JP7013033B2 - インクジェットインク、印刷物の製造方法および印刷物 - Google Patents
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Description
従来、金属光沢がある画像を設ける方法としては「箔押し」が主流である。しかし、箔押しは工程が煩雑となりがちであり、また、少量多品種への対応に不向きであるといったデメリットがある。よって、比較的簡便かつ少量多品種への対応に向いているインクジェット方式により、金属光沢がある画像を設けることが望まれる。
特許文献1の記載によれば、この組成物を用いることで、金属光沢性に優れた画像を記録することができる。
特許文献2の記載によれば、この組成物を用いることで、硬化性および経時安定性に優れ、かつ、優れた柔軟性と高い膜硬度とが両立された金属光沢画像が得られる。
しかし、本発明者らは、従来のアルミニウム顔料を含むインクジェットインクには、以下のような要改善点があることを見出した。
(1)インクジェットヘッドから吐出された後の硬化性(硬化速度)を維持しつつ、使用する前の貯蔵安定性を高めることが難しい。これは、アルミニウム顔料がインク中で触媒的に働いて、硬化性成分の一部を硬化させてしまうためと推測される。
(2)物品表面に金属光沢がある画像を設けた後、経時によりその金属光沢が失われやすい(見た目が黒っぽく変色しやすい)。これは、経時によるアルミニウムの化学変化(酸化、腐食等)によるものと推測される。
第1:金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
第2:金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
第3:金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、光硬化性である、インクジェットインク。
上記第1、第2または第3のインクジェットインクを、基材表面に吐出して画像を形成する画像形成工程と、
吐出された前記インクジェットインクを硬化させる硬化工程と、
を含む、印刷物の製造方法
が提供される。
上記第1、第2または第3のインクジェットインクの硬化物を備える印刷物
が提供される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本実施形態のインクジェットインクは、金属インジウムおよび/または金属クロムを含む金属顔料を含有する。
詳細なメカニズムには不明点もあるが、おそらくは、金属インジウムおよび/または金属クロムは、従来のアルミニウム顔料と比べると、インクジェットインク中の硬化性成分と相互作用しにくく、硬化反応を誘発しにくいため、インク使用前の貯蔵安定性が高まるものと推定される。
また、金属インジウムおよび/または金属クロムは、インクジェットインクの硬化反応を特に阻害しないため、インクの硬化性(硬化速度)が維持されつつ、使用前の貯蔵安定性が高まるものと推定される。
以下では、金属インジウムおよび/または金属クロムを含む金属顔料のことを、単に「金属顔料」と表記することがある。
金属顔料は、金属インジウムおよび/または金属クロムを含む限り限定されない。換言すると、金属顔料は、インジウムおよび/またはクロムを含み、かつ、光輝性が認められるものである。光輝性の観点から、通常、金属顔料の少なくとも一部は、酸化物、窒化物、水酸化物などの化合物ではなく、インジウムおよび/またはクロムの単体である。ただし、このことは、金属顔料が酸化物、窒化物、水酸化物などの化合物を全く含まないことを意味しない。光輝性かつ/または金属光沢がある限りにおいて、金属顔料の一部(全部ではない)は、酸化物、窒化物、水酸化物などであってもよい。また、金属顔料は、インジウムおよび/またはクロムを含む合金であってもよい。
金属顔料のZ平均粒子径は、好ましくは50~500nm、より好ましくは100~400nmである。Z平均粒子径がある程度大きいことにより、最終的な画像の金属光沢を一層高めることができる。また、Z平均粒子径が大きすぎないことにより、ヘッドからのインクジェットインクの吐出がよりスムーズとなる傾向がある。また、ヘッドの詰まりが抑えられるとも考えられる。
光散乱法による測定が可能な測定装置としては、例えば、マルバーン社製のゼータサイザーナノZSを挙げることができる。測定は、通常、湿式で行われる。つまり、金属顔料を溶剤で分散させたものを測定サンプルとすることができる。
「鱗片状」とは、平板状、湾曲板状等の形状を含む概念を意味する。具体的には、ある1つの方向から観察した際(平面視した際)の面積が、その方向と直交する方向から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいう。
別観点として、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムにおいて、平均長径÷平均厚みの計算で求められるアスペクト比は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。アスペクト比の上限は特にないが、例えば100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である(平均長径と平均厚みの求め方については後述する)。
上記において、「平均長径」とは、電子顕微鏡を用いて金属顔料を撮影し、撮影された画像中の任意の50個の金属顔料(鱗片状の粒子)の長径を平均した値である。「平均厚み」についても同様である。
特に、金属インジウムや金属クロムの比重は比較的大きいため、金属顔料の表面を修飾して金属顔料の沈降を抑え、最終的な画像の金属光沢を高めることが好ましい。
2つのRは、互いに独立に、水素原子、1価の有機基または下記一般式(2)で表される基であり、かつ、2つのRのうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、
Lは、2価の連結基であり、
*は、他の化学構造との連結手である。
R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基であり、
R2は、水素原子またはメチル基である。
1価の有機基の炭素数は特に限定されない。炭素数は例えば1~20、具体的には1~10である。
金属顔料の沈降をより抑える観点からは、Rは、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基であることが好ましく、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基であることがより好ましい。
L全体としての炭素数は特に限定されない。例えば、Lがアルキレン基である場合、好ましい炭素数は1~12、より好ましい炭素数は1~6である。Lが脂環式基である場合、好ましい炭素数は3~12である。Lが芳香族基である場合、好ましい炭素数は6~20である。
素材の入手性、製造の容易性などの観点から、R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基である(R1が部分構造として左記アルキル基を含む基ではなく、R1がそれ全体として左記アルキル基である)ことが好ましい。
これらの中でも、原料の入手容易性などから、アルキルシリル基を含む基またはポリシロキサン構造を含む基が好ましい。ここで、ポリシロキサン構造としてより具体的には、ポリジメチルシロキサン構造(-Si(CH3)2-O-)などのポリジアルキルシロキサン構造、ポリジフェニルシロキサン構造(-Si(C6H5)2-O-)などを好ましく挙げることができる。
R1のフッ素原子含有基は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたもの(パーフルオロ基)であってもよいし、水素原子の一部のみがフッ素原子で置換されたものであってもよい。金属顔料の沈降をより抑える観点からは、R1のフッ素原子含有基は、水素原子の50mol%以上がフッ素原子で置換されたものであることが好ましい。
まず、原料の金属顔料(以下の化学式では「原料粒子」と表記)と、下記一般式(1a)で表されるシランカップリング剤とを反応させて、金属顔料の表面に-NH2構造を導入する。シランカップリング剤の具体例としては、後述の「さらに他の成分」の項で挙げているアミノシランが挙げられる。
R3は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、アルキル基またはアシル基であり、
R4は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、アルキル基であり、
mは1~3の整数、nは0~2の整数、m+nは3であり、
Lは、2価の連結基である。
R3の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、-CO-R'で表されるアシル基(R'は例えばここで挙げられたアルキル基のいずれかである)などを挙げることができる。
R3として好ましくはメチル基またはエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
R4の具体例としては、R3の具体例として挙げたアルキル基を挙げることができる。
R4として好ましくはメチル基またはエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
nは好ましくは0または1、より好ましくは0である。
原料の金属顔料の表面に導入された-NH2に、特定官能基を有する化合物を結合させる。より具体的には、原料粒子の表面に導入された-NH2に、以下一般式(2a)で表される化合物をマイケル付加させる。これにより、一般式(2a)で表される化合物の炭素-炭素二重結合の部分と-NH2とが反応して結合する。
このような手順とは別に、(i)まず、一般式(1a)で表されるシランカップリング剤と、一般式(2a)で表される化合物とを反応させ、(ii)次に、(i)で得た反応物を原料の金属顔料と反応させることで、金属顔料を表面修飾してもよい。
また、本実施形態のインクジェットインクは、性能を過度に損なわない範囲において、金属インジウムおよび/または金属クロムを含む金属顔料とは異なる顔料(金属顔料または非金属顔料)を含んでもよい。もちろん、本実施形態のインクジェットインクは、そのような顔料を含まなくてもよい。
本実施形態のインクジェットインクは、典型的には光硬化性または熱硬化性であり、好ましくは光硬化性である。
以下、(i)におけるカチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤、(ii)におけるラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤について説明する。
カチオン重合性化合物としては、典型的には、オキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらのうち2種以上を併用してもよい。例えば、カチオン重合型のインクは、オキセタン化合物とエポキシ化合物の両方を含んでもよい。異なる2種以上のカチオン重合性化合物を併用することで、硬化性と貯蔵安定性をより高度に両立させることができる。
本実施形態においては、特に、カチオン重合性化合物は、エポキシ基および/またはオキセタニル基を有する化合物を含むことが好ましい。
エポキシ化合物としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、一分子中に2~6個のエポキシ基を有する化合物がより好ましい。
エポキシ化合物については、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
オキセタン化合物については、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
ビニルエーテル化合物については、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
オキセタン化合物とエポキシ化合物とを併用する場合、エポキシ化合物の比率(質量%)、すなわち、{エポキシ化合物の量÷(オキセタン化合物の量+エポキシ化合物の量)}×100は、好ましくは15~85質量%、より好ましくは20~80質量%である。エポキシ化合物の割合がある程度大きいことで、より良好な硬化性を得やすい。また、エポキシ化合物の割合が大きすぎないことで、貯蔵安定性がより良好となる傾向がある(増粘が抑えられやすい)。
カチオン重合開始剤としては、光照射などの外部刺激によりカチオンを発生して上記のカチオン重合性化合物を重合させることが可能なものであれば任意のものを用いることができる。例えばオニウム塩、より具体的にはスルホニウム塩誘導体やヨードニウム塩誘導体などの公知の光カチオン重合開始剤を用いることができる。
具体的な化合物としては、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス( ペンタフルオロフェニル) ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン-鉄錯体等を挙げることができる。
本実施形態のインクジェットインク中のカチオン重合開始剤の量は、特に限定されない。その量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して、通常0.5~15質量部、好ましくは1.0~10質量部、より好ましくは2~8質量部、特に好ましくは3~6質量部である。カチオン重合開始剤の量を適切に調整することで、貯蔵安定性と硬化性をより高度に両立させることができる。
ラジカル重合性化合物としては、一分子中に重合性の炭素-炭素二重結合を1つまたは2つ以上有する化合物(ラジカル重合性モノマー)を挙げることができる。ラジカル重合性化合物は、好ましくは、一分子中に(メタ)アクリロイル基を1つまたは2つ以上有する化合物である。
リン酸基を有するモノマーとしては、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジ(2-メタアクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェートなどを挙げることができる。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸などを挙げることができる。
ラジカル重合開始剤は、光照射などの外部刺激によりラジカルを発生し、上記のラジカル重合性モノマーを重合させることが可能なものであれば、特に限定されない。
ラジカル重合開始剤の具体例としては、α-ヒドロキシケトン光開始剤、α-アミノケトン光開始剤、ビスアシルホスフィン光開始剤、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルビフェニルホスフィンオキシド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、モノ-およびビス-アシルホスフィン光開始剤、ベンジルジメチル-ケタール光開始剤、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]等が挙げられる。
本実施形態のインクジェット中のラジカル重合開始剤の量は、特に限定されない。その量は、ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、通常0.5~15質量部、好ましくは1.0~10質量部である。
本実施形態のインクジェットインクは、上記に加え、任意の成分を含んでもよい。任意成分としては、分散剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、保存安定剤、溶剤(典型的には有機溶剤)等が挙げられる。本実施形態のインクジェットインクは、これらのうち一種または二種以上を含むことができる。
シランカップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、スルフィドシラン等を挙げることができる。特に、エポキシシラン(エポキシ基と、加水分解性シリル基とを有する化合物)が、密着性向上や上述のカチオン重合性化合物との相性などの点で好ましい。
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、またはβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アクリルシランとしては、例えば、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、またはγ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、またはビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイドシランとしては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィドシランとしては、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、またはビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
本実施形態のインクジェットインクが分散剤を含む場合、その量は、インク中の不揮発成分(揮発性の有機溶剤以外の成分)全体を100質量%としたときに、通常0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。
金属顔料の分散性の一層の向上の観点では、上記のように金属顔料に表面修飾を施すのが一法であるが、表面修飾とともに/表面修飾とは別に、分散剤を用いることでも、金属顔料の分散性を高めうる。分散剤には、酸基を含有するもの、アミン構造を含有するもの、その他極性基を含有するものなど、いろいろなものが存在する。また、低分子型の分散剤もあれば高分子型の分散剤もある。本実施形態においては、インクジェットインクの硬化性や貯蔵安定性を過度に損なわない限り、いずれの分散剤も用いることができる。
本実施形態のインクジェットインクが分散剤を含む場合、その量は、インク中の不揮発成分(揮発性の有機溶剤以外の成分)全体を100質量%としたときに、通常0.01~4質量%、好ましくは0.01~2質量%である。
保存安定剤としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等のアミン化合物;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン等のチオール化合物及びそのスルフィド化合物又はジスルフィド化合物;N-フェニルグリシン等のアミノ酸化合物;トリブチル錫アセテート等の有機金属化合物;水素供与体;トリチアン等のイオウ化合物;ジエチルホスファイト等のリン化合物等が挙げられる。
保存安定剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
保存安定剤を用いる場合、その量は、インクジェットインクの不揮発成分全体中、例えば0.03~0.15質量%、好ましくは0.05~0.12質量%である。
本実施形態のインクジェットインクは、通常、溶剤を含まないか、または、溶剤を含むとしても、その量はインク全体の例えば50質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。別観点として、インクジェットインクの原料(金属顔料の分散液等)からの溶剤の持ち込みにより、本実施形態のインクジェットインクは、例えばインク全体の5質量%以上の溶剤を含むことがある。
本実施形態のインクジェットインクは、好ましくは、インキが基材に定着する段階で、溶剤等の揮発や基材へのインクのしみ込みがほとんど無いものである。
本実施形態のインクジェットインクは、上記各成分を十分に混合することで得ることができる。混合には、インクの分野で公知の手法や装置を適宜用いることができる。
本実施形態のインクジェットインクを、基材表面に吐出して画像を形成する画像形成工程と、
吐出されたインクジェットインクを硬化させる硬化工程と、
を含む一連の工程により、印刷物(インクジェットインクの硬化物を備える印刷物)を製造することができる。この印刷物におけるインクジェットインクの硬化物の部分は金属光沢を有する。
インクジェットヘッドとしては、インクの劣化を抑える点では、ピエゾ方式のものが好ましい。インクジェットヘッドの市販品としては、例えば、コニカミノルタ社のKM1024シリーズなどを挙げることができる。
インクジェットインクが熱硬化性である場合には、熱風、オーブン、ホットプレート等の任意の手段での加熱により、インクを硬化させる。
ちなみに、硬化工程が光硬化工程である場合、活性エネルギー線の照射の後に、更に加熱を行ってもよい。この加熱は密着性の向上などを意図して行われる。この加熱を行う場合、その条件は、例えば40~200℃で1~60分間とすることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
金属インジウムおよび/または金属クロムを含む金属顔料を含有する、インクジェットインク。
2.
1.に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料は、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムを含む、インクジェットインク。
3.
1.または2.に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載のインクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
6.
5.に記載のインクジェットインクであって、
前記ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。
7.
1.~4.のいずれか1つに記載のインクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
8.
7.に記載のインクジェットインクであって、
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基および/またはオキセタニル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載のインクジェットインクであって、
不揮発成分全体中の前記金属顔料の比率が、1~8質量%である、インクジェットインク。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載のインクジェットインクであって、
光硬化性である、インクジェットインク。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載のインクジェットインクを、基材表面に吐出して画像を形成する画像形成工程と、
吐出された前記インクジェットインクを硬化させる硬化工程と、
を含む、印刷物の製造方法。
12.
1.~10.のいずれか1つに記載のインクジェットインクの硬化物を備える印刷物。
以下3種の、金属顔料の分散液を準備した。
・インジウム顔料の分散液
尾池工業株式会社製のリーフパウダー49CJ-1120(鱗片状の金属インジウム顔料の分散液、固形分20質量%)
・クロム顔料の分散液
尾池工業株式会社製のリーフパウダーCr(鱗片状の金属クロム顔料の分散液、固形分3質量%)の分散液(有機溶剤)の一部を、エバポレーターを用いて留去し、固形分10質量%に濃縮したもの
・アルミニウム顔料の分散液(比較用)
東洋アルミ株式会社のアルミスラリーMIJ-F406PM(鱗片状の金属アルミニウム顔料の分散液、固形分10質量%)
・測定装置:ゼータサイザーナノZS(マルバーン社製)
・測定温度:25℃
・使用セル:ガラスセル
・測定サンプルの調製:インジウム顔料については、尾池工業株式会社製のリーフパウダー49CJ-1120を、プロピレングリコールメチルエーテルで1000倍に希釈したものを測定サンプルとした。クロム顔料については、尾池工業株式会社製のリーフパウダーCrを、酢酸ブチルで1000倍に希釈したものを測定サンプルとした。
インジウム顔料の平均長径は0.13μm、平均厚みは0.033μm、アスペクト比は3.9であった。
クロム顔料の平均長径は0.34μm、平均厚みは0.035μm、アスペクト比は9.7であった。
以下を混合し、70℃で1時間、加熱しながら攪拌した。これにより、イソステアリル基を含む基で表面修飾された金属顔料(表面処理金属顔料A)を得た。
・上記インジウム顔料分散液 100質量部(固形分としては20質量部)
・イソステアリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルS-1800A) 0.36質量部
・3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-903) 0.10質量部
光カチオン硬化型のインクジェットインクを調製するため、金属顔料以外の素材として、以下のものを準備した。
後掲の表3-1、3-2または4に記載の各成分を十分に混合して、光カチオン硬化型のインクジェットインクを製造した。
表3-1および3-2には、主として表面処理されていない金属顔料を用いたインクジェットインクを記載している。表4には、主として表面処理された金属顔料を用いたインクジェットインクを記載している。
表3-1、3-2および表4において、金属顔料の量および開始剤の量は、固形分量で記載している。つまり、表3-1、3-2および表4に記載のインクジェットインクは、明記された成分のほか、金属顔料の分散液および開始剤の溶液から持ち越された有機溶剤を含んでいる。
(硬化性)
以下手順で評価した。
(1)インクジェットインクを、6ミルのアプリケータを用い、厚みが10μmとなるように、ガラス板(サイズ10cm×10cm×5mm)に塗布した。これにより、ガラス板上に未硬化膜を形成した。
(2)高圧水銀ランプ(アイグラフィック株式会社製、UB041-5A/B 60Hz)を使用して、上記未硬化膜に、積算光量500mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより未硬化膜を硬化膜にした。
(3)硬化膜の硬化状態について、以下の評価基準に従って評価した。
5・・・十分に硬化しており、タック感もない。
4・・・タック感があるが、指で触れても指紋は残らない。
3・・・タック感があり、指で触れると指紋が残る。
2・・・指で塗膜に触れると塗料成分が指につくが、増粘(硬化)はしている。
1・・・全く硬化していない。
JIS K 5600-2-7の常温貯蔵安定性の操作に準拠して、インクジェットインクの貯蔵安定性を評価した。具体的には、各インクジェットインクを、容量約250mLの密閉できるガラス容器に200mL充填し、40℃で7日間静置した。そして、試験前、試験後の粘度を測定した。粘度測定については、E型粘度計(東機産業製RE-85型粘度計)を用い、JIS K 7117-1に準じて、100rpm、25℃での粘度を測定した。そして、増粘率を以下の計算式に基づき算出した。
増粘率(%)={(試験後の粘度-試験前の粘度)/(試験前の粘度)}×100
上記の貯蔵安定性試験1よりも、さらに厳しい条件で貯蔵安定性を評価した。
JIS K 5600-2-7の常温貯蔵安定性の操作に準拠して、インクジェットインクの貯蔵安定性を評価した。具体的には、各インクジェットインクを、容量約250mLの密閉できるガラス容器に200mL充填し、40℃で14日間静置した。そして、試験前、試験後の粘度を測定した。粘度測定については、E型粘度計(東機産業製RE-85型粘度計)を用い、JIS K 7117-1に準じて、100rpm、25℃での粘度を測定した。そして、増粘率を以下の計算式に基づき算出した。
増粘率(%)={(試験後の粘度-試験前の粘度)/(試験前の粘度)}×100
(後掲の表においては、試験前の粘度の記載を省略している。貯蔵安定性試験2における試験前の粘度は、貯蔵安定性試験1のそれと同じためである。)
(評価用印刷物の作製)
インクジェットプリンタとして、ピエゾ型インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製、KM1024iL、インク液滴量32pL)を搭載したインクジェットプリンタ(株式会社トライテック製、Stage JET)を準備した。
このプリンタを用い、ヘッド温度45℃、解像度720dpi、8分割マルチパスの条件で、アルカリ脱脂処理したステンレス鋼板(SUS304 BA(10cm×10cm×1.5mm))に、インクジェットインクを吐出して印刷(ベタ印刷)を行った。その直後、紫外線を照射することによってインクを硬化させた。さらにその後、120℃で3分間加熱した。以上により、印刷物の外観や耐久性を評価するための試験板(評価用印刷物)を得た。
ベタ印刷後の紫外線照射については、上記プリンタに付属の装置を用い、インク吐出から約1秒後に、照射線量500mJ/cm2の条件で紫外線を照射することによって行った。
60°光沢値により金属光沢性を評価した。具体的には、得られた評価用印刷物の60°光沢を、BYK-Gardner GmbH社製の光沢計「マイクロ-グロス」で測定した。
JIS K 5600-6-2の耐液体性(水浸せき法)に準じた方法で、得られた評価用印刷物を、水温50℃で3日間(72時間)水に浸せきする試験を行った。そして、試験前と試験後での60°光沢値の変化率から、金属光沢の失われにくさを評価した。60°光沢値の測定は、上記と同様、光沢計「マイクロ-グロス」を用いて行った。そして、以下数式に基づき、光沢変化率(%)を算出した。この値が小さいほど、金属光沢が失われにくいことを表す。
光沢変化率(%)={(試験前の60°光沢値-試験後の60°光沢値)/(試験前の60°光沢値)}×100
(後掲の表の項目「耐久性評価1」においては、試験前の60°光沢値の記載を省略している。試験前の60°光沢値は、上記(金属光沢性:60°光沢値)における60°光沢値と同じためである。)
60°光沢とは別の評価指標として、「光の透過性」の変化により、金属光沢の失われにくさを評価した。
具体的には、まず、上記の耐久性評価1と同様にして、浸せき試験を行った。そして、試験前と試験後の評価用印刷物の全光線透過率を測定した。そして、以下数式に基づき、全光線透過率の変化量を算出した。
全光線透過率の変化量=試験後の全光線透過率-試験前の全光線透過率
比較例1および2の「貯蔵安定性評価1」においては、試験後のインクジェットインクが顕著に増粘(ゲル化)したため、粘度を定量的に測定することができなかった。
また、貯蔵安定性評価1の結果を鑑み、比較例1および2においては、「貯蔵安定性評価2」の評価を行わなかった。
さらに、各実施例のインクジェットインクを用いて得られた印刷物の金属光沢は、比較例1および2のインクジェットインクを用いて得られた印刷物の金属光沢に比べて、失われにくいことが示された。
光ラジカル硬化型のインクジェットインクを調製するため、金属顔料以外の素材として、以下のものを準備した。
後掲の表6または表7に記載の各成分を十分に混合して、光ラジカル硬化型のインクジェットインクを製造した。
表6または表7において、金属顔料は、上述の、光カチオン硬化型のインクジェットインクで用いたものと同じである。
表6および表7において、金属顔料の量は、固形分量で記載している。つまり、表6および表7に記載のインクジェットインクは、明記された成分のほか、金属顔料の分散液から持ち越された有機溶剤を含んでいる。
(硬化性)
光カチオン硬化型のインクジェットインクと同様の手順で5段階評価した。
(貯蔵安定性)
光カチオン硬化型のインクジェットインクにおける「貯蔵安定性試験1」と同様の手順で評価した。
(評価用印刷物の作製)
光カチオン硬化型のインクジェットインクの場合と同じようにして、評価用印刷物を作製した。
(金属光沢性:60°光沢値)
光カチオン硬化型のインクジェットインクの場合と同様の手順で評価した。
(金属光沢の失われにくさ:耐久性評価1)
光カチオン硬化型のインクジェットインクの場合と同様の手順で評価した。
(金属光沢の失われにくさ:耐久性評価2)
光カチオン硬化型のインクジェットインクの場合と同様の手順で評価した。
比較例3の「貯蔵安定性評価1」においては、インクジェットインク製造直後から室温下で徐々に増粘(ゲル化)したため、粘度を定量的に測定することができなかった。この結果を踏まえ、他の評価を行わなかった。
さらに、耐久性評価1および2の結果より、各実施例のインクジェットインクを用いて得られた印刷物の金属光沢は失われにくいことが示された。
Claims (11)
- 金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク。 - 請求項1に記載のインクジェットインクであって、
前記ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。 - 金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含む、インクジェットインク。 - 請求項3に記載のインクジェットインクであって、
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基および/またはオキセタニル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。 - 金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性である、インクジェットインク。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料は、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムを含む、インクジェットインク。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。 - 請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
不揮発成分全体中の前記金属顔料の比率が、1~8質量%である、インクジェットインク。 - 請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、基材表面に吐出して画像を形成する画像形成工程と、
吐出された前記インクジェットインクを硬化させる硬化工程と、
を含む、印刷物の製造方法。 - 請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェットインクの硬化物を備える印刷物。
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