以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
1.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、活性光線硬化型のカラーインクおよび白色インクをインクジェット方式により透光性を有する基材上に吐出し、硬化させて、前記基材上に画像を記録する方法である。本発明に係るインクジェット記録方法は、(1)基材の第1の面上に、カラーインクおよび白色インクを付着させる画像形成工程と、(2)基材の第1の面側から基材上のインクに活性光線を照射する第1露光工程と、(3)基材の第2の面側から基材上のインクに活性光線を照射する第2露光工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
(1)画像形成工程
画像形成工程では、第1の面(表面)および第2の面(裏面)を有し、かつ透光性を有する基材の第1の面上に、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびゲル化剤を含むカラーインクと、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびゲル化剤を含む白色インクをインクジェット方式で付着させて、画像を形成する。
基材の第1の面(表面)には、ゲル化剤を含むカラーインクおよびゲル化剤を含む白色インクがインクジェット方式で付着させられる。ゲル化剤を含有するインクを使用することで、基材への付着時にインクがゲル化し、インク同士の混合および液滴の広がりが抑制される。
また、カラーインクは、白色インクよりも基材側に位置するように付着させられる。すなわち、白色インクは、カラーインクにより形成された画像の一部または全部を覆うように、カラーインクの上に上塗りされる。具体的には、1または2種以上のカラーインクを基材の第1の面上に付着させた後に、カラーインクを硬化させることなく白色インクを基材の第1の面上に付着させる。このようにカラーインクの上に白色インクを上塗りすることで、カラーインクにより形成された画像の耐久性を高めることができる。また、白色インクが背景色となるため、形成された画像の美観を高めることができる。
[基材]
基材(記録媒体)の種類は、波長350〜400nmの光に対する透過率が80%以上であれば特に限定されない。基材の例には、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルム、塩化ビニルフィルムなどの樹脂フィルムが含まれる。通常、基材は、透光性を有するだけでなく、第2の面(裏面)側から画像を観察できるように透明である。
[カラーインクおよび白色インク]
白色インクは、色材としての酸化チタン、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびゲル化剤を含む活性光線硬化型インクである。カラーインクは、色材(少なくとも酸化チタン以外の色材を含む)、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびゲル化剤を含む活性光線硬化型インクである。カラーインクは、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)またはブラック(K)の色を呈する。画像形成工程では、これらのカラーインクを組み合わせたインクセットを使用してもよい。もちろん、カラーインクは、他の色を呈していてもよい。なお、本明細書において「カラーインク」とは、前述の上塗り用に用いられる白色インク以外のインクをいう。以下、各成分について説明する。
(ラジカル重合性化合物)
カラーインクおよび白色インク(以下単に「インク」ともいう)は、いずれもラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーまたはこれらの混合物)である。インク中に含まれるラジカル重合性化合物は、一種のみであってもよいし二種以上であってもよい。また、カラーインクおよび白色インクは、同じ種類のラジカル重合性化合物を含んでいてもよいし、異なる種類のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンが含まれる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸が含まれる。なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリレートは、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーおよびオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」には、アクリレートモノマーおよび/またはアクリレートオリゴマー、メタクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートオリゴマーが含まれる。
インクは、ラジカル重合性化合物として、ClogP値が4.0〜7.0の範囲内にある(メタ)アクリレート(以下「(メタ)アクリレートA」ともいう)を含有してもよい。この(メタ)アクリレートAのClogP値が4.0以上とすることで、加熱した際にゲル化剤が溶解しやすくなり、インクをゾルゲル相転移しやすくすることができる。また、インクをインクジェット記録ヘッドから吐出する場合に、インクの吐出不良を低減させることができる。一方、(メタ)アクリレートAのClogP値を7.0以下とすることで、インク中のラジカル光重合開始剤の溶解性を向上させて、インクの硬化性およびインクの吐出性を向上させることができる。(メタ)アクリレートAのClogP値は、より好ましくは4.5〜6.0の範囲内である。
ここで「logP値」とは、水と1−オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
「ClogP値」とは、計算により算出したlogP値である。ClogP値は、フラグメント法や、原子アプローチ法などにより算出されうる。具体的には、ClogP値を算出するには、文献(C.Hansch and A.Leo, "Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology", John Wiley & Sons, New York, (1969).)に記載のフラグメント法または下記市販のソフトウェアパッケージを用いればよい。本明細書の実施例に記載したClogP値は、ソフトウェアパッケージ2を用いて計算したClogP値である。
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software(Release 3.54, 1991年8月, Medicinal Chemistry Project, Pomona College, Claremont, CA)
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月, Cambridgesoft Corporation, USA)
(メタ)アクリレートAの分子量は、280〜1500の範囲内にあることが好ましく、280〜800の範囲内あることがより好ましい。インクジェット記録ヘッドからインク液滴を安定に吐出するためには、吐出温度でのインク粘度を7〜14mPa・sの間にするとよい。分子量が280以上の(メタ)アクリレートAとゲル化剤とを含むインク組成物は、吐出温度前後でのインクの粘度変化が小さい。そのため、インク粘度を上記範囲内に調整しやすくなる。また、分子量が280以上の(メタ)アクリレートAは、臭気が少ないため、インクおよびその硬化物の臭気を少なくすることができる。一方、(メタ)アクリレートAの分子量を1500以下にすることで、インクのゾル粘度を好適な範囲に保つことができる。
インク中の(メタ)アクリレートAの配合量は、特に限定されないが、10〜40質量%の範囲内であることが好ましく、15〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。
ClogP値が4.0〜7.0の範囲内にある(メタ)アクリレートAのより好ましい例には、分子内に(−C(CH3)H−CH2−O−)で表される構造を3〜14個有する三官能以上のメタクリレートまたはアクリレート、分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレートまたはアクリレートが含まれる。これらの(メタ)アクリレートAは、光硬化性が高く、かつ硬化したときの収縮が少ない。さらに、ゾルゲル相転移の繰り返し再現性が高い。
分子内に(−C(CH3)H−CH2−O−)で表される構造を3〜14個有する三官能以上のメタクリレートまたはアクリレートとは、例えば、3個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をプロピレンオキシド変性し、得られた変性物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。この化合物の例には、3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Photomer 4072;分子量471、ClogP4.90;Cognis社)、3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Miramer M360;分子量471、ClogP4.90;Miwon社)が含まれる。
分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレートまたはアクリレートとは、例えば、2個以上の水酸基とトリシクロアルカンとを有する化合物の水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。この化合物の例には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(NKエステルA−DCP;分子量304、ClogP4.69;新中村化学工業株式会社)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(NKエステルDCP;分子量332、ClogP5.12;新中村化学工業株式会社)が含まれる。
(メタ)アクリレートAの別の例には、1,10−デカンジオールジメタクリレート(NKエステルDOD−N;分子量310、ClogP5.75、新中村化学工業株式会社)、8EO変性ノニルフェノールアクリレート(Miramer M166;分子量626、ClogP6.42;Miwon社)も含まれる。
その他の重合性化合物の例には、4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート(CD561;分子量358)、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454;分子量429)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR494;分子量528)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499;分子量560)、ジエチレングリコールジアクリレート(SR230;分子量214)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR355、分子量466)(以上、Sartomer社)、ポリエチレングリコールジアクリレート(NKエステルA−400;分子量508)、(NKエステルA−600;分子量708)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル9G;分子量536)、ジプロピレングリコールジアクリレート(NKエステルAPG−100;分子量242)、イソシアヌレートトリアクリレート(NKエステルA−9300;分子量423、融点53℃)、テトラメチロールメタントリアクリレート(NKエステルA−TMM−3L;分子量298)、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(NKエステルA−9550)(以上、新中村化学工業株式会社)、テトラエチレングリコールジアクリレート(V#335HP;分子量302)、オクタデシルアクリレート(STA;分子量325、融点30℃)(以上、大阪有機化学工業株式会社)、グリセリンプロポキシアクリレート(OTA480;ダイセルサイテック株式会社)、ポリエステルアクリレート(GENOMER3414;RAHN社)、エポキシアクリレートオリゴマー(ETERCURE6234;長興化学工業株式会社)が含まれる。
(ラジカル光重合開始剤)
カラーインクおよび白色インクは、いずれもラジカル光重合開始剤を含む。カラーインクおよび白色インクは、同じ種類のラジカル光重合開始剤を含んでいてもよいし、異なる種類のラジカル光重合開始剤を含んでいてもよい。ラジカル光重合開始剤は、分子内結合開裂型のラジカル光重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル光重合開始剤とに大別される。
分子内結合開裂型のラジカル光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどのアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルが含まれる。
分子内水素引き抜き型のラジカル光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノンなどが含まれる。
インク中のラジカル光重合開始剤の配合量は、活性光線の種類やラジカル重合性化合物の種類などに応じて適宜設定されうるが、0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
インクは、光重合開始剤として光酸発生剤を含んでもよい。光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジスト、光カチオン重合に利用される化合物が含まれる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
(ゲル化剤)
カラーインクおよび白色インクは、いずれもゲル化剤を含む。ゲル化剤は、インクを温度により可逆的にゾルゲル相転移させる機能を有する。ゲル化剤は、ゲル化温度よりも高い温度でラジカル重合性化合物に溶解できることが好ましい。また、ゲル化剤は、ゲル化温度以下の温度でインク中において結晶化できることが好ましい。カラーインクおよび白色インクは、同じ種類のゲル化剤を含んでいてもよいし、異なる種類のゲル化剤を含んでいてもよい。
ゲル化剤がインク中で結晶化するとき、ゲル化剤の結晶化物である板状結晶が三次元的に囲む空間を形成し、前記空間にラジカル重合性化合物が内包されることが好ましい。このように、板状結晶が三次元的に囲む空間にラジカル重合性化合物が内包された構造を「カードハウス構造」ということがある。カードハウス構造は、液体のラジカル重合性化合物を保持することにより、インク液滴をピニングすることができる。それにより、液滴同士の合一を抑制することができる。また、インクの平滑化による過剰な光沢の発生を抑制することもできる。カードハウス構造を形成するためには、インク中に溶解しているラジカル重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。インク中で溶解しているラジカル重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
ゲル化剤の種類は、特に限定されない。ゲル化剤の例には、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、トリグリセライド、脂肪酸アミン、脂肪族ケトン、脂肪酸アミドが含まれる。これらのゲル化剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゲル化剤の好ましい例には、18−ペンタトリアコンタノンや16−ヘントリアコンタノンなどの脂肪族ケトン化合物(例えば花王株式会社製のカオーワックスT1など);パルミチン酸セチルやステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニルなどの脂肪族モノエステル化合物(例えばユニスタ−M−2222SL(日油株式会社)、エキセパールSS(花王株式会社、融点60℃)、EMALEX CC−18(日本エマルジョン株式会社)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社)、エキセパールMY−M(花王株式会社)、スパームアセチ(日油株式会社)、EMALEX CC−10(日本エマルジョン株式会社)など);N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドやN−(2−エチルヘキサノイル)−L−グルタミン酸ジブチルアミドなどのアミド化合物(味の素ファインテクノ株式会社より入手可能);1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール(新日本理化株式会社製のゲルオールDなど)などのジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス;キャンデリラワックスやカルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、ホホバエステルなどの植物系ワックス;ミツロウやラノリン、鯨ロウなどの動物系ワックス;モンタンワックスや水素化ワックスなどの鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油;硬化ヒマシ油誘導体やモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、ポリエチレンワックス誘導体、12−ヒドロキシステアリン酸誘導体などの変性ワックス;ベヘン酸やアラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸;ステアリルアルコールやベヘニルアルコールなどの高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシステアリン酸;ラウリン酸アミドやステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド(例えば日本化成株式会社製のニッカアマイドシリーズ、伊藤製油株式会社製のITOWAXシリーズ、花王株式会社製のFATTYAMIDシリーズなど);N−ステアリルステアリン酸アミドやN−オレイルパルミチン酸アミドなどのN−置換脂肪酸アミド;N,N’−エチレンビスステアリルアミドやN,N'−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、N,N'−キシリレンビスステアリルアミドなどの特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミンやテトラデシルアミン、オクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸やオレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン株式会社製のEMALLEXシリーズ、理研ビタミン株式会社製のリケマールシリーズ、理研ビタミン株式会社製のポエムシリーズなど);ショ糖ステアリン酸やショ糖パルミチン酸などのショ糖脂肪酸エステル(例えば三菱化学フーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルシリーズ);ポリエチレンワックスやα−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスなどの合成ワックス;重合性ワックス(例えばBaker-Petrolite社製のUNILINシリーズなど);ダイマー酸;ダイマージオール(例えばCRODA社製のPRIPORシリーズなど)が含まれる。
ここで、アルキル鎖の末端に−OH、−COOHなどの極性基を有しないゲル化剤を用いることで、ゾル状のインク中でのゲル化剤の安定性を向上させて、ゲル化剤の析出および相分離を抑制できる。また、インクの硬化物からの、時間の経過によるゲル化剤のブリードアウトを抑制することもできる。このようなゲル化剤としては、下記一般式(G1)および(G2)で表される脂肪族ケトン化合物および脂肪族エステル化合物がある。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G2):R3−COO−R4
[上記一般式(G1)および(G2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を有するアルキル基を表す。R1〜R4は、分岐部分を有していてもよい。]
一般式(G1)において、R1およびR2で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素原子数が12〜25の範囲内の直鎖アルキル基を含むことが好ましい。R1およびR2で表される基に含まれる直鎖部分の炭素原子数を12以上とすることで、ゲル化剤として必要な結晶性を確保できる。また、前述のカードハウス構造において、ラジカル重合性化合物を内包するための十分な空間を形成することができる。一方、R1またはR2で表される基に含まれる直鎖部分の炭素原子数を25以下にすることで、融点を適切な範囲に抑え、インクをインクジェット記録ヘッドから吐出する場合に、通常の吐出温度でもインク中にゲル化剤を溶解させることができる。
上記一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物の例には、ジリグノセリルケトン(C24−C24)、ジベヘニルケトン(C22−C22、融点88℃)、ジステアリルケトン(C18−C18、融点84℃)、ジエイコシルケトン(C20−C20)、ジパルミチルケトン(C16−C16、融点80℃)、ジミリスチルケトン(C14−C14)、ジラウリルケトン(C12−C12、融点68℃)、ラウリルミリスチルケトン(C12−C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12−C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14−C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14−C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14−C22)、パルミチルステアリルケトン(C16−C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16−C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18−C22)が含まれる。
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18-Pentatriacontanon(Alfa Aeser社)、Hentriacontan-16-on(Alfa Aeser社)、カオーワックスT1(花王株式会社)が含まれる。
一般式(G2)おいて、R3およびR4で表されるアルキル基は、特に制限されないが、炭素原子数12〜26の範囲内の直鎖部分を含むアルキル基であることが好ましい。R3およびR4で表されるアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素原子数が12〜26の範囲内であると、一般式(G1)で表される化合物と同様に、ゲル化剤に必要な結晶性を有しつつ、前述のカードハウス構造を形成でき、融点も高くなりすぎない。
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21−C22、融点70℃)、イコサン酸イコシル(C19−C20)、ステアリン酸ステアリル(C17−C18、融点60℃)、ステアリン酸パルミチル(C17−C16)、ステアリン酸ラウリル(C17−C12)、パルミチン酸セチル(C15−C16、融点54℃)、パルミチン酸ステアリル(C15−C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13−C14、融点43℃)、ミリスチン酸セチル(C13−C16、融点50℃)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13−C20)、オレイン酸ステアリル(C17−C18)、エルカ酸ステアリル(C21−C18)、リノール酸ステアリル(C17−C18)、オレイン酸ベヘニル(C18−C22)、セロチン酸ミリシル(C25−C16)、リノール酸アラキジル(C17−C20)が含まれる。
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の市販品の例には、ユニスターM−2222SL(日油株式会社)、ユニスターM−9676(日油株式会社)、エキセパールSS(花王株式会社、融点60℃)、ニッサンエレクト−ルWEP−2(日油株式会社)、ニッサンエレクト−ルWEP−4(日油株式会社)、WEP−11(日油株式会社)、EMALEX CC−18(日本エマルジョン株式会社)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社)、エキセパールMY−M(花王株式会社)、スパームアセチ(日油株式会社)、EMALEXCC−10(日本エマルジョン株式会社)が含まれる。
インク中のゲル化剤の配合量は、特に限定されないが、インク全量に対して0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、0.5〜7質量%の範囲内がより好ましく、0.5〜5質量%の範囲内がさらに好ましく、0.5〜3質量%の範囲内が特に好ましい。ゲル化剤の配合量を0.5質量%以上とすることで、インク液滴をゲル化(温度によるゾルゲル相転移)させやすくなる。一方、ゲル化剤の配合量を10質量%以下にすることで、画像表面に析出したゲル化剤による過剰な光沢の発生を防ぐことができ、かつインクジェットヘッドからのインク射出性を良好にすることができる。
(酸化チタン)
白色インクは、白色顔料として酸化チタン粒子を含む。白色インク中の酸化チタン粒子の配合量は、特に限定されないが、例えば10〜15質量%の範囲内であることが好ましい。酸化チタン粒子の含有量を10質量%以上とすることで、白色の発色を向上させることができる。酸化チタン粒子の含有量を15質量%以下とすることで、酸化チタン粒子によるインク吐出用記録ヘッドのつまりを防止し、インクの射出性を高めることができる。
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型、アナターゼ型およびブルーカイト型などがある。比重および粒径を小さくする観点からは、酸化チタンはアナターゼ型であることが好ましい。一方、屈折率を大きくし、かつ隠蔽性を高める観点からは、酸化チタンはルチル型であることが好ましい。結晶形態の異なる酸化チタンを組み合わせて用いてもよい。
酸化チタン粒子の重量平均粒子径は、特に限定されないが、50〜500nmの範囲内であることが好ましく、100〜300nmの範囲内であることがより好ましい。酸化チタン粒子の重量平均粒子径を50nm以上とすることで、隠蔽性を向上させることができる。一方、酸化チタン粒子の重量平均粒子径を500nm以下とすることで、酸化チタン粒子の分散性を安定させることができ、その結果インクの保存性および射出安定性を向上させることができる。
酸化チタン粒子は、耐光性を向上させるためにアルミナで被覆されていることが好ましい。酸化チタン粒子の表面をアルミナで被覆する方法は、特に限定されず、例えば特開平03−275768号公報や特開平05−286721号公報などに記載されている公知の方法を採用してもよい。たとえば、1)酸化チタン粒子を水に分散させてスラリーとし、2)所定の温度のスラリーに表面処理剤である可溶性アルミニウム化合物(アルミン酸ナトリウム)を添加して溶解させ、3)スラリーのpHを所定範囲に維持した状態で、スラリーに酸の沈殿剤を添加して中和し、アルミニウム水和物を沈着させることで、酸化チタン粒子の表面をアルミナで被覆を行うことができる。アルミナによる被覆量は、特に限定されないが、未処理の酸化チタンに対して0.3〜0.8質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜0.7質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、酸化チタン粒子は、アルミナ以外にも他の金属酸化物を組み合わせて被覆されていてもよい。
酸化チタン粒子は、市販の酸化チタン粒子を用いてもよい。市販の酸化チタン粒子の例には、CR−EL(石原産業株式会社)、CR−50(石原産業株式会社)、CR−80(石原産業株式会社)、CR−90(石原産業株式会社)、R−780(石原産業株式会社)、R−930(石原産業株式会社)、TCR−52(堺化学工業株式会社)、R−310(堺化学工業株式会社)、R−32(堺化学工業株式会社)、KR−310(チタン工業株式会社)、KR−380(チタン工業株式会社)、KR−380N(チタン工業株式会社)が含まれる。
白色インクには、酸化チタン粒子以外にも公知の白色顔料が配合されていてもよい。公知の白色顔料の例には、無機白色顔料、有機白色顔料および白色の中空ポリマー微粒子が含まれる。また、白色インクには、色調を整えるために、白色以外の染料または顔料が含まれていてもよい。
(色材)
カラーインクは、色材を含む。カラーインクは、少なくとも酸化チタン以外の色材を含むが、酸化チタンも含んでいてもよい。カラーインクに含まれる色材は、染料または顔料でありうる。インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料がより好ましい。
染料は、例えば油溶性染料である。油溶性染料としては、以下の各種染料が挙げられる。
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm-41、Yellow KX-7、Yellow EX-27(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Yellow-1、AIZEN SOT YelloW-3、AIZEN SOT Yellow-6(以上、保土谷化学工業株式会社)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX Fluorescent Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Yellow SF-G、KAYASET Yellow 2G、KAYASET Yellow A-G、KAYASET Yellow E-G(以上、日本化薬株式会社)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成株式会社)、HSY-68(三菱化成株式会社)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM-1450、MS Magenta HSo-147(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZENSOT Red-1、AIZEN SOT Red-2、AIZEN SOT Red-3、AIZEN SOT Pink-1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬株式会社)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成株式会社)、HSR-31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成株式会社)、Oil Red(BASFジャパン株式会社)が含まれる。
シアン染料の例には、MS Cyan HM-1238、MS Cyan HSo-16、Cyan HSo-144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Blue-4(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z-BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB-LL 330%(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL-5 200、Light Blue BGL-5 200(以上、日本化薬株式会社)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成株式会社)、DIARESIN Blue P(三菱化成株式会社)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Black-1、AIZEN SOT Black-5(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Black A-N(日本化薬株式会社)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成株式会社)、HSB-202(三菱化成株式会社)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
顔料の種類は、特に限定されない。たとえば、カラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料を使用することができる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレットRE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(以上、大日精化工業株式会社);KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(以上、DIC株式会社);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(以上、山陽色素株式会社);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(以上、東洋インキ株式会社);Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(以上、ヘキストインダストリー株式会社);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(以上、クラリアントジャパン株式会社);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(以上、三菱化学株式会社)が含まれる。
顔料の体積平均粒子径は、特に限定されないが、0.08〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。顔料の最大粒子径は、特に限定されないが、0.3〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.3〜3μmの範囲内であることがより好ましい。顔料の粒子径を調整することによって、インクジェット記録ヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
カラーインク中の色材の配合量は、特に限定されないが、0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.4〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。顔料または染料の配合量が少なすぎると、得られる画像の発色が十分ではなくなる。一方、顔料または染料の配合量が多すぎると、インクの粘度が高くなり、吐出性が低下する。
(その他の成分)
カラーインクおよび白色インクは、いずれも必要に応じて添加剤や樹脂などの他の成分をさらに含有してもよい。添加剤の例には、分散剤、分散助剤、重合禁止剤、光重合開始剤助剤、酸化防止剤界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物が含まれる。
分散剤の例には、3級アミン基を有するくし型ブロックコポリマー、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートが含まれる。「くし型ブロックコポリマー」とは、主鎖を形成する直鎖状のポリマーに対し、主鎖を構成するモノマーの1単位ごとに側鎖として別の種類のポリマーがグラフト重合したコポリマーを意味する。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ株式会社のPBシリーズなどが含まれる。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p−ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N-(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
光重合開始剤助剤は、例えば第3級アミン化合物である。好ましくは芳香族第3級アミン化合物である。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルヘキシルアミンが含まれる。なかでも、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。
塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物が含まれる。樹脂の例には、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂などの硬化膜の物性を調整するための樹脂が含まれる。
(インクの物性)
カラーインクおよび白色インクは、ゲル化剤を含むため、温度により可逆的にゾルゲル相転移することができる。ゾルゲル相転移型の活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)ではゾルであるため、インク吐出用記録ヘッドから吐出されうるが、基材に付着した後は自然冷却されてゲル化する。
カラーインクおよび白色インクの粘度は、基材に当該インクを付着させるときの基材の温度において1×100〜1×103Pas・sの範囲内であることが好ましい。インクの粘度を1×100以上とすることで、基材に付着した後に隣り合う液滴の合一を抑制することができる。また、インクの粘度を1×103以下とすることで、液滴が基材に適度に濡れ広がり、スジ感のない高精細な画像を得ることができる。インクの粘度は、レオメータにより測定されうる。レオメータは、Anton Paar社製のストレス制御型レオメータ(PhysicaMCRシリーズ)を用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
(インクの調製)
カラーインクおよび白色インクは、前述の色材(白色インクの場合は酸化チタン)、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびゲル化剤と、任意の各成分とを、加熱下において混合することにより調製されうる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、色材(白色インクの場合は酸化チタン)および分散剤を含む分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。
[画像の形成方法]
前述のとおり、画像形成工程では、基材の第1の面上に、カラーインクおよび白色インクをインクジェット方式で付着させて、画像を形成する。このとき、白色インクは、カラーインクにより形成された画像の一部または全部を覆うように、カラーインクの上に上塗りされる。具体的には、1または2種以上のカラーインクを基材の第1の面上に付着させた後に、白色インクを基材の第1の面上に付着させる。
インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッド部でインク液滴を吐出する場合、インクジェット記録ヘッド内のインクの温度を、インクのゲル化温度より10〜30℃高い温度に設定することで、インク液滴の吐出性を高めることができる。インクジェット記録ヘッド内のインク温度を、ゲル化温度よりも10℃以上高くすることで、インクジェット記録ヘッド内またはノズル表面でインクがゲル化することを抑制し、インク液滴の吐出を安定させやすくなる。一方、インクジェット記録ヘッド内のインクの温度を、ゲル化温度よりも30℃超の温度としないことで、インクが高温になることによるインク成分の劣化を防ぐことができる。インクは、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッドや、インクジェット記録ヘッドに接続したインク流路、インク流路に接続したインクタンクなどで加熱されうる。
また、インクの液滴が付着する際の基材の温度は、インクのゲル化温度よりも10〜20℃低い温度に設定されていることが好ましい。基材の温度が低すぎると、インクの液滴が過剰に迅速にゲル化してピニングしてしまう。一方で、基材の温度が高すぎると、インク液滴がゲル化しにくくなり、隣り合う液滴同士が混じりあうことがある。基材の温度を適切に調整することで、隣り合う液滴同士が混じり合わない程度の適度なレベリングと、適切なピニングとを両立できる。
インクジェット記録ヘッドの各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5〜10pLの範囲内であることが好ましく、高精細の画像を形成するためには0.5〜2.5pLの範囲内であることがより好ましい。このような液滴量で高精細な画像を形成するには、基材に付着した後のインク液滴が合一しない、つまりインクが十分にゾルゲル相転移する必要がある。上記のカラーインクおよび白色インクでは、ゾルゲル転移が速やかに行われる。したがって、このような液滴量でも高精細な画像を安定して形成することができる。
基材に付着したインク液滴は冷却されてゾルゲル相転移により速やかにゲル化する。これにより、インク液滴が拡散せずに、ピニングされうる。また、インク液滴中に酸素が入り込みにくいため、光重合性化合物の硬化が酸素によって阻害されにくい。
カラーインクおよび白色インクは、硬化後の総インク液滴膜厚が1〜20μmの範囲内となるように付着させられることが好ましい。ここで「総インク液滴膜厚」とは、基材に描画されたカラーインクおよび白色インクの硬化膜からなる厚みの最大値を意味する。
また、隠蔽性の向上、硬化性の向上およびカールの抑制を実現する観点からは、白色インクの付着量は、酸化チタン換算で0.6〜1.6g/m2の範囲内であることが好ましい。
画像形成工程は、シングルパス方式およびスキャン方式のいずれの方式で行われてもよいが、シングルパス方式を採用することで、画像形成速度を速めることができる。
基材の搬送速度は、特に限定されないが、例えば1〜120m/sの間で設定されうる。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まる。
(2)第1露光工程
第1露光工程は、画像形成工程の後に行われる。第1露光工程では、基材の第1の面(画像形成面)側から基材上のインクに活性光線を照射して、基材上のインクを部分的に硬化させる。通常、白色インクはほぼ全部が硬化し、カラーインクは一部のみ硬化する。
基材上のカラーインクおよび白色インクに照射する活性光線は、紫外線LEDからの紫外線であることが好ましい。一般的な紫外線の光源として、メタルハライドランプが挙げられるが、紫外線LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインクが溶ける、すなわち、インクの硬化膜表面に硬化不良が生じることを抑制できる。また、400nm以下の波長領域では、波長が短くなるほど酸化チタンによる吸収が大きくなる。したがって、インクを適切に硬化させる観点からは、紫外線LEDのピーク波長は、385〜400nmの範囲内が好ましい。紫外線LEDを有する光源の例には、Phoseon Technology社製の水冷式の紫外線照射ユニット(ピーク波長:395nm)が含まれる。
活性光線の照射条件は、インクの組成などに応じて適宜設定されうる。たとえば、紫外線LEDを有する光源を、基材上の白色インクの表面における最高照度が0.5〜10.0W/cm2、より好ましくは1〜5W/cm2となるように設置する。なお、活性光線の照射について、インクの厚みは無視できる範囲であるので、基材上のインク表面における最高照度の調整は、基材表面での最高照度の調整によって行ってもよい。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法では、カラーインクの上に白色インクを付着させているため、一回の露光でカラーインクおよび白色インクを硬化させようとすれば、必要な積算光量は多くなる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、一回の露光でカラーインクおよび白色インクを硬化させようと過剰量の積算光量を照射すると、得られる硬化膜の表面タック性は逆に劣化してしまうことがわかった。詳細は明らかではないが、白色インクに活性光線を照射した場合、酸化チタン粒子による光散乱により、白色インクの表面付近において多量のラジカルが発生する。また、ゲル化した白色インク中ではラジカルが移動しにくいため、白色インクの表面付近には過剰量のラジカルが存在してしまうことになり、その結果として白色インクの表面付近における重合度および架橋度が低下してしまい、表面タック性の劣化に繋がると推測している。そこで、本実施の形態に係るインクジェット記録方法では、このような問題を防止するため、基材上のインクに照射される積算光量を500mJ/cm2以下とする。積算光量を500mJ/cm2以下とすることで、白色インクの下部に位置するカラーインクを完全に硬化させることはできなくなるが、表面タック性の劣化を防止することができる。一方、ある程度の時間で白色インクを硬化させる観点からは、基材上のインクに照射される積算光量は、10mJ/cm2以上であることが好ましい。
基材の搬送速度は、特に限定されない。基材の搬送速度を画像形成工程と同じ速度にすることで、効率的な印刷が可能となる。搬送速度は、たとえば1〜120m/秒の間で設定されうる。
(3)第2露光工程
第2露光工程は、第1露光工程の後に行われる。第2露光工程では、基材の第2の面(画像を形成していない面)側から基材を透過させて基材上のインクに波長350〜400nmの範囲内の光を含む活性光線を照射して、基材上のインクを完全に硬化させる。この工程により、カラーインクも完全に硬化する。
基材上のカラーインクおよび白色インクに照射する活性光線は、第1露光工程と同様に、紫外線LEDからの紫外線であることが好ましい。
活性光線の照射条件は、インクの組成などに応じて適宜設定されうる。たとえば、第1露光工程と同様に、紫外線LEDを有する光源を、基材上のカラーインクの表面(基材とカラーインクの界面)における最高照度が0.5〜10.0W/cm2、より好ましくは1〜5W/cm2となるように設置する。カールを抑制するため、基材上のインクに照射される積算光量は、100〜1000mJ/cm2の範囲内であることが好ましい。
基材の搬送速度は、画像形成工程および第1露光工程と同じ速度にすることで、効率的な印刷が可能となる。
以上のように、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、基材の第1の面(画像形成面)側から基材上のインクに活性光線を照射して、基材上のインクを部分的に硬化させた後(第1露光工程)、基材の第2の面側から基材を透過させて基材上のインクに活性光線を照射して、基材上のインクを完全に硬化させる(第2露光工程)。本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、第1露光工程における積算光量を500mJ/cm2以下とするため、白色インクの表面付近における過剰量のラジカルの発生が抑制され、白色インクの表面付近も適切に硬化する。また、第1露光工程だけではインクの内部を硬化させることができないが、第1露光工程の後に第2露光工程を行うことで、インクの内部も適切に硬化する。結果として、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、酸化チタンおよびゲル化剤を含む白色インクを使用しながらも、表面硬化および内部効果をバランスよく進行させてカラーインクおよび白色インクを適切に硬化させることができる。
なお、第1露光工程と第2露光工程の順番を逆にした場合は、白色インクの表面硬化性が低下し、表面タック性が劣化してしまう(実施例のNo.14の画像サンプル参照)。第2露光工程を先に行った場合、第2の面側から照射された活性光線の一部はカラーインク層を経て白色インク層に到達する。この到達した活性光線によって白色インク内において微量のラジカルが発生し、部分的な重合が起きる。この後に第1露光工程を行っても、白色インク中の重合性化合物の反応速度やラジカルの拡散性などが変化しているため、白色インクの表面付近を適切に硬化させることができないと推察される。
2.インクジェット記録装置
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、2回の露光を行うことができるインクジェット記録装置を用いて実施されうる。本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、2つの紫外線照射部(露光部)を有するインクジェット記録装置を用いて実施されることが好ましいが、1つの紫外線照射部(露光部)を有するインクジェット記録装置を用いても実施することも可能である。1つの紫外線照射部(露光部)を有するインクジェット記録装置を用いて2回の露光を行う方法の例としては、基材の第1の面側から1度目の露光を行った後、基材を反転させてもう一度同じ紫外線照射装置にて基材の第2の面側から2度目の露光を行う方法が挙げられる。インクジェット記録装置には、ライン型のインクジェット記録方式(シングルパス方式)を採用するものと、シリアル型のインクジェット記録方式を採用するものとに大別される。前述のとおり、本実施の形態に係る画像形成方法は、いずれの方式であっても実施されうる。高速記録の観点では、ライン型のインクジェット記録方式の方が好ましい。
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す模式図である。図1に示されるように、インクジェット記録装置100は、基材供給部110、加熱部120、インク吐出部130、第1露光部140、第2露光部150および基材巻取部160を有する。
基材供給部110は、基材のロールをセットされ、基材を巻き出しながらインク吐出部130、第1露光部140および第2露光部150に向けて基材を供給する。
加熱部120は、インク吐出部130に対向するように基材の下部に配置されており、インク吐出部130からインクを吐出される基材を所定の温度まで加熱する。前述のとおり、インクの液滴が付着する際の基材の温度は、インクのゲル化温度よりも10〜20℃低い温度に設定されていることが好ましい。
インク吐出部130は、基材供給部110から巻き出され、搬送されてきた基材の第1の面上に、前述のカラーインクおよび白色インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成する。すなわち、インク吐出部130は、前述の画像形成工程を行う。このとき、カラーインクが白色インクよりも基材側に位置するように、インク吐出部130は、カラーインクを吐出して画像を形成した後に白色インクを吐出する。インク吐出部130は、例えば、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管およびピエゾヘッドを有している。インク吐出部130内では、カラーインクおよび白色インクは、ゾル状態となるように所定の温度(例えば100℃)となるように加温される。前述のとおり、インク吐出部130は、白色インクの付着量が酸化チタン換算で0.6〜1.6g/m2の範囲内となるように白色インクを吐出することが好ましい。
第1露光部140は、インク吐出部130の下流において基材の第1の面(画像形成面)に対向するように配置されている活性光線照射装置である。第1露光部140は、基材の第1の面側から基材上のカラーインクおよび白色インクに活性光線を照射する。すなわち、第1露光部140は、前述の第1露光工程を行う。このとき、第1露光部140は、積算光量が500mJ/cm2以下となるように活性光線をカラーインクおよび白色インクに照射する。前述のとおり、第1露光部140は、ピーク波長が385〜400nmの範囲内の活性光線を放出する紫外線LEDを有することが好ましい。
第2露光部150は、第1露光部140の下流において基材の第2の面に対向するように配置されている活性光線照射装置である。第2露光部150は、第1露光部140がカラーインクおよび白色インクに活性光線を照射した後に、第2の面側から基材を透過させて基材上のカラーインクおよび白色インクに波長350〜400nmの光を含む活性光線を照射する。すなわち、第2露光部150は、前述の第2露光工程を行う。前述のとおり、第2露光部150は、波長350〜400nmの光を含む活性光線を放出する紫外線LEDを有することが好ましい。また、第2露光部150は、積算光量が100〜1000mJ/cm2の範囲内となるように活性光線をカラーインクおよび白色インクに照射することが好ましい。なお、図1に示されるインクジェット記録装置100では、第2露光部150は、上流側および下流側に向けて移動できるように設置されている。
基材巻取部160は、第2露光部150の下流に配置されており、画像を形成された基材を巻き取る。
以上のように、本実施の形態に係るインクジェット記録装置100は、インク吐出部130の下流に配置された2台の活性光線照射装置(第1露光部140および第2露光部150)を有している。第1露光部140は、基材の第1の面側から活性光線を照射し、第2露光部150は、第1露光部140による露光の後に基材の第2の面側から活性光線を照射する。これにより、インクジェット記録装置100は、酸化チタンおよびゲル化剤を含む白色インクを使用しながらも、表面硬化および内部効果をバランスよく進行させてカラーインクおよび白色インクを適切に硬化させることができる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
1.インクジェットインクの調製
(1)顔料分散液の調製
(イエロー顔料分散液)
トリプロピレングリコールジアクリレート(ClogP:2.21)(APG−200;新中村化学工業株式会社)71質量部および分散剤(アジスパーPB824;味の素ファインテクノ株式会社)9質量部をステンレス鋼製のビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間攪拌して分散剤を溶解させた。
得られた液体を室温まで冷却した後、顔料としてPigment Yellow 180(クロモファインイエロー6280JC;大日精化工業株式会社)20質量部を加えた。混合液を直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、イエロー(Y)顔料分散液を得た。
(マゼンタ顔料分散液)
顔料をPigment Red 122(クロモファインレッド6112JC;大日精化工業株式会社)に変更した点を除いてはY顔料分散液と同様の手順で、マゼンタ(M)顔料分散液を調製した。
(シアン顔料分散液)
顔料をPigment Blue 15:4(クロモファインブルー6332JC;大日精化工業株式会社)に変更した点を除いてはY顔料分散液と同様の手順で、シアン(C)顔料分散液を調製した。
(ブラック顔料分散液)
顔料をPigment Black 7(#52;三菱化学株式会社)に変更した点を除いてはY顔料分散液と同様の手順で、ブラック(K)顔料分散液を調製した。
(ホワイト顔料分散液)
顔料を酸化チタン(TCR−52;堺化学工業株式会社)とし、顔料の添加量を60質量部に変更した点を除いてはY顔料分散液と同様の手順で、ホワイト(W)顔料分散液を調製した。
(2)インクの調製
下記の表1に記載された組成(単位は質量%)でゲル化剤、重合性化合物、添加剤および顔料分散液を混合し、80℃に加熱した状態で攪拌した。加熱した状態で、混合液をテフロン(登録商標)製の3μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社)を用いて濾過し、5種類のゲル化剤含有インク(Y−1〜W−1)および5種類のゲル化剤非含有インク(Y−2〜W−2)を得た。
ゲル化剤としては、ジステアリルケトン(分子量:520、ClogP:15以上)(カオーワックスT1;花王株式会社)およびベヘニン酸ベヘニル(分子量:648、ClogP:15以上)(ユニスターM−2222SL;日油株式会社)を使用した。
重合性化合物Aとしては、3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量:471、ClogP:4.9)(Miramer M360;Miwon Specialty Chemical社)を使用した。重合性化合物Bとしては、ポリエチレングリコール♯400ジアクリレート(分子量:508、ClogP:0.5)(NKエステルA−400;新中村化学工業株式会社)を使用した。重合性化合物Cとしては、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量:560、ClogP:3.6)(SR499;Sartomer社)を使用した。重合性化合物Aは、前述の「(メタ)アクリレートA」に相当し、重合性化合物Bおよび重合性化合物Cは、前述の「その他の重合性化合物」に相当する。
重合禁止剤としては、Irgastab UV10(BASF社)を使用した。光重合開始剤Aおよび光重合開始剤Bとしては、それぞれTPO(BASF社)およびIrgacure 819(BASF社)を使用した。界面活性剤としては、KF−352(信越化学工業株式会社)を使用した。
(3)インクの評価
(ゲル化剤の溶解安定性)
5種類のゲル化剤含有インクについて、100℃で4時間静置した後、ゲル化剤の溶解状態を目視で観察した。その結果、5種類すべてのインクにおいて、分離および析出は観察されなかった。また、5種類のゲル化剤非含有インクに付いても同様の観察を行ったが、分離および析出は観察されなかった。
(粘度)
各インクに付いて、ストレス制御型レオメータ(PhysicaMCRシリーズ;コーンプレート直径:75mm、コーン角:1.0°;Anton Paar社)を用いて当該インクを基材上に付着させる時の温度(40℃)におけるインクの粘度を測定した。その結果、5種類のゲル化剤含有インク(Y−1〜W−1)の粘度は、いずれも1×100〜1×103Pas・sの範囲内であった。一方、5種類のゲル化剤非含有インク(Y−2〜W−2)の粘度は、いずれも5〜50mPas・sの範囲内であった。
2.画像の形成
5種類のゲル含有インク(Y−1〜W−1)からなるインクセット、または5種類のゲル化剤非含有インク(Y−2〜W−2)からなるインクセットを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッド(各色42pL、360dpi)を有するライン方式のインクジェット記録装置(図1参照)に装填した。インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管およびピエゾヘッドからなり、インクが100℃となるように加温した。また、基材の搬送台は、40℃になるように加温した。
基材として、幅300mm、厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのロールを準備した。このPETフィルムの波長350〜400nmの光に対する透過率は、80%以上である。基材の上に、カラーインクK−1またはK−2を用いて50×200mmのサイズの100%ベタ画像(解像度:360×360dpi)を形成した後、カラーインクで形成された画像の全面が覆われるように、白色インクW−1またはW−2を用いて100×200mmのサイズの100%ベタ画像(解像度:360×360dpi)を形成した。このとき、カラーインクおよび白色インクの付着量が表2に示す量となるように、駆動波形および電圧を調整した。
白色インクを吐出してから5秒以内に、基材上のインクに紫外線を照射してインクを硬化させた。具体的には、白色インクを吐出した後、下流に設置された2つの水冷式の紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社)から光を照射してインクを硬化させた(放射照度:4W/cm2)。2つの紫外線照射ユニットは、光源として紫外線LED(ピーク波長:395nm)を有しており、基材の表側(画像形成面側)および裏側にそれぞれ設置されている(図1参照)。また、裏側に設置された紫外線照射ユニットは、可動式であり、必要に応じて表側に設置された紫外線照射ユニットよりも上流側または下流側に移動されうる。したがって、2つの紫外線照射ユニットは、任意の順番で表側および裏側から紫外線を照射することができる(表2の「露光方法」参照)。積算光量は、紫外線積算光量計(C9536−2およびH9958−2;浜松ホトニクス株式会社)を用いて測定し、基材の搬送速度を制御することで調整した。紫外線の照射条件を表2に示す。
3.画像の評価
(色混じり)
各画像サンプルについて、白画像と黒画像が重なった部分の表面および裏面を目視で観察し、下記の基準で色混じりを評価した。
○:重ね打ちした白色インクおよび黒色インクが混じり合うことなく、表側および裏側の色の違いを明確に認識できる。
×:重ね打ちした白色インクおよび黒色インクが混じり合ってしまい、表面および裏面で色の違いがほとんどない。
(表面硬化性)
各画像サンプルについて、白画像と黒画像が重なった部分の表面を指で触り、下記の基準で表面タック(表面硬化性)を評価した。
○:表面のベタつきが全くない。
△:わずかにベタつき感があるが、実用上問題ないレベル。
×:ベタつき感が顕著である。
(内部硬化性)
各画像サンプルについて、白画像と黒画像が重なった部分をコート紙で500gの加重をかけて30回擦った後の状態を目視で観察し、下記の基準で内部硬化性を評価した。
○:画像の変化がない。
△:画像濃度が若干低下しているが、実用上問題ないレベル。
×:著しく画像濃度が低下している。
(隠蔽性)
各画像サンプルについて、黒紙を下に敷いた状態で白画像のみが形成された部分のL*値を測定し、下記の基準で隠蔽性を評価した。
◎:L*値が75以上である。
○:L*値が75未満70以上である。
△:L*値が70未満65以上であるが、実用上問題ないレベル。
(カール)
内部硬化性の評価が△以上であった各画像サンプルについて、画像部分をはさみで基材から切り取り、切り出した画像部分を水平な台の上に載せてカールの程度を目視で観察し、下記の基準でカールを評価した。
○:カールが全く見られない。
△:わずかにカールが見られるが、実用上問題ないレベル。
×:顕著にカールが見られる。
(評価結果)
各画像サンプルの評価結果を表3に示す。
No.3およびNo.4の画像サンプル(比較例)の形成では、一般的な露光方法である画像形成面(表側)からのみの片面露光を行った。No.3およびNo.4の画像サンプル(比較例)の評価結果から、片面露光において積算光量が少ないと内部硬化性が不良となり、片面露光において積算光量が多いと表面硬化性が不良となることがわかる。積算光量が多い場合に表面硬化性が不良となる現象は、白色インクに特徴的に見られる現象であり、顔料として含まれる酸化チタンの光散乱性が大きく影響しているものと考えられる。
No.13の画像サンプル(比較例)の形成では、裏側からのみの片面露光を行った。No.13の画像サンプル(比較例)の評価結果から、裏側から片面露光を行った場合、表面硬化性が不良となることがわかる。裏側から露光した場合、黒画像を透過した光が白画像に入射するが、黒画像における光遮蔽の影響により白画像の表面に達する光が大幅に減少したためと考えられる。
一方、No.1およびNo.2の画像サンプル(実施例)の形成では、画像形成面(表側)だけでなく裏側からの露光も併用する両面露光を行った。このとき、表側および裏側の順番で露光を行うとともに、表側からの積算光量を抑えた。No.1およびNo.2の画像サンプル(実施例)の評価結果から、このように両面露光を行うことで、良好な表面硬化性および内部硬化性を実現できることがわかる。また、No.5の画像サンプル(比較例)の評価結果から、表側からの積算光量が500mJ/cm2を超える場合には、表面硬化性が不良となることがわかる。
No.14の画像サンプル(比較例)の形成では、裏側および表側の順番で露光を行った。このように裏側から先に露光した場合は、裏側からのみの片面露光を行った場合と同様に表面硬化性が不良となることがわかる。前述のとおり、裏側から露光した場合、照射光の一部は黒画像の領域を経て白画像の領域に到達する。この裏側から到達した光によって白画像の一部ではラジカルが微量発生してしまい、部分的な重合が起きる。その結果、その後に表側から露光しても、モノマーの反応速度やラジカルの拡散性が変化してしまい、白色インク表面の硬化状態は表側から先に露光した場合(No.1)と大きく異なってしまうと考えられる。すなわち、先に表側から適度な光量(500mJ/cm2以下)の光を照射することが、表面硬化性を良好にするための条件であると考えられ、全体の硬化性を高めるためには、その後に裏側から光を照射する必要があると考えられる。
No.6およびNo.7の画像サンプル(実施例)の評価結果から、インク膜厚が比較的厚い場合は、表側および裏側から照射される光量が少ない方が、硬化後のカールが軽減されることがわかる。また、No.2およびNo.12の画像サンプル(実施例)の評価結果から、カールの抑制の観点からは、裏側からの露光を1000mJ/cm2以内とすることが好ましいことがわかる。いずれも、照射する光量を抑えることで、硬化物の架橋度が過剰に高まることが抑制されたためと考えられる。
No.10およびNo.11の画像サンプル(実施例)の評価結果から、隠蔽性の向上、硬化性の向上およびカールの抑制の観点からは、白色インクの付着量を酸化チタン換算で0.6〜1.6g/m2の範囲内とすることが好ましいことがわかる。
なお、No.8の画像サンプル(比較例)の評価結果から、ゲル化剤を含まないインクを用いた場合は、色混じりが顕著となってしまい実用に耐えないことがわかる。
[実施例2]
基材として、幅300mm、厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの代わりに、幅300mm、厚さ50μmの透明なポリプロピレン(PP)フィルムを使用した点を除いては、実施例1と同様の実験および評価を行った。このPPフィルムの波長350〜400nmの光に対する透過率は、80%以上である。その結果、実施例1の結果と同様に、基材として透明PPフィルムを用いた場合でも本発明の効果が得られることを確認できた。
[実施例3]
1.インクジェットインクの調製
実施例1と同様の手順で、5種類のゲル含有インク(Y−1〜W−1)を調製した。
2.画像の形成
5種類のゲル含有インク(Y−1〜W−1)からなるインクセットを、実施例1と同じインクジェット記録装置(図1参照)に装填した。
基材として、幅300mm、厚さ50μmの透明なPETフィルムのロールを準備した。このPETフィルムの波長350〜400nmの光に対する透過率は、80%以上である。基材の上に、4種類のカラーインク(Y−1〜K−1)を用いて解像度360×360dpiのポートレート画像(高精細カラーデジタル標準画像、JIS X9201:1995、N1)を形成した後、白色インクW−1を用いて基材全面に100%ベタ画像(解像度:360×360dpi)を形成した。このとき、白色インクの付着量が表4に示す量となるように、駆動波形および電圧を調整した。実施例1と同様に、白色インクを吐出してから5秒以内に、基材上のインクに紫外線を照射してインクを硬化させた。紫外線の照射条件を表4に示す。
3.画像の評価
実施例1と同様に、各画像サンプルについて、色混じり、表面硬化性、内部硬化性、隠蔽性およびカールを評価した。各画像サンプルの評価結果を表5に示す。
表5から、4種類のカラーインクを用いてポートレート画像を形成した場合であっても、本発明の効果が得られることがわかる。