JP2014201895A - 河川の護岸構造およびその構築方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのような河川の多くは、建設から数十年が経過して老朽化が進んでいるが、地方自治体の財政難等の種々の理由で、改修工事は進捗していない。しかも建設から時間の経過とともに、護岸に使用する鋼矢板等の鋼材の腐食に起因して剛性が低下する、つまり護岸の強度が低下するという問題が生じる。さらに、農地を宅地化する際の盛土が原因となって土圧が増加し、護岸の強度が周辺の土圧に対して不足するという問題も生じる。
たとえば、河川の両岸に構築される既設護岸の頭部に切梁を設置して、河川上に架設することによって、両岸の既設護岸の強度を高めるとともに、その強度を安定して維持する技術である。しかしながら河川上に架設した切梁は、改修工事が終了した後も残置されるので、洪水時の水流の障害となり、切梁によって妨げられた水流が、既設護岸を超えて市街地に氾濫する惧れがある。また、水流が妨げられることによって、水圧が増大して、既設護岸の決壊を引き起こす惧れもある。
これら特許文献1、2に開示された技術では、河積が減少するので、河川の氾濫を防止するために、河床を掘り下げる必要がある。ところが、護岸の工事区間のみを過剰に掘り下げると、下流域との勾配を確保できなくなり、河川の水流が河床の深い区間に滞留するという問題が生じる。また、化粧パネルやコンクリート擁壁を設置するまでの間、既設護岸に作用する土圧が増加するので、市街地側の地盤を掘削して土圧を低減する等の対応が求められる。
この特許文献3に開示された技術では、近隣の民家の敷地やその周辺の道路等が傾く、あるいは崩れる等の問題が発生するのを防止するために、土留めを施す必要がある。また、既設護岸を撤去する期間は河川の水流を堰き止める必要がある。
(A)既設護岸の改修工事中のみならず工事終了後も河川の水流を円滑に維持することが困難であり、氾濫や決壊を防ぐために多大な労力と費用を要する、
(B)市街地側の地盤にも掘削や土留めを施工するので、市街地の広範囲にわたって様々な工事を行なわざるを得なくなり、近隣住民の日常の活動に支障を来す
という問題がある。そして、これらの問題に対応するために、工事費の削減、工期の短縮を図る必要があることから、
(C)新たに構築される護岸の強度を向上する対策を十分に施すことが難しい
という問題が生じる。
(a)既設護岸の背後、すなわち市街地側に隣接させて鋼矢板壁を打設することによって、市街地における所要の工事を、最小面積で近隣住民の活動を阻害せずに行なうことができる、
(b)既設護岸を撤去した後に、鋼矢板壁の河川側に鉄筋コンクリート壁を設置し、さらにシアキーで鋼矢板と鉄筋コンクリート壁を連結することによって護岸の変形を防止し、強度を高めることができる、
(c)改修工事の間は切梁を河川上に架設するが、工事終了後に切梁を撤去することによって、河川が増水した増加した場合にも、その水流を妨げず維持できる、
(d)切梁に代わって、河川の底部に河床体を設置し、両岸の鉄筋コンクリート壁に当接させることによって、新たに構築した護岸の強度を長時間にわたって維持できる、
(e)河川の水路を水流方向に2分割し、片岸毎の改修工事を交互に行なうことによって、河川の水流を円滑に維持して工事を行なうことができる
という知見に基づいてなされたものである。
図1(a)に示す通り、河川2の両岸に構築された既設護岸3の市街地側に民家1が立ち並んでいる。
鋼矢板壁4を構成する鋼矢板は特に限定せず、従来から知られている鋼矢板(たとえばU形鋼矢板、ハット形鋼矢板、組合せ鋼矢板、鋼管矢板等)を使用する。ただし、使用する鋼矢板が大きすぎると、打設において大型の機器が必要となるばかりでなく、騒音や振動も大きくなる。したがって鋼矢板の寸法は、工事現場の状況に応じて、騒音や振動を抑制できるように適宜設定する。
次いで、図1(d)に示すように、既設護岸3を撤去する。既設護岸3の撤去方法は特に限定しない。既設護岸3が鋼矢板で構成される場合は、頭部を掴んで引き抜くことによって撤去できる。既設護岸3の鋼矢板の老朽化が進んでいると、途中で破断して、撤去が困難になることもあるが、河川2の中央に締切壁6を設置して、河川2を水流方向に2分割すれば、老朽化の著しい鋼矢板を撤去することが可能となる。つまり、河川2の水流方向に2分割したうちの片方のみに水流を導き、他方の水流を遮断した後に既設護岸3を構成する鋼矢板を撤去することによって、片岸ずつ交互に鋼矢板を撤去することが可能となる。
締切壁6は、切梁5を架設する前に設置しても良い。
このようにして、河川2の中央に締切壁6を設置して、河川2を水流方向に2分割すれば、河川2の水流を円滑に維持しながら、片岸毎の工事を交互に行なうことができる。
さらに、図1(e)に示す通り、鋼矢板壁4の河川側に鉄筋コンクリート壁7を設置する。ここで鋼矢板壁4と鉄筋コンクリート壁7を当接させ、かつ鋼矢板壁4には頭付スタッド等のシアキーを設け、鉄筋コンクリート壁7と一体化させて、合成壁とする。これにより、土留めとしての鋼矢板壁4が鉄筋コンクリート壁7を補強する効果が発現されるので、鉄筋コンクリート壁7単体と比べて壁厚を減少することが可能となる。その結果、新たに構築する護岸の薄壁化を図ることができ、ひいては河積を確保することができる。
次に、図1(f)に示すように、河川2の両岸に鉄筋コンクリート壁7を設置した後、図1(g)に示すように、締切壁6を撤去し、引き続き、河川2底部の締切壁6が設置されていた部位に河床体8を設置する。河床体8は、後述するように河川2上に架設した切梁5を撤去した後に、切梁の役割を果たすものであるから、河床体8の側面を両岸の鉄筋コンクリート壁7にそれぞれ当接させる。このようにして鉄筋コンクリート壁7の変位を抑えることができる。
そして最後に、図1(h)に示す通り、切梁5を撤去する。その結果、鋼矢板壁4は、頭部の拘束がなくなるので、片持ち梁となり、河床付近で最大曲げモーメントが生じる。しかし、切梁5を架設していた間の鋼矢板壁4に生じた曲げモーメントの逆方向に作用するので、切梁5の撤去によって生じた曲げモーメントが相殺される。その結果、鋼矢板壁4および鉄筋コンクリート壁7に作用する応力に対して余裕が生じ、ひいては護岸の強度を向上させることができる。
図3の既設護岸3は、周囲が砂地盤であり地震によって液状化している。地盤の液状化により間隙水圧が上昇し、既設護岸3の底盤部および側壁部に、通常より大きな土圧および水圧が作用した。このため、既設護岸3の浮き上がりと、側壁部の変形によるコンクリートのクラックとが発生している。浮き上がりにより河川勾配が変化したことと、コンクリートに生じたクラックにより水漏れが生じたことから、水路としての用をなさなくなったため改修を行なった。新たに水路を設置する空間が近隣にはないため、図2に示すように、既設水路の位置に新たな水路を構築する必要があった。
このようにして河川の全体幅の増加を最小限に抑えた上で河積を拡大し、しかも護岸の変形を抑えることができた。また、鋼矢板壁を非液状化層まで根入することによって、液状化が発生した場合にも河川の下方の土砂の移動を抑制し、地盤の沈下や傾斜を抑えることができた。
2 河川
3 既設護岸
4 鋼矢板壁
5 切梁
6 締切壁
7 鉄筋コンクリート壁
8 河床体
9 非液状化層
Claims (3)
- 中規模または小規模の河川の護岸構造であって、前記河川の両岸に配設される鉄筋コンクリート壁と、該鉄筋コンクリート壁の背後の地盤に設置されて土留めとして機能する鋼矢板壁と、該鋼矢板壁を前記鉄筋コンクリート壁に連結して変形を防止するシアキーと、前記水路の底部に設置されて前記両岸の前記鉄筋コンクリート壁の距離を維持する河床体と、を有することを特徴とする護岸構造。
- 中規模または小規模の河川の護岸構造の構築方法において、前記河川の両岸に形成されている既設護岸の背後の地盤に鋼矢板壁を打設した後に、該鋼矢板壁の頭部に切梁を設置して前記河川上に架設し、次に前記既設護岸を撤去し、さらに前記鋼矢板壁の河川側に鉄筋コンクリート壁を設置し、次いで該鉄筋コンクリート壁と前記鋼矢板壁とをシアキーで連結し、さらに前記河川の底部に河床体を前記鉄筋コンクリート壁に当接させて設置した後、前記切梁を撤去することを特徴とする護岸構造の構築方法。
- 前記切梁を前記河川上に架設し、さらに前記河川の中央に締切壁を設置して前記河川を水流方向に2分割した後、片方のみに水流を導き、他方の前記既設護岸を撤去して前記鋼矢板壁の河川側に前記鉄筋コンクリート壁を設置し、次いで該鉄筋コンクリート壁と前記鋼矢板壁とをシアキーで連結する作業を前記両岸で交互に行なうことによって、前記鉄筋コンクリート壁と前記鋼矢板壁とを互いに拘束して前記両岸に設置し、さらに前記締切壁を撤去した後に、前記河川の底部に前記河床体を設置することを特徴とする請求項2に記載の護岸構造の構築方法。
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