JP7003897B2 - ウェーハの製造方法、ワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法、及びワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法 - Google Patents

ウェーハの製造方法、ワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法、及びワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、砥粒及びクーラントを含むスラリーを供給したワイヤーソーによってインゴットをスライス加工して複数枚のウェーハを得る工程をくり返し行うウェーハの製造方法に関する。また、本発明は、ワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法及びワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法に関する。
半導体デバイスの基板となるウェーハは、シリコンや化合物半導体等からなるインゴットを切断して製造される。近年、インゴットの切断方法としては、砥粒及びクーラントを含むスラリーを供給したワイヤーソーによってインゴットをスライス加工して同時に多数枚のウェーハを得る、遊離砥粒方式が主流になっている。
ここで、スライス加工で用いた使用済みスラリーは回収され、小粒子を分離及び除去した後、新たに砥粒及びクーラントを添加混合して、再利用スラリーとされ、この再利用スラリーを、新たなインゴットのスライス加工の際にワイヤーソーに供給することが行われている。ここで、小粒子は、主にスライス加工に伴ってインゴットから発生するシリコン屑からなり、他に、ワイヤーが削れることで発生するワイヤー屑や、磨耗して小径化した砥粒も含まれる。
例えば、特許文献1には、使用済みスラリーから有効砥粒を回収し、磨滅した砥粒を除去すると共に、除去した砥粒に相当する量の新品砥粒を加えることによりスラリーを再生する方法において、新品砥粒の平均円形度を0.855~0.875の範囲とし、新品砥粒の重量比を約20%とし、再生スラリーに含まれる砥粒の平均円形度を0.870~0.915の範囲にすることが記載されている。
また、特許文献2には、追加砥粒群を用意し、切断処理に使用した砥粒群に、追加砥粒群を所定量加えて混合し、混合した砥粒群について砥粒の大きさが第1砥粒径以上かつ第2砥粒径以下となるように分級処理を行うことが記載されている。この方法によれば、廃棄する砥粒の量を低減できるとともに、新品砥粒群と同様な質の研磨処理を施すことができる。
特開2004-255534号公報 特開2011-218516号公報
スラリー中に含まれる小粒子は、インゴットの切削に寄与しないばかりか、切削に寄与する主に中径の砥粒による切削を阻害する。そのため、再利用スラリー中の小粒子の量が多い場合には、当該再利用スラリーを用いて行ったスライス加工により製造されるウェーハの平坦度が悪化する傾向にある。従来、使用済みスラリーの再生処理においては、遠心分離方式の分級処理によって使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去していた。しかしながら、本発明者らは、回収した使用済みスラリー中の小粒子の量等によっては、十分に小粒子を除去できないことがあり、その場合には、再利用スラリー中の小粒子の量も多くなり、結果として、スライス加工品質(すなわちウェーハの平坦度)を損なうこととなっていたことを認識した。そのため、本発明者らは、使用済みスラリーや再利用スラリー中の小粒子の量を適正に評価し、管理する必要があるとの認識に至った。
上記課題に鑑み、本発明は、ワイヤーソーによるスライス加工に供される再利用スラリーの品質に起因する加工品質の劣化を抑制することにより、ウェーハの平坦度を安定して向上させることが可能なウェーハの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、使用済みスラリー及び再利用スラリーの品質を適正に評価することが可能な品質評価方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意研究を進め、以下の知見を得た。すなわち、使用済みスラリー及び再利用スラリーの品質を、所定の定義に従う「小粒子体積率」というパラメータを用いて評価及び管理することが有効であった。そして、ワイヤーソーに供給される再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とすることによって、スライス加工により製造されるウェーハの平坦度を安定して向上させることができることがわかった。
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)砥粒及びクーラントを含むスラリーを供給したワイヤーソーによってインゴットをスライス加工して複数枚のウェーハを得る工程をくり返し行うウェーハの製造方法であって、
前記スライス加工で用いた使用済みスラリーを第1タンクに回収する第1工程と、
前記使用済みスラリーを前記第1タンクから再生処理ユニットに供給し、該再生処理ユニットにて前記使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去して、再生スラリーを得る第2工程と、
前記再生スラリーを前記再生処理ユニットから第2タンクに供給し、前記第2タンクにて前記再生スラリーに砥粒及びクーラントを添加及び混合して再利用スラリーを調製する第3工程と、
前記再利用スラリーを前記第2タンクから第3タンクに供給する第4工程と、
前記再利用スラリーを前記第3タンクから前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う第5工程と、
を有し、前記ワイヤーソーに供給される前記再利用スラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RAを5.0%以下とすることを特徴とするウェーハの製造方法。

小粒子体積率RA:前記再利用スラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRA1として、RA1/2である基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記再利用スラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
(2)前記スライス加工に供した使用済みスラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RBが10.0%超えの場合、前記使用済みスラリーを前記第1タンクに回収することなく廃棄する、上記(1)に記載のウェーハの製造方法。

小粒子体積率RB:前記使用済みスラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRB1として、RB1/2である基準粒径RB2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記使用済みスラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
(3)前記第3工程では、前記再利用スラリーの比重が所定の狙い値となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定する、上記(1)又は(2)に記載のウェーハの製造方法。
(4)前記第3タンクから採取した前記再利用スラリーの小粒子体積率RAを測定し、
測定したRAが5.0%以下の場合には、前記再利用スラリーを前記第3タンクからそのまま前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行い、
測定したRAが5.0%超えの場合には、再度、前記第2タンクにて前記再生スラリーに砥粒及びクーラントを添加及び混合して追加の再利用スラリーを調製し、該追加の再利用スラリーを前記第3タンクに供給することで、前記第3タンク内の前記再利用スラリーの小粒子体積率を5.0%以下にし、その後、前記再利用スラリーを前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う、上記(3)に記載のウェーハの製造方法。
(5)前記再度の調製においては、前記第2タンク内における前記追加の再利用スラリー中の、添加砥粒及び添加クーラントの質量比率がそれぞれ35%以上55%以下となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定する、上記(4)に記載のウェーハの製造方法。
(6)ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去し、その後新しい砥粒及びクーラントを添加及び混合して調製した再利用スラリーの品質評価方法であって、
下記定義に従う小粒子体積率RAに基づいて、前記再利用スラリーの品質を評価することを特徴とするワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法。

小粒子体積率RA:前記再利用スラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRA1として、RA1/2である基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記再利用スラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
(7)前記小粒子体積率RAが5.0%以下であれば、前記再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できると評価し、前記小粒子体積率RAが5.0%超えであれば、前記再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できないと評価する、上記(6)に記載のワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法。
(8)ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーの品質評価方法であって、
下記定義に従う小粒子体積率RBに基づいて、前記使用済みスラリーの品質を評価することを特徴とするワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法。

小粒子体積率RB:前記使用済みスラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRB1として、RB1/2である基準粒径RB2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記使用済みスラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
(9)前記小粒子体積率RBが10.0%以下であれば、前記使用済みスラリーを再生処理に供することができると評価し、前記小粒子体積率RBが10.0%超えであれば、前記使用済みスラリーを再生処理に供することができないと評価する、上記(8)に記載のワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法。
本発明のウェーハの製造方法によれば、ワイヤーソーによるスライス加工に供される再利用スラリーの品質に起因する加工品質の劣化を抑制することにより、ウェーハの平坦度を安定して向上させることができる。また、本発明のワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法及びワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法によれば、使用済みスラリー及び再利用スラリーの品質を適正に評価することができる。
一般的なワイヤーソー60を示す模式図である。 本発明の一実施形態において用いるワイヤーソーシステム100の構成を示す模式図である。 再利用スラリーの小粒子体積率RAの算出方法を説明するための図である。 実施例1において、再利用スラリーの小粒子体積率RAがウェーハの厚み分布に与える影響を示すグラフである。 実施例2において、再利用スラリーの小粒子体積率RAとウェーハのGBIRとの関係を示すグラフである。 実施例3において、使用済みスラリーの小粒子体積率RBと再利用スラリーの小粒子体積率RAとの関係を示すグラフである。
(ウェーハの製造方法)
以下、図1~3を参照しつつ、本発明の一実施形態によるウェーハの製造方法を説明する。本実施形態によるウェーハの製造方法は、砥粒及びクーラントを含むスラリーを供給したワイヤーソーによってインゴットをスライス加工して複数枚のウェーハを得る工程をくり返し行う、遊離砥粒方式に関する。インゴットの素材としてはシリコン単結晶を挙げることができる。シリコン単結晶のインゴットを前記スライス工程に供して得たシリコンウェーハは、その後、ラッピング、エッチング、両面研磨(粗研磨)、片面研磨(鏡面研磨)、洗浄等の工程を順次経て、製品のシリコンウェーハとなる。
まず、図1を参照して、本実施形態でも用いることができる一般的なワイヤーソー60について説明する。ワイヤーソー60は、ワイヤーを複数のローラー62A,62B,62C間に並列かつ往復走行可能に張り渡したワイヤー群64と、インゴットWを保持するインゴット保持機構66と、ワイヤー群64にスラリーを供給するノズル68と、を有する。遊離砥粒方式の場合、砥粒及びクーラントを含むスラリーをノズル68からワイヤー群64に連続供給しながらワイヤー群64をその延在方向Zに沿って高速で往復走行させる。これと同時に、インゴット保持機構66により、ワイヤー群64に対しインゴットWを押し込む方向に移動させる。このときの砥粒の切削作用により、インゴットWを多数枚のウェーハに同時に切り出すことができる。なお、図2ではワイヤー群44が図中左から右へ移動している状態を描いている。
スラリーは水溶性又は油性クーラントに砥粒を分散させたものである。砥粒の材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、及びダイアモンド等から選択される一種以上とすることができ、特に炭化ケイ素を主成分とする遊離砥粒を用いることが好ましい。クーラントはプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系有機溶媒を主成分として用いることが好ましい。典型的には、プロピレングリコールを主体とした水溶性クーラントを用いることができる。また、クーラントには5質量%前後の水が含まれる。
図2を参照して、本実施形態において用いるワイヤーソーシステム100の構成と、これを用いた本実施形態のウェーハの製造方法の各工程について説明する。ワイヤーソーシステム100は、ワイヤーソー装置10、第1タンクとしての回収タンク20、再生処理ユニット30、第2タンクとしての調合タンク40、新クーラントタンク42、新砥粒タンク44、及び第3タンクとしての供給タンク50を含む。
ワイヤーソーシステム100は、通常は10~20台程度の、複数台のワイヤーソー装置10を含む。各々のワイヤーソー装置10は、スラリータンク12と加工室14とを備える。加工室14には、図1で説明したワイヤーソー60が配置される。スラリータンク12は、スラリーを収容する。スラリータンク12と図1に示したノズル68との間には配管があり、スラリーは、スラリータンク12から当該配管を通ってノズル68に供給される。スライス加工で用いられたスラリーは、回収されてスラリータンク12に戻される。1本のインゴットのスライス加工中は、スラリータンク12と加工室14との間でスラリーが循環し、ワイヤーソー装置10のスラリータンク12に新たなスラリーが供給されることはない。
[第1工程]
各ワイヤーソー装置10において1本のインゴットのスライス加工が終了すると、当該スライス加工で用いた使用済みスラリーは、各ワイヤーソー装置10と回収タンク20とを接続する配管を介して、回収タンク20に回収される。回収タンク20は、一般的には1000~2000L程度のスラリーを収容可能である。
[第2工程]
回収タンク20内に回収された使用済みスラリーは、回収タンク20から再生処理ユニット30に供給される。再生処理ユニット30にて、使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去して、再生スラリーを得る。
再生処理ユニット30は、一次分離デカンタ32、分離タンク34、二次分離デカンタ36、及び二次軽液タンク38を少なくとも備える。まず、回収タンク20に収容された使用済みスラリーは、回収タンク20と一次分離デカンタ32とを接続する配管を介して、一次分離デカンタ32に供給され、一次分離工程に供される。一次分離工程は、主に再利用可能な砥粒を回収することを目的とする。一次分離デカンタ32は、一般的なデカンタ型遠心分離装置からなり、ここで使用済みスラリーは、所定の遠心力を付与されて一次重液と一次軽液に分離される。一次重液は、再利用可能な砥粒(再生砥粒)を主に含み、微量のクーラントを含む。一次軽液は、再利用に適さない小粒子と、大部分のクーラントを主に含む。すなわち、一次分離工程において、使用済みスラリー中の粒子に関しては、小粒子が一次軽液側に分離され、それ以外の再生砥粒が一次重液側に分離され、使用済みスラリー中のクーラントは、主に一次軽液側に分離される。なお、既述のとおり小粒子は、主にスライス加工に伴ってインゴットから発生するシリコン屑からなり、他に、ワイヤーが削れることで発生するワイヤー屑や、磨耗して小径化した砥粒も含まれる。
一次重液は、一次分離デカンタ32と分離タンク34とを接続する配管を介して、分離タンク34に供給される。分離タンク34は、500~2000L程度の一次重液を収容可能である。
一次軽液は、一次分離デカンタ32と二次分離デカンタ36とを接続する配管を介して、二次分離デカンタ36に供給され、二次分離工程に供される。二次分離工程は、主に再利用可能なクーラントを回収することを目的とする。二次分離デカンタ36は、一般的なデカンタ型遠心分離装置からなり、ここで一次軽液は、一次分離工程時よりも大きな所定の遠心力を付与されて二次重液と二次軽液に分離される。二次軽液は、再利用可能なクーラント(再生クーラント)を主に含む。二次重液は、再利用に適さない小粒子と、再利用に適さないクーラントを主に含む。すなわち、二次分離工程において、一次軽液中のクーラントに関しては、小粒子などの不純物を含み比重が増加したクーラント成分が二次重液側に分離され、それ以外の再生クーラントが二次軽液側に分離され、一次軽液中の小粒子は二次重液側に分離される。
二次軽液は、二次分離デカンタ36と二次軽液タンク38とを接続する配管を介して、二次軽液タンク38に供給され、その後、二次軽液タンク38と分離タンク34とを接続する配管を介して、分離タンク34に供給される。二次軽液タンク38は、200~800L程度の二次軽液を収容可能である。ただし、二次軽液は、二次軽液タンク38を介することなく、直接分離タンク34に供給されてもよい。
二次重液は、再利用に適さない小粒子と、再利用に適さないクーラントを主に含むものであるため、二次分離デカンタ36から延びる配管を介して廃棄される。このようにして、分離タンク34には、使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去して得た再生スラリーが収容される。
[第3工程]
その後、再生スラリーは再生処理ユニット30から調合タンク40に供給される。具体的には、再生スラリーは、分離タンク34と調合タンク40とを接続する配管を介して、調合タンク40に供給される。調合タンク40では、再生スラリーに新しい砥粒及びクーラントを添加及び混合して再利用スラリーを調製する。新しいクーラントは、新クーラントタンク42に収容されており、新クーラントタンク42と調合タンク40とを接続する配管を介して、調合タンク40に供給される。新しい砥粒は、新砥粒タンク44に収容されており、新砥粒タンク44と調合タンク40とを接続する配管を介して、調合タンク40に供給される。調合タンク40は、1000~2000L程度の再利用スラリーを収容可能である。
この第3工程では、調製する再利用スラリーの比重が所定の狙い値となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定することが好ましい。具体的には、未使用スラリーの比重と同等程度の1.500~1.600の範囲を狙い値とすることが好ましい。
この場合でも、調合タンク40内での再利用スラリー中の新砥粒及び新クーラントの質量比率は、20~50%程度の範囲内で変動する。これは、使用済みスラリー中の再生可能な砥粒とクーラントの量がばらつくことが原因である。なお、上記調合タンク40内での新砥粒及び新クーラントの質量比率は、以下のとおり定義される。
新砥粒の質量比率=新砥粒の投入量/(新砥粒の投入量+再生スラリー中の砥粒量)
新クーラントの投入比率=新クーラントの投入量/(新クーラントの投入量+再生スラリー中のクーラント量)
[第4工程]
調合タンク40で調製された再利用スラリーは、調合タンク40と供給タンク50とを接続する配管を介して、供給タンク50に供給される。供給タンク50は、2000~8000L程度の再利用スラリーを収容可能である。
[第5工程]
供給タンク50に収容された再利用スラリーは、供給タンク50と各ワイヤーソー装置10のスラリータンク12とを接続する配管を介して、各スラリータンク12に供給され、その後ワイヤーソー60に供給されて、新たなインゴットのスライス加工で使用される。
[再利用スラリーの小粒子体積率]
本実施形態では、ワイヤーソーに供給される再利用スラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RAを5.0%以下とすることが肝要である。

小粒子体積率RA:再利用スラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRA1として、RA1/2である基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、再利用スラリー中の粒子のうち小粒子の占める体積比率
再利用スラリーの「小粒子体積率RA」は、再利用スラリー中の砥粒、シリコン屑、及びワイヤー屑等の全粒子に占める小粒子の割合を示す指標であり、これまで定量的な指標として測定されていなかった。本実施形態では、この小粒子体積率RAを5.0%以下とすることで、再利用スラリーの品質に起因する加工品質の劣化を抑制することができ、その結果、ウェーハの平坦度を安定して向上させることができる。すなわち、GBIR(Global Backside Ideal Range)、Warp、ナノトポグラフィ等の平坦化指標が安定して向上する。なお、平坦度向上の観点からは、再利用スラリーの小粒子体積率RAは小さいほど好ましいが、砥粒やクーラントの使用量(すなわちコスト)を抑制する観点からは、3.0%以上とすることが好ましい。
図3は、小粒子体積率の算出方法を説明するための、再利用スラリー中の粒子の粒度分布を示す図である。まず、再利用スラリーのサンプル中の個々の粒子の粒径(面積円相当径)を測定し、図3に示すような再利用スラリー中の粒子の体積カウントでの粒度分布Dを求める。個々の粒子の粒径を測定する方法は特に限定されないが、例えば再利用スラリーを細いガラスのセルの間の流路に流しながら粒子をカメラで一粒ずつ撮影して画像処理することにより、一個一個の粒子の粒径を測定することができる。測定精度の観点から、この測定に供する再利用スラリーの量は、2mL以上とすることが好ましい。
次に、粒度分布Dの平均粒径RA1を求め、RA1/2を基準粒径RA2として設定する。小粒子は、この基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子として定義される。そして、粒度分布Dに基づいて、再利用スラリー中の粒子のうち小粒子の占める体積比率を算出する。なお、「平均粒径RA1」は、粒度分布Dの累積50%に位置する粒径と定義される。
既述のとおり、第3工程において調製する再利用スラリーの比重が所定の狙い値となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定する場合であっても、再利用スラリーの小粒子体積率RAが変動し、5.0%を超えることがある。具体的には、使用済みスラリーの再利用処理を10回以上繰り返すと、スライス加工直後の回収された使用用済みスラリー中に、継続的に小粒子が蓄積することになり、その結果、再生処理後の再生スラリーでも小粒子も多くなる。このよう場合には、再利用スラリーの小粒子体積率RAが5.0%を超えることがある。このような場合に、再利用スラリーをそのままワイヤーソー装置10に供給すると、スライス加工品質(すなわちウェーハの平坦度)を損なうことになる。そこで、ワイヤーソーに供給される再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とする方法として、以下を挙げることができる。
まず、供給タンク50から採取した再利用スラリーの小粒子体積率RAを測定する。ここで、測定したRAが5.0%以下の場合には、再利用スラリーを供給タンク50からそのままワイヤーソー装置10に供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う。
他方で、測定したRAが5.0%超えの場合には、再度、調合タンク40にて再生スラリーに新しい砥粒及びクーラントを添加及び混合して、追加の再利用スラリーを調製する。この追加の再利用スラリーを供給タンク50に供給することで、供給タンク50内の再利用スラリーの小粒子体積率を5.0%以下にし、その後、再利用スラリーをワイヤーソー装置10に供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う。なお、追加の再利用スラリーを供給タンク50に供給した後は、小粒子体積率RAを再度測定して、5.0%以下であることを確認するものとする。この方法によれば、ワイヤーソーに供給される再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とすることができる。
その際、再度の調製においては、調合タンク40内における追加の再利用スラリー中の、新砥粒及び新クーラントの質量比率がそれぞれ35%以上55%以下となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定することが好ましい。これにより、砥粒やクーラントの使用量を過度にすることなく、かつ、再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とすることができる。
上記実施形態ではシリコン単結晶インゴットをスライス加工する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の材質のインゴットを加工対象とすることができる。
[使用済みスラリーの小粒子体積率]
図2を参照して、本実施形態では、スライス加工に供した使用済みスラリーについても、小粒子体積率を考慮することが好ましい。すなわち、スライス加工に供した使用済みスラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RBが10.0%超えの場合、使用済みスラリーを回収タンク20に回収することなく廃棄することが好ましい。

小粒子体積率RB:使用済みスラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRB1として、RB1/2である基準粒径RB2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、使用済みスラリー中の粒子のうち小粒子の占める体積比率
使用済みスラリーの「小粒子体積率RB」は、使用済みスラリー中の砥粒、シリコン屑、及びワイヤー屑等の全粒子に占める小粒子の割合を示す指標であり、これも定量的な指標として測定されていなかった。この小粒子体積率RBが10.0%超えの場合、その後再生処理を行う際に、再利用スラリーの小粒子体積率RAを確実に5.0%以下することが困難となったり、あるいは砥粒やクーラントの使用量を過度にする必要があったりする。そこで、小粒子体積率RBが10.0%超えの場合、使用済みスラリーを回収タンク20に回収することなく廃棄する。小粒子体積率RBが10.0%以下の場合、回収タンク20に回収する。これにより、砥粒やクーラントの使用量を過度にすることなく、かつ、再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とすることができる。なお、「小粒子体積率RB」の算出方法は、再利用スラリーの小粒子体積率RAと同様である。
この方法の実施態様としては、以下が挙げられる。第一に、各ワイヤーソー装置10において1本のインゴットのスライス加工が終了したら、スラリータンク12から採取した使用済みスラリーの小粒子体積率RBを測定し、測定値に基づいて廃棄か回収かを判定することができる。
また、第二の態様として、必ずしも小粒子体積率を測定しなくてもよい。既述のとおり、1本のインゴットのスライス加工中は、スラリータンク12と加工室14との間でスラリーが循環する。そのため、使用済みスラリーの小粒子体積率は、スライス加工に供したインゴットの寸法(長さ及び径)と概ね正の相関がある。そのため、小粒子体積率が5.0%以下のスラリーを用いてスライス加工を行った際の、インゴットの寸法と、使用済みスラリーの小粒子体積率との相関を予め取っておけば、スライス加工に供したインゴットの寸法に基づいて、廃棄か回収かを判定することができる。
(ワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法)
本発明の一実施形態によるワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法を説明する。本実施形態は、ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去し、その後新しい砥粒及びクーラントを添加及び混合して調製した再利用スラリーの品質評価方法である。
そして、既述の定義に従う小粒子体積率RAに基づいて、再利用スラリーの品質を評価することを特徴とする。これにより、再利用スラリーの品質を適正に評価することができる。
例えば、小粒子体積率RAが5.0%以下であれば、再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できると評価し、小粒子体積率RAが5.0%超えであれば、再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できないと評価することができる。
(ワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法)
本発明の一実施形態によるワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法を説明する。本実施形態は、ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーの品質評価方法である。
そして、既述の定義に従う小粒子体積率RBに基づいて、使用済みスラリーの品質を評価することを特徴とする。これにより、使用済みスラリーの品質を適正に評価することができる。
例えば、小粒子体積率RBが10.0%以下であれば、使用済みスラリーを再生処理に供することができると評価し、小粒子体積率RBが10.0%超えであれば、使用済みスラリーを再生処理に供することができないと評価することができる。
図1に示すワイヤーソーを含む、図2に示すワイヤーソーシステムを用いて、シリコンインゴットをスライス加工する工程をくり返し行った。砥粒としては、#2000の番手の炭化ケイ素を主成分とする遊離砥粒を用いた。クーラントとしては、水溶性のグリコール系クーラントを用いた。水溶性クーラントに上記砥粒を添加して、比重1.570のスラリーを作製し、これを未使用のスラリーとして操業を始めた。スライス加工で用いた使用済みスラリーは、既述の方法で回収、再生処理を施し、再利用スラリーとして新たなインゴットのスライス加工で使用した。調製する再利用スラリーの比重が1.570となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定した。
使用済みスラリーの小粒子体積率RBと再利用スラリーの小粒子体積率RAは、既述の方法に従い、シスメックス社製の粒子径・形状分析装置FPIA-3000を用いて測定した。
(実施例1)
スライス加工に用いた再利用スラリーの小粒子体積率RAが5.23%の場合と3.73%の場合とで、スライス加工直後の(As-sliced)ウェーハの平坦度を比較した。図4には、各水準において、インゴットの中央部分から切り出した1枚のウェーハの厚みを静電容量法によって求めた結果を示す。
図4から明らかなように、小粒子体積率RAが5.23%の再利用スラリーで加工したウェーハの厚みは中心部において局所的に変動し、平坦度が悪化していた。これに対し、小粒子体積率RAが3.73%の再利用スラリーで加工したウェーハの厚みは局所的な変動が少なく、平坦度が良好であった。
(実施例2)
種々の小粒子体積率RAの再利用スラリーを用いてくり返しスライス加工を行い、得られたウェーハの平坦度指標であるGBIRを測定した。GBIRは裏面基準のグローバルフラットネス指標であり、ウェーハの裏面を基準面としたときの当該基準面に対するウェーハの表面の最大の厚さと最小の厚さとの偏差と定義される。図5に、小粒子体積率RAとウェーハのGBIRとの関係を示す。なお、図5の各プロットは、あるRAの再利用スラリーを用いて行った1本のインゴットから得られる全ウェーハのGBIRの平均値を示すものである。
図5から明らかなように、小粒子体積率RAが5.0%以下の再利用スラリーを用いることにより、GBIRを確実に10.0μm以下に制御することができた。
(実施例3)
スライス加工後の使用済みスラリーの小粒子体積率RBが種々の値の場合に、調製した再利用スラリーの小粒子体積率RAを測定した。なお、既述のとおり、再利用スラリーの調製に際しては、再利用スラリーの比重が1.570となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定した。図6に結果を示す。
図6から明らかなように、使用済みスラリーの小粒子体積率RBが10.0%以下の場合に、再利用スラリーの小粒子体積率を確実に5.0%以下とすることができた。
本発明のウェーハの製造方法によれば、ワイヤーソーによるスライス加工に供される再利用スラリーの品質に起因する加工品質の劣化を抑制することにより、ウェーハの平坦度を安定して向上させることができる。
100 ワイヤーソーシステム
10 ワイヤーソー装置
12 スラリータンク
14 加工室
20 回収タンク(第1タンク)
30 再生処理ユニット
32 一次分離デカンタ
34 分離タンク
36 二次分離デカンタ
38 二次軽液タンク
40 調合タンク(第2タンク)
42 新クーラントタンク
44 新砥粒タンク
50 供給タンク(第3タンク)
60 ワイヤーソー
62A,62B,62C ローラー
64 ワイヤー群
66 インゴット保持機構
68 ノズル
W インゴット

Claims (9)

  1. 砥粒及びクーラントを含むスラリーを供給したワイヤーソーによってインゴットをスライス加工して複数枚のウェーハを得る工程をくり返し行うウェーハの製造方法であって、
    前記スライス加工で用いた使用済みスラリーを第1タンクに回収する第1工程と、
    前記使用済みスラリーを前記第1タンクから再生処理ユニットに供給し、該再生処理ユニットにて前記使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去して、再生スラリーを得る第2工程と、
    前記再生スラリーを前記再生処理ユニットから第2タンクに供給し、前記第2タンクにて前記再生スラリーに砥粒及びクーラントを添加及び混合して再利用スラリーを調製する第3工程と、
    前記再利用スラリーを前記第2タンクから第3タンクに供給する第4工程と、
    前記再利用スラリーを前記第3タンクから前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う第5工程と、
    を有し、前記ワイヤーソーに供給される前記再利用スラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RAを5.0%以下とすることを特徴とするウェーハの製造方法。

    小粒子体積率RA:前記再利用スラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRA1として、RA1/2である基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記再利用スラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
  2. 前記スライス加工に供した使用済みスラリーの、下記定義に従う小粒子体積率RBが10.0%超えの場合、前記使用済みスラリーを前記第1タンクに回収することなく廃棄する、請求項1に記載のウェーハの製造方法。

    小粒子体積率RB:前記使用済みスラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRB1として、RB1/2である基準粒径RB2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記使用済みスラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
  3. 前記第3工程では、前記再利用スラリーの比重が所定の狙い値となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定する、請求項1又は2に記載のウェーハの製造方法。
  4. 前記第3タンクから採取した前記再利用スラリーの小粒子体積率RAを測定し、
    測定したRAが5.0%以下の場合には、前記再利用スラリーを前記第3タンクからそのまま前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行い、
    測定したRAが5.0%超えの場合には、再度、前記第2タンクにて前記再生スラリーに砥粒及びクーラントを添加及び混合して追加の再利用スラリーを調製し、該追加の再利用スラリーを前記第3タンクに供給することで、前記第3タンク内の前記再利用スラリーの小粒子体積率を5.0%以下にし、その後、前記再利用スラリーを前記ワイヤーソーに供給して、新たなインゴットのスライス加工を行う、請求項3に記載のウェーハの製造方法。
  5. 前記再度の調製においては、前記第2タンク内における前記追加の再利用スラリー中の、添加砥粒及び添加クーラントの質量比率がそれぞれ35%以上55%以下となるように、添加する砥粒及びクーラントの量を設定する、請求項4に記載のウェーハの製造方法。
  6. ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーから小粒子を分離及び除去し、その後新しい砥粒及びクーラントを添加及び混合して調製した再利用スラリーの品質評価方法であって、
    下記定義に従う小粒子体積率RAに基づいて、前記再利用スラリーの品質を評価することを特徴とするワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法。

    小粒子体積率RA:前記再利用スラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRA1として、RA1/2である基準粒径RA2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記再利用スラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
  7. 前記小粒子体積率RAが5.0%以下であれば、前記再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できると評価し、前記小粒子体積率RAが5.0%超えであれば、前記再利用スラリーを新たなインゴットのスライス加工に再利用できないと評価する、請求項6に記載のワイヤーソー用再利用スラリーの品質評価方法。
  8. ワイヤーソーによるインゴットのスライス加工で用いた、砥粒及びクーラントを含む使用済みスラリーの品質評価方法であって、
    下記定義に従う小粒子体積率RBに基づいて、前記使用済みスラリーの品質を評価することを特徴とするワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法。

    小粒子体積率RB:前記使用済みスラリー中の粒子の体積粒度分布での平均粒径をRB1として、RB1/2である基準粒径RB2以下の粒径を有する粒子を小粒子と定義し、前記使用済みスラリー中の粒子のうち前記小粒子の占める体積比率
  9. 前記小粒子体積率RBが10.0%以下であれば、前記使用済みスラリーを再生処理に供することができると評価し、前記小粒子体積率RBが10.0%超えであれば、前記使用済みスラリーを再生処理に供することができないと評価する、請求項8に記載のワイヤーソー用使用済みスラリーの品質評価方法。
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