JP7001507B2 - 透過型堰堤及びその施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、土石流、流木等を捕捉する透過型堰堤に関するものである。
従来、土石流、流木等を捕捉する堰堤として、鋼管柱材と鋼管梁材とを縦横に接合して成る捕捉部材を、基礎コンクリート上に設け、鋼管柱材及び鋼管梁材は、それぞれフランジ継手部を介して接続する鋼管骨組構造とした構成が知られている(特許文献1参照)。そして、そのような鋼管骨組構造の堰堤を構成するフランジ付き鋼管を接合する、鋼管継手構造が知られている(特許文献2参照)。
また、上流側の鋼管材と下流側の鋼管材を渓流水の流れ方向に傾斜させて山形状に組み、コンクリート基礎に設置してなる自立式山形鋼管材を、渓流水の流れ方向とは直行する方向に間隔をあけて複数設置してなる鋼製透過ダムが知られている(特許文献3参照)。
地盤に鉛直に埋め込まれた基礎鞘管材と、基礎鞘管材内に挿入して直立する丸形の鋼管柱と、を備える自立式鋼管材を複数設置して構成される鋼製透過ダムにおいて、基礎鞘管材は、上端部が地盤の上面とほぼ面一に埋め込まれ、その内側壁面に、鋼管柱の直立姿勢を保持する水平部材が突設され、鋼管柱には、その外周面に、水平部材の下方に位置決めされる鉛直部材が突設され、基礎鞘管材の内側壁面と鋼管柱の外周面とが形成する隙間に、充填材が充填されている構成が知られている(特許文献4参照)。
また、流木防止柵基礎における渓流の幅方向に間隔をあけて設けた複数の筒状穴のそれぞれに、杭体の下部を着脱可能に挿入してなる流木防止柵が知られている(特許文献5参照)。
さらに、少なくとも流下土砂礫が衝突したり水に浸る個所付近までを、外周面を弾性体製の被覆材で覆った保護材で囲んだ鋼材を、千鳥状に配置して成る鋼製透過型砂防ダムが知られている(特許文献6参照)。
特開2017-101507号公報 特開2017-040073号公報 特開2012-207372号公報 特許第5956450号公報 特開平11-029920号公報 実開平5-096123号公報
特許文献1に記載の従来の鋼管骨組構造の堰堤では、例えば、特許文献2に示すようなフランジ継手部によって、鋼管を結合して組み立てるので、剛い構造となり、土石流、流木等が衝突することにより、フランジ継手部への負荷が繰り返されると、フランジ継手部のボルトが破断する等、フランジ継手部の破損が生じやすいものと考えられる。
また、特許文献3に記載の従来技術では、上流側の鋼管材と下流側の鋼管材とを山形状に組み、上端部を溶接で接合しているが、土石流、流木等が衝突することにより、溶接部への負荷が繰り返される、捕捉部材の破損が生じやすいものと考えられる。
さらに、特許文献4~6に記載されたダムは、いずれも中空の鋼管を片持ちで直立した構造であり、水平部材がないのですっきりした構成となり、鋼管は曲げ変形特性を生かせる柔構造となるが、鋼管に巨礫等が繰り返し衝突すると、局部座屈(へこみ変形)が生じ、たわみ変形の進行にともない抵抗曲げモーメントが減少するひずみ軟化現象が生じるものと考えられる。
そして、特許文献4~6に記載されたダムでは、複数の片持ちで直立した鋼管は、それぞれ1本の鋼管を直立に起立して設けた構成であるので、深い渓流に構築される堰堤の開口部高が高い場合は、1本の鋼管では十分な高さがとれず、高さにおいて限界がある。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とするものであり、片持梁形式でシンプルであって、鋼管の曲げ変形特性を生かせる柔な構造であり、しかも巨礫の衝突に対しても粘り強い変形特性ないし耐力を有し、渓流の深さが深く、大きな開口部高の透過型堰堤にも対応可能であり、メインテナンスのし易い構造の透過型堰堤を実現することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するために、底版コンクリート上に起立した複数の片持ち梁構造の直立鋼管柱を備えた透過型堰堤の施工方法であって、底版コンクリートの構築において、複数の基礎さや鋼管をその上端開口が底版コンクリートの上面と同じ高さとなるように配設するとともに、底版コンクリートの上面より下方の位置であって、複数の基礎さや鋼管のそれぞれの左右両側には、渓流の流れ方向に沿ったアンカー鉄筋を水平に配設し、複数の基礎さや鋼管の下流側に当接して、渓流の横断方向に沿った支持材を水平に配設し、底版コンクリートに設置した複数の基礎さや鋼管に、複数の直立鋼管柱を挿入して片持ち梁構造で起立させ、起立させた複数の直立鋼管柱内に、それぞれ砂を充填することを特徴とする透過型堰堤の施工方法を提供する。
基礎さや鋼管は、その内面に、基礎さや鋼管の長手方向に延びる間隔調整部材が周方向に間隔をおいて複数有するものを使用し、直立鋼管柱を基礎さや鋼管に挿入する際に、直立鋼管柱のガタつきを防ぎ鉛直度を保つとともに、直立鋼管柱を間隔調整部材によって案内して挿入することが好ましい。
直立鋼管柱は、同径の上部鋼管と下部鋼管を、外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有する内部連結鋼管によって繋ぎ合わせて成るものを使用し、前記直立鋼管柱の基礎さや鋼管への挿入は、該直立鋼管柱を構成する下部鋼管を挿入して行い、該挿入後、下部鋼管に取り付けたストッパー部材まで、下部鋼管内に砂を充填し、その後、内部連結鋼管を下部鋼管内に挿入し、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と下部鋼管の間隙内に砂又はセメントペーストを充填したうえ、内部連結鋼管内に砂を充填し、さらに、上部鋼管を内部連結鋼管の外側から被せるように挿入することによって、上部鋼管と下部鋼管を結合して繋ぎ合わせ、その後、上部鋼管内に砂を充填することが好ましい。
直立鋼管柱は、上部鋼管と、内面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材及びストッパー部材を有する下部鋼管と、を繋ぎ合わせて成るものを使用し、前記直立鋼管柱を基礎さや鋼管への挿入は、該直立鋼管柱を構成する下部鋼管を挿入して行い、該挿入後、下部鋼管内にストッパー部材まで砂を充填し、その後、上部鋼管を下部鋼管内に挿入し、下部鋼管の間隔調整部材を介して形成された下部鋼管と上部鋼管の間隙内に砂又はセメントペーストを充填して、上部鋼管と下部鋼管を結合して繋ぎ合わせ、さらに、上部鋼管に砂を充填することが好ましい。
本発明は上記課題を解決するために、底版コンクリート上に起立した複数の片持ち梁構造の直立鋼管柱を備えた透過型堰堤であって、底版コンクリートには、上端開口が底版コンクリートの上面と同じ高さの複数の基礎さや鋼管が配設されているとともに、底版コンクリートの上面より下方には、複数の基礎さや鋼管のそれぞれの左右両側の位置に、渓流の流れ方向に沿ったアンカー鉄筋が水平に配設されており、複数の基礎さや鋼管の下流側に当接して、渓流の横断方向に沿った支持材が水平に配設されており、複数の直立鋼管柱は、複数の基礎さや鋼管に挿入して片持ち梁構造で起立されて設けられており、複数の直立鋼管柱内には、それぞれ砂が充填されていることを特徴とする透過型堰堤を提供する。
基礎さや鋼管は、その内面に、長手方向に延びる間隔調整部材が周方向に間隔をおいて複数設けられており、直立鋼管柱は、基礎さや鋼管の間隔調整部材を介して基礎さや鋼管内に同心で挿入されて片持ち梁構造で起立されている構成であることが好ましい。
直立鋼管柱は、同径の上部鋼管と下部鋼管を、外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有する内部連結鋼管によって繋ぎ合わせて成り、下部鋼管は、ストッパー部材を有し、基礎さや鋼管内に挿入され、ストッパー部材の高さまで砂が充填されており、内部連結鋼管は、その外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有し、下部鋼管内に挿入されており、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と下部鋼管の間隙には、砂又はセメントペーストが充填されており、上部鋼管は、内部連結鋼管の外側から被せるように挿入されて下部鋼管の上端面に載置されており、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と上部鋼管の間隙には、砂又はセメントペーストが充填されている構成であることが好ましい。
直立鋼管柱は、上部鋼管と下部鋼管が繋ぎ合わせて成り、下部鋼管は、その内面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材と、ストッパー部材と、を有し、砂がストッパー部材の高さまで充填されており、上部鋼管は、下部鋼管内に挿入されてストッパー部材上に載置されており、上部鋼管と下部鋼管は、下部鋼管の間隔調整部材を介して形成された上部鋼管と下部鋼管の間隙内に、砂又はセメントペーストが充填されて繋ぎ合わされているとともに、砂が上部鋼管内に充填されていることが好ましい。
複数の直立鋼管柱は、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグとなるように、渓流方向で2列で配置されており、しかも互いに隣接する直立鋼管柱の中心で正三角形を形成するように配置されていることが好ましい。
本発明によれば、次のような効果が生じる。
(1)従来のフランジ継手で結合されて組み立てられる剛な鋼管骨組構造と比べ、片持ち梁構造の直立鋼管柱を採用したので、片持ち梁構造で支持された鋼管の曲げ変形特性を生かせるフレキシブルで柔な構造となり、しかも直立鋼管柱内に砂を充填したので、巨礫の衝突に対しても粘り強い変形特性ないし耐力を有する。
(2)底版コンクリート内に、基礎さや鋼管の左右側及び下流側に、アンカー鉄筋及びアンカー鉄筋のアンカーとして機能する支持材を配置したので、基礎さや鋼管の周囲のコンクリート部を強化し、基礎さや鋼管自体も支持、補強されて設置強度が高まるとともに、基礎さや鋼管を設計上の適正な位置に位置決めし保持する。特に土石、流木等によって渓流の下流側に向けてかかる外力に対しても、位置ズレや変形を抑制することができる。
(3)基礎さや鋼管の内面に、周方向に間隔をおいて複数の長手方向に間隔調整部材を形成したので、鋼管間の隙間をごく狭くすることができることによって、直立鋼管柱の鉛直度合を良くしてガタつきを防ぐとともに、直立鋼管柱は、間隔調整部材がガイド(案内レール)となって、その挿脱がスムースに行うことが可能となり、捕捉し蓄積された土石、流木等の除去作業、或いはメインテナンスにおける直立鋼管柱の取り換え等の作業の際に、直立鋼管柱の抜き取りおよび挿入等の作業がし易くなる。
(4)片持ち梁構造の直立鋼管柱は単純な構造であるので、設計施工の合理化はいうまでもなく、その結果として工期短縮やコスト縮減も図ることができる。
(5)直立鋼管柱は、長尺になると、上部鋼管と下部鋼管を、さや管継手構造で繋ぐ構成を採用することにより、透過型堰堤の開口部高が高くなっても、略10m以下であれば適用可能となり、しかも鋼管自体の有する柔でかつ粘り強い特性を阻害せず、維持することができる。
本発明に係る透過型堰堤の実施例1を説明する図であり、(a)は透過型堰堤を下流側から見た図であり、(b)は底版コンクリート上に起立した複数の直立鋼管柱から成る透過部の構成を示す斜視図である。 上記実施例1を説明する図であり、(a)は複数の直立鋼管柱の配置を示す平面図であり、(b)は底版コンクリート上に起立した直立鋼管柱の側面図であり、(c)は底版コンクリートに設けられたさや管基礎構造を示す断面図である。 上記実施例1において基礎さや鋼管の構成を説明する図であり、(a)は内面に形成された間隔調整部材を透視状態で示す基礎さや鋼管の斜視図であり、(b)は基礎さや鋼管内に直立鋼管柱を挿入した状態の水平断面図であり、(c)は(b)の要部拡大図である。 上記実施例1においてさや管基礎構造を説明する図であり、(a)は透過部の要部の垂直断面図であり、(b)は(a)のB-B断面図である。 上記実施例1において、内部連結鋼管を介して繋がれる上部鋼管と下部鋼管から成る直立鋼管柱を説明する図であり、(a)は一部を破断して示す直立鋼管柱の斜視図であり、(b)は上部鋼管と下部鋼管の繋ぐさや管継手構造の断面図であり、(c)は(b)のC-C水平断面図である。 (a)~(e)は、上記実施例1において、さや管継手構造の施工方法を説明する図である。 本発明の効果を説明する実験結果を示すグラフである。 上記実施例1において、底版コンクリートから直立鋼管柱を取り外す作業を示す図であり、(a)は下流側から見た図であり、(b)は平面図である。 上記実施例1において、底版コンクリート上に捕捉した土石、流木等を搬出するトラックが乗り入れた状態を示す図であり、(a)は下流側から見た図であり、(b)は平面図である。 本発明に係る透過型堰堤の実施例2を説明する図であり、上部鋼管と下部鋼管から成る直立鋼管柱を説明する図であり、(a)は下部鋼管の一部を破断して示す直立鋼管柱の斜視図であり、(b)は上部鋼管と下部鋼管(充填した砂は省略)のさや管継手構造の断面図である。 上記実施例2において、(a)は下部鋼管と下部鋼管に設けられたストッパーを示す水平断面図であり、(b)はストッパーの下部鋼管への取付部の要部拡大図であり、(c)は下部鋼管の間隔調整部材を説明する要部水平断面図である。 (a)~(e)は、上記実施例2において、さや管継手構造の施工方法を説明する図である。
本発明に係る透過型堰堤を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
(実施例1)
本発明に係る透過型堰堤の実施例1を、図1~図9を参照して説明する。
実施例1の透過型堰堤1は、図1(a)、(b)に示すように、渓流の流れ方向に対して左右に設けられたコンクリート非越流部2と、左右のコンクリート非越流部2の間に設けられた底版コンクリート6及び透過部3と、を備えている。なお、本明細書及び発明では、渓流の流れ方向に対して左右を左右とし、渓流を横切る方向を渓流横断方向という。
透過部3は、底版コンクリート6上に片持ち梁構造で起立して設けられた複数の直立鋼管柱7を備えている。透過部3における複数の直立鋼管柱7は、図1(b)に示すように、渓流横断方向に向けて上流側と下流側に交互に位置するように、換言すると、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグ(千鳥状)となるように、渓流方向で2列に配置されている。
しかも、複数の直立鋼管柱7は、その一部を図2(a)に平面視で示すが、互いに隣接する直立鋼管柱7の3本の組み合わせで、それらの直立鋼管柱7の中心(軸心)が正三角形を形成するように配置されている。そして、互いに隣接する直立鋼管柱7は、所定の間隔Wで配置されている。
本実施例1では、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグとなるように、渓流方向で2列に配置されているが、渓流の上流等、流れがより激しく、土石流、流木等の衝突による外力がより大きい設置環境では、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグとなるように、渓流方向で3列以上に配置してもよい。また、本発明に係る透過型堰堤を流木捕捉工として適用する場合は、渓流方向で単列(1列)の配置でもよい。
なお、本実施例1における互いに隣接する直立鋼管柱7の間隔Wは、互いに隣接する直立鋼管柱7の純間隔(隣接する直立鋼管柱7間の表面間の距離)であり、直立鋼管柱7の軸心間の間隔ではない。このような隣接する直立鋼管柱7の互いの間隔Wは、構築する渓流の土石流の状況に応じて決める。
例えば、隣接する直立鋼管柱7の間隔Wは、構築する渓流状況から予測して、流れてくる土石のうち比較的大きい巨礫について、最大礫径D(当該巨礫の最も大きい部分の寸法)と同じ寸法に決める。
仮に、間隔W<最大礫径Dであると、平時の土砂まで捕捉して計画捕捉量を低減してしまうおそれがある。間隔W>最大礫径Dであると、最大礫径D程度の巨礫が、下流側へ簡単にすり抜けてしまい(パチンコ玉が盤上のピンをする抜けるイメージ参照)、土石流の捕捉効果が減少するという問題が生じる。
そして、互いに所定間隔Wで隣接する直立鋼管柱7の3本の組み合わせで、直立鋼管柱7の中心が正三角形を形成するように配置されているために、流れてくる巨礫が、透過部3においてその進行方向が変化しても、所定間隔Wで隣接する直立鋼管柱7で適宜捕捉される。
直立鋼管柱7を底版コンクリート6に垂直に起立するために、本発明では、さや管基礎構造10を設ける。さや管基礎構造10は、図2(b)、(c)に示すように、基礎さや鋼管11を底版コンクリート6に埋設し、この基礎さや鋼管11内に直立鋼管柱7(後記する上部鋼管20と下部鋼管21から成る直立鋼管柱7の場合は下部鋼管21)の下部を挿入することで、直立鋼管柱7を底版コンクリート6に垂直に起立する片持ち梁構造である。
基礎さや鋼管11は、直立鋼管柱7の直径の2倍程度の長さとし、図3(a)~(c)に示すように、その内面に、周方向に例えば90°間隔で、上端から下端にわたって上下方向に延びる間隔調整部材12が溶着されている。この間隔調整部材12を設けることにより、直立鋼管柱7を基礎さや鋼管11内に同心的に挿入でき、直立鋼管柱7の起立した状態における鉛直度を保つとともにガタつきを防止することができる。
しかも、間隔調整部材12は、基礎さや鋼管11の上端から下端にわたって上下方向に延びるように設けられているので、直立鋼管柱7と基礎さや鋼管11の接触面積が少なくなって、直立鋼管柱7の上下方向の移動に対してガイド(レール)として機能する。そのために、直立鋼管柱7を挿入する際、及び捕捉した土石32、流木等を除去したりメインテナンス等で直立鋼管柱7を引く抜く際等において、挿入及び引き抜きがスムースでし易くなる。
基礎さや鋼管11は、図2(c)に示すように、その上端が底版コンクリート6の上面と略同一の高さになるように、埋設する。底版コンクリート6の施工において、基礎さや鋼管11を埋設する際に、図2(c)に示すように、基礎さや鋼管11の上端側の近く(例えば、底版コンクリート6の上面より15cm程度下方)に、基礎さや鋼管11の設置部分を避けて、補強鉄筋15を格子状で水平に配置する。さらに、補強鉄筋15の10cm程度下方に、図2(c)、図4(a)、(b)に示すように、アンカー鉄筋16と支持材17を水平に配置する。
具体的には、アンカー鉄筋16は、底版コンクリート6の上面より略25cm下方において、複数の基礎さや鋼管11をそれぞれ当接して挟むように2本ずつ渓流の上下流方向沿って配置する。支持材17は、山形鋼を使用し、上流側の基礎さや鋼管11及び下流側の基礎さや鋼管11に、それぞれ下流側から当接する位置で、渓流横断方向沿って配置する。
図4(a)、(b)に示すように、上流側の基礎さや鋼管11及び下流側の基礎さや鋼管11に対応して設けられた上流側のアンカー鉄筋16及び下流側のアンカー鉄筋16は、それぞれその下流端で、上流側の支持材17及び下流側の支持材17に結合(結合構造は図2(c)参照)されている。
下流側のアンカー鉄筋16は、その上流端でも上流側の支持材17にも結合されている。このようにして設けた支持材17は、アンカー鉄筋16のアンカーとしての役割、機能を有する。ただし、アンカー鉄筋と支持材の配置と接合方法については、基礎さや鋼管11の配置によって変える場合もある。
このように、アンカー鉄筋16と支持材17を配置する構成を採用することにより、基礎さや鋼管11を周囲から支持し補強するとともに、基礎さや鋼管11を位置決めする間隔保持材として併用する。
ところで、ジグザグ状に配置される複数の直立鋼管柱7は、それぞれ1本の鋼管で形成しても良いが、渓流の底が深く透過型堰堤1の開口部高が大きくなる透過型堰堤の場合は、図5(a)、(b)に示すように、直立鋼管柱7は、上部鋼管20と下部鋼管21を、後で詳記するさや管継手構造22によって上下方向に直線的に繋いで成る構成とする。
なお、鋼管を3本以上繋いでも良いが、繋ぎ部分を多くすると、工程が増え、強度的にも必ずしも好ましくないこと、また、通常は構築する透過型堰堤1の開口部高が10m以下であること等を考慮すると、鋼管を3本以上繋いだ構成より、上下2本の鋼管を2本繋いで設ける構成の方が良い。
本実施例1の直立鋼管柱7については、上部鋼管20と下部鋼管21の2本の鋼管を直線的に繋いで成る構成で説明する。本発明における上部鋼管20と下部鋼管21を直線的に繋ぐ構造を、さや管継手構造22と言い、本発明の特徴の一つであり従来技術にはない構成である。本発明におけるさや管継手構造22を次に説明する。
さや管継手構造22は、図5(a)、(b)に示すが、さや管継手構造22で繋ぎ合わす上部鋼管20と下部鋼管21は、外径及び内径について、同じ直径の鋼管が使用され、上部鋼管20の下端面と下部鋼管21の上端面は互いに当接されて、全体として上下方向に延びるように配置されている。
下部鋼管21において、その上端から後記する内部連結鋼管27の挿入量に相当する深さの位置に、装着孔24が形成されており、この装着孔24に、図5(b)、(c)に示すように、ストッパー部材25が装着されて取り付けられている。ストッパー部材25は、例えば、細長板から成り、下部鋼管21の中心位置を通るように水平に取り付けられる。
図5(a)、(b)に示すように、上部鋼管20及び下部鋼管21より一回り直径が小さな寸法の内部連結鋼管27が、その長手方向の略中心が、上部鋼管20及び下部鋼管21の当接箇所に対応する位置となるように、上部鋼管20の下部と下部鋼管21の上部内に挿入され、図5(b)に示すように、下部鋼管21のストッパー部材25に載置されている。
内部連結鋼管27の外面には、図5(a)、(c)に示すように、周方向に一定の間隔(本実施例1では90°間隔)で4箇所に、長手方向全長にわたって延びるように、間隔調整部材28が溶接されて設けられている。間隔調整部材28は、例えば、丸鋼(横断面が円形の棒鋼)が使用される。
内部連結鋼管27の間隔調整部材28によって、内部連結鋼管27と上部鋼管20の間には間隙35が形成されており、内部連結鋼管27と下部鋼管21の間には間隙36が形成されており、これらの間隙35、36には、図5(a)、(b)に示すように、砂29が充填されている。
間隙35、36に砂29を充填することで、上部鋼管20及び下部鋼管21は、それぞれの内面が、ストッパー部材25上に載置された間隔調整部材28及び間隙35、36に充填された砂29によって支持され、上部鋼管20及び下部鋼管21が互いに繋がれる。
内部連結鋼管27と上部鋼管20及び下部鋼管21の間の間隙35、36には、砂29に替えてセメントペーストを充填して、上部鋼管20及び下部鋼管21を、それぞれ内部連結鋼管27と、より積極的に接着状態として強固に繋ぐ構造としてもよい。
(透過型堰堤の施工方法)
実施例1における透過型堰堤1の施工方法について、以下説明する。まず、底版コンクリート6の下部を打設する。その後、複数の基礎さや鋼管11を、図2(a)に示す複数の直立鋼管柱7の設置位置を考慮して、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグ状に仮設置する。
さらに、支持材17及びアンカー鉄筋16を図4(b)に示すように、配置してから、仮設置した基礎さや鋼管11の位置を調整し、補強鉄筋15を配置する。そして、底版コンクリート6の上部を打設し、基礎さや鋼管11、アンカー鉄筋16、支持材17及び補強鉄筋15を底版コンクリート6中に、図2(c)に示すように、埋設する。
次に、底版コンクリート6上に、直立鋼管柱7を片持ち梁構造で起立して設置する。この実施例1では、前記したが、直立鋼管柱7は、図5(a)、(b)に示すように、上部鋼管20と下部鋼管21をさや管継手構造22で繋いだ構成とする。
そこで、直立鋼管柱7の設置に際しては、図2(c)に示すように、直立鋼管柱7の構成部材である下部鋼管21を、その下端側から、底版コンクリート6に埋設した基礎さや鋼管11内に、間隔調整部材12に沿うように案内して挿入し、底版コンクリート6上に起立する。
次に、図6(a)に示すように、下部鋼管21内に、およそストッパー部材25近辺の高さまで砂29を充填し、その後、内部連結鋼管27を下部鋼管21内に挿入する。すると、内部連結鋼管27は、その間隔調整部材28が下部鋼管21の内面に沿ってスライドして案内されて自重で降下し、図6(b)に示すように、ストッパー部材25に載置される位置で停止する。
そして、内部連結鋼管27の間隔調整部材28によって内部連結鋼管27と下部鋼管21の間に生じる間隙36に、図6(c)に示すように、砂29を充填するとともに、内部連結鋼管27内にも砂29を充填する。
その後、上部鋼管20を、内部連結鋼管27に外側から被せるように挿入する。この挿入において、上部鋼管20は、内部連結鋼管27の間隔調整部材28によって案内されて自重で降下し、その下端面が下部鋼管21の上端面に当接し、図6(d)に示すように、上部鋼管20は下部鋼管21上に載置される。
そして、内部連結鋼管27の間隔調整部材28によって内部連結鋼管27と上部鋼管20の間に生じる間隙35に、図6(e)に示すように、砂29を充填するとともに、内部連結鋼管27内にも砂29を充填する。なお、前記したとおり、間隙35、36には、砂に替えてセメントペーストを充填して、上部鋼管20及び下部鋼管21を、それぞれ内部連結鋼管27と、より積極的に接着し強固に繋いでもよい。
以上の工程によってさや管継手構造22を形成することができ、下部鋼管21と上部鋼管20は、内部連結鋼管27の間隔調整部材28によって支持されるとともに、間隔調整部材28によって、内部連結鋼管27と、上部鋼管20及び下部鋼管21の間に生じる間隙35、36に充填された砂29(又はセメントペースト)によっても支持されて、上部鋼管20及び下部鋼管21が互いに上下方向に延びるよう繋がれる。
以上の施工方法で形成された上部鋼管20及び下部鋼管21から成る直立鋼管柱7を備えた透過型堰堤1では、複数の直立鋼管柱7は、その中に中詰材として砂29が充填された砂詰鋼管柱とされる。直立鋼管柱7は、砂詰鋼管柱とすると、砂29が充填されていない中空鋼管柱に比べて、より粘り強い変形特性を持つことになる。
この点について、本発明者等は、片持ち梁構造の直立鋼管柱を、砂詰鋼管とした場合と、砂が充填されていない中空鋼管とした場合について、実証試験と解析による結果を整理して両者の粘り強さを対比した。そのことによって、巨礫等の衝突より生じる、砂詰鋼管及び中空鋼管それぞれの衝突方向への傾斜角度(°)と曲げモーメント(kN・m)の関係を確認し、砂詰鋼管と中空鋼管の粘り強さを対比した。
この結果、図7のグラフに示すように、砂詰鋼管と中空鋼管の「曲げモーメント-傾斜角」の関係曲線が得られた。対象とした砂詰鋼管及び中空鋼管の寸法は、いずれも直径508mmで肉厚12mmである。
礫径1mの礫が流速5m/sの衝突エネルギーで衝突した際の、砂詰鋼管及び中空鋼管それぞれの傾斜角度1.4°及び1.5°における吸収エネルギーが、それぞれの曲線の積分値で示されている。同様に、礫径1mの礫が流速10m/sの衝突エネルギーで衝突した際の、砂詰鋼管及び中空鋼管それぞれの傾斜角度4.6°及び5.1°における吸収エネルギーが、それぞれの曲線の積分値で示されている。
この図7に示す実験結果からみて、砂詰鋼管は中空鋼管に比べて礫の衝突時の吸収エネルギーは大きく、より大きな衝突エネルギーを受容できることを示している。
そのために、中空鋼管は、礫の衝突をうけたとき、底版コンクリート支持部(実施例1では、直立鋼管柱のうち基礎さや鋼管に挿入された挿入部のすぐ上の根元部分に相当)の曲げ応力度が塑性域にはいると、局部座屈(へこみ変形)がおこり、それによるたわみ変形の進行にともない抵抗曲げモーメントが減少するひずみ軟化現象が生じる。
一方、砂詰鋼管は、このようなへこみ変形が、充填された砂によって抑制されるため、曲げ応力度が塑性域に達した後も、一定の傾斜角までは、曲げモーメントが低下することなく変形する。
つまり、直立鋼管柱の限界塑性回転角を15°(落石防護柵等では石等で塑性変形され破損の限界となる柵支柱の曲げ傾斜角度)としたときの限界吸収エネルギー(それぞれ図7中で吸収エネルギーとして示す領域の面積)は中空鋼管柱よりも砂詰鋼管のほうが一段と大きく、粘り強い変形特性を持つことが示されている。
以上要するに、本発明では、従来技術のように、フランジ結合等を用いることないので、巨礫等の衝突による外力がかかっても、そのような結合部分の破損が生じることがなく、また直立鋼管柱を砂詰鋼管柱とすることで、片持ち梁構造で起立した鋼管自体の有する柔な特性と、砂29を充填したことによる巨礫に対する粘り強い変形特性を備えているので、土石、流木等の衝突に対して粘り強い耐力を有する。
さらに、前記したとおり、基礎さや鋼管11の左右両側及び下流側に、それぞれアンカー鉄筋16、及びアンカー鉄筋16のアンカーとしての機能を有する支持材17が配設されているので、基礎さや鋼管11の設置された周囲のコンクリート部は、補強されており、また、基礎さや鋼管11自体も周囲から支持、補強されている。
そして、基礎さや鋼管11は、アンカー鉄筋16と支持材17によって、図2(a)等で示した所定の位置に位置決めされ保持される。特に、基礎さや鋼管11は、支持材17によって下流側から支持されることで、土石、流木等によって加わる渓流の下流側への外力に対しても強化され、下流側への位置ズレ、変形等が抑制される。
本発明の透過型堰堤1の直立鋼管柱7は、基礎さや鋼管11に挿脱可能な構成とし、しかも直立鋼管柱7が挿入される基礎さや鋼管11の内面には、90°間隔で間隔調整部材12が上下方向に延びるように設けられているので、鋼管柱の鉛直度が保たれガタつきを抑えるとともに、ガイドとしても機能し、直立鋼管柱7は、基礎さや鋼管11にスムースに挿脱が可能となる。
透過型堰堤1によって捕捉された土石32、流木等を除去する場合、或いはメインテンスにおいて直立鋼管柱7を交換する場合に、従来は、堰堤の左右のコンクリート側壁の袖天端を乗り越えるようなルートで除石管理用道路を設置したが、本発明の透過型堰堤1によれば、そのような除石管理用道路の設置は省略できる。
即ち、図8に示すように、透過型堰堤1では、透過部3に設置されている直立鋼管柱7を重機33で引き抜いて撤去すれば、図9に示すように、バックホウやトラック等の除石・除木用機材34を底版コンクリート6上に、下流側から乗り入れることで、捕捉し溜まった土石32、流木等を、直接トラックに収容し搬出することができる。
また、透過型堰堤1は、上部鋼管20と下部鋼管21が、さや管継手構造22で内部連結鋼管27を介して上下方向に繋ぎ合わされているので、渓流の深さが深く、大きな開口部高の透過型堰堤1にも適用可能である。
そして、上記構成の上部鋼管20と下部鋼管21を内部連結鋼管27を介して繋ぐさや管継手構造22では、内部連結鋼管27の外面に90°間隔で、上下方向に延びる間隔調整部材28を設けたので、上部鋼管20及び下部鋼管21は、内部連結鋼管27の外周囲に均等な間隙35、36を形成して同心的に挿入可能であり、挿入後のガタつきを抑制できる。
さらに、さや管継手構造22は、均等な間隙35、36内に砂29(又はセメントペースト)が充填されるので、上部鋼管20及び下部鋼管21は、内部連結鋼管27の外側に均等に支持され、繋ぎの強度も十分である。しかも、さや管継手構造22は、従来技術のようなフランジ継手部による剛い構造と異なり、鋼管自体の有する柔でかつ粘り強い特性を阻害しない接続構造でもある。
(実施例2)
本発明に係る透過型堰堤の実施例2を、図10~図12を参照して説明する。実施例2は、実施例1と略同じであるが、さや管継手構造についてのみ異なる。従って、実施例2は、実施例1と異なるさや管継手構造の構造及び施工方法を中心に説明する。
ところで、実施例2については、図1~図4及び図7~図9は、実施例1と基本的には共通であるので、それらの図に係る構造及び施工方法等の説明は省略し、共通する部分等の符号は、実施例1と同じ符号を使用する。なお、実施例2のさや管継手構造は、実施例1のさや管継手構造22と異なるが、符号は実施例1と同様に同じ符号を使用し、「さや管継手構造22」とする。
そして、実施例2における下部鋼管は、後記するが上部鋼管より少し大径であり、間隔調整部材を有する構成であるのに対して、実施例1における下部鋼管21は、上部鋼管20と同径であり、間隔調整部材を有さない構成である点において異なるが、その他については特に異なる構成はないので、実施例2の上部鋼管と下部鋼管においても、符号は実施例1と同様に、「上部鋼管20」と「下部鋼管21」として、以下説明する。
さや管継手構造22で繋ぎ合わす上部鋼管20と下部鋼管21は、同じ鋼管を使用するが、図10(a)、(b)に示すように、下部鋼管21は、上部鋼管20より一回り直径が大きな寸法とする。上部鋼管20と下部鋼管21を繋ぐ時には、上部鋼管20の下端側を下部鋼管21の上部に挿入するが、その挿入量(差込部の長さ)は、上部鋼管20の直径の略2倍とする。
下部鋼管21において、その上端から上部鋼管20の挿入量に相当する深さの位置に、図10(b)、図11(b)に示すように、装着孔24が形成されており、この装着孔24にストッパー部材25が装着されて取り付けられている。ストッパー部材25は、例えば、図10(b)、図11(a)、(b)に示すように、細長板から成り、下部鋼管21の中心位置を通るように水平に取り付けられる。
また、下部鋼管21の内面において、上端から下方に向けて上部鋼管20の挿入量の1/3~1/2程度の長さに、図11(c)に示すように、下部鋼管21の中心に向けて突出した間隔調整部材26が設けられている。間隔調整部材26は、下部鋼管21の内面の周方向に90°間隔をおいて、上下方向に直線的に延びるように溶接等で固定されている。
さや管継手構造22は、下記の施工方法の説明でもさらに詳記するが、図12(a)~(e)に示すように、下部鋼管21内に上部鋼管20の下端側を、ストッパー部材25に載置する深さまで挿入し、間隔調整部材26を介して生じる上部鋼管20と下部鋼管21の間隙23内に、セメントペースト30を充填し、両者を繋ぎ合わせて形成する。
なお、セメントペースト30に替えて、砂を上部鋼管20と下部鋼管21の間隙23内に充填し、この砂と間隔調整部材26を介して上部鋼管20を下部鋼管21によって支持する構造としてもよい。
(実施例2の透過型堰堤の施工方法)
実施例2の透過型堰堤の施工方法は、実施例1の透過型堰堤の施工方法と略同じであるので、ここでは、実施例1とは異なるさや管継手構造22の施工工程を中心に、以下説明する。
実施例1と同様な施工工程によって、底版コンクリート6に埋設した基礎さや鋼管11を設置する。直立鋼管柱7の設置に際しては、図2(c)に示すように、直立鋼管柱7の構成部材である下部鋼管21の下端側を、底版コンクリート6に埋設した基礎さや鋼管11内に、間隔調整部材12に沿うように案内して挿入し、底版コンクリート6上に起立する。
次に、図12(a)に示すように、下部鋼管21内に、およそストッパー部材25近辺の高さまで砂29を充填し、この砂29の上から、図12(b)に示すように、セメントペースト30を所定量入れる。
その後、図12(c)に示すように、上部鋼管20を下部鋼管21内に挿入する。すると、上部鋼管20は、図示はしないが間隔調整部材26に沿って案内され、図12(d)に示すように自重で降下し、図12(e)に示すストッパー部材25に載置する位置で停止する。
上部鋼管20は、この降下の過程で、セメントペースト30を上部鋼管20と下部鋼管21の間隙23内で押し上げて(図12(d)参照)、セメントペースト30を間隙23内で下部鋼管21の上端部まで充填する(図12(e)参照)。砂29の上から充填するセメントペースト30の前記所定量は、下部鋼管21と上部鋼管20の間隙23内で下部鋼管21の略上端部まで充填するに必要な量である。
下部鋼管21と上部鋼管20の間隙23に充填されたセメントペースト30によって、上部鋼管20の挿入部分は下部鋼管21内で固定され、上部鋼管20と下部鋼管21は繋ぎ合わされ、さや管継手構造22が形成される。その後、図示はしないが、上部鋼管20にその上端まで砂29を充填する。
あるいは、上下鋼管の間の間隙23にのみセメントペーストを充填する方法もある。その場合、砂詰めした下部鋼管に上部鋼管を挿入した後、フレキシブルホースを間隙23の下部まで挿入し、ポンプ等でセメントペーストを注入して間隙23の上面までセメントペーストが上がってくるまで行う。セメントペーストの注入は上部鋼管20の間隔調整部材26間の周方向4箇所で行う。
そして、上記構成の上部鋼管20と下部鋼管21を繋ぐさや管継手構造22では、下部鋼管21の内面に90°間隔で、上下方向に延びる間隔調整部材26を設けたので、上部鋼管20は下部鋼管21内に、周囲に均等な間隙23を形成して同心的に挿入可能であり、挿入後のガタつきを抑制できる。
さらに、さや管継手構造22は、均等な間隙23内にセメントペースト30が充填されるので、上部鋼管20は、下部鋼管21内で周囲から均等に固定され、繋ぎの強度も十分である。しかも、さや管継手構造22は、従来技術のようなフランジ継手部による剛い構造と異なり、鋼管自体の有する柔でかつ粘り強い特性を阻害しない接続構造でもある。
なお、前記したとおり、セメントペースト30を充填することなく、砂を上部鋼管20と下部鋼管21の間隙23内に充填し、この砂と間隔調整部材26を介して上部鋼管20を下部鋼管21によって支持する構造としてもよいが、その場合には、上部鋼管20を下部鋼管21内に挿入した後、砂を上部鋼管20と下部鋼管21の間隙23内に充填すればよい。
以上、本発明に係る透過型堰堤を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明に係る透過型堰堤は、上記のような構成であるから、渓流における土石、流木、等を捕捉する透過型堰堤や流木捕捉工はもちろんのこと、落石防護柵、車輌防護柵等の各種の防護柵にも適用可能である。
1 透過型堰堤
2 コンクリート非越流部
3 透過部
6 底版コンクリート
7 直立鋼管柱
10 さや管基礎構造
11 基礎さや鋼管
12 基礎さや鋼管の間隔調整部材
15 補強鉄筋
16 アンカー鉄筋
17 支持材
20 上部鋼管
21 下部鋼管
22 さや管継手構造
23 上部鋼管と下部鋼管の間隙
24 ストッパー部材の装着孔
25 ストッパー部材
26 下部鋼管の間隔調整部材
27 内部連結鋼管
28 内部連結鋼管の間隔調整部材
29 砂
30 セメントペースト
32 土石
33 重機
34 トラック
35 内部連結鋼管と上部鋼管の間隙
36 内部連結鋼管と下部鋼管の間隙

Claims (9)

  1. 底版コンクリート上に起立した複数の片持ち梁構造の直立鋼管柱を備えた透過型堰堤の施工方法であって、
    底版コンクリートの構築において、複数の基礎さや鋼管をその上端開口が底版コンクリートの上面と同じ高さとなるように配設するとともに、底版コンクリートの上面より下方の位置であって、複数の基礎さや鋼管のそれぞれの左右両側には、渓流の流れ方向に沿ったアンカー鉄筋を水平に配設し、複数の基礎さや鋼管の下流側に当接して、渓流の横断方向に沿った支持材を水平に配設し、
    底版コンクリートに設置した複数の基礎さや鋼管に、複数の直立鋼管柱を挿入して片持ち梁構造で起立させ、
    起立させた複数の直立鋼管柱内に、それぞれ砂を充填することを特徴とする透過型堰堤の施工方法。
  2. 基礎さや鋼管は、その内面に、基礎さや鋼管の長手方向に延びる間隔調整部材が周方向に間隔をおいて複数有するものを使用し、
    直立鋼管柱を基礎さや鋼管に挿入する際に、直立鋼管柱のガタつきを防ぎ鉛直度を保つとともに、直立鋼管柱を間隔調整部材によって案内して挿入することを特徴とする請求項1に記載の透過型堰堤の施工方法。
  3. 直立鋼管柱は、同径の上部鋼管と下部鋼管を、外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有する内部連結鋼管によって繋ぎ合わせて成るものを使用し、
    前記直立鋼管柱の基礎さや鋼管への挿入は、該直立鋼管柱を構成する下部鋼管を挿入して行い、
    該挿入後、下部鋼管に取り付けたストッパー部材まで、下部鋼管内に砂を充填し、
    その後、内部連結鋼管を下部鋼管内に挿入し、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と下部鋼管の間隙内に砂又はセメントペーストを充填したうえ、内部連結鋼管内に砂を充填し、
    さらに、上部鋼管を内部連結鋼管の外側から被せるように挿入することによって、上部鋼管と下部鋼管を結合して繋ぎ合わせ、その後、上部鋼管内に砂を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の透過型堰堤の施工方法。
  4. 直立鋼管柱は、上部鋼管と、内面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材及びストッパー部材を有する下部鋼管と、を繋ぎ合わせて成るものを使用し、
    前記直立鋼管柱を基礎さや鋼管への挿入は、該直立鋼管柱を構成する下部鋼管を挿入して行い、
    該挿入後、下部鋼管内にストッパー部材まで砂を充填し、
    その後、上部鋼管を下部鋼管内に挿入し、下部鋼管の間隔調整部材を介して形成された下部鋼管と上部鋼管の間隙内に砂又はセメントペーストを充填して、上部鋼管と下部鋼管を結合して繋ぎ合わせ、
    さらに、上部鋼管に砂を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の透過型堰堤の施工方法。
  5. 底版コンクリート上に起立した複数の片持ち梁構造の直立鋼管柱を備えた透過型堰堤であって、
    底版コンクリートには、上端開口が底版コンクリートの上面と同じ高さの複数の基礎さや鋼管が配設されているとともに、底版コンクリートの上面より下方には、複数の基礎さや鋼管のそれぞれの左右両側の位置に、渓流の流れ方向に沿ったアンカー鉄筋が水平に配設されており、複数の基礎さや鋼管の下流側に当接して、渓流の横断方向に沿った支持材が水平に配設されており、
    複数の直立鋼管柱は、複数の基礎さや鋼管に挿入して片持ち梁構造で起立されて設けられており、
    複数の直立鋼管柱内には、それぞれ砂が充填されていることを特徴とする透過型堰堤。
  6. 基礎さや鋼管は、その内面に、長手方向に延びる間隔調整部材が周方向に間隔をおいて複数設けられており、
    直立鋼管柱は、基礎さや鋼管の間隔調整部材を介して基礎さや鋼管内に同心で挿入されて片持ち梁構造で起立されている構成であることを特徴とする請求項5に記載の透過型堰堤。
  7. 直立鋼管柱は、同径の上部鋼管と下部鋼管を、外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有する内部連結鋼管によって繋ぎ合わせて成り、
    下部鋼管は、ストッパー部材を有し、基礎さや鋼管内に挿入され、ストッパー部材の高さまで砂が充填されており、
    内部連結鋼管は、その外面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材を有し、下部鋼管内に挿入されており、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と下部鋼管の間隙には、砂又はセメントペーストが充填されており、
    上部鋼管は、内部連結鋼管の外側から被せるように挿入されて下部鋼管の上端面に載置されており、内部連結鋼管の間隔調整部材を介して形成された内部連結鋼管と上部鋼管の間隙には、砂又はセメントペーストが充填されている構成であることを特徴とする請求項5又は6に記載の透過型堰堤。
  8. 直立鋼管柱は、上部鋼管と下部鋼管が繋ぎ合わせて成り、
    下部鋼管は、その内面に長手方向に延び周方向に間隔をおいて形成された間隔調整部材と、ストッパー部材と、を有し、砂がストッパー部材の高さまで充填されており、
    上部鋼管は、下部鋼管内に挿入されてストッパー部材上に載置されており、
    上部鋼管と下部鋼管は、下部鋼管の間隔調整部材を介して形成された上部鋼管と下部鋼管の間隙内に、砂又はセメントペーストが充填されて繋ぎ合わされているとともに、
    砂が上部鋼管内に充填されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の透過型堰堤。
  9. 複数の直立鋼管柱は、渓流横断方向に向けて平面視でジグザグとなるように、渓流方向で2~3列で配置されており、しかも互いに隣接する直立鋼管柱の中心で正三角形を形成するように配置されていることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の透過型堰堤。
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