JP4765965B2 - 護岸一体ラーメン橋梁及びその施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中小河川上等に建設される道路橋、歩道橋、鉄道橋、人工地盤等に用いられる護岸一体型下部工(基礎及び橋脚)と上部工を剛結して成る護岸一体ラーメン橋梁及びその施工方法に関する。
なお、本明細書において、ラーメン橋梁の中には、車両が通過する橋梁の他に建築物が設置されるいわゆる人工地盤も含む。
最近の異常気象現象の一つとして地球温暖化に伴い集中豪雨が頻発化する傾向にあり、特に集中豪雨の頻発化は過去の洪水例の無い各地の中小河川流域で堤防決壊を招き、被災域が拡がる傾向にある。これらの傾向は田園地区や山間部で問題となっている。
一方、経済活性化の有力な手段の一つとしての都市部の再生が行われているが、都市河川護岸の改修やそれに伴う橋梁の増設、改良も緊急を要する課題となっている。
特に、市街地での洪水対策と交通渋滞対策が同時に行える護岸改修、橋梁建設乃至改修は、その実施による経済効果が高いとされている。
しかし、これらの工事はいずれも既存構造物が密集した地区での施工となることから、施工時に占有可能な面積が少なく、交通規制期間、区間を最小限とする急速施工可能な構造ならびにその施工法が必要とされている。
また、一般の中小河川においても洪水対策としての護岸の嵩上げ、河積の拡大は喫緊の課題である。
しかし、護岸の嵩上げは渡河橋の路面高をも上げることから取り付け道路の勾配を大きくし、路面凍結時等の車両走行性を阻害する要因となることから、桁高の低い渡河橋構造が求められる。加えて、このような地域の橋梁は、震災時には緊急避難路として重要な構造物であることから巨大地震に対しても耐震性の優れた構造であることが要求されている。
本発明に関する護岸一体型橋梁の先行技術として、特許文献1に開示された鋼・コンクリート合成ラーメン橋梁が挙げられる。
特許文献1に開示された鋼・コンクリート合成ラーメン橋梁は、頭部が地盤面より上方に延長された護岸壁体と、該護岸壁体の頭部と接合一体化された複数の鋼製床版橋パネルと、該床版橋パネル及び護岸壁体頭部を被覆するコンクリートと、から構成されている。
そして、護岸壁体として用いる連続地中壁の芯材に、フランジの内面に突起を設けたH形鋼を用いることにより、鋼部材と被覆コンクリートとのずれを拘束して剛性、強度を向上させている。
また、特許文献1の鋼・コンクリート合成ラーメン橋梁においては、護岸壁体と床版橋パネルとの接合方法として、床版橋パネルの底板に鉛直下方に延びる連結材を設け、これを護岸壁体の芯材であるH形鋼の頭部に対向配置して、現地においてコンクリートによって剛結一体化するという方法を用いている。
また、桁高を抑えた上部工と基礎の一体構造の橋梁として、非特許文献1に記載の上下部一体プレビーム合成桁橋が挙げられる。
非特許文献1においては、鉄骨芯材となる鋼桁にプレストレスを与えた状態で、該鋼桁を被覆するようコンクリートを打設し、コンクリート硬化後鋼桁のプレストレスを開放することにより被覆コンクリートにプレストレスを与え、桁高を低くした鋼・コンクリート合成桁の支点部を杭基礎の橋脚頭部に剛結することによりラーメン構造化して桁高を抑えるとともに建設費の削減と耐震性の向上が図られている。
また、橋梁に関するものではないが、護岸の水平抵抗を増加する構造に関して記載した先行文献として、非特許文献2および非特許文献3が挙げられる。
非特許文献2および3は二重鋼矢板壁工法に関するものであり、鋼矢板壁を二重にして用い、該鋼矢板内部の中詰め砂のせん断抵抗と鋼矢板の曲げ剛性により護岸の水平抵抗を増加する技術であり、岸壁や護岸に適用例が多い。
また、鋼矢板を用いて橋梁基礎を構築する先行技術としては、特許文献2に記載の鋼矢板併用式直接基礎の施工方法が挙げられる。
特許文献2においては、橋梁基礎フーチング構築に必要な地盤掘削時の土留め用の鋼矢板壁を地盤中に挿入して四角形断面の鋼矢板構造体を形成し、該鋼矢板構造体によって囲まれた空間内に鋼矢板構造体と結合するよう現地にてコンクリートを打設し土留め兼用鋼矢板壁を基礎構造本体の一部とするフーチングを形成している。そして、上方構造物から加えられる荷重の一部をフーチングにより直接に地盤に伝達させるとともに、上方構造物からの荷重の残りを鋼矢板構造体により支持層に伝達させるようにしている。
特許文献2においては、このような構造を採用することにより、施工工程を短縮し水平抵抗が高くかつN値30未満の地盤においても採用可能な直接基礎を提供している。
特開2007-23713号公報 川田技報, Vol.25, 2006, p84-85, インテグラルアバット形式でさらなるコストダウン〜上下部一体プレビーム合成桁橋の提案 二重鋼矢式構造物の力学的特性に関する研究、港湾技術研究所報告、No.23、1981、p103-151 隔壁型高剛性二重矢板壁の挙動特性、川崎製鉄技報、No.27、1995、p46-51 特開2003-138577号公報 鋼矢板併用式直接基礎、及び鋼矢板併用式直接基礎の施工方法、H15.5.14
一般に、護岸改修を必要とする中小河川の渡河橋梁、特に都市再生のための工事は、以下の課題を有する。
(1) 川幅が余り広くないため、護岸改修及び橋梁基礎の建設において工事施工用仮設備の設置幅に余裕がなく、施工中の河積の確保が難しい。また完成後も橋梁基礎の一部が河川流域内に構築せざるを得ず、河積の減少を招きやすい。
(2) 市街地内中小河川の場合、既存構造物が密集していることから施工のため占有可能な場所の確保が困難なことが多い。
(3) 建設資材の現地への搬入路が狭隘な道路になることが多い。
(4) 建設機械の据付場所、面積が限定されることが多いことから、比較的小型の揚重機を用いた小型部材の組み合わせによる現地架設となる場合が多い。
(5) 河川の高水位が高く、既存道路路面との間隔が狭くなることが多く、アプローチの縦断勾配の制限から桁高の低い上部工形式を必要とする。
(6) (5)の特徴に付随して、上部工施工のための支保工、型枠の設置が困難なことが多い。
(7)護岸後背の下部工設置場所が狭隘で、しかも施工のための道路占有面積を大きくとれない。
加えて、大規模地震時には渡河橋は住人の緊急避難路確保上重要であり、落橋あるいは致命的損傷は許されないことが多い。そのため、現在では多くの橋梁に落橋防止工が設けられているが、上記条件の多くは、落橋防止工の設置位置の確保を困難なものとしている。また、設置できても、供用後の機能を維持管理することが困難なことが多い。
上記のような中小河川の渡河橋梁、特に都市再生のための工事には上記のような課題があり、この課題は前述した従来技術によっていくつかは解決されているが、いまだ解決されていないものも多い。
そこで、以下においては、上記の中小河川の渡河橋梁工事の有する課題との関係で前述した従来技術の有する課題を検討する。
特許文献1に記載のものは、河川護岸と橋梁基礎を兼用するため、狭隘な都市河川等に適しており、また耐震性も優れたものである。
しかし、特許文献1のものは突起付きのH形鋼を芯材としてコンクリートによる連続壁を構築するものであり、コンクリート型枠の構築が必要となり、既存の護岸法線を生かして連続壁を構築しようとすると、型枠構築のための施工中には河積の減少をまねき、上記の(1)の課題を有している。
また、施工のための占有場所も広く必要であり、また資材も多いことからその搬入路の問題があり、上記の(2)(3)の課題も有している。
さらに、床版橋パネルを護岸壁体の頭部と現地にて接合するため、床版橋パネルの底板に鉛直下方に延びる連結材を予め工場で接合したものを採用しているが、この鉛直下方に延びる連結部材があるが故に、床版橋パネルの部材高さが高くなり、揚重機の巻き上げ高さが必要となり、小型の揚重機を用いた施工が難しくなるという上記(4)に挙げた施工上の課題も有している。
また、上述の課題ではないが、突起付きのH形鋼を芯材とした壁体を施工することから、護岸の連続地中壁長がある程度の延長がないと施工費用が高くなるという課題がある。
さらに、橋梁基礎としての護岸壁体が1列の構造であるため、地盤水平反力が小さい場所では背面にバットレス等の補強が必要となるという課題も有している。
また、非特許文献1に記載された上下部一体プレビーム合成桁橋では、基礎として独立した杭基礎が用いられることから、中小河川に適用する場合には護岸背面の施工場所の確保や河川内施工が必要となり、(1)〜(4)に挙げた課題を有している。
非特許文献2、3は、主として背面土圧の抵抗を目的とした護岸あるいは岸壁構造物を対象としており、本願が対象としている橋梁に関するものではないので、上述の課題は直接的には当てはまらない。
しかし、仮に非特許文献2、3に記載の技術を橋梁の橋脚に利用しようとすれば、鉛直支持力が必要になり、別途鉛直支持杭等が必要となることから、(1)〜(4)に挙げた課題を有することになる。
また、この技術においては、鋼矢板の曲げ剛性よりも鋼矢板内部の中詰め砂のせん断抵抗の負担率が大きいことから壁体幅を大きくとる必要があり、後方に余裕のない市街地の護岸への適用はそもそも難しいという問題がある。
特許文献2に記載のものは、鉛直力の大部分を、フーチングを介して基礎地盤に伝えることを前提としているため、比較的大きな基礎底面積を必要としフーチング構築のための鉄筋や大量のコンクリートを必要とし、やはり(1)〜(4)に挙げた課題を有している。
以上のように、従来の技術はいずれも中小河川の渡河橋梁、特に都市再生のための工事の有する課題を解決するには至らないものである。
本発明は、かかる中小河川を渡河する橋梁乃至人工地盤建設上の上記課題を解決し、狭隘な場所において河川護岸の改修と下部工の建設を能率よく行うと共に、比較的小型の揚重機のみで施工でき、また河川内での支保工や型枠工を必要とせず構築可能な耐震性に優れた護岸一体ラーメン橋梁およびその施工法を提供するものである。
(1)本発明に係る護岸一体ラーメン橋梁は、地盤支持層まで打設されて河川の護岸を形成する第1鋼矢板壁と、該第1鋼矢板壁の陸側背面にこれと平行に地盤支持層まで打設された第2鋼矢板壁と、これら第1鋼矢板壁および第2鋼矢板壁に対して交差方向に配置されて地盤支持層まで打設されると共に前記第1、第2鋼矢板壁に連結された複数列の隔壁とを備えてなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体とし、該橋梁基礎構造体の頭部に橋梁上部工の支点部を設置し、該橋梁上部工と前記橋梁基礎構造体の頭部を結合部材で連結すると共に、該結合部材を被覆するように前記橋梁基礎構造体の頭部にコンクリートを打設して前記橋梁基礎構造体と前記橋梁上部工を剛結一体化してなる護岸一体ラーメン橋梁であって、
前記橋梁上部工が底板を有する扁平箱状鋼殻の内部に補剛材を固着してなる鋼製床版橋パネルに現地でコンクリートを打設してなる合成床版からなり、前記結合部材は、一端側が鋼製床版橋パネルに係合可能に構成され他端側が前記橋梁基礎構造体の頭部に挿入可能に構成された鉄骨部材からなることを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、橋梁基礎構造体の内部に設置した腹起、切梁等の補強用仮設材を、コンクリートが打設される前記橋梁基礎構造体の頭部の補強部材として用いることを特徴とするものである。
(3)また、本発明に係る護岸一体ラーメン橋梁は、地盤支持層まで打設されて河川の護岸を形成する第1鋼矢板壁と、該第1鋼矢板壁の陸側背面にこれと平行に地盤支持層まで打設された第2鋼矢板壁と、これら第1鋼矢板壁および第2鋼矢板壁に対して交差方向に配置されて地盤支持層まで打設されると共に前記第1、第2鋼矢板壁に連結された複数列の隔壁とを備えてなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体とし、該橋梁基礎構造体の頭部に橋梁上部工の支点部を設置し、該橋梁上部工と前記橋梁基礎構造体の頭部を結合部材で連結すると共に、該結合部材を被覆するように前記橋梁基礎構造体の頭部にコンクリートを打設して前記橋梁基礎構造体と前記橋梁上部工を剛結一体化してなる護岸一体ラーメン橋梁であって、
前記橋梁基礎構造体の内部に設置した腹起、切梁等の補強用仮設材を、コンクリートが打設される橋梁基礎構造体の頭部の補強部材として用いることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)〜(3)の何れかに記載のものにおいて、橋梁基礎構造体の内面側に、フランジ表面に突起を有するT形鋼を固着して、打設されるコンクリートと前記橋梁基礎構造体との一体化を強化したことを特徴とするものである。
(5)また、上記(1)〜(4)の何れかに記載のものにおいて、第1鋼矢板壁、第2鋼矢板壁および隔壁の全部または一部に設置状態で閉断面となる鋼矢板を用いたことを特徴とするものである。
設置状態で閉断面となる鋼矢板とは、設置前の状態で閉断面を有する組合せ鋼矢板や、設置した状態において閉断面となる両爪タイプのH形鋼矢板を含む。
(6)また、上記(1)〜(4)の何れかに記載のものにおいて、第1鋼矢板壁、第2鋼矢板壁および隔壁の全部または一部に鋼管矢板を用いたことを特徴とするものである。
本発明においては、橋梁の基礎として、護岸を形成する第1鋼矢板壁と、該第1鋼矢板壁の陸側背面に該第1鋼矢板壁と平行に第2鋼矢板壁を形成し、第1鋼矢板壁および第2鋼矢板壁の間にこれらに交差方向でかつ、これらに連結される隔壁を打設してこれらの鋼矢板からなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体としたので、一般的な杭基礎とフーチングから成る基礎に比べ狭い基礎幅で上部工反力に対する鉛直支持力と護岸および基礎としての地盤水平反力とに抵抗させることができ、護岸改修を必要とする中小河川の渡河橋梁、特に都市再生のための工事に適している。
また、橋梁の基礎となる橋梁基礎構造体は、鋼矢板から構成されるので、その打設は護岸用鋼矢板と同じく比較的小さな施工機械で施工可能なことから狭隘な建設場所での基礎工の建設を護岸の建設と同時に容易に行うことができ工期、工費の削減が可能となる。
[実施の形態1]
図1は、本発明の一実施の形態に係る護岸一体ラーメン橋梁の説明図であり、橋軸方向の断面図である。
本実施の形態に係る護岸一体ラーメン橋梁は、地盤支持層まで打設されて河川の護岸を形成する鋼矢板護岸壁3と、該鋼矢板壁護岸壁3の陸側背面にこれに平行に地盤支持層まで打設された鋼矢板壁4と、これら鋼矢板護岸壁3および鋼矢板壁4に対して直交方向に配置されて地盤支持層まで打設されると共に鋼矢板護岸壁3及び鋼矢板壁4に連結された複数列の隔壁5と備えてなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体6とし、該橋梁基礎構造体6の頭部に橋梁上部工8の支点部を設置し、該橋梁上部工と前記橋梁基礎構造体6の頭部を結合部材16(図7参照)で結合すると共に、結合部材16を被覆するように前記橋梁基礎構造体6の頭部にコンクリートを打設して前記橋梁基礎構造体6と前記橋梁上部工8を剛結一体化してなるものである。
なお、本実施の形態の鋼矢板護岸壁3が本発明の第1鋼矢板壁に相当し、鋼矢板壁4が本発明の第2鋼矢板壁に相当する。
図2〜図12は、図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図であり、都市河川2の既存の護岸を改修し、河川幅を拡幅するとともに護岸の強度補強を行う場合の工事手順を示したものである。
本実施の形態においては、鋼矢板としてU形鋼矢板と、図12に示す閉断面を有する組合せ鋼矢板を使用している。
以下、図2〜図12に従って、本実施形態の施工手順を詳細に説明する。
まず、図2に示すように、複数枚の鋼矢板を爪部で嵌合し順次打設し鋼矢板護岸壁3,3’を構築する。
図2において橋梁基礎区間1として示した橋梁基礎となる部分については、U形鋼矢板と組合せ鋼矢板を交互に打設しており、それ以外の部分、すなわち護岸壁の部分についてはU形鋼矢板のみを打設している。また、少なくとも橋梁基礎となる部分に配置する鋼矢板については、地盤支持層(N値がほぼ50以上)まで打設している。
図2においては、鋼矢板護岸壁のうち橋梁基礎部分を符号3で示し、それ以外の部分を符号3’で示している。
橋梁基礎となる部分について、組合せ鋼矢板を用いることにより、組合せ鋼矢板自体の形状、および打設時の先端閉塞効果から基礎としての鉛直支持力を増加させることができると共に基礎の水平抵抗力を増加させ基礎寸法を小さくすることができる。
次に、図3に示すように、橋梁基礎部分の鋼矢板護岸壁3の陸側背面に鋼矢板護岸壁3と平行に複数の鋼矢板を打設して鋼矢板壁4を構築し、さらに鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4の間にこれら鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4に直交する方向でかつ、これらに連結するように鋼矢板を打設して隔壁5を形成し、鋼矢板護岸壁3、鋼矢板壁4及び隔壁5からなる平断面が矩形状の橋梁基礎構造体6を構築する。
鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4との離隔距離は、現地の施工スペースの状況、土質、地盤の強度などを考慮して適宜設定するようにする。
例えば、鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4との離隔距離を大きくすると、水平抵抗を大きくすることができる。また、施工スペースの関係から、鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4との離隔距離を大きくとることができない場合には、鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4との間に例えば、コンクリートなどを打設して、強度を高めることもできる。
つまり、本実施の形態では、橋梁基礎構造体6の形状を現地の状況に応じて自由に設定することができるので、特に橋梁基礎の背面側にスペースの余裕がないような場合にも適用できる。
次に、図4に示すように、形成された矩形断面状の橋梁基礎構造体6の内部10および鋼矢板護岸壁3、鋼矢板壁4に用いた組合せ鋼矢板の内部の土砂を、該橋梁基礎構造体6を土留め壁として予め定めた深さまで掘削、除去する。
このとき、土圧に抵抗するために、橋梁基礎構造体6の内部に、図示しない、腹起、切梁等の補強用仮設材を設置する。
次に、図5に示すように、橋梁基礎構造体6の上部端をガス溶断等によりほぼ平坦に整斉した後、該上端部に橋梁上部工を設置するための支持架台11を設置する。
支持架台11は、後述する結合部材16を挿入するとともにコンクリートを橋梁基礎構造体6内部に充填するための通路となる開口部12が設けられた板状部材からなる。
支持架台11を設置することにより、橋梁基礎構造体6の上端部の形状が整えられ、後述する結合部材の設置作業を円滑に行なうことができる。
次に、図6に示すように、現地の施工条件に応じた幅に工場で製作された鋼製床版橋パネル13,14を現地に搬入し、橋梁基礎構造体6上の支持架台11上に設置する。
鋼製床版橋パネル13,14は、型枠兼用の構造材となる上面が開口した扁平箱状鋼殻からなり、該扁平箱状鋼殻の底鋼板の上面に補剛材となるT型断面部材を溶接して構成される。T型断面部材としては、フランジ表面に突起を有する圧延T形鋼や、スタッドジベル等のずれ止めを有するT型断面部材がある。
鋼製床版橋パネル13,14を構成する扁平箱状鋼殻の底鋼板には、後述する結合部材を挿入するための開口部15が設けられている。鋼製床版橋パネル13,14を支持架台11上に設置する際には、開口部15の位置と支持架台11の開口部12の位置が合うように設置する。
次に、図7に示すように、鋼製床版橋パネル13,14と橋梁基礎構造体6を結合部材16によって結合する。
まず、結合に用いる結合部材16について説明する。結合部材16は、フランジ外面に突起を有するH形鋼によって形成されており、水平部材と、水平部材に直角方向に固定された2本の脚部とを備え、全体形状が略門形のような形状をしている。そして、水平部材における設置状態で橋梁中央側となる部分は、設置状態で橋梁中央側に向けて一定の長さだけ延出する延出部16aとなっている。
なお、この例では結合部材16のフランジ外面に突起を設けた例を示しているが、突起に代えてスタットジベル等のずれ止めを設けてもよい。
次に結合部材16によって鋼製床版橋パネル13,14と橋梁基礎構造体6を結合する方法を説明する。
結合部材16の脚部16bを、扁平箱状鋼殻の底鋼板の上面側から開口部15及び支持架台11の開口部12を介して橋梁基礎構造体6に挿入し、そして、橋面の施工基面を調整して、鋼製床版橋パネル13,14と橋梁基礎構造体6を結合する。
図8は、橋梁基礎構造体6上に設置された全ての鋼製床版橋パネル13,14に対して、結合部材16を設置して、鋼製床版橋パネル13,14と橋梁基礎構造体6の結合を完了した状態を示している。
次に、図9に示すように、設置された鋼製床版橋パネル13,14の支間中央部にコンクリートを打設し、主桁の合成断面化する。
なお、桁端剛結部よりも先に鋼製床版橋パネル13,14の支間中央部にコンクリートを打設した理由を以下の通りである。
先に桁端剛結部にコンクリートを打設すると、桁端剛結部のコンクリートにラーメン隅各部としての負曲げモ-メントによる引張応力が作用してひび割れることが考えられ、これを回避するためである。
もっとも、桁端剛結部のコンクリートのひび割れ対策が十分になされている場合には、桁端からコンクリートを打設し、隅角部の合成一体化を先行させてもよく、このようにすれば、主桁断面の低減が可能である。
次に、図10に示すように、桁端に設置した結合部材16を被覆するように橋梁基礎構造体6内部にコンクリートを打設し、その後、桁端部を含め全体にコンクリートを打設して橋梁基礎構造体6と合成床版橋を剛結する。
次に、図11に示すように、鋼製床版橋パネル13,14を型枠としてコンクリートを打設し、護岸一体ラーメン橋梁とする。そして、橋桁の両端に桁の温度変化により生じる橋軸方向の伸縮を吸収し、接続する道路の舗装の損傷を回避するための踏掛版18を取り付け、さらに欄干19を取り付ける。
本実施の形態によれば、以下に示す効果を得られる。
(1)本実施の形態においては、橋梁の基礎として、鋼矢板護岸壁3、鋼矢板護岸壁3の陸側背面に鋼矢板護岸壁3と平行に設置した鋼矢板壁4、および鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4の間にこれら鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4に直交する方向でかつ、これらに連結するように設置した隔壁5からなる橋梁基礎構造体6を構築し、これを橋梁基礎とするようにしたので、一般的な杭基礎とフーチングから成る基礎に比べ狭い基礎幅で上部工反力に対する鉛直支持力と護岸および基礎としての地盤水平反力とに抵抗させることができ、護岸改修を必要とする中小河川の渡河橋梁、特に都市再生のための工事に適する。
(2)特に、本実施の形態では、橋梁基礎構造体6を構成する鋼矢板の一部に組合せ鋼矢板を用いているので、高い鉛直支持力と護岸および基礎としての地盤水平反力に対する高い抵抗力が得られ、この意味でも基礎幅を狭く、耐震性の優れた基礎工となる。
(3)また、橋梁の基礎となる橋梁基礎構造体6は、鋼矢板から構成されるので、その打設は護岸用鋼矢板と同じく比較的小さな施工機械で施工可能なことから狭隘な建設場所での基礎工の建設を護岸の建設と同時に容易に行うことができ工期、工費の削減が可能となる。
(4)さらに、鋼矢板からなる橋梁基礎構造体6を地盤掘削用土留壁として兼用すると共に、該橋梁基礎構造体6を型枠兼用構造強度部材としてその内部にコンクリートを打設して橋梁基礎を構築するようにしているので、別に土留め壁や型枠を構築する必要がなく、工事施工用仮設備の設置幅に余裕がなく、施工中の河積の確保が難しい場合にも適用できる。また、短工期での施工が可能となる。
(5)また、鋼製床版橋パネル13,14と橋梁基礎構造を、これらと別部材である結合部材16によって現地で結合するようにしたので、従来例のように鋼製床版橋パネルの部材高さが高くなることがなく、小型の揚重機を用いた施工が可能である。
(6)また、結合部材16を略門形の形状にして、これを鋼製床版橋パネル13,14の底鋼板の開口部15に挿入し、その後コンクリートを打設することにより上部工と下部工を剛結するようにしているので、施工が簡単であり、現地での作業を極めて迅速に行なうことができ、工期の短縮が実現される。
本実施の形態で示したような、基礎と鋼桁からなる上部工を剛結した橋梁構造はインテグラル橋として文献(インテグラル橋の計画ガイドライン(案)、平成16年3月、(財)土木研究センター、新日本製鉄(株))において知られおり、この文献の中では上部工の温度変化による橋軸方向変位を吸収するため、橋梁基礎としては1列に打設した鋼管杭基礎とすることが推奨されている。これは、同文献に記載の技術では、このような温度変化に伴う基礎の水平変位により背面地盤も変位することから、支間長を制限するとともに舗装の損傷防止対策を行う必要がある。
これに対し、本実施の形態による護岸一体ラーメン橋梁の基礎は、二重鋼矢板壁からなる橋梁基礎構造を用いていることから、上部工の温度変位を地盤と一体となって拘束するので、水平変位が小さく背面地盤や舗装への影響が極小化できるという利点を有する。
逆に、本実施の形態の構造の場合、主桁には大きな軸力が発生するが、鋼コンクリート合成床版橋であることから十分に抵抗させることが可能であり、問題ない。
なお、温度変化による軸力が過大な場合には、どちらかの一端の剛結を行わず可動支承とすることも可能である。
なお、本実施の形態では、床版橋全幅を一体施工する場合を示したが、幅方向に分割施工するようにしてもよく、このようにすれば部分供用を早めることができる。
また、本実施の形態では上部工としてフランジ外面に突起を有するH形鋼を型枠兼用の構造材である底鋼板に溶接して成る主桁を用いたが、上部工はこれに限られるものではなく、フランジ内面に突起を有するH形鋼乃至H形鋼をウエブにて半裁したT形鋼を主桁とした床版橋や、フランジに突起の無いH形鋼乃至H形鋼をウエブにて半裁したT形鋼にスタッド等のコンクリートとのズレ止め材を溶接した主桁を有する床版橋を用いても同様の効果が得られる。
また、本実施の形態おいては、橋梁基礎部分に使用する鋼矢板として、U形鋼矢板と組合せ鋼矢板を交互に配置した例を示したが、両者の組合せの形態は地盤の土質や水平荷重、鉛直荷重等の設計事項によって適宜選択でき、全ての鋼矢板を組合せ鋼矢板としてもよい。
また、本実施の形態においては、鋼矢板護岸壁3の陸側背面に一列の鋼矢板壁4を形成した例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、必要とされる水平方向の抵抗力や鉛直力に応じて鋼矢板護岸壁3の陸側背面に複数列の鋼矢板壁4を形成してもよい。
[実施の形態2]
実施の形態1においては、橋梁基礎構造を構成する鋼矢板としてU形鋼矢板と組合せ鋼矢を用いた例を示したが、本実施の形態では、橋梁基礎構造を構成する鋼矢板として図13に示す打設後閉断面を形成するH形鋼矢板を用いたものである。なお、橋梁基礎構造以外の部分は片爪タイプのH形鋼矢板を用いている。
図14〜図18は本実施の形態の施工手順を示しており、実施の形態1における図2〜図6に相当するものである。図2〜図6に示したものと同一又は相当する部材には同一の符号を付してある。
図14〜図18に示すように、本実施の形態の施工手順は実施の形態1と同様である。
ただ、図17に示されるように、支持架台11について、実施の形態1では鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4とで別の部材から構成していたが、本例では鋼矢板護岸壁3と鋼矢板壁4の両方に跨る部材でしている。
なお、図18までの施工後は、実施の形態1で示した図7〜図12と同様の手順で行なえばよい。
本実施の形態によっても、実施の形態1と同様に護岸一体ラーメン橋梁を施工することができ、実施の形態1と同様の効果が得られる。
本発明の一実施の形態に係る護岸一体ラーメン橋梁の断面図である。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その1)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その2)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その3)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その4)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その5)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その6)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その7)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その8)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その9)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その10)。 図1に示した護岸一体ラーメン橋梁に用いる鋼矢板の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁に用いる鋼矢板の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その1)。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その2)。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その3)。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その4)。 本発明の実施の形態2に係る護岸一体ラーメン橋梁の施工手順の説明図である(その5)。
符号の説明
1 橋梁基礎区間
3 鋼矢板護岸壁
4 鋼矢板壁
5 隔壁
6 橋梁基礎構造体
13,14 鋼製床版橋パネル

Claims (6)

  1. 地盤支持層まで打設されて河川の護岸を形成する第1鋼矢板壁と、該第1鋼矢板壁の陸側背面にこれと平行に地盤支持層まで打設された第2鋼矢板壁と、これら第1鋼矢板壁および第2鋼矢板壁に対して交差方向に配置されて地盤支持層まで打設されると共に前記第1、第2鋼矢板壁に連結された複数列の隔壁とを備えてなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体とし、該橋梁基礎構造体の頭部に橋梁上部工の支点部を設置し、該橋梁上部工と前記橋梁基礎構造体の頭部を結合部材で連結すると共に、該結合部材を被覆するように前記橋梁基礎構造体の頭部にコンクリートを打設して前記橋梁基礎構造体と前記橋梁上部工を剛結一体化してなる護岸一体ラーメン橋梁であって、
    前記橋梁上部工が底板を有する扁平箱状鋼殻の内部に補剛材を固着してなる鋼製床版橋パネルに現地でコンクリートを打設してなる合成床版からなり、前記結合部材は、一端側が鋼製床版橋パネルに係合可能に構成され他端側が前記橋梁基礎構造体の頭部に挿入可能に構成された鉄骨部材からなることを特徴とする護岸一体ラーメン橋梁。
  2. 橋梁基礎構造体の内部に設置した腹起、切梁等の補強用仮設材を、コンクリートが打設される前記橋梁基礎構造体の頭部の補強部材として用いることを特徴とする請求項1に記載の護岸一体ラーメン橋梁。
  3. 地盤支持層まで打設されて河川の護岸を形成する第1鋼矢板壁と、該第1鋼矢板壁の陸側背面にこれと平行に地盤支持層まで打設された第2鋼矢板壁と、これら第1鋼矢板壁および第2鋼矢板壁に対して交差方向に配置されて地盤支持層まで打設されると共に前記第1、第2鋼矢板壁に連結された複数列の隔壁とを備えてなる鋼矢板集成壁を橋梁基礎構造体とし、該橋梁基礎構造体の頭部に橋梁上部工の支点部を設置し、該橋梁上部工と前記橋梁基礎構造体の頭部を結合部材で連結すると共に、該結合部材を被覆するように前記橋梁基礎構造体の頭部にコンクリートを打設して前記橋梁基礎構造体と前記橋梁上部工を剛結一体化してなる護岸一体ラーメン橋梁であって、
    前記橋梁基礎構造体の内部に設置した腹起、切梁等の補強用仮設材を、コンクリートが打設される橋梁基礎構造体の頭部の補強部材として用いることを特徴とする護岸一体ラーメン橋梁。
  4. 橋梁基礎構造体の内面側に、フランジ表面に突起を有するT形鋼を固着して、打設されるコンクリートと前記橋梁基礎構造体との一体化を強化したことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の護岸一体ラーメン橋梁。
  5. 第1鋼矢板壁、第2鋼矢板壁および隔壁の全部または一部に設置状態で閉断面となる鋼矢板を用いたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の護岸一体ラーメン橋梁。
  6. 第1鋼矢板壁、第2鋼矢板壁および隔壁の全部または一部に鋼管矢板を用いたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の護岸一体ラーメン橋梁。
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