JP7149919B2 - 既存岸壁の改良構造及び改良方法 - Google Patents

既存岸壁の改良構造及び改良方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7149919B2
JP7149919B2 JP2019189862A JP2019189862A JP7149919B2 JP 7149919 B2 JP7149919 B2 JP 7149919B2 JP 2019189862 A JP2019189862 A JP 2019189862A JP 2019189862 A JP2019189862 A JP 2019189862A JP 7149919 B2 JP7149919 B2 JP 7149919B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wall
existing
connection structure
head connection
new wall
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019189862A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021063404A (ja
JP2021063404A5 (ja
Inventor
禎郎 塩崎
慧 小川
賢一 内田
俊広 海老原
隆雄 鈴木
祐人 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
JFE Engineering Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
JFE Engineering Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp, JFE Engineering Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2019189862A priority Critical patent/JP7149919B2/ja
Publication of JP2021063404A publication Critical patent/JP2021063404A/ja
Publication of JP2021063404A5 publication Critical patent/JP2021063404A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7149919B2 publication Critical patent/JP7149919B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、既存の岸壁における水域側に設けられて既存の岸壁を改良する既存岸壁の改良構造、及び改良方法に関する。
なお、本明細書における岸壁には、直立壁を有する矢板式岸壁、重力式岸壁、セル式岸壁等の船舶の接岸機能を有するものの他、同様の直立壁を有して船舶の接岸機能を有していない護岸も含む。
ここでは、既存の岸壁として矢板式岸壁を例に説明する。
既存の矢板式岸壁19としては、図15に示すように、複数の矢板を水底21に打設して形成した矢板壁23の上端の上部工25を陸上部27に設けた控え工29にタイロッド31で連結して支持するようにしたものがある。
このような矢板式岸壁19においては、例えば、改訂された港湾基準への対応、耐震性向上、エプロン上の上載荷重の増加、船舶の大型化に伴う岸壁水深の増深、既存構造の劣化対応、供用期間の延長等の要因により補強等の改良が必要となる場合がある。
既存の矢板式岸壁19の改良構造の例としては、例えば特許文献1に開示された、「既設岸壁の改修補強構造」がある。
同文献に開示の「既設岸壁の改修補強構造」は、「矢板壁をタイ材を介して控え工で支持してなる既設岸壁の改修補強構造であって、既設控え工の反岸壁側に、該既設控え工から離間されて独立して設けられ、下端部が所定深度まで立て込まれた新設控え工と、該新設控え工の頭部から既設矢板壁の所定位置に向けて斜め下方に延設されて、両端が該新設控え工と既設矢板壁とに止着された新設のタイ材と、を有し、
前記新設控え工は、鋼管内にコンクリートを充填されて形成される鋼管杭であるととも
に、前記既設控え工に沿って適宜間隔を空けて複数配設され、前記新設タイ材は、前記鋼管杭から放射状に複数設けられている、ことを特徴とする」(請求項4参照)ものである。
この方法によると、既設の矢板壁23との係止位置を任意に設置可能であり、かつ矢板壁23に発生する曲げモーメントを低減できるため、改良方法として有効な方法である。
特許第4876991号公報
特許文献1に開示の構造は、工事における岸壁占有期間の短縮化を図ることを目的の一つとしており、それ故に陸側に新設の控え工を設置することが必須となっている。
しかしながら、既存の矢板式岸壁19の改良工事においては、陸上部27での施工が制限される場合もあり、このような場合には適用できないという問題がある。
また、新設タイ材が、鋼管杭から放射状に複数設けられていることから、タイ材の張力管理が難しいという問題もある。
上記の説明は既存岸壁が矢板式岸壁を例に挙げたが、既存岸壁にはケーソンを用いた重力式岸壁やセル式岸壁等の直立壁を有するものがあり、この場合においても、陸上部での施工が制限される場合があり、同様の問題がある。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、陸上部での施工が制限される場合にも適用可能な既存岸壁の改良構造及び改良方法を提供することを目的としている。
(1)本発明に係る既存岸壁の改良構造は、既存岸壁における直立した既存壁体の水域側に該既存壁体と所定の隙間を設けて打設された新設壁体と、前記隙間に配設された間詰材と、前記新設壁体の水域側水底面に打設された複数の杭と、該複数の杭の頭部を連結する杭頭連結構造と、該杭頭連結構造における前記新設壁体側に前記新設壁体幅方向に延在するように設けられて前記既存壁体から前記新設壁体を介して受ける水平力を前記杭頭連結構造に伝達する水平力伝達部材とを備えたことを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記水平力伝達部材は、前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に打設された水中コンクリート又は水中モルタル、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材及び水中コンクリート、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材及び水中モルタルのいずれかで構成されていることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記新設壁体が鋼管矢板によって構成され、前記水平力伝達部材は、前記杭頭連結構造と前記鋼管矢板との間における前記杭頭連結構造側に配設された水平部材と、該水平部材と前記鋼管矢板との間に配設された水中コンクリート又は水中モルタルを備えてなることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記新設壁体が鋼矢板によって構成され、前記水平力伝達部材は、該鋼矢板に当接して水平力を伝達する水平部材によって構成されていることを特徴とするものである。
(5)また、本発明に係る既存岸壁の改良方法は、既存岸壁の改良方法であって、
前記岸壁における直立した既存壁体の水域側に該既存壁体と所定の隙間を設けて新設壁体を打設する新設壁体打設工程と、
前記既存壁体と前記新設壁体との隙間に間詰材を配設する間詰工程と、
前記新設壁体の水域側水底面に、複数の杭を打設する杭打設工程と、
複数の杭の頭部を連結する杭頭連結構造を、前記水域側水底面に配置して、該杭頭連結構造と前記杭の頭部を一体化する杭・杭頭連結構造一体化工程と、
前記杭頭連結構造と前記新壁体との間で水平力を伝達する水平力伝達部材を構築する水平力伝達部材構築工程と、を備えたことを特徴とするものである。
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記新設壁体打設工程の後に、前記水域側水底面を掘削して水深を深くする水底面掘削工程を備えたことを特徴とするものである。
本発明に係る既存岸壁の改良構造は、陸上部での施工が制限される場合にも適用可能であり、施工性に優れている。
また、間詰材は、既存矢板壁からの水平力を新設壁体に水平力に伝達できればよく、それ故に間詰材は既存矢板壁と新設壁体と一体化される必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。
同様に、水平力伝達部材は、新設壁体からの水平力を杭頭連結構造に伝達できればよく、それ故に杭頭連結構造と一体化される必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。
実施の形態1の既存岸壁の改良構造の斜視図である。 実施の形態1の既存岸壁の改良構造の垂直断面図である。 図1の矢視A-A図である。 実施の形態1の他の態様に係る既存岸壁の改良方法を説明する図である。 実施の形態1の他の態様に係る既存岸壁の改良構造の斜視図である。 実施の形態2の既存岸壁の改良構造の垂直断面図である。 実施例において検討対象とした既存の矢板式岸壁の説明図である。 実施例において、本発明工法を適用して改良した新設構造物の説明図である。 実施例において、比較例として検討した新設の矢板式岸壁の説明図である。 実施例において、耐震性能比較に用いた設計対象の地震動を示す図である。 実施例における耐震性能比較の結果を示すグラフである(既存の矢板式岸壁)。 実施例における耐震性能比較の結果を示すグラフである(発明例)。 実施例における耐震性能比較の結果を示すグラフである(比較例:従来技術による改良)。 実施例における耐震性能比較の結果を示すグラフである(比較例:補強無しで増深)。 改良対象となる既存の矢板式岸壁の説明図である。
[実施の形態1]
本実施の形態は、改良の対象となる既存岸壁が矢板式岸壁の場合である。
本実施の形態に係る既存岸壁の改良構造1は、図1~図3に示すように、既存の矢板式岸壁19における既存壁体23(矢板壁)の水域側に既存壁体23と所定の隙間を設けて打設された新設壁体3と、隙間に配設された間詰材5と、新設壁体3の水域側水底面に打設された複数の杭7と、複数の杭7の頭部を連結する杭頭連結構造9と、杭頭連結構造9における新設壁体3側に前記新設壁体幅方向に延在するように取り付けられて新設壁体3から受ける水平力を杭頭連結構造9に伝達する水平力伝達部材11とを備えたものである。
なお、図1~図3において、既存の矢板式岸壁19を示した図15と同一部分には同一の符号を付してある。
以下、各構成の詳細と各構成の関係を説明する。
<既存矢板式岸壁の既存壁体>
改良の対象となる既存矢板式岸壁19の既存壁体23は、図1~図3に示すように、矢板によって形成されたものである。
なお、既存壁体23を構成する矢板は鋼矢板に限定されるものではなく、鋼管矢板や、鋼矢板と鋼管矢板の組み合わせによって構成された既存岸壁を改良の対象とすることができる。
<新設壁体>
新設壁体3は、既存壁体23の水域側に、既存壁体23と所定の隙間を設けて打設されている。この隙間には、間詰材5が配設される。
なお、本実施の形態では、新設壁体3として鋼管矢板を用いた例を示したが、新設壁体3としては鋼管矢板に限定されるものではなく、鋼矢板を用いてもよい。
鋼矢板には、U型鋼矢板、ハット型鋼矢板、Z型鋼矢板、H型鋼矢板、直線型鋼矢板等が含まれる。
また、新設壁体3は、鋼管矢板、鋼矢板を単独あるいは組合せの他、直線型鋼矢板にH鋼やCT鋼を取り付けたものなどを含み、要するに岸壁法線方向(図1の矢印X-X方向)に連続した壁となっていればよい。
<間詰材>
間詰材5は、既存壁体23と新設壁体3との隙間に配設されて既存壁体23が水域側に変形しようとする水平力を新設壁体3に伝達するものである。間詰材5はかかる機能を発揮できれば、その材料等は限定されず、例えば石材、水中コンクリート、水中モルタルなど、新設壁体3と既存壁体23の水平方向の圧縮力の伝達が可能なものであればよい。
もっとも、間詰材5の上部は確実に水平力を伝達できるように、水中コンクリートまたは水中モルタルで構成するのが望ましい。
既存壁体23に作用する荷重(例えば地震時荷重やエプロン上に物を置いたときの荷重、増深によって生じた土圧増分等)は、間詰材5とその下方の地盤を介して新設壁体3に伝達されるため、新設壁体3には水平力のみが伝達される構造である。このため、既存壁体23と新設壁体3とを一体化する必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。
<杭>
杭7は、例えば鋼管杭からなり、新設壁体3の水域側水底面に打設されている。打設された杭7は複数本であり、これらの配置は、図1、図3に示すように、格子状に配置されてもよいし、千鳥状に配置されてもよく、配置は特に限定されない。
また、図1~図3に示す例では、直杭としているが、複数の杭7の全部又は一部を斜杭としてもよい。
<杭頭連結構造>
杭頭連結構造9は、複数の杭7の頭部を連結するものであり、本実施の形態では骨組構造によって構成したものを例示している。
杭頭連結構造9は、図1、図3に示すように、格子状に形成された各桁材9aの交差部9bに杭7が挿入される開口部を有する構造である。杭頭と開口部とは一体化されるが、この一体化の手法は従来のジャケット式岸壁、ストラット式岸壁で用いられる手法、具体的にはグラウト材の注入によればよい。
なお、杭頭連結構造9は、例えば形鋼等の鋼製部材によって形成されてもよいし、あるいはプレキャストコンクリート構造、鋼コンクリート合成構造であってもよい。
また、杭頭連結構造9は、各桁材9aと交差部9bによって構成されてもよいが、図5に示すように、各桁材9a及び交差部9bの全体をコンクリート等で覆うようにした床版状の構造12が設けられた構造であってもよい。
また、本実施の形態の杭頭連結構造9は、図1に示されるように、平面的な形状であるが、本発明の杭頭連結構造9はこれに限定されるものではなく、立体的な構造であってもよい。
また、本実施の形態の杭頭連結構造9は、図1~図3に示すような骨組構造を前提としているが、このような骨組構造を前提とせず、鉄筋コンクリート造で構成されるものでもよい。
<水平力伝達部材>
水平力伝達部材11は、新設壁体3と杭頭連結構造9との間に介在して、新設壁体3から受ける水平力を杭頭連結構造9に伝達するための部材である。
本実施の形態の水平力伝達部材11は、杭頭連結構造9と新設壁体3との間に配設された水平部材10及び水中コンクリート又は水中モルタル14によって構成できる。具体的には、図1に示すように、杭頭連結構造9に当接するように例えばH形鋼等の水平部材10を新設壁体3の幅方向に連続するように配置して、水平部材10と新設壁体3との隙間に水中コンクリート又は水中モルタル14を配設している。このような構成の場合、水平力伝達部材11は、新設壁体3の幅方向に隙間なく連続的に延在する。
水平力伝達部材11は、新設壁体3からの水平力を杭頭連結構造9に伝達できればよく、それ故に水平力伝達部材11は新設壁体3と一体化される必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。
なお、上記の例では水平力伝達部材11を、水平部材10と水中コンクリート又は水中モルタル14から構成したが、杭頭連結構造9が図5に示した床版状の構造12の場合には、水平部材10を省略して水中コンクリート又は水中モルタル14のみで構成することもできる。
また、新設壁体3がハット形鋼矢板やU形鋼矢板等のように平面を有する鋼矢板で構築された場合のように、水平部材を杭頭連結構造9と新設壁体3の両方に荷重伝達可能な状態で当接させることができるならば、水中コンクリート又は水中モルタル14を省略することもできる。
なお、水平部材10は、予め杭頭連結構造9に取り付けるようにしてもよい。水平力伝達部材11を水平部材10のみから構成し、水平部材10を杭頭連結構造9に予め取り付けてユニット化したような場合には、ユニットを水底に配設した際に隣接するユニットの水平部材10の間に僅かな隙間が生ずる場合がある。しかし、このような僅かな隙間が生じたとしても、本願発明の水平力伝達部材が新設壁体幅方向に連続して設けられていることに含まれ、特定の杭頭連結構造9には水平部材を設けていないような場合でない限り、上記の隙間の大きさに関わらず、新設壁体3の幅方向に延在する本願発明の水平力伝達部材に含まれる。
水平部材10は、杭頭連結構造9と同様に、例えば形鋼等の鋼製部材によって形成されてもよいし、あるいはプレキャストコンクリート構造、鋼コンクリート合成構造であってもよい。
次に上記のような既存矢板式岸壁19の改良構造の施工方法、すなわち既存矢板式岸壁19の改良方法について説明する。
杭頭連結構造9を予め工場等において製作し、改良する既存矢板式岸壁19のある施工現場に搬入する。
施工現場では、既存の矢板式岸壁19における既存壁体23の水域側に既存壁体23と所定の隙間を設けて新設壁体3を打設する(新設壁体打設工程)。
その後、新設壁体3と既存壁体23との間隙には、間詰材5を配設する(間詰工程)。間詰材5は、新設壁体3と既存壁体23の水平方向の圧縮力が伝われば良いので、適宜、石材、水中モルタル、水中コンクリートなどから選択すればよい。
次に、新設壁体3の水域側の水底21に、所定の位置、所定の高さまで複数の杭7を打設する(杭打設工程)。
次に、予め工場で製作された杭頭連結構造9を、その交差部9bを、杭7の杭頭部にかぶせるように設置し、一体化を図る(杭・杭頭連結構造一体化工程)。
次に、水底21に配設した杭頭連結構造9と新設壁体3の隙間に、水平部材10を配設すると共に水中コンクリート又は水中モルタル14を打設して水平力伝達部材11を構築する(水平荷重伝達部材構築工程)。
なお、施工順序は特に限定されず、どの工程を先に行ってもよい。
また、船舶の大型化に伴う岸壁水深の増深が必要な場合であって、新設壁体3の前面の地盤を掘削する場合には、図4に示すように、新設壁体打設工程の後に、水域側水底面を掘削して水深を深くする水底面掘削工程を行うようにすればよい。
以上のように、本実施の形態によれば、陸上部27での施工がなく水域側のみでの施工が可能であり、陸側の施工が制限される場合にも適用可能である。
また、既存壁体23と新設壁体3との間、新設壁体3と水平力伝達部材11との間、及び水平力伝達部材11と杭頭連結構造9との間では、水平力を伝達できればよく、それ故に既存壁体23と新設壁体3、新設壁体3と水平力伝達部材11、及び水平力伝達部材11と杭頭連結構造9とは一体化される必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。スタッド溶接の場合、鋼矢板又は鋼管矢板が溶接に対応した成分のものでないと溶接による脆化が懸念されるが、本実施の形態ではこのようなことが懸念されることがない。
さらに、既存壁体23の水域側に新設壁体3を打設するので、船舶の大型化に伴う岸壁水深の増深が必要な場合であっても、水域側水底面を掘削して水深を深くする水底面掘削工程を問題なく行うことができる。
また、既存岸壁では増深に対して構造上の余裕がない場合があるが、本実施の形態では新設壁体3、杭頭連結構造9、杭7等の諸元を適正に変更することで、構造上の余裕を持たせることができるので、この点でも増深を問題なく行うことができる。
なお、本実施の形態では、既存壁体23の水域側に、新設壁体3が打設されるため、新設壁体3の位置が既存壁体23よりも水域側に出っ張る。この場合に、船舶の接岸の支障とならないように、図2に示すように、既存の上部工25を水域側に拡幅する増幅上部工13を設置するようにすればよい。もっとも、増幅上部工13は岸壁全長の必要はなく、また、増幅上部工13を設けることなく接岸用の防舷材を変えることで対応可能なこともある。
なお、上述したように水平力伝達部材11として水平部材10を用いる場合には、水平部材10を杭頭連結構造9に予め取り付けてもよいし、杭頭連結構造9を水底21に配置した後で、杭頭連結構造9に水平力伝達可能なように水底21に配設するようにしてもよい。
また、上述したように、新設壁体3としては鋼管矢板に限定されるものではなく、鋼矢板を用いることができ、この場合には、水平部材10との接触が面接触になるので、新設壁体3と水平部材10との間に水中コンクリート又は水中モルタル等を配設することなく、水平力伝達部材11を鋼材からなる水平部材単独で構成できる。
[実施の形態2]
実施の形態1においては、既存壁体23が矢板式岸壁19のものであったが、本実施の形態は既存壁体が重力式岸壁16によって構成されたものに関する。
重力式岸壁16の補強が必要となる場合としては、上載荷重増加、設計震度が大きくなる等による地震時の土圧(主働土圧)が増加することに対してケーソン17の滑動(安全率不足)、ケーソン17の転倒(安全率不足)、ケーソン底面の基礎捨石18の支持力不足等が考えられる。
上記の場合において、本実施の形態の既存岸壁の改良構造15は、図6に示すように、既存の重力式岸壁16における既存壁体23の水域側に既存壁体23と所定の隙間を設けて打設された新設壁体3と、隙間に配設された間詰材5と、新設壁体3の水域側水底面に打設された複数の杭7と、複数の杭7の頭部を連結する杭頭連結構造9と、杭頭連結構造9における新設壁体3側に新設壁体幅方向に連続して取り付けられて新設壁体3から受ける水平力を前記杭頭連結構造9に伝達する水平力伝達部材11とを備えたものである。
図6において、図1と同一部分には同一の符号を付してあり、本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、既存壁体23が重力式岸壁16のケーソン17によって構成されている点であり、その他の点は、実施の形態1と同様である。
本実施の形態の既存岸壁の改良構造15によれば、ケーソン水域側の水底面よりも上方に新たな支えとしての新設壁体3が設けられ、この新設壁体3に間詰材5を介して水平力が伝達されるため、上述したケーソン17の滑動(安全率不足)、ケーソン17の転倒(安全率不足)及びケーソン底面の基礎捨石18の支持力不足を補う補強が可能となっている。
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、陸上部27での施工がなく水域側のみでの施工が可能であり、陸側の施工が制限される場合にも適用可能である。
また、水平力伝達部材11は、新設壁体3からの水平力を水平力伝達部材11に伝達できればよく、それ故に水平力伝達部材11と新設壁体3とは一体化される必要がなく、水中におけるスタッド溶接等を不要とすることができる。
また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、船舶の大型化に伴う岸壁水深の増深が必要な場合には、新設壁体3を打設した後に、打設した新設壁体3の水域側の地盤を掘削して、水深を深くすることができる。
実施の形態1では、既存壁体23が矢板式岸壁19によって構成され、実施の形態2では重力式岸壁16によって構成されたものであったが、本発明の既存壁体は、これらの岸壁に限られずセル式岸壁等の船舶の接岸機能を有するものの他、同様の直立壁を有して船舶の接岸機能を有していない護岸によって構成されるものも含む。
本発明の効果を確認するため、シミュレーション実験を行ったので、以下これについて説明する。
実験は、図7に示す-12.6m水深の既存の矢板式岸壁19を対象とし、設計震度は変えず、水深のみ-15mに増深する改良を行う場合について検討した。
検討条件として、鋼材部分は50年分の標準的な腐食量による減肉を考慮した。また、本発明による新設構造物の設計は、増深化にともなう土圧、残留水圧、動水圧の荷重増分が作用するものとして断面の決定を行った。
新設構造物の設計結果を図8に、構造諸元を表1に示す。なお、表1中の改良構造における鋼管矢板と骨組構造の規格名称は、鋼板の規格を記載している。
Figure 0007149919000001
比較のため、従来技術として既存岸壁を無視して、新設する矢板壁式岸壁の設計を行った。設計結果を図9に、構造諸元を表2に示す。
Figure 0007149919000002
表1、表2を比較すると分かるように、鋼材重量は本発明工法の方が4割程度少なく、工事費も概算値で3割程度安価になることがわかった。
また、本発明工法と従来工法の耐震性能を比較するため、構造物と地盤の相互作用を考慮した地震応答解析を行った。解析プログラムは、下記の文献に示されたFLIPを用いた。
文献:Iai,S.,Matsunaga,Y.and Kameoka,T.:Strain space plasticity model for cyclic mobility, Soils and Foundations, Vol.32,No.2,pp.1-15,1992.
また、主な解析定数を表3に示す。設計対象の地震動は図10に示すものである。
Figure 0007149919000003
岸壁天端(図7~図9のA点)の水平変位を壁高(岸壁天端から水底面までの距離)で除した時刻歴を、図11~図13に示す。図11が、図7に示した改良前(水深-12.6m)のもの、図12が図8に示した本発明による改良後(水深-15m)のもの、図13が図9に示した従来技術による改良後(水深-15m)のものである。
ここで、水平変位は水域側への変位が負の値をとる。
図11~図13に示す結果から、増深前に比べても、本発明の改良工法の耐震性能は、従来工法と変わらず、既存構造物を無視して設計した従来工法とも遜色のないことがわかった。
また、補強効果をより明確にするため、既存岸壁を補強しないまま-15mまで増深したシミュレーション実験を行った。その結果を図14に示す。図14と本発明を適用した改良構造の結果である図12を比較すると本発明の効果は明らかである。
1 既存岸壁の改良構造(実施の形態1)
3 新設壁体
5 間詰材
7 杭
9 杭頭連結構造
9a 桁材
9b 交差部
10 水平部材
11 水平力伝達部材
12 床版状の構造
13 増幅上部工
14 水中コンクリート又は水中モルタル
15 既存岸壁の改良構造(実施の形態2)
16 重力式岸壁
17 ケーソン
18 基礎捨石
19 矢板式岸壁
21 水底
23 矢板壁(既存壁体)
25 上部工
27 陸上部
29 控え工
31 タイロッド

Claims (6)

  1. 既存岸壁における直立した既存壁体の水域側に該既存壁体と所定の隙間を設けて打設された新設壁体と、前記隙間に配設された間詰材と、前記新設壁体の水域側水底面に打設された複数の杭と、該複数の杭の頭部を連結する杭頭連結構造と、該杭頭連結構造における前記新設壁体側に前記新設壁体幅方向に延在し、かつ前記新設壁体と一体化することなく設けられて前記既存壁体から前記新設壁体を介して受ける水平力を前記杭頭連結構造に伝達する水平力伝達部材とを備えたことを特徴とする既存岸壁の改良構造。
  2. 前記水平力伝達部材は、前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に打設された水中コンクリート又は水中モルタル、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材及び水中コンクリート、又は前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間に配設された水平部材及び水中モルタルのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1記載の既存岸壁の改良構造。
  3. 前記新設壁体が鋼管矢板によって構成され、前記水平力伝達部材は、前記杭頭連結構造と前記鋼管矢板との間における前記杭頭連結構造側に配設された水平部材と、該水平部材と前記鋼管矢板との間に配設された水中コンクリート又は水中モルタルを備えてなることを特徴とする請求項1記載の既存岸壁の改良構造。
  4. 前記新設壁体が鋼矢板によって構成され、前記水平力伝達部材は、該鋼矢板に当接して水平力を伝達する水平部材によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の既存岸壁の改良構造。
  5. 既存岸壁の改良方法であって、
    前記岸壁における直立した既存壁体の水域側に該既存壁体と所定の隙間を設けて新設壁体を打設する新設壁体打設工程と、
    前記既存壁体と前記新設壁体との隙間に間詰材を配設する間詰工程と、
    前記新設壁体の水域側水底面に、複数の杭を打設する杭打設工程と、
    複数の杭の頭部を連結する杭頭連結構造を、前記水域側水底面に配置して、該杭頭連結構造と前記杭の頭部を一体化する杭・杭頭連結構造一体化工程と、
    前記杭頭連結構造と前記新設壁体との間で水平力を伝達する水平力伝達部材を前記新設壁体と一体化することなく構築する水平力伝達部材構築工程と、を備えたことを特徴とする既存岸壁の改良方法。
  6. 前記新設壁体打設工程の後に、前記水域側水底面を掘削して水深を深くする水底面掘削工程を備えたことを特徴とする請求項5記載の既存岸壁の改良方法。
JP2019189862A 2019-10-17 2019-10-17 既存岸壁の改良構造及び改良方法 Active JP7149919B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019189862A JP7149919B2 (ja) 2019-10-17 2019-10-17 既存岸壁の改良構造及び改良方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019189862A JP7149919B2 (ja) 2019-10-17 2019-10-17 既存岸壁の改良構造及び改良方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2021063404A JP2021063404A (ja) 2021-04-22
JP2021063404A5 JP2021063404A5 (ja) 2021-07-26
JP7149919B2 true JP7149919B2 (ja) 2022-10-07

Family

ID=75487711

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019189862A Active JP7149919B2 (ja) 2019-10-17 2019-10-17 既存岸壁の改良構造及び改良方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7149919B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7396332B2 (ja) 2021-06-24 2023-12-12 Jfeスチール株式会社 既存岸壁の改良構造及び該改良構造の施工方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007056663A (ja) 2005-07-29 2007-03-08 Sumitomo Metal Ind Ltd 複合構造体用鋼製壁体
JP2010156191A (ja) 2008-12-03 2010-07-15 Jfe Engineering Corp L形補強構造物、該l形補強構造物を設置した補強構造及び補強方法
JP2013213402A (ja) 2008-12-05 2013-10-17 Jfe Steel Corp 既設港湾岸壁の補強方法
JP2019056231A (ja) 2017-09-21 2019-04-11 新日鐵住金株式会社 岸壁構造

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5844802B2 (ja) * 1974-08-19 1983-10-05 日本鋼管株式会社 ガンペキノ ホキヨウコウホウ

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007056663A (ja) 2005-07-29 2007-03-08 Sumitomo Metal Ind Ltd 複合構造体用鋼製壁体
JP2010156191A (ja) 2008-12-03 2010-07-15 Jfe Engineering Corp L形補強構造物、該l形補強構造物を設置した補強構造及び補強方法
JP2013213402A (ja) 2008-12-05 2013-10-17 Jfe Steel Corp 既設港湾岸壁の補強方法
JP2019056231A (ja) 2017-09-21 2019-04-11 新日鐵住金株式会社 岸壁構造

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021063404A (ja) 2021-04-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8898996B2 (en) Method for forming a retaining wall, and corresponding retaining wall
JP2007321452A (ja) 橋梁の構築工法およびその橋梁構造物
JP5471797B2 (ja) 護岸構造及び既設護岸構造の耐震補強構造
Eskandari et al. Basic Types of Sheet Pile Walls and Their Application in the Construction Industry--a Review
JP7149919B2 (ja) 既存岸壁の改良構造及び改良方法
JP7017541B2 (ja) 既存矢板式岸壁の改良構造及び改良方法
KR20210047482A (ko) 해상활주로용 독립케이슨의 코어(core)벽체 구조물
JPH06146305A (ja) 水中基礎およびその据付方法
KR102294870B1 (ko) 복합케이슨의 코어(core)벽체 구조물
CN204326119U (zh) 一种桩筏基础抗浮结构
CN210737587U (zh) 一种悬臂式挡土墙结构
KR20050092144A (ko) 아칭효과를 이용한 아치벽강관과 그 벽체
JP7396332B2 (ja) 既存岸壁の改良構造及び該改良構造の施工方法
JP7396331B2 (ja) 既存岸壁の改良構造及び該改良構造の施工方法
JPH1077644A (ja) 耐震杭基礎工法
JP2022165458A (ja) 既存岸壁の改良構造及び改良方法
JPH04228714A (ja) 水底地盤打込み部材を用いた水域構造物
JP2003321826A (ja) アースフィルダム等の堤体の耐震性能補強構造
CN220565238U (zh) 一种适用于大高差深基坑的桩锚与内支撑组合支护系统
JP3678290B2 (ja) 高耐震性基礎
JP2022165460A (ja) 既存岸壁の改良構造及び改良方法
Dismuke Retaining structures and excavations
JP2022108444A (ja) 既設護岸の補強方法
El-Sayed A Study to Select Optimum Quay Wall Structural
Naeem et al. Optimization of Seawall Design at Alameda Marina

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210521

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210521

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220408

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220419

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220614

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220920

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220927

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7149919

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150