JP7014234B2 - 2-シアノアクリレート化合物、及び、接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な2-シアノアクリレート化合物、及び、接着剤組成物に関する。
2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、主成分である2-シアノアクリレート化合物が有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、いわゆる、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。
従来の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物に関する技術の例としては、特許文献1~5に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、シアノアクリレートに水溶性ポリオキシアルキレングリコール系溶剤と水溶性界面活性剤を配合してなる硬化後の水溶解性を改良したシアノアクリレート接着剤組成物が記載されている。特許文献2には、2-シアノアクリル酸エステルと、特定構造のカーボネート化合物と、アニオン重合開始剤とを、含有し、カーボネート化合物の含有量が、2-シアノアクリル酸エステルとカーボネート化合物との合計量に対して15~60質量%である発泡スチロール用2-シアノアクリレート系接着剤組成物が記載されている。特許文献3には、2-シアノアクリレートにカーボネート化合物を配合した、切削加工性に優れた接着剤組成物が記載されている。特許文献4には、硬化速度調整、接着強度調整、あるいは希釈のため、2-シアノアクリレート化合物に、種々のカーボネート化合物を配合することが記載されている。特許文献5には、2-シアノアクリレートにエチレンカーボネートを配合することで、接着力調整および可撓性付与が可能であることが記載されている。
特許文献1:特開2000-73015号公報
特許文献2:特開2014-19863号公報
特許文献3:特開平4-70323号公報
特許文献4:特開昭62-153370号公報
特許文献5:特開昭64-83057号公報
本発明が解決しようとする課題は、新規な2-シアノアクリレート化合物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物を提供することである。
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物。
Figure 0007014234000001
式(1)中、Lは、炭素数1~20の二価の連結基を表し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R~Rのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
<2> Lが、炭素数1~20のアルキレン基、又は、2つ以上のアルキレン基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1つ以上の構造とを組み合わせた炭素数1~20の二価の基である<1>に記載の2-シアノアクリレート化合物。
<3> Lが、炭素数1~20のアルキレン基である<1>又は<2>に記載の2-シアノアクリレート化合物。
<4> R~Rがそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基である<1>~<3>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
<5> R~Rが、水素原子である<1>~<4>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
<6> 前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物が、下記式(2)で表される2-シアノアクリレート化合物である<1>~<5>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
Figure 0007014234000002
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物。
<8> 水易解体性接着剤組成物である<7>に記載の接着剤組成物。
本発明によれば、新規な2-シアノアクリレート化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物を提供することができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
(式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物)
本発明の2-シアノアクリレート化合物は、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物である。
Figure 0007014234000003
式(1)中、Lは、炭素数1~20の二価の連結基を表し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R~Rのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、新規な化合物であり、また、モノマーとしてだけでなく、水等のアニオン重合開始種によりアニオン重合可能な反応性の高い化合物であり、接着剤組成物の接着成分として好適に用いることができる。
式(1)におけるLの炭素数は、反応性、硬化後の水による剥離又は除去性(単に「水剥離性」ともいう。)、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(1)におけるLは、化合物の安定性、及び、反応性の観点から、炭素数1~20のアルキレン基、又は、2つ以上のアルキレン基とエーテル結合及びエステル結合よりなる群から選ばれた1つ以上の構造とを組み合わせた炭素数1~20の二価の基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましく、メチレン基、又は、エチレン基であることが特に好ましい。
また、前記アルキレン基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
式(1)における、R~Rはそれぞれ独立に、化合物の安定性、及び、反応性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、前記アルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
式(1)におけるR~Rの炭素数はそれぞれ独立に、化合物の安定性、及び、反応性の観点から、0~20であることが好ましく、0~8であることがより好ましく、0~4であることが更に好ましく、0又は1であることが特に好ましい。
また、式(1)におけるR~Rのうち2つ以上が結合して環構造が形成される場合、前記環構造は、脂肪族環であっても、芳香族環であっても、複素脂肪族環であってよく、更に縮環した構造であってもよいが、脂肪族環であることが好ましく、5又は6員の脂肪族環であることがより好ましい。また、式(1)におけるR~Rは、2つ以上が結合して環構造が形成されていないことが好ましい。
式(1)におけるL及びR~Rは、置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。中でも、アルキル基、ハロゲン原子、又は、アルコキシ基が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましく挙げられる。
また、前記置換基が更に置換基を有していてもよい。
中でも、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物としては、反応性、水剥離性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、下記式(2)又は式(3)で表される2-シアノアクリレート化合物が好ましく、下記式(2)で表される2-シアノアクリレート化合物が特に好ましい。
Figure 0007014234000004
式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の合成方法としては、特に制限はなく、公知の合成手段を組み合わせて、合成することができる。
例えば、シアノ酢酸エステル化合物と、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドとを、塩基触媒存在下で脱水縮合反応させることにより縮重合体を得、これを加熱し解重合することにより、α位にエチレン性不飽和結合を有する2-シアノアクリレート化合物に誘導する方法が挙げられる。また、シアノ酢酸エステル化合物は、例えば、シアノ酢酸に対応するアルコール化合物を酸触媒存在下で反応させエステル化することにより、容易に作製することができる。
別の方法としては、例えばエチル-2-シアノアクリレートなど、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物とは別の2-シアノアクリレート化合物とジエン化合物とを反応させて付加体とし、アルカリ加水分解することで付加体のカルボン酸へと誘導し、これと対応するアルコール化合物とを酸触媒存在下で反応させエステル化した後、適切な温度で熱分解することで、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。また、2-シアノアクリレート化合物とジエン化合物との付加体と対応するアルコール化合物とを、ルイス酸触媒存在下でエステル交換反応に付し、得られたエステル化合物を熱分解することによっても、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。
更に別の方法としては、塩化シアノアクリル酸と対応するアルコール化合物とを反応させることによっても、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。
式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、接着剤組成物に好適に用いることができ、また、カーボネート環構造を有するため、従来の2-シアノアクリレート化合物よりも極性が高く、水易解体性接着剤組成物に特に好適に用いることができる。
なお、前記水易解体性接着剤組成物とは、硬化した後における水による剥離又は除去性に優れる接着剤組成物である。
水易解体性接着剤組成物として用いる場合、水易解体性の観点から、後述する水溶性化合物を含むことが好ましい。
接着剤組成物に用いる場合、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の含有量は、水易解体性、接着性及び硬化性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、1質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上50質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが特に好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが最も好ましい。
接着剤組成物に用いる場合、水溶性化合物を更に含有することが好ましい。
また、本発明において、「水溶性化合物」とは、水と任意の混合比で混和し溶液となるか、又は、水に対する溶解度(25℃)が1g/100g以上の化合物を意味する。
前記水溶性化合物の溶解性パラメータ(SP値)は、水易解体性の観点から、8.0(cal/cm0.5以上23.4(cal/cm0.5以下であることが好ましく、8.3(cal/cm0.5以上15.0(cal/cm0.5以下であることがより好ましく、9.0(cal/cm0.5以上14.0(cal/cm0.5以下であることが更に好ましく、8.0(cal/cm0.5以上12.0(cal/cm0.5以下であることが特に好ましい。
本発明に用いられる水溶性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。前記低分子化合物は、分子量1,000未満であることが好ましく、前記高分子化合物は、重量平均分子量1,000以上であることが好ましく、重量平均分子量1,000以上1,000,000以下であることがより好ましい。
なお、本発明における高分子化合物の数平均分子量(Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定するものとする。
水溶性化合物としては、特に制限はないが、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エステル結合、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることが好ましく、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることがより好ましい。
また、水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等が好ましく挙げられる。
中でも、水溶性化合物としては、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、γ-ブチロラクトン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
また、汎用性の観点からは、水溶性化合物としては、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
本発明の接着剤組成物に用いられる水溶性化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性化合物の含有量は、水易解体性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上35質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
接着剤組成物に用いる場合、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物及び前記水溶性化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、従来、2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物に配合して用いられている安定剤、硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤は、2-シアノアクリレート系接着剤組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、及びオニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着剤組成物に配合してもよい粒子は、接着剤組成物を使用した際の接着剤層の厚さを調整するためのものである。
前記粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることが更に好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2-シアノアクリレート化合物の含有量を100質量部とした場合に、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることが更に好ましい。前記0.1質量部~10質量部の範囲であると、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
本発明における粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
前記接着剤組成物は、特に制限はなく、種々の用途に用いることができる。
中でも、水易解体性接着剤組成物として用いる場合、前記水易解体性接着剤組成物は、接着した箇所の接着剤組成物又は不要な箇所に付着し硬化した接着剤組成物を、水により簡便に剥離又は除去することができるため、例えば、仮固定用水易解体性接着剤組成物、又は、教材用水易解体性接着剤組成物として好適に用いることができる。前記水易解体性接着剤組成物は、熱水又は加圧熱水により短時間で容易に剥離又は除去可能であることは勿論、例えば、常温(15℃~25℃)からぬるま湯程度の温度(30℃~45℃)範囲の水に浸漬等することにより、剥離又は除去することが可能である。そのため、例えば、手指などの不要な箇所に付着し硬化しても、水により容易に剥離することができる。また、常温からぬるま湯程度の温度範囲の水により、剥離又は除去することが可能であるため、工業的用途の仮固定に用いた場合には、剥離に必要な熱量を低減することができ、コストの削減に繋がる。
ここで、工業的用途の仮固定としては、例えば、半導体ウェハ等の各種電子材料、レンズ等の光学材料と、研磨用定盤等の各種治具との仮固定等が挙げられる。
また、前記接着剤組成物により接着する被接着材としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、また、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。また、前記接着剤組成物は、固体状の任意の形状のものを接着することができる。
また、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物、及び、前記接着剤組成物の保管方法としては、特に制限はなく、公知のシアノアクリレートの保管方法を用いて保管すればよい。例えば、無水不活性ガス化での保管、遮光密閉容器中での保管等が好適に挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
(実施例1:前記式(2)で表される化合物(グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート)の合成)
エチル-2-シアノアクリレート(125g、1mol)をトルエン(200mL)に溶解、氷浴で冷却した。これにシクロペンタジエン(70.1g、1.06mol)を、内温25℃以下を維持しながら加えた。室温にして更に1時間撹拌した後、トルエン、過剰のシクロペンタジエンを減圧留去した。減圧蒸留(87℃,30Pa)して、エチル-2-シアノアクリレート/シクロペンタジエン付加体180g(収率94%)を得た。
エチル-2-シアノアクリレート/シクロペンタジエン付加体(191g、1mol)のトルエン(200mL)溶液に、水酸化カリウム(84.2g、1.5mol)を蒸留水(500mL)に溶かした水溶液を1時間かけて加え、その後60℃で1時間撹拌した。35%塩酸(314g、3.0mol)を加えてpH1とし、分液漏斗に移して水層を分離、トルエン層を水洗した。トルエンを減圧留去し、2-シアノアクリル酸/シクロペンタジエン付加体を124g(収率76%)得た。
2-シアノアクリル酸/シクロペンタジエン付加体(163g、1mol)、グリセリンカーボネート(130g、1.1mol)、p-トルエンスルホン酸水和物(9.5g、0.05mol)をトルエン(1L)に加え、加熱還流しながら生成する水を分離した。8時間、脱水量が理論量の80%(15.3mL)に達した。この反応液を室温に戻すと固体が析出した。析出した固体をろ別しトルエンで洗浄、得られた固体をメタノールで再結晶して、グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート/シクロペンタジエン付加体を79g(収率30%)得た。
グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート/シクロペンタジエン付加体(26.3g、0.1mol)を100Pa以下の減圧下、150℃で熱分解して、グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート19.0g(収率96%)を得た。
得られた式(2)で表される化合物のH及び13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
H-NMR(CDCN):δ=7.05(s,1H),6.82(s,1H),5.06-5.01(m,1H),4.60-4.32(m,4H)
13C-NMR(CDCN):δ=161.2,155.8,145.9,116.4,115.3,74.8,66.9,66.1
本発明の2-シアノアクリレート化合物は、接着剤組成物の硬化成分として好適に用いることができる。例えば、いわゆる、瞬間接着剤として一般家庭用、教材用、建築材料用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。
また、本発明の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、同種の被接着材間だけでなく、特に異種の被接着材間(例えば、金属と樹脂との間)の接着に好適に使用することができる。
更に、本発明の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、硬化後における極性を有する被接着材への密着性にも優れる。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物。
    Figure 0007014234000005

    式(1)中、Lは、炭素数1~アルキレン基を表し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を
  2. ~Rが、水素原子である請求項に記載の2-シアノアクリレート化合物。
  3. 前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物が、下記式(2)又は式(3)で表される2-シアノアクリレート化合物である請求項1又は請求項2に記載の2-シアノアクリレート化合物。
    Figure 0007014234000006
  4. 前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物が、下記式(2)で表される2-シアノアクリレート化合物である請求項1又は請求項2に記載の2-シアノアクリレート化合物。
    Figure 0007014234000007
  5. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物。
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