることにより、COを固体粒子に吸収固定するという記載があるが、本発明者らの検討によれば、このような表面付着水がスラグ粒子間の空隙を埋めてしまうとその部分にガスが流れにくくなり、炭酸化反応の速度が遅くなるという知見も得られている。
そこで、本発明者らは、既に、上記のエージング処理が施された製鋼スラグに、粉体群がペースト状の流動性を有する状態を形成するような、該製鋼スラグの粉末のまわりに存在する状態の自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、該水分値よりも10質量%少ない値以上、という最適な含水条件下で炭酸ガスを流すことにより、製鋼スラグの粒同士を固結させることなく炭酸化処理する製鋼スラグの安定化処理方法を提案している(例えば、特許文献2を参照)。
特開2001−252525号公報 特許第3828897号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の製鋼スラグの安定化処理方法においても、特に、製鋼スラグの粒子のサイズが大きい場合には、アルカリ溶出現象を防止するという観点から、スラグの内部まで十分に炭酸化反応を進行させることが必要であり、この場合には、安定化処理に要する時間及び炭酸ガスの反応効率の点でさらに改善の余地があった。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エージング処理を行った製鋼スラグに炭酸ガス含有ガスを流すことにより炭酸化処理を行う製鋼スラグの安定化処理方法において、製鋼スラグの安定化処理を比較的短時間で行うことを可能にするとともに、炭酸ガスの反応効率を従来よりもさらに向上させることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭酸化処理の際に、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気の温度変化が1.2℃/hr以下の状態となった場合に炭酸ガスの供給量を増加させることにより、炭酸ガスの反応効率を従来よりもさらに向上させることができ、これにより、比較的短時間で、スラグの内部まで十分に炭酸化反応を進行させることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、大気雰囲気下、加圧雰囲気下または水蒸気雰囲気下でエージング処理が施された製鋼スラグに、粉体群がペースト状の流動性を有する状態を形成するような、該製鋼スラグの粉末のまわりに存在する状態の自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、該水分値よりも10質量%少ない値以上の範囲となるように添加する水分量を調整した後に、相対湿度が75%〜100%の炭酸ガス含有ガスを流すことにより、前記製鋼スラグの粒同士を固結させることなく炭酸化処理を行う製鋼スラグの安定化処理方法であって、前記炭酸化処理の際に、前記製鋼スラグを含む周囲の雰囲気における単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下となった場合に、前記製鋼スラグ中の一部を選択的にガスが流れる吹き抜け現象が起こらない限界の供給量以下となる範囲内で炭酸ガスの供給量を増加させる製鋼スラグの安定化処理方法が提供される。
また、前記単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下の状態となった場合に、前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスを回収し、当該回収したガスを、前記炭酸化処理に用いる前記炭酸ガス供給ガスとして再利用することにより、炭酸ガスの供給量を増加させてもよい。
この場合に、前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスの炭酸ガス濃度を測定し、当該炭酸ガス濃度が5体積%以上のときに、前記回収したガスを再利用してもよい。
また、前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスを回収し、前記回収したガスの相対湿度が75%〜100%となるように加湿した後に、前記回収したガスを再利用してもよい。
また、水分量を調整後、前記炭酸ガス含有ガスを流す際の前記製鋼スラグを含む周囲の雰囲気の温度が、常温以上、80℃以下となるように、前記吹き抜け限界以下となる範囲内の前記炭酸ガス含有ガスの供給量を制御してもよい。
また、前記製鋼スラグとして、粒径が1mm以下のものが5質量%〜20質量%、粒径が1mm〜5mmのものが15質量%〜30質量%、粒径が5mm超のものが50質量%〜80質量%であるスラグを用いることができる。
以上のような本発明によれば、前記炭酸化処理後の前記製鋼スラグ中の遊離CaOの含有量を、0.6質量%以下とすることができる。
本発明によれば、エージング処理を行った製鋼スラグに炭酸ガス含有ガスを流すことにより炭酸化処理を行う製鋼スラグの安定化処理方法において、炭酸化処理の際に、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気の温度変化が1.2℃/hr以下の状態となった場合に炭酸ガスの供給量を増加させることにより、比較的短時間で、スラグの内部まで十分に炭酸化反応を進行させることが可能となる。
また、本発明によれば、安定化処理に用いる炭酸ガス含有ガスとして工場から排出しているガス中の炭酸ガスを用いることができ、炭酸ガスの反応効率を従来よりもさらに向上させることができるので、排ガス中のCOの大気への放散を従来よりもさらに抑制することができる、という副次的効果も得られる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る製鋼スラグの安定化処理方法は、大気雰囲気下、加圧雰囲気下または水蒸気雰囲気下でエージング処理(大気エージング、加圧エージングまたは蒸気エージング)が施された製鋼スラグに、最適なスラグ含水条件下で炭酸ガスを含有するガス(例えば、工場からの排ガス)を流すことにより製鋼スラグの炭酸化処理を行うものである。
本発明では、まず、炭酸化処理を行う前に、炭酸化処理を行う製鋼スラグ(例えば、高炉スラグ、予備処理スラグ、二次精錬スラグ等)の有する凡その炭酸ガス吸収能力を事前に把握する。このように、スラグの有する炭酸ガス吸収能力を事前に把握しておくことで、把握した炭酸ガス吸収能力の限界までスラグに炭酸ガスを吸収させた時点を、凡その炭酸化処理の終了時点と判断することができる。具体的には、例えば、製鉄所で発生する普通鋼の粒度分布は、その用途(路盤材用材料等)によりある範囲に規定されているため(粒径1mm以下のものが5質量%〜20質量%、粒径1mm〜5mmのものが15質量%〜30質量%、粒径5mm超のものが50質量%〜80質量%)、その粒度構成と、スラグ成分の分析を行うことで、スラグの有する凡その炭酸ガス吸収能力を把握することができる。
以下、図1〜図3を参照しながら、製鋼スラグの有する炭酸ガス吸収能力の把握方法の一例について説明する。なお、図1は、一般的な普通鋼スラグの粒度分布例を示すグラフであり、図2は、スラグ中の遊離CaO含有率(質量%)とスラグの炭酸ガス吸収可能量(質量換算)との関係の一例を示すグラフであり、図3は、スラグ中の遊離CaO含有率(質量%)とスラグの炭酸ガス吸収可能量(体積換算)との関係の一例を示すグラフである。
まず、製鋼スラグの粒度分布を確認する方法として、製鋼スラグの篩い分け試験を行う場合を例に挙げて説明する。この篩い分け試験では、例えば、製鋼炉(転炉、予備処理炉、二次精錬炉等)から採取した3種類の製鋼スラグ(Aスラグ、Bスラグ、Cスラグ)を、JIS Z 8801に規定する網篩いの予備寸法で、31.5mm、19.0mm、13.2mm、4.75mm、2.36mm、0.425mm、0.075mmの各篩いで篩い分けを行う。その結果得られた関係を図1に示す。なお、図1の横軸は、篩い目(mm)を示し、横軸は篩い目を通過したスラグの質量百分率(%)を示している。この結果から、製鉄所で発生する普通鋼スラグの粒度分布が、例えば図1の破線で示す範囲内にあることがわかる。
次に、上記の篩い分け試験後のスラグについて、各粒径ごとに炭酸化反応を行わせ、反応の進行に伴う質量変化を測定する。この炭酸化反応の処理条件としては、例えば、篩い分け試験後の各スラグともその水分含有量を、粉体群がペースト状の流動性を有する状態を形成するような、該製鋼スラグの粉末のまわりに存在する状態の自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、該水分値よりも5〜8質量%少ない状態に調整し、スラグに供給する炭酸ガス含有ガスとして、市販の純炭酸ガス(純度99体積%以上)を用い、これを事前に水中にバブリングすることで相対湿度を100%に調整した上で、スラグ1トン当たり6Nm/hrの流量で供給しながら10時間保持する、といった条件を設定する。また、炭酸化反応の進行に伴う質量変化としては、例えば、所定時間ごとにスラグの質量変化率を測定し、実験開始時のスラグ量で割り戻した値とすることができる。
また、篩い分け試験に使用するスラグについて、スラグ成分(組成)の分析を行う。この分析方法としては、例えば、遊離CaOの分析にはエチレングリコール抽出法ICP発光分光分析を、他の成分の分析には蛍光X線分析(JIS K 0119)を用いることが出来る。遊離CaOの分析において同時に遊離CaOを抽出する方法としてTBP(トリブロムフェノール)法等があり、抽出が正しく出来ればいずれの方法を用いても良い。スラグ成分の分析結果の一例を下記表1に示す
このようにして、スラグの粒径とスラグ中に含まれる炭酸ガスと反応する成分(例えば、遊離CaO、遊離MgO、Ca(OH)、Mg(OH)等)の量に応じて、スラグが吸収可能な炭酸ガス量を把握することができる。把握されたスラグ中の、例えば遊離CaOの含有率(質量%)から、該スラグが吸収可能な炭酸ガス量を算出した一例を図2及び図3に示す。
この図2及び図3に示したグラフを用いて使用するスラグの粒径や組成等の条件に基づいて、スラグの有する凡その炭酸ガス吸収能力を事前に把握することができる。この場合、炭酸ガス吸収能力の限界まで炭酸ガスをスラグに吸収させた状態が、スラグ内部の石灰分の炭酸化反応が十分に進んだ状態とみなすことができるので、製鋼スラグの炭酸化反応の終了時点を容易に判断することができる。
次に、本発明では、以上のようにして把握されたスラグの炭酸ガス吸収能力を有する製鋼スラグの含水率や、この製鋼スラグに供給する炭酸ガス含有ガスの流量や成分を制御する。具体的には、例えば、既設の蒸気エージング設備を用いて、スラグの粒度分布から炭酸化反応に適した含水条件に制御したスラグを積載し、積載したスラグの底部から炭酸ガス含有ガスを供給する。この際、積載したスラグに、極力均等に炭酸ガス含有ガスが流れる(上昇する)ように、炭酸ガス含有ガスの供給量を制御する。
本発明における炭酸化反応に適したスラグの含水条件は、上記特許文献2に記載されているように、エージング処理が行われた製鋼スラグに、粉体群がペースト状の流動性を有する状態を形成するような、該製鋼スラグの粉末の周囲に存在する状態の自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、該水分値よりも10質量%少ない値以上の範囲となるように水分を添加する場合である。
ここで、粉末に水を添加していくと、しばらくの間は粉分が水を吸収する状態となるが、粉体工学的に、この状態の水を拘束水という。粉末への添加水分量がある程度以上になると、もはや粉末が水を吸収しきれずに水が粉末の周りに存在する状態となるが、この状態の水を自由水という。この自由水が存在すると、粉体群がペースト状の流動性を有する状態となる。
本発明におけるスラグの含水条件を上記のような範囲としたのは、自由水が存在し始める水分値以上となるように添加水分量を調整すると、炭酸化速度が低下し、自由水が存在し始める水分値よりも10質量%超少ない範囲に添加水分量を調整しても、炭酸化処理の効率が低下するためである。好ましくは、自由水が存在し始める水分値よりも2〜9質量%少ない範囲に、さらに好ましくは、5〜8質量%少ない範囲に添加水分量を調整することが好適である。
なお、実際の製鋼スラグは均一な粒度ではなく、40mm程度以下の各種粒径のスラグが集合しており、この粒度分布は、精錬プロセスや冷却プロセス、地金処理除去プロセスといったスラグが発生するプロセスによっても異なる。
この粒度分布やスラグの性状によって、スラグが含有できる水分量が異なることから、自由水が存在し始める水分値については、それぞれのスラグの粒度分布に応じて、粉状または細粒状のスラグが多い場合であれば「フロー値」(JIS R2521 耐火物用アルミナセメントの物理試験方法またはJIS R5201 セメントの物理試験方法)の測定方法にて、また、40mm程度以下の粗粒状のスラグが含まれる場合には「スランプ値」(JIS A1101 コンクリートのスランプ試験方法)の測定方法によって求めることができる。
また、炭酸ガス含有ガスからスラグに水分を継続的に供給するという観点から、スラグに流す炭酸ガス含有ガスの相対湿度を75%以上(〜100%)とすることが好ましい。より好ましくは、乾燥理論に基づき、部分的に乾燥したスラグへの水分の補給の観点から、相対湿度は高い方がよく、90%以上であることが好適である。なお、炭酸ガス含有ガスの相対湿度は、事前に、一段または多段の水槽などに吹き込んで水蒸気を飽和させるか、あるいは、専用の容器内でミスト状の水蒸気と混合することなどにより、容易に調整することができる。
本発明に係る製鋼スラグの安定化処理に使用される炭酸ガス含有ガスとしては、市販の炭酸ガスまたは炭酸ガスに空気や窒素もしくはアルゴンガスを混合したものを用いることができる。ただし、実際に現場で行われる安定化処理については、例えば、製鉄所内の各種工場から排出されている排ガスを用いることが効率的である。代表的な排ガスとしては、石灰を焼成するキルン工場の排ガス(CO濃度が約20体積%)や加熱炉排ガス(CO濃度が約7体積%)や発電工場排ガス(CO濃度が約15体積%)等が挙げられる。
炭酸ガス含有ガス中の炭酸ガス濃度が低いと、当然のことながら炭酸化速度は低下するが、CO濃度が低いほど炭酸化に用いられる効率は高くなることが実験からも確認できている。ただし、炭酸化処理時間は当然延びるため、後述するように、本発明では、炭酸ガス含有ガスの反応の効率をさらに向上させて、製鋼スラグの安定化処理を従来よりもさらに短時間で行うようにしている。
本発明に係る製鋼スラグに供給する炭酸ガス含有ガスの供給量は、吹き抜け限界以下となる範囲内である必要がある。ここで、「吹き抜け限界」とは、ガスの供給量が過度になると、スラグ中の通気抵抗が低い部分に選択的にガスが流れて、いわゆる吹き抜けてしまう状態が生じるが、この吹き抜けてしまう状態が生じない限界の供給量のことである。このような範囲内で炭酸ガス含有ガスを供給することにより、スラグの炭酸化反応が起こらない部分が生じて不均一となってしまうことを抑制できる。
具体的には、本発明者らが、これまでに多々行ってきた実機規模での実験結果から、スラグ中の水分量を調整後、炭酸ガス含有ガスを流す際の製鋼スラグを含む周囲の雰囲気の温度を、常温以上、80℃以下とし、かつ、スラグへの炭酸ガス含有ガスの供給量を、100(Nm/hr)/t−slag以下とすることによって、吹き抜け限界以下となる範囲内に制御することができることがわかっている。炭酸ガス含有ガスの供給量を上記のように制御する理由を以下に述べる。
すなわち、上記特許文献2にも記載されているように、炭酸ガス含有ガスを流す流量は、あまり極端に炭酸化が進行せず、付随的に、発熱反応である炭酸化反応の反応熱によるスラグを含む周辺の温度上昇も小さく、また、ガスそのものによるスラグの乾燥を防ぎ、逆に、水蒸気を含むガスからスラグに水分の供給が行われるように制御することが好ましい。
ここで、乾燥理論に基づけば、粉体周囲の風速が20cm/sec以上に確保されると安定に乾燥できるとの知見があり、本発明では、逆にスラグ粒周囲のガス流速は20cm/sec未満、ガスからの水分供給の観点から、好ましくは10cm/sec以下に制御することが望まれる。しかし、実際には、スラグの充填状況に伴う圧力損失やガス流れの不均一性などから、このガス流速を制御することは非常に困難である。従って、安定化処理中の製鋼スラグを含む雰囲気の温度を測定し、この温度を、常温以上、80℃以下、水への炭酸ガスの溶解度の観点からいえば、好ましくは40℃以下となるようにするとともに、実機規模での実験から知見した100(Nm/hr)/t−slag以下に炭酸ガス含有ガスの流量を制御することが現実的である。なお、常温とは、通常、25℃程度を意味するが、地域や季節によるバラつきの上下限として、−10℃以上、40℃以下を本発明では常温とみなすこととする。
また、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気温度は、熱電対、あるいは市販の温度センサ等によって測定することができる。製鋼スラグを含む周囲の温度が常温未満になった場合には、炭酸ガス含有ガスの流量を増加し、その温度が80℃を超えた場合には、炭酸ガス含有ガスの流量を減少させるように制御することが好ましい。上記ガス流量を増加させると、発熱反応である炭酸化反応が進行して温度が上昇し、上記ガス流量を減少させると、炭酸化反応の反応速度が小さくなり温度が下降するためである。
また、スラグの内部まで十分に炭酸化反応を進行させるという観点から、炭酸化処理の開始から完了までのトータルの時間を10時間超とすることが好ましい。
以上のようにして、製鋼スラグの含水率や、この製鋼スラグに供給する炭酸ガス含有ガスの流量や成分を制御することにより、比較的短時間でスラグの内部まで十分に炭酸化反応を進行させ、製鋼スラグの安定化処理を完了させることができる。
しかし、本発明者らの更なる研究の結果、スラグと炭酸ガスとの反応(吸収)挙動が大きく3段階に分かれるという知見が得られた。すなわち、スラグと炭酸ガスとの反応は、積載されたスラグ全体に炭酸ガス含有ガスが行き渡る期間(以下、「I期」という。)から、スラグ表層近傍で遊離CaOやCa(OH)等の炭酸化反応が進行する期間(以下、「II期」という。)を経て、スラグの内部で炭酸化反応が進行する期間(以下、「III期」という。)へと移行する、という知見が得られた。本発明者らは、さらに、各期間における反応機構を検討した結果、I期では炭酸化反応の速度が非常に速く、I期からII期に移行する際に反応速度が大きく低下し、II期では徐々に反応速度が低下し、III期では、炭酸化反応がほぼ定常的な状態となるということが判明した。特に、炭酸化反応の反応速度、すなわち、炭酸ガスの吸収速度が遅くなるIII期以降は、供給する炭酸ガス含有ガス中の炭酸ガスの一部が未反応のままスラグ層を通過してしまうため、炭酸化反応の反応効率が著しく低下するという知見も得られた。
そこで、本発明に係る製鋼スラグの安定化処理方法おいては、製鋼スラグの炭酸化処理の際に、炭酸化反応の反応速度が遅くなるIII期に移行した場合には、炭酸ガスの供給量を増加させることにより、炭酸化反応の反応効率を向上させて、炭酸化処理の時間を短縮している。
ここで、本発明においては、上記「III期」への移行を、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気における単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下となったときと定義している。以下、この理由について、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、図4及び図5は、各種スラグによる炭酸ガス吸収挙動の一例を示すグラフである。
本発明者らは、下記表2に示す組成を有するスラグA〜C、各10kgを用いて、時間の経過に伴う炭酸ガス吸収量(g/kg−slag)やスラグを含む周囲の雰囲気温度(スラグ内雰囲気温度)の変化を確認する実験を行った。本実験では、スラグへの添加水分量として、自由水が存在し始める水分値が約12質量%であったため、該水分値よりも10質量%少ない値以上である5〜8質量%とし、炭酸化反応に必要な炭酸ガス流量(原単位)を0.1(l/min)/kg−slagに統一した。また、炭酸化処理を行うスラグとして、スラグA,B,Cともに、粒径が25mm篩い下のものを使用した。
その結果、まず、炭酸ガス吸収量については、図4に示すように、炭酸ガス含有ガスを供給し始めてから約60分経過までは、いずれのスラグにおいても炭酸ガス吸収量が急激に増加して炭酸化反応の反応速度が速いことや、その度合いがスラグ中のf−CaOの量に応じていることがわかる。また、約60分経過後から約180分経過までは、炭酸ガス吸収量の増加の度合いが緩やかになってきており、炭酸化反応の反応速度が約60分経過までと比べて大きく低下していることがわかる。さらに、約180分経過後は、炭酸ガス吸収量の増加が極めて小さくなっていることがわかる。
この際のスラグ内雰囲気温度については、図5に示すように、炭酸ガス含有ガスを供給し始めてから約60分経過までは、各スラグにおいて急激に上昇していることがわかる(ただし、スラグAについては、反応速度が速く、途中から温度が低下し始めている)。また、約60分経過後から約180分経過までは、スラグ内雰囲気温度が徐々に低下していることがわかる。さらに、約180分経過後は、スラグ内雰囲気温度がほぼ一定となっていることがわかる。なお、約180分経過後は、スラグA,B,Cの全てにおいて、5分当たりのスラグ内雰囲気の温度変化が0.1℃以下、すなわち、1時間当たりのスラグ内雰囲気の温度変化が1.2℃以下となっていることが確認されている。
このように、スラグ内雰囲気温度が、初期の段階では急激に上昇し、その後温度が低下し、さらに見かけ上、温度がほぼ一定の状態になるという経過をたどるのは、本発明者らは、以下の理由によると推定している。すなわち、I期(図5で約60分経過まで)の段階では、炭酸化反応の反応速度が非常に速く、発熱量が多いため、発熱量の方が炭酸ガス含有ガスの流れによる放散熱等の抜熱量よりも大きく、II期(図5で約60分経過後約180分経過まで)の段階では、反応速度の低下に伴い、徐々に抜熱量が大きくなり、III期(図5で約180分経過後)では、炭酸化反応がスラグの内部に移行して反応速度が非常に遅くなる結果、スラグの蓄熱分によって放熱と抜熱がバランスする間は温度がほぼ一定の状態を呈し、この後は徐々に全体の温度が減少していくためであると考えられる。
以上の結果から、本発明においては、スラグ内雰囲気温度が急激に上昇する初期(炭酸ガス含有ガスを供給し始めてから約60分経過まで)の段階をI期、スラグ内雰囲気温度が低下する中期(約60分経過後から約180分経過まで)の段階をII期、スラグ内雰囲気温度がほぼ一定の状態となる後期(約180分経過後)の段階をIII期と判断することとした。そして、上述したように、III期においては、スラグA,B,Cの全てにおいて、スラグ内雰囲気の温度変化が1.2℃/hr以下となっていることが確認されていることから、III期への移行の判断を、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気における単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下となったときとしている。
ここで、炭酸化処理のII期において途中で採取したスラグについて、スラグ断面のEPMA(Electron Probe Micro−Analysis)による炭酸化状態の調査を行った結果の一例を図6に示す。図6において、グレーの部分が炭素が存在する部分、すなわち、炭酸化反応が完了した部分であり、白い部分が炭素が存在しない部分、すなわち、炭酸化が行われていない部分を示している。図6に示すように、II期では、主に、スラグの表層部分でのみ炭酸化反応が進行していることがわかる。
ところで、上述したように、III期へ移行した場合に炭酸ガスの供給量を上げることのみでも、炭酸化反応の効率向上効果や、それによる炭酸化処理時間の短縮化を実現することはできるが、III期においては、スラグを通過した未反応の炭酸ガスが発生するため、この未反応の炭酸ガスをそのまま外部へ放出せずに、回収して再利用することにより、炭酸ガスを有効利用し、より効率よくスラグに炭酸ガスを吸収させることが可能となる。
そこで、本発明では、炭酸化反応がIII期へ移行し、製鋼スラグを含む周囲の雰囲気における単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下となった場合に、炭酸化処理後の炭酸ガス含有ガスを回収し、当該回収したガスを、炭酸化処理に用いる炭酸ガス供給ガスとして再利用することにより、炭酸ガスの供給量を増加させるようにしてもよい。
このような炭酸ガス含有ガスの再利用は、例えば、図7に示すような既存の蒸気エージング設備を利用した炭酸化反応の反応装置を用いることにより実現することができる。以下、図7を参照しながら、炭酸ガス含有ガスの再利用方法について説明する。なお、図7は、既存の蒸気エージング設備を利用した炭酸化反応の反応装置の構成例を示す説明図である。
図7に示すように、炭酸化反応の反応装置100としては、例えば既設の蒸気エージング設備を利用でき、反応装置100全体がドーム101で覆われている。このドーム101内には、擁壁103が設けられており、この擁壁103に囲まれたスラグ載置部105内に製鋼スラグSが積載されている。スラグ載置部105の底部には、炭酸ガス含有ガスを供給する複数のガス供給配管107が設けられている。また、製鋼スラグSを含む周囲の雰囲気の温度及び湿度を測定するために、製鋼スラグSの上面側に複数の温湿度センサ109が付設されている。ドーム上部には、ドーム内雰囲気ガス中のCO濃度や相対湿度を随時測定する分析装置108も付設されている。
また、ドーム101の側壁には、炭酸ガス含有ガスを供給したり、炭酸化反応後の炭酸ガス含有ガスを排出したり、炭酸ガス含有ガスを回収して循環させたりするための配管111が連結されており、配管111とドーム101の内部とが連通するように構成されている。この配管111には、その途中に各種バルブや測定装置等が設けられている。具体的には、配管111のドーム101の手前(底部側)には、炭酸ガス含有ガスの流量を制御するためのブロア113が設けられている。また、配管111の上部側にはドーム101からの処理後のガスを吸引するための吸引ポンプ115が設けられている。さらに、配管111の底部のブロア113と上部の吸引ポンプ115の間には、回収した炭酸化反応後のガスに加湿する加湿装置117が設けられている。この吸引ポンプ115と加湿装置117との間には、回収した炭酸ガス含有ガスのうち再利用する炭酸ガス含有ガスの流量を制御するためのバルブ119が設けられている。また、吸引ポンプ115を通過した処理後の炭酸ガス含有ガスを外部へ放出するための放散バルブ121も設けられている。
本発明においては、例えば、このような構成を有する反応装置100を用いて、製鋼スラグSの炭酸化処理を行っている。具体的には、外部から炭酸ガス含有ガス(例えば、製鉄所構内の排ガス等)を、ブロア113により流量を制御しつつ、ドーム101内に炭酸ガス含有ガスを供給する。供給された炭酸ガス含有ガスは、ガス供給配管107を通って、製鋼スラグSの底部から供給される。炭酸ガス含有ガスは、製鋼スラグS内を、スラグ中の遊離CaO等と炭酸化反応しながら上昇し、製鋼スラグSの上方に抜ける。このとき、温湿度センサ109により、スラグ内雰囲気温度や相対湿度等を常に測定しておく。
ここで、上述したように、製鋼スラグSに供給する炭酸ガス含有ガスの供給量は、スラグ内雰囲気温度により制御しているが、このスラグ内雰囲気温度は、複数の温湿度センサ109のうち、最も温度が低いところ、すなわち、炭酸化反応が最も遅いところに位置する温湿度センサ109から得られた測定値を用いることが好ましい。これは、炭酸化反応が製鋼スラグS全体において十分に進んでいることを担保するためである。
次に、温湿度センサ109により測定された温度を観察し、炭酸化反応がIII期に移行したと判断された場合には、炭酸反応後にドーム101の上部に抜けた炭酸ガス含有ガスが回収される。回収された炭酸ガス含有ガスは、加湿装置117により、加湿が行われた後に、ブロア113で流量を制御しつつ、ドーム101内に供給され、製鋼スラグSの炭酸化処理に再利用される。
このようにして炭酸ガス含有ガスを回収して再利用する場合、炭酸化処理後の炭酸ガス含有ガスの炭酸ガス濃度を分析装置108のCO分析計を用いて測定し、測定した炭酸ガス濃度が5体積%以上の場合に、炭酸ガス含有ガスを回収し、回収したガスを再利用することが有効である。以下、この理由について図8を参照しながら説明する。なお、図8は、炭酸化反応の進行度合いを示す炭酸化率と時間との関係の一例を示すグラフである。なお、ここでいう炭酸化率は、スラグ中の含有されるCaOのうち、炭酸化反応によりCaCOに変化したCaO量の炭酸化処理前のCaO量に対する質量比率で表した。
本発明者らは、炭酸ガス含有ガス中に含まれる炭酸ガス濃度と炭酸化反応の進行度合いとの関係を調査するために、以下のようなラボ実験を行った。すなわち、粒径1mm以下で水分量が15質量%のスラグを100g用い、相対湿度100%の純炭酸ガスを0.5l/minの流量でスラグに流した。このときのスラグ内雰囲気温度は20℃であった。
その結果、図8に示すように、COの分圧Pcoが0.05以上の場合、すなわち、炭酸ガス含有ガス中のCO濃度が5体積%以上であれば、最終的な炭酸化率が80%を超えることがわかった。このことから、炭酸ガス含有ガス中のCO濃度が5質量%以上であれば、炭酸ガス含有ガスを回収して循環させることにより、炭酸化反応を十分に進めることができるので、炭酸ガス含有ガス中の炭酸ガスを有効利用することができる。従って、炭酸ガス含有ガス中のCO濃度が5体積%以上であれば、炭酸ガス含有ガスを回収して循環させることが有効であるといえる。
また、回収した炭酸ガス含有ガスを、単にそのまま製鋼スラグの炭酸化処理に再利用するだけでは、上述したような製鋼スラグに水分を継続的に供給するという観点から望ましくない。従って、本発明においては、炭酸化処理後の炭酸ガス含有ガスを回収し、回収したガスの相対湿度が75%〜100%となるように加湿した後に、回収したガスを再利用することが好ましい。このような回収した炭酸ガス含有ガスの加湿は、例えば、回収した炭酸化処理後の炭酸ガス含有ガスを、図7に示したような加湿装置を通すことで実現することができる。
製鉄所において、製鋼工程で発生した普通鋼の製鋼スラグ約50トンを熱滓状態で回収し、大気中にて自然冷却後、30mmの篩いにて篩い分けを行い、篩い下スラグの処理前の成分ならびに粒度分布を測定した。このスラグの平均組成は先に表1に示した通りであり、エチレングリコール抽出法ICP発光分光分析で分析した遊離CaOは4質量%であった。また、粒径1mm以下のスラグ含有率は約10質量%、1mm〜5mmの含有率は25質量%、5mm超の含有率は65質量%であった。
該スラグを適量サンプリングし、JIS A1101 コンクリートのスランプ試験方法により、自由水が0質量%となる水分値を求めたところ、含水率で約12%であることが判明した。そこで、スラグを約10トンずつ小分けにした後、スプレーで水を添加して含水率を6%に調整した。これらのスラグを、底部にガス供給管を設置してメッシュ状の金網を敷いた、縦2m、横3m、高さ2mの専用装置に入れ、スラグの上部、約10箇所に、温度と湿度を測定できるワイヤレス式のセンサをセットした。さらに、この装置全体を、ドーム内のガスを回収できるポンプを接続した簡易のドームで覆い、このポンプからの配管を、ガスの循環や放散ができるように3方バルブに接続し、加湿装置を介して底部のガス供給管に接続した。また、ドームの上部には、雰囲気ガス中のCO濃度と相対湿度を測定できる分析計を配置した。
こうして準備の整った製鋼スラグに、製鉄所の排ガスを模擬して純炭酸ガスに一部窒素ガスを添加することで炭酸ガスの濃度を20体積%に調整した炭酸ガス含有ガスを、相対湿度100%に調整し、当初、60Nm/hr(スラグ原単位換算で6(Nm/hr)/t−slag)で供給して、炭酸化処理を開始した。この炭酸化処理の開始に伴い、スラグ中にセットした温湿度センサでスラグ中雰囲気の温度と湿度を、また、ドーム上部に設置した分析計でドーム内のCO濃度と相対湿度の測定を実施した。この結果、底部から供給する炭酸ガス含有ガスがスラグ内を上昇することに伴い、炭酸化反応に伴う発熱で、スラグ中の温度上昇(I期)が確認でき、約2時間後にスラグ内温度が低下し始めた(II期)。この間、ドーム内上部のCO濃度はほぼ0体積%であり、全ての炭酸ガスがスラグの炭酸化に消費されていることが確認された。
炭酸化処理の開始から4時間が経過すると、スラグ中の雰囲気温度の変化が、1.0〜0.5℃/hrと徐々に減少してきたため(III期)、この時点で、ドーム内上部のガス中のCO濃度が5質量%を超えたので、吸引ポンプを稼動してドーム内ガスを回収し、加湿を行った上で元の炭酸ガス含有ガスに戻すことで、総ガス流量を120Nm/hr(スラグ原単位換算で12(Nm/hr)/t−slag)に増加させ、その後、20時間、トータルで24時間の炭酸化処理を行った。また、比較例としては、上述と全く同じ条件で炭酸化処理を開始し、4時間が経過した後も、ドーム内のガスを回収することなく、当初からの条件のまま、トータル24時間の炭酸化処理を実施した。
このようにして炭酸化処理を実施した、本発明の実施例および比較例のスラグを採取し、エチレングリコール抽出法ICP発光分光分析で遊離CaOを分析した結果、本発明の実施例では、遊離CaOが0.4質量%であり、極めて安定に炭酸化処理が施されているのに対して、比較例では、遊離CaOが0.8質量%と、炭酸化処理は施されているものの、実施例と比較すると、同一の処理時間内で分析値に有意な差がある結果となった。
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
一般的な普通鋼スラグの粒度分布例を示すグラフである。 スラグ中の遊離CaOの含有率(質量%)から、該スラグが吸収可能な炭酸ガス量(質量換算)を算出した一例を示すグラフである。 スラグ中の遊離CaOの含有率(質量%)から、該スラグが吸収可能な炭酸ガス量(体積換算)を算出した一例を示すグラフである。 各種スラグによる炭酸ガス吸収挙動の一例を示すグラフである。 各種スラグによる炭酸ガス吸収挙動の一例を示すグラフである。 スラグ断面のEPMA(Electron Probe Micro−Analysis)による炭酸化状態の調査を行った結果の一例を示す写真である。 既存の蒸気エージング設備を利用した炭酸化反応の反応装置の構成例を示す説明図である。 酸化反応の進行度合いを示す炭酸化率と時間との関係の一例を示すグラフである。
符号の説明
100 炭酸化反応装置
101 ドーム
103 擁壁
105 スラグ載置部
107 ガス供給配管
108 雰囲気ガス分析装置
109 温湿度センサ
111 配管
113 ガス供給用ブロア
115 吸引ポンプ
117 複合装置
119 循環用バルブ
121 放散用バルブ

Claims (7)

  1. 大気雰囲気下、加圧雰囲気下または水蒸気雰囲気下でエージング処理が施された製鋼スラグに、粉体群がペースト状の流動性を有する状態を形成するような、該製鋼スラグの粉末のまわりに存在する状態の自由水が存在し始める水分値未満で、かつ、該水分値よりも10質量%少ない値以上の範囲となるように添加する水分量を調整した後に、相対湿度が75%〜100%の炭酸ガス含有ガスを流すことにより、前記製鋼スラグの粒同士を固結させることなく炭酸化処理を行う製鋼スラグの安定化処理方法であって、
    前記炭酸化処理の際に、前記製鋼スラグを含む周囲の雰囲気における単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下となった場合に、前記製鋼スラグ中の一部を選択的にガスが流れる吹き抜け現象が起こらない限界の供給量以下となる範囲内で炭酸ガスの供給量を増加させることを特徴とする、製鋼スラグの安定化処理方法。
  2. 前記単位時間当たりの温度変化が1.2℃/hr以下の状態となった場合に、前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスを回収し、当該回収したガスを、前記炭酸化処理に用いる前記炭酸ガス供給ガスとして再利用することにより、炭酸ガスの供給量を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の製鋼スラグの安定化処理方法。
  3. 前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスの炭酸ガス濃度を測定し、
    当該炭酸ガス濃度が5体積%以上のときに、前記回収したガスを再利用することを特徴とする、請求項2に記載の製鋼スラグの安定化処理方法。
  4. 前記炭酸化処理後の前記炭酸ガス含有ガスを回収し、前記回収したガスの相対湿度が75%〜100%となるように加湿した後に、前記回収したガスを再利用することを特徴とする、請求項2または3に記載の製鋼スラグの安定化処理方法。
  5. 水分量を調整後、前記炭酸ガス含有ガスを流す際の前記製鋼スラグを含む周囲の雰囲気の温度が、常温以上、80℃以下となるように、前記吹き抜け限界以下となる範囲内の前記炭酸ガス含有ガスの供給量を制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製鋼スラグの安定化処理方法。
  6. 前記製鋼スラグとして、粒径が1mm以下のものが5質量%〜20質量%、粒径が1mm〜5mmのものが15質量%〜30質量%、粒径が5mm超のものが50質量%〜80質量%であるスラグを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製鋼スラグの安定化処理方法。
  7. 前記炭酸化処理後の前記製鋼スラグ中の遊離CaOの含有量は、0.6質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製鋼スラグの安定化処理方法。


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