JP2004084367A - 基礎構造体及び高架式交通路 - Google Patents

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Abstract

【課題】高架式交通路などの構造物の基礎を構築する場合において、基礎構造体の接地面積を大きくしても、地盤反力を大幅に低減することができるため、基礎杭を設置することなく、簡易かつ短期間に構築することができ、周辺地域社会の環境及び経済活動に与える影響を少なくすることができる基礎構造体及び高架式交通路を提供することを課題とする。
【解決手段】基礎構造体1であって、地盤に敷設された底版コンクリート2と、底版コンクリート2上に設置され、上面に開口部5を有する基礎部材4とから構成され、基礎部材4は複数のプレキャスト部材により形成されるとともに、開口部5には、EPS6(充填材)が充填されていることを特徴としている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレキャスト部材を用いた基礎構造体及び高架式交通路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路や線路等の交通路を立体化させる施工では、基礎構築体の施工期間が高架式交通路の構築期間の多くを占めている。そして、従来の高架式交通路の基礎構造体は、以下の方法によって構築されていた。
まず、交通路の周辺若しくは交通路上を掘削して基礎構造体を設置するための溝を構築する。続いて、溝の底面から地中に、鉄筋コンクリートの基礎杭を打設する。さらに、溝に型枠を設置し、この型枠内に鉄筋を配筋してコンクリート材を打設する。そして、このコンクリート材を養生して硬化させることにより基礎杭を備えた基礎構造体を形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の基礎構造では、以下の問題が存在していた。
基礎杭の打設する際に、特に交差点の立体化においては、杭打機を交通路の周辺又は交通路上に配置して作業するため、既存の車両の通行を規制又は停止する必要がある。ここで、通常、交通路の両側には、住宅等の構造物が存在しており、交通路の周辺に広範囲の作業用地を確保することは困難である。また、交通路上は車両の通行が可能な程度の幅員であるため、作業用地を確保することは困難である。そのため、夜間等の交通の停止時間帯に作業を行うことが好ましいが、基礎杭の打設作業では、騒音及び振動が大きく発生して広範囲に伝わってしまう。特に、夜間作業では近隣住民に対する影響が大きくなり、一日の作業時間が限定される。これにより、基礎杭の打設作業が長期化するため、基礎構築の施工期間が長期化し、交通路の交通規制も長期化する。
【0004】
また、従来の基礎構造体では、基礎杭が設置されており、基礎構造体を設置した後に、基礎構造体の下方に都市インフラ(共同溝やシールドトンネル)を構築することができないため、都市の効率的なインフラ構築が妨げられている。
【0005】
ここで、基礎構造体の接地面積を広く確保し、基礎構造体に付加された荷重を分散させることにより、基礎構造体に係る単位面積当たりの地盤反力を減少させ、基礎杭による補強を設けることなく、荷重を支持する構成も考えられるが、コンクリート材による基礎構造体では、接地面積の拡張に伴って基礎の自重が増加するため、多くの場合において基礎構造体に係る単位面積当たりの地盤反力を大幅に減少させることが困難である。
【0006】
したがって、従来の基礎構造体では、基礎構造体に基礎杭を設置する必要があることから、施工期間が長期化し、既存の交通路における車両の通行が長期間に渡って規制されるため、周辺地域社会の環境及び経済活動に与える影響が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、高架式交通路などの構造物の基礎を構築する場合において、基礎構造体の接地面積を大きくしても、地盤反力を大幅に低減することができるため、基礎杭を設置することなく、簡易かつ短期間に構築することができ、周辺地域社会の環境及び経済活動に与える影響を少なくすることができる基礎構造体及び高架式交通路を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、基礎構造体であって、地盤に敷設された底版コンクリートと、底版コンクリート上に設置され、上面に開口部を有する基礎部材とから構成され、基礎部材は複数のプレキャスト部材により形成されるとともに、開口部には、充填材が充填されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、基礎構造体であって、地盤に敷設された底版コンクリートと、底版コンクリート上に設置され、格子状に形成された基礎部材とから構成され、基礎部材は複数のプレキャスト部材により形成されるとともに、基礎部材の内部には、充填材が充填されていることを特徴としている。
【0010】
ここで、プレキャスト部材とは、予め工場等で形成された部材である。
また、基礎部材を形成する材料は、コンクリートや鋼材など限定されるものではなく、さらに、基礎部材の形状も限定されるものではない。
また、充填材は、基礎部材を形成する部材よりも軽量な材料であり、発泡ポリスチレン(Expanded Polystyrene、いわゆる発泡スチロール、以下「EPS」という)や、土砂と地盤改良剤を混合した材料などであり、限定されるものではないが、施工効率を考慮すると、開口部内に簡易に充填することができる材料を用いることが好ましい。なお、施工効率が低下しないのであれば、開口部内に鉄筋等を配置し、充填材を補強してもよい。
【0011】
さらに、請求項1に記載の発明において、開口部の形状は、平面視で正方形や円形など限定されるものではなく、さらに、基礎部材を鉛直方向に貫通した形状や、貫通しない形状など限定されるものではない。そして、開口部の数も限定されるものではなく、基礎構造体の大きさや形状に対応して、適宜に変更することが好ましい。
【0012】
また、請求項2に記載の発明において、基礎部材に形成される格子の形状及び数は限定されるものではなく、各施工条件に対応して平面的又は立体的に形成することができる。
【0013】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、基礎構造体にかかる荷重のうち、多くの荷重は基礎部材に伝わり、さらに、一部の荷重が充填材に伝わることにより、最終的に開口部の面積を含めた底版コンクリートの全面から地盤に伝わる。これにより、軽量な充填材を用いることで、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と比較して、基礎構造体が大幅に軽量化されているにもかかわらず、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と同様の接地面積となり、基礎構造体に係る単位面積当たりの地盤反力が小さくなるため、基礎構造体に基礎杭等の補強を設ける必要がない。
【0014】
また、基礎部材は、複数のプレキャスト部材により形成されているため、簡易に搬入して所定位置に設置することができる。さらに、底版コンクリートは、荷重を基礎部材から地盤に対して下面全体で伝達することができる程度の強度を備えていればよく、底版コンクリートの厚さが薄いため、基礎構造体の構築において、大量のコンクリート材を打設する必要がない。
【0015】
さらに、プレキャスト部材は工場等で形成されることから、成形精度が高いため、基礎構造体の安定性を高めることができる。また、プレキャスト部材が鉄筋コンクリートで形成されている場合には、鉄筋の配筋、コンクリート材の打設を工場等で確実に行うことができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、基礎部材は、複数のプレキャスト部材により形成されているため、基礎部材を鉛直方向に簡易かつ短期間に増設し、基礎構造体の高さを拡張することにより、地盤内に巨大な軽量基礎の設置が容易になり、軟弱地盤などの土質における地盤沈下にも対処可能な基礎を構築することができる。これは、構造物の重量が大きい場合に有効である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の基礎構造体であって、基礎部材を形成する各部材は、緊張材又は締結材により一体化されていることを特徴としている。
【0018】
ここで、緊張材による一体化とは、基礎部材を形成する各部材を貫通したPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材である緊張材の両端を各部材に定着させ、この緊張材に緊張力を付加する、所謂ポストテンション方式による接合である。
また、締結材による一体化とは、基礎部材を形成する各部材にボルトを跨設し、ナットを締め込むことにより基礎部材を形成する各部材を一体化させる接合である。
【0019】
この発明によれば、緊張材又は締結材に緊張力を付加することにより、基礎部材を形成する各部材を一体化するため、一体化の作業が簡易化され、狭い施工用地であっても短時間で基礎部材を構築することができる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、高架式交通路であって、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基礎構造体と、基礎構造体に立設された橋脚と、橋脚に支持された橋梁とから構成され、橋脚及び橋梁はプレキャスト部材であることを特徴としている。
【0021】
ここで、交通路とは、道路、鉄道線路等の各種交通機関及び歩道等の通行路をいう。
【0022】
この発明によれば、基礎杭を設置することなく、簡易かつ短期間に構築された基礎構造体に、プレキャスト部材である橋脚及び橋梁を簡易に設置して高架式交通路を構築することができるため、高架式交通路により車両の通行を早期に確保することができる。
なお、基礎構造体と橋脚、橋脚と橋梁が緊張材又は締結材により一体化されるように構成してもよく、この構成では、高架式交通路をより簡易に構築することができるため、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0023】
したがって、本発明の基礎構造体及び高架式交通路では、基礎杭を設けることなく、簡易かつ短期間に基礎構造体を構築することができるため、周辺地域社会の環境及び経済活動に与える影響を少なくすることができる。
また、基礎杭を有さない基礎構造体であるため、基礎構造体の構築後に、基礎構造体の下方に都市インフラ(共同溝やシールドトンネル)の構築が可能となり、地盤内を有効に活用することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略するものとする。
【0025】
本発明の実施形態に係る基礎構造体は、各種の構造物の基礎構造体に適用可能であるが、この実施形態では、自動車の道路に高架式道路を設ける場合を例として説明する。なお、道路の両側には、住宅等の構造物が存在しているため、道路の周辺に広い施工用地を確保することは困難であり、狭い施工用地で高架式道路の基礎構造体を構築する必要がある。
【0026】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体を示した斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体を示した図で、(a)は基礎構造体の側面図、(b)は基礎構造体の正面図、(c)は基礎構造体の平面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体の他の構成を示した図で、(a)は基礎構造体を連結した際を示した側面図、(b)は基礎構造体を連結した際を示した平面図である。
【0027】
まず、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体の構成を説明する。
基礎構造体1は、図1,図2に示すように、高架式道路50の橋脚51,51を支持するものであり、地盤に敷設された底版コンクリート2と、底版コンクリート2上に設置され、鉛直方向に貫通した開口部5,5が2つ形成された基礎部材4とから構成されている。
【0028】
底版コンクリート2は、既存の道路52を掘削した溝の底面に敷設されたコンクリート部材である。底版コンクリート2の厚さは、基礎構造体1に荷重が載荷された際に、開口部5による押し抜きせん断力に耐えることができる程度の強度を備えていればよいため、大量のコンクリート材を打設する必要がない。
【0029】
基礎部材4は、支持部材3と、支持部材3の軸方向の両側に開口部5を形成する閉塞部材7及び枠部材8とから構成され、開口部5内には、EPS6が充填されている。また、基礎部材4を形成する各部材3,7,8は、その内部を貫通したPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9により一体化されている。
【0030】
支持部材3は、I型形状に成形された鉄筋コンクリート造のプレキャスト部材であり、軸方向が既存の道路52の幅員方向と平行になるようにして、底版コンクリート2上に設置され、軸方向に所定間隔を空けて対向するようにして、橋脚51,51が立設されている。この支持部材3の軸方向における両端の両側面は、枠部材8,8が接合される側面であり、この側面に対して垂直に複数の水平孔(図示せず)が貫通している。
【0031】
閉塞部材7は、支持部材3と同一長さであり、支持部材3と平行に配置された鉄筋コンクリート造のプレキャスト部材である。また、閉塞部材7には、枠部材8の水平孔に連通するようにして、複数の水平孔(図示せず)が貫通している。
【0032】
枠部材8は、軸方向における一方の端面が閉塞部材7の側面に接合され、他方の端面が支持部材3の側面に接合される鉄筋コンクリート造のプレキャスト部材の直方体であり、閉塞部材7の同一側面における軸方向の端部に設置されている。また、枠部材8には、支持部材3及び閉塞部材7の水平孔に連通するようにして、複数の水平孔(図示せず)が貫通している。
【0033】
ここで、閉塞部材7及び枠部材8は、閉塞部材7に2本の枠部材8,8を接合した場合に、平面視でコの字形状となる部材であり、この接合された閉塞部材7及び枠部材8,8が支持部材3の軸方向の側面に接合されることにより、支持部材3の側方に鉛直に貫通した開口部5が形成される。
【0034】
なお、支持部材3、閉塞部材7及び枠部材8,8に設けられた水平孔の数は、基礎部材4の一体化に必要となるPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9の本数によって定まる。そして、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9の本数は、基礎構造体1に係る荷重等によって適宜に定められる。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体1の構築方法について説明する。
まず、図1,図2に示すように、既存の道路52に沿って所定間隔で既存の道路52を掘削して構築された溝の底面に、コンクリート材を打設して底版コンクリート2を構築する。このとき、底版コンクリート2は、開口部5による押し抜きせん断力に耐えることができる強度を備えていればよいため、通常、内部に鉄筋が配されるが、コンクリート材の量が少ないため、簡易かつ短期間に構築することができる。
【0036】
続いて、底版コンクリート2上に、軸方向が既存の道路52の幅員方向と平行になるようにして支持部材3を設置する。
また、支持部材3の軸方向の両端における両側面に、枠部材8を各々接合する。このとき、支持部材3の水平孔と枠部材8の水平孔とが連通するようにして設置する。
さらに、支持部材3の同一側面に接続した枠部材8の端部に、閉塞部材7を架設する。
なお、各部材3,7,8はプレキャスト部材であり、軽量化されているため、狭い施工用地であっても容易に搬入して設置することができる。
【0037】
また、連通した各部材3,7,8の水平孔にPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9を貫通させ、このPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9の両端を、閉塞部材7,7の壁面に定着させる。次に、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9をジャッキ等によって緊張させることより、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9に緊張力を付加し、ポストテンション方式により各部材3,7,8を一体化する。このとき、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材9の緊張作業は、道路52に沿って行われるため、狭い作業スペースで作業を行うことができ、既存の交通に対する渋滞等の影響を低減することができる。
これにより、支持部材3の軸方向の両側に、閉塞部材7と枠部材8,8による開口部5,5が形成される。
さらに、開口部5の内部にEPS6を充填して基礎構造体1を完成する。
【0038】
そして、支持部材3の軸方向の上面に所定間隔を空けて対向するようにして、橋脚51,51のアンカーボルト(図示せず)を打設し、このアンカーボルトに橋脚51を固定することにより、基礎構造体1に橋脚51,51を立設する。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体1の作用について説明する。
高架式交通路50の荷重は、橋脚51,51から基礎構造体1の基礎部材4に付加され、底版コンクリート2を通じて開口部5を含めた全断面で地盤に伝達される。また、開口部5内に充填されたEPS6は軽量な材料であるため、コンクリート材により基礎全体を構築した場合と比較して、基礎構造体1は大幅に軽量化されている。これにより、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と同様の接地面積となる。したがって、本発明の基礎構造体1では、基礎構造体1に係る単位面積当たりの地盤反力が少なくなるため、基礎杭等の補強を設けることなく、高架式交通路50を支持することができる。
【0040】
なお、基礎構造体1の構成は、前記構成に限定されるものではなく、図3に示すように、2体の基礎構造体1,1の間に枠部材8a,8aを設置し、基礎構造体1,1を連結するように構成してもよい。この構成では、基礎構造体1,1の間にも開口部5が形成されるため、基礎構造体1の接地面積が広がる。これにより、各基礎部材4,4に係る荷重の分散性が高まり、単位面積当たりの地盤反力が少なくなるため、基礎構造体1,1の地盤に対する安定性を高めることができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体を示した斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体を示した図で、(a)は基礎構造体の側面図、(b)は基礎構造体の平面図である。
【0042】
まず、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体10の構成を説明する。
基礎構造体10は、図4及び図5に示すように、ビル等の大型の構造物(図示せず)を支持するものであり、地盤に敷設された底版コンクリート2と、底版コンクリート2上に設置され、複数の支持部材11が接合することにより立体格子状に形成された基礎部材12とから構成され、基礎部材12の内部13には、EPS14が充填されている。また、支持部材11同士は、その内部を貫通したPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材(図示せず)により一体化されている。
【0043】
支持部材11は、複数の支柱が互いに直交するようにして突出したコンクリート造のプレキャスト部材であり、隣接する支持部材11の支柱同士を接続することにより、立体格子形状になるようにして各々成形されている。そして、支持部材11は、支柱が3方向直交型であり、基礎部材12の四隅となる支持部材11と、支柱が4方向直交型であり、基礎部材12の角部となる支持部材11と、支柱が5方向直交型であり、基礎部材12の平面部となる支持部材11と、支柱が6方向直交型であり、基礎部材12の内部となる支持部材11とから成る4種類が存在している。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体10の構築方法について説明する。
まず、図4及び図5に示すように、構造物の施工現場を掘削して構築された溝の底面に、コンクリート材を打設して底版コンクリート2を構築する。このとき、底版コンクリート2は、開口部5による押し抜きせん断力に耐えることができる強度を備えていればよいため、通常、内部に鉄筋が配されるが、コンクリート材の量が少ないため、簡易かつ短期間に構築することができる。
【0045】
続いて、底版コンクリート2上に、四隅、角部、平面部、内部の各種支持部材11を格子状に設置する。さらに、隣接する支持部材11同士をPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材によるポストテンション方式により一体化して基礎部材12を形成する。
なお、支持部材11はプレキャスト部材であり、軽量化されているため、狭い施工用地であっても容易に搬入して設置することができる。
【0046】
さらに、基礎部材12の内部13にEPS14を充填して基礎構造体10を完成する。
そして、基礎構造体10の上面に構造物を構築し、この構造物を基礎構造体10で支持する。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態に係る基礎構造体10の作用について説明する。構造物の荷重は、基礎部材12に付加され、底版コンクリート2を通じて開口部5を含めた全断面で地盤に伝達される。また、基礎部材12の内部13に充填されたEPS14は軽量な材料であるため、コンクリート材により基礎全体を構築した場合と比較して、基礎構造体10は大幅に軽量化されている。これにより、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と同様の接地面積を有する軽量な基礎構造体となる。したがって、本発明の基礎構造体10では、基礎構造体10に係る単位面積当たりの地盤反力が少なくなるため、基礎杭等の補強を設けることなく、構造物を支持することができる。
また、支持部材11は、簡易に搬入及び設置することができるプレキャスト部材であるため、支持部材11を鉛直方向に簡易かつ短期間に増設し、基礎構造体10の高さを拡張することにより、地盤内に巨大な軽量基礎の設置が容易になり、軟弱地盤などの土質における地盤沈下にも十分に対処可能な基礎構造体10を構築することができる。これは、構造物の重量が大きい場合に有効である。
【0048】
[高架式交通路]
次に、本発明の第1実施形態に係る基礎構造体1を用いた高架式交通路について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る高架式交通路による電車の複線の高架化を示した図で、(a)は高架式交通路の側面図、(b)は高架式交通路における基礎構造体の平面図、(c)は高架式交通路の正面断面図である。
【0049】
本実施形態に係る高架式交通路20は、図6に示すように、第1実施形態の基礎構造体1が連結して設置され、各基礎構造体1の支持部材3に立設された橋脚21と、橋脚21に支持された橋梁22とがプレキャスト部材により成形されている。さらに、橋梁22は、路面を形成する床版23と、床版23を補強する梁部材24と、高欄25とから構成され、床版23、梁部材24及び高欄25もプレキャスト部材により成形されている。そして、各基礎構造体1は、PC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材26により簡易に一体化され、さらに、橋脚21と橋梁22及び橋梁22の各部材同士もPC鋼線やPC鋼棒等のPC鋼材(図示せず)により簡易に一体化されている。
【0050】
この高架式交通路20では、基礎杭を設置することなく、簡易かつ短期間に構築された基礎構造体1に、プレキャスト部材である橋脚21及び橋梁22を簡易に設置して高架式交通路20を構築することができるため、高架式交通路20により、例えば電車の複線の高架化を早期に施工することができる。また、高架式交通路20は基礎杭を有さないため、高架式交通路20の構築後に、高架式交通路20の下方にシールド掘削機等により構造物を構築可能であり、施工用地の地盤内を将来に渡って有効に活用することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、基礎構造体1の開口部5及び基礎構造体10の内部13に充填される材料は、EPS6,14に限定されるものではなく、土砂と地盤改良剤を混練した材料など、基礎構造体1,10に用いたプレキャスト部材よりも軽い材料であればよい。
また、底版コンクリート2に基礎杭を簡易に設けることができるのであれば、基礎構造体1,10に基礎杭を設置し、基礎構造体1,10を安定させることが好ましい。
【0052】
【発明の効果】
本発明の基礎構造によれば、基礎構造体にかかる荷重のうち、多くの荷重が基礎部材に伝わり、さらに、一部の荷重が充填材に伝わることにより、荷重は最終的に底版コンクリートの全面から地盤に伝わる。これにより、軽量な充填材を用いることで、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と比較して、基礎構造体が大幅に軽量化されているにもかかわらず、基礎全体をコンクリート材で構築した場合と同様の接地面積となり、基礎構造体に係る単位面積当たりの地盤反力が小さくなるため、基礎構造体に基礎杭等の補強を設ける必要がない。そのため、簡易かつ短期間に基礎構造体を構築することができ、周辺地域社会の環境及び経済活動に与える影響を少なくすることができる。
また、基礎構造体の基礎部材は、複数のプレキャスト部材により形成されているため、簡易に搬入して所定位置に設置することができる。さらに、底版コンクリートは、荷重を基礎部材から地盤に対して下面全体で伝達することができる程度の強度を備えていればよく、底版コンクリートの厚さが薄いため、基礎構造体の構築において、大量のコンクリート材を打設する必要がない。
さらに、プレキャスト部材は工場等で形成されていることから、成形精度が高いため、基礎構造体の安定性を高めることができる。また、プレキャスト部材である基礎部材の各部材が鉄筋コンクリートで形成されている場合には、鉄筋の配筋、コンクリート材の打設を工場等で確実に行うことができる。
また、緊張材又は締結材に緊張力を付加することにより、基礎部材を形成する各部材を一体化する構成では、一体化の作業が簡易化され、狭い施工用地であっても短時間で基礎部材を構築することができる。
また、本発明の基礎構造体を用いた高架式交通路では、基礎杭を設置することなく、簡易かつ短期間に基礎構造体を構築した後に、プレキャスト部材である橋脚及び橋梁を設置して高架式交通路を簡易に構築することができるため、高架式交通路により車両の通行を早期に確保することができる。
また、基礎杭を有さない基礎構造体のため、基礎構造体の構築後に、基礎構造体の下方に都市インフラ(共同溝やシールドトンネル)の構築が可能となり、地盤内を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基礎構造体を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基礎構造体を示した図で、(a)は基礎構造体の側面図、(b)は基礎構造体の正面図、(c)は基礎構造体の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る基礎構造体の他の構成を示した図で、(a)は基礎構造体を連結した際を示した側面図、(b)は基礎構造体を連結した際を示した平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る基礎構造体を示した斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る基礎構造体を示した図で、(a)は基礎構造体の側面図、(b)は基礎構造体の平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る高架式交通路による電車の複線の高架化を示した図で、(a)は高架式交通路の側面図、(b)は高架式交通路における基礎構造体の平面図、(c)は高架式交通路の正面断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基礎構造体(第1実施形態)
2・・・・底版コンクリート
3・・・・支持部材(第1実施形態)
4・・・・基礎部材(第1実施形態)
5・・・・開口部(第1実施形態)
6・・・・EPS(第1実施形態)
7・・・・閉塞部材(第1実施形態)
8・・・・枠部材(第1実施形態)
10・・・・基礎構造体(第2実施形態)
11・・・・支持部材(第2実施形態)
12・・・・基礎部材(第2実施形態)
13・・・・基礎部材の内部(第2実施形態)
14・・・・EPS(第2実施形態)
20・・・・高架式交通路
21・・・・橋脚
22・・・・橋梁

Claims (4)

  1. 地盤に敷設された底版コンクリートと、
    前記底版コンクリート上に設置され、上面に開口部を有する基礎部材と、から構成され、
    前記基礎部材は複数のプレキャスト部材により形成されるとともに、前記開口部には、充填材が充填されていることを特徴とする基礎構造体。
  2. 地盤に敷設された底版コンクリートと、
    前記底版コンクリート上に設置され、格子状に形成された基礎部材と、から構成され、
    前記基礎部材は複数のプレキャスト部材により形成されるとともに、前記基礎部材の内部には、充填材が充填されていることを特徴とする基礎構造体。
  3. 前記基礎部材を形成する各部材は、緊張材又は締結材により一体化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基礎構造体。
  4. 前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基礎構造体と、
    前記基礎構造体に立設された橋脚と、
    前記橋脚に支持された橋梁と、から構成され、
    前記橋脚及び前記橋梁はプレキャスト部材であることを特徴とする高架式交通路。
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