以下、本発明の実施形態に係る画像記録装置について、図面を参照して説明する。また、本発明の実施形態に係る画像記録方法は、実施形態に係る画像記録装置により実行されるので、画像記録装置と並行して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
〔画像記録装置の構成〕
図1は、実施の形態に係る画像記録装置の全体構成を示す模式図である。
画像記録装置1は、図1に示すように、給紙部10と、画像記録部20と、排紙部30と、制御部40と、インク供給部50とを備えている。画像記録装置1では、制御部40の制御に基づいて、給紙部10から画像記録部20に搬送された記録媒体Pに対して、インク供給部50から供給されたインクにより画像記録部20で画像を形成した後、その記録媒体Pを排紙部30に排出する。
給紙部10は、画像記録が行われる記録媒体Pを保持し、この記録媒体Pを画像記録部20に供給する。給紙部10は、給紙トレー11と、搬送部12とを有する。
給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを重ねて載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するように設けられており、記録媒体Pが搬送部12により搬送される位置で保持される。
搬送部12は、輪状のベルト123を複数(例えば、2本)のローラ121,122により回転駆動してベルト123上の記録媒体Pを搬送する搬送機構、及び、給紙トレー11に載置された記録媒体Pをベルト123に受け渡す供給部を有する。搬送部12は、供給部によりベルト123に受け渡された記録媒体Pをベルト123の回転動作によって搬送する。
画像記録部20は、搬入された記録媒体P上にヘッドからインクを吐出させて画像を形成する。画像記録部20は、受け渡しユニット22と、加熱部23と、搬送ドラム21と、複数のインクジェットヘッド24と、硬化手段となる照射部25と、デリバリー部26とを有している。
受け渡しユニット22は、給紙部10の搬送部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、搬送部12により搬送された記録媒体Pを搬送ドラム21に受け渡す。受け渡しユニット22は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持するスイングアーム部や、スイングアーム部に担持された記録媒体Pを搬送ドラム21に受け渡す円筒状の受け渡しドラム等を有する。受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pをスイングアーム部により取り上げ、受け渡しドラムに受け渡し、この記録媒体Pを搬送ドラム21の外周面に沿う向きに誘導して、搬送ドラム21に受け渡す。
搬送ドラム21の周面には、図示しない複数の吸引孔が設けられており、吸引孔に連通する搬送ドラム21の内部空間が負圧とされることにより、記録媒体Pが吸着されて保持される。記録媒体Pの保持は、記録媒体Pの端部を挟持する機械爪などにより行ってもよい。このとき、記録媒体Pは、第1面(表面)を搬送ドラム21の外周(外方)側に向けて保持される。
加熱部23は、搬送ドラム21に担持された記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒータ等を有し、通電に応じて発熱する。加熱部23は、搬送ドラム21の外周面の近傍であって、搬送ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてインクジェットヘッド24の上流側に設けられる。加熱部23は、搬送ドラム21に担持されて加熱部23の近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように、その発熱を制御部40により制御される。なお、搬送ドラム21の外周部分は、記録媒体Pの保温のため、断熱層の上に蓄熱層が形成された多層構造となっている。
搬送ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、中心軸回りに回転されることにより記録媒体Pを搬送する。搬送ドラム21の搬送面は、加熱部23、インクジェットヘッド24及び照射部25に順次対向し、搬送する記録媒体Pに対して画像記録に係る処理が順次行われるようにする。記録媒体Pの搬送速度は、特に限定されないが、例えば1~120m/sの間で設定されうる。搬送速度が速いほど画像記録速度が速まる。
インクジェットヘッド24は、搬送ドラム21に担持された記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。インクジェットヘッド24は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)の各色について個別に設けられている。図2では、搬送ドラム21の回転により搬送される記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したインクジェットヘッド24が設けられている。
各インクジェットヘッド24は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(幅方向)において記録媒体Pの全幅をカバーする長さを有して設けられている。すなわち、この実施形態における画像記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型画像記録装置である。各インクジェットヘッド24は、それぞれが複数のラインヘッドから構成されている。ラインヘッドは、ノズル面に開口した複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成され、吐出ノズル列に交差する方向に搬送される記録媒体Pに、吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる。ノズル面は、記録媒体Pに対向する面である。
インクジェットヘッド24の各吐出ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5~10pLの範囲内であることが好ましく、高精細の画像を形成するためには0.5~2.5pLの範囲内であることがより好ましい。インクは、硬化後の総インク液滴膜厚が1~20μmの範囲内となるように付着させられることが好ましい。ここで「総インク液滴膜厚」とは、記録媒体Pに吐出されたインクの硬化膜からなる厚みの最大値を意味する。
硬化手段となる照射部25は、インクジェットヘッド24により記録媒体P上にインクが吐出された後に、そのインクを硬化させるためのエネルギー線を記録媒体Pに向けて照射する。照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を有し、蛍光管を発光させて紫外線等のエネルギー線を照射する。この実施形態では、照射部25は、エネルギー線として紫外線を照射する。
照射部25は、搬送ドラム21の外周面の近傍であって、搬送ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてインクジェットヘッド24の下流側に設けられる。照射部25は、搬送ドラム21に担持されてインクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射し、エネルギー線の作用により記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させる。
なお、硬化手段は、この実施形態では紫外線を照射する照射部25であるが、これに限られず、紫外線ではないエネルギー線を照射する照射部でもよいし、加熱によりインクを硬化させる加熱装置や、その他の手段によりインクを硬化させる装置であってもよい。
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザ光源、メタルハライドランプ、LED(発光ダイオード)等が挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない紫外線LED等が望ましい。紫外線LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインクが溶ける、すなわち、インクの硬化膜表面に硬化不良が生じることを抑制できる。また、400nm以下の波長領域では、波長が短くなるほど酸化チタンによる吸収が大きくなる。したがって、インクを適切に硬化させる観点からは、紫外線LEDのピーク波長は、385~400nmの範囲内が好ましい。紫外線LEDを有する光源の例には、Phoseon Technology社製の水冷式の紫外線照射ユニット(ピーク波長:395nm)が含まれる。
また、エネルギー線は紫外線に限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて選択できる。エネルギー線の照射条件は、インクの組成などに応じて適宜設定されうる。たとえば、紫外線LEDを有する光源を、記録媒体上の白色インクの表面における最高照度が0.5~10.0W/cm2、より好ましくは1~5W/cm2となるように設置する。なお、エネルギー線の照射について、インクの厚みは無視できる範囲であるので、記録媒体上のインク表面における最高照度の調整は、記録媒体表面での最高照度の調整によって行ってもよい。
エネルギー線照射時の記録媒体Pの搬送速度は、特に限定されない。記録媒体Pの搬送速度をインク吐出時と同じ速度にすることで、効率的な画像記録が可能となる。搬送速度は、たとえば1~120m/秒の間で設定されうる。
この画像記録装置1は、1回目のインクの吐出を記録媒体Pの第1面(表面)に行い、2回目のインクの吐出を、記録媒体Pの第2面(裏面)に行う両面印刷を行うことができる。また、この画像記録装置1は、1回目のインクの吐出及び2回目のインクの吐出を、記録媒体の第1面(表面)に行うことができる。例えば、記録媒体P上に先に白下地を形成しておき、白下地の上にカラー画像を記録する場合である。
両面印刷を行う場合には、第1面(表面)にインクを吐出された記録媒体Pは、搬送ドラム21と反転ローラ266の間を通り、搬送ドラム21から離れて、反転ローラ266の周面に巻き付けられる。ここで、反転ローラ266は、回転方向を反転させ、巻き付けられた記録媒体Pを搬送ドラム21の方向に戻す。このとき、記録媒体Pは、搬送方向が反転され、それまでの搬送方向後端部が前端部となって搬送ドラム21の方向に戻される。ここで、反転アーム267が、記録媒体Pを反転ローラ266から離間させて、搬送ドラム21の周面上に案内する。このとき、記録媒体Pは、裏返され、第2面(裏面)を搬送ドラム21の外周(外方)側に向けて搬送ドラム21の周面上に案内される。記録媒体Pは、上述した第1面(表面)に対するインク吐出及び硬化と同様に、第2面(裏面)に対するインク吐出及び硬化をなされて、反転ローラ266まで搬送される。
第2面(裏面)にインクを吐出された記録媒体Pは、搬送ドラム21と反転ローラ266の間を通り、搬送ドラム21から離れて、反転ローラ266の周面に巻き付けられる。ここで、反転ローラ266は、回転方向を維持し、巻き付けられた記録媒体Pをデリバリー部26の受け渡しドラム265に受け渡す。
白下地を形成する場合など記録媒体Pの第1面(表面)のみに繰返し画像記録を行う場合には、上述の反転を行わない。この場合には、第1面(表面)にインクを吐出された記録媒体Pは、搬送ドラム21と反転ローラ266の間を通り、そのまま搬送ドラム21の外周面に保持されて搬送され、再び第1面(表面)に対するインク吐出及び硬化をなされる。
記録媒体Pの第1面(表面)のみに1回のみ画像記録を行う場合、及び、第1面(表面)に対する繰返し画像記録のうちの最後の画像記録を行った場合には、記録媒体Pは、搬送ドラム21と反転ローラ266の間を通り、搬送ドラム21から離れて、反転ローラ266の周面に巻き付けられる。ここで、反転ローラ266は、回転方向を維持し、巻き付けられた記録媒体Pをデリバリー部26の受け渡しドラム265に受け渡す。
デリバリー部26は、反転ローラ266に巻き付けられた記録媒体Pを反転ローラ266から排紙部30に搬送する。デリバリー部26は、輪状のベルト263を複数(例えば、2本)のローラ261,262により回転駆動してベルト263上の記録媒体Pを搬送する搬送機構や、記録媒体Pを反転ローラ266から搬送機構に受け渡す円筒状の受け渡しドラム264、265等を有する。デリバリー部26は、受け渡しドラム264、265によりベルト263に受け渡された記録媒体Pをベルト263により搬送して排紙部30に送り出す。
排紙部30は、デリバリー部26により画像記録部20から送り出された記録媒体Pを格納する。排紙部30は、板状の排紙トレー31等を有し、この排紙トレー31上に画像記録後の記録媒体Pを重ねて載置させる。
インク供給部50は、インクを貯留し、このインクを画像記録部20のインクジェットヘッド24に供給し、各色のインクをインクジェットヘッド24の吐出ノズルから吐出可能とする。
この実施形態の画像記録装置1では、インクジェットヘッド24は、Y、M、C、Kの各色に対応して4個が設けられているが、インクジェットヘッド24の個数はなんら限定されず、より多くの色に対応させてより多くの個数のインクジェットヘッドを設けてもよい。インクジェットヘッド24のインク吐出の方式はなんら限定されず、公知のいかなる方式のインクジェットヘッドであってもよい。
また、この実施形態の画像記録装置1では、搬送ドラム21の回転により記録媒体Pを搬送しているが、ベルトやローラ等を用いて、記録媒体Pを平面状態に維持したままで搬送してもよい。さらに、この実施形態の画像記録装置1は、画像記録中はインクジェットヘッド24が移動しないワンパス方式であるが、記録媒体Pを固定してインクジェットヘッド24を走査させるスキャン方式としてもよい。
図2は、図1に示した画像記録装置を示すブロック図である。
制御部40は、図2に示すように、CPU401を有している。CPU401は、画像記録装置1の全体動作を統括制御し、各種演算及び制御を実行する。CPU401には、RAM402及びROM403が接続されている。RAM402は、CPU401に作業用のメモリー空間を提供するとともに、一時データを記憶する。ROM403は、CPU401により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。CPU401に接続されたインタフェース404は、外部装置60との間でデータの送受信を行う手段であり、各種シリアルインターフェース又は各種パラレルインターフェースのいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成されている。
外部装置60には、画像入力部405が接続されている。画像入力部405は、外部装置60から記録画像データを受信する手段であり、各種シリアルインターフェース又は各種パラレルインターフェースのいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成されている。画像入力部405が受信した記録画像データは、画像傾き補正手段ともなる画像処理部406に送られる。
画像処理部406は、外部装置60から入力された記録画像データに対して中間調(ハーフトーン)処理等の画像処理を施すとともに、各ヘッドモジュール24毎の記録画像データに分割する。
各インクジェットヘッド24毎の記録画像データに分割された画像データは、画像記録制御部407に送られる。画像記録制御部407は、画像処理部406から入力された各インクジェットヘッド24毎の記録画像データに分割された画像データを一時格納し、制御信号生成部408から入力される制御信号に従って、各インクジェットヘッド24へ送出する。制御信号は、各インクジェットヘッド24毎の記録期間を制御する記録期間信号を含んでいる。記録期間信号は、各インクジェットヘッド24毎の、インク吐出(画像記録)期間を示す信号である。インク吐出期間には、各インクジェットヘッド24には、記録画像データが送出される。
CPU401に接続された機構制御部409は、CPU401からの指令及び制御信号生成部408から入力される制御信号に基づいて、搬送ドラム21を回転させるモータ等のインクジェット機構部410を制御する。
以下、図3~図6を用いて記録媒体に発生し得るしわについて説明し、その後、図7~図10を用いて本発明におけるしわ高さの抑制について説明する。
〔記録媒体の種類によるしわの発生〕
図3は、図1に示した画像記録装置における紫外線照射を示す側面図である。
図4は、図3に示した紫外線照射における記録媒体の収縮を示す側面図である。
画像記録装置1において、図3に示すように、記録媒体Pに吐出されたインクQは、紫外線UVの照射により硬化を始める。インクQは、図4に示すように、硬化することに伴って、体積が収縮する。インクQの体積が収縮すると、記録媒体Pには、インクQに追従する収縮圧力が発生する。記録画像の濃度が高いほどインクQの硬化量及び収縮量が多くなり、剛性が低い記録媒体Pは、インクQの収縮に追従し、しわが発生する。
この画像記録装置1において、インクの硬化に必要な光量が500mJ/m
2、照射時間0.8秒であるときの紫外線(UV)照射レベルとインク硬化強度との関係を以下の〔表1〕に示す。
図5は、紫外線照射レベルと上質紙に発生するしわ高さとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、横軸に紫外線(UV)照射レベル、縦軸に発生するしわ高さを示すと、剛性の低い上質紙では、紫外線照射レベルがレベル3以上になると、発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さに達してしまう。
図6は、紫外線照射レベルとコート紙に発生するしわ高さとの関係を示すグラフである。
図6に示すように、剛性の高いコート紙では、紫外線照射レベルがレベル5になっても、発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さには達しない。
〔記録媒体に発生するしわ高さの抑制〕
図7は、図3に示した紫外線照射における記録媒体が収縮しない状態を示す側面図である。
この画像記録装置1においては、記録媒体Pに対するインクの吐出及び該インクの硬化を繰り返して行う場合には、インクの硬化に伴って記録媒体Pに発生するしわ高さを抑制するため、最後に行うインクの硬化よりも、図7に示すように、最後よりも前に行うインクQの硬化の硬化速度を遅くする。図7は、1回目(最後よりも前)に行うインクQの硬化を示している。インクQの硬化速度が遅いことにより、記録媒体Pの収縮速度も遅くなるので、記録媒体Pに発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さに達しない。
この実施形態のように、インクの硬化を紫外線の照射によって行う場合には、インクの硬化速度を遅くすることは、紫外線の照射量を減らすことによって行うことが好ましい。
インクQの硬化速度が遅いと、硬化処理を継続する時間が一定であれば、インクQは、仮硬化状態となる。インクQの硬化速度を遅くし、かつ、仮硬化状態とすることは好ましいことである。これにより、記録媒体Pの収縮速度が遅くなり、かつ、収縮量も減るので、記録媒体Pに発生するしわ高さをより低くできる。
この実施形態のように、インクの硬化を紫外線の照射によって行う場合には、インクを仮硬化状態とすることは、紫外線の照射時間を変えずに照射量を減らすことによって行うことができる。つまり、搬送ドラム21による記録媒体Pの搬送速度を一定速度に維持したままで、照射部25による紫外線の照射量を減らすことにより、インクを仮硬化状態とすることができる。
図8は、両面印刷の紫外線照射において記録媒体が収縮しない状態を示す側面図である。
両面印刷では、図8に示すように、画像記録装置1は、1回目のインクの吐出及び硬化(最後よりも前に行うインクの硬化)を記録媒体の第1面に行い、2回目のインクの吐出及び硬化(最後に行うインクの硬化)を記録媒体の第2面に行う。
両面印刷の場合には、まず、記録媒体Pの第1面(表面)に1回目のインクの吐出を行い、このインクを硬化させる。この硬化(最後よりも前に行うインクの硬化)は、硬化速度を遅くする。インクの硬化速度が遅いことにより、記録媒体Pに発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さに達しない。次に、第2面(裏面)に2回目のインクの吐出を行い、このインクを硬化させる。この硬化(最後に行うインクの硬化)は、通常の硬化速度で行う。
両面印刷の場合には、記録媒体Pの第1面(表面)P1に吐出したインクQ1の硬化速度を遅くし、硬化処理を継続する時間を一定として仮硬化状態とすることも好ましい。記録媒体Pの収縮速度が遅くなり、収縮量も減るので、記録媒体Pに発生するしわ高さをさらに抑制できる。次に、第2面(裏面)P2に吐出したインクQ2を通常の硬化速度で本硬化させる。このとき、第1面P1に吐出したインクQ1の仮硬化状態を、第2面P2のインクQ2とともに本硬化させることが好ましい。第1面P1に吐出されたインクQ1は、記録媒体Pを透過するエネルギー線や熱によって本硬化される。
この実施形態のように、インクの硬化を紫外線の照射によって行う場合には、第1面P1への紫外線照射レベルを低く設定することにより、第1面P1に吐出したインクQ1の硬化速度を遅くして仮硬化状態とする。これにより、記録媒体Pに発生するしわ高さをさらに抑制することができる。次に、第2面P2への紫外線照射レベルを第1面P1への紫外線照射レベルよりも高く設定することにより、第2面P2に吐出されたインクQ2を本硬化させる。このとき、記録媒体Pに紫外線を透過させて、第1面P1に吐出され仮硬化状態となっているインクQ1も本硬化させる。第2面P2のインクQ2の硬化速度は、第1面P1のインクQ1よりも速くなるが、第1面P1のインクQ1が仮硬化しているので記録媒体Pの剛性が補われ、記録媒体Pの収縮量は第2面P2のインクQ2の硬化に追従せず、しわ高さが抑制される。第2面P2のインクQ2の硬化の際のしわ高さの抑制により画像品質が良好に維持される。
また、紫外線の照射量は、上述のように記録媒体Pに対するインクの吐出及びインクの硬化を繰り返して行う場合(両面印刷)には、記録媒体Pに対するインクの吐出及びインクの硬化を1回のみ行う場合(片面印刷)とは異ならせることが好ましい。例えば、片面印刷を行う場合のインクを本硬化させる紫外線照射レベルの設定がレベル3とすると、両面印刷を行う場合の1回目(表面)のインクを仮硬化させる紫外線照射レベルの設定をレベル2とし、2回目及び1回目(両面)のインクを本硬化させる紫外線照射レベルの設定をレベル4とする。つまり、第2面(裏面)に照射する紫外線の照射量を、第2面(裏面)に吐出されたインク及び第1面(表面)に吐出されて仮硬化されているインクの両方を本硬化させる照射量とする。2回目の紫外線照射レベルを、片面印刷を行う場合の紫外線照射レベルより高くすることにより、両面のインクを確実に本硬化させることができる。
ここで、本発明における仮硬化とは、記録媒体Pに発生するしわ高さがインクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)しない高さに抑制される状態のことである。記録媒体P及びインクの種類、インクの吐出量(画像濃度)によって、記録媒体Pに発生するしわ高さは異なるが、薄紙のように剛性が低い記録媒体を用いる場合、インクの収縮率が高い場合、または、インクの吐出量が多い(画像濃度が高い)場合には、硬化状態が10%程度を超えると、しわ高さを抑制できない虞がある。また、厚紙のように剛性が高い記録媒体を用いる場合、インクの収縮率が低い場合、又は、インクの吐出量が少ない(画像濃度が低い)場合には、硬化状態が100%に近くなっても、しわ高さを抑制できることがある。仮硬化としてどの程度の硬化状態とするかは、用いる記録媒体の剛性、インクの収縮率及びインクの吐出量や、その他の条件に応じて、記録媒体に発生するしわ高さを抑制できる(一定以下に抑えられる)硬化状態として特定される。
例えば、インク吐出量(画像濃度)50%以上において、厚さ0.11mmの普通紙(上質紙)では、仮硬化とは60%程度の硬化状態である。また、厚さ0.07mm以下の薄紙の場合、上質紙では仮硬化とは40%程度の硬化状態、コート紙では仮硬化とは60%程度の硬化状態である。
また、コート紙や厚紙など剛性が十分に高い記録媒体では、繰り返しインクを吐出する場合でも発生するしわ高さは低い。したがって、以下の〔表2〕に示すように、紫外線の照射量は、記録媒体の種類、厚さ及び坪量に基づいて決定することが好ましい。コート紙や厚紙など、厚さ及び坪量が大きく剛性の高い記録媒体では、1回目の紫外線照射レベルを低くする(照射量を減らす)必要はない。記録媒体Pの坪量が所定の坪量以下である場合のみに、紫外線照射レベルを低くする(照射量を減らす)ことが好ましい。
図9は、吐出されるインクの量と上質紙に発生するしわ高さとの関係を示すグラフである。
図9に示すように、横軸に吐出されるインクの量、縦軸に発生するしわ高さを示すと、剛性の低い上質紙では、吐出されるインクの量が70%付近で、発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さに達してしまう。
図10は、吐出されるインクの量とコート紙に発生するしわ高さとの関係を示すグラフである。
図10に示すように、剛性の高いコート紙では、吐出されるインクの量が100%になっても、発生するしわ高さは、インクジェットヘッド24のノズル面に接触(ヘッドアタック)する高さには達しなかった。
したがって、以下の〔表3〕に示すように、記録媒体Pに吐出されるインクの量が所定量より多い場合には、記録媒体Pに対する収縮圧力が高くなるので、紫外線照射レベルを低くする(照射量を減らす)ことが好ましい。
なお、上述の実施形態では両面印刷を行う場合について説明したが、白下地を形成する場合も同様に、インクQの吐出及び硬化を行うことができる。白下地を形成する場合には、インクQの吐出及び硬化の繰り返しは、1回目のインクQ(白下地)の吐出及び硬化と、2回目以降のインクQ(画像)の吐出及び硬化とを、記録媒体Pの第1面に行う。白下地を形成する場合には、記録媒体Pの第1面に吐出した白下地を仮硬化させ、この白下地上に吐出したインクを、白下地とともに本硬化させることも好ましい。
さらに、インクQの吐出及び硬化の繰り返しは、2回に限定されず、3回以上であってもよい。例えば、白下地の形成及び画像記録を、記録媒体Pの両面に行ってもよい。また、画像記録を繰返し重ねて行ってもよい。このようにインクQの吐出及び硬化を3回以上繰り返す場合においては、各回のインク硬化の硬化速度を徐々に早くしていってもよいし、各回のインク硬化を仮硬化として最後のインク硬化のみを本硬化としてもよい。
図11は、図1に示した画像記録装置の動作を示すフローチャートである。
制御部40は、図11に示すように、処理を開始すると、印刷指示を行う(ステップst1)次に、制御部40は、1回目のインクの吐出及び硬化の後に、2回目のインクの吐出及び硬化があるか否か(両面印刷又は白下地形成であるか否か)を判別し、2回目のインクの吐出及び硬化がある場合にはステップst3に進み、2回目のインクの吐出及び硬化がない場合(片面印刷)にはリターンする(ステップst2)。
次に、制御部40は、記録媒体の種類、厚さ及び坪量を判別し、これらにより決まる記録媒体の剛性が所定値未満である場合にはステップst4に進み、剛性が所定値以上である場合にはリターンする(ステップst3)。
次に、制御部40は、1回目に吐出されるインクの量が所定値以上である場合にはステップst5に進み、インクの量が所定値未満である場合にはリターンする(ステップst4)。
次に、制御部40は、1回目に吐出されたインクに対する紫外線照射レベルを低レベルに決定し、また、2回目に吐出されたインクに対する紫外線照射レベルを決定する(ステップst5)。
次に、制御部40は、ステップst5で決定された紫外線照射レベルに従って紫外線照射を行い、リターンする(ステップst6)。
〔画像記録装置で用いるインク〕
本実施形態の画像記録装置1で用いられるインクは、特に限られないが、例えば、紫外線(UV)硬化型のインクである。この紫外線硬化型インクは、紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態とゾル(液体)状態との間で相変化する。例えば、このインクは、ゲル化剤を含有し、所定の温度、例えば、40℃~100℃程度が相変化温度であり、この相変化温度以上に加温されることで一様にゾル化(液化)する。一方、このインクは、通常の室温程度(0℃~30℃)を含む所定の温度以下では、ゲル化する。
(カラーインク及び白色インク)
白色インクは、色材としての酸化チタン、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤及びゲル化剤を含むエネルギー線硬化型インクである。カラーインクは、色材(少なくとも酸化チタン以外の色材を含む)、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤及びゲル化剤を含むエネルギー線硬化型インクである。カラーインクは、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)又はブラック(K)の色を呈する。画像記録には、これらのカラーインクを組み合わせたインクセットを使用してもよい。もちろん、カラーインクは、他の色を呈していてもよい。なお、本明細書において「カラーインク」とは、前述の上塗り用に用いられる白色インク以外のインクをいう。以下、各成分について説明する。
(ラジカル重合性化合物)
カラーインク及び白色インク(以下単に「インク」ともいう)は、いずれもラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの混合物)である。インク中に含まれるラジカル重合性化合物は、一種のみであってもよいし二種以上であってもよい。また、カラーインク及び白色インクは、同じ種類のラジカル重合性化合物を含んでいてもよいし、異なる種類のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンが含まれる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸が含まれる。なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリレートは、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマー及びオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」には、アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマー、メタクリレートモノマー及び/又はメタクリレートオリゴマーが含まれる。
インクは、ラジカル重合性化合物として、ClogP値が4.0~7.0の範囲内にある(メタ)アクリレート(以下「(メタ)アクリレートA」ともいう)を含有してもよい。この(メタ)アクリレートAのClogP値が4.0以上とすることで、加熱した際にゲル化剤が溶解しやすくなり、インクをゾルゲル相転移しやすくすることができる。また、インクをインクジェットヘッドから吐出する場合に、インクの吐出不良を低減させることができる。一方、(メタ)アクリレートAのClogP値を7.0以下とすることで、インク中のラジカル光重合開始剤の溶解性を向上させて、インクの硬化性及びインクの吐出性を向上させることができる。(メタ)アクリレートAのClogP値は、より好ましくは4.5~6.0の範囲内である。
ここで「logP値」とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
「ClogP値」とは、計算により算出したlogP値である。ClogP値は、フラグメント法や、原子アプローチ法などにより算出されうる。具体的には、ClogP値を算出するには、文献(C.Hansch and A.Leo, "Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology", John Wiley & Sons, New York, (1969).)に記載のフラグメント法又は市販のソフトウェアパッケージを用いればよい。
(メタ)アクリレートAの分子量は、280~1500の範囲内にあることが好ましく、280~800の範囲内あることがより好ましい。インクジェットヘッドからインク液滴を安定に吐出するためには、吐出温度でのインク粘度を7~14mPa・sの間にするとよい。分子量が280以上の(メタ)アクリレートAとゲル化剤とを含むインク組成物は、吐出温度前後でのインクの粘度変化が小さい。そのため、インク粘度を上記範囲内に調整しやすくなる。また、分子量が280以上の(メタ)アクリレートAは、臭気が少ないため、インク及びその硬化物の臭気を少なくすることができる。一方、(メタ)アクリレートAの分子量を1500以下にすることで、インクのゾル粘度を好適な範囲に保つことができる。
インク中の(メタ)アクリレートAの配合量は、特に限定されないが、10~40質量%の範囲内であることが好ましく、15~25質量%の範囲内であることがより好ましい。
ClogP値が4.0~7.0の範囲内にある(メタ)アクリレートAのより好ましい例には、分子内に(-C(CH3)H-CH2-O-)で表される構造を3~14個有する三官能以上のメタクリレート又はアクリレート、分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレートが含まれる。これらの(メタ)アクリレートAは、光硬化性が高く、かつ硬化したときの収縮が少ない。さらに、ゾルゲル相転移の繰り返し再現性が高い。
分子内に(-C(CH3)H-CH2-O-)で表される構造を3~14個有する三官能以上のメタクリレート又はアクリレートとは、例えば、3個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をプロピレンオキシド変性し、得られた変性物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。この化合物の例には、3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Photomer 4072;分子量471、ClogP4.90;Cognis社)、3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Miramer M360;分子量471、ClogP4.90;Miwon社)が含まれる。
分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレートとは、例えば、2個以上の水酸基とトリシクロアルカンとを有する化合物の水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。この化合物の例には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(NKエステルA-DCP;分子量304、ClogP4.69;新中村化学工業株式会社)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(NKエステルDCP;分子量332、ClogP5.12;新中村化学工業株式会社)が含まれる。
(メタ)アクリレートAの別の例には、1,10-デカンジオールジメタクリレート(NKエステルDOD-N;分子量310、ClogP5.75、新中村化学工業株式会社)、8EO変性ノニルフェノールアクリレート(Miramer M166;分子量626、ClogP6.42;Miwon社)も含まれる。
その他の重合性化合物の例には、4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート(CD561;分子量358)、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454;分子量429)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR494;分子量528)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499;分子量560)、ジエチレングリコールジアクリレート(SR230;分子量214)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR355、分子量466)(以上、Sartomer社)、ポリエチレングリコールジアクリレート(NKエステルA-400;分子量508)、(NKエステルA-600;分子量708)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル9G;分子量536)、ジプロピレングリコールジアクリレート(NKエステルAPG-100;分子量242)、イソシアヌレートトリアクリレート(NKエステルA-9300;分子量423、融点53℃)、テトラメチロールメタントリアクリレート(NKエステルA-TMM-3L;分子量298)、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(NKエステルA-9550)(以上、新中村化学工業株式会社)、テトラエチレングリコールジアクリレート(V#335HP;分子量302)、オクタデシルアクリレート(STA;分子量325、融点30℃)(以上、大阪有機化学工業株式会社)、グリセリンプロポキシアクリレート(OTA480;ダイセルサイテック株式会社)、ポリエステルアクリレート(GENOMER3414;RAHN社)、エポキシアクリレートオリゴマー(ETERCURE6234;長興化学工業株式会社)が含まれる。
(ラジカル光重合開始剤)
カラーインク及び白色インクは、いずれもラジカル光重合開始剤を含む。カラーインク及び白色インクは、同じ種類のラジカル光重合開始剤を含んでいてもよいし、異なる種類のラジカル光重合開始剤を含んでいてもよい。ラジカル光重合開始剤は、分子内結合開裂型のラジカル光重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル光重合開始剤とに大別される。
分子内結合開裂型のラジカル光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどのアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド系;ベンジル及びメチルフェニルグリオキシエステルが含まれる。
分子内水素引き抜き型のラジカル光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノンなどが含まれる。
インク中のラジカル光重合開始剤の配合量は、エネルギー線の種類やラジカル重合性化合物の種類などに応じて適宜設定されうるが、0.01~10質量%の範囲内であることが好ましい。
インクは、光重合開始剤として光酸発生剤を含んでもよい。光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジスト、光カチオン重合に利用される化合物が含まれる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187~192ページ参照)。
(ゲル化剤)
カラーインク及び白色インクは、いずれもゲル化剤を含む。ゲル化剤は、インクを温度により可逆的にゾルゲル相転移させる機能を有する。ゲル化剤は、ゲル化温度よりも高い温度でラジカル重合性化合物に溶解できることが好ましい。また、ゲル化剤は、ゲル化温度以下の温度でインク中において結晶化できることが好ましい。カラーインク及び白色インクは、同じ種類のゲル化剤を含んでいてもよいし、異なる種類のゲル化剤を含んでいてもよい。
ゲル化剤がインク中で結晶化するとき、ゲル化剤の結晶化物である板状結晶が三次元的に囲む空間を形成し、前記空間にラジカル重合性化合物が内包されることが好ましい。このように、板状結晶が三次元的に囲む空間にラジカル重合性化合物が内包された構造を「カードハウス構造」ということがある。カードハウス構造は、液体のラジカル重合性化合物を保持することにより、インク液滴をピニングすることができる。それにより、液滴同士の合一を抑制することができる。また、インクの平滑化による過剰な光沢の発生を抑制することもできる。カードハウス構造を形成するためには、インク中に溶解しているラジカル重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。インク中で溶解しているラジカル重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
ゲル化剤の種類は、特に限定されない。ゲル化剤の例には、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、トリグリセライド、脂肪酸アミン、脂肪族ケトン、脂肪酸アミドが含まれる。これらのゲル化剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゲル化剤の好ましい例には、18-ペンタトリアコンタノンや16-ヘントリアコンタノンなどの脂肪族ケトン化合物(例えば花王株式会社製のカオーワックスT1など);パルミチン酸セチルやステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニルなどの脂肪族モノエステル化合物(例えばユニスタ-M-2222SL(日油株式会社)、エキセパールSS(花王株式会社、融点60℃)、EMALEX CC-18(日本エマルジョン株式会社)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社)、エキセパールMY-M(花王株式会社)、スパームアセチ(日油株式会社)、EMALEX CC-10(日本エマルジョン株式会社)など);N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドやN-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミドなどのアミド化合物(味の素ファインテクノ株式会社より入手可能);1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(新日本理化株式会社製のゲルオールDなど)などのジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、ペトローラークタムなどの石油系ワックス;キャンデリラワックスやカルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、ホホバエステルなどの植物系ワックス;ミツロウやラノリン、鯨ロウなどの動物系ワックス;モンタンワックスや水素化ワックスなどの鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油;硬化ヒマシ油誘導体やモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、ポリエチレンワックス誘導体、12-ヒドロキシステアリン酸誘導体などの変性ワックス;ベヘン酸やアラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸;ステアリルアルコールやベヘニルアルコールなどの高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシステアリン酸;ラウリン酸アミドやステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド(例えば日本化成株式会社製のニッカアマイドシリーズ、伊藤製油株式会社製のITOWAXシリーズ、花王株式会社製のFATTYAMIDシリーズなど);N-ステアリルステアリン酸アミドやN-オレイルパルミチン酸アミドなどのN-置換脂肪酸アミド;N,N’-エチレンビスステアリルアミドやN,N'-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N'-キシリレンビスステアリルアミドなどの特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミンやテトラデシルアミン、オクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸やオレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン株式会社製のEMALLEXシリーズ、理研ビタミン株式会社製のリケマールシリーズ、理研ビタミン株式会社製のポエムシリーズなど);ショ糖ステアリン酸やショ糖パルミチン酸などのショ糖脂肪酸エステル(例えば三菱化学フーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルシリーズ);ポリエチレンワックスやα-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスなどの合成ワックス;重合性ワックス(例えばBaker-Petrolite社製のUNILINシリーズなど);ダイマー酸;ダイマージオール(例えばCRODA社製のPRIPORシリーズなど)が含まれる。
ここで、アルキル鎖の末端に-OH、-COOHなどの極性基を有しないゲル化剤を用いることで、ゾル状のインク中でのゲル化剤の安定性を向上させて、ゲル化剤の析出および相分離を抑制できる。また、インクの硬化物からの、時間の経過によるゲル化剤のブリードアウトを抑制することもできる。このようなゲル化剤としては、下記一般式(G1)及び(G2)で表される脂肪族ケトン化合物及び脂肪族エステル化合物がある。
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
〔上記一般式(G1)及び(G2)中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を有するアルキル基を表す。R1~R4は、分岐部分を有していてもよい。〕
一般式(G1)において、R1及びR2で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~25の範囲内の直鎖アルキル基を含むことが好ましい。R1及びR2で表される基に含まれる直鎖部分の炭素原子数を12以上とすることで、ゲル化剤として必要な結晶性を確保できる。また、前述のカードハウス構造において、ラジカル重合性化合物を内包するための十分な空間を形成することができる。一方、R1又はR2で表される基に含まれる直鎖部分の炭素原子数を25以下にすることで、融点を適切な範囲に抑え、インクをインクジェットヘッドから吐出する場合に、通常の吐出温度でもインク中にゲル化剤を溶解させることができる。
上記一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物の例には、ジリグノセリルケトン(C24-C24)、ジベヘニルケトン(C22-C22、融点88℃)、ジステアリルケトン(C18-C18、融点84℃)、ジエイコシルケトン(C20-C20)、ジパルミチルケトン(C16-C16、融点80℃)、ジミリスチルケトン(C14-C14)、ジラウリルケトン(C12-C12、融点68℃)、ラウリルミリスチルケトン(C12-C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12-C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14-C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14-C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14-C22)、パルミチルステアリルケトン(C16-C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16-C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18-C22)が含まれる。
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18-Pentatriacontanon(Alfa Aeser社)、Hentriacontan-16-on(Alfa Aeser社)、カオーワックスT1(花王株式会社)が含まれる。
一般式(G2)おいて、R3及びR4で表されるアルキル基は、特に制限されないが、炭素原子数12~26の範囲内の直鎖部分を含むアルキル基であることが好ましい。R3及びR4で表されるアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素原子数が12~26の範囲内であると、一般式(G1)で表される化合物と同様に、ゲル化剤に必要な結晶性を有しつつ、前述のカードハウス構造を形成でき、融点も高くなりすぎない。
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21-C22、融点70℃)、イコサン酸イコシル(C19-C20)、ステアリン酸ステアリル(C17-C18、融点60℃)、ステアリン酸パルミチル(C17-C16)、ステアリン酸ラウリル(C17-C12)、パルミチン酸セチル(C15-C16、融点54℃)、パルミチン酸ステアリル(C15-C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13-C14、融点43℃)、ミリスチン酸セチル(C13-C16、融点50℃)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13-C20)、オレイン酸ステアリル(C17-C18
)、エルカ酸ステアリル(C21-C18)、リノール酸ステアリル(C17-C18)、オレイン酸ベヘニル(C18-C22)、セロチン酸ミリシル(C25-C16)、リノール酸アラキジル(C17-C20)が含まれる。
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の市販品の例には、ユニスターM-2222SL(日油株式会社)、ユニスターM-9676(日油株式会社)、エキセパールSS(花王株式会社、融点60℃)、ニッサンエレクト-ルWEP-2(日油株式会社)、ニッサンエレクト-ルWEP-4(日油株式会社)、WEP-11(日油株式会社)、EMALEX CC-18(日本エマルジョン株式会社)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社)、エキセパールMY-M(花王株式会社)、スパームアセチ(日油株式会社)、EMALEXCC-10(日本エマルジョン株式会社)が含まれる。
インク中のゲル化剤の配合量は、特に限定されないが、インク全量に対して0.5~10質量%の範囲内が好ましく、0.5~7質量%の範囲内がより好ましく、0.5~5質量%の範囲内がさらに好ましく、0.5~3質量%の範囲内が特に好ましい。ゲル化剤の配合量を0.5質量%以上とすることで、インク液滴をゲル化(温度によるゾルゲル相転移)させやすくなる。一方、ゲル化剤の配合量を10質量%以下にすることで、画像表面に析出したゲル化剤による過剰な光沢の発生を防ぐことができ、かつインクジェットヘッドからのインク射出性を良好にすることができる。
(酸化チタン)
白色インクは、白色顔料として酸化チタン粒子を含む。白色インク中の酸化チタン粒子の配合量は、特に限定されないが、例えば10~15質量%の範囲内であることが好ましい。酸化チタン粒子の含有量を10質量%以上とすることで、白色の発色を向上させることができる。酸化チタン粒子の含有量を15質量%以下とすることで、酸化チタン粒子によるインク吐出用記録ヘッドのつまりを防止し、インクの射出性を高めることができる。
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型、アナターゼ型及びブルーカイト型などがある。比重及び粒径を小さくする観点からは、酸化チタンはアナターゼ型であることが好ましい。一方、屈折率を大きくし、かつ隠蔽性を高める観点からは、酸化チタンはルチル型であることが好ましい。結晶形態の異なる酸化チタンを組み合わせて用いてもよい。
酸化チタン粒子の重量平均粒子径は、特に限定されないが、50~500nmの範囲内であることが好ましく、100~300nmの範囲内であることがより好ましい。酸化チタン粒子の重量平均粒子径を50nm以上とすることで、隠蔽性を向上させることができる。一方、酸化チタン粒子の重量平均粒子径を500nm以下とすることで、酸化チタン粒子の分散性を安定させることができ、その結果インクの保存性及び射出安定性を向上させることができる。
酸化チタン粒子は、耐光性を向上させるためにアルミナで被覆されていることが好ましい。酸化チタン粒子の表面をアルミナで被覆する方法は、特に限定されず、例えば特開平03-275768号公報や特開平05-286721号公報などに記載されている公知の方法を採用してもよい。たとえば、1)酸化チタン粒子を水に分散させてスラリーとし、2)所定の温度のスラリーに表面処理剤である可溶性アルミニウム化合物(アルミン酸ナトリウム)を添加して溶解させ、3)スラリーのpHを所定範囲に維持した状態で、スラリーに酸の沈殿剤を添加して中和し、アルミニウム水和物を沈着させることで、酸化チタン粒子の表面をアルミナで被覆を行うことができる。アルミナによる被覆量は、特に限定されないが、未処理の酸化チタンに対して0.3~0.8質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~0.7質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、酸化チタン粒子は、アルミナ以外にも他の金属酸化物を組み合わせて被覆されていてもよい。
酸化チタン粒子は、市販の酸化チタン粒子を用いてもよい。市販の酸化チタン粒子の例には、CR-EL(石原産業株式会社)、CR-50(石原産業株式会社)、CR-80(石原産業株式会社)、CR-90(石原産業株式会社)、R-780(石原産業株式会社)、R-930(石原産業株式会社)、TCR-52(堺化学工業株式会社)、R-310(堺化学工業株式会社)、R-32(堺化学工業株式会社)、KR-310(チタン工業株式会社)、KR-380(チタン工業株式会社)、KR-380N(チタン工業株式会社)が含まれる。
白色インクには、酸化チタン粒子以外にも公知の白色顔料が配合されていてもよい。公知の白色顔料の例には、無機白色顔料、有機白色顔料及び白色の中空ポリマー微粒子が含まれる。また、白色インクには、色調を整えるために、白色以外の染料又は顔料が含まれていてもよい。
(色材)
カラーインクは、色材を含む。カラーインクは、少なくとも酸化チタン以外の色材を含むが、酸化チタンも含んでいてもよい。カラーインクに含まれる色材は、染料又は顔料でありうる。インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料がより好ましい。
染料は、例えば油溶性染料である。油溶性染料としては、以下の各種染料が挙げられる。
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm-41、Yellow KX-7、Yellow EX-27(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Yellow-1、AIZEN SOT YelloW-3、AIZEN SOT Yellow-6(以上、保土谷化学工業株式会社)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX Fluorescent Yellow10GN(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Yellow SF-G、KAYASET Yellow 2G、KAYASET Yellow A-G、KAYASET Yellow E-G(以上、日本化薬株式会社)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成株式会社)、HSY-68(三菱化成株式会社)、SUDAN Yellow 146、NEOPENYellow 075(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM-1450、MS Magenta HSo-147(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZENSOT Red-1、AIZEN SOT Red-2、AIZEN SOT Red-3、AIZEN SOT Pink-1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬株式会社)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成株式会社)、HSR-31、DIARESINRed K(以上、三菱化成株式会社)、Oil Red(BASFジャパン株式会社)が含まれる。
シアン染料の例には、MS Cyan HM-1238、MS Cyan HSo-16、Cyan HSo-144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Blue-4(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z-BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB-LL 330%(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL-5 200、Light Blue BGL-5 200(以上、日本化薬株式会社)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成株式会社)、DIARESIN Blue P(三菱化成株式会社)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井東圧化学株式会社)、AIZEN SOT Black-1、AIZEN SOT Black-5(以上、保土谷化学工業株式会社)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン株式会社)、KAYASET Black A-N(日本化薬株式会社)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成株式会社)、HSB-202(三菱化成株式会社)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン株式会社)が含まれる。
顔料の種類は、特に限定されない。たとえば、カラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料を使用することができる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。青又はシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108
、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレットRE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(以上、大日精化工業株式会社);KETYellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(以上、DIC株式会社);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(以上、山陽色素株式会社);LionolYellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(以上、東洋インキ株式会社);Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(以上、ヘキストインダストリー株式会社);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(以上、クラリアントジャパン株式会社);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(以上、三菱化学株式会社)が含まれる。
顔料の体積平均粒子径は、特に限定されないが、0.08~0.5μmの範囲内であることが好ましい。顔料の最大粒子径は、特に限定されないが、0.3~10μmの範囲内であることが好ましく、0.3~3μmの範囲内であることがより好ましい。顔料の粒子径を調整することによって、インクジェットヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
カラーインク中の色材の配合量は、特に限定されないが、0.1~20質量%の範囲内であることが好ましく、0.4~10質量%の範囲内であることがより好ましい。顔料または染料の配合量が少なすぎると、得られる画像の発色が十分ではなくなる。一方、顔料又は染料の配合量が多すぎると、インクの粘度が高くなり、吐出性が低下する。
(その他の成分)
カラーインク及び白色インクは、いずれも必要に応じて添加剤や樹脂などの他の成分をさらに含有してもよい。添加剤の例には、分散剤、分散助剤、重合禁止剤、光重合開始剤助剤、酸化防止剤界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物が含まれる。
分散剤の例には、3級アミン基を有するくし型ブロックコポリマー、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートが含まれる。「くし型ブロックコポリマー」とは、主鎖を形成する直鎖状のポリマーに対し、主鎖を構成するモノマーの1単位ごとに側鎖として別の種類のポリマーがグラフト重合したコポリマーを意味する。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ株式会社のPBシリーズなどが含まれる。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
光重合開始剤助剤は、例えば第3級アミン化合物である。好ましくは芳香族第3級アミン化合物である。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルヘキシルアミンが含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。
塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物が含まれる。樹脂の例には、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂などの硬化膜の物性を調整するための樹脂が含まれる。
(インクの物性)
カラーインク及び白色インクは、ゲル化剤を含むため、温度により可逆的にゾルゲル相転移することができる。ゾルゲル相転移型のエネルギー線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)ではゾルであるため、インク吐出用記録ヘッドから吐出されうるが、記録媒体に付着した後は自然冷却されてゲル化する。
カラーインク及び白色インクの粘度は、記録媒体に当該インクを付着させるときの記録媒体の温度において1×100~1×103Pas・sの範囲内であることが好ましい。インクの粘度を1×100以上とすることで、記録媒体に付着した後に隣り合う液滴の合一を抑制することができる。また、インクの粘度を1×103以下とすることで、液滴が記録媒体に適度に濡れ広がり、スジ感のない高精細な画像を得ることができる。インクの粘度は、レオメータにより測定されうる。レオメータは、Anton Paar社製のストレス制御型レオメータ(PhysicaMCRシリーズ)を用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
(インクの調製)
カラーインク及び白色インクは、前述の色材(白色インクの場合は酸化チタン)、ラジカル重合性化合物、ラジカル光重合開始剤及びゲル化剤と、任意の各成分とを、加熱下において混合することにより調製されうる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、色材(白色インクの場合は酸化チタン)及び分散剤を含む分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。