JP7011129B2 - 大口径炭化ケイ素単結晶インゴットの成長方法 - Google Patents

大口径炭化ケイ素単結晶インゴットの成長方法 Download PDF

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Description

本発明の一実施態様は、炭化ケイ素(SiC)原料物質からSiC単結晶インゴットを成長させる方法、およびこれに用いられる種結晶に関するものである。
より具体的には、本発明の一実施態様はSiC原料物質から種結晶に大口径のSiC単結晶インゴットを成長させる方法、およびこれに用いられる、保護膜を備えた種結晶に関するものである。
炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、サファイア(Al)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)などの単結晶(single crystal)は、多結晶(polycrystal)からは期待できない特性を示すので、産業分野における需要が増加している。
特に単結晶炭化ケイ素(single crystal SiC)は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が大きく、最大絶縁破壊電界(break field voltage)および熱伝導率(thermal conductivity)がシリコン(Si)よりも優れている。また、単結晶炭化ケイ素のキャリア移動度はシリコンに比肩しており、電子の飽和ドリフト速度および耐圧も大きい。このような特性から、単結晶炭化ケイ素は、高効率化、高耐圧化、および大容量化が求められる半導体デバイスへの適用が期待される。
このような単結晶の製造方法として、例えば、特許文献1には、アルゴンガスを導入することができる真空容器(加熱炉)の中で、ヒーターにより加熱しながら種結晶の温度を原料粉末の温度よりも10℃~100℃低い温度に維持することによって、種結晶上に単結晶インゴットを成長させることが開示されている。
単結晶インゴット成長のためには、通常、種結晶の接着工程を予め経ている。例えば、従来の工程においては、図10Aを参照すると、種結晶ホルダー190と種結晶110との間に接着剤150を塗布して圧着することによって種結晶を接着した後、反応容器200内で原料物質300を加熱して昇華させることにより、種結晶110の前面に単結晶インゴットを成長させている。
特開第2001-114599号公報
従来、種結晶を反応容器上部のホルダーに接着する方式においては、種結晶ホルダーとの間の熱膨張係数(CTE)の差により、加熱過程で残留応力による反りの発生や(図10B参照)クラックが発生し、このような現象は、単結晶インゴットが成長して口径が大きくなるほどさらに増大するので、大口径の単結晶インゴットを成長させるのが困難であった。
また、従来の方法によると、接着剤を用いて種結晶を反応容器上部のホルダーに接着するので、接着剤による単結晶インゴットの成長時の品質低下、種結晶の離脱、種結晶表面の汚染などの問題もあった。
したがって、以下の一実施態様により、種結晶をホルダーに接着せずに単結晶インゴットを成長させることによって、大口径および高品質のSiC単結晶インゴットを成長させる方法を提供しようとする。
また、一実施態様により、前記方法に用いられる保護膜が備えられた種結晶およびその製造方法を提供しようとする。
一実施態様によると、(1)炭化ケイ素(SiC)単結晶の種子晶の背面に炭素質保護膜を形成する工程と、(2)反応容器の下部にSiC原料物質を装入し、反応容器の上部に前記種結晶を接着せずに配置する工程と、(3)前記SiC原料物質から、前記種結晶の前面にSiC単結晶インゴットを成長させる工程とを含む、SiC単結晶インゴットの成長方法が提供される。
他の実施態様によると、SiC単結晶の種結晶の背面に炭素質保護膜を形成する工程を含む、保護膜が備えられたSiC単結晶の種結晶の製造方法が提供される。
また他の実施態様によると、SiC単結晶の種結晶、および前記種結晶の背面に形成された炭素質保護膜を含む、保護膜が備えられた種結晶が提供される。
前記実施態様によると、種結晶をホルダーに付着せずにSiC単結晶インゴットを成長させるため、加熱過程でホルダーとの熱膨張係数の差により発生する残留応力による反りやクラックが発生しないので、大口径の単結晶インゴットを成長させることができる。
また、前記実施態様によれば、種結晶に接着剤を塗布する必要がないため、接着剤に起因する品質の低下も防止することができる。
さらに、前記実施態様によれば、種結晶の背面に炭素質保護膜を形成するため、成長のための加熱中に発生し得る種結晶背面の損失を防止することができる。
図1Aは、具体的な一実施態様によりSiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図1Bは、具体的な一実施態様によりSiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図2は、具体的な一実施態様により、種結晶に保護膜を形成する方法を示す図である。 図3Aは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図3Bは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図4は、具体的な他の実施態様により、種結晶に保護膜を形成する方法を示す図である。 図5Aは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図5Bは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを成長させる方法を示す図である。 図6Aは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図6Bは、具体的な他の実施態様により、SiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図7Aは、具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶の断面を示す図である。 図7Bは、具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶の断面を示す図である。 図8は、具体的な他の実施態様により、保護膜を製造する工程を示す図である。 図9は、具体的な他の実施態様により、種結晶に保護膜を付着する工程を示す図である。 図10Aは、従来の方法によりSiC単結晶インゴットを製造するための反応容器の構成を示す図である。 図10Bは、種結晶ホルダーと種結晶との間の熱膨張係数差による反りを示す図である。 図11Aは、実施例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜表面の写真である。 図11Bは、比較例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜表面の写真である。 図12Aは、実施例B1で製造した保護膜が備えられた種結晶の断面において、第1炭素質層を観察した顕微鏡画像である。 図12Bは、実施例B1で製造した保護膜が備えられた種結晶の断面において、第2炭素質層を観察した顕微鏡画像である。 図12Cは、実施例B1で製造した保護膜が備えられた種結晶の断面において、第3炭素質層を観察した顕微鏡画像である。 図13は、実施例B2で製造されたSiC単結晶インゴットの写真である。 図14Aは、実施例C1で製造した保護膜の表面を観察した顕微鏡画像である。 図14Bは、実施例C1で製造した保護膜の断面を観察した顕微鏡画像である。 図15Aは、実施例C2で製造したSiC単結晶インゴットの写真である。 図15Bは、比較例で製造したSiC単結晶インゴットの写真である。
以下、一実施態様について、添付の図面を参照して具体的に説明する。以下の具体的な説明において、上部または下部と記載される位置は、図面に基づいて理解することができる。以下の説明において参照する図面は、理解を助けるために大きさや間隔などが誇張されて表示されることができ、また、この技術分野に属する通常の技術者に自明の内容は、図示が省略され得る。
<保護膜が備えられた種結晶の製造方法>
一実施態様による保護膜が備えられた種結晶の製造方法は、炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶の背面に炭素質保護膜を形成する工程を含む。
[具体的な実施態様A]
具体的な一実施態様による保護膜が備えられた種結晶の製造方法は、(a1)バインダー樹脂およびフィラーを含有する組成物を調製する工程と、(a2)前記組成物をSiC単結晶の種結晶の背面にコーティングし、熱処理により炭素質保護膜を形成する工程とを含み、前記炭素質保護膜が5μm~1000μmの厚さを有し、前記フィラーがカーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーである。
具体的な実施態様によると、炭素質保護膜の製造時にフィラーを添加して、熱処理中に保護膜に発生し得るクラックなどを防止することができる。
以下、各工程別に詳細に説明する。
(a1)のコーティング組成物の調製工程
工程(a1)においては、バインダー樹脂およびフィラーを含有する組成物を調製する。
前記バインダー樹脂は、保護膜の製造のためのコーティング膜の主成分をなす。前記バインダー樹脂は、例えばフェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ピッチ系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはこれらの混合樹脂であり得る。
前記バインダー樹脂は、残炭量(actual carbon ratio)が高いことが好ましい。例えば、前記バインダー樹脂は、不活性雰囲気中において残炭量が5%~50%、または10%~30%であり得る。
また、前記バインダー樹脂は、硬化性樹脂であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂であり得る。
前記フィラーは、コーティング膜の形成後、熱処理時に炭化ないし黒鉛化を促進させ、過度の収縮を防ぎ、クラックが形成されることを防止する役割を果たす。
前記フィラーは、例えば、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。具体的には、前記フィラーは、鱗状黒鉛(flake graphite)、土状黒鉛(amorphous graphite)、膨張黒鉛(expandable graphite)、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン(graphene)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、炭化タンタル(TaC)、炭化タングステン(WC)などの成分を含有し得る。
前記フィラーは、前記組成物の全重量を基準に5重量%~95重量%、5重量%~60重量%、10重量%~50重量%、または20重量%~40重量%の量で含有され得る。別の例として、前記フィラーは、前記バインダー樹脂100重量部に対して10重量部~200重量部、または30重量部~150重量部で前記組成物に含まれ得る。フィラーの含有量が前記好ましい範囲内であるとき、コーティング膜の形成後の熱処理時に発生し得る収縮やクラックなどを防止して、優れた表面の保護膜を形成するのに、より有利であり得る。
前記組成物は、コーティングの効率のために液状の組成物であることが好ましい。
これにより、前記組成物は、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒を含有し得る。この際、前記液状の組成物の固形分含有量は、10重量%~90重量%、または20重量%~50重量%であり得る。
前記組成物には、その外にも湿潤分散剤、消泡剤などがさらに含有され得る。
(a2)コーティング膜の形成および熱処理工程
工程(a2)においては、上記で調製した組成物をSiC単結晶の種結晶の背面にコーティングし熱処理して、炭素質保護膜を形成する。
具体的には、図2に示すように、SiC単結晶の種結晶110の背面112に前記組成物をコーティングしてコーティング膜120’を得た後、熱処理により炭化ないし黒鉛化させて、炭素質保護膜120を形成することができる。
本明細書において、種結晶の「前面」とは、一般的に広く平らな形状を有する種結晶の両面中、単結晶インゴットが成長する面のことを意味し、逆に種結晶の「背面」とは、単結晶インゴットが成長する面の反対面のことを意味する。
従来は、主に種結晶の背面に接着剤を塗布してホルダーに付着していたが、前記実施態様によれば、種結晶の背面に保護膜が形成され、ホルダーに付着されない。
前記種結晶としては、4H-SiC、6H-SiC、3C-SiC、または15R-SiCなどと、成長させようとする結晶の種類に応じて、様々な結晶構造を有する種結晶を用いることができる。
前記種結晶は、コーティングの前に洗浄工程を予め経ることができる。種結晶の表面には、シリコンが酸素と反応して形成された二酸化シリコン酸化膜が形成され得るが、このような酸化膜は、後続工程において単結晶インゴットが成長する際に、種結晶が離脱したり欠陥を発生させ得るので、洗浄により予め除去することが好ましい。前記洗浄は、アセトン、アルコール、蒸留水、酸溶液などを用いて行うことができ、超音波処理または浸漬などにより行うことができ、1回または2回以上行うことができる。
その後、前記種結晶の背面にコーティングが行われる。
前記コーティングは、スピンコーティング、テーピングなどの通常のコーティング法を利用することができる。
また、前記コーティングは、10μm~2000μmの厚さ範囲、または20μm~1500μmの厚さ範囲で行うことができる。コーティングの厚さが好ましい範囲に比べて小さすぎる場合、熱処理後に保護膜の役割ができない可能性があり、逆に大きすぎると、熱処理の際に気泡含有、クラック、コーティング剥離(peel off)などが発生し得る。
その後、前記コーティング膜を30℃~300℃の温度、または50℃~200℃の温度で熱処理して乾燥および硬化させた後、300℃以上、例えば300℃~2200℃の温度で熱処理して、炭化を経た炭素質保護膜を得ることができる。
前記組成物に含有されているバインダー樹脂は、前記熱処理により炭化(carbonization)ないし黒鉛化(graphitization)され、炭素質保護膜として形成される。また、前記コーティング膜内のフィラーは、熱処理時に発生し得るクラックを防止し、炭化ないし黒鉛化を促進させることができる。
前記熱処理の温度は、より具体的には、400℃以上、500℃以上、または600℃以上であり得、例えば、400℃~1500℃、500℃~1000℃、1500℃~2500℃、または2000℃~2500℃であり得る。また、前記熱処理は、1時間~10時間、または1時間~5時間の間行うことができる。
一具体例として、前記熱処理は、0.5℃/min~5℃/minの昇温速度および500℃以上または600℃以上の温度条件で行われ、例えば、500℃~1000℃の温度まで昇温し、前記温度を維持しながら1時間~5時間加熱した後、0.5℃/min~5℃/minの速度で冷却することにより行われる。
他の具体例として、前記熱処理は、1℃/min~5℃/minの昇温速度および1500℃以上または2000℃以上の温度条件で行われ、例えば、1500℃~2500℃の温度または2000℃~2500℃の温度まで昇温し、前記温度を維持しながら1時間~5時間加熱した後、1℃/min~5℃/minの速度で冷却することにより行われる。
前記熱処理は、不活性ガス雰囲気で行われ、例えば、アルゴンガスまたは窒素ガス雰囲気で行われる。
前記熱処理は、誘導加熱により行われるか、または抵抗加熱で行われる。すなわち、前記熱処理は、誘導加熱焼成炉において行うこともでき、抵抗加熱焼成炉において行うこともできる。
[具体的な実施態様B]
具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶の製造方法は、(b1)バインダー樹脂およびフィラーを含有する第1組成物および第2組成物を調製する工程と、(b2)炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶の背面に前記第1組成物をコーティングして炭化ないし黒鉛化させて、第1炭素質層を形成する工程と、(b3)前記第1炭素質層の表面に前記第2組成物をコーティングして炭化ないし黒鉛化させて第2炭素質層を形成する工程とを含み、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、互いに異なる物性を有する。
具体的な実施態様によると、前記炭素質保護膜を多層に形成しながら、各層別に物性を異なる構成とすることにより、単層で形成する場合に比べて膜質、種結晶と保護膜との間の接着性、保護膜の厚さ、および耐熱性の面で改善され得る。これにより、単結晶インゴットの成長中に発生し得る応力をより効果的に抑制して、インゴットのクラック発生などの品質低下を防止することができる。
以下、各工程について詳細に説明する。
(b1)コーティング組成物の調製
工程(b1)においては、バインダー樹脂およびフィラーを含有する第1組成物および第2組成物を調製する。
前記バインダー樹脂は、保護膜の製造のためのコーティング組成物の主成分をなす。前記バインダー樹脂としては、前記実施態様において例示したような種類の樹脂を使用することができる。
前記フィラーは、組成物コーティング後の熱処理時に炭化を促進させ、過度な収縮を防ぎ、クラックが形成されることを防止する役割を果たす。前記フィラーは、前記実施態様において例示したように、炭素質フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。
前記第1組成物は、バインダー樹脂100重量部に対して20重量部~300重量部、または50重量部~200重量部のフィラーを含むことができる。
また、前記第2組成物は、バインダー樹脂100重量部に対して10重量部~200重量部、または30重量部~150重量部のフィラーを含むことができる。
好ましい組成範囲内であるとき、組成物のコーティング性に優れながら、コーティング後の熱処理の際に表面収縮やクラックなどを防止するのに、より有利であり得る。
より具体的な一例として、前記バインダー樹脂としてフェノール樹脂を使用し、前記フィラーとして黒鉛を使用し、前記第1組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して100重量部~180重量部のフィラーを含み、第2組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して50重量部~120重量部のフィラーを含むことができる。
より具体的な他の例として、前記バインダー樹脂としてフェノール樹脂を使用し、前記フィラーとして鱗状黒鉛を使用し、前記第1組成物は前記バインダー樹脂100重量部に対して120重量部~150重量部のフィラーを含み、前記第2組成物は前記バインダー樹脂100重量部に対して80重量部~100重量部のフィラーを含むことができる。
前記組成物は、コーティング効率のために液状の組成物であることが好ましい。
これにより、前記組成物は、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒を含有し得る。
この際、前記液状組成物の固形分含有量は、1重量%~50重量%、または5重量%~30重量%であり得る。
第1組成物と第2組成物とは、互いに異なる固形分含有量、または粘度を有し得る。好ましくは、前記第1組成物は、第2組成物よりもさらに低い固形分含有量を有し得る。これにより、前記第1組成物は相対的に低い粘度を有するようになり、種結晶に対する付着性を向上させることができる。
この際、前記第1組成物の固形分含有量は、1重量%~30重量%、または1重量%~20重量%であり得る。また、前記第2組成物の固形分含有量は、5重量%~50重量%、または5重量%~30重量%であり得る。
好ましい一例として、第1組成物が5重量%~15重量%の固形分含有量を有し、前記第2組成物が8重量%~18重量%の固形分含有量を有するが、前記第1組成物が前記第2組成物よりもさらに低い固形分含有量を有し得る。
前記組成物には、その外にも湿潤分散剤、消泡剤などがさらに含有され得る。
さらに、前記第1組成物および第2組成物と異なる組成の第3組成物、第4組成物などをさらに調製して、保護膜の様々な層構成を図ることができる。
(b2)第1炭素質層の形成
工程(b2)においては、炭化ケイ素(SiC)種結晶の背面に前記第1組成物をコーティングし、炭化ないし黒鉛化させて、第1炭素質層を形成する。
具体的には、図4(a)~(c)に示すように、SiC単結晶種結晶110の背面112に前記第1組成物をコーティングして第1コーティング膜120’を得た後、熱処理により乾燥および硬化を経て、炭化ないし黒鉛化させて第1炭素質層121を形成することができる。この際、前記第1コーティング膜は、1μm~40μm、1μm~20μm、または1μm~10μmの厚さを有し得る。
前記種結晶としては、前記実施態様において例示した結晶構造を有する種結晶を使用することができ、コーティングの前に洗浄工程を予め経ることができる。
その後、種結晶の背面に前記第1組成物のコーティングが行われ、前記コーティングは、スピンコーティング、テープキャスティングなどの通常のコーティング法を利用することができる。
また、前記コーティングは、0.1μm~2000μmの厚さ範囲、または20μm~1500μmの厚さ範囲で行われる。コーティングの厚さが前記好ましい範囲に比べて小さすぎる場合、熱処理後に保護膜の役割ができない可能性があり、逆に大きすぎると、熱処理時に気泡含有、クラック、コーティング剥離(peel off)などが発生し得る。
その後、前記種結晶の背面にコーティングされた第1組成物を炭化ないし黒鉛化させて、第1炭素質層を形成する。
例えば、前記第1組成物を30℃~300℃の温度、または50℃~200℃の温度で熱処理して乾燥および硬化させた後、300℃以上、例えば300℃~2200℃の温度で熱処理することにより、炭化ないし黒鉛化を行うことができる。
前記第1組成物に含有されたバインダー樹脂は、前記熱処理により炭化されるかさらには黒鉛化され、第1炭素質層を構成することになる。また、前記組成物内のフィラーは、熱処理の際に発生し得るクラックを防止し、炭化ないし黒鉛化を促進させることができる。
前記熱処理のより具体的な方法および条件は、前記実施態様において炭素質保護膜を製造する際に例示した具体的な方法および条件を採用することができる。
(b3)第2炭素質層の形成
工程(b3)においては、前記第1炭素質層の表面に前記第2組成物をコーティングし、炭化ないし黒鉛化させて、第2炭素質層を形成する。
具体的には、図4(d)および(e)に示すように、第1炭素質層121の表面に前記第2組成物をコーティングして、第2コーティング膜122’を得た後、熱処理により乾燥および硬化を経て、炭化ないし黒鉛化させて、第2炭素質層122を形成することができる。この際、前記第2コーティング膜は、11μm~100μm、11μm~50μm、または11μm~30μmの厚さを有し得る。
その他、前記第2炭素質層を形成するための工程の具体的な条件は、前記第1炭素質層の形成工程において例示した条件を採用することができる。
前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、互いに異なる量のフィラーを有し得る。好ましくは、前記第2炭素質層は、前記第1炭素質層よりもさらに多い量のフィラーを有し得る。すなわち、前記第2炭素質層内に含有されているフィラーの量は、前記第1炭素質層内に含有されているフィラーの量よりもさらに多いことがあり得る。
このように、前記第2炭素質層に相対的に多い量のフィラーを含有させることにより、高温成長時に必要な耐熱性を確保することができる。
前記第2炭素質層に含有されるフィラーの量を増やすために、前記第2炭素質層のフィラー含有量(%)を増やすか、または第2炭素質層の厚さを増加させ得る。これにより、前記第2炭素質層は、前記第1炭素質層よりもフィラーの含有量がより高いか、または厚さがより大きいことがあり得る。
また、必要に応じて、前記第2炭素質層122上に、追加の炭素質層をさらに形成することができる。この際、前記追加の炭素質層は、前記第2炭素質層の原料組成物(第2組成物)を利用して形成することもでき、または他の組成物(第3組成物、第4組成物など)を利用して形成することもできる。
例えば、前記第2炭素質層上に1個~8個または1個~4個の追加の炭素質層をさらに形成することができ、この際、追加の炭素質層は、前記第2組成物を用いて形成することができる。
このような繰り返し炭素質層形成工程を経ると、多層の炭素質保護膜120が備えられた種結晶110が得られる。
[具体的な実施態様C]
具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶の製造方法は、(c1)バインダー樹脂を含む組成物をシート状に成形して保護膜を製造する工程と、(c2)前記保護膜を裁断して、炭化ケイ素(SiC)単結晶種結晶の背面に、加圧により付着する工程と、(c3)前記種結晶に付着された保護膜を硬化および炭化させる工程とを含み、前記保護膜は、前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部を有する。
具体的な実施態様によると、種結晶の背面に炭素質保護膜を形成するので、成長のための加熱中に発生し得る種結晶背面の損失を防止することができる。特に、前記実施態様によると、種結晶の表面に直接保護膜を形成せず、シート状の保護膜を予め形成した後、種結晶と付着させることにより、保護膜の形成が容易で、かつ、均一な厚さおよび膜質の実現が可能となる。
特に、このような工程により、種結晶よりも直径の大きい保護膜を形成することができ、その結果、反応容器内に種結晶を配置する際に、保護膜の突出部を支持台として活用し、種結晶ホルダーに付着する従来の方法を利用しなくても、種結晶ホルダーを利用することと同様の効果を有しながらも、SiC単結晶のインゴット成長の際に直径縮小を防止して、大口径のインゴットを得ることができる。また、前記実施態様の方法によると、種結晶が発熱体である反応容器に直接接触しなくて済むので、種結晶損失や汚染を抑制することができる。
図8は、前記実施態様により保護膜を製造する工程を示したものであり、図9は、前記実施態様により種結晶に保護膜を付着する工程を示したものである。
以下、図面を参照して、各工程についてより詳細に説明する。
(c1)保護膜のシート状成形
工程(c1)においては、バインダー樹脂を含む組成物をシート状に成形して保護膜を製造する。
前記バインダー樹脂は、保護膜の製造のための組成物の主成分をなす。前記バインダー樹脂としては、前記実施態様において例示したような種類の樹脂を使用することができる。
前記組成物は、バインダー樹脂の外に、フィラーをさらに含むことができる。前記フィラーは、組成物のコーティング後の熱処理の際に炭化を促進させ、過度な収縮を防ぎ、クラック形成を抑制することができる。前記フィラーは、前記実施態様において例示したように、炭素質フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。
前記フィラーは、前記バインダー樹脂100重量部に対して10重量部~200重量部、または30重量部~150重量部で前記組成物に含まれ得る。フィラーの含有量が前記好ましい範囲内であるとき、コーティング膜形成後の熱処理の際に発生し得る収縮やクラックなどを防止して、優れた表面の保護膜を形成するために、より有利であり得る。
より具体的な一例として、前記バインダー樹脂としてフェノール樹脂を使用し、前記フィラーとして鱗状黒鉛を使用し、前記組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して50重量部~120重量部で前記フィラーを含むことができる。
前記組成物は、成形時の粘度調整のために、溶媒をさらに含むことができる。
例えば、前記組成物は、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒を含有し得る。この際、前記組成物の固形分含有量は、10重量%~90重量%、または20重量%~50重量%であり得る。
前記組成物には、これ以外にも湿潤分散剤、消泡剤などがさらに含有され得る。
このように調製された組成物は、シート状に成形され保護膜として製造される。前記成形は、ロールコーティング、コンマコーティング、ディップコーティングなどの工程により行われる。
前記シート状成形は、10μm~3000μmの厚さ範囲、または100μm~1000μmの厚さ範囲で行われる。成形された厚さが前記好ましい範囲に比べて小さすぎる場合、引張強度が弱く、熱処理後に保護膜の役割ができない可能性があり、逆に大きすぎると、熱処理の際に気泡含有、クラック、コーティング剥離(peel off)などが発生し得る。
また、前記組成物からシート状に成形された保護膜の両面に、剥離フィルムを付着する工程を行うことが好ましい。
前記剥離フィルムは、成形工程中に保護膜の表面が汚染されたり、まだ乾燥していない組成物が装置と接触して生産性を低下させたりする問題を防止することができる。
好ましい一例として、前記保護膜の製造は、ロールコーティングで行われ、この際、前記保護膜の両面に剥離フィルムが付着されて成形され、前記剥離フィルムは、後続する硬化または炭化工程の前に除去され得る。
前記剥離フィルムは、通常の剥離フィルムであり得、例えば、シリコーンコーティングされたPETフィルム、シリコーンコーティングされた紙フィルムなどであり得る。前記剥離フィルムは、25μm~100μmの厚さを有し得る。また、前記剥離フィルムは、3gf/inch~30gf/inchの剥離強度を有し得る。
前記保護膜の形成は、単層または多層で行われる。断層成形の場合には、前記組成物のみ用いてシート状に成形することにより保護膜を製造することができる。
多層成形の場合、前記組成物をコア層(別途記載)上にコーティングして、シート状に成形することにより、保護膜を製造することができる。
好ましい一例によれば、前記組成物を、繊維素材からなるコア層の両面にコーティングし、シート状に成形して保護膜を製造することができる。
このように、繊維素材のコア層を用いることにより、厚い保護膜の形成が容易であり、均一な厚さおよび膜質の実現がより有利であり得る。また、繊維素材のコア層を用いることにより、保護膜の強度を強化させて、単結晶インゴット成長の際に種結晶が消滅したり剥離したりすることを防止して、保護膜の収縮抑制により種結晶の変形を防止するのに、より効果的であり得る。
この際、前記繊維素材のコア層は、より具体的には、セルロース、レーヨン、カーボン繊維などを含むことができる。
より好ましくは、前記コア層がセルロース繊維からなり得る。
前記コア層は、保護膜の引張強度を高め、SiCインゴット成長のために反応容器に種結晶を据置する際に、支持力を向上させられる。
具体的な一例による図8(a)を参照すると、前記保護膜の製造がロールコーティングで行われ、この際、前記組成物123を、繊維素材からなるコア層130の両面にコーティングし、シート状に成形して、保護膜120を製造することができる。また、前記保護膜120の両面に第1剥離フィルム141および第2剥離フィルム142が貼り付けられ成形され、前記第1剥離フィルム141および第2剥離フィルム142は、後続する硬化または炭化工程の前に除去され得る。
(c2)保護膜の種結晶付着
工程(c2)においては、前記保護膜を裁断してSiC単結晶の種結晶の背面に、加圧により付着する。
前記で得られた保護膜は、特別な形ではないシート状であるため、種結晶の背面に貼り付けるために裁断する必要がある。
具体的には、前記種結晶の背面の形状が通常円形であるため、前記保護膜を円形状に裁断し得る。
前記実施態様によると、前記保護膜は、前記種結晶の背面を全部カバーしながら、縁の外側に突出する部分を有するように裁断される。
例えば、前記保護膜は、前記種結晶の背面の直径よりもさらに0.1インチ~4インチ、または0.3インチ~1インチ大きい直径を有する円形状に裁断され得る。
その後、前記裁断された保護膜は、SiC単結晶の種結晶の背面に貼り付けられる。
前記種結晶としては、前記実施態様において例示した結晶構造を有する種結晶を用いることができ、コーティング前に洗浄工程を予め経ることができる。
また、前記保護膜と前記種結晶の背面とが直接接触するように、前記種結晶が付着される領域の剥離フィルムを予め除去してから、加圧により付着することができる。
具体的には、シート状で成形された保護膜は、一面に第1剥離フィルムが貼り合わされ、他面に第2剥離フィルムが貼り合わされた構造を有するが、図8(b)に示すように、このように貼り合わされた状態で、種結晶の背面よりも大きい直径の円形状(c2)で1次裁断した後、種結晶の背面に付着される領域(c1)の第2剥離フィルム142だけを2次的に裁断することができる。
その結果、図8(c)に示すように、前記保護膜120は、一面に第1剥離フィルム141が張り合わせられ、他面に第2剥離フィルム142が張り合わせられた構造であって、保護膜120に種結晶が付着される領域の第2剥離フィルム142が除去され、保護膜120が外部に露出され得る。また、前記保護膜120は、繊維素材のコア層130を備え、向上された引張強度を有し得る。
その後、図9(a)および(b)に示すように、前記裁断された保護膜120上に、SiC単結晶の種結晶110の背面112が接触するように配置し、加圧600により保護膜と種結晶とを付着し得る。好ましくは、前記保護膜120は、未硬化のバインダー樹脂を含むので、加圧600により保護膜と種結晶とが容易に付着され得る。
(c3)保護膜の硬化および炭化
工程(c3)においては、前記種結晶に付着された保護膜を硬化および炭化させる。
例えば、前記保護膜を、30℃~300℃の温度、または50℃~200℃の温度で熱処理することにより、乾燥および硬化が行われる。
その後、前記硬化された保護膜を300℃以上、例えば300℃~2200℃の温度で熱処理することにより、炭化ないし黒鉛化が行われる。
前記保護膜に含有されたバインダー樹脂は、前記熱処理によって炭化され、さらには、黒鉛化を経て炭素質保護膜を構成することとなる。また、前記保護膜内のフィラーは、熱処理の際に発生し得るクラックを防止し、炭化ないし黒鉛化を促進させられる。
前記熱処理のより具体的な方法および条件は、前記実施態様において、炭素質保護膜を製造する際に例示した具体的な方法および条件を採用することができる。
前記炭化は、前記保護膜に付着した剥離フィルムがすべて削除された状態で行うことが好ましい。
具体的な例として、図9(c)に示すように、前記保護膜120で種結晶110が付着していない面に備えられている第1剥離フィルム141を除去した後に前記硬化工程を行うことが、溶媒の揮発が容易な点から好ましい。この際、前記保護膜120で種結晶110が付着された面に備えられている第2剥離フィルム142は残しておくことが、保護膜のたわみを防止し、融着を抑制するために有利である。硬化後、図9(d)に示すように、前記保護膜120から第2剥離フィルム142まで除去してから炭化を行うことができる。
以上の工程を経ると、炭化された保護膜が備えられた種結晶が得られる。前記炭化された保護膜の総厚さは、5μm~1500μm、10μm~1000μm、50μm~500μm、または50μm~2000μmであり得る。
以上の工程によると、種結晶の表面に直接保護膜を形成せず、シート状の保護膜を予め形成した後、種結晶と貼り合わせることにより、保護膜の形成が容易で均一な厚さおよび膜質の実現が可能である。特に、このような工程により、種結晶よりも直径の大きい保護膜を形成することができ(種結晶の表面に直接保護膜を形成する場合は困難な課題である)、その結果、反応容器内に種結晶の配置の際に保護膜の突出部を支持台として活用し、種結晶ホルダーに付着する従来の方法を利用しなくても、種結晶ホルダーを利用することと同様の効果を有しながらも、SiC単結晶インゴット成長時の直径縮小を防止して、大口径のインゴットが得られる。また、一実施態様の方式によると、種結晶が、発熱体である反応容器に直接接触しないので、種結晶の損失や汚染を抑制することができる。
<保護膜が備えられた種結晶>
また、一実施態様による保護膜が備えられたSiC単結晶の種結晶は、炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶、および前記種結晶の背面に形成された炭素質保護膜を含む。
[具体的な実施態様A]
具体的な一実施態様による保護膜が備えられた種結晶は、SiC単結晶の種結晶と、前記種結晶の背面に形成された炭素質保護膜とを含み、前記炭素質保護膜が5μm~1000μmの厚さを有し、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーを含有する。
このように、熱処理によって形成された保護膜にフィラーが含有されることにより保護膜の強度を向上させ、クラックおよび種結晶の離脱を防止することができる。
前記フィラーは、前記で例示したように、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。また、前記フィラーは、前記炭素質保護膜の重量を基準に5重量%~95重量%、50重量%~95重量%、または70重量%~90重量%の量で含有され得る。炭素質保護膜内のフィラー含有量が前記好ましい範囲内であるとき、保護膜の強度向上およびクラックや種結晶離脱を防止するために、より有利であり得る。
また、前記炭素質保護膜は、炭化されたバインダー樹脂を含み、この際、前記バインダー樹脂の種類は、前記で例示したとおりである。
前記炭素質保護膜は、結晶化されていない炭素、または結晶化された炭素を含むことができる。例えば、前記炭素質保護膜は、炭化物または黒鉛化物を含むことができる。例えば、前記炭素質保護膜は、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ピッチ系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂およびこれらの混合樹脂からなる群より選択された樹脂の炭化物または黒鉛化物を含むことができる。
前記炭素質保護膜の厚さは、例えば、1μm~1500μmの範囲、または5μm~1000μmの範囲、または20μm~500μmの範囲であり得る。
[具体的な実施態様B]
具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶は、炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶と、前記種結晶の背面に形成された保護膜とを含み、ここで、前記保護膜は、前記種結晶の背面に接する第1炭素質層、および前記第1炭素質層上に形成された第2炭素質層を含み、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは互いに異なる物性を有する。
前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、例えば厚さ、付着性、耐熱性などの物性面で互いに異なる。
前記第1炭素質層は種結晶に対する付着性に優れ、コーティング後の熱処理およびインゴット成長過程で剥離が発生することを防止することができる。具体的には、前記第1炭素質層は、前記第2炭素質層よりも相対的に高い付着性を有し得る。
また、前記第2炭素質層は高温に対する耐熱性に優れており、コーティング後の熱処理およびインゴット成長過程で保護膜にクラックが発生したり、消滅されたりすることを防止することができる。具体的には、前記第2炭素質層は、前記第1炭素質層よりも相対的に高い耐熱性を有し得る。
また、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、互いに異なる厚さを有し得る。好ましくは、前記第2炭素質層は、前記第1炭素質層よりもさらに大きい厚さを有し得る。
この際、前記第1炭素質層の厚さは、0.1μm~20μm、0.2μm~15μm、または0.3μm~10μmであり得る。また、前記第2炭素質層の厚さは、1μm~50μm、2μm~30μm、または3μm~20μmであり得る。
具体的な一例として、第1炭素質層は0.5μm~5μmの厚さを有し、前記第2炭素質層は6μm~15μmの厚さを有し得る。
前記保護膜は、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり得る。すなわち、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり得る。
これにより、前記炭素質保護膜は、結晶化されていない炭素または結晶化された炭素を含むことができる。例えば、前記炭素質保護膜は、前記バインダー樹脂の炭化物または黒鉛化物を含むことができる。
この際、前記バインダー樹脂は、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ピッチ系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂およびこれらの混合樹脂であり得る。また、前記フィラーは、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。
また、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、互いに異なる量のフィラーを有し得る。好ましくは、前記第2炭素質層は、前記第1炭素質層よりもさらに多い量のフィラーを有し得る。
具体的な例として、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり、この際、前記第2炭素質層が前記第1炭素質層に比べてより大きな厚さと、より多い量のフィラーを有し、前記フィラーが、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。
また、前記第1炭素質層と前記第2炭素質層とは、それぞれ第1組成物および第2組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり、この際、前記第1組成物は前記第2組成物よりもさらに低い固形分含有量を有し得る。
前記保護膜は、前記第1炭素質層および第2炭素質層以外にも、1個~8個の炭素質層をさらに含むことができる。すなわち、前記保護膜は、前記第2炭素質層上に、第3炭素質層、第4炭素質層などの追加の炭素質層をさらに含むことができる。
この際、前記追加の炭素質層は、前記第1炭素質層または前記第2炭素質層と同一または異なる物性を有し得る。例えば、前記追加の炭素質層は、前記第2炭素質層と同一の物性を有し得る。
このような多層の炭素質保護膜の総厚さは、例えば、10μm~1500μmの範囲、または15μm~1000μmの範囲、または20μm~500μmの範囲であり得る。
好ましい例として、前記保護膜が1個~8個の炭素質層をさらに含み、前記保護膜が20μm~1500μmの総厚さを有し得る。
このように、前記炭素質保護膜を多層に形成しながら、各層ごとに物性が異なる構成とすることにより、単層で保護膜を形成する場合よりも、膜質、種結晶と保護膜との間の接着性、保護膜の厚さ、および耐熱性の面において改善され得る。
[具体的な実施態様C]
具体的な他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶は、炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶と、前記種結晶の背面に形成された保護膜とを含み、前記保護膜は、前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部を有する。
前記の工程で示すように、前記保護膜は、バインダー樹脂を含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり得る。
これにより、前記保護膜は、結晶化されていない炭素、または結晶化された炭素を含むことができる。例えば、前記保護膜は、前記バインダー樹脂の炭化物または黒鉛化物を含むことができる。
この際、前記バインダー樹脂は、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ピッチ系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびこれらの混合樹脂であり得る。また、前記フィラーはカーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーであり得る。
好ましくは、前記保護膜は、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり得る。
具体的には、前記保護膜は、前記バインダー樹脂100重量部に対して50重量部~120重量部のフィラーを含む組成物が炭化ないし黒鉛化されたものであり得る。保護膜内のフィラー含有量が前記好ましい範囲内であるとき、高温のインゴット成長の際に保護膜の剥離およびクラックなどを防止するために、より有利であり得る。
図7Aおよび7Bは、前記実施態様による保護膜が備えられた種結晶の断面を示したものである。
図7Aを参照すると、前記保護膜が備えられた種結晶10は、SiC単結晶の種結晶110と、前記種結晶110の背面111に形成された保護膜120とを含むことができる。
または、図7Bを参照すると、他の実施態様による保護膜が備えられた種結晶10’は、SiC単結晶の種結晶110と、前記種結晶110の背面111に形成された保護膜120とを含むが、前記保護膜120がコア層130を含み、この際、前記コア層130は、繊維物質が炭化されて形成されたものであり得る。
特に、これら保護膜120は、種結晶110よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面112を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部125を有する。
前記突出部125は、SiCインゴット成長のために、反応容器に種結晶を据置する際に支持台として活用することができる。
好ましくは、前記保護膜120の断面から見て前記突出部125は、0.1インチ~4インチの範囲、または0.3インチ~1.0インチの範囲の長さを有することが、種結晶表面の熱衝撃および熱エッチング防止の点において有利である。
好ましい一例として、前記保護膜が50μm~2000μmの総厚さを有し、前記保護膜の断面から見て、前記突出部は0.3インチ~1インチの範囲の長さを有し得る。また、この際、前記保護膜は繊維物質が炭化され形成されたコア層を含むことができる。
<SiC単結晶インゴットの成長方法>
一実施態様による炭化ケイ素(SiC)単結晶インゴットの成長方法は、(1)炭化ケイ素単結晶の種結晶の背面に保護膜を形成する工程と、(2)反応容器の下部にSiC原料物質を装入し、反応容器の上部に前記種結晶を接着せずに配置する工程と、(3)前記SiC原料物質から前記種結晶の前面にSiC単結晶インゴットを成長させる工程とを含む。
以下、各工程についてより具体的に説明する。
(1)保護膜が備えられた種結晶の製造
工程(1)においては、SiC単結晶の種結晶の背面に炭素質保護膜を形成する。
具体的な一実施態様によると、工程(1)は、バインダー樹脂およびフィラーを含有する組成物を調製する工程と、前記組成物をSiC種結晶の背面にコーティングし、熱処理により炭素質保護膜を形成する工程とを含んで行われる。また、この際、前記炭素質保護膜が5μm~1000μmの厚さを有し、カーボン系フィラー、金属系フィラー、またはこれらの複合フィラーを、炭素質保護膜の重量を基準に、50重量%~95重量%の量で含有し得る。また、前記保護膜は、前記種結晶の背面と同じ形状および面積で形成され得る。
具体的な他の実施態様によると、工程(1)は、バインダー樹脂およびフィラーを含有する第1組成物および第2組成物を調製する工程と、SiC単結晶の種結晶の背面に前記第1組成物をコーティングして、炭化ないし黒鉛化させ第1炭素質層を形成する工程と、前記第1炭素質層の表面に前記第2組成物をコーティングして、炭化ないし黒鉛化させ第2炭素質層を形成する工程とを含んで行われる。この際、前記第1組成物が、前記第2組成物よりもさらに低い固形分含有量を有し、前記第2炭素質層が前記第1炭素質層よりもさらに多い量のフィラーを有し得る。また、前記保護膜は、前記種結晶の背面と同じ形状および面積で形成され得る。
具体的な他の実施態様によると、工程(1)は、バインダー樹脂を含む組成物をシート状に成形して保護膜を製造する工程と、前記保護膜を裁断した後、SiC単結晶の種結晶の背面に、加圧により付着する工程と、前記種結晶に付着された保護膜を硬化および炭化させる工程とを含んで行われる。工程(1)において、前記組成物を繊維材料からなるコア層の両面にコーティングしてシート状に成形することができる。この際、前記保護膜は、前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら、縁の外側に突出する突出部を有し得る。また、前記炭化された保護膜は50μm~2000μmの総厚さを有し得る。
その他の具体的な工程条件は、前記で例示したとおりである。
また、それにより製造された保護膜が備えられた種結晶の具体的な構成は、前記で例示したとおりである。
(2)SiC原料物質の装入および種結晶の配置
工程(2)においては、反応容器の下部に炭化ケイ素(SiC)原料物質を装入し、反応容器の上部に前記種結晶を接着せずに配置する。このように、実施態様による方法は、種結晶をホルダーに接着しない。好ましくは、前記反応容器には種結晶の接着のためのホルダーが備えられない。
一例として、図1Aおよび図3Aを参照すると、前記反応容器200は、種結晶ホルダーなしで上部に平らな据置台250を備え、前記種結晶110は、前記据置台250上に接着せずに載置され配置され得る。この際、前記種結晶110は、前記SiC原料物質に対して種結晶の前面が向くように配置され得る。すなわち、前記種結晶110の前面(成長面)が反応容器200の下部を向くように、種結晶の背面(保護膜が備えられた面)が反応容器200の上部を向くように配置され得る。前記据置台250は、平らな上段を有すれば、その形状に特に限定されない。また、前記据置台250は、前記反応容器200の上部内壁の一部が突出するように形成され得る。
他の例として、図1Bおよび図3Bを参照すると、前記反応容器200は、種結晶ホルダーなしで上部に溝が設けられている据置台250を備え、前記種結晶は前記据置台の溝に接着されずに嵌められて配置され得る。この際、前記種結晶110は、前記SiC原料物質に対して種結晶の前面が向くように配置され得る。すなわち、前記種結晶110の前面(成長面)が反応容器200の下部を向くように、種結晶の背面(保護膜が備えられた面)が反応容器200の上部を向くように配置され得る。前記据置台250は、種結晶を嵌められる溝を有すれば、その形状に特に限定されないが、例えば、断面において「コ」の字に溝が設けられた形状を有し得る。また、前記据置台250は、前記反応容器200の開放型蓋220に結合されてあり得る。
また他の例として、前記反応容器が種結晶ホルダーなしで上部に据置台を備え、前記保護膜は前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら、縁の外側に突出する突出部を有し、前記保護膜の突出部を前記反応容器の上部に据置させ前記種結晶が配置され得る。具体的には、図5Aを参照すると、前記反応容器200は、種結晶ホルダーなしで上部内壁に据置台250を備え、前記保護膜120の突出部を前記据置台250に据置させ前記種結晶110が配置され得る。この際、前記種結晶110は、前記SiC原料物質300に対して、種結晶の前面が向くように配置され得る。すなわち、前記種結晶110の前面(成長面)が反応容器の下部を向くように、種結晶の背面(保護膜が備えられた面)が反応容器の上部を向くように配置され得る。この際、前記据置台250は、前記保護膜120の突出部を据置させられる構造であれば、その形状に特に限定されない。例えば、据置台250は、断面において「コ」の字の溝が設けられた形状を有し得、前記保護膜120の突出部が前記溝に嵌められ据置され得る。または、前記据置台は上段が平らな形状を有することができ、前記保護膜の突出部が前記据置台上に載置されて据置され得る。前記種結晶の配置の後に、前記反応容器は蓋により上部が密閉され得る。
または、前記反応容器は開放型の上部構造を有し、前記反応容器の上部に配置される種結晶により前記反応容器が密閉される方式を採用することもできる。例えば、図6Aおよび図6Bに示すように、前記反応容器200には、上部に蓋がないか、または開放型蓋220を備え、前記据置台250の溝に嵌められる種結晶(保護膜が備えられた種結晶)によって密閉される方式を採用することもできる。
前記反応容器200はるつぼであり得、SiCの昇華温度以上の融点を有する物質で製作される。例えば、前記反応容器は、炭素質成分、具体的には黒鉛成分からなり得る。また、前記据置台も前記反応容器の成分と同一かまたは異なる炭素質成分からなり得る。また、前記SiC原料物質は、例えばSiC粉末であり得る。
その後、前記反応容器を断熱材で取り囲み、加熱手段を備える反応チャンバ(石英管など)内に入れることができる。この際、前記加熱手段は、例えば、誘導加熱コイルまたは抵抗加熱手段であり得る。
(3)SiC単結晶インゴットの成長
工程(3)においては、前記SiC原料物質から前記種結晶の前面にSiC単結晶インゴットを成長させる。
図5Bを参照すると、前記インゴット成長は、SiCの原料物質300を昇華させて、前記種結晶110上にSiC単結晶のインゴット400を成長させるものであり得る。
前記SiC単結晶インゴットの成長のための温度および圧力の条件は、例えば、前記SiC単結晶インゴットを成長させる工程は2000℃~2500℃および1torr~200torrの範囲の条件、2200℃~2400℃および1torr~150torrの範囲の条件、2200℃~2300℃および1torr~100torrの範囲の条件、または2250℃~2300℃および1torr~50torrの範囲の条件により加熱して行われる。
しかし、SiC単結晶インゴットの成長は、SiC原料物質が高温においてSiCガスに昇華され、その後減圧条件においてSiCガスが種結晶上で単結晶インゴットに成長する原理を利用したものなので、SiC単結晶インゴットの成長のための温度および圧力条件は、SiC原料物質が昇華される温度および圧力の条件に対して減圧条件であれば、特に制限なく採用され得る。
すなわち、前記で具体的な数値範囲で例示した温度および圧力条件は、それよりも高い温度条件で行う場合、それに比例して適切に高い圧力条件で調節することにより、同じ効果を図ることができる。
このように、成長のための加熱時に種結晶もともに加熱されるが、この際、保護膜が供されていなければ、種結晶の一部が昇華によって損失される恐れがある。つまり、種結晶の前面(成長面)には、原料物質から昇華されたSiCガスが連続して供給されるので問題がないとしても、種結晶の背面は加熱に影響を受けることになる。しかし、前記実施態様によると、種結晶の背面に保護膜が形成されるので、加熱による種結晶背面の損失を防止することができる。
また、具体的な一実施態様によると、前記炭素質保護膜にはフィラーが含有され、熱処理中に保護膜に発生し得るクラックなどを防止することができる。
また、具体的な他の実施態様によると、炭素質保護膜を多層に形成し、各層ごとに物性が異なる構成とすることにより、単層で保護膜を形成する場合よりも、膜質、種結晶と保護膜との間の接着性、保護膜の厚さの面で改善され得る。これにより、単結晶インゴットの成長中に発生し得る応力をより効果的に抑制して、インゴットのクラック発生などの品質低下を防止することができる。
また、具体的な他の実施態様によると、保護膜が種結晶よりも直径が大きいので突出する部分が存在し、これを支持台として活用することにより(すなわち、種結晶には据置される部分がないため)、種結晶ホルダーに付着する従来の方式を利用しなくても、種結晶ホルダーを利用することと同様の効果を有しながらも、SiC単結晶インゴット成長の際に直径縮小を防止して大口径のインゴットを得ることができる。また、前記実施態様の方法によると、種結晶が、発熱体である反応容器に直接接触しないので、種結晶損失や汚染を抑制することができる。
特に、一実施態様によると、種結晶をホルダーに付着しないので、SiC単結晶インゴットを大口径に製造することができる。例えば、前記実施態様により成長工程を経た後のSiC単結晶インゴットは、2インチ以上、3インチ以上、4インチ以上、5インチ以上、さらには6インチ以上の口径を有し得る。一例として、一実施態様により製造されたSiC単結晶インゴットは、2インチ~10インチ、2インチ~8インチ、4インチ~8インチ、または4インチ~6インチの範囲の口径を有し得る。
また、一実施態様の方法によれば、種結晶に接着剤を塗布しないので、SiC単結晶インゴットを高品質に成長させることができる。例えば、一実施態様により製造されたSiC単結晶インゴットは、99%以上、99.5%以上、さらには99.9%以上の純度を有し得る。
以下、より具体的な実施例を例示的に説明する。
(実施例A:断層保護膜が備えられた種結晶の製造および利用)
下記実施例Aで使用した材料は以下の通りである。
-液状フェノール樹脂:フェノール樹脂/メチルアルコール/水=58~62:36~41:0~4(重量比)、Neolite KC-4703、ガンナム化成株式会社
-鱗状黒鉛:平均粒度(D50)2.5μm
-炭化ケイ素種結晶:直径4インチ~6インチ、厚さ500μm~1200μm、結晶構造3C、4H、6H、15R単結晶基板
<実施例A1-1:保護膜が備えられた種結晶の製造>
液状フェノール樹脂にフィラーとして鱗状黒鉛を7:3の重量比で混合し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を、前記混合物100重量部に対して3重量部以内でさらに混合し分散させて組成物を得た。前記組成物を炭化ケイ素種結晶の一面上にスピンコーティングして0.5mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却し、一面に炭素質保護膜を備えた種結晶を得た。
<実施例A1-2:保護膜が備えられた種結晶の製造>
液状フェノール樹脂にフィラーとして鱗状黒鉛を95:5の重量比で混合し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を、前記混合物100重量部に対して3重量部以内でさらに混合し分散させて組成物を得た。前記組成物を炭化ケイ素種結晶の一面上にスピンコーティングして0.5mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却して、一面に炭素質保護膜を備えた種結晶を得た。
<実施例A1-3:保護膜が備えられた種結晶の製造>
液状フェノール樹脂にフィラーとして鱗状黒鉛を5:95の重量比で混合し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を前記混合物100重量部に対して3重量部以内でさらに混合し分散させて組成物を得た。前記組成物を炭化ケイ素種結晶の一面上にスピンコーティングして0.5mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却し、一面に炭素質保護膜を備えた種結晶を得た。
<実施例A1-4:保護膜が備えられた種結晶の製造>
ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、溶媒としてDMSO、およびフィラーとして鱗状黒鉛を3:5:2の重量比で混合し分散させて組成物を得た。前記組成物を炭化ケイ素種結晶の一面上にスピンコーティングして0.5mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて0.5℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却し、一面に炭素質保護膜を備えた種結晶を得た。
<実施例A1-5:保護膜が備えられた種結晶の製造>
ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、溶媒としてDMSO、およびフィラーとして鱗状黒鉛を3:5:2の重量比で混合し分散させて組成物を得た。前記組成物を炭化ケイ素種結晶の一面上にスピンコーティングして0.5mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して2200℃に達した後、2時間熱処理して炭化させ、コーティング膜を黒鉛化した。その後、1℃/minの速度で冷却し、一面に黒鉛化された炭素質保護膜を備えた種結晶を得た。
<比較例A1:保護膜が備えられた種結晶の製造(フィラー未添加)>
液状フェノール樹脂にフィラーを混合せずに、炭化ケイ素の種結晶の一面上にスピンコーティングして0.4mm厚のコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却し、コーティング膜を観察した結果、コーティング膜の収縮によりクラックが発生し、コーティングが剥がれることが確認された。
<実施例A2:炭化ケイ素単結晶のインゴットの成長>
上部内壁に据置台を備えた黒鉛るつぼを準備した。前記るつぼ内の下部に原料物質としてSiC粉末(純度約98%)を装入した。また、前記るつぼ内の上部据置台に、前記実施例A1-1で製造した、一面に保護膜が備えられた種結晶を据置した(図1A参照)。この際、種結晶は据置台といずれの接着も行わず、単に据置台に載置した。また、前記保護膜がるつぼの上部を向くようにして、保護膜が備えられていない面がるつぼ下部を向くようにした。
前記るつぼを断熱材で取り囲み、加熱コイルが備えられている反応チャンバ内に入れた。るつぼ内を真空状態にした後、アルゴンガスを徐々に注入して大気圧に到達した後、徐々に減圧した。また、それと共にるつぼ内の温度を2300℃まで昇温させた。その後、2300℃および20torrの条件において100時間の間、種結晶の保護膜が備えられていない面にSiC単結晶インゴットを成長させた。その結果、4インチ口径のSiC単結晶インゴットを得た。
<試験例A1:保護膜表面評価>
前記実施例および比較例で製造した保護膜が備えられた種結晶について、肉眼あるいは光学顕微鏡を用いて保護膜表面を拡大して確認した結果、実施例で製造した保護膜の表面は概ね優れていた。特に、フィラーの含有量を異にして製造した実施例A1-1ないしA1-3の中では、実施例A1-1の場合に保護膜のコーティングが収縮したり剥がれたりする現象もなく最も優れていた。一方、比較例A1の場合、コーティング膜の収縮によりクラックが発生し、コーティングが剥がれることが確認された。
<試験例A2:単結晶インゴット表面のクラック評価>
前記実施例A2で得られたSiC単結晶インゴットについて、肉眼あるいは光学顕微鏡を用いてインゴットの表面を拡大して観察した。その結果、インゴットの表面にクラックは発見されなかった。
(実施例B:多層保護膜が備えられた種結晶の製造および利用)
以下の具体的な実施例Bにおいて使用した材料は以下の通りである。
-バインダー樹脂:フェノール樹脂、KC-5536、ガンナム化成(株)
-フィラー:鱗状黒鉛、純度80~99%、D50 2.5μm
-溶媒:エタノール、OCI社
-SiC単結晶種結晶:直径100mm~150mm、結晶構造4H-SiC、厚さ350μm~1000μm
-SiC原料粉末:純度99.99%以上、D50 100μm
<実施例B1:保護膜が備えられた種結晶の製造(多層、フィラー添加)>
工程(1):コーティング組成物の調製
まず、バインダー樹脂を溶剤と混合して、固形分濃度約10重量%の溶液を調製した後、バインダー樹脂100重量部に対して約135重量部のフィラーを添加し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を5重量部以内でさらに混合および分散して第1組成物を得た。
また、バインダー樹脂を溶剤と混合して固形分濃度約13重量%の溶液を調製した後、バインダー樹脂100重量部に対して約90重量部のフィラーを添加し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を5重量部以内でさらに混合および分散させて第2組成物を得た。
工程(2):第1炭素質層の形成
炭化ケイ素種結晶背面(成長面の反対面)に、前記第1組成物をスピンコーティングして5μm厚の第1コーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶をオーブンに入れ、1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理して、第1コーティング膜を炭化させた。その後1℃/minの速度で冷却して、第1炭素質層が背面に形成された種結晶を得た。
工程(3):第2炭素質層の形成
前記第1炭素質層の表面に前記第2組成物をスピンコーティングして20μm厚の第2コーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶をオーブンに入れ、1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理して、第2コーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却して、第1炭素質層および第2炭素質層が順次背面に形成された種結晶を得た。
工程(4):追加炭素質層の形成
工程(3)と同様の方法で、前記第2炭素質層の表面に前記第2組成物をスピンコーティングした後熱処理する手順を繰り返して、追加1層の炭素質層をさらに形成した。
<比較例B1:保護膜が備えられた種結晶製造(単層、フィラー未添加)>
液状フェノール樹脂にフィラーを混合せずに、炭化ケイ素種結晶の背面上にスピンコーティングして400μm厚さのコーティング膜を得た。前記コーティングされた種結晶を加熱器に入れて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理してコーティング膜を炭化させた。その後、1℃/minの速度で冷却し、単層の炭素質保護膜が背面に形成された種結晶を得た。
<実施例B2:炭化ケイ素単結晶のインゴットの成長>
上部内壁に据置台を備えた黒鉛るつぼを準備した。前記るつぼ内の下部に原料物質としてSiC粉末を装入した。また、前記るつぼ内の上部据置台に、前記実施例B1で製造した、保護膜が備えられた種結晶を据置した(図3A参照)。この際、種結晶は、据置台とはいずれの接着も行わず、単に据置台に載置した。また、種結晶の背面(保護膜が備えられた面)がるつぼの上部を向くようにして、種結晶の成長面(保護膜が備えられていない面)がるつぼ下部を向くようにした。
前記るつぼを蓋で覆い、断熱材で取り囲んだ後、加熱コイルが備えられた反応チャンバ内に入れた。るつぼ内を真空状態にした後、アルゴンガスを徐々に注入して大気圧に到達した後、徐々に減圧した。また、それと共に、るつぼ内の温度を2300℃まで昇温させた。その後2300℃および20torrの条件において100時間の間に、種結晶の保護膜が備えられていない面にSiC単結晶インゴットを成長させた。その結果、図13に示すように、4インチ~6インチ口径のSiC単結晶インゴットを得た。
<試験例B1:保護膜の物性評価>
前記実施例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜の物性を評価した。
前記保護膜について、熱拡散率測定器(LFA447、NETZCH社)を用いて測定した結果、143mm/sの熱拡散率を有するものと測定された。また、前記保護膜は、158.5W/mKの熱伝導度、1.3g/cmの密度、および0.85J/g・Kの比熱を有するものと測定された。
<試験例B2:保護膜の断面観察>
前記実施例B1で製造した、保護膜が備えられた種結晶の断面を電子顕微鏡で観察して、図12A~図12Cに示した。
図12A~図12Cにおいて、左側は種結晶であり、右側は保護膜の部分を示している。
また、図12A~図12Cにおいて、矢印が指す部分はそれぞれ、第1炭素質層、第2炭素質層、および第3炭素質層である。
したがって、実施例により、種結晶の背面に多層の保護膜が形成されたことが確認できた。
<試験例B3:保護膜表面評価>
前記実施例B1および比較例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜の表面を観察した。
また、前記実施例B2の単結晶インゴットの成長の後に、種結晶に備えられた保護膜の表面を観察した。併せて、前記比較例B1で製造した保護膜が備えられた種結晶を用いて、前記実施例B2の手順に従って単結晶インゴットを成長させた後、保護膜の表面を観察した。
図11A(a)は、前記実施例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜の写真であり、図11A(b)は、これを利用して単結晶インゴットを成長させた後の保護膜の表面の写真である。また、図11B(a)は、前記比較例B1で製造した種結晶に備えられた保護膜表面の写真であり、図11B(b)は、これを利用して単結晶インゴットを成長させた後の保護膜表面の写真である。
その結果、実施例B1で製造した保護膜は、図11A(a)に示すように、剥離やクラックの発生がなく表面状態が優れていた。一方、比較例B1で製造した保護膜は、図11B(a)に示すように、剥離やクラックが発生しており、表面状態が不良であった。
また、図11A(b)に示すように、単結晶インゴットの成長後にも保護膜にホールの発生や消滅などが観察されなかった。一方、図11B(b)に示すように、比較例の場合、単結晶成長の後に保護膜にホールが発生しており、消滅が観察された。
<試験例B4:単結晶インゴットの表面のクラック評価>
前記実施例B2で得られたSiC単結晶インゴットについて、肉眼あるいは光学顕微鏡を用いてインゴット表面のクラックを拡大して確認した。その結果、インゴットの表面にクラックは発見されなかった。
(実施例C:突出部を有する保護膜を備えた種結晶の製造および利用)
下記実施例Cで使用した材料は以下の通りである。
-バインダー樹脂:フェノール樹脂、KC-5536、ガンナム化成
-フィラー:鱗状黒鉛、純度80~99%、D50 2.5μm
-溶媒:エタノール、OCI社
-セルロース基材:綿織物、60~100番手、平織り、厚さ約140μm
-剥離フィルム:シリコーンコーティングされたPETフィルム、厚さ25μm~100μm
-SiC単結晶種結晶:直径100mm~150mm、結晶構造4H-SiC、厚さ350μm~1000μm
-SiC原料粉末:純度99.99%以上、D50 100μm
<実施例C1:保護膜が備えられた種結晶の製造(突出部あり)>
工程(1):コーティング組成物の調製
バインダー樹脂を溶媒と混合して固形分濃度5重量%~15重量%の溶液を調製した後、バインダー樹脂100重量部に対して約90重量部のフィラーを添加し、湿潤分散剤、消泡剤などの添加剤を5重量部以内でさらに添加および分散して組成物を得た。
工程(2):保護膜の製造
前記で調製したコーティング組成物を、厚さ約140μmのセルロース繊維基材の両面にロールコーティング装置を用いて、総2000μmの厚さでコーティングしながらシート状に成形して保護膜を製造した。また、成形の際、前記保護膜の第1面および第2面にそれぞれ第1剥離フィルムおよび第2剥離フィルムが貼り合わされるようにした。
その後、前記剥離フィルムが付着された保護膜を種結晶の寸法に合わせて裁断した。
第1次に、第1剥離フィルム/保護膜/第2剥離フィルムを、その後付着される種結晶の直径に比べて約0.8インチ大きい直径の円形状に裁断した。第2次に、第2剥離フィルムから、種結晶が付着される面の形状および直径と同じ領域を裁断し除去した(図8(b)参照)。
その結果、前記保護膜は、種結晶よりも直径が大きい円形状に裁断されており、この際、保護膜の第1面は第1剥離フィルムによって全部カバーされ、第2面は種結晶が付着する領域が外部に露出され、その他の領域が第2剥離フィルムによってカバーされた(図8(c)参照)。
工程(3):保護膜への種結晶付着
前記裁断された保護膜の第2面のうちの第2剥離フィルムが除去された領域上に種結晶の背面(成長面の反対面)が接触するように配置した。その後、前記保護膜上の種結晶を25℃の温度および0.5kgf/inchの圧力条件で加圧して、保護膜と種結晶とを貼り合わせた。
工程(4):保護膜の硬化および炭化
前記種結晶に貼り合わされた保護膜から第1剥離フィルムを除去し、オーブンにおいて約105℃で1時間熱処理して、保護膜を乾燥し硬化させた。その後、保護膜から第2剥離フィルムを除去し、オーブンにおいて1℃/minの速度で昇温して600℃に達した後、2時間熱処理して炭化させた。
その結果、炭素質保護膜が背面に備えられた種結晶を得ており、この際、前記保護膜が種結晶よりも直径が大きいので、種結晶の背面を全部カバーしながら、縁の外側に突出する部分を有するようになった。
<実施例C2:炭化ケイ素単結晶インゴットの成長>
工程(1):種結晶配置
上部内壁に据置台を備えている黒鉛るつぼを準備した。前記るつぼ内の下部に原料物質としてSiC粉末を装入した。また、前記るつぼ内の上部据置台に、前記実施例C1で製造した保護膜が備えられた種結晶を据置した。この際、保護膜の突出部のみを据置台に据置することにより、種結晶が反応容器または据置台と接触しないようにした(図5A参照)。また、前記種結晶において、保護膜が備えられた面がるつぼの上部を向くようにしており、保護膜が備えられていない面がるつぼの下部を向くようにした。
工程(2):単結晶インゴットの成長
前記るつぼを蓋でカバーして、断熱材で取り囲んだ後、加熱コイルが備えられた反応チャンバ内に入れた。るつぼ内を真空状態にした後、アルゴンガスを徐々に注入して大気圧に到達した後、徐々に減圧させた。また、これと共に、るつぼ内の温度を2300℃まで昇温させた。その後、2300℃および20torrの条件において100時間の間に、種結晶の保護膜が備えられていない面にSiC単結晶インゴットを成長させた。その結果、4インチ~6インチ口径のSiC単結晶インゴットを得た。
<試験例C1:保護膜の収縮評価>
前記実施例C1において保護膜の硬化および炭化時の収縮率を評価した。その結果、初期に対して硬化後幅方向に約2%以内の収縮率を示し、初期に対して炭化の際幅方向に約10%以内の収縮率を示すものと測定され、収縮率が非常に少ないことを確認した。
<試験例C2:保護膜の表面および断面の評価>
前記実施例C1において製造した保護膜の表面および断面を観察した。その結果、実施例C1において製造した保護膜は、図14Aに示すように、表面に剥離やクラックが発生しなく優れており、図14Bに示すように、断面において層状構造が明確に確認された。一方、図14Aにおいては、保護膜の表面から、基材層の繊維構造による屈曲形状も観察することができる。
また、前記実施例C2における単結晶インゴットの成長の後に、種結晶に備えられた保護膜の表面を観察した。その結果、単結晶インゴットの成長後も、保護膜にホールの発生や消滅などが観察されなかった。
<試験例C3:成長後の種結晶インゴットの品質変化>
前記実施例C2において成長の後、種結晶について肉眼あるいは光学顕微鏡を用いて品質を確認した結果、種結晶の表面にクラックは発見されなかった。
種結晶とSiC単結晶インゴットについて、肉眼あるいは光学顕微鏡を用いて品質を確認した。図15Aにおいて、左側は成長されたインゴットの写真であり、右側はそのUV画像であるが、このように、実施例C2において成長されたインゴットの表面には、クラックが発見されなかった。
また、比較例として、図10Aに示す従来の方式を利用(種結晶をホルダーに付着)してインゴットを成長させ、肉眼または光学顕微鏡を用いて品質を確認した。図15Bにおいて、左側は成長されたインゴットの写真であり、右側はそのUV画像であるが、このように、比較例により成長されたインゴットの表面には、内部応力によるクラック(点線部分)が発生したことが確認できた。
10、10’:保護膜が備えられた種結晶
110:種結晶
111:種結晶の前面
112:種結晶の背面
120:保護膜
120’:コーティング膜
121:第1炭素質層
121’:第1コーティング膜
122:第2炭素質層
122’:第2コーティング膜
123:保護膜用組成物
125:突出部
130:コア層
141:第1剥離フィルム
142:第2剥離フィルム
150:接着剤
190:種結晶ホルダー
200:反応容器
210:反応容器本体
220:開放型蓋
250:据置台
300:原料物質
400:SiCインゴット
c1、c2:裁断線

Claims (9)

  1. (1)炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶の背面に炭素質保護膜を形成する工程と、
    (2)反応容器の下部にSiC原料物質を装入し、反応容器の上部に前記種結晶を接着せずに配置する工程と、
    (3)前記SiC原料物質から、前記種結晶の前面にSiC単結晶インゴットを成長させる工程とを含み、
    前記工程(1)が、
    バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物をシート状に成形して保護膜を製造する工程と、
    前記保護膜を裁断した後、SiC単結晶の種結晶の背面に加圧により付着する工程と、
    前記種結晶に付着された保護膜を硬化および炭化させる工程とを含んで行われる、SiC単結晶インゴットの成長方法
  2. 前記反応容器が、種結晶ホルダーなしで上部に平らな据置台を備え、前記種結晶は、前記据置台上に接着せずに載置して配置される、請求項1に記載のSiC単結晶インゴットの成長方法。
  3. 前記反応容器が種結晶ホルダーなしで上部に、溝が設けられた据置台を備え、前記種結晶は、前記据置台の溝に接着せず嵌められ配置される、請求項1に記載のSiC単結晶インゴットの成長方法。
  4. (1)炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶の背面に炭素質保護膜を形成する工程と、
    (2)反応容器の下部にSiC原料物質を装入し、反応容器の上部に前記種結晶を接着せずに配置する工程と、
    (3)前記SiC原料物質から、前記種結晶の前面にSiC単結晶インゴットを成長させる工程とを含み、
    前記反応容器が種結晶ホルダーなしで上部に据置台を備え、
    前記保護膜は、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物より形成され、
    前記保護膜が、前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部を有し、
    前記保護膜の突出部が、前記据置台に接着せず据置され、前記種結晶が配置される、SiC単結晶インゴットの成長方法。
  5. 前記反応容器が開放型の上部構造を有し、前記反応容器の上部に配置される種結晶により前記反応容器が密閉される、請求項1又は請求項に記載のSiC単結晶インゴットの成長方法。
  6. 前記成長したSiC単結晶インゴットが4インチ以上の口径を有する、請求項1又は請求項に記載のSiC単結晶インゴットの成長方法。
  7. バインダー樹脂を含む組成物をシート状に成形して保護膜を製造する工程と、
    前記保護膜を裁断して、炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶の背面に加圧により付着する工程と、
    前記種結晶に付着された保護膜を硬化および炭化させる工程とを含み、
    前記保護膜は、前記種結晶よりも直径が大きいので、前記種結晶の背面を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部を有する、保護膜が備えられた種結晶の製造方法。
  8. 炭化ケイ素(SiC)単結晶の種結晶と、
    前記種結晶の背面に接着せずに形成された保護膜とを含み、
    前記保護膜は、バインダー樹脂およびフィラーを含む組成物より形成され、
    前記保護膜は、前記種結晶よりも直径が大きいため、前記種結晶の背面を全部カバーしながら縁の外側に突出する突出部を有する、保護膜が備えられた種結晶。
  9. 前記保護膜が50μm~2000μmの総厚さを有し、
    前記保護膜の断面から見て、前記突出部が0.3インチ~1インチの長さを有し、前記保護膜は繊維物質が炭化され形成されたコア層を含む、請求項に記載の保護膜が備えられた種結晶。
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