本発明の一実施形態に関する活性線硬化型インクジェットインク(白色インク)は、白色顔料、ワックスおよび活性線重合性化合物を含有し、活性線を照射されて上記活性線重合性化合物が重合または架橋することにより硬化するインクジェットインクである。また、白色インクは、ワックスを含有することにより、加熱されてゾル化した状態でインクジェットヘッドから吐出されて、記録媒体または中間転写体の表面に着弾した後、活性線を照射される前に冷却によりゲル化してピニングする。
白色インクは、以下の要件(1)〜(4)をすべて満たす。
(1)白色顔料の平均粒子径が220nm以下である
(2)水との間のHSP距離が、白色顔料、活性線重合性化合物、およびワックスの順に大きくなる
(3)ワックスと白色顔料との間のHSP距離は、ワックスと活性線重合性化合物との間のHSP距離よりも大きい
(4)活性線硬化型インクジェットインクの全質量に対するワックスの含有量が、0.1質量%以上4.0質量%以下である
つまり、本発明者らの知見によると、典型的には酸化チタンなどの無機顔料である白色顔料は、活性線の照射により白色インクが硬化してなる硬化膜の内部で、フィラーとして作用する。そのため、白色顔料の平均粒子径をより小さくすることで、フィラーによる硬化性の向上効果が奏されて、硬化膜の硬度をより高めることができる(要件(1))。
一方で、白色顔料の平均粒子径をより小さくすると、白色インク中の白色顔料の比表面積もより大きくなり、白色顔料とワックスとの間の相互作用がより生じやすくなる。このとき、白色顔料がより疎水的な性質を有すると、白色顔料とワックスとの間の親和性がより高まるため、白色顔料がその周囲にワックスを引き寄せやすくなり、硬化膜の表面にワックスが析出しにくくなる。これに対し、白色顔料および活性線重合型化合物の両方を、ワックスよりも親水性にすることで、基本的には無極性である大気とワックスとの親和性を相対的に向上させ、大気中にワックスが移動しやすくして、硬化膜の表面にワックスをより析出しやすくすることができる(要件(2))。また、白色顔料とワックスとの間の親和性をより低くすることで、硬化膜の表面にワックスをより析出しやすくすることができる(要件(3))。これらの作用により、画像を形成した記録媒体の画像形成装置中での搬送性をより高めることができる。
ところで、上記ワックスの析出による記録媒体の搬送性の向上を達成するためには、白色インク中には所定量のワックスが含有されていることが必要である。一方で、白色インク中のワックスの含有量が多すぎると、ワックスが過剰に析出してブルーミングの問題が生じてしまう。なお、本発明者らの知見によると、白色顔料とワックスとの間の親和性をより低くしたり、ワックスの含有量をより多くしたりして、硬化膜の表面近傍によりワックスを移動させやすくすることで、硬化膜の表面硬化性を高め、硬化膜の硬化性を高めることもできる。ただし、硬化膜の表面硬化性のみを高めると、形成された画像にウロコ状のひび割れが発生しやすくもなる。そのため、白色インク中のワックス量は、所定の範囲内とすることで、記録媒体の搬送性を高めつつ、耐ブルーミング性や耐ひび割れ性も高めることができる(要件(4))。
上記のように、本発明は、上述した要件(1)〜(4)をすべて満たす白色インクにより、インクの硬化性、耐ブルーミングおよび記録媒体の搬送性を同時に高め得るものである。
なお、要件(2)および要件(3)におけるHSP距離は、各成分のハンセン溶解度パラメータ(HSP値)の間の距離である。具体的には、各成分のHSP値を構成するパラメーターである分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH)をもとに、以下の式でHSP値を算出することができる。なお、以下の式では、HSP距離を算出する二成分のうち、一方の成分の分散項、極性項および水素結合項をそれぞれdD、dPおよびdHとし、他方の成分の分散項、極性項および水素結合項をそれぞれdD’、dP’およびdH’としている。
HSP距離=(4×(dD−dD’)2+(dP−dP’)2+(dH−dH’)2)1/2
各成分の分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH)は、計算ソフト「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP) Version4.1.03」(Steven Abbott,Charles M. Hansen,Hiroshi Yamamoto著)に含まれるデータベースの値を用いることができる。また、ワックスの分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH)は、上記計算ソフトを使用し、ワックスの化学構造式を入力して計算を行うことができる。なお、炭化水素ワックスの分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH)は、その炭化水素ワックスの分子量に最も近い直鎖アルカンの構造を該計算ソフトに入力して計算し、その値を用いることができる。
なお、白色顔料(酸化チタンなど)が表面処理剤(アルミナなど)で表面処理されているときは、白色顔料の上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に、表面処理剤として用いた物質の上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に当該表面処理剤のモル比を乗じた値を足し合わせて得られる値を、白色顔料の各パラメーターとする。同様に、活性線重合性化合物やワックスのように、2種類以上の化合物が白色インクに含まれるときは、それぞれの成分に含まれる各化合物の上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に、当該成分中のそれぞれの化合物のモル比を乗じた値を足し合わせて得られる値を、当該成分の各パラメーターとする。
ワックスと活性線重合性化合物との間のHSP距離は、3以上10以下であることが好ましい。上記HSP距離が3以上であると、ワックスと活性線重合性化合物との間の親和性が高まりすぎず、硬化膜の表面に十分な量のワックスが析出できるため、画像を形成した記録媒体の画像形成装置中での搬送性をより高めることができる。また、これにより硬化膜の表面硬化性をも高めることができる。上記HSP距離が10以下であると、ワックスと活性線重合性化合物とが過剰に反発しあわず、ワックスが過剰に硬化膜表面方向に移動しないため、白色インクの耐ブルーミング性および耐ひび割れ性をより高めることができる。上記観点から、ワックスと活性線重合性化合物との間のHSP距離は、4以上10以下であることがより好ましく、5以上8以下であることがさらに好ましい。
ワックスと白色顔料との間のHSP距離は、10以上40以下であることが好ましい。上記HSP距離が10以上であると、ワックスと白色顔料とが適度に反発して、ワックスが十分に析出できるため、録媒体の画像形成装置中での搬送性をより高めることができる。上記HSP距離が28以下であると、ワックスと白色顔料とが適度に反発しあわず、ワックスが過剰に硬化膜表面方向に移動しないため、白色インクの耐ブルーミング性および耐ひび割れ性をより高めることができる。上記観点から、ワックスと白色顔料との間のHSP距離は、11以上28以下であることがより好ましく、12以上27以下であることがさらに好ましい。
白色顔料のHSP値は、白色顔料を構成する元素や、アルミナや有機系の表面処理剤などによる表面処理量などによって変更することができる。ワックスのHSP値は、ワックスの種類や、白色インクが複数のワックスを含有するときには各ワックスの含有量比などによって変更することができる。活性線重合性化合物のHSP値は、活性線重合性化合物の種類や、白色インクが複数の活性線重合性化合物を含有するときには各活性線重合性化合物の含有量比などによって変更することができる。
以下、本発明の一実施形態に関する活性線硬化型インクジェットインク(白色インク)、白色インクを用いた画像形成方法、および白色インクを用いた画像形成方法を実施できる画像形成装置について、より詳しく説明する。
1.白色インク
1−1.白色顔料
白色顔料は、硬化膜に白色を呈させる顔料であればよい。白色顔料の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および水酸化アルミニウムなどの無機顔料が含まれる。これらのうち、酸化チタンが好ましい。
白色顔料は、平均粒子径が220nm以下である。白色顔料の平均粒子径を220nm以下とすることで、フィラーとしても作用する白色顔料による硬化膜の硬度をより高めることができる。白色顔料の平均粒子径は、10nm以上220nm以下であることが好ましく、10nm以上210nm以下であることがより好ましく、50nm以上205nm以下であることが特に好ましい。
上記白色顔料の平均粒子径は、データサイザーナノZSP、Malvern社製を使用して動的光散乱法によって求めた値とすることができる。なお、顔料を含むインクは濃度が高く、この測定機器では光が透過しないので、インクを200倍で希釈してから測定する。測定温度は常温(25℃)とする。
白色顔料の親水的および疎水性の度合いを調整する観点から、白色顔料は表面処理されていてもよい。たとえば、白色顔料をアルミナで表面処理することで、白色顔料をより親水的にすることができ、白色顔料をアルミナで表面処理することで、白色顔料をより親水的に調整することができ、白色顔料を有機系の表面処理剤で表面処理することで、白色顔料をより疎水的に調整することができる。
アルミナによる二酸化チタンの表面被覆は、公知の方法により行うことができる。例えば、以下の手順でアルミナによる二酸化チタンの表面被覆を行うことができる。
1)酸化チタンを水に分散させてスラリーとする。
2)1)で得られたスラリーを所定の温度に調整し、表面処理剤である可溶性アルミニウム化合物(アルミン酸ナトリウム)を添加し、溶解させる。
3)2)で得られたスラリーのpHを所定範囲に維持した状態で、酸の沈殿剤を添加して中和し、アルミニウム水和物を沈着させる。
アルミナによる表面処理量(表面被覆量)は、未処理の酸化チタンに対して0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。表面処理量を0.05質量%以上とすることで、ワックスを析出させやすくして、画像を形成した記録媒体の画像形成装置中での搬送性をより高めることができる。一方で、表面処理量を30質量%以下とすることで、ワックスの過剰な析出を抑制して、白色インクの耐ブルーミング性をより高めることができる。
表面処理された酸化チタンの表面処理量は、以下の手順で測定することができる。即ち、
1)表面処理された酸化チタン粉末を、密閉式マイクロ波分解装置により、ふっ酸水溶液で分解し、溶液化する。
2)得られた水溶液中のAl量を、ICP−AESにより測定する。
なお、白色顔料は、アルミナ以外の他の金属酸化物により、あるいはアルミナと上記他の金属酸化物との組み合わせにより、表面被覆されていてもよい。
白色インク中の白色顔料の含有量は、白色インクの全質量に対して1.5質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記白色顔料の含有量は、形成すべき画像が呈すべき色濃度などに応じて変更すればよいが、上記含有量をより多くすることにより、白色顔料がフィラーとして作用することによるインクの硬化性の向上効果をより効果的に奏させることができ、上記含有量をより少なくすることにより、硬化膜の表面近傍におけるワックスの量をより適切に制御して、ウロコ状のひび割れをより発生しにくくすることができる。
白色顔料は、公知の分散剤により分散性を高められていてもよい。
上記分残材の含有量は、白色顔料の全質量に対して1質量%以上50質量%以下とすることができる。
上記分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートなどが含まれる。また、白色顔料の分散性をより高める観点から、3級アミン基を有するくし型ブロックコポリマーを分散剤として用いてもよい。
1−2.活性線重合性化合物
活性線重合性化合物は、活性線の照射により重合および架橋する化合物である。活性線重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。これらのうち、活性線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
なお、上記活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのち、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、変性(メタ)アクリレートは、高温下でも他の成分とより相溶しやすい。さらには、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため、活性線照射時の印刷物のカールをより生じさせにくい。
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
上記エポキシ化合物の例には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサンおよびビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
上記オキセタン化合物の例には、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタン、1,4ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
活性線重合性化合物の含有量は、白色インクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下であることが好ましく、10質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
1−3.活性線重合開始剤
白色インクは、活性線重合開始剤を含有してもよい。
活性線重合開始剤は、活性線の照射により上記活性線重合性化合物の重合および架橋を開始させる化合物である。なお、電子線の照射により画像を形成するときなど、活性線重合開始剤なしでも上記活性線重合性化合物の重合および架橋が開始できるときは、白色インクは、活性線重合開始剤を含有しなくてもよい。
活性線重合開始剤は、白色インクがラジカル重合性化合物を有するときはラジカル開始剤とすることができ、白色インクがカチオン重合性化合物を有するときはカチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
活性線重合開始剤の含有量は、活性線の照射によって白色インクが十分に硬化し、かつ白色インクの吐出性を顕著に低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、白色インクは、その全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下の活性線重合開始剤を含有することが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下の活性線重合開始剤を含有することがより好ましい。
1−4.ワックス
ワックスは、温度変化により白色インクをゾルゲル相変化させる化合物である。ワックスは、白色インクを加熱状態ではゾル化させ、室温付近ではゲル化させる。これにより、加熱されてゾル化された白色インクをインクジェットヘッドから吐出させ、かつ、記録媒体に着弾して冷却してゲル化された白色インクを仮固化させて、白色インクのピニング性を高めることができる。
ワックスは、白色インクのゲル化温度より高い温度で、白色インクに含有される活性線重合性化合物に溶解し、かつ、白色インクのゲル化温度以下の温度で、白色インク中で結晶化する化合物であることが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化した白色インクを冷却していったときに、白色インクがゾルからゲルに相転移し、白色インクの粘度が急変する温度を意味する。具体的には、ゾル化または液体化した白色インクを、レオメータ(たとえばAntonPaar社製、MCR300)で粘度を測定しながら冷却していったおきに、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
ワックスが白色インク中で結晶化すると、板状に結晶化したワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体状の活性線重合性化合物が上記空間内に保持されるため、白色インクが記録媒体に付着して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが記録媒体に付着して形成されたドット同士が合一しにくくなる。
カードハウス構造を形成させやすくする観点からは、活性線重合性化合物とワックスとが白色インク中で相溶していることが好ましい。
上記ワックスの例には、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−(2−エチルヘキサノイル)−L−グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物;1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール等のジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12−ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等のN−置換脂肪酸アミド;N,N’−エチレンビスステアリルアミド、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N’−キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル;ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス;重合性ワックス;ダイマー酸;ダイマージオール等が含まれる。これらのワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
ワックスは、これらのうち、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル(多価アルコールのエステル化物を除く)、脂肪酸アミン、脂肪族ケトン、または脂肪酸アミドであることが好ましい。また、記録媒体の搬送性をより高める観点からは、疎水性が高く硬化膜の表面に析出しやすい脂肪酸エステルまたは脂肪族ケトンであることがより好ましく、下記一般式(G1)で表される化合物または一般式(G2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
一般式(G1): R1−CO−R2
一般式(G2): R3−COO−R4
一般式(G1)において、R1およびR2は、独立して炭素数9以上25以下の、分岐鎖を有してもよい直鎖状の炭化水素基を示し、一般式(G2)において、R3およびR4は、独立して炭素数9以上25以下の、分岐鎖を有してもよい直鎖状の炭化水素基を示す。
一般式(G1)で表される化合物の例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23−24)、ジベヘニルケトン(炭素数:21−22)、ジステアリルケトン(炭素数:17−18)、ジエイコシルケトン(炭素数:19−20)、ジパルミチルケトン(炭素数:15−16)、ジミリスチルケトン(炭素数:13−14)、ジラウリルケトン(炭素数:11−12)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11−14)、ラウリルパルミチルケトン(11−16)、ミリスチルパルミチルケトン(13−16)、ミリスチルステアリルケトン(13−18)、ミリスチルベヘニルケトン(13−22)、パルミチルステアリルケトン(15−18)、バルミチルベヘニルケトン(15−22)およびステアリルベヘニルケトン(17−22)などが含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
一般式(G2)で表される化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(炭素数:21−22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19−20)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17−18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17−16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17−12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15−16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15−18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13−14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13−16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13−20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17−18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21−18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17−18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18−22)およびリノール酸アラキジル(炭素数:17−20)などが含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
ワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して0.1質量%以上4.0質量%以下である。ワックスの含有量を0.1質量%以上とすることで、白色インクのピニング性を十分に高めることができるほか、ワックスの析出による記録媒体の搬送性も十分に高めることができる。ワックスの含有量を4.0質量%以下とすることで、インクの耐ブルーミング性を高めることができるほか、硬化膜の表面近傍におけるワックスの量をより適切に制御して、ウロコ状のひび割れをより発生しにくくすることができる。上記観点から、ワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して0.3質量%以上3.2質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上2.9質量%以下であることがさらに好ましい。
1−5.多価アルコールのエステル化物
白色インクは、多価アルコールのエステル化物(以下、単に「エステル化物」ともいう。)を含有してもよい。
エステル化物は、ワックスの核剤として作用し、ワックスをより小さいサイズで結晶化させる。これにより、活性線の照射時には、白色インクの表面においてワックスの大きな結晶による活性線の散乱を抑制し、白色インクにより十分な量の活性線を到達させて、白色インクの硬化性をより高めることができる。また、活性線の照射後は、より小さい結晶を硬化膜の表面に広く分散させることにより、記録媒体の搬送性をより高め、かつ、ウロコ状のひび割れをより発生しにくくする。
上記多価アルコールの例には、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2,4−ブタントリオールが含まれる。
カルボン酸の例には、ブチル酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)が含まれる。上記カルボン酸の中では、ラウリン酸(C12)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)が好ましい。なお、括弧内のCは炭素数を示す。
上記多価アルコールのエステル化は、公知の方法(例えば、フィッシャーエステル合成反応)により行うことができる。
エステル化物の含有量は、上記インクジェット用の活性線硬化型インクの全質量に対して0.001質量%以上7.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。エステル化物の含有量を0.001質量%以上とすることにより、白色インクの硬化性および記録媒体の搬送性をより高め、かつ、ウロコ状のひび割れをより発生しにくくすることができる。また、エステル化物の含有量を7.5質量%以下とすることにより、ワックスが析出しやすくなることによるブルーミング性の低下を抑制することができる。
1−6.その他の成分
白色インクは、界面活性剤、重合禁止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、および保湿剤などの損他の成分をさらに含有してもよい。また、白色インクは、必要に応じて白色顔料以外の顔料を含有してもよい。
上記その他の成分の含有量は、白色インクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
1−7.物性
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、白色インクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。
白色インクは、40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。白色インクの相転移温度が40℃以上であると、記録媒体に着弾後、白色インクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。白色インクの相転移温度が70℃以下であると、組成物温度が通常80℃程度である吐出ヘッドからの白色インクの射出時に白色インクがゲル化しにくいため、より安定して白色インクを射出することができる。
白色インクの80℃における粘度および相転移温度は、レオメータにより、白色インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
1−8.白色インクの調製方法
白色インクは、上述した各成分を混合して、調製することができる。このとき、各成分の溶解性を高めるため、加熱しながら混合することが好ましい。
なお、白色顔料および任意に含有される他の顔料と、顔料分散剤と、を含む顔料分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。このときも、顔料分散剤などの溶解性を高めるため、顔料および分散剤などを加熱しながら混合して顔料分散液を調製することが好ましい。
2.画像形成方法
本発明の他の実施形態に関する画像形成方法は、白色インクを用いて画像を形成する方法に関する。上記画像形成方法は、白色インクを用いる以外は、インクジェットインクを用いる従来公知の画像形成方法を同様に実施することができる。
具体的には、上記画像形成方法は、1)白色インクをインクジェットヘッドのノズルから吐出して、吐出された液滴を記録媒体に付着させる工程と、2)記録媒体に付着した白色インクの液滴に活性線を照射して、白色インクの液滴を硬化させる工程と、を含む。
2−1.付着させる工程
第1の工程では、白色インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に付着させる。
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気−機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型などの電気−熱変換方式などのいずれでもよい。
また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよいが、ライン式であることが好ましい。
白色インクの液滴は、加熱されてゾル化した状態でインクジェットヘッドから吐出される。インクジェットヘッドからの白色インクの吐出性を高める観点からは、インクジェットヘッドに充填されたときの白色インクの温度を、白色インクのゲル化温度+10℃以上、ゲル化温度+30℃以下に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内の白色インクの温度が、ゲル化温度+10℃以上であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面で白色インクがゲル化することによる吐出性の低下が生じにくい。一方、インクジェットヘッド内の白色インクの温度がゲル化温度+30℃以下であると、高温による成分の劣化が生じにくい。また、吐出される際の白色インクの粘度は、7mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、8mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましい。
白色インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクなどのインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドなどの少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水などによって加熱することができる。
吐出されるときの白色インクの液滴量は、記録速度および画質をより高める観点から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
記録媒体は、特に制限されず、通常の非コート紙、コート紙などの他、合成紙ユポ(「ユポ」は株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標)、軟包装に用いられる各種プラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムがある。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、記録媒体は、金属類や、ガラス類などであってもよい。
記録媒体への付着は、上記吐出された白色インクをそのまま記録媒体に着弾させて付着させてもよいし、上記吐出された白色インクを中間転写体に着弾させて中間画像を形成し、上記中間画像を中間転写体から記録媒体に転写して付着させてもよい。
2−2.硬化させる工程
第2の工程では、第1の工程で記録媒体に付着させた白色インクの液滴に活性線を照射して上記液滴を硬化させる。これにより、白色インクの硬化膜からなる画像が形成される。
活性線は、たとえば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができるが、紫外線または電子線であることが好ましい。上記紫外線は、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、上記紫外線は、LED光源から照射されることが好ましい。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、LEDは、活性線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラなどを生じさせ難い。
3.画像形成装置
本発明のさらに他の実施形態に関する画像形成装置は、上記方法を実施可能なインクジェット用の画像形成装置である。
図1は、本実施形態に関するインクジェット用の画像形成装置100の概念を示す側面図である。
図1に示されるように、画像形成装置100は、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130を有する。なお、図1において、矢印は記録媒体の搬送方向を示す。
3−1.インクジェットヘッド110
インクジェットヘッド110は、ノズル111の吐出口が設けられたノズル面113を、画像を形成する際に搬送部120に対向する面に有しており、搬送部120によって搬送される記録媒体200に対して白色インクを吐出する。白色インクの吐出性を高める観点から、インクジェットヘッド110は、インクの温度を調整してインクを低粘度に調整するための温度調整手段を有してもよい。温度調整手段の例には、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水による加熱手段が含まれる。
インクジェットヘッド110は、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも小さいスキャン式のインクジェットヘッドでもよく、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも大きいライン式のインクジェットヘッドでもよい。
ノズル111は、ノズル面113に吐出口を有する。ノズル111の数は、画像形成に使用するインクの数(例えば4つ)以上であればよい。インクジェットヘッド110が複数のノズル111を有する場合、装置の構成を単純化して制御を容易にする観点からは、複数のノズル111は、ほぼ等間隔となるように記録媒体の搬送方向に並んで設けられることが好ましい。
インクジェットヘッド110は、吐出されて記録媒体200に着弾するインクの量を変更可能に構成される。たとえば、インクジェットヘッド110は、制御部に制御されて、圧電素子の振動幅を変更したり、一部のノズルからインクを吐出させなくしたりすることができるように構成される。
3−2.搬送部120
搬送部120は、画像を形成する際に、インクジェットヘッド110の鉛直方向直下において、インクジェットヘッド110に対向する記録媒体200が移動するように、記録媒体200を搬送する。たとえば、搬送部120は、駆動ローラ121および従動ローラ122、ならびに搬送ベルト123を有する。
駆動ローラ121および従動ローラ122は、記録媒体200の搬送方向に所定の間隔をあけるとともに、記録媒体200の搬送方向に直交する方向に延在した状態で配置される。駆動ローラ121は、不図示の駆動源によって回転する。
搬送ベルト123は、その上に乗せられた記録媒体200を搬送するためのベルトであり、駆動ローラ121および従動ローラ122に架け渡されている。搬送ベルト123は、たとえば、記録媒体200よりも幅広に形成された無端のベルトとすることができる。このとき、駆動源が駆動ローラ121を回転させると、駆動ローラ121に追従して搬送ベルト123が周回して、搬送ベルト123上の記録媒体200が搬送される。
3−3.照射部130
照射部130は、光源を有し、搬送部120の上面に光源から活性線を照射する。これにより、搬送される記録媒体200上に着弾した白色インクの液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させることができる。照射部130は、インクジェットヘッド110よりも下流側で搬送部120の直上に配設することができる。
3−4.その他の構成
画像形成装置100は、上記構成以外にも、吐出前の白色インクを貯蔵するためのインクタンク(不図示)、インクタンクとインクジェットヘッド110とをインクが流通可能に連通するインク流路(不図示)、ならびに、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130の動作を制御する制御部(不図示)を有していてもよい。
また、画像形成装置100は、中間転写体および転写部(いずれも不図示)を有してもよい。このとき、インクジェットヘッド110は、中間転写体に対して白色インクを吐出して中間転写体の表面に着弾させ、白色インクの液滴が集合してなる中間画像を中間転写体の表面に形成する。その後、転写部は、中間転写体の表面から記録媒体の表面へと、中間画像を転写する。そして、照射部130は、記録媒体の表面に転写された中間画像に活性線を照射して、白色インクの液滴を硬化させる。
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、以下の実施例の記載は、本発明の技術的範囲をこれらの記載の範囲内に限定することを意図するものではない。
1.白色インクの調製
1−1.白色顔料の表面処理
以下のようにして、白色顔料P1〜白色顔料P8を得た。
(白色顔料P1)
白色顔料P1として、堺化学工業(株)製の酸化チタンであるR−25を用いた。白色顔料P1の平均粒子径は、データサイザーナノZSP(Malvern社製)を使用して動的光散乱法によって求めた。また、白色顔料P1のアルミナ被覆量は、以下のようにして求めた。先ず、誘導プラズマ発光分析装置(I.C.P.)によるアルミニウム元素の分析により白色顔料P1を被覆しているアルミニウムの質量を測定し、アルミニウムがすべてアルミナであると仮定して、アルミナの量を算出した。得られたアルミナの量から白色顔料P1のアルミナ被覆量を求めた。
(白色顔料P2)
市販の酸化チタン粉末(比表面積:110m2/g、粉末の平均粒子径:2.1μm、結晶型:ルチル型)100gと純水400gとを混合し、室温で撹拌しながら、これに強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化成製、DAIAION、SA−10A)500ccを徐々に添加した後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液50gを加えて、48時間撹拌を続けた後、イオン交換樹脂を取り除き、酸化チタンコロイド水溶液を得た。
メンブランフィルター(0.2μm)にてろ過、洗浄し、採取したケーキを170℃で12時間乾燥し、自動式乳鉢(ニット−ANM−1000型)を用いて1時間解砕を行い白色顔料P2を得た。白色顔料P2の平均粒子径は、白色顔料P1と同様にして求めた。
(白色顔料P3)
150gの白色顔料P2を純水1300mlに分散させ、この中に分散剤として界面活性剤(花王(株)デモールEP)3gを加え、二酸化チタンスラリーを調製した。次にこれとは別に0.003mol/lのアルミン酸ソーダ水溶液5790mlに0.06mol/lの希硫酸水溶液を滴下して、pHを10.5〜11.8に調節し、アルミニウム化合物溶液を調製した。このアルミニウム化合物溶液調製後、前記二酸化チタンスラリーの添加混合を開始した。混合時は撹拌機(羽根径100mmφ)を用いて170rpmにて撹拌をし、二酸化チタンスラリー添加後も撹拌を継続して酸化アルミニウム水和物の二酸化チタン表面への沈着を行った。この時間を熟成と呼び、3時間行った。この後0.06mol/lの希硫酸水溶液を用い1時間かけて中和処理を行い、スラリーのpHを8.15に調節した。処理に際してはスラリー及び溶液の温度はすべて30℃で行った。表面処理後のスラリーはメンブランフィルター(0.2μm)にてろ過、洗浄し、採取したケーキを170℃で12時間乾燥し、自動式乳鉢(ニット−ANM−1000型)を用いて1時間解砕を行いアルミナ表面被覆した白色顔料P3を得た。白色顔料P3の平均粒子径およびアルミナ被覆量は、白色顔料P1と同様にして求めた。
(白色顔料P4)
白色顔料P1を用いてアルミン酸ソーダ水溶液の濃度を0.590mol/lにし、アルミン酸ソーダ水溶液の量を2180mlにした以外は白色顔料P3と同様にして白色顔料P4を得た。白色顔料P4の平均粒子径およびアルミナ被覆量は、白色顔料P1と同様にして求めた。
(白色顔料P5)
アルミン酸ソーダ水溶液の濃度を0.920mol/lにし、アルミン酸ソーダ水溶液の量を1800mlにした以外は白色顔料P4と同様にして白色顔料P5を得た。白色顔料P5の平均粒子径およびアルミナ被覆量は、白色顔料P1と同様にして求めた。
(白色顔料P6)
白色顔料P6として、堺化学工業(株)製の酸化チタンであるR−32を用いた。なお、白色顔料P6の平均粒子径およびアルミナ被覆量は白色顔料P1と同様にして測定した。
(白色顔料P7)
白色顔料P7として、堺化学工業(株)製の二酸化チタンであるR−5Nを用いた。なお、白色顔料P7の平均粒子径およびアルミナ被覆量は白色顔料P1と同様にして測定した。
(白色顔料P8)
3.0質量部の表面処理剤としてのメチルトリメトキシシランと、97.0質量部の表面処理されていない酸化チタン(堺化学工業(株)製、R−25)と、を溶剤中に投入して調製したスラリーを、撹拌器で混合し、さらに横型連続式サンドグラインダーミル(アイメックス社製、ウルトラビスコミル)により5分間の分散処理を行った。上記分散処理後の混合物をニーダーに投入し、減圧加熱して溶媒を除去した。その後、得られた粉末を120〜150℃でキュアリングして、有機樹脂で表面被覆された酸化チタンである白色顔料P8を得た。なお、白色顔料P8の平均粒子径およびアルミナ被覆量は白色顔料P1と同様にして測定した。また、白色顔料P8の有樹樹脂被覆量は、P8に含まれる炭素原子量を、Elementar社製のvario ELcubeを用いて、燃焼法−熱伝導度(TCD)検出法により、以下の条件で測定したものとした。
測定項目: CHNS同時測定
燃焼管温度: 1150℃
還元管温度: 850℃
キャリアガス: ヘリウム
キャリアガス流量: 230ml/min.
酸素流量(燃焼時): 40ml/min.
白色顔料1〜白色顔料8の平均粒子径およびアルミナ被覆量、有樹樹脂被覆量を、表1に示す。
1−2.酸化チタン分散液の調製
40質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、10質量%の顔料分散剤であるBYKJET−9151(BYK製)と、を、ステンレスビーカーに入れた混合液を用意し、上記混合液を65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌した。
その後、上記混合液を室温まで冷却し、さらに、50質量部の白色顔料1を加えた。さらに、上記混合液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した後にジルコニアビーズを除去して、白色分散液1を得た。
白色顔料1の代わりに白色顔料2〜白色顔料8を用いた以外は同様にして、白色分散液2〜白色分散液8を得た。
1−3.白色インクの調製
表4に記載された成分比にしたがって、上記顔料分散液と下記に示す各材料とを混合して、80℃に加熱して攪拌した。その後、上記混合液を加熱しながら、ADVANTEC社製テフロン(「テフロン」はザケマーズ カンパニーの登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過して、いずれも白色インクであるインク1〜インク28を得た。なお、表4中の配合量の数値は質量%である。
なお、このとき、ワックスは、表2に記載の化合物が、下記の比率(ワックスの全質量に対する各化合物の比率)で白色インク中に含有されるように、各化合物の配合量を調整した。
また、活性線重合性化合物(モノマー)は、表3に記載の化合物が、下記の比率(活性線重合性化合物の全質量に対する各化合物の比率)で白色インク中に含有されるように、各化合物の配合量を調整した。
エステル化物は、デカグリセリンドデカエステル(SYグリスター「DDB−750」、阪本薬品工業株式会社製)をエステル化物E1とし、テトラグリセリンペンタエステル(SYグリスター「PS−3S」、阪本薬品工業株式会社製)をエステル化物E2とした。
活性線重合開始剤(開始剤)は、IRGACURE 819(BASF社製)を、界面活性剤は、BYK UV3500(ビックケミー・ジャパン社製)を、重合禁止剤は、Irgastab UV10(BASF社製)を、それぞれ用いた。
1−4.HSP距離の算出
白色顔料を構成する酸化チタンおよびアルミナの量をもとに、白色インクに含有される白色顔料のHSP値(分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH))を求めた。ワックスを構成する化合物種およびその含有量をもとに、白色インクに含有されるワックスのHSP値(分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH))を求めた。モノマーを構成する化合物種およびその含有量をもとに、白色インクに含有されるモノマーのHSP値(分散項(dD)、極性項(dP)および水素結合項(dH))を求めた。
なお、白色顔料の表面がアルミナで被覆されているときは、白色顔料(酸化チタン)の上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に、アルミナの上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に被覆しているアルミナのモル比を乗じた値を足し合わせて得られる値を、白色顔料の各パラメーターとした。同様に、活性線重合性化合物およびワックスについては、活性線重合性化合物およびワックスにそれぞれ含まれる各化合物の上記各パラメーター(dD、dPおよびdH)に、活性線重合性化合物およびワックス中のそれぞれの化合物のモル比を乗じた値を足し合わせて得られる値を、それぞれの各パラメーターとした。
そして、下記の式により、白色顔料、ワックスおよびモノマーのそれぞれの水との間のHSP距離、白色顔料とワックスとの間のHSP距離、および白色顔料とモノマーとの間のHSP距離を、それぞれ算出した。なお、以下の式では、HSP距離を算出する二成分のうち、一方の成分の分散項、極性項および水素結合項をそれぞれdD、dPおよびdHとし、他方の成分の分散項、極性項および水素結合項をそれぞれdD’、dP’およびdH’としている。
HSP距離=(4×(dD−dD’)2+(dP−dP’)2+(dH−dH’)2)1/2
各白色インクについての、算出された上記各HSP距離を、表5に示す。なお、表5中、「要件(2)」の欄には、当該白色インクが要件(2)を満たすときには「○」を、要件(2)を満たさないときには「×」を、それぞれ記す。同様に、表5中、「要件(3)」の欄には、当該白色インクが要件(3)を満たすときには「○」を、要件(3)を満たさないときには「×」を、それぞれ記す。
2.画像形成
インク1〜インク28を、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェットヘッドを有する、図1に示す構成のインクジェット記録装置に装填した。
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、およいインクジェットヘッドを有し、インクタンクからインクジェットヘッドまでを100℃に加温した。
インクジェットヘッドは、360dpiの解像度のヘッドを四個用いて、液滴が2plになるように電圧を印加してそれぞれのインクを吐出し、1440×1440dpiの単色ベタ画像を、A4サイズのコート紙(OK金藤 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)上に形成した。
印字後、Phoseon Technology社製LEDランプから光を照射して(395nm、8W/cm2、water cooled unit)、着弾したインクを硬化した。なお、ランプから記録媒体面までの距離は20mm、記録媒体の搬送速度は、40m/s(光量、300mJ/cm2)とした。光量は、紫外線積算光量計(浜松ホトニクス社製、C9536、 H9958)を用いて測定した。
3.評価
3−1.硬化性
それぞれのインクを用いて形成した単色ベタ画像にコート紙を接触させ、500gの加重をかけて上記コート紙を30回擦った。擦った後の画像表面を目視観察し、以下の基準でそれぞれのインクの硬化性を評価した。
◎: 画像に変化はなかった
○: 画像面積のうち10%未満の領域でかすれが発生していた
△: 画像面積のうち10%以上50%未満の領域でかすれが発生していた
×: 画像面積のうち50%以上の領域でかすれが発生していた
3−2.記録媒体の搬送性
それぞれのインクを用いて形成した単色ベタ画像に対して、500gの荷重をかけながら試験片を一定速度で動かしたときのフォースゲージ(株式会社イマダ製)の値の変化から、形成された画像の動摩擦係数を算出した。試験片は、25mm×25mmのアルミ蒸着PET紙(五條製紙株式会社製、SPECIALITIES No.314−400)を用いた。得られた動摩擦係数の値から、以下の基準でそれぞれのインクを用いてベタ画像を形成された記録媒体の搬送性を評価した。
◎: 動摩擦係数は0.1未満であった
○: 動摩擦係数は0.1以上0.15未満であった
△: 動摩擦係数は0.15以上0.2未満であった
×: 動摩擦係数は0.2以上であった
3−3.耐ブルーミング性
それぞれのインクを用いて形成した単色ベタ画像に対して、劣化促進試験(温度:40℃、期間:一週間、相対湿度:50%)を行った。劣化促進試験の前後におけるベタ画像の60°反射光沢値を、デジタルハンディ光沢計(堀場製作所製グロスチェッカーIG−331)で測定した。劣化促進試験の前後における上記反射光沢値の差の絶対値から、以下の基準でそれぞれのインクの耐ブルーミング性を評価した。
◎: 反射光沢値の差の絶対値は1.0未満であった
○: 反射光沢値の差の絶対値は1.0以上3.0未満であった
△: 反射光沢値の差の絶対値は3.0以上10.0未満であった
×: 反射光沢値の差の絶対値は10.0以上であった
3−4.耐ひび割れ性
それぞれのインクを用いて形成した単色ベタ画像を顕微鏡および目視で観察し、以下の基準でそれぞれのインクの耐ひび割れ性を評価した。
◎: 顕微鏡100倍で画像表面を観察しても、ひび割れは全く観察されなかった
○: 顕微鏡100倍で画像表面を観察すると、一部に細かいひび割れが観察されたが、目視ではひび割れは視認されなかった
△: 顕微鏡100倍で画像表面を観察すると、全面に細かいひび割れが観察されたが、目視ではひび割れは視認されなかった
×: 目視でひび割れが視認できた
3−5.評価結果
インク1〜インク28の評価結果を、表6に示す。
表3から明らかなように、白色顔料、活性線重合性化合物およびワックスを含有し、以下の要件(1)〜(4)をすべて満たす白色インク1〜23は、インクの硬化性、耐ブルーミングおよび記録媒体の搬送性がすべて良好であった。
(1)白色顔料の平均粒子径が220nm以下である
(2)水との間のHSP距離が、白色顔料、活性線重合性化合物、およびワックスの順に大きくなる
(3)ワックスと白色顔料との間のHSP距離は、ワックスと活性線重合性化合物との間のHSP距離よりも大きい
(4)白色インクの全質量に対するワックスの含有量が、0.1質量%以上4.0質量%以下である。
これに対し、白色顔料の平均粒子径が220nmより大きい(要件(1)を満たさない)白色インク24および25は、インクの硬化性が低く、かつ記録媒体の搬送性も低かった。これは、白色顔料の平均粒子径がより大きいため白色顔料のフィラーとしての作用が弱く、また、白色顔料とワックスとの間の相互作用が小さいため硬化膜の表面にワックスが十分に析出しなかったためと考えられる。
また、白色インクの全質量に対するワックスの含有量が4.0質量%より多い(要件(4)を満たさない)白色インク26は、耐ブルーミング性および耐ひび割れ性が低かった。これは、ワックス量が多いため硬化膜の表面により多量のワックスが移動および析出したためと考えられる。
また、水、白色顔料、ワックスおよび活性線重合性化合物の間のHSP距離の関係が要件(2)または要件(3)を満たさない白色インク27および28は、白色顔料の平均粒子径が220nm以下であるにもかかわらず、記録媒体の搬送性が低かった。これは、白色顔料とワックスとが十分に反発しあわず、硬化膜の表面にワックスが十分に析出しなかったためと考えられる。