1.活性光線硬化型インクジェットインク
活性光線硬化型インクジェットインクは、少なくとも光重合性化合物と、ゲル化剤と、金属石鹸とを含み、必要に応じて、光重合開始剤等をさらに含んでもよい。
<光重合性化合物について>
光重合性化合物は、活性光線の照射により架橋または重合する光重合性化合物である。活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線等であり、好ましくは紫外線および電子線である。光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物またはカチオン重合性化合物であり、好ましくはラジカル重合性化合物である。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が含まれる。
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリレート化合物は、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。
(メタ)アクリレート化合物の例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよく、その例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物;およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート化合物等が含まれる。なかでも、感光性が高く、低温下でゲル化する際に、後述のカードハウス構造が形成しやすい等の観点から、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物が好ましい。また、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物は、高温下で他のインク成分に対して溶解しやすく、硬化収縮も少ないことから、印刷物のカールも起こりにくい。
エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物の例には、Sartomer社製の4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート CD561(分子量358)、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート SR454(分子量429)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート SR499(分子量560)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート SR494(分子量528);新中村化学社製のポリエチレングリコールジアクリレート NKエステルA−400(分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレート NKエステルA−600(分子量742)、ポリエチレングリコールジメタクリレート NKエステル9G(分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレート NKエステル14G(分子量770);大阪有機化学社製のテトラエチレングリコールジアクリレート V#335HP(分子量302);Cognis社製の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート Photomer 4072(分子量471、ClogP4.90);新中村化学社製の1,10−デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD−N(分子量310、ClogP5.75)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA−DCP(分子量304、ClogP4.69)およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量332、ClogP5.12);Miwon社製のトリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートMiramer M360(分子量471、ClogP4.90)等が含まれる。
(メタ)アクリレート化合物は、重合性オリゴマーであってもよく、そのような重合性オリゴマーの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。
カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物等でありうる。カチオン重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、または脂肪族エポキシド等であり、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
芳香族エポキシドは、多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。反応させる多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等でありうる。
脂環式エポキシドは、シクロアルカン含有化合物を、過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物でありうる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンは、シクロヘキセンまたはシクロペンテンでありうる。
脂肪族エポキシドは、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等でありうる。
ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物等が含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性などを考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、その例には、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2005−255821号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。なかでも、特開2005−255821号公報の段落番号0089に記載の一般式(1)で表される化合物、同号公報の段落番号0092に記載の一般式(2)で表される化合物、段落番号0107の一般式(7)で表される化合物、段落番号0109の一般式(8)で表される化合物、段落番号0116の一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。特開2005−255821号公報に記載された一般式(1)、(2)、(7)〜(9)を以下に示す。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる光重合性化合物の含有量は、インク全質量に対して1〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。
<ゲル化剤について>
ゲル化剤は、インクを温度により可逆的にゾルゲル相転移させる機能を付与する。そのようなゲル化剤は、少なくとも1)ゲル化温度よりも高い温度で、活性線硬化性化合物に溶解すること、2)ゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化すること、が必要である。
ゲル化剤がインク中で結晶化するときに、ゲル化剤の結晶化物である板状結晶が三次元的に囲む空間を形成し、前記空間に活性線硬化性化合物を内包することが好ましい。このように、板状結晶が三次元的に囲む空間に活性線硬化性化合物が内包された構造を「カードハウス構造」ということがある。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線硬化性化合物を保持することができ、インク液滴をピニングすることができる。それにより、液滴同士の合一を抑制することができる。カードハウス構造を形成するには、インク中で溶解している活性線硬化性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。これに対して、インク中で溶解している活性線硬化性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
インク液滴をインクジェット記録装置から安定に吐出するためには、ゾル状のインク(高温時)において、光重合性化合物とゲル化剤との相溶性が良好であることが必要である。さらに、高速印刷時においても安定に液滴同士の合一を抑制するには、インク液滴が記録媒体に着弾後、速やかにゲル化剤が結晶化し、強固なカードハウス構造を形成することが必要である。
このようなゲル化剤には、脂肪族ケトン化合物と、脂肪族エステル化合物とが含まれる。脂肪族ケトン化合物であるゲル化剤は、下記一般式(G1)で表される化合物である。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数9〜25の直鎖部分を含むアルキル基である。アルキル基は、飽和または不飽和のアルキル基でありうるが、ゲル化温度を高くする観点などから、好ましくは飽和のアルキル基である。一般式(G1)のR1およびR2のアルキル基の炭素数がそれぞれ同程度であれば、一般式(G1)のR1およびR2が飽和のアルキル基である化合物の融点は、一般式(G1)のR1およびR2が不飽和のアルキル基である化合物の融点よりも高いことが多く、ゲル化温度も高くなりやすい。アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または環状アルキル基でありうるが、高い結晶性を得るためには、直鎖アルキル基であることが好ましい。
アルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が9未満であると、十分な結晶性を有しないためゲル化剤として機能しにくい。また、前述のカードハウス構造において、活性線硬化性化合物を内包するための十分な空間を形成できない。一方、アルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が25を超えると、融点が高くなりやすい。そのため、インクの射出温度を高くしなければ、脂肪族ケトン化合物はインク中に溶解しなくなる。アルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が9以上25以下であると、ゲル化剤として必要な結晶性を有しつつ、前述のカードハウス構造を形成することができ、融点も高くなりすぎない。R1およびR2のアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数は11以上23未満であることが好ましい。そのため、R1およびR2は、炭素数11以上23未満の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
炭素数9以上25以下の直鎖部分を含むアルキル基の例には、ドコサニル基(C22)、ヘンイコサニル基(C21)、イコサニル基(C20)、オクタデカニル基(ステアリル基、C18)、ヘプタデカニル基(C17)、ヘキサデカニル基(パルミチル基、C16)、ペンタデカニル基(C15)、テトラデカニル基(ミリスチル基、C14)、トリデカニル基(C13)、ドデカニル基(ラウリル基、C12)、ウンデカニル基(C11)、デカニル基(C10)等が含まれる。
一般式(G1)で表される化合物の例には、ジベヘニルケトン(C22−C22)、ジステアリルケトン(19−ヘプタトリアコンタノン、C18−C18)、ジパルミチルケトン(C16−C16)、ジラウリルケトン(C12−C12)、25−ノナテトラコンタノン(C24−C24)、ジヘンイコサニルケトン(22−トリテトラコンタノン、C21−C21、融点88℃)、ジヘプタデシルケトン(18−ペンタトリアコンタノン、C17−C17、融点84℃)、21−ヘンテトラコンタノン(C20−C20)、ジペンタデシルケトン(16−ヘントリアコンタノン、C15−C15、融点80℃)、14−ヘプタコサノン(C13−C13)、ジウンデシルケトン(12−トリコサノン、C11−C11、融点68℃)、11−ヘンコサノン(C10−C10)、13−ヘプタコサノン(C12−C14)、13−ノナコサノン(C12−C16)、13−ヘントリアコンタノン(C12−C18)、13−ペンタトリアコンタノン(C12−C22)、15−ヘントリアコンタノン(C14−C16)、15−プロパトリアコンタノン(C14−C18)、15−ヘプタトリアコンタノン(C14−C22)、17−ヘプタトリアコンタノン(C16−C18)、17−ノナトリアコンタノン(C16−C22)、19−ヘンテトラコンタノン(C18−C22)が含まれ、好ましくはジヘプタデシルケトン(C17−C17)である。
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18−Pentatriacontanon(AlfaAeser社製)、Hentriacontan−16−on(Alfa Aeser社製)、カオーワックスT1(花王株式会社製)等が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製して用いてもよい。
脂肪族ケトン化合物は、一種類の一般式(G1)で表される化合物であってもよいし、二種類以上の一般式(G1)で表される化合物の混合物でもよい。
脂肪族エステル化合物であるゲル化剤は、下記一般式(G2)で表される化合物である。
一般式(G2):R3−COO−R4
一般式(G2)において、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数9〜26の直鎖部分を含むアルキル基である。アルキル基は、飽和または不飽和のアルキル基でありうるが、好ましくは飽和のアルキル基である。また、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または環状アルキル基でありうるが、高い結晶性を得るためには、好ましくは直鎖アルキル基である。
R3とR4のアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が9〜26であると、一般式(G1)で表される化合物と同様に、ゲル化剤として必要な結晶性を有しつつ、前述のカードハウス構造を形成でき、融点も高くなりすぎない。一般式(G2)で表される化合物の結晶性を高めるには、R3のアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が11以上23未満であり、かつR4のアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が12以上24未満であることが好ましい。そのため、R3は炭素数11以上23未満の直鎖アルキル基であり、かつR4は炭素数12以上24未満の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
炭素数9以上26以下の直鎖部分を含むアルキル基の例には、上記一般式(G1)における炭素数9以上25以下の直鎖部分を含むアルキル基と同様のものが含まれる。
一般式(G2)で表される化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21−C22、融点70℃)、イコサン酸イコシル(C19−C20)、ステアリン酸ステアリル(C17−C18、融点60℃)、ステアリン酸パルミチル(C17−C16)、ステアリン酸ラウリル(C17−C12)、パルミチン酸パルミチル(パルミチン酸セチルC15−C16、融点54℃)、パルミチン酸ステアリル(C15−C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13−C14、融点43℃)、ミリスチン酸セチル(C13−C16、融点50℃)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13−C20)、ラウリン酸ラウリル(C11−C12、融点30℃)、カプリン酸セチル(C9−C16、融点30℃)、オレイン酸ステアリル(C17−C18)、エルカ酸ステアリル(C21−C18)、リノール酸ステアリル(C17−C18)、パルミチン酸イソステアリル(C15−C18)等が含まれる。
一般式(G2)で表される化合物の市販品の例には、ユニスタ−M−2222SL(日油株式会社製)、エキセパールSS(花王株式会社製、融点60℃)、EMALEXCC−18(日本エマルジョン株式会社製)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社製)、エキセパールMY−M(花王株式会社製)、スパームアセチ(日油株式会社製)、EMALEX CC−10(日本エマルジョン株式会社製)等が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製して用いてもよい。
脂肪族エステル化合物は、一種類の一般式(G2)で表される化合物であってもよいし、二種類の一般式(G2)で表される化合物の混合物であってもよい。
インクに含まれる脂肪族ケトン化合物群の全ての化合物の融点は、100℃以下であることが好ましく、インクのピニング性を高めるためには、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。一方、インクに含まれる脂肪族エステル化合物群の全ての化合物の融点は、100℃以下であることが好ましく、インクの射出性を高めるためには、30℃以上75℃以下であることが好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクに含まれるゲル化剤として、脂肪族ケトン化合物または脂肪族エステル化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物と、一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の合計量は、インク全質量に対して0.5質量%以上10質量%未満であることが好ましく、1質量%以上7質量%未満であることがより好ましい。合計量が0.5質量%未満であると、インクをゲル化(温度によるゾルゲル相転移)しにくい。一方、合計量が10質量%以上であると、インク中に十分に溶解できず、インクの射出性が低下しやすい。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じてその他のゲル化剤をさらに含んでもよい。その他のゲル化剤の例には、高分子化合物と、低分子化合物とがあり、インクの射出性を高めるためには、低分子化合物が好ましい。
高分子化合物のゲル化剤の例には、ステアリン酸イヌリン等の脂肪酸イヌリン;パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等の脂肪酸デキストリン(千葉製粉社製 レオパールシリーズ等);ドコサン酸エイコサン二酸グリセリル、ドコサン酸エイコサンポリグリセリル等(日清オイリオ社製 ノムコートシリーズ等)が含まれる。
低分子化合物のゲル化剤の例には、
上記一般式(G1)で表される化合物以外の脂肪族ケトン化合物;
上記一般式(G2)で表される化合物以外の脂肪族エステル化合物;
特開2005−126507号公報、特開2005−255821号公報および特開2010−111790号公報に記載の低分子オイルゲル化剤;
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−(2−エチルヘキサノイル)−L−グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);
1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)等のジベンジリデンソルビトール類;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ドコサン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;
ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;
12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;
12−ヒドロキシステアリン酸誘導体;
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド(例えば日本化成社製 ニッカアマイドシリーズ、伊藤製油社製 ITOWAXシリーズ、花王社製 FATTYAMIDシリーズ等);
N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等のN−置換脂肪酸アミド;
N,N′−エチレンビスステアリルアミド、N,N′−エチレンビス12−ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N′−キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;
ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;
ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン社製 EMALLEXシリーズ、理研ビタミン社製 リケマールシリーズ、理研ビタミン社製 ポエムシリーズ等);
ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル(例えばリョートーシュガーエステルシリーズ 三菱化学フーズ社製);
ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス;重合性ワックス(Baker−Petrolite社製 UNILINシリーズ等);
ダイマー酸;ダイマージオール(CRODA社製 PRIPORシリーズ等)等が含まれる。これらのゲル化剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<金属石鹸について>
本発明で用いる金属石鹸は、高級脂肪酸、あるいはその混合物の金属塩のことであり、下記一般式(M)で表される化合物である。金属石鹸は滑剤やブロッキング防止剤等として機能する。
一般式(M):(R−COO−)nM
(式中、Rは、炭素数9以上の直鎖部分を含むアルキル基を表し、Mはn価の金属イオ
ンを表し、nは1〜3を表す)
本発明のインクジェットインクに含まれる金属石鹸の有するアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または環状アルキル基でありうるが、直鎖アルキル基であることが好ましい。また、アルキル基は炭素数9以上の直鎖部分を含み;好ましくはアルキル基に含まれる直鎖部分の炭素数が9〜26であり、より好ましくは11以上23未満であり、特に好ましくは11〜18である。このようなアルキル基の例には、ステアリル基(C18)、パルミチル基(C16)、ミリスチル基(C14)、ラウリル基(C12)、ウンデシル基(C11)などが含まれる。
本発明のインクジェットインクに含まれる金属石鹸の有する金属イオンの例には、K、Na、Li等の一価金属イオン;Ca、Cu、Ni、Mg、Zn、Ba等の二価金属イオン;Al、Fe、Cr等の三価金属イオンが含まれる。これらのなかでも、射出安定性等の観点から、金属石鹸は、K、Na、Ca、Al、Mg、またはZnの少なくとも1種の金属イオンを有することが好ましく、Ca、Mg、またはZnの少なくとも1種の金属イオンを有することがより好ましい。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる金属石鹸の例には、トリコサン酸マグネシウム、トリコサン酸カルシウム、トリコサン酸バリウム、トリコサン酸亜鉛;ノナデカン酸マグネシウム、ノナデカン酸カルシウム、ノナデカン酸バリウム、ノナデカン酸亜鉛;ヘプタデカン酸マグネシウム、ヘプタデカン酸カルシウム、ヘプタデカン酸バリウム、ヘプタデカン酸亜鉛;トリデカン酸マグネシウム、トリデカン酸カルシウム、トリデカン酸バリウム、トリデカン酸亜鉛;パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸亜鉛;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛;ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸バリウム、ヒドロキシステアリン酸亜鉛;ドコサン酸マグネシウム、ドコサン酸カルシウム、ドコサン酸バリウム、ドコサン酸亜鉛;ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛;モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸亜鉛;オレイン酸ニッケル;ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、;牛脂脂肪酸マグネシウム、牛脂脂肪酸カルシウム、牛脂脂肪酸バリウム、牛脂脂肪酸亜鉛等が含まれる。これらのなかでも、耐擦過性や射出安定性の観点等から、ステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる金属石鹸の含有量は、インク全質量に対して0.05〜50質量ppm(0.000005〜0.005質量%)とすることが好ましく、0.1〜20質量ppmであることがより好ましい。金属石鹸の含有量が0.05質量ppm未満であると、画像の耐擦過性を高めにくい。一方、金属石鹸の含有量が50ppmを超えると、画像表面にブルーミングしやすくなる。
金属石鹸の含有量の測定は、日本薬局方のステアリン酸マグネシウムの純度試験として収載されているGCによる試験方法に準じた方法または熱分解GC/MS(PY−2020iD、フロンティア・ラボ株式会社製)による脂肪酸成分の定量と、ICP−AES(SPS3520UV、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)による金属元素の定量とを組み合わせて行う。具体的には、求められた脂肪酸成分の質量と金属元素の質量との合計を金属石鹸の含有量とすることができる。ただし、金属石鹸の含有量が、脂肪酸成分の定量の検出限界以下である場合には、ICP−AESで求められる金属元素の量と、脂肪酸成分の構造とから算出される金属石鹸の量を、実際の金属石鹸の含有量とみなすことができる。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに滑剤として機能する金属石鹸を含有させることで、画像の耐擦過性を高めることができる。それにより、摩擦などの外力により生じる画像の剥がれを抑制できる。また、画像形成後の記録媒体を重ねた際に生じる記録媒体同士の接着(ブロッキング)も抑制できる。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる金属石鹸が有するアルキル基は、前記インク中に含まれるゲル化剤の有するアルキル基と同一である。具体的には、上記一般式(G1)または(G2)におけるR1、R2、またはR3と同一のアルキル基である。一般式(G1)のR1とR2のアルキル基が異なる場合、金属石鹸の有するアルキル基(R)はR1またはR2のいずれでもよく;一般式(G1)と(G2)で表されるゲル化剤を併用する場合、金属石鹸の有するアルキル基(R)は、R1、R2、またはR3のいずれかであればよい。また、金属石鹸の有する金属イオンが二価または三価の場合、金属石鹸の有するアルキル基のすべてが、前記インク中に含まれるゲル化剤の有するアルキル基(R1、R2、またはR3)と同一のアルキル基であればよい。
ゲル化剤を含む活性光線硬化型インクジェットインク中の金属石鹸はゲル化剤と相溶できずに、画像表面でブルーミングを生じる場合があった。これに対して、本発明は、金属石鹸の有するアルキル基(R)を、前記インクに含まれるゲル化剤の有するアルキル基(R1、R2、またはR3)と同一にして、金属石鹸とゲル化剤との相溶性を高めた。これにより、インク全質量に対して金属石鹸を0.05〜50質量ppm含有させたとしても、金属石鹸が画像表面にブルーミングすることを抑制した。
<光重合開始剤について>
活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて光重合開始剤をさらに含でもよい。具体的には、活性光線が電子線である場合は、通常、光重合開始剤は含まれなくてもよいが、活性光線が紫外線である場合は、光重合開始剤が含まれることが好ましい。
光重合開始剤は、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがある。分子内結合開裂型の光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
光重合開始剤が、アシルホスフィンオキシドやアシルホスフォナートであると、感度が良好となる。具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等が好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクにおける光重合開始剤の含有量は、インク硬化時に照射する光や光重合性化合物の種類などにもよるが、0.1質量%〜10質量%であることが好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクにおける光重合開始剤に、光酸発生剤が含まれてもよい。光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が含まれる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて光重合開始剤助剤や重合禁止剤などがさらに含まれていてもよい。光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。活性光線硬化型インクジェットインクに、これらの化合物が、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
<色材について>
活性光線硬化型インクジェットインクは、色材をさらに含んでもよい。色材は、染料または顔料でありうる。インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料がより好ましい。
染料は、油溶性染料等でありうる。油溶性染料は、以下の各種染料が挙げられる。マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM−1450、MS Magenta HSo−147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red−1、AIZEN SOT Red−2、AIZEN SOTRed−3、AIZEN SOT Pink−1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR−31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)が含まれる。
シアン染料の例には、MS Cyan HM−1238、MS Cyan HSo−16、Cyan HSo−144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧社製)、AIZEN SOT Blue−4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z−BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB−LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL−5 200、Light Blue BGL−5 200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm−41、Yellow KX−7、Yellow EX−27(三井東圧)、AIZEN SOT Yellow−1、AIZEN SOT YelloW−3、AIZEN SOT Yellow−6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF−G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A−G、KAYASET Yellow E−G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY−68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井東圧社製)、AIZEN SOT Black−1、AIZEN SOT Black−5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A−N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB−202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36等が含まれる。青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60等が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26等が含まれる。
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(大日精化工業製);
KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);
Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);
Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(東洋インキ製)、
Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);
Novoperm P−HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);
カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)などが挙げられる。
顔料の平均粒径は0.08〜0.5μmであることが好ましく、顔料の最大粒径は0.3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmである。顔料の粒径を調整することによって、インクジェット記録ヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
顔料または染料の含有量は、活性光線硬化型インクジェットインクに対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.4〜10質量%であることがより好ましい。顔料または染料の含有量が少なすぎると、得られる画像の発色が十分ではなく、多すぎるとインクの粘度が高くなり、射出性が低下するからである。
顔料の分散は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことができる。顔料の分散は、顔料粒子の平均粒子径が、好ましくは0.08〜0.5μm、最大粒子径が好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.3〜3μmとなるように行われることが好ましい。顔料の分散は、顔料、分散剤、および分散媒体の選定、分散条件、およびろ過条件等によって、調整される。
活性光線硬化型インクジェットインクには、顔料の分散性を高めるために、分散剤がさらに含まれていてもよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート等が含まれる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて分散助剤がさらに含まれていてもよい。分散助剤は、顔料に応じて選択されればよい。
分散剤および分散助剤の合計量は、顔料に対して1〜50質量%であることが好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて顔料を分散させるための分散媒体がさらに含まれていてもよい。分散媒体として溶剤がインクに含まれてもよいが、形成された画像における溶剤の残留を抑制するためには、前述のような光重合性化合物(特に粘度の低いモノマー)が分散媒体であることが好ましい。
<その他の成分について>
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて他の成分がさらに含まれていてもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、およびワックス類等が含まれる。
<ゾルゲル相転移型のインクジェットインクについて>
活性光線硬化型インクジェットインクは、前述のようにゲル化剤を含むため、温度により可逆的にゾルゲル相転移する。ゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)では液体(ゾル)であるため、インクジェット記録ヘッドからゾル状態で吐出することができる。高温下で活性光線硬化型インクジェットインクを吐出すると、インク液滴(ドット)が記録媒体に着弾した後、自然冷却されてゲル化する。これにより、隣り合うドット同士の合一を抑制し、画質を高めることができる。
インク液滴の射出性を高めるためには、高温下におけるインクの粘度が一定以下であることが好ましい。具体的には、活性光線硬化型インクジェットインクの、80℃における粘度が3〜20mPa・sであることが好ましい。一方、隣り合うドットの合一を抑制するためには、着弾後の常温下におけるインクの粘度が一定以上であることが好ましい。具体的には、活性光線硬化型インクジェットインクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
インクのゲル化温度は、40℃以上70℃以下であることが好ましく、50℃以上65℃以下であることがより好ましい。射出温度が80℃近傍である場合に、インクのゲル化温度が70℃を超えると、射出時にゲル化が生じやすいため射出性が低くなり、ゲル化温度が40℃未満であると、記録媒体に着弾後、速やかにゲル化しないからである。ゲル化温度とは、ゾル状態にあるインクを冷却する過程において、ゲル化して流動性が低下するときの温度である。
インクの80℃における粘度、25℃における粘度及びゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。具体的には、インクを100℃に加熱し、剪断速度11.7(/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却したときの、粘度の温度変化曲線を得る。そして、80℃における粘度と25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求めることができる。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求めることができる。
レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
従来のゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクジェットインクでは、形成画像のドット合一が抑制できても、画像の耐擦過性が低い場合があった。これに対して、活性光線硬化型インクジェットインクに、滑剤として金属石鹸を含有させて、画像表面の潤滑性を高めることができる。
しかしながら、活性光線硬化型インクジェットインクに所定量以上の金属石鹸を含有させると、金属石鹸が画像表面にブルーミングを生じやすくなり、画像品質が低下しやすくなる。
これに対して、本発明者らは、金属石鹸の有するアルキル基を、活性光線硬化型インクジェットインクに含まれるゲル化剤の有するアルキル基と同一にした。これにより、金属石鹸とゲル化剤との相溶性を高めることができ、活性光線硬化型インクジェットインクに所望量以上の金属石鹸を含有しても、ブルーミングを抑制できることを見出した。それにより、耐擦過性があって、ブルーミングの少ない画像が得られた。
<インクジェットインクの調製方法について>
活性光線硬化型インクジェットインクは、前述の光重合性化合物、ゲル化剤、金属石鹸、重合開始剤、及び色材を、加熱下、混合して得られる。好ましくは、一部の光重合性化合物に色材(特に顔料)を分散させた顔料分散剤を用意し、顔料分散材と、他のインク成分と混合する。得られたインクは、所定のフィルターで濾過することが好ましい。
2.インクジェット記録装置とそれを用いた画像記録方法
本発明に用いられる活性線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置について説明する。活性線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置には、ライン記録方式(シングルパス記録方式)のものと、シリアル記録方式のものと、がある。求められる画像の解像度や記録速度に応じて選択されればよいが、高速記録の観点では、ライン記録方式(シングルパス記録方式)が好ましい。
図1は、ライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。このうち、図1(a)は側面図であり、図1(b)は上面図である。図1に示されるように、インクジェット記録装置10は、複数のインクジェット記録ヘッド14を収容するヘッドキャリッジ16と、ヘッドキャリッジ16に接続したインク流路30と、インク流路30を通じて供給するインクを貯留するインクタンク31と、記録媒体12の全幅を覆い、かつヘッドキャリッジ16の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された活性線照射部18と、記録媒体12の下面に配置された温度制御部19と、を有する。
ヘッドキャリッジ16は、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置されており、各色毎に設けられた複数のインクジェット記録ヘッド14を収容する。インクジェット記録ヘッド14にはインクが供給されるようになっている。たとえば、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着された不図示のインクカートリッジなどから、直接または不図示のインク供給手段によりインクが供給されるようになっていてもよい。
インクジェット記録ヘッド14は、各色ごとに、記録媒体12の搬送方向に複数配置される。記録媒体12の搬送方向に配置されるインクジェット記録ヘッド14の数は、インクジェット記録ヘッド14のノズル密度と、印刷画像の解像度によって設定される。例えば、液滴量2pl、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて1440dpiの解像度の画像を形成する場合には、記録媒体12の搬送方向に対して4つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。また、液滴量6pl、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて720×720dpiの解像度の画像を形成する場合には、2つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。dpiとは、2.54cm当たりのインク滴(ドット)の数を表す。
インクタンク31は、ヘッドキャリッジ16に、インク流路30を介して接続されている。インク流路30は、インクタンク31中のインクをヘッドキャリッジ16に供給する経路である。インク液滴を安定して吐出するため、インクタンク31、インク流路30、ヘッドキャリッジ16及びインクジェット記録ヘッド14のインクを所定の温度に加熱して、ゲル状態を維持する。
活性線照射部18は、記録媒体12の全幅を覆い、かつ記録媒体の搬送方向についてヘッドキャリッジ16の下流側に配置されている。活性線照射部18は、インクジェット記録ヘッド14により吐出されて、記録媒体に着弾した液滴に活性線を照射し、液滴を硬化させる。
活性線が紫外線である場合、活性線照射部18(紫外線照射手段)の例には、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Pa〜1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED等が含まれる。硬化性の観点から、照度100mW/cm2以上の紫外線を照射する紫外線照射手段;具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED等が好ましく、消費電力の少ない点から、LEDがより好ましい。具体的には、Phoseon Technology社製 395nm、水冷LEDを用いることができる。
活性光線が電子線である場合、活性線照射部18(電子線照射手段)の例には、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式等の電子線照射手段が含まれるが、処理能力の観点から、カーテンビーム方式の電子線照射手段が好ましい。電子線照射手段の例には、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等が含まれる。
温度制御部19は、記録媒体12の下面に配置されており、記録媒体12を所定の温度に維持する。温度制御部19は、例えば各種ヒータ等でありうる。
以下、ライン記録方式のインクジェット記録装置10を用いた画像記録方法を説明する。記録媒体12を、インクジェット記録装置10のヘッドキャリッジ16と温度制御部19との間に搬送する。一方で、記録媒体12を、温度制御部19により所定の温度に調整する。次いで、ヘッドキャリッジ16のインクインクジェット記録ヘッド14から高温のインクを吐出して、記録媒体12上に付着(着弾)させる。そして、活性線照射部18により、記録媒体12上に付着したインク滴に活性線を照射して硬化させる。
インクインクジェット記録ヘッド14からインクを吐出する際の、インクジェット記録ヘッド14内のインクの温度は、インクの射出性を高めるためには、当該インクのゲル化温度よりも10〜30℃高い温度に設定されることが好ましい。インクジェット記録ヘッド14内のインク温度が、(ゲル化温度+10)℃未満であると、インクジェット記録ヘッド14内もしくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの射出性が低下しやすい。一方、インクジェット記録ヘッド14内のインクの温度が(ゲル化温度+30)℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
インクインクジェット記録ヘッド14の各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、高解像度の画像を形成するためには、1pl〜10plであることが好ましく、0.5〜4.0plであることがより好ましい。
活性線の照射は、隣り合うインク滴同士が合一するのを抑制するために、インク滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001秒〜5秒以内、より好ましくは0.01秒〜2秒以内に行うことが好ましい。活性線の照射は、ヘッドキャリッジ16に収容された全てのインクインクジェット記録ヘッド14からインクを吐出した後に行われることが好ましい。
記録媒体の搬送速度は、500〜2000mm/sであることが好ましい。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まるので好ましいが、搬送速度が速すぎると、画像品質が低下したり、インク液滴の硬化が不十分になったりする。
活性線が電子線である場合、電子線照射の加速電圧は、十分な硬化を行うためには、30〜250kVとすることが好ましく、30〜100kVとすることがより好ましい。加速電圧が100〜250kVである場合、電子線照射量は30〜100kGyであることが好ましく、30〜60kGyであることがより好ましい。
硬化後の総インク膜厚は、2〜25μmであることが好ましい。「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインク膜厚の最大値である。
図2は、シリアル記録方式のインクジェット記録装置20の要部の構成の一例を示す図である。図2に示されるように、インクジェット記録装置20は、記録媒体の全幅を覆うように固定配置されたヘッドキャリッジ16の代わりに、記録媒体の全幅よりも狭い幅であり、かつ複数のインクインクジェット記録ヘッド24を収容するヘッドキャリッジ26と、ヘッドキャリッジ26を記録媒体12の幅方向に可動させるためのガイド部27と、を有する以外は図1と同様に構成されうる。
シリアル記録方式のインクジェット記録装置20では、ヘッドキャリッジ26がガイド部27に沿って記録媒体12の幅方向に移動しながら、ヘッドキャリッジ26に収容されたインクジェット記録ヘッド24からインク液滴を吐出する。ヘッドキャリッジ26が記録媒体12の幅方向に移動しきった後(パス毎に)、記録媒体12を搬送方向に送る。そして、活性線照射部28により、記録媒体12上に付着したインク液滴に光を照射する。これらの操作以外は、前述のライン記録方式のインクジェット記録装置10とほぼ同様にして画像を記録する。
以下に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
<インクの調製>
以下の成分により、各実施例および比較例の活性光線硬化型インクジェットインクを調製した。
(顔料分散液)
顔料分散液の調製
以下の手順で顔料分散液1〜4を調製した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌溶解した。
顔料分散剤:EFKA7701(BASF社製) 9質量部
活性光線硬化型モノマー:APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学社製) 71質量部
室温まで冷却した後、これに下記のいずれかの顔料20質量部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓した。これをペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 5時間
顔料2:Pigment Blue 15:4(大日精化製、クロモファインブルー6332JC) 5時間
顔料3:Pigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC) 8時間
顔料4:Pigment Yellow 180(大日精化製、クロモファインイエロー6280JC) 8時間
(ゲル化剤)
ジヘンイコサニルケトン(アルキル基の炭素数:C21−C21)
ジヘプタデシルケトン(アルキル基の炭素数:C17−C17)
ジペンタデシルケトン(アルキル基の炭素数:C15−C15)
ジウンデシルケトン(アルキル基の炭素数:C11−C11)
(金属石鹸)
ドコサン酸マグネシウム、ドコサン酸カルシウム、ドコサン酸バリウム、ドコサン酸亜鉛;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛;パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸亜鉛;ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛;
APG−200(新中村化学社製):トリプロピレングリコールジアクリレート
NKエステルA−400(新中村化学社製):ポリエチレングリコールジアクリレート、分子量508、EOユニット量9
NKエステルA−600(新中村化学社製):ポリエチレングリコールジアクリレート、分子量708、EOユニット量14
Miramer M360(Miwon社製):トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、分子量471
SR499(サートマー社製):6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量560
(重合禁止剤)
Irgastab UV10(BASF社製)
(光重合開始剤)
DAROCURE TPO(BASF社製)
Irgacure819 (BASF社製)
Speedcure ITX(DKSH社製)
下記表1〜7の組成(質量部)に従い、各成分を混合し、これを80℃に加熱して攪拌した。得られた溶液の温度を保持したまま、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過し、実施例1〜16のインクと比較例1〜10のインクを調製した。このインクに対して下記の評価を行った。
<インクジェット記録方法>
Y、M、C、Kのインクをそれぞれ充填した4つのインクジェット記録ヘッドを用意した。各インクジェット記録ヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数512ノズル(256ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ360dpi)のピエゾヘッドを用いた。吐出条件は、1滴の液滴量が2.5plとなる条件で、液滴速度約6m/sで出射させて、1440dpi×1440dpiの解像度で記録した。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。なお、dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。
ライン記録方式のインクジェット記録装置を用いて、Y、M、C、Kの画像をそれぞれ形成した。具体的には、印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量128g/m2 王子製紙社製)を準備した。記録媒体は温度制御部により25℃に調温し、搬送速度を500mm/sとした。一方、得られたインクを、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッドに充填し、インク温度が80℃となるように加温した。そして、印刷用コート紙A上にインク滴を吐出して、5cm×5cmのベタ画像を形成した。
印字後、Phoseon Technology社製LEDランプから光(395nm、8W/cm2、water cooled unit)を照射して、インクを硬化させた。光量は浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計 C9536、H9958で測定した。LEDランプから記録媒体面までの距離は20mmとした。
<画像評価>
(ブルーミング)
形成したベタ画像を40℃で2週間保存し、目視評価により下記の評価基準に従ってブルーミングの評価を行った。結果を表1〜7に示す。
○:Y、M、C、Kの全ての画像において、15cm離れた位置から観測しても、画像表面に析出物または光沢ムラが認められない
△:Y、M、C、Kの全ての画像において、15cm離れた位置から観測すると、画像表面の一部に析出物または光沢ムラが認められるが、30cm離れた位置からは、画像表面に析出物または光沢ムラが認められない
×:Y、M、C、Kの全ての画像において、30cm離れた位置から観測しても、画像表面に析出物または光沢ムラが認められる
(耐擦過性)
形成したベタ画像を「JIS規格 K5701−1 6.2.3 耐摩擦性試験」に記載の方法に則り、適切な大きさに切り取った印刷用コート紙Aを画像上に設置し、荷重をかけて擦り合わせた。その後、画像濃度の低下の程度を目視観察し、下記の基準に従って耐擦過性を評価した。結果を表1〜7に示す。
○:Y、M、C、Kの全ての画像において、50回以上擦っても、画像の変化はまったく認められない
△:Y、M、C、Kの全ての画像において、50回擦った段階で画像濃度の低下が認められるが、実用上許容範囲である
×:Y、M、C、Kの全ての画像において、50回未満の擦りで、明らかな画像濃度の低下が認められ、実用に耐えない品質である
(射出安定性の評価)
上記調製した各インクを搭載したインクジェット記録装置を用いて射出を行った。インクジェット記録ヘッドのノズル欠および出射曲がりの有無について目視観察を行い、下記の基準に従って射出安定性を評価した。結果を表1〜7に示す。
○:全てのインクジェット記録ヘッドにおいて、ノズル欠の発生が全く認められなかった
△:全てのインクジェット記録ヘッドにおいて、全512個のノズル中、1〜4個のノズルでノズル欠が認められた
×:全てのインクジェット記録ヘッドにおいて、全512個のノズル中、5個以上のノズルでノズル欠が認められた
表1〜4に示されるように、実施例1〜16の全ての評価結果は良好である。これは、金属石鹸の有するアルキル基と、インクに含まれるゲル化剤の有するアルキル基とが同一であり、金属石鹸とゲル化剤との相溶性が高まったためである。しかし、ゲル化剤と金属石鹸の有するアルキル基がヘンイコサニル基(C21)である場合、インク中に溶解しにくいため「射出安定性」がやや低い。また、金属石鹸の有する金属イオンがバリウムの場合、金属石鹸はゲル化剤に溶解しにくいため、「射出安定性」がやや低い。
表5に示されるように、比較例1〜4の「射出安定性」は良好であるものの、「耐擦過性」は低い。これは、インクに金属石鹸を含有していないためである。また、「ブルーミング」に関しては、比較例2と比較例4はやや低く、比較例3は低い結果となっている。これは、インクに含まれるゲル化剤が画像表面にブルーミングしたためであり、ゲル化剤の炭素数によって評価結果が異なる。
表6に示されるように、比較例5〜8の「耐擦過性」は良好であるものの、「ブルーミング」と「射出安定性」は低い。これは、インクに含まれる金属石鹸の量が多すぎるためである。
表7に示されるように、比較例9の「射出安定性」は良好だが、金属石鹸の有するアルキル基がヘンイコサニル基(C21)である比較例10の「射出安定性」はやや低い。一方、比較例9の「耐擦過性」はやや低く、比較例10の「耐擦過性」は低い。また、比較例9、10の「ブルーミング」はどちらも低い。これは、金属石鹸の有するアルキル基と、インクに含まれるゲル化剤の有するアルキル基とが異なり、金属石鹸とゲル化剤との相溶性が低下したためである。