本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
図1~図11は本発明の実施例1を示す。図1に示すように、二重矢板式水上構造物である防砂堤1は、海岸などから突出するように設けられ、鋼管矢板壁2,2を備えた壁体3,3が幅方向両側に配置されており、前記幅方向両側の壁体3,3の上部間に架け渡されたプレキャストコンクリート製の床版4と、前記壁体3の上部にコンクリートを打設して形成した一次コンクリート打設部5と、この一次コンクリート打設部5の上面及び床版4の端面4Tの間にコンクリートを打設して形成した二次コンクリート打設部6とを備える。
前記一次コンクリート打設部5は、その上面が、被載置部(載置受け部)たる載置面5Jであって、壁体3の一部を構成し、前記載置面5Jに、前記床版4の長さ方向端部の孔あきジベル鋼板11及び床版4の端部の下面4Kを載置される。尚、前記孔あきジベル鋼板11は、孔あき板部材であって、床版4の幅方向に間隔を置いて複数(一対)設けられ、これら一対の孔あきジベル鋼板11,11は床版4の幅方向中央に対して対称位置に設けられ、対をなす孔あきジベル鋼板11,11の間隔は、孔あきジベル鋼板11と床版4の幅方向端面4Mの間隔より広く設定されている。
また、前記一次コンクリート打設部5に、床版4の長さ方向端部を載置した後、該一次コンクリート打設部5の上部に前記二次コンクリート打設部6が形成され、隅角部7の一部を構成する前記二次コンクリート打設部6により壁体3の上部と床版4の長さ方向端部が結合される。
前記鋼管矢板壁2は、複数の鋼管矢板12を防砂堤1の長さ方向Lに並設すると共に、鋼管矢板12の鋼管矢板本体12Hの両側に設けたスリット13S入りの鋼管継手13,13同士を連結してなる。尚、鋼管矢板本体12Hの両側に設けた鋼管継手13,13の一方は、斜め一側にスリット13Sが形成され、他方は、斜め他側にスリット13Sが形成されており、鋼管継手13,13同士が長さ方向から連結可能に構成され、鋼管継手13,13は所謂P-P型である。尚、鋼管矢板本体12Hは断面円形の鋼管である。また、図中8は、水面たる海面である。
また、前記鋼管矢板壁2の幅方向外側で、前記鋼管矢板本体12Hの上部を半円状に切欠いて切欠き部14を形成し、複数の鋼管矢板本体12H,12H・・・の切欠き部14,14・・・に前記長さ方向Lの腹起し15を配置し、幅方向両側の腹起し15,15間にタイワイヤ16を設けると共に、腹起し15の外側にタイワイヤ16の端部を定着具17により定着し、両鋼管矢板壁2,2の幅方向外側への倒れを防止している。尚、図1及び図8に示すように、タイワイヤ16は鋼管継手13,13の上方に配置されている。また、タイワイヤ16は防砂堤1の長さ方向Lに間隔を置いて複数配置される。
さらに、前記壁体3は、前記鋼管矢板12の上部に中詰め補強鉄筋21が設けられている。この中詰め補強鉄筋21は、縦方向の鉄筋である縦鉄筋22を複数備え、この例では、4本の縦鉄筋22,22,22A,22Aを備え、これら縦鉄筋22,22,22A,22Aを周方向に間隔を置いて配置すると共に、それら縦鉄筋22,22,22A,22Aの周囲に円形の鉄筋である帯鉄筋23を多段に固定している。また、縦鉄筋22,22Aの上部は、一次コンクリート打設部5の上面から突出する。そして、中詰め補強鉄筋21により鋼管矢板12と一次コンクリート打設部5とを剛結している。尚、図8などに示すように、縦鉄筋22,22と縦鉄筋22A,22Aが長さ方向Lに間隔を置いて配置され、縦鉄筋22,22が幅方向に間隔を置いて配置されると共に、縦鉄筋22A,22Aが幅方向に間隔を置いて配置されており、幅方向の間隔を長さ方向Lの間隔より大きく設定している。
図9に示すように、腹起し15を中詰め補強鉄筋21に挿通するため、図5などに示すように、長さ方向Lに隣り合う縦鉄筋22,22,22A,22Aの間隔に比べて、外側の2本の縦鉄筋22,22と内側の2本の縦鉄筋22A,22Aの間隔を大きく設定し、中詰め補強鉄筋21の高さ方向中央に挿通部24を開口して設け、また、この挿通部24の上下の帯鉄筋23,23の上下方向の間隔を腹起し15の高さより大きく設定している。
これにより複数の前記挿通部24,24に腹起し15を挿通し、腹起し15の両フランジ部15F,15Fの下縁を、切欠き部14の下縁14Aに載置すると共に、腹起し15の一方のフランジ部15Fの外面を、切欠き部14の両縦縁14B,14Bに当接している。尚、鋼管継手13の上部は切り欠かれており、鋼管継手13の上端13J(図1)の高さ位置は腹起し15の下端の位置より低い。
図9に示すように、前記鋼管矢板本体12Hには、コンクリート打設前に前記中詰め補強鉄筋21を支持する吊り板25が設けられている。この吊り板25は、鋼管矢板12内に内嵌する平面円形の鉄板本体26と、この鉄板本体26の上面周囲から立設された複数の吊り杆27とを備え、これら吊り杆27の上端に、前記鋼管矢板12の上縁に係止するフック状の係止部27F(図9)が形成されている。
そして、中詰め補強鉄筋21は吊り板25に載置され、その中詰め補強鉄筋21の長さの2分の1以上が鋼管矢板本体12H内に位置し、中詰め補強鉄筋21の上部は鋼管矢板本体12Hの上端から突出する。
また、前記壁体3は、鋼管矢板壁2の外側に間隔を置いて外壁28を設け、この外壁28は複数の鉄筋コンクリート製パネル28Pから形成され、このパネル28Pは耐塩害仕様であって、防食性を備える。さらに、壁体3には、前記鋼管矢板壁2と前記外壁28との間に水中コンクリートを充填してなる水中コンクリート部29が形成されている。
次に、前記床版4について説明する。前記床版4は、例えば長さが10m以上~20m以下で、高さが800mm、幅が840mm程度であり、幅が高さの1.0~1.5倍程度である。また、図4に示すように、床版4の断面上部に幅方向に並んで複数の上部突出鉄筋31を設けると共に、床版4の断面下部に幅方向に並んで複数の下部突出鉄筋32を設けている。
図4に示すように、上部突出鉄筋31は、床版4の幅方向に間隔を置いて4箇所並設され、幅方向両側の2箇所の上部突出鉄筋31,31は、孔あきジベル鋼板11と床版4の幅方向端面4Mとの間の略中間に設けられ、一対の孔あきジベル鋼板11,11の間の幅方向中央側の2箇所の上部突出鉄筋31,31は、孔あきジベル鋼板11,11に近接した位置に設けられ、即ち、幅方向中央側の2箇所の上部突出鉄筋31,31の間隔は、一対の孔あきジベル鋼板11,11の間隔より狭く設定されている。尚、上部突出鉄筋31と下部突出鉄筋32の床版4の幅方向の位置は同一である。
また、下部突出鉄筋32の間には、下部鉄筋33が設けられ、これら下部鉄筋33は床版4の端部から突出することなく、床版4内に埋設されている。
また、前記床版4には、その断面において、前記下部突出鉄筋32及び下部鉄筋33の上部に、上下二段で幅方向に並んで複数のPC鋼材34,35が挿通されている。さらに、それら上部突出鉄筋31,下部突出鉄筋32,下部鉄筋33及びPC鋼材34,35を囲むようにスターラップ筋36が配置され、複数のスターラップ筋36,36・・・が床版4の長さ方向に間隔を置いて床版4に埋設されている。
図6では、理解を容易するため、プレテンションにより緊張力を付与した前記PC鋼材34に「+」を付し、一方、「×」を付したPC鋼材35は、プレテンションにより緊張力を付与すると共に、床版4内の両端において、所定長さだけコンクリートとの付着を切ったアンボンド区間(図示せず)を設けたものであり、このアンボンド区間の長さは1.5m程度である。そして、PC鋼材34とPC鋼材35とを幅方向に隣り合うと共に、上下段で隣り合うように配置している。即ちPC鋼材34,34同士は上下左右で隣り合わず、PC鋼材35,35同士は上下左右で隣り合わないように配置されている。
尚、図6においては、理解を容易にするため、上部突出鉄筋31を◎で図示すると共に、下部突出鉄筋32を◎で図示している。
このように複数のPC鋼材34,35を床版4の引張領域となる断面下部側に配置し、この床版4の断面下部側を圧縮する緊張力を付与しながら、床版4の長さ方向端部側で複数のPC鋼材34,35の略半数にアンボンド区間を設けることにより、床版4の端部に余分な圧縮力が加わることを防止している。
そして、前記孔あきジベル鋼板11,上部突出鉄筋31及び下部突出鉄筋32が、床版4の端面4Mから突出する突出部分37(図8)であって、予め床版4に設けられている。尚、図8では、鉄筋の突出部分37を図示省略している。
前記床版4の長さ方向の端面4Tには、端部板材たる端部鋼板41が固定されている。図5などに示すように、前記端部鋼板41の外面には、前記孔あきジベル鋼板11が床版4の幅方向(防砂堤1の長さ方向L)に間隔を置いて複数(一対)設けられている。
図3に示すように、前記孔あきジベル鋼板11は、高さ方向が前記端部鋼板41より低く、高さ方向と長さ方向が略等しい略矩形形状で、上外角部を切り欠いた斜辺部51を有する。また、前記孔あきジベル鋼板11の長さ方向が前記床版4の長さ方向に沿って配置され、前記端部鋼板41に溶着などにより一体に設けられている。また、前記孔あきジベル鋼板11の前記端部鋼板41側には、上下多段に孔52を穿設し、この例では高さ方向の上側、中央側、下側に3つの孔52,52,52が穿設されている。
さらに、前記孔あきジベル鋼板11の下縁11S(図3)は、前記床版4の下面4Kと面一に設けられている。また、前記孔あきジベル鋼板11の下縁11Sの端部には、前記下縁11Sに比べて、幅及び面積が大きなベース部たる鋼製支持板53が設けられており、この支持板53の下面53Kが、前記壁体3の上面に載置する孔あきジベル鋼板11の載置部である。前記支持板53は床版4の長さ方向が幅方向より長く形成された矩形形状をなし、その長さ方向中央上面と孔あきジベル鋼板11の側面との間に溶接によりリブ54が取り付けられている。尚、リブ54は支持板53の長さ方向中央に位置する。また、前記支持板53の下面53Kと前記下縁11Sは面一であり、下縁11Sの高さ位置は下面53Kの高さ位置と同一の面一かそれ以上である。
一次コンクリート打設部5の載置面5Jの施工においては、コンクリートを打設して養生した後、そのコンクリート上面をチッピングし、即ち所定厚さだけ斫り、この斫った面に無収縮モルタル42を充填し、硬化した無収縮モルタル42の面により高さが一定した平坦な載置面5Jが得られる。この場合、少なくとも孔あきジベル鋼板11と床版4の下面4Kが載置される部分をチッピングし、無収縮モルタル42により高さが一定した平坦な載置面5Jに形成する。この例では、一次コンクリート打設部5の上面の内側前面を平坦面である載置面5Jに形成し、前記一次コンクリート打設部5の上面の略半分の範囲を、高さが一定した載置面5Jとしている。
尚、図7に示すように、硬化後に一次コンクリート打設部5の外面5Gが前記外壁28の外面に面一になると共に、硬化後に一次コンクリート打設部5の内面側が鋼管矢板壁2の内側より張り出して張出部5Hを形成するように型枠が組まれる。
一次コンクリート打設部5の載置面5Jに、床版4の幅方向両端側の下面4Kを載置した状態で、前記床版4の幅,この床版4に対する孔あきジベル鋼板11の取付位置及びジベル鋼板11における支持板53の位置などは、図5の平面図に示すように、支持板53の下面53Kの孔あきジベル鋼板11の長さ中央が、複数の鋼管矢板12,12・・・の中心を結ぶ仮想線Kの位置で、且つ、鋼管矢板本体12Hの断面内の上方に支持板53の下面53Kが位置するように設定されている。
また、図5及び図8のように、一対の孔あきジベル鋼板11,11の支持板53,53の下面53K,53Kの中心53C,53Cを、鋼管矢板12の断面内の上方とし、好ましくは中心53C,53Cを、前記仮想線Kの位置とし、さらに、中心53C,53Cが、鋼管矢板本体12Hの中心に対して対称位置とすることが好ましい。尚、この例では、前記中心53Cは孔あきジベル鋼板11の厚さ方向中央に位置する。
また、コンクリート打設前に、複数の孔あきジベル鋼板11の前記孔52に、長さ方向Lの鉄筋52Tを挿通している。尚、前記鉄筋52Tは、少なくとも隣り合う2つの孔あきジベル鋼板11,11の孔52,52に挿通され、幅方向に隣り合う複数の床版4,4・・・の孔あきジベル鋼板11の孔52に、前記鉄筋52Tを挿通することもできる。
図4に示すように、前記端部鋼板41の内面にはアンカー板材たるアンカー鋼板56が複数設けられ、この例では孔あきジベル鋼板11に対応してアンカー鋼板56が設けられている。また、前記アンカー鋼板56には孔57が複数穿設され、複数のアンカー鋼板56の孔57に幅方向の鉄筋57Tを挿通している。尚、アンカー鋼板56の下縁は端部鋼板41の下縁より上方に位置する。また、孔57は、孔あきジベル鋼板11の孔52と同一高さ位置に配置されている。
このようにアンカー鋼板56と鉄筋57Tを床版4のコンクリート内に埋設することにより、前記端部鋼板41が床版4の端面4Tに固定され、それらアンカー鋼板56と鉄筋57Tとによりアンカー手段58を構成している。
図9~図11に示すように、前記一次コンクリート打設部5には、壁体3内の外側位置に外側鉄筋61を縦設し、この外側鉄筋61の一次コンクリート打設部5の上面から突出した上端には、機械式継手たる筒状の鋼製スリーブ62を外嵌して固定している。また、前記外側鉄筋61の下端側を鋼管矢板壁2側に屈曲して水平部61Sが形成されており、この水平部61Sの端部は鋼管矢板壁2の外面側に近接する。さらに、防砂堤1の長さ方向Lに隣り合う外側鉄筋61とスリーブ62の外側に沿って長さ方向(床版4の幅方向)Lの鉄筋63が複数配筋されている。
また、図9に示すように、前記一次コンクリート打設部5には、壁体3内の内側位置に内側鉄筋66を縦設し、この内側鉄筋66の一次コンクリート打設部5の上面から突出した上端66Tは、二次コンクリート打設部6の上面近くまで延設されると共に、前記上部突出鉄筋31の高さ位置に位置する。
また、前記内側鉄筋66の下端側を鋼管矢板壁2側に屈曲して水平部66Sが形成されており、この水平部66Sの端部は鋼管矢板壁2の内面側に近接する。さらに、一次コンクリート打設部5の内部において、防砂堤1の長さ方向Lに隣り合う内側鉄筋66の外側に沿って、長さ方向(床版4の幅方向)の鉄筋68が複数配筋されている。
また、図8に示すように、外側鉄筋61と内側鉄筋66は、防砂堤1の長さ方向Lに対して、同一位置に配置されると共に、長さ方向Lに等間隔に配置されている。また、外側鉄筋61と内側鉄筋66は、前記長さ方向Lにおいて、床版4の合わせ目位置(端面4Mの位置)P1,合わせ目位置P1,P1の間の中央位置(床版4の幅方向中央)P2、床版4に設けた一対の孔あきジベル鋼板11,11の幅方向外側にそれぞれ近接した近接位置P3,P3に配置されている。
図4に示すように、前記端部鋼板41には、前記上部突出鉄筋31及び下部突出鉄筋32を挿通する透孔31H,32Hが穿設されていると共に、前記PC鋼材34,35を挿通する透孔34H,35Hが穿設されている。尚、PC鋼材34,35は、図示しない床版4用の型枠内において、両端を引っ張った状態で保持し、型枠に打設したコンクリートが硬化した後、端部を切断することによりプレテンション方式で緊張力を付与している。
また、上部突出鉄筋31の端部は前記透孔31Hに挿通され、図10に示すように、その端部に屈曲部31Aを設け、この屈曲部31Aの端部に縦方向の立下り部31Bが設けられており、この立下がり部31Bは、隣り合う外側鉄筋61,61の間で、外側鉄筋61の近傍に位置する。
また、下部突出鉄筋32の端部32Tは、前記透孔32Hに挿通され、図11に示すように、前記外側鉄筋61と前記孔あきジベル鋼板11の端部との間まで延設されている。尚、鉄筋31,32,33は床版4の長さ方向に連続して設けられている。
また、二次コンクリート打設部6内には、かぶせ筋71が設けられる。このかぶせ筋71は、下部が開口した略コ字型をなし、前記上部突出鉄筋31と略同じ高さに配置される水平部71Sと、この水平部71Sの外端側を下方に屈曲した外側屈曲部71Aと、この外側屈曲部71Aから下方に延設した外側垂設部71Bと、前記水平部71Sの内端側を下方に屈曲した内側屈曲部71Cと、この内側屈曲部71Cから下方に延設した内側垂設部71Dとを備える。
尚、前記外側屈曲部71Aは、前記屈曲部31Aと略同じ曲率半径で湾曲し、前記内側屈曲部71Cに比べて外側屈曲部71Aの曲率半径が大きい。このように外側屈曲部71Aの曲率半径を大きくすることにより、床版4に加わる荷重に対して外側屈曲部71Aに無理な力が加わることを防止できる。
そして、前記外側垂設部71Bの下端が前記スリーブ62の上部に挿通されて連結され、スリーブ62の外側鉄筋61に対応する内側鉄筋66に前記内側垂設部71Dを添わせ、必要に応じて、前記内側垂設部71Dを内側鉄筋66と前記内側垂設部71Dに添わせて重なり合わせ部分を形成し、これら内側鉄筋66と前記内側垂設部71Dとの重なり合わせ部分を針金などの結束具73(図12)により結束して連結する。
かぶせ筋71を配筋した後、図9に示すように、上部突出鉄筋31の前記端面4Tから突出した突出水平部31Sとかぶせ筋71の水平部71Sの上に沿って、長さ方向Lの鉄筋74が複数配筋され、これら鉄筋74は結束具73(図9)により水平部31S,71Sに連結される。また、外側湾曲部71A上に沿って、長さ方向Lの鉄筋74Aが配筋され、この鉄筋74Aは結束具73により外側湾曲部71Aに連結される。尚、図9及び図12において、例示的に結束具73を図示しており、他の鉄筋同士の連結箇所は、図示省略している。尚、連結箇所は鉄筋同士の重ね合わせ部分や鉄筋同士の交差部分が例示される。
次に、防砂堤1の施工方法について説明する。長さ方向Lに連続するように鋼管矢板12を幅方向両側に打設し、連続した鋼管矢板12,12・・・の外側に外壁28を形成した後、水中コンクリート部29を形成する。
鋼管矢板12を打設した後、鋼管矢板本体12Hの上部に、吊り板25により中詰め補強鉄筋21を配置し、外側鉄筋61,鉄筋63,内側鉄筋66及び鉄筋68を配筋し、一次コンクリート打設部5を形成するための型枠(図示せず)を組む。この後、その型枠にコンクリートを打設して一次コンクリート打設部5を形成し、前記型枠を取り外す。そして、吊り板25が型枠となり、鋼管矢板本体12H内は、吊り板25の下方は中空となり、吊り板25の上部に充填されたコンクリートと中詰め補強鉄筋21により、鋼管矢板12の上部に一次コンクリート打設部5が剛結合される。
尚、鋼管矢板12を打設した後、鋼管矢板本体12Hの上部に、吊り板25により中詰め補強鉄筋21を配置した後、長さ方向Lから中詰め補強鉄筋21の挿通部24に、腹起し15を挿通し、挿通後、両側の鋼管矢板壁2,2を複数のタイワイヤ16により連結する。
タイワイヤ16を取り付けた後、前記一次コンクリート打設部5を形成する型枠にコンクリートを打設して一次コンクリート打設部5を形成する。この場合、型枠内と鋼管矢板本体12H内の上部にも同時にコンクリートを打設する。
一次コンクリート打設部5の上面をピッチング処理し、無収縮モルタル42を敷いて、所望の高さ位置の平坦面となった載置面5Jを形成する。
工場で製作した床版4を現場まで運搬し、クレーンなどの吊上げ機械により吊り上げ、両側の載置面5J,5Jの所定位置に、床版4の両端を載置する。この場合、かぶせ筋71の配筋前に床版4を架設するから、外側鉄筋61と内側鉄筋66が、床版4の孔あきジベル鋼板11,上部突出鉄筋31及び下部突出鉄筋32などの突出部分37に当たることなく、床版4の両端を吊り降ろすことができる。
図2のように、複数の床版4,4・・・を防砂堤1の長さ方向Lに並設したら、孔あきジベル鋼板11の孔52に該長さ方向Lの鉄筋52Tを挿通する。また、かぶせ筋71を配筋し、さらに、長さ方向Lの鉄筋74,74Aを配筋する。この場合、好ましくは、配筋後、二次コンクリート打設部6を形成する型枠を組む。その型枠にコンクリートを打設して二次コンクリート打設部6を形成し、前記型枠を取り外す。
また、必要に応じて、複数の床版4,4・・・の上面に舗装層72を形成する。さらに、床版4を架設する前に、両側の壁体3,3の間に、砂利や砂など中詰め材76を充填する。
このように両側に鋼管矢板壁2,2を構築し、一次コンクリート打設部5を形成した後、両側の載置面5J,5J上に床版4の両端側を載置し、隅角部7に二次コンクリート打設部6を打設して、鋼管矢板壁2,2に床版4の両端を連結するから、従来の床版を現場打ちコンクリートにより構築するものに比べ、現場でのコンクリート打設作業が大幅に軽減され、短い工期で効率よく構築することができる。
このように本実施例では、請求項1に対応して、幅方向両側に配置され、鋼管矢板12を連続して打設した鋼管矢板壁2を備えた壁体3,3と、幅方向両側の壁体3,3の上部間に架け渡されたプレキャストコンクリート製の床版4と、壁体3の上部と床版4の長さ方向端面4Tとの間にコンクリートを打設して形成したコンクリート打設部たる一次コンクリート打設部5及び二次コンクリート打設部6とを備えた二重矢板式水上構造物たる防砂堤1において、床版4の長さ方向端面4Tに、壁体3の上面たる載置面5Jに載置する縦方向の孔あき板部材たる孔あきジベル鋼板11を設けると共に、この孔あきジベル鋼板11は床版4の幅方向に間隔を置いて複数設けられているから、孔あきジベル鋼板11により床版4と二次コンクリート打設部6との一体化を図ることでき、プレキャストコンクリート製の床版4を用いることにより、施工性が向上し、工期の短縮が可能となる。
このように本実施例では、請求項2に対応して、孔あき板部材たる孔あきジベル鋼板11の下部に壁体3の上面に載置する支持板53の下面53Kを設け、この支持板53の下面53Kが鋼管矢板壁2の厚さ方向中心線たる仮想線Kの上方に位置するから、床版4により鋼管矢板12を曲げる力が加わることなく、鋼管矢板12に荷重が鉛直に加わり、鋼管矢板壁2の安定性を確保できる。
このように本実施例では、請求項3に対応して、鋼管矢板12は、鋼管矢板本体12Hの両側に相互に連結可能な鋼管継手13,13を有し、床版4は長さ方向端面4Tに対をなす孔あきジベル板部材たる孔あきジベル鋼板11,11を備え、これら対をなす孔あきジベル鋼板11,11の支持板53,53の下面53K,53Kの中心53C,53Cが鋼管矢板本体12Hの断面内の上方に位置するから、鋼管継手13,13の上部でなく、鋼管矢板本体12Hの断面内上方に両下面53K,53Kが位置するため、床版4の荷重が両下面53K,53Kから均等に鋼管矢板本体12Hに加わるため、鋼管矢板壁2の安定性を向上することができる。
このように本実施例では、請求項4に対応して、鋼管矢板12は、鋼管矢板本体12Hの両側に相互に連結可能な鋼管継手13,13を有し、鋼管矢板本体12Hの上部内に中詰め補強鉄筋21を設けたから、中詰め補強鉄筋21により、壁体3とコンクリート打設部たる一次コンクリート打設部5とを剛結して一体化することができる。
このように本実施例では、請求項5に対応して、床版4の長さ方向端面4Tから該長さ方向の上部突出鉄筋31と下部突出鉄筋32を突設すると共に、壁体3の上面から外側鉄筋61と内側鉄筋66を突出し、これら上部突出鉄筋31,下部突出鉄筋32,外側鉄筋61及び内側鉄筋66を一次コンクリート打設部5に埋設したから、床版4と一次コンクリート打設部5との一体化を図ることができる。
このように本実施例では、請求項6に対応して、鋼管矢板12を連続して打設した鋼管矢板壁2を備えた壁体3を幅方向両側に設け、これら幅方向両側の壁体3,3の上部間にプレキャストコンクリート製の床版4を架け渡し、壁体3の上部と床版4の長さ方向端面4Tとの間にコンクリートを打設してコンクリート打設部たる一次コンクリート打設部5及び二次コンクリート打設部6を形成する二重矢板式水上構造物たる防砂堤1の施工方法であって、鋼管矢板12の上部にコンクリートを打設して一次コンクリート打設部5を形成し、床版4の長さ方向端面4Tに縦方向の孔あき板部材たる孔あきジベル鋼板11を設け、この孔あきジベル鋼板11を一次コンクリート打設部5の上面たる載置面5Jに載置して、幅方向両側の壁体3,3の上部間に床版4を架け渡し、壁体3の上部と床版4の長さ方向端面4Tとの間にコンクリートを打設して孔あきジベル鋼板11を埋設した二次コンクリート打設部6を形成したから、二次コンクリート打設部6と孔あきジベル鋼板11により壁体3と床版4とを一体化することができ、プレキャストコンクリート製の床版4を用いることにより、施工性が向上し、工期の短縮が可能となる。
このように本実施例では、請求項7に対応して、鋼管矢板12の上部に中詰め補強鉄筋21を設け、孔あき板部材たる孔あきジベル鋼板11を床版4の幅方向に間隔を置いて複数設け、孔あきジベル鋼板11の下部に一次コンクリート打設部5の上面たる載置面5Jに載置する支持板53の下面53Kを設け、この支持板53の支持部たる下面53Kが鋼管矢板壁2の厚さ方向中心線たる仮想線Kの上方に位置するから、壁体3と一次コンクリート打設部5とを剛結して一体化することができ、また、鋼管矢板12に曲げの力が加わることなく、鋼管矢板12に荷重が鉛直に加わるため構造物全体が安定した構造となる。
以下、実施例上の効果として、張出部5Hを設けることにより、鋼管矢板壁2の内面位置より内面側に内側鉄筋66を配置することができ、隅角部7の強度を確保することができる。また、床版4の長さ方向端部側で複数のPC鋼材34,35の40~60%にアンボンド区間を設けることにより、床版4の端部に余分な圧縮力が加わることを防止でき、且つ長いスパンの床版4の撓みを抑制できる。さらに、孔あきジベル鋼板11の高さが床版4の厚さの70%以上であり、複数の孔52を備えるから、二次コンクリート打設部6との一体化を図ることができる。
また、載置面5Jは、チッピングをした斫り面に仕上げ材たる無収縮モルタル42を敷いて、一定高さに形成したから、支持板53を安定して載置することができると共に、支持板53の荷重を均一に支持することができる。さらに、外側鉄筋61及び内側鉄筋66の端部は、他の鉄筋と連結しないから、施工が容易となる。また、載置面5Jに孔あきジベル鋼板11の支持板53と床版4の端部下面4Kを載置した後、かぶせ筋71を配筋するから、かぶせ筋71が床版4の仮設時に邪魔になることがない。
さらに、支持板53の下面53Kの中心53Cを、複数の鋼管矢板12,12・・・の中心を結ぶ仮想線Kの位置にすると共に、下面53Kを鋼管矢板本体12Hの断面内の上方に位置するようにすれば、床版4の荷重が両下面53K,53Kから均等に鋼管矢板本体12Hに加わるため、鋼管矢板壁2の安定性を更に向上することができる。
また、実施例上の効果として、幅方向両側に配置され、鋼管矢板12を連続して打設した矢板壁2と、両側の鋼管矢板12,12の上部外側に切欠き部14を設けると共に、この切欠き部14に腹起し15を配置し、それら両側の腹起し15,15をタイワイヤ16で連結した二重矢板式水上構造物たる防砂堤1において、前記鋼管矢板12の上部に中詰め補強鉄筋21を設け、中詰め補強鉄筋21とタイワイヤ16の定着部たる定着具17を隅角部7のコンクリート打設部たる一次コンクリート打設部5に埋設したから、タイワイヤ16を備えた防砂堤1において、中詰め補強鉄筋21により鋼管矢板12と一次コンクリート打設部5とを一体化することができる。
また、中詰め補強鉄筋21は、間隔を置いて配置した複数の縦鉄筋22,22,22A,22Aを囲むように帯鉄筋23を複数段に設け、前記中詰め補強鉄筋21の挿通部24に前記腹起し15を挿通したから、鋼管矢板12の上部に中詰め補強鉄筋21と腹起し15とを組み合わせて配置した従来にない新規な構造が得られる。
この場合、縦鉄筋22,22,22A,22Aの前記長さ方向Lの間隔に比べて幅方向の間隔を大きく設定することにより、切欠き部14の縦縁14Bと幅方向外側の縦鉄筋22との間に挿通部24を形成し、複数の挿通部24に長さ方向Lから腹起し15を挿通配置することができ、複数の鋼管矢板12に沿って腹起し15を配置する防砂堤1において、中詰め補強鉄筋21を設けながら、鋼管矢板12の切欠き部14に腹起し15を配置することができる。
図12~図14は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、腹起し15の連結構造を示している。
図14に示すように、前記腹起し15は、一対のコ字型鋼81,81の前後部材たるウエブ部81U,81Uを上下に間隔を置いて配置すると共に、上側のコ字型鋼81の縦部材たるフランジ部81Fを上向き、下側のコ字型鋼81の縦部材たるフランジ部81Fを下向きに設け、上下のフランジ部81F,81F同士を固定板82により固定してなる。尚、コ字型鋼81はコ字型部材である。
腹起し15,15同士を連結構造83により長さ方向端部で連結しており、前記連結構造83は、隣り合う腹起し15,15の端部15T,15Tに跨って、外側の上下のフランジ部81F,81Fの外面に連結板84を配置し、これらフランジ部81Fと連結板84にボルト85を挿通し、このボルト85にナット86を螺合して固定し、同様に隣り合う腹起し15,15の端部15T,15Tに跨って、内側の上下のフランジ部81F,81Fの外面に連結板84を配置し、ボルト85,ナット86により固定し、さらに、隣り合う腹起し15,15の端部15T,15Tに跨って、上下のウエブ部81U,81Uの上,下面に連結板87,87を配置し、これら上の連結板87,ウエブ部81U,81Uと下の連結板87にボルト88を挿通し、このボルト88にナット89を螺合して固定し、長さ方向に隣り合う腹起し15,15を連結している。
図12に示すように、連結構造83を挿通する中詰め補強鉄筋21Aは、前記縦鉄筋22,22の上部を短く形成し、その上端22Tを前記切欠き部14の下縁14Aの前記下縁腹起し15に当たらないように構成している。さらに、前記上下のウエブ部81U,81Uには、縦鉄筋22B,22Bを挿通する縦方向の透孔81H,81Hを穿設し、これら透孔81H,81Hは前記帯鉄筋23の内側に対応する位置に穿設されている。
この場合、縦鉄筋22B,22Bを取り付ける前は、鋼管矢板本体12Hの挿通部24は外側が開口した開口部24Kが設けられているから、縦鉄筋22B,22Bが邪魔になることなく、腹起し15,15の端部15T,15Tを連結構造83により連結することができる。
また、前記縦鉄筋22B,22Bは、上端側を屈曲して鋼管矢板本体12Hの中心から放射状に設けた水平部22S,22Sが設けられ、これら水平部22S,22Sによりコンクリートとの定着長さを確保することができる。
外側に配置する前記連結板84は前記鋼管矢板本体12Hの内径より長さが短く、両側の縦縁14B,14Bに当たることなく、連結板84を取り付けることができる。
開口部24Kを有する挿通部24において、腹起し15,15の端部15T,15Tを突き合わせ、連結板84,87などにより端部15T,15Tを連結した後、上方から上下の透孔81H,81Hに縦鉄筋22Bを挿通し、挿通部24の上方において、縦鉄筋22Bと帯鉄筋23に結束具73などにより固定する。また、縦鉄筋22B,22Bの水平部22S,22Sは、図13に示すように、斜め外向きに配置されている。
尚、タイワイヤ16の端部は、腹起し15のウエブ部81U,81U間に挿通されると共に、上下のフランジ部81F,81Fの外面に当接する定着板17P(図13)に挿通されて定着具17に定着されている。
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
また、実施例上の効果として、長さ方向に隣り合う腹起し15,15を連結構造83により連結し、連結構造83を鋼管矢板12の上部の切欠き部14に配置し、連結構造83を配置した鋼管矢板12の中詰め補強鉄筋21Aは、挿通部24の外側が開口しているから、鋼管矢板12の外側から連結作業を行うことができる。
さらに、中詰め補強鉄筋21Aは、内側の縦鉄筋22A,22Aに比べて、外側の縦鉄筋22,22を短く形成して挿通部24に突出せず、その上端22Tが切欠き部14の下縁14A位置より下方に位置し、その短い縦鉄筋22,22を鋼管矢板12内において、帯鉄筋23に連結したから、縦鉄筋22,22の上部が挿通部24の外側で邪魔になることがなく、短くした分、中間の縦鉄筋22B,22Bにより鋼管矢板12と一次コンクリート打設部5との連結強度を確保することができる。
しかも、腹起し15の前後部材たる上下のウエブ部81U,81Uに、縦鉄筋22B,22Bを挿通する透孔81H,81Hを設けたから、腹起し15の連結後、縦鉄筋22B,22Bを配筋する方法であり、縦鉄筋22B,22Bを透孔81H,81Hに挿通することにより、コンクリートの硬化後に縦鉄筋22B,22Bが腹起し15と一体化される。また、挿通部24の上方において、縦鉄筋22Bと帯鉄筋23に結束具73などにより固定するから、中詰め補強鉄筋21Aとして強度を備えたものとなる。
また、連結構造83は、腹起し15,15の端部15T,15Tに跨って、その外面に添わせる連結板84,87とボルト85,88,ナット86,89を用いるものであるから、連結作業が容易で、所定の連結強度が得られる。