JP2002121728A - 柱列式の鋼製スリットダム構造 - Google Patents

柱列式の鋼製スリットダム構造

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JP2002121728A
JP2002121728A JP2000316130A JP2000316130A JP2002121728A JP 2002121728 A JP2002121728 A JP 2002121728A JP 2000316130 A JP2000316130 A JP 2000316130A JP 2000316130 A JP2000316130 A JP 2000316130A JP 2002121728 A JP2002121728 A JP 2002121728A
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slit dam
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Noriyuki Hirozawa
規行 広沢
Munehiro Ishida
宗弘 石田
Yoshihiro Takano
良広 高野
Shigeo Kobayashi
茂雄 小林
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造の可及的な簡易化、堅牢化、製作コスト
の低減化を図った柱列状鋼製スリットダムを提供する。 【解決手段】 両川岸に設置した堤体7間において、川
幅方向に渡し、その両端を堤体7に連結した桁8と、こ
の桁8と川底の基礎部コンクリート10とに上部と下部
を連結し、所要の川幅方向に所定間隔で、柱列状に配置
した鉛直部材13からなる構成を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、河川内に設置され
る土石流対策用あるいは、流木対策用の透過型砂防構造
(柱列式の鋼製スリットダム構造という)に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の鋼製スリットダムとして
は、例えば、[1]、特開昭54−115520号(特
願昭53−22606号)、[2]、特開昭57−29
717号(特願昭55−31259号)、[3]、特開
昭63−289106号(特願昭62−123874
号)がある。
【0003】前記[1]の従来例は、「格子型骨組構
造」であって、河川の横断方向および縦断方向に棒状部
材を格子状に架設してなる立体フレームを河川に設置す
るもので、河川の横断方向に投影した格子状升目の大き
さが河川上流側で大きく、下流側で小さく、また、河川
の縦断方向に沿って河川上流側の高さが、河川下流側の
高さよりも高い構成としてある。
【0004】前記[1]従来例の前提となる格子型(大
型)スリットダムの一般例は、図25に示すとおりで、
河川1の横断方向および縦断方向および上下方向に棒状
部材2a、2b、2cを格子状に架設して立体フレーム
2を構成し、この立体フレーム2における上下方向の棒
状部材2cの下端を河川床3に設置するものである。
【0005】前記[2]従来例は、「A型骨組構造」で
あって、鋼製の主柱に鋼製の控材を結合してなる複数の
構造体を、河川の流水方向と平行とし、各構造体の間隔
を巨礫のみを阻止する間隔で河川床に固定し、各構造体
の上方を継ぎ桁で連結したものである。
【0006】前記[2]従来例の前提となるA型(大
型)スリットダムの一般例は、図26に示すとおりで、
鋼製の主柱4に鋼製の控材5を結合してなる複数の構造
体を、河川の流水方向と平行とし、かつ河川床3に設置
する。また、各構造体の上方を流水方向と平行な継ぎ梁
6aおよび、流水方向と直角な継ぎ梁6bで連結したも
のである。
【0007】前記[3]従来例は、「B型骨組構造」で
あって、3本以上の鋼製支柱を、各支柱の長手方向に間
隔を置いて、かつ、同一平面上に並ばないように間隔を
置いて配置して鋼製連結部材を構成し、この鋼製連結部
材を複数連結して鋼製砂防ユニットを構成し、この複数
の砂防ユニットを河川横断方向に間隔をあけて配置し、
河川基盤に固着するものである。
【0008】前記[1]の発明は、「格子型骨組構造」
であって、河川の横断方向および縦断方向に棒状部材を
格子状に架設してなる立体フレームを河川に設置するも
ので、河川の横断方向に投影した格子状升目の大きさが
河川上流側で大きく、下流側で小さく、また、河川の縦
断方向に沿って河川上流側の高さが、河川下流側の高さ
よりも高い構成としてある。
【0009】前記[2]の発明は、「A型骨組み構造」
であって、鋼製の主柱に鋼製の控材を結合してなる複数
の構造体を、河川の流水方向と平行とし、各構造体の間
隔を巨礫のみを阻止する間隔で河川床に固定し、各構造
体の上方を水平の継ぎ桁で連結したものである。
【0010】前記[3]の発明は、「B型骨組み構造」
であって、3本以上の鋼製支柱を、各支柱の長手方向に
間隔を置いて、かつ、同一平面上に並ばないように間隔
を置いて配置して鋼製連結部材を構成し、この鋼製連結
部材を複数連結して鋼製砂防ユニットを構成し、この複
数の砂防ユニットを河川横断方向に間隔をあけて配置
し、河川基盤に固着するもので、オープン型鋼製砂防堰
堤である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前記[1]、[2]、
[3]の発明(これらを、仮に鋼製ダムと総称する)
は、いずれも河川内に設置され、土石流を堰き止め、減
勢させるものであるが、この従来の鋼製ダムでは、次の
(1)〜(16)の欠点があった。 (1)、前記鋼製ダムは構造が複雑で、使用する鋼材量
が多く必要であり、製造コストが大きくなる。(特に、
前記[1]の格子型骨組み構造と、[3]のB型骨組み
構造の場合) (2)、鋼製ダムの部材点数・接合部が多く、現場組立
てに労力・時間がかかる。(特に、前記[1]の格子型
骨組み構造と、[3]のB型骨組み構造の場合) (3)、鋼製ダムの部材接合部は、フランジ接合のた
め、現場組立てに労力・時間がかかる。 (4)、鋼製ダムに岩塊が衝突して鋼製フレームが変形
した場合、この変形した部材を構造上、取替えにくい。 (5)、鋼製ダムは、構造上設計自由度が低く、景観設
計し難い。 (6)、鋼製ダムには、川幅方向均一に土砂が溜まり、
結果、比較的小さい土砂の流出を妨げることになる。 (7)、鋼製ダムは、建築機械や作業者が近づき難い構
造である。 (8)、鋼製ダムには、通行・公園機能がない。 (9)、鋼製ダムに捕捉し溜まった土砂・岩を除去しに
くい。(特に、前記[1]の格子型骨組み構造の場合) (10)、基礎築造コストが高い。 (11)、鋼製ダムの構造主材が、土石流の衝撃を直接
受け、変形し易い構造である。 (12)、鋼製ダムが、巨岩を捕捉できないことがあ
る。 (13)、鋼製ダムの水平つなぎ材にレキ(礫)が直接
落下し、変形し易い。(特に、前記[1]の格子型骨組
み構造と、[3]のB型骨組み構造の場合) (14)、鋼製ダムが満砂状態となった時、捕捉し、溜
まった土砂・岩を除去し難いため、別の場所に鋼製ダム
を新設せざるを得ない。 (15)、鋼製ダムに土砂・レキが満砂状態となり、既
設構造の上方に新設構造を増設しようとする場合、既設
部の補強や、既設部と新設部との現場溶接が必要とな
り、建設費が高くつく。 (16)、基礎部との取り合い部の施工時精度管理が大
変面倒である。 本発明は、前記(1)〜(16)の各欠点を改良した柱
列式鋼製スリットダムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
め、本発明に係る柱列式の鋼製スリットダムは、次のよ
うに構成する。第1発明は、両川岸に設置した堤体と、
当該堤体と連結し両堤体間を川幅方向に渡した桁と、当
該桁と川底位置の基礎部とに連結し、所要の川幅方向間
隔で鉛直部材を柱状に配置したことを特徴とする。第2
発明は、第1発明において、前記鉛直部材が鋼管よりな
ることを特徴とする。第3発明は、第1発明において、
前記鉛直部材がケーブルよりなることを特徴とする。第
4発明は、第1〜3発明において、前記桁が水平面内の
トラス構造あるいは水平面内のラーメン構造であること
を特徴とする。第5発明は、第1〜4発明において、前
記桁が上流側に張出した水平面アーチからなり、アーチ
リブに沿って前記鉛直部材を配置したことを特徴とす
る。第6発明は、第1〜5発明において、前記鉛直部材
の下端の基礎部が、両川岸に設置した堤体を川幅方向に
渡し、両堤体と連結した桁構造であることを特徴とす
る。第7発明は、第1〜6発明において、基礎部の桁が
水平面内のトラス構造あるいは、水平面内のラーメン構
造あるいは水平面アーチ構造であることを特徴とする。
第8発明は、第1〜7発明において、前記鉛直部材の高
さ方向中間部を連続した水平桁部材あるいは水平ケーブ
ルで連結し、鉛直面格子構造としたことを特徴とする。
第9発明は、第1〜8発明において、前記桁の上流側に
は鉛直ケーブルを配置し、下流側には鉛直部材を配置し
たことを特徴とする。第10発明は、第1〜9発明にお
いて、前記桁の上流側および下流側には、上流側と下流
側で千鳥になるように鉛直部材を配置したことを特徴と
する。第11発明は、第1〜9発明において、前記桁の
上流側には、川幅中央部のみに鉛直部材を配置し、下流
側には、前記川幅中央部を除いて全川幅にわたり鉛直部
材を配置したことを特徴とする。第12発明は、第1〜
9または第11発明において、前記桁の川幅中央部より
上流側ヘ水平圧縮部材を伸ばし、川幅中央部の鉛直部材
を当該水平圧縮部材の端部と連結し、上流側に張出して
設置したことを特徴とする。第13発明は、第1、2ま
たは第4〜12発明において、前記鉛直部材の下端が基
礎コンクリートに埋め込まれた鋼管との鞘管接合、つま
り、鉛直部材断面が内側に収まる内径を有する鋼管内に
鉛直部材を所要の長さ建て込んだ後、骨材系あるいはセ
メント系あるいは樹脂系の充填材を充填した接合である
ことを特徴とする。第14発明は、第1、2または第4
〜12発明において、前記鉛直部材の下端と基礎部との
連結部を、略ヒンジ構造つまり、基礎部に鉛直部材から
の水平力を支圧伝達する鉛直面部を設け、鉛直部材の下
端の下流側側面と接触させるように設置しただけの簡易
構造としたことを特徴とする。第15発明は、第1〜1
4発明において、前記桁の上に鉄筋コンクリートスラブ
を設けたことを特徴とする。第16発明は、第1、2ま
たは第4〜15発明において、前記鉛直部材を前記桁の
下流側に連結し、前記鉛直部材下端の基礎部との連結部
をヒンジ構造あるいは略ヒンジ構造としたことを特徴と
する。第17発明は、第16発明において、前記鉛直部
材を前記桁の下流側に配置し、当該鉛直部材の1本ある
いは複数本の上端を桁より連続し、かつジグザグ配置の
ケーブルで桁側に押えて支持し、前記鉛直部材下端の基
礎部との連結部をヒンジ構造あるいは略ヒンジ構造とし
たことを特徴とする。第18発明は、第17発明におい
て、前記鉛直部材を前記桁の下流側に配置し、当該鉛直
部材の1本あるいは複数本の上端を桁より連続し、かつ
ジグザグ配置のケーブルで桁側に押えて支持し、前記鉛
直部材下端の基礎部との連結部をヒンジ構造あるいは略
ヒンジ構造とし、当該ケーブルをケーブル巻き取り装置
から引き出して下流側に倒すことができるように、ある
いはケーブル巻き取り装置に巻き取って鉛直方向ヘ起こ
すことができるようにしたことを特徴とする。第19発
明は、第1、2または第4〜13発明において、前記鉛
直部材の下端および上端と、基礎コンクリートおよび前
記桁との接合部を鞘管接合とし、前記鉛直部材と鞘管と
の間には骨材系、セメント系、あるいは樹脂系の充填材
を充填して、水平力を水平伝達可能に構成し、前記鉛直
部材と前記充填材との境界面には潤滑材あるいは樹脂層
からなるスライド層を設けて、上方に引抜き可能に構成
することを特徴とする。第20発明は、第1、2または
第4〜14発明において、前記鉛直部材の上部に、増設
用鉛直部材の接合部を設けたことを特徴とする。
【0013】
【作用】第1発明によると、堤体と、堤体に連結の桁
と、桁と基礎部に連結の柱列状配置の鉛直部材とからな
る鋼製スリットダムは、構造が可及的に簡易化、堅牢化
されており、これに伴い、鋼材量や製作コストの低減
化、製作と部材交換の容易性、設計の自由度の向上、ス
リットダムへの建設機械、作業員の接近の容易性、構造
主材の土石流による衝撃の直接の受けにくさ、部材の変
形のしにくさ、岩塊の落下衝突による変形のしにくさ等
の作用が発揮される。(従来の課題[1]、[2]、
[3]、[4]、[5]、[7]、[11]、[1
3]、[16]の改良) 第2発明によると、第1発明における、構造の可及的な
簡易化、堅牢化、製作コストの低減化、岩塊の落下衝突
による変形のしにくさ等の作用が一層有効に発揮され
る。(従来の課題[1]、[2]、[4]の改良) 第3発明によると、第2発明と同様に、第1発明におけ
る、構造の可及的な簡易化、堅牢化、製作コストの低減
化、岩塊の落下衝突による変形のしにくさ等の作用が一
層有効に発揮される。(従来の課題[1]、[2]、
[3]、[4]の改良) 第4発明によると、第1発明における、構造の可及的な
簡易化、堅牢化、設計自由度の向上等の作用が、一層顕
著に発揮される。(従来の課題[1]、[5]の改良) 第5発明によると、第1発明における、構造の可及的な
簡易化、堅牢化、設計自由度の向上、小さい土砂の流出
促進作用が、一層顕著に発揮される。(従来の課題
[1]、[5]、[6]の改良) 第6発明によると、第1発明の作用に加えて、基礎構造
コストの低減化が発揮される。(従来の課題[10]の
改良) 第7発明によると、第1発明における、スリットダムへ
の建設機械、作業員の接近の容易性が一層顕著に発揮さ
れる。(従来の課題[7]の改良) 第8発明によると、第1発明における、構造の可及的な
簡易化、堅牢化、製作コストの低減化が一層顕著に発揮
される。これに加えて、本柱列式構造の欠点である、鉛
直部材の支点間長さが長く、土石流の衝撃力吸収性能が
従来構造よりも劣る点を解決している。(従来の課題
[11]の改良) 第9発明によると、第1発明の作用に加えて、ダムに捕
捉し溜まった土砂・岩の除去の容易性が顕著に発揮され
る。これに加えて、第8発明と同様、柱列式構造の欠点
である、鉛直部材の支点間長さが長く、土石流の衝撃力
吸収性能が従来構造よりも劣る点を解決している。(従
来の課題[11]の改良) 第10発明によると、第1発明の作用に加えて、巨岩の
捕捉の確実性の作用が顕著に発揮される。(従来の課題
[12]の改良) 第11発明によると、第1発明の作用に加えて、小さい
土砂の流出促進の作用が、顕著に発揮される。(従来の
課題[6]の改良) 第12発明によると、第11発明がさらに改良されてお
り、第1発明に作用に加えて、小さい土砂の流出促進の
作用が、一層顕著に発揮される。(従来の課題[6]の
改良) 第13発明によると、第1発明における、製作と部材交
換の容易性の作用が、一層顕著に発揮される。(従来の
課題[3]、[16]の改良) 第14発明によると、第13発明と同様に、第1発明に
おける、製作と部材交換の容易性の作用が、一層顕著に
発揮される。(従来の課題[3]の改良) 第15発明によると、第1発明における、設計自由度の
向上、スリットダムへの建設機械、作業員の接近の容易
性が一層顕著に発揮され、さらに、通行、公園機能が付
加される。(従来の課題[5]、[7]、[8]の改
良) 第16発明によると、第1発明の作用に加えて、捕捉し
溜まった土砂・岩の除去の容易性、それに伴う満砂状態
になった時の新設ダムの不要による経済性が発揮され
る。(従来の課題[9]、[14]の改良) 第17発明によると、第16発明と同様の作用に加え
て、ケーブルの伸びによる緩衝効果のために、岩塊の衝
突による変形のしにくさ等が発揮される。(従来の課題
[9]、[11]、[14]の改良) 第18発明によると、第17発明よりも、捕促し溜まっ
た土砂・岩の除去が容易になり、除去後の復旧が容易で
ある。(従来の課題[9]、[11]、[14]の改
良) 第19発明によると、第16発明と同様の作用が発揮さ
れる。(従来の課題[9]、[14]の改良) 第20発明によると、第18発明の作用に加えて、満砂
状態による、ダムの上方への増設時の既設部と新設部と
の現場溶接などによる施工の困難性、それに伴う建設費
のコストアップ等が解消される。(従来の課題[1
4]、[15]の改良)
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図を参
照して順に、詳細に説明する。
【0015】図1(A)、(B)は、実施形態1に係る
柱列式鋼製スリットダムの横断平面図と、河川上流側か
ら見た縦断正面図、(C)は、同(A)の(イ)−
(イ)断面図、(D)〜(F)は、部分拡大図である。
実施形態1は、請求項1、2、4に対応するものであ
る。
【0016】図1において、両川岸にコンクリート堤体
7が設置されており、両コンクリート堤体7に両端が連
結され、両コンクリート堤体7の上部間を川幅方向に架
設した桁8が設置されている。この桁8の上流側(a)
と川底位置の基礎部コンクリート10に上下端部が連結
され、川幅方向に所要の間隔で鉛直部材の具体例として
の複数の鉛直鋼管13が柱列状に設けられている。
【0017】実施形態1では、桁8は、所定間隔をあけ
て平行に、かつ水平に配置された角鋼管製の上弦材11
と下弦材11aの間を斜材12で連結して構成されてい
る。上弦材11と下弦材11aは、角鋼管の他に、丸鋼
管、H形鋼、コンクリート充填鋼管などでもよい。斜材
12は丸鋼管、各鋼管、形鋼でもよい。鉛直鋼管13
は、丸鋼管が耐衝撃力性から好ましいが、角鋼管、コン
クリート充填鋼管等でもよい。
【0018】桁8における上流側(a)の上弦材11の
側面には、鉛直鋼管13の上端部が固着されている。そ
の固着手段は任意でよいが、例えば、図1(E)、
(F)に示す例では、U型鋼板締結治具(鋼板バンド)
14を用いて、鉛直鋼管13の外周を抱え込み、他方、
コ字型ねじ付き丸棒締結治具15で角鋼管の上弦材11
を抱持し、丸棒締結治具15の両端ねじ部を、鋼板締結
治具14の両端フランジ14aに開設のねじ棒挿入孔に
挿入した上、ナット16を締結することで、柱列の複数
の鉛直鋼管13の各上端部が個々に上弦材11の側面に
固着されている。鉛直鋼管13は、丸鋼管が耐衝撃力性
から好ましいが、角鋼管、コンクリート充填鋼管等でも
よい。また、複数の鉛直鋼管13間の間隙Wは、捕捉す
べき最小礫直径dに対し、W<1.5dに設けるのがよ
い。
【0019】桁8とコンクリート堤体7との連結部は、
上弦材11と下弦材11aの端部をコンクリート中に埋
め込むことで、水平力を当該堤体7に伝達している。鉄
筋あるいは鉄骨により、コンクリート堤体7を補強する
ことにより、より大きな水平力の伝達が可能である。上
弦材11と下弦材11aの端部をコンクリート堤体7の
上端部に置き、堤体7に埋め込んだアンカーボルト等で
接続して水平力を堤体7に伝達することも可能である。
【0020】また、鉛直鋼管13の下端は、川底位置の
基礎部コンクリート10を構築する際、その内部に埋設
されるようにコンクリートを打設することで、当該基礎
部コンクリート10に固着されている。つまり、鉛直鋼
管13と基礎部コンクリート10との連結部をコンクリ
ート中に埋め込むことにより、水平力を基礎部に伝達す
る。また、所要の埋め込み長(一般に部材幅以上)を埋
め込むことにより、鉛直鋼管13の下端が固定端とな
り、曲げモーメントを基礎部に伝達することも可能であ
る。
【0021】前記鉛直鋼管13と、上弦材11と、下弦
材11aと、斜材12は、これら各部材の全長に渡り一
本ものを使用してもよいが、それに限らず、これらの各
部材は、図示のように複数本の鋼管部材をフランジ接合
部17で連結して構成してもよい。図1(D)には、フ
ランジ接合部17の例として、鉛直鋼管13の各鋼管部
材13aの接合端部に設けたフランジ18同士を接合
し、高張力ボルト19で結合した例が示されている。
【0022】鋼管部材の接合部は、前述のフランジ接合
が一般的である。また、現場溶接もできるが、溶接機材
の持ち込みが大変で、接合時間もかかる。これに比べ、
充填材を介した鞘管接合にすると、吸収誤差が優れ、施
工性が改善される。また、形鋼を使用してもよく、この
場合は、高力ボルトによる摩擦接合がよい。
【0023】実施形態1の構造特性は、礫、土砂の堆積
圧および土石流の衝撃力を直接鉛直鋼管13で受け止め
ることである。すなわち、鉛直鋼管13で受け止めたそ
の水平力を、下端部では基礎部コンクリート10を介し
て、地盤に伝達する。上端部では、河川軸方向の断面性
能の大きい桁8を介して。コンクリートの堤体7に伝達
する。コンクリート堤体7は、大きな自重と低い重心位
置を生かしてその水平力と転倒モーメントを地盤へ伝達
する。
【0024】前述のように、実施形態1の柱列式鋼製ス
リットダムでは、土砂・岩は、柱列状配置の鉛直鋼管1
3で形成される間隙9に堰き止められるが、前記鉛直鋼
管13の上端は桁8に、下端は川底位置の基礎部コンク
リート10にそれぞれ堅牢に固着されており、しかも、
桁8はそれ自体強固な構成であって、かつ、その両端部
がコンクリート堤体7に固着されているので、構造が簡
潔で、部材点数、接合部が比較的少ないにも拘わらず、
小岩は勿論、巨岩も確実に捕捉できる。しかも、鉛直鋼
管13は、巨岩や土石流の衝撃を受けても、変形しにく
い。また、桁8が堅牢なので、上方からレキ(礫)が直
接衝突しても、桁8は変形しにくいものである。また、
低いレベルに水平部材がないので、上方からレキが直接
落下してもダメージを受ける部材はない。
【0025】図2は、実施形態2を示し。請求項1、2
に対応する。実施形態2の基本構造は実施形態1と同じ
であるが、ダム柱列を構成する鉛直鋼管13の上端部を
支持する桁8aの構造が相異する。この実施形態2にお
ける桁8aは、水平面内フルウェブ桁構造の例を示し、
上流側と下流側のフランジ鋼材20a、20bが平行
に、かつ川幅方向に配置される。両フランジ鋼材20
a、20bの間は、ウェブ鋼材22を溶接することで固
着されている。ウェブ鋼材22には等間隔で、複数の水
抜き孔21が開孔されている。このように構成された桁
8aの両端は、コンクリート堤体7に埋設固定されてい
る。
【0026】フランジ鋼材22は、角鋼管、丸鋼管、厚
板、コンクリート充填鋼管のいずれでもよい。図では、
角鋼管の例が示されており、角鋼管からなる上流側のフ
ランジ鋼材20aの上流側の側面に丸鋼管からなる鉛直
鋼管13の上端が溶接で固着されている。他の構成は、
実施形態1と同じなので、同一要素に同一符号を付し
て、説明を省略する。
【0027】実施形態2によると、実施形態1と同様、
土砂・岩は、柱列配置の複数の鉛直鋼管13で形成され
る間隙9に絡まって捕捉される。さらに、実施形態2に
よると構造が簡潔で、部材点数、接合部が比較的少ない
にも拘わらず、小岩は勿論、巨岩も確実に捕捉でき、し
かも、鉛直鋼管13は、河川軸方向の断面性能の大きい
桁8aを介してコンクリートの堤体7に伝達され、これ
ら鉛直鋼管13は、巨岩や土石流の衝撃を受けても変形
しにくい。
【0028】つぎに、図3の実施形態3を説明する。こ
の実施形態3は、請求項3に対応し、鉛直部材がケーブ
ルまたはワイヤーの例を示す。実施形態3の鋼製スリッ
トダムにおける桁8の構成は実施形態1と同じである。
そして、川幅方向に所定の間隔で複数鉛直に配設したケ
ーブルまたはワイヤー(以下鉛直ケーブルという)13
aの下端部を、基礎部コンクリート10に固着し、上端
部を桁8に固着する。
【0029】その具体的な固着手段は任意でよいが、図
示例では、鉛直ケーブル13aの上下端部にねじ部が設
けられていて、下端は、基礎部コンクリート10に埋設
のアンカー金物23に引締金具(例えば、ターンバック
ルなど)24を介して連結する。また、鉛直ケーブル1
3aの上端は、上弦材11を上下に貫通して設けた挿通
孔に挿通させた上、当該上弦材11の上部において、鉛
直ケーブル13aの上端ねじ部に定着ナット25を締付
けることにより、基礎部コンクリート10と桁8との間
に鉛直ケーブル13aを張設する。他の基本構造は、実
施形態1と同じである。
【0030】実施形態3によると、流木、土砂・岩など
は、柱列配置の複数の鉛直ケーブル13aで形成される
間隙9に絡まって捕捉される。実施形態3の構造的特長
として、鉛直ケーブル13aは水平面耐荷力が比較的小
さいので、流木対策に適する。また、鉛直ケーブル13
aは、劣化、切断した時の取り替えが容易である。さら
に、鉛直ケーブル13aは、伸びにより、たわみが大き
いので、流木等による衝撃に対するエネルギー吸収性能
が大きい。また、設置時に鉛直ケーブル13aを弛ませ
ておくことにより、耐荷力、耐衝撃力の性能が向上す
る。
【0031】つぎに、図4の実施形態4を説明する。こ
の実施形態4は、請求項4に対応し、桁8bが水平面材
ラーメン構造の例を示す。実施形態4の鋼製スリットダ
ムにおける鉛直鋼管13の構成は実施形態1と同じであ
る。
【0032】実施形態4においては、水平面材ラーメン
構造の桁8bは、所定間隔をあけて平行に、かつ水平に
配置された角鋼管製の上弦材11と下弦材11aの間
は、ラーメン垂直材26を溶接することで連結されてい
る。ラーメン垂直材26は、丸鋼管、角鋼管、形鋼でも
よい。
【0033】実施形態4によると、流木、土砂・岩など
は、柱列配置の複数の鉛直鋼管13で形成される間隙9
に絡まって捕捉される。実施形態4においても、鉛直鋼
管13の上端と下端は、桁8bと川底の基礎部コンクリ
ート10にそれぞれ堅牢に固着されており、しかも、水
平面材ラーメン構造の桁8bはそれ自体強固な構成であ
って、かつ、その両端部がコンクリート堤体7に固着さ
れているので、構造が簡潔で、部材点数、接合部が比較
的少ないにも拘わらず、小岩は勿論、巨岩も確実に捕捉
でき、しかも、鉛直鋼管13は、これら巨岩や土石流の
衝撃を受けても、変形しにくい。また、桁8bが堅牢な
ので、上方からレキ(礫)が直接衝突しても、桁8bは
変形しにくいものである。
【0034】図5は、実施形態5を示し、請求項5に対
応する。実施形態5の基本構造は実施形態1と同じであ
るが、ダム柱列を構成する鉛直鋼管13の上端部を支持
する桁8cの構造が相異する。この実施形態5の鋼製ス
リットダムにおける桁8cは、水平面アーチ桁構造の例
を示し、同桁8cは、上流側に凸のアーチ部材27で構
成され、その両端は、コンクリート堤体7に埋設固定さ
れていると共に、鉛直鋼管13の上端部は、当該アーチ
部材27の上流側の側面にバンド式締結金物、溶接など
で固着されている。アーチ部材27の材質は、丸鋼管、
角鋼管、コンクリート充填鋼管でもよい。
【0035】実施形態5によると、流木、土砂・岩など
は、柱列配置の複数の鉛直鋼管13で形成される間隙9
に絡まって捕捉される。実施形態5の構造的特長とし
て、アーチ部材27に固着される鉛直鋼管13はアーチ
形状の平面配置により、礫や土砂が両川岸寄りに堆積易
くなり、川幅中央部のみずの流れを比較的妨げにくい利
点がある。
【0036】さらに、実施形態5において、鉛直鋼管1
3からの水平力に対してアーチ効果によりアーチ部材2
7の軸圧縮力で対向できるので、流木、土砂・岩などに
よる衝撃に対して、より大きな堅牢性を発揮できる。
【0037】また、実施形態5において、アーチ部材2
7と堤体7との連結部は、当該アーチ部材27に対し、
垂直面で取り合うことにより、アーチ部材27の軸圧縮
力の堤体7への伝達が容易である。その連結手段は任意
でよいが、図示のように、アーチ部材27を堤体7のコ
ンクリート中に埋め込んでもよいし、図示しないが、ベ
ースプレートを介してアンカーボルトで連結してもよ
い。
【0038】次に、図6は、実施形態6を示し、この実
施形態6も請求項5に対応する。実施形態6の基本構造
は実施形態5と同じであるが、ダム柱列を構成する鉛直
鋼管13の上端部を支持する桁8dの構造が相異する。
つまり、実施形態6の鋼製スリットダムにおける桁8d
は、上弦材(アーチリブ)11cと下弦材11bとの間
が斜材12で連結されたアーチ形状のトラス構造の例を
示す。
【0039】実施形態6における桁8dにおいても、そ
の両端は、コンクリート堤体7に埋設固定されていると
共に、鉛直鋼管13の上端部は、当該アーチ部材27の
上流側の側面にバンド式締結金物、溶接などで固着され
ている。アーチリブ11cの材質は、丸鋼管、角鋼管、
コンクリート充填鋼管でもよい。
【0040】実施形態6によると、流木、土砂・岩など
は、柱列配置の複数の鉛直鋼管13で形成される間隙9
に絡まって捕捉される。実施形態6の構造的特長とし
て、桁8dの強度は、実施形態5よりも一層堅牢である
と共に、アーチリブである上弦材11cに固着される鉛
直鋼管13は実施形態5と同様に、アーチ形状の平面配
置により、礫や土砂が両川岸寄りに堆積易くなり、川幅
中央部のみずの流れを比較的妨げにくい利点がある。
【0041】さらに、実施形態6において、鉛直鋼管1
3からの水平力に対してアーチ効果によりアーチ部材で
ある上弦材11cの軸圧縮力で対向できるので、流木、
土砂・岩などによる衝撃に対して、より大きな堅牢性を
発揮できる点および、その他の作用効果は実施形態5と
同じである。
【0042】図7は、実施形態7を示す。この実施形態
7は請求項5、6に対応するもので、上弦材アーチのト
ラス桁で、基礎部がH形鋼とコンクリートよりなる合成
構造桁の例を示す。
【0043】実施形態7において、桁8dの構造およ
び、桁8dと鉛直鋼管13の上端部との支持構造は、実
施形態6と略同じであり、同一要素には同一符号を付し
て説明を省略する。また、この実施形態7では、鉛直鋼
管13の下端は、実施形態1と同様、基礎部コンクリー
ト10に埋設固定されている。
【0044】実施形態7では、基礎部コンクリート10
中に、川幅方向に伸長して、例えば、H形鋼、鉄筋、他
の形鋼などからなる圧縮鉄骨材28が2本埋設固定され
ている。
【0045】実施形態7における構造特性は、鉛直鋼管
13で受け止めた堆積圧や、土石流の水平力を鉛直鋼管
13の下端にて地盤に伝達して処理する機構において、
基礎部コンクリート10を介して直接下方の地盤へ伝達
する力の流れだけでなく、基礎部コンクリート10自体
を、両堤体7間を連結する桁構造として当該両堤体7へ
伝達し、両堤体7から地盤へ伝達する力の流れを加えた
ことである。これに関連して、前述のように、基礎部コ
ンクリート10が鉄骨材28等で補強されて合成構造桁
あるいは鉄筋コンクリート桁として構成されているの
で、当該基礎部コンクリート10は、前記力の流れを確
実に受け止めることが出来る。
【0046】図8は、実施形態8を示す。この実施形態
8は請求項7に対応するもので、柱列式鋼製スリットダ
ムにおける基礎部桁がトラス構造の例を示す。すなわ
ち、実施形態8では、図に示すように、コンクリート製
の河川床3に所定幅の凹部29を川幅方向に伸長して設
け、この凹部29に礫、砂利などの埋め戻し30を打設
し、この埋め戻し30の中に平行配置の上弦材31、3
1aの間を斜材32で連結してなる基礎部鋼トラス桁3
3を川幅方向に伸長して埋設し、当該両端をコンクリー
ト製の堤体7に埋設固定する。基礎部鋼トラス桁33
は、これに代えてラーメン桁であってもよい。
【0047】複数本の鉛直鋼管13の下端は、前記基礎
部鋼トラス桁33における上弦材31の上流側の側面に
締結バンド方式、溶接など任意の固定手段で固定する。
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一部
分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0048】実施形態8における構造特性は、鉛直鋼管
13で受け止めた堆積圧や、土石流の水平力を鉛直鋼管
13の下端にて地盤に伝達して処理する機構において、
基礎部を両堤体7へ伝達し、基礎部鋼トラス桁33がプ
レファブ部材の組み立てで築造でき、基礎部コンクリー
ト工事が不要で、礫、砂利の埋め戻しで良いので、急速
施工、現場省力化ができ、建設費の削減が可能となる。
【0049】図9は、実施形態9を示す。この実施形態
9は請求項8に対応するもので、柱列式鋼製スリットダ
ムにおける柱列配置の鉛直鋼管13の高さ方向中間部
に、下流側の側面から、中間水平梁部材34を固着した
ことである。中間水平梁部材34は、丸鋼管、角鋼管、
極厚H形鋼、コンクリート充填鋼管等でも良い。
【0050】中間水平梁部材34の鉛直鋼管13への連
結手段は任意でよいが、図9(D)、(E)の例では、
U型鋼板締結治具(鋼板バンド)14を用いて、中間水
平梁部材34の外周を抱え込み、他方、コ字型ねじ付き
丸棒締結治具15で鉛直鋼管13を抱持し、丸棒締結治
具15の両端ねじ部を、鋼板締結治具14の両端フラン
ジ14aに開設のねじ棒挿入孔に挿入した上、ナット1
6を締結することで、中間水平梁部材34が、柱列の複
数の鉛直鋼管13の下流側の側面に固着されている。な
お、この鋼板バンド方式の締結構造に代えて、鞘管接合
としても良い。
【0051】実施形態9のその他の構成は、実施形態1
と同じであるので、同一部分に同一符号を付して、重複
説明を省略する。
【0052】実施形態9における構造特性は、鉛直鋼管
13で受け止めた堆積圧や、土石流の水平力を鉛直鋼管
13の下端にて地盤に伝達して処理する機構において、
土石流の衝撃に対し、一本の鉛直鋼管13が個々に抵抗
するのではなく、中間水平梁部材34によって、複数本
の鉛直鋼管13が一体となった格子構造となるので、こ
の複数本の鉛直鋼管13で衝撃エネルギーを確実に吸収
できる。
【0053】図10は、実施形態10を示す。この実施
形態10は請求項8に対応するもので、柱列配置の鉛直
鋼管13の高さ方向中間部に、実施形態9における中間
水平梁部材34に代えて、水平ケーブル35を配設した
中間部水平ケーブルの例を示す。
【0054】水平ケーブル35の鉛直鋼管13への配設
態様は任意でよい。図示例では、所定間隔で川幅方向に
配設の鉛直鋼管13を縫うように、行きと帰りの2本の
水平ケーブル35をジグザグに斜め方向に配置すること
により、各鉛直鋼管13同士の連結を強めて、その河川
軸直角方向の変位、水平力を隣接する鉛直鋼管13に伝
え易くしている。
【0055】実施形態10のその他の構成は、実施形態
6と同じであるので、同一部分に同一符号を付して、重
複説明を省略する。
【0056】つぎに、図11の実施形態11を説明す
る。この実施形態11は、請求項9に対応し、上流側の
鉛直部材が鉛直ケーブル(またはワイヤー)13aで、
下流側が鉛直鋼管13の例を示す。実施形態11の鋼製
スリットダムにおける桁8の構成と、下流側の鉛直鋼管
13の構成は、実施形態1と同じである。
【0057】川幅方向に所定の間隔で複数鉛直に配設し
た上流側の鉛直ケーブル13aの下端部を、基礎部コン
クリート10に固着し、上端部を桁8に固着する。
【0058】その具体的な固着手段は任意でよいが、図
示例では、図3(実施形態3)の場合と同様に、鉛直ケ
ーブル13aの上下端部にねじ部が設けられていて、下
端は、基礎部コンクリート10に埋設のアンカー金物2
3に引締金具(例えば、ターンバックルなど)24を介
して連結する。また、鉛直ケーブル13aの上端は、上
弦材11を上下に貫通して設けた挿通孔に挿通させた
上、当該上弦材11の上部において、鉛直ケーブル13
aの上端ねじ部に定着ナット25を締付けることによ
り、基礎部コンクリート10と桁8との間に鉛直ケーブ
ル13aを張設する。
【0059】実施形態11によると、鉛直ケーブル13
aの優れた、たるみ変形を利用して、上流側において、
土石流の衝撃力を一次的にこの鉛直ケーブル13aで吸
収し、最終的に下流側の鉛直鋼管13で受け止めるもの
で、大きな衝撃力を簡易な構造で、かつ効果的に緩衝さ
せる構造として有利である。鉛直ケーブル13aのその
他の利点は、実施形態3で説明したのと同じである。
【0060】つぎに、図12の実施形態12を説明す
る。この実施形態12は、請求項10に対応し、鉛直部
材が上流側と下流側で千鳥の鉛直鋼管13の例を示す。
実施形態12の鋼製スリットダムにおける桁8の構成
と、鉛直鋼管13の上端と下端の固定構造は、実施形態
1と同じである。
【0061】すなわち、川幅方向に所定の間隔で複数鉛
直に配設した上流側と下流側の鉛直鋼管13は、平面千
鳥配置であり、かつ上流側の鉛直鋼管13は上弦材11
の上流側の側面に固着され、下流側の鉛直鋼管13は下
弦材11aの下流側の側面に固着されている。
【0062】つぎに、図13の実施形態13を説明す
る。この実施形態13は、請求項11に対応し、複数本
の鉛直鋼管13が1群(1単位)(テ)となって、桁8
eの上流側と、下流側に千鳥配置に設けられた例が示さ
れている。桁8eは、斜材12で連結された上弦材11
と下弦材11aと上流側上部弦材11dとからなり、側
面L形に構成されていて、この桁eの上弦材11の上流
側の中央部に3本の鉛直鋼管13の1群(テ)が配置さ
れていると共に、桁8eの下弦材11aの下流側の中央
部を除く両側に、それぞれ3本の鉛直鋼管13が1群
(テ)をなして配置されている。他の構成は、図12の
実施形態12と同じである。
【0063】実施形態13によると、複数本の鉛直鋼管
13を1群(1単位)(テ)として、その1群(1単
位)(テ)を桁8eの上流側中央部と、下流側両側部に
設けることで、川幅中央部と両川岸部のそれぞれの砂礫
の堆積位置をずらすことにより、砂礫が堆積した後も、
川幅中央付近の水の流れを確実に維持できる。
【0064】つぎに、図14の実施形態14を説明す
る。この実施形態14は、請求項12に対応し、桁8の
上弦材11の上流側の中央部に配置されている、3本の
鉛直鋼管13の1群(テ)が、両端を上弦材11に固着
した平面コ字形の支持枠36の頂部枠36aに固着され
ており、頂部枠36aと上弦材11の間が斜材12で連
結されている。また、平面コ字形の支持枠36内におい
て、上弦材11に2本の鉛直鋼管13が間隔を離して設
けられている。他の構成は、図13の実施形態13と略
同じである。
【0065】実施形態14によると、桁8の上流側中央
部に配置の複数本の鉛直鋼管13の1群(1単位)
(イ)を、上弦材11から所定距離だけ上流側に離して
設けて、砂礫積層位置の河川軸方向ずれ距離を長くする
ことで、砂礫堆積後も、川幅中央付近の水の流れをより
確実に維持できる。
【0066】次に、図15は、実施形態15を示し、請
求項13に対応する。実施形態15の桁8dがアーチ形
状のトラス桁である等、その基本構造は、実施形態6と
同じであるが、ダム柱列を構成する鉛直鋼管13の下端
部を基礎部コンクリート10に支持する構造が実施形態
6と相異する。この鉛直鋼管13の下端部の支持構造は
図16(A)〜(J)に示すように、鞘管接合、略ヒン
ジ構造など各種方法があり、以下順に説明する。
【0067】図16(A)〜(D)は、鉛直鋼管13の
下端を、川底の基礎部コンクリート10に埋め込まれた
接合鋼管38に挿入する鞘管接合する例が示されてい
る。
【0068】同図(A)〜(D)において、接合鋼管3
8は、鉛直鋼管13の外寸法に充填材が充填できる隙間
を形成できる内寸法を有する。また、この接合鋼管38
への鉛直鋼管13の突込み長は、一般に当該鉛直鋼管1
3の外寸法以上を確保すれば、固定端として曲げモーメ
ントを地盤側へ伝達できる。また、この場合、接合鋼管
38の周胴を貫通するねじ部を介して複数の調整ねじ3
9を4方から螺入し、調整ねじ39の先端を鉛直鋼管1
3の外周に当接することで、鉛直鋼管13の芯出し、設
置位置の調整ができる。
【0069】鉛直鋼管13の芯出し、設置位置の調整の
後、接合鋼管38との間隙に充填材40として、例え
ば、セメント系のモルタル、コンクリートを用いて充填
することで、低コストで鞘管接合として、固定鞘を実現
できる。なお、充填材40はエポキシ樹脂等の充填後固
化するプラスチック系の充填材でもよい。
【0070】図16(E)、(F)には、鉛直鋼管13
の下端を、川底の基礎部コンクリート10に埋め込まれ
た接合鋼管38に上下スライド自在に接合する例が示さ
れている。同図に示すように、川底の基礎部コンクリー
ト10に底蓋41のある接合鋼管38を埋め込むと共
に、鉛直鋼管13の下端外周にグリースやコンクリート
はくり剤等の潤滑材、あるいは粘性のある樹脂よりなる
スライド層42を設け、さらに、鉛直鋼管13の下端開
口を鉛直鋼管底蓋43で閉塞する。そして、接合鋼管3
8に、鉛直鋼管13の下端を間隙を有して挿入し、この
間隙にセメント系のモルタル、コンクリートなどからな
る充填材40を充填する。
【0071】このスライド構造によると、鉛直鋼管13
は充填材40を介して接合鋼管38に挿入されているこ
とで、水平方向に対しては固定される。一方、上下方向
に対しては、鉛直鋼管13の下端外周のスライド層42
の存在により、充填材40に対するせん断抵抗が小さい
ので、鉛直鋼管13を解体するときは、当該鉛直鋼管1
3を容易に引抜くことができる。この場合、鉛直鋼管1
3を加振することにより、さらに引抜きが容易になる。
【0072】図16(G)、(H)には、鉛直鋼管13
の下端を、川底の基礎部コンクリート10に対し略ヒン
ジ構造で結合した例1を示す。すなわち、この例1で
は、鉛直鋼管13の下端を基礎部コンクリート10の上
面に当てがい、基礎部コンクリート10の上面から立上
り、かつ鉄筋44で補強され、または、鋼板や鉄骨で補
強したコンクリート製などの横断面半円状の基礎突起部
45を、鉛直鋼管13の下端外周部に当接した略ヒンジ
構造の例を示す。
【0073】基礎突起部45の内周側の上端部に断面L
字形の絶縁金物49が設けられ、この絶縁金物49で、
鉛直鋼管13が回転変位を生じたときのコーナー部への
支圧集中を補強している。
【0074】図16(G)、(H)例では、鉛直鋼管1
3の下端の水平力を、基礎突起部45と鉛直鋼管13と
の接触部の支圧で受け、基礎部コンクリート10へ伝達
する。
【0075】図16(I)、(J)には、鉛直鋼管13
の下端の略ヒンジ構造の例2が示されている。この例2
では、基礎部コンクリート10に鞘管底蓋46のある鞘
管47を埋設し、鉛直鋼管13を鞘管47に挿入して、
その先端を鞘管底蓋46に当てがったうえ、鉛直鋼管1
3と鞘管47の間隙に砂利等の骨材48を充填する。
【0076】図16(I)、(J)の例では、充填骨材
48が鞘管47に拘束されているので、鉛直鋼管13下
端の水平力を基礎部コンクリート10ヘ伝達する強度を
有する。また、骨材48は粒子間がずれて変形し易いの
で、鉛直鋼管13が土石流等により衝撃を受けた場合の
回転変位に対する抵抗が小さく、略ヒンジ構造となる。
また、骨材48の変形性により、土石流衝撃力に対する
緩衝作用も有する。
【0077】図17は、実施形態16を示す。この実施
形態16は請求項15に対応するもので、柱列式鋼製ス
リットダムにおける桁に、鉄筋コンクリートスラブが設
けられた例が示されている。すなわち、実施形態16で
は、トラス構造の桁8の上部に、その全長に渡り、所定
厚の鉄筋コンクリートスラブ50が乗載されていて、そ
の両端は両堤体7と同一レベルに設けられ、かつこれに
一体に結合されている。鉄筋コンクリートスラブ50の
両端には、欄干、手摺り51が設けられている。
【0078】鉄筋コンクリートスラブ50は、単に桁8
の上に載せるだけでよく、その自重は、複数本の鉛直鋼
管13で支持するが、桁8の曲げモーメントが小さくな
り、合理的である。鉄筋コンクリートスラブ50から鉛
直鋼管13への自重伝達は、図のように桁8を介して行
ってもよいし、鉄筋コンクリートスラブ50と鉛直鋼管
13の上端とを接続して、直接伝達してもよい。その他
の構成は、実施形態1と同じであるので、同一部分に同
一符号を付して、重複説明を省略する。
【0079】実施形態16よると、鉄筋コンクリートス
ラブ50と堤体7の天端部との通行が容易となり、河川
を横断可能な歩廊とすることができる。さらに、コンク
リートスラブ50上で憩う公園とすることもできる。
【0080】図18は、実施形態17を示す。この実施
形態17も請求項15に対応するもので、柱列式鋼製ス
リットダムにおける桁に、鉄筋コンクリートスラブ50
が一体に設けられた例が示されている。実施形態17で
は、鋼桁8eの上弦材11と下弦材11aの上面に頭付
きスタッド52が設けられていて、鉄筋コンクリートス
ラブ50の打設時、頭付きスタッド52をその中に埋設
させることにより、当該鉄筋コンクリートスラブ50と
鋼桁8eを一体化している。その他の構成は、実施形態
16と略同じである。
【0081】実施形態17においては、前述のようにし
て、鉄筋コンクリートスラブ50と鋼桁8eを一体化す
ることにより、スラブ50が鋼桁8eの斜材あるいはウ
ェブとなって、水平剪断力を伝達することが可能とな
り、桁の斜材あるいはウェブを省略することが可能とな
る。また、スラブ50が、水平方向の曲げモーメントを
伝達することにより、鋼桁8eの曲げ性能を補強し、桁
部材を小さくすることができる。
【0082】図19は、実施形態18を示し、請求項1
6、17に対応する。実施形態18においては、鉛直鋼
管13の下端がヒンジ構造で、上端がケーブル支持構造
の例が示されている。すなわち、鉛直鋼管13の下端の
ヒンジ構造においては、下部支持部材53の下部が基礎
コンクリート10に埋設されており、この下部支持部材
53に、トラス構造桁8の下弦材11aの下流側に配置
されている鉛直鋼管13の下端部が連結ピン54で枢着
されている。
【0083】また、桁8の下弦材11aの下流側に設け
られた鉛直鋼管13の上端は、当該下弦材11aに設け
たケーブル定着具55から引き出したケーブル56をケ
ーブルガイド治具65を介して、鉛直鋼管13の外周を
ケーブルガイド66の上から押えるようジグザグ配置
し、このジグザグ配置のケーブル56で鉛直鋼管13
を、桁8側に押えて支持している。
【0084】実施形態18における第2の構造特性は、
鉛直鋼管13の上端を図示のように、ジグザグ配置のケ
ーブル56で連続して連結することにより、土石流の個
々の礫の衝撃に対し、ケーブル56の全長の伸びによ
り、エネルギー吸収でき、緩衝作用に優れる。また、堆
積物を除去するとき、ケーブル56を切るか、外すこと
により、鉛直鋼管13を容易に下流側に倒すことがで
き、堆積物が下流側に崩れて、この堆積物を容易に除去
できる。
【0085】図20は、実施形態19を示す。この実施
形態19は請求項16、17に対応するもので、柱列式
鋼製スリットダムにおける鉛直鋼管13の下端が略ヒン
ジ構造の例(その1)が示されている。すなわち、実施
形態19においては、図20に示すように、鉛直鋼管1
3の下端を基礎コンクリート10の上面に当てがい、基
礎コンクリート10の上面から立上り、かつ鉄筋44で
補強され、または、鋼板や鉄骨で補強したコンクリート
製などの横断面半円状の基礎突起部45を、鉛直鋼管1
3の下端外周部に当接した例を示す。実施形態19にお
いて、鉛直鋼管13の上端をケーブル56でトラス桁8
に支持させること、その他の構成は、実施形態18の構
成と同じであるので、同一要素に同一符号を付して、説
明を省略する。
【0086】実施形態19によると、鉛直鋼管13に土
石流により衝撃が加わったとき、当該鉛直鋼管13は、
基礎突起部45の上端との支圧接触部(ア)を支点とし
て下流側に傾倒して、その衝撃を緩衝することができ
る。なお、支圧接触部(ア)付近の鉛直鋼管13は鋼材
で補強するか、あるいは、コンクリートを充填して局部
的な支圧に抵抗できるようにするのがよい。
【0087】図21は、実施形態20を示す。この実施
形態20も請求項16、17に対応するもので、柱列式
鋼製スリットダムにおける鉛直鋼管13の下端が略ヒン
ジ構造の例(その2)が示されている。
【0088】すなわち、実施形態19においては、基礎
コンクリート10に鉛直鋼管13より大径で、底蓋57
と上蓋58のあるガイド容器59を埋設し、鉛直鋼管1
3の下端部をガイド容器59に挿入して、その先端を底
蓋57に当てがったうえ、上蓋58で鉛直鋼管13の周
囲を押さえる。上蓋58には、鉛直鋼管13の半周を押
さえる凹部60が形成してあり、蓋先端縁61はストレ
ートに形成され、鉛直鋼管13の残る半周とガイド容器
59との間には、図示の態様で、モルタルまたはコンク
リートの充填材40が充填されている。ガイド容器59
内の他の部分は内部空間部62とされている。なお、鉛
直鋼管13内には下端からレベル63の高さまで、補強
コンクリートを充填するとよい。
【0089】実施形態19では、鉛直鋼管13に土石流
により衝撃が加わったとき、鉛直鋼管13は、図21
(C)のように下流側に傾倒して、その衝撃を緩衝する
ことができる。また、(ミ)の部位を支点として、副鉛
直鋼管17を下流側に傾倒させることで当該礫を容易に
除去できる。このとき、上蓋55は(シ)の部位を支点
として上方に持ち上げられる。
【0090】図22は、実施形態21を示す。この実施
形態21は請求項18に対応するもので、柱列式鋼製ス
リットダムにおける鉛直鋼管13の下端が略ヒンジ構造
で、上端がケーブル支持構造の例が示されている。実施
形態21における基本構造は図19の実施形態18と同
一なので、同一要素に同一符号を付して説明を省略す
る。
【0091】この実施形態21では、鉛直鋼管13の上
端がケーブル56で支持されている点は、前述のとお
り、図19の実施形態18と類似しているが一部相異し
ている。つまり、実施形態18では、ケーブル56の両
端を桁8の下弦材11aに固定している。これに対し、
実施形態21ではケーブル56の一端を下弦材11aに
固定し、ケーブル56の他端を堤体7に設けた電動また
は手動巻取りドラムなどからなる巻取り装置64に巻き
取っている。ケーブル定着具55、ケーブルガイド冶具
65、ケーブルガイド66の構成は図19と同じであ
る。
【0092】実施形態21では、ケーブル56を介して
桁8と鉛直鋼管13とが結合されていることで、この両
部材で土石流の衝撃を確実に受け止めることができる。
また、捕捉され溜まった土砂・岩を除去する時は、前記
ケーブル56を緩め、かつ、図22(C)に示すよう
に、ヒンジ構造としての連結ピン54を介して、鉛直鋼
管13を同時にまたは、前以て撤去するように作業する
ことで、その土砂・岩の除去作業が容易となる。つま
り、全部の鉛直鋼管13が川底に固着されていて、その
間隙に土砂・岩が絡まったのを除去する場合に比べて、
その除去作業能率は著しく向上する。また、鉛直鋼管1
3が岩塊の衝突により変形した場合にも、この鉛直鋼管
13を取替えることが容易である。
【0093】図23は、実施形態22を示す。この実施
形態22は請求項20に対応するもので、柱列式鋼製ス
リットダムにおける鉛直鋼管13の上端にフランジ接合
により増設用鉛直鋼管を増設可能に設けた例が示されて
いる。なお、実施形態22における基本構造は図1の実
施形態1と同一なので、同一要素に同一符号を付して説
明を省略し、以下では、相違する構成のみを説明する。
【0094】実施形態22では、前述のとおり、河川上
流側の鉛直鋼管13の上端に将来増設用鉛直鋼管67が
接合可能に設けられるもので、このため、河川上流側の
鉛直鋼管13の上端に増設用鉛直鋼管67のフランジ接
合部68が設けられている。
【0095】フランジ接合部58を構成するため、図2
4に示すように、河川上流側の鉛直鋼管13の上端と、
増設用鉛直鋼管67の下端には、フランジ69a,69
bを溶接してあり、鉛直鋼管13の上端と、増設用鉛直
鋼管67の下端を結合するときは、両フランジ69a,
69bを接合し、かつ両フランジ間を高張力ボルト70
などで結合することにより、強力かつ堅牢に結合でき
る。
【0096】鉛直鋼管13の上端の将来増設用の接合部
68は、増設用鉛直鋼管67を接合するまでは、図24
(A)に示すように、閉塞フランジ71などで閉塞して
おくのがよい。
【0097】実施形態22においては、柱列式鋼製スリ
ットダムの使用中に、砂礫の堆積が桁8の高さを超える
可能性が生じた時に初めて、増設用鉛直鋼管67の鉛直
鋼管13の上端への連結を容易に行えるようにしてい
る。したがって、実施形態22によると、当初建設時
は、砂礫の堆積高さの経時変化を予測しにくいので、初
期建設費を低く押さえ、景観を考慮した設計ができる。
【0098】また、各部材は、将来増設を考慮して設計
されるが、鉛直鋼管13の増設部である増設用鉛直鋼管
67は河川軸方向の桁8の上端より上が片持ち梁となる
ので、当該桁8より下の鉛直鋼管13は、増設前の曲げ
モーメントと反対方向の曲げモーメントが生ずるため
に、将来増設を考慮してもあまり変わらない。
【0099】実施形態22によると、土砂・岩は、上流
側の複数の鉛直鋼管13で形成される間隙9に絡まって
捕捉されると共に、捕捉され溜まった土砂・岩が満砂と
なったときは、増設用の接合部68を介して既設構造の
上部に将来増設用鉛直鋼管を接合することで、その後の
土石流の引き続いての捕捉に容易に対処できる。
【0100】
【発明の効果】本発明によると、堤体と、堤体に連結の
桁と、桁と基礎部に連結の柱列状鉛直部材とからなる鋼
製スリットダムは、構造が可及的に簡易化、堅牢化され
ているので、これに伴い、鋼材量や製作コストの低減
化、製作と部材交換の容易性、設計の自由度の向上、基
礎構造コストの低減化、スリットダムへの建設機械、作
業員の接近のしにくさなどが改良される。さらに、ダム
に捕捉し溜まった土砂・岩の除去の容易性、捕捉し溜ま
った土砂・岩の除去の容易性、それに伴う満砂状態にな
った時の新設ダムの不要による経済性の向上、構造主材
の土石流による衝撃の直接の受けにくさ、部材の変形の
しにくさ、岩塊の衝突、落下による変形のしにくさ、巨
岩の捕捉の確実性等が達成される等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は実施形態1に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は同図(A)の上流側から見た縦断正面
図、(C)は、同図(A)のイ−イ断面説明図、(D)
は鉛直鋼管同士のフランジ接合部の部分拡大図、(E)
は鉛直鋼管と桁の接合部の縦断部分拡大図、(F)は鉛
直鋼管と桁の接合部の横断部分拡大図である。
【図2】(A)は実施形態2に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦断正
面図、(C)は、同図(A)のロ−ロ断面説明図のであ
る。
【図3】(A)は実施形態3に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦断正
面図、(C)は、同図(A)のヤ−ヤ断面説明図のであ
る。
【図4】(A)は実施形態4に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦断正
面図、(C)は、同図(A)のハ−ハ断面説明図であ
る。
【図5】実施形態5に係る鋼製スリットダムの平面図で
ある。
【図6】実施形態6に係る鋼製スリットダムの斜視図で
ある。
【図7】(A)は実施形態7に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦断正
面図、(C)は、同図(A)のニ−ニ断面説明図、
(D)は、同図(B)のホ−ホ断面説明図である。
【図8】(A)は実施形態8に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦断正
面図、(C)は、同図(A)のヘ−ヘ断面説明図、
(D)は、同図(B)のト−ト断面説明図である。
【図9】(A)は実施形態9に係る鋼製スリットダムの
平面図、(B)は同図(A)の上流側から見た縦断正面
図、(C)は、同図(A)のチ−チ断面説明図、(D)
は鉛直鋼管と桁の接合部の縦断部分拡大図、(E)は鉛
直鋼管と桁の接合部の横断部分拡大図である。
【図10】実施形態10に係る鋼製スリットダムの斜視
図である。
【図11】(A)は実施形態11に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のリ−リ断面説明図で
ある。
【図12】(A)は実施形態12に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のヌ−ヌ断面説明図で
ある。
【図13】(A)は実施形態13に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のル−ル断面説明図で
ある。
【図14】(A)は実施形態14に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のヲ−ヲ断面説明図で
ある。
【図15】実施形態15に係る鋼製スリットダムの斜視
図である。
【図16】実施形態15における鉛直鋼管の下部構造の
各種例を示し、(A)は鉛直鋼管下端部の鞘管接合部の
横断面図、(B)は同(A)のワ−ワ縦断面図、(C)
は鉛直鋼管下端部の充填材充填後の鞘管接合部の横断面
図、(D)は同(C)のカ−カ縦断面図、(E)は水平
材と鉛直鋼管の鞘管接合部の横断面図、(F)は同
(E)のヨ−ヨ縦断面図、(G)は鉛直鋼管下端部の略
ヒンジ構造の第1例の横断面図、(H)は同(G)のタ
−タ縦断面図、(I)は鉛直鋼管下端部の略ヒンジ構造
の第2例の横断面図、(J)は同(I)のレ−レ縦断面
図である。
【図17】(A)は実施形態16に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のソ−ソ断面説明図で
ある。
【図18】(A)は実施形態17に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のツ−ツ断面説明図、
(C)は、桁とコンクリートスラブとの結合部の縦断部
分拡大図である。
【図19】(A)は実施形態18に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のネ−ネ断面説明図で
ある。
【図20】(B)は、実施形態19に係る鋼製スリット
ダムの下流側からみた縦断正面図、(A)は同図(B)
のサ−サ断面説明図、(C)は、同図(A)のナ−ナ断
面説明図、(D)は鉛直鋼管下端部の略ヒンジ構造の横
断面図、(E)は同(D)の中央部縦断面図である。
【図21】(B)は、実施形態20に係る鋼製スリット
ダムの下流側からみた縦断正面図、(A)は同図(B)
のキ−キ断面説明図、(C)は、同図(A)のラ−ラ断
面説明図、(D)は鉛直鋼管下端部の略ヒンジ構造の横
断面図、(E)は同(D)の中央部縦断面図である。
【図22】(A)は実施形態21に係る鋼製スリットダ
ムの平面図、(B)は、同図(A)の上流側からみた縦
断正面図、(C)は、同図(A)のム−ム断面説明図で
ある。
【図23】実施形態22に係る鋼製スリットダムの斜視
図である。
【図24】実施形態22における鉛直鋼管上端のフラン
ジ接合部を示し、(A),(B),(C)は、それぞれ当
初建設時、増設途中、増設後の状態を示す詳細図であ
る。
【図25】(A)は、従来例1の鋼製スリットダムの平
面図、(B)は、同図(A)のノ−ノ断面説明図であ
る。
【図26】(A)は、従来例2の鋼製スリットダムの平
面図、(B)は、同図(A)のオ−オ断面説明図であ
る。
【符号の説明】
1 河川 2 立体フレーム 2a 棒状部材 2b 棒状部材 3 河川床 4 主柱 5 控材 6a 継ぎ梁 6b 継ぎ梁 7 (コンクリート)堤体 8 桁 8a 桁 8b 桁 8c 桁 9 間隙 10 基礎部コンクリート 11 上弦材 11a 下弦材 11c アーチリブ 12 斜材 13 鉛直鋼管 13a 鉛直ケーブル 14 U型鋼板締結治具 14a フランジ 15 コ字型ねじ付き丸棒締結治具 16 ナット 17 フランジ接合部 18 フランジ 19 高張力ボルト 20a 上流側フランジ鋼板 20b 下流側フランジ鋼板 21 水抜き孔 22 ウェブ鋼材 23 アンカー金物 24 連結金具 25 定着ナット 26 ラーメン垂直材 27 アーチ材 28 鉄骨材 29 凹部 30 埋め戻し 31 上弦材 31a 下弦材 32 斜材 33 基礎部鋼トラス桁 34 中間水平梁部材 35 ケーブル 36 支持部材 37 頂部枠 38 接合鋼管 39 調整ねじ 40 充填材 41 底蓋 42 スライド層 43 鉛直鋼管底蓋 44 鉄筋 45 基礎突起部 46 鞘管底蓋 47 鞘管 48 骨材 49 絶縁金物 50 鉄筋コンクリートスラブ 51 手摺 52 頭付きスタッド 53 下部支持部材 54 連結ピン 55 ケーブル定着部 56 ケーブル 57 底蓋 58 上蓋 59 ガイド容器 60 凹部 61 蓋先端縁 62 内部空間部 63 レベル 64 巻き取り装置 65 ケーブルガイド冶具 66 ケーブルガイド 67 増設用鉛直鋼管 68 接合部 69a フランジ 69b フランジ 70 高張力ボルト 71 閉塞フランジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高野 良広 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 (72)発明者 小林 茂雄 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両川岸に設置した堤体と、当該堤体と連
    結し両堤体間を川幅方向に渡した桁と、当該桁と川底位
    置の基礎部とに連結し、所要の川幅方向間隔で鉛直部材
    を柱状に配置したことを特徴とする柱列式の鋼製スリッ
    トダム構造。
  2. 【請求項2】 前記鉛直部材が鋼管よりなることを特徴
    とする請求項1記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  3. 【請求項3】 前記鉛直部材がケーブルよりなることを
    特徴とする請求項1記載の柱列式の鋼製スリットダム構
    造。
  4. 【請求項4】 前記桁が水平面内のトラス構造あるいは
    水平面内のラーメン構造であることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれか1項に記載の柱列式の鋼製スリットダ
    ム構造。
  5. 【請求項5】 前記桁が上流側に張出した水平面アーチ
    からなり、アーチリブに沿って前記鉛直部材を配置した
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    柱列式の鋼製スリットダム構造。
  6. 【請求項6】 前記鉛直部材の下端の基礎部が、両川岸
    に設置した堤体を川幅方向に渡し、両堤体と連結した桁
    構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1
    項に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  7. 【請求項7】 基礎部の桁が水平面内のトラス構造ある
    いは、水平面内のラーメン構造あるいは水平面アーチ構
    造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項
    に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  8. 【請求項8】 前記鉛直部材の高さ方向中間部を連続し
    た水平桁部材あるいは水平ケーブルで連結し、鉛直面格
    子構造としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    1項に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  9. 【請求項9】 前記桁の上流側には鉛直ケーブルを配置
    し、下流側には鉛直部材を配置したことを特徴とする請
    求項1〜8のいずれか1項に記載の柱列式の鋼製スリッ
    トダム構造。
  10. 【請求項10】 前記桁の上流側および下流側には、上
    流側と下流側で千鳥になるように鉛直部材を配置したこ
    とを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の柱
    列式の鋼製スリットダム構造。
  11. 【請求項11】 前記桁の上流側には、川幅中央部のみ
    に鉛直部材を配置し、下流側には、前記川幅中央部を除
    いて全川幅にわたり鉛直部材を配置したことを特徴とす
    る請求項1〜9のいずれか1項に記載の柱列式の鋼製ス
    リットダム構造。
  12. 【請求項12】 前記桁の川幅中央部より上流側ヘ水平
    圧縮部材を伸ばし、川幅中央部の鉛直部材を当該水平圧
    縮部材の端部と連結し、上流側に張出して設置したこと
    を特徴とする請求項1〜9または請求項11のいずれか
    1項に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  13. 【請求項13】 前記鉛直部材の下端が基礎コンクリー
    トに埋め込まれた鋼管との鞘管接合、つまり、鉛直部材
    断面が内側に収まる内径を有する鋼管内に鉛直部材を所
    要の長さ建て込んだ後、骨材系あるいはセメント系ある
    いは樹脂系の充填材を充填した接合であることを特徴と
    する請求項1、2または請求項4〜12のいずれか1項
    に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  14. 【請求項14】 前記鉛直部材の下端と基礎部との連結
    部を、略ヒンジ構造つまり、基礎部に鉛直部材からの水
    平力を支圧伝達する鉛直面部を設け、鉛直部材の下端の
    下流側側面と接触させるように設置しただけの簡易構造
    としたことを特徴とする請求項1、2または請求項4〜
    12のいずれか1項に記載の柱列式の鋼製スリットダム
    構造。
  15. 【請求項15】 前記桁の上に鉄筋コンクリートスラブ
    を設けたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1
    項に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  16. 【請求項16】 前記鉛直部材を前記桁の下流側に連結
    し、前記鉛直部材下端の基礎部との連結部をヒンジ構造
    あるいは略ヒンジ構造としたことを特徴とする請求項
    1、2または請求項4〜15のいずれか1項に記載の柱
    列式の鋼製スリットダム構造。
  17. 【請求項17】 前記鉛直部材を前記桁の下流側に配置
    し、当該鉛直部材の1本あるいは複数本の上端を桁より
    連続し、かつジグザグ配置のケーブルで桁側に押えて支
    持し、前記鉛直部材下端の基礎部との連結部をヒンジ構
    造あるいは略ヒンジ構造としたことを特徴とする請求項
    16に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  18. 【請求項18】 前記鉛直部材を前記桁の下流側に配置
    し、当該鉛直部材の1本あるいは複数本の上端を桁より
    連続し、かつジグザグ配置のケーブルで桁側に押えて支
    持し、前記鉛直部材下端の基礎部との連結部をヒンジ構
    造あるいは略ヒンジ構造とし、当該ケーブルをケーブル
    巻き取り装置から引き出して下流側に倒すことができる
    ように、あるいはケーブル巻き取り装置に巻き取って鉛
    直方向ヘ起こすことができるようにしたことを特徴とす
    る請求項17に記載の柱列式の鋼製スリットダム構造。
  19. 【請求項19】 前記鉛直部材の下端および上端と、基
    礎コンクリートおよび前記桁との接合部を鞘管接合と
    し、前記鉛直部材と鞘管との間には骨材系、セメント
    系、あるいは樹脂系の充填材を充填して、水平力を水平
    伝達可能に構成し、前記鉛直部材と前記充填材との境界
    面には潤滑材あるいは樹脂層からなるスライド層を設け
    て、上方に引抜き可能に構成することを特徴とする請求
    項1、2または請求項4〜13のいずれか1項に記載の
    柱列式の鋼製スリットダム構造。
  20. 【請求項20】 前記鉛直部材の上部に、増設用鉛直部
    材の接合部を設けたことを特徴とする請求項1、2また
    は請求項4〜14のいずれか1項に記載の柱列式の鋼製
    スリットダム構造。
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