JP6975525B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池に関し、詳細には非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有するため、移動体通信機器用電源、携帯情報端末用電源等として利用され、これらの端末の普及と共にその市場が急速に伸びてきており、安全性の確保、サイクル特性やエネルギー密度の向上等、電池特性の改良を目的とした様々な研究がなされている。
リチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すと陰極にデンドライト状のリチウム金属が析出、成長して陰極と陽極が短絡することがある。そのためセパレーターの突き刺し強度を高めて短絡を防止するために、おおむね20μm以上の厚みを有するセパレーターが用いられている。しかしながらセパレーターを分厚くするとイオン透過性が低下して電池特性が低下するだけでなく、セパレーターの体積比率が高くなって電池容量が低下したり、高温環境下で発生する分解生成物によってセパレーターが目詰りを生じやすく、サイクル特性が低下するなどの問題あった。
また厚みが20μm未満のセパレーターの短絡防止手段としてこれまでに提案されている技術は、例えば空孔率の低減や透気度の増大などであり、イオン透過性が悪化した。またセパレーターの突き刺し強度を高めても、高温高電圧状態に対する耐久性が十分でなく、長期使用の観点から問題があった。
このような問題に対して、近年、厚みが20μm未満のセパレーターの短絡を防止する技術が各種提案されている。例えば特許文献1には従来の非水電解液にかえて、高分子化合物を含む保持体を非水電解液に含有させたゲル状電解質を用いる技術が開示されている。また特許文献2にはセパレーターの両面をアラミドでコーティングする技術が開示されている。
特開2012−23033号公報 特開2014−110235号公報
しかしながら特許文献1ではゲル状電解質と組み合わせることで薄いセパレーターを使用できるが、特定の電解質塩との組み合わせに限られるため、電池性能向上効果が限られていた。また、ゲル溶媒、電解質を用いているため、溶液抵抗、界面抵抗が液体カーボネート溶媒を用いた電池よりも高くなり、電池性能が低下した。また特許文献2のようにセパレーターをコーティングした場合、セパレーター基材とコーティング層で気孔のサイズ、数、位置が異なるため、必ずしもセパレーターに均一にイオン透過経路が設けられているわけではなく、イオン移動がセパレーターの一部に偏在したり、イオン透過性が低下し、Li電析が進行し、電池劣化が加速するなどの問題があった。またコーティングする場合、コーティング時にセパレーター基材が破損したり、工程増加に伴う製造コストが大幅に増加するなどの問題があった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、セパレーターの短絡を防止しつつ、優れたイオン透過性とサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明とは、正極活物質を含有する正極、負極活物質を含有する負極、セパレーター、及び非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池であって、該非水電解液は、下記一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド塩(以下、「フルオロスルホニルイミド塩(1)」という)、及びカーボネート系溶媒を含み、該セパレーターは、厚みが20μm未満であることに要旨を有する。
Figure 0006975525
(一般式(1)中、Rは、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す)
本発明を実施するにあたって上記セパレーターは、空孔率が25〜60%であること、透気度が50〜400sec/100ccであることも好ましい実施態様である。
また上記非水電解液は、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および六フッ化砒酸リチウムよりなる群から選択される少なくとも一種の電解質塩を含むことも好ましい。
LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦4) (2)
LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦4) (3)
更に上記セパレーターは有機樹脂を含有するものが好ましく、より好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレンのみからなることである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、フルオロスルホニルイミド塩(1)、およびカーボネート系溶媒を含む非水電解液を用いているため、厚み20μm未満のセパレーターを用いても、セパレーターの短絡を防止しつつ、優れたイオン透過性とサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。
本発明者らはセパレーターの厚みを薄くした場合に生じる上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、上記フルオロスルホニルイミド塩(1)、及びカーボネート系溶媒を含む電解液を用いた場合、正極表面にフルオロスルホニルイミド塩(1)由来の被膜を形成し、正極活物質に含まれる金属成分溶出を抑制でき、また高温環境下でも溶媒の分解を抑制できるため、分解生成物によるセパレーターの目詰りを防止できることがわかった。またフルオロスルホニルイミド塩(1)、及びカーボネート系溶媒を用いた場合、イオン電導度向上効果が得られると共に、負極表面にもフルオロスルホニルイミド塩(1)由来の被膜を形成し、充電受入性が向上してデンドライト状のリチウムイオンの生成、成長を抑えて短絡を防止できることがわかった。またゲル溶媒、ゲル溶媒を含む電解質と比べて液体カーボネート溶媒は、溶液抵抗、界面抵抗を低減でき小さくなり、電池性能が改善する。
すなわち本発明ではフルオロスルホニルイミド塩(1)、及びカーボネート系溶媒を含有させることで、電極表面に被膜を形成し、非水電解液による溶媒分解や正極の劣化、デンドライト状リチウム金属の析出を抑えることができる。したがって従来は困難であったセパレーターの厚みを20μm未満にしても短絡防止を図ることができると共に、目詰りを抑制して45℃以上の高温環境下でも優れたサイクル特性が得られる。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。
1.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレーター、及び電解液とを備えると共に、電解液として後記本発明の要件を満足する非水電解液を有するところに特徴を有する。より詳細には、正極と負極との間にはセパレーターが設けられており、非水電解液は上記セパレーターに含浸された状態で、正極、負極等と共に外装ケースに収容されている。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、満充電電圧が好ましくは3.5V以上5V以下の高電圧条件下での駆動に特に適したものである。上記構成を有することにより、高温下(好ましくは80℃以上、200℃以下)、高電圧状態で保管した場合に電池の熱安定性を向上させ安全性が改善する。また80℃以下に保管した場合も、電池容量の維持、ガスによる膨れが抑制でき、電池の耐久性が向上する。なお、満充電電圧が高いほど高い電圧でリチウムイオン二次電池を駆動させられるためエネルギー密度を高めることはできるが、高過ぎると安全性を確保し難い場合がある。よって、満充電電圧の範囲はより好ましくは4.1V以上、更に好ましくは4.2V以上であって、好ましくは4.9V以下、更に好ましくは4.8V以下である。
2.正極
正極は、正極活物質、導電助剤及び結着剤等を含む正極合剤が正極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
2−1.正極集電体
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、アルミニウムは薄膜に加工し易く、安価であるため好ましい。
2−2.正極活物質
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であればよく、リチウムイオン二次電池で使用される従来公知の正極活物質が用いられる。
具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiNi1-x-yCoxMny2(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)やLiNi1-x-yCoxAly2(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、LixNiyMn(2-y)4(0.9≦x≦1.1、0<y<1)で表されるニッケルマンガン酸リチウム、LiAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi2MnO3と、電気化学的に活性な層状のLiM”O[M”=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)等が正極活物質として挙げられる。これらの正極活物質は、単独、あるいは複数を組み合わせて使用してもよい。
2−3.導電助剤
導電助剤はリチウムイオン二次電池を高出力化するために用いられるものであり、導電助剤としては、主に導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられる。
2−4.結着剤
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;メチルセルロース、エチルセルロース、トリエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロース系樹脂;エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系樹脂;等が挙げられる。これらの結着剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また正極の製造時、これらの結着剤は、溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
導電助剤及び結着剤の含有量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視等)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
例えば導電助剤を用いる場合、正極合剤中の導電助剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であって、好ましくは10質量%以下である。導電助剤が少なすぎると、導電性が極端に悪くなり、負荷特性及び放電容量が劣化する虞がある。一方、多すぎると正極合剤層のかさ密度が高くなり、結着剤の含有量をさらに増やす必要があるため好ましくない。
また例えば上記結着剤を用いる場合、正極合剤中の結着剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。結着剤が少なすぎると良好な密着性が得られず、正極活物質や導電助剤が集電体から脱離してしまう虞がある。一方、多すぎると内部抵抗の増加を招き電池特性に悪影響を及ぼしてしまう虞がある。
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、燐酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、燐酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、及び水等が挙げられ、例えば、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
2−5.正極の製造方法
正極の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(i)分散用溶媒に正極合剤を溶解又は分散させた正極活物質組成物を正極集電体にドクターブレード法等で塗工したり、又は正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後、乾燥する方法;(ii)正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;(iii)液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。また、必要に応じて乾燥後の正極合剤層を加圧してもよい。これにより正極集電体との接着強度が増し、電極密度も高められる。
3.負極
負極は、負極活物質、結着剤及び必要に応じて導電助剤等を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
3−1.負極集電体
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用できる。また、負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。これらの中でも銅は、薄膜への加工が容易であるので好ましい。
3−2.負極活物質
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、リチウムイオンを吸蔵、放出可能なものであればよい。具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭、石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO2等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金が負極活物質として挙げられる。
負極活物質の含有量は、負極合剤100質量部に対して、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上であって、好ましくは99質量部以下である。
負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極と同様のものを用いることができる。
4.非水電解液
4−1.フルオロスルホニルイミド塩(1)
本発明の非水電解液は、電解質として機能する下記一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド塩(1)を含むものであり、好ましくは更に溶媒を含む。必要に応じて添加剤等を含んでもよい。
Figure 0006975525
(一般式(1)中、Rは、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す)
炭素数1〜6のフッ化アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。これらの中でもRとして、フッ素原子、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基が好ましい。
具体的なフルオロスルホニルイミド塩(1)としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドであり、更に好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
フルオロスルホニルイミド塩(1)は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、フルオロスルホニルイミド塩(1)は、市販品を使用してもよいし、従来公知の方法により合成した物を用いてもよい。
非水電解液中のフルオロスルホニルイミド塩(1)の濃度は限定されず、用途に応じて正極表面に被膜を形成して上記効果が得られる濃度に調整すればよい。例えばフルオロスルホニルイミド塩(1)の濃度は、好ましくは0.05mol/L以上、より好ましくは0.15mol/L以上、更に好ましくは0.2mol/L以上、より更に好ましくは0.3mol/L以上、最も好ましくは0.5mol/L以上である。上限は特に限定されないが、濃度が高過ぎると、非水電解液の粘度が上昇し、レート特性が低下するおそれがあるため、フルオロスルホニルイミド塩(1)の濃度は、好ましくは2.0mol/L以下、より好ましくは1.8mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下、より更に好ましくは1.2mol/L以下、最も好ましくは1.0mol/L以下である。
4−2.電解質塩
本発明の非水電解液は電解質塩として、上記フルオロスルホニルイミド塩(1)とは異なる電解質塩(以下、「他の電解質塩」ということがある)を含んでいてもよいし、上記フルオロスルホニルイミド塩(1)だけでもよい。他の電解質塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解液において用いられている従来公知の電解質はいずれも使用できる。
他の電解質塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -)、フルオロリン酸イオン(PF6 -)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、テトラフルオロ硼酸イオン(BF4 -)、ヘキサフルオロ砒酸イオン(AsF6 -)、テトラシアノホウ酸イオン([B(CN)4-)、テトラクロロアルミニウムイオン(AlCl4 -)、トリシアノメチドイオン(C[(CN)3-)、ジシアナミドイオン(N[(CN)2-)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン(C[(CF3SO23-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 -)およびジシアノトリアゾレートイオン(DCTA)等をアニオンとする無機又は有機カチオン塩等の従来公知の電解質塩が使用できる。
他の電解質塩の中でも、一般式(2):LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦4)で表される化合物(フルオロリン酸塩)、一般式(3):LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦4)で表される化合物(フルオロ硼酸塩)及び六フッ化砒酸リチウム(LiAsF6)よりなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。これらの電解質塩を併用することでフルオロスルホニルイミド塩(1)に起因する正極集電体の腐食を抑制できる。
一般式(2)で表される化合物(以下、電解質塩(2)と称する場合がある)としては、LiPF6、LiPF3(CF33、LiPF3(C253、LiPF3(C373、LiPF3(C493等が好ましいものとして挙げられる。より好ましくはLiPF6、LiPF3(C253であり、更に好ましくはLiPF6である。
一般式(3)で表される化合物(以下、電解質塩(3)と称する場合がある)としては、LiBF4、LiBF(CF33、LiBF(C253、LiBF(C373等が好ましいものとして挙げられ、LiBF4、LiBF(CF33がより好ましく、LiBF4がさらに好ましい。
好ましい他の電解質塩としては、LiPF6、LiPF3(C253、LiBF(CF33であり、より好ましくはLiPF6、LiPF3(C253であり、更に好ましくは、LiPF6である。特に、イオン電導度の点からはLiPF6が好ましい。他の電解質塩は上記例示の化合物を単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の非水電解液が上記他の電解質塩を含む場合、他の電解質塩の含有量は、他の電解質塩とフルオロスルホニルイミド塩(1)との濃度の合計が飽和濃度以下の範囲で使用される限りその濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5mol/L以上、より好ましくは0.8mol/L以上、更に好ましくは1.0mol/L以上であって、好ましくは2.5mol/L以下、より好ましくは2.0mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下である。
フルオロスルホニルイミド塩(1)と他の電解質塩の比率は特に限定されない。したがって、フルオロスルホニルイミド塩(1)と他の電解質塩の比率は同じ、あるいは何れか一方が高くてもよい。本発明ではフルオロスルホニルイミド塩(1)を含有させることで上記効果が得られるため、フルオロスルホニルイミド塩(1)よりも他の電解質塩の比率が高くてもよい。フルオロスルホニルイミド塩(1)濃度比率を高めるとより一層優れた短絡防止や充放電時の容量維持率(サイクル特性)向上効果を得るため、好ましい濃度比率はフルオロスルホニルイミド塩(1):他の電解質塩=1:1〜2:1、より好ましくは2:1〜3:1である。
4−3.溶媒
本発明の非水電解液に用いることのできる溶媒としては、カーボネート系溶媒を含んでいればよい。またカーボネート系溶媒以外にもフルオロスルホニルイミド塩(1)及び他の電解質塩を溶解、分散させられるものであれば特に限定されず、電池に用いられる従来公知の溶媒を組み合わせて使用できる。なお、20μm未満のセパレーターとの組み合わせではポリマー、ポリマーゲル等の媒体を用たゲル状溶媒、及びゲル状電解質はセパレーター中への含浸が悪いため、保液量が少なく、充放電中に極間が局所的に液枯れ状態となりやすく、それによりLi電析が進行し、電池性能低下をまねくことがあるため、本発明の溶媒からゲル状溶媒、ゲル状電解質は除かれる。
非水系溶媒としては、誘電率が大きく、電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。この様な非水系溶媒としてカーボネート系溶媒を用いればよく、鎖状炭酸エステル類、環状炭酸エステル類等の炭酸エステル類が例示される。非水系溶媒はカーボネート系溶媒1種を単独で用いてもよく、また、カーボネート系溶媒同士、あるいはカーボネート溶媒と他の溶媒とを任意に組み合わせて用いてもよい。また他の溶媒も上記誘電率、溶解性、沸点、電気的安定性に加えて含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)が好ましい。
例えば下記有機溶媒からカーボネート系溶媒を必須的に含めれば適宜組み合わせることができる。具体的にはエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル(エチルメチルカーボネート)、炭酸ジエチル(ジエチルカーボネート)、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
これらの中でも、鎖状炭酸エステル類、環状炭酸エステル類等の炭酸エステル類(カーボネート系溶媒)、ラクトン類、エーテル類が好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等がより好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。
4−4.その他の成分
本発明に係る非水電解液は、リチウムイオン二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、トリメチレングリコール硫酸エステル等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩等のリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。
上記添加剤は、本発明の非水電解液100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、非水電解液の粘度が高くなり伝導率が低下する虞がある。
なお、非水電解液100質量%とは、上述したフルオロスルホニルイミド塩(1)、他の電解質塩、溶媒、及び適宜用いられる添加剤等、非水電解液に含まれる全ての成分の合計を意味する。
5.セパレーター
セパレーターは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。セパレーターには、特に制限がなく、本発明では、従来公知のセパレーターはいずれも使用できる。例えばセパレーターの材質として、ガラス、セルロース、樹脂などが挙げられる。樹脂としては合成樹脂、天然樹脂のいずれでもよく、また有機樹脂、無機樹脂(例えばシリコーン樹脂など)のいずれも使用し得る。これらのなかでも有機樹脂を含有するセパレーターは有機溶媒に対する化学的安定性とイオン透過性に優れているため好ましい。有機樹脂としては限定されず、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど公知の有機樹脂を用いることでき、単独重合体でも共重合体でもよく、また、複数種の樹脂の混合体及びアロイを用いてもよい。これらの中でも薄膜化しても外部応力に対する耐衝撃性、有機溶媒に対する化学的に安定性と耐熱性、適正範囲のイオン透過性に特に優れているポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
したがってセパレーターにはポリエチレンまたはポリプロピレンが含まれていることが好ましいが、より好ましくはポリエチレンのみからなるセパレーター、ポリプロピレンのみからなるセパレーター、またはポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるセパレーターである。また本発明のセパレーターには表面に無機質やアラミドなどのコーティングがされていない非コーティングセパレーターであることが好ましい。実施例にも示しているように本発明のセパレーターは表面にコーティング層を設けなくてもイオン透過性、及びサイクル特性に優れた効果が得られるため、コーティングした場合よりも簡易な工程、且つ低コストで製造できる。またポリエチレンのみ、ポリプロピレンのみ、またポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるセパレーターは、セパレーターを他の材料と積層したり、あるいは表面をコーティングしたセパレーターと比べると、イオン透過性が高いため目詰りを抑制できる。またセパレーターにイオン透過経路を均一に設けることができる。そのため、積層やコーティングした場合に問題となるイオン透過性の低下やセパレーターの一部にイオン透過経路が偏在してLi電析が進行し、電池劣化が加速するという問題を解消できる。
本発明のセパレーターの厚みは、20μm未満である。本発明では非水電解液にフルオロスルホニルイミド塩(1)を含有させることで、セパレーターの目詰りの原因となる分解生成物等の原因物質の生成を抑制でき、また負極表面でのデンドライト状のリチウム金属の析出を抑制できるため、従来よりもセパレーターの厚みを薄くしても、短絡することがなく高温サイクル特性に優れた効果を発揮する。セパレーターの厚みは好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下である。セパレーターの厚みの下限は電池の要求特性に応じて適宜決定すればよく特に限定されないが、薄くし過ぎるとセパレーターの耐久性が低下して破損する恐れがあるため、好ましくは7μm以上、より好ましくは9μm以上である。
セパレーターの空孔率は限定されず、要求されるイオン透過度に応じて適宜調整することができるが、空孔率が低すぎるとセパレーターの非水電解液の保持量が少なく、充放電を繰り返すと電解液が分解、蒸発して液枯れしやすくなる。また空孔率が高過ぎるとセパレーターの強度や絶縁性が低下する。空孔率は好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であって、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
またセパレーターの透気度は要求特性に応じて適宜設定すればよい。本発明では分解生成物を抑制でき、またイオン導電度も高いため、透気度が高くても高いサイクル特性が得られるが、透気度が高過ぎるとイオン透過性が低下して所望の電池特性が得られないことがある。透気度はガーレ値で好ましくは400秒/100cc以下、より好ましくは370秒/100cc以下である。透気度が低い程、イオン透過性は向上するため下限は限定されないが、透気度が低すぎるとセパレーターの強度や絶縁性が低下することがあるため、透気度はガーレ値で好ましくは50秒/100cc以上、より好ましくは80秒/100cc以上、更に好ましくは250秒/100cc以上、より更に好ましくは300秒/100cc以上である。なお、透気度はセパレーター厚み方向のイオン透過性の代替指標であり、透気度の値が大きくなって空気の透過性が低下する程、イオン透過性も低下する関係にある。
6.電池外装材
正極、負極、セパレーター及び非水電解液等を備えた電池素子は、リチウムイオン二次電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。本発明では、電池外装材の素材は特に限定されず従来公知の外装材はいずれも使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(MEC)を3:7(体積比)で混合した非水溶媒に、表1に示す濃度となるようにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(株式会社日本触媒社製:以下、「LiFSI」と称する場合がある))とLiPF6(キシダ化学株式会社製)を溶解させて、非水電解液A〜Cを調製した。
2.ラミネート型リチウムイオン二次電池の作製
2−1.正極シートの作製
正極活物質(LiCoO2)、導電助剤1(アセチレンブラック、AB)、導電助剤2(グラファイト)、及び結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVdF)を92:2:2:4の質量比で混合し、これをN−メチルピロリドンに分散させた正極合剤スラリーをアルミニウム箔に塗布し、乾燥、圧縮することにより正極シートを作製した。
2−2.負極シートの作製
負極活物質(グラファイト)、導電助剤(VGCF)、及び結着剤(SBR+CMC)を97:0.5:2.5の質量比で混合し、これをN−メチルピロリドンと混合して得られた負極合剤スラリーを作製した。4.35V充電での正極の充電容量を計算し、負極のリチウムイオン吸蔵可能容量/正極充電容量=1.1となるように負極合剤スラリーを銅箔(負極集電体)に塗布し、乾燥、圧縮することにより負極シートを作製した。
2−3.ラミネート型リチウムイオン二次電池の作製
上記作製した正極シート1枚と負極シート1枚それぞれの未塗工部分にアルミタブ、ニッケルタブを溶接し、表1のA〜Dに記載の厚さ、空孔率、透気度を有するポリエチレン製セパレーターを挟んで対向させ、巻回機にて巻き取り、巻回体を作製した。作製した巻回体を適正な深さに絞り加工済みのアルミニウムラミネートフィルムと未処理のアルミニウムラミネートフィルムで挟み込み、アルミニウムラミネートフィルム内をそれぞれ上記作製した非水電解液A〜Cで満たし、真空状態で密閉し、容量1Ahのラミネート型リチウムイオン二次電池を夫々作製した。非水電解液AとセパレーターAの組み合わせを電池1とし、非水電解液とセパレーターを同様に組み合わせて全12種類の電池を作製した。
各セパレーターの透気度はJIS P 8117(2009年)に規定されるガーレー試験機法に基づいて測定し、体積100ccの空気がセパレーターを通過するのに要した時間(秒)を透気度とした。またセパレーターの膜厚はマイクロメーターを用いて、長さ方向に20mm間隔で10箇所測定した平均値を厚みとした。空孔率はリール状から長さ500mmに裁断したセパレーターをセルに採取し、細孔直径0.003μmから2μmの範囲で水銀圧入法により3回測定した平均値を空孔率とした。
3.電池評価
サイクル特性試験
各ラミネート型リチウムイオン二次電池について、温度45℃の環境下、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用し、所定の充電条件(1C、4.35V、定電流定電圧モード0.02Cカット)及び放電条件(1C、定電流放電モード2.75Vカット)にて、各充放電時にはそれぞれ10分の充放電休止時間を設けてサイクル特性試験を行い、下記式より、容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
容量維持率(%)=(300サイクル目の1C容量/1サイクル目の1C容量)×100
また300サイクル後にセパレーターに短絡が生じていないか電池を分解して短絡痕の有無を確認した。短絡有無の結果を表1に示す。短絡有無の確認は、セルを解体し、セパレーターを目視にて観察し、デンドライトによる短絡によって茶色く変色した極小点の有無により確認した。
Figure 0006975525
表1より、LiFSIを含まない非水電解液Aを用いた電池では、セパレーターの厚みが薄く(20μm未満)、また透気度が高い場合(セパレーターNo.A、B)、短絡が生じていた。また負極上にはLi電析が多く確認できた。短絡していることから、陰極表面にデンドライト状のリチウム金属が析出、成長してセパレーターに破損等が生じたと考えられる。容量維持率はいずれも55%以下の低い値であった。
一方、LiFSIを含む非水電解液B、Cを用いた電池では、セパレーターの厚みが薄く、透気度が高い場合(セパレーターNo.A、B)でも、短絡も生じていなかった。また負極上にはLi電析は確認できなかった。短絡が生じていないことから、デンドライト状のリチウム金属の析出が抑制できたと考えられる。容量維持率はいずれも75%以上の高い値であった。
またサイクル特性について、LiFSIを含む非水電解液B、Cを用いた電池はLiFSIを含まない非水電解液Aを用いた電池と比べて、セパレーターの厚み、空孔率、透気度にかかわらず、全ての電池が75%以上の高い容量維持率を発揮した。またLiFSI含有量が多い非水電解液Bを用いた場合はLiFSI含有量が少ない非水電解液Cを用いた場合と比べてより優れた容量維持率を示した。このことからLiFSIを含む非水電解液を用いると、分解生成物等の生成を抑制できるため、高温サイクル時のセパレーターの目詰りと、Li電析を抑制し、容量維持率の低下抑制に優れた効果を発揮することが分かる。特にLiFSIが電極に良好な被膜を形成した結果、透気度が高い場合であってもセパレーターの目詰りが抑制でき、優れたサイクル特性が得られたと考えられる。また電極に良好な被膜が形成され、酸化還元時にセパレーターの保護膜としても機能するため、300サイクル以上の充放電サイクルでも電池容量を高く維持できる。
一方、非水電解液Aを用いた場合は、高温サイクル時に分解生成物などが生じてセパレーターの目詰りが生じたため、サイクル特性が低下したと考えられる。
以上の結果より、LiFSIを含む非水電解液を用いると、正極からの成分溶出を抑制できた結果、空孔率や透気度が低くても、容量維持率を高い値に維持できると共に、陰極でのデンドライト状リチウム金属の生成を抑制できた結果、セパレーターの膜厚が20μm未満でも短絡を防止でき、安全でまたサイクル特性も低下し難いリチウムイオン二次電池を提供できることがわかる。

Claims (2)

  1. 正極活物質を含有する正極、負極活物質を含有する負極、セパレーター、及び非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池であって、
    上記負極は結着剤としてスチレン−ブタジエンゴム、およびカルボキシメチルセルロースを含有し、
    上記正極と上記負極との間には上記セパレーター以外の絶縁層を含まず、
    上記非水電解液は、下記一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド塩、及びカーボネート系溶媒を含み(但し、ゲル状溶媒、ゲル状電解質を除く)、
    Figure 0006975525
    (一般式(1)中、Rは、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す)
    上記セパレーターは、厚みが20μm未満であり、空孔率が25〜60%であり、透気度が300〜400sec/100ccであり、
    上記セパレーターの表面はコーティングされておらず、且つ
    上記セパレーターは均一なイオン透過経路を有し、
    上記セパレーターは、ポリエチレンのみからなるセパレーター、ポリプロピレンのみからなるセパレーター、またはポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるセパレーターであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 上記非水電解液は、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および六フッ化砒酸リチウムよりなる群から選択される少なくとも一種の電解質塩を含むものである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
    LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦4) (2)
    LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦4) (3)
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